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H28年、機械部門、機械設計科目のⅢ-1の問題はこうでした。


Ⅲ-1 「失敗学」では、起こってしまった失敗に対し、物理的、人為的な直接原因と、背景・環境・組織を含む根本原因を究明する。それらの原因分析から教訓を得て、同じような失敗を繰り返さないように対策を講じる。また得られた知見を社内の他部門や公共に対して公開することで水平展開をはかる。すなわち、①原因究明、②失敗防止、③知識配布が「失敗学」の核となる。既存製品に不具合が発生し、あなたが原因究明と再発防止の責任者であるとして、次の設問に答えよ。

(1)強度不足など製品不具合の直接原因の例を1つ挙げ、それに至る根本原因として考えられるものを多面的に述べよ。

(2)(1)で述べた根本原因のうち、あなたが重要と考えられるものを1つ挙げ、再発防止をはかるための提案を示せ。

(3)(2)の提案だけでは、防止しきれないリスクあるいは限界について説明せよ。


 それに対してKNN様は次のように解かれていました。


(1)製品不具合の直接的原因の例

フィルム搬送設備においてステンレス製φ60長さ300mmの原反軸が衝撃荷重により折れた。衝撃荷重発生の原因は、フィルム径を測定している接触式ローラーエンコーダーに跳ねや滑りが発生し計測ローラーの回転が止まることで原反軸が急加減速を繰り返し衝撃荷重が発生する。

根本的原因

①強度計算で衝撃荷重に対する安全率を考慮した設計をしていなかった

②原反フィルムの品質が悪く、表面が波打っているため測定用ローラーが跳ねる。

③制御不具合の症状が稀にしか起きない現象だったため発見できなかった。

④モータの急加減速に対するサーボモータへのソフトリミットがなかった。

(2)重要な原因と再発防止の提案

重要な原因として強度設計を挙げる。再発防止は衝撃荷重発生を含めた強度設計の

実施を行う。定常作業では原反軸に衝撃荷重は発生しないが、非定常作業時や

今回のような制御不具合時に原反軸への衝撃荷重が発生する可能性がある。そのため、強度計算時の安全率は15倍として設計応力が材料許容応力を超えないようにする。

(3)防止しきれないリスク。

①メンテナンス作業や原反交換時に原反軸に過負荷を与えてしまうことによる破損。

②洗浄剤等の薬品が誤って軸へ付着してしまうことで発生する軸腐食による強度低下。

③設備設置環境の変更にて設備設置場所の温度が低下した場合の低温脆性破壊。


上記の回答内容を一つ一つチェックしていきましょう。まず、

(1)製品不具合の直接的原因の例

根本的原因

①強度計算で衝撃荷重に対する安全率を考慮した設計をしていなかった。

②原反フィルムの品質が悪く、表面が波打っているため測定用ローラーが跳ねる。

③制御不具合の症状が稀にしか起きない現象だったため発見できなかった。

④モータの急加減速に対するサーボモータへのソフトリミットがなかった。

■「安全率を考慮していない」とか「表面が波打っている」とかいう、本来はありえない誤った状況にあるものは、そのような状況に至らしめた他の原因があるはずで、根本原因がまだ掘り下げられていないと考えられます。したがって問題はこうした

好ましくない状況をそのまま表すのではなく、その根本となる原因まで分析してから表現すべき

なのです。

(2)重要な原因と再発防止の提案

 重要な原因として強度設計を挙げる。再発防止は衝撃荷重発生を含めた強度設計の実施を行う。定常作業では原反軸に衝撃荷重は発生しないが、非定常作業時や今回のような制御不具合時に原反軸への衝撃荷重が発生する可能性がある。そのため、強度計算時の安全率は15倍として設計応力が材料許容応力を超えないようにする。

■「再発防止は衝撃荷重発生を含めた強度設計の実施を行う」は具体的に何であるを行うべきが書かれていませんので、ここは本来は強度設計の方法論を具体的に言及すべきです。

 その次の「定常作業では原反軸に衝撃荷重は発生しないが、非定常作・・可能性がある」では衝撃荷重の可能性についての冗長な記述になっており、こうした前提事項に触れるのではなく、結論として再発防止をどう行うかという対策を明記すべきです。つまり、

話の流れを逆行させないで原因、課題、解決策の順に整然として述べていかなければならない

ということです。

(3)防止しきれないリスク。

①メンテナンス作業や原反交換時に原反軸に過負荷を与えてしまうことによる破損。

②洗浄剤等の薬品が誤って軸へ付着してしまうことで発生する軸腐食による強度低下。

③設備設置環境の変更にて設備設置場所の温度が低下した場合の低温脆性破壊。

■ここでも「原反交換時に原反軸に過負荷を与えてしまう」とかなぜそうなるかがわからない記述が見られます。

また「薬品が誤って軸へ付着してしまう」とヒューマンエラーについての記述も見られます。「温度が低下した場合の低温脆性破壊」とは、実際マイナス何十度の超低温になる可能性があるのか一般的な前提条件からは想定しにくい特殊環境です。もしそのような

極限環境になることがあり得るとしたら、(1)(2)の段階で前提条件として宣言しておく

べきでしょう。

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