H28年 建設・施工 Ⅱ-1-4問題 模範解答と解説

問題文

コンクリート構造物において、所定の耐久性能を損なうコンクリートの劣化機構の名称を4つ挙げよ。

また、そのうち2つについて、劣化現象を概説するとともに耐久性の回復もしくは向上を目的とした補修にあたり考慮すべき点について述べよ。

模範解答1

1. コンクリートの劣化機構

 コンクリートの劣化機構は、アルカリ骨材反応、中性化、塩害、凍害が挙げられる。これらが発生すると、耐久性が劣り。構造物の要求性能を満足できなくなる可能性も出てくる。

2-1塩害

 塩化物イオン濃度が増大し、鋼材発生限界濃度に達した時に鉄筋が腐食しひび割れが発生する。減水剤を使用し、コンクリートを緻密化し、エントレンドエアを連行させ、ひび割れがしないようにする。また、エポキシ樹脂鉄筋の使用も検討する。劣化したものについては、除去後にポリマーセメントを使用して断面修復を行う。

2-2中性化

中性化は、空気中の二酸化炭素とコンクリートが炭酸化反応を起こし、PHを低下させ、ひび割れを起こす。塩害対策と同様であるが、減水剤を使用しコンクリートを緻密化しひび割れしないようにする。また、劣化部は、除去後にポリマーセメントによる断面修復や再アルカリ化をする。鉄筋は、防錆しポリマーセメントが鉄筋の裏側まで回るように補修する。

解説

 この問題は、近年コンクリート構造物の課題となっている長寿命からや耐久性確保といった機能が、施工段階に依存していることから出題されています。コンクリートの劣化機構とは何か、これは上記回答に記載した4つの項目ですが、こうした知識は基本的におさらいしておくべき項目です。筆記試験ではその名称だけでなく、メカニズム、原理や対策法まで整理しておく必要があります。

 この問題文では劣化機構をを4つ挙げて、その福地2つについて詳述するという形式になっており、内容説明に必要なある程度の文字数を求めているということが伺えます。

 答案の書き方としては、 1枚問題であることから簡潔な構成を心掛けるべきです。絵描き高の名称4つ挙げた後2つについてそれぞれ劣化現象の解説と、それから考慮すべき点について簡潔に述べてください。

 考慮すべき点とは何か。この問いかけは「留意点」とほとんど同じ意味であり、提案した対策を行う上で品質管理の内容を記述すればokです。施工をする際に現実的に目的とする品質に対してそれを阻害する要因が発生することが度々あります。プロのエンジニアはこうした問題を解決して目標をとする性能を確保しなければならないわけですが、そうした性能を阻害する要因を一つ一つ解決していくことこそが最終的な性能を保証するためのエンジニアの務めということになります。技術士試験ではこうした品質確保する上で欠かすことのできないエンジニアの必須能力を確かめるため、提案した解決策に対する留意点が問われることが多いのです。

模範解答2

1. 耐久性を損なうコンクリートの劣化機構の名称

中性化、塩害、アルカリシリカ反応、凍害

2. 中性化の概説と補修時の考慮すべき点

酸性である空気中のCO2が、アルカリ性であるコンクリート内に侵入していくことにより、コンクリートのアルカリ性が中和され低下する。これにより、鉄筋を保護する不働態体膜が破壊され、鉄筋が腐食膨張するため、コンクリートにひび割れが発生する。

 補修では、コンクリート中にアルカリ性の電解質溶液(炭酸ナトリウム溶液等)を電気的に浸透させて、中性化したコンクリートのアルカリ性を回復させて、不働態膜を再生させる再アルカリ化工法が有効である。中性化が再発しないように、補修部分はコーキング材で完全に密閉して、外気の侵入を予防する。

3. アルカリシリカ反応の概説と補修時の考慮すべき点

コンクリート中の骨材に含まれるシリカが、コンクリート中のアルカリ分と反応し、アルカリシリカゲルが生成される。これが侵入してきた水と反応すると給水膨張するため、ひび割れが発生する。

補修では、アルカリシリカゲルへの水の供給を遮断するために止水注入などにより十分な止水を先行して行う。その後に部材全体を巻き立てて補強するが、鋼板では重量による躯体への負担増加があり、繊維補強シートでは外気の紫外線に弱い問題があるので現場状況により使い分ける必要がある。以上。

解説

 耐久性を損なうコンクリートの劣化機構の名称が求められていますので、この答案では、中性化、塩害、アルカリシリカ反応、凍害、という4つの項目を簡潔に述べています。見識を求める問題ではこのように答えの項目を簡潔に述べていくことが重要です。

 劣化の概要とは何かというと、原理やメカニズムの説明がふさわしいでしょう。中性化の概説といえば、

空気中のCO2→コンクリート内に侵入→アルカリ性が中和→鉄筋が腐食膨張→ひび割れが発生

という因果関係がありますのでこれを簡潔に説明します。

 対策と留意点としては、これの因果関係を逆にたどって、ひび割れを発生させないようにするにはどうするか。コンクリートのアルカリ性を回復させるとか、空気中のCO2が侵入するのを防ぐなど、中性化に至る因果関係を途中で断ち切ることを提案すればよいのです。

 アルカリシリカ反応についても同様です。メカニズムは、コンクリート中骨材にシリカあり→アルカリ分と反応→アルカリシリカゲル生成→水と反応→給水膨張→ひび割れ

というものです。この対策はアルカリシリカゲルへの水の供給を遮断するためにコンクリート表面での止水などが有効です。

模範解答3

 コンクリート構造物の所定の耐久性を損なう劣化機構は,中性化,ひび割れ,アルカリ骨材反応,凍結がある。

1. 中性化

 コンクリートの脆弱部より二酸化炭素が侵入することによりコンクリートがアルカリ性から中性化する。コンクリートが中性化すると鉄筋のまわりにある不動態被膜が破壊され鉄筋に錆が発生する。錆びた鉄筋は体積が膨張し,コンクリートにひび割れを発生させる。ひび割れ部分より劣化因子が侵入しさらに鉄筋に錆が発生しコンクリートを劣化させる。

 補修する際には,中性化したコンクリートを撤去して,鉄筋の防錆を十分行った上で表面に塗膜塗装をかけて補修をしなければならない。

2. ひび割れ

 コンクリートが硬化する際,乾燥収縮に伴いひび割れが発生する。また,先打ちしたコンクリートに拘束される形でも後打ちコンクリートにひび割れが発生する。マスコンクリートにおいては,内部のコンクリートが発熱で膨張しているのに対し,外周面は外気温に左右されて冷やされ内部面が外部面を拘束してひび割れが発生する。

 ひび割れの補修は,ひび割れの進行が完全に終了した段階では,樹脂による注入補修でよいが,ひび割れが進行中のものであれば,可とう性のある弾性系の樹脂を注入材として使用しないとひび割れに追従できない。

解説

 劣化機構4つの答えは模範例1、2と同じです。

 中性化の説明では、まず「中性」の意味が何かと言うことと、なぜ「中性」ではいけないのか、その要因がコンクリート柱のpHにある事を示し、酸アルカリの環境が不動態被膜の破壊に関係していることを述べで、逆に不動態皮膜を保護するためにpHをアルカリ側に改善(アルカリ化)することを言えばよいのです。

 ひび割れの説明では、その要因が乾燥収縮や熱応力にあることを示しそれらの要因を低減する方法を提案します。答えの図式は原理と対策を、目的・方策の関係として論理的に説明すればよいわけです。

模範解答4

 コンクリートの劣化機構として、「中性化」、「塩害」、「アルカリ骨材反応」、「凍害」などが挙げられる。うち、「中性化」と「塩害」について劣化現象を概要と補修上の考慮すべき点を述べる。

中性化

【劣化現象】空気中の二酸化炭素がコンクリートに侵入してコンクリート中の水酸化カルシウムと反応し、アルカリ性が低下することで鉄筋の不動態被膜が破壊され、浸透した水・酸素により鉄筋腐食が生じ、ひび割れ、剥離等コンクリート劣化が進行する。

【補修上の考慮点】中性化深さ試験、鉄筋腐食度調査等により、劣化程度を診断するとともに中性化の進行を予測し、維持管理計画に沿って要求性能に見合った工法(表面被覆、断面修復、電気防食)を選定する。

塩害

【劣化現象】海水飛沫など外在塩化物の侵入あるいはコンクリート材料に含まれた塩化物による塩化物イオンが一定濃度を超えることで、鉄筋の不動態被膜が破壊され、浸透した水・酸素による鉄筋腐食しひび割れ・剥離等コンクリートの劣化が進行する。

【補修上の考慮点】塩化物イオン含有量試験、鉄筋腐食度調査等により、劣化程度を診断するとともに、今後の塩化物イオン拡散を予測し、維持管理計画に沿って要求性能に見合った工法(表面被覆、断面修復、脱塩、電気防食)を選定する。

解説

この解答は、

  1. 劣化機構の名称
  2. 劣化現象の概説
  3. 補修にあたり考慮すべき点

の3つが簡潔に書かれていて、ほぼ満点に近いものと考えられます。

 劣化現象の概説とは、空気中の二酸化炭素がコンクリートに侵入し、その後鉄筋の腐食にどのような経路でいけるかという説明がなされる必要があります。この方はそのプロセスが技術的にかつ簡潔に表現できます。

 また補修にあたり考慮すべき点とは、物理探査等によって劣化診断を行い、その結果より補修方法をどう判断するかという考え方を表せれば良いのです。

 残念ながらこの説明が「要求性能に見合った工法を選定する。」とやや抽象的に描かれています。要求に見合った工法である事はどの現場でも当然のことであり言うまでもないことです。「要求性能に見合った工法」とはどういう工法か、そしてその判断はどう考えるべきかを具体的問われていますので、そのような内容を表せば完璧です。

 「塩害」についても同じです。やはり「維持管理計画に沿って要求性能に見合った工法を選定する。」と書かれており具体的にどう考えるか、判断根拠がないためにもの足りない感じとなっています。

 ともあれ解決策の提案として

中性化には、表面被覆、断面修復、電気防食

塩害には、表面被覆、断面修復、脱塩、電気防食

といった具体的な方法が推奨されていますので、施工計画のエンジニアとしてのコンピテンシーは十分感じられます。こうした具体的な技術名を挙げての提案が合格力を高めると言えそうです。

お問合せ・ご相談はこちら

受付時間
9:00~18:00
定休日
不定期

ご不明点などございましたら、
お問合せフォームかもしくはメールよりお気軽にご相談ください。

お電話でのお問合せはこちら

03-6661-2356

マンツーマン個別指導で驚異的合格率!
技術士二次試験対策ならお任せ!
面談、電話、音声ガイド・コーチングで100%納得
添削回数は無制限、夜間・休日も相談可能

お電話でのお問合せ

03-6661-2356

<受付時間>
10:00~17:00

  • 試験対策講座のご案内

株式会社
技術士合格への道研究所

住所

〒103-0008
東京都中央区日本橋中洲2-3 サンヴェール日本橋水天宮605

営業時間

10:00~17:00

定休日

不定期