H30/2018年 建設・施工 Ⅲ−1 問題 模範解答と解説
問題文
建設業の労働災害による死傷者数は、安全設備や安全管理の充実により減少傾向にあるが、今なお、全産業に占める建設業の死亡者数の割合は最も高く、建設業の労働災害の防止に向けて、新技術の活用などにより、なお一層の取組が必要である。
これを踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)建設業の労働災害において死傷事故の発生頻度が高い事故の型別(種類)を2つ挙げ、それぞれの事故が発生する要因となっている建設現場の作業内容や現場環境の特徴について述べよ。
(2) (1)の事故発生要因を受けて、様々な事故防止対策が行なわれているが,依然として,類似事故が発生しているこのような状況を招いている背景と問題点について述べよ。
(3) (2)の問題点を解決するための方策を挙げ、その効果と,それを普及させるために必要な取組みについて、あなたの考え方を述べよ。
模範解答1 (簡易形式1) 添削履歴 5回 2019.5.27 専門事項 施工計画
(1)作業内容や現場環境の特徴
1)墜落・転落
橋梁架設や型枠・鉄筋・コンクリート工事等、高所作業や足場上での作業が多い
2)はさまれ・巻き込まれ
土工事、舗装工事等、建設機械と人が輻輳する作業が多い
(2)類似事故が発生している背景と問題点
1)人力に頼る生産形態
仮設足場の組立て解体や、気象状況の影響を直接受ける狭隘な高所での人力作業が依然として多い
2)労働者不足
慢性的な労働者不足により、技能や経験の不足している作業者による、判断の誤りやエラー行動による事故、加えて高齢化による判断力や対応力低下による事故
(3)問題解決のための方策、効果、必要な取組み
1)Pca化による人力作業を減少
効果:劣悪環境下での人力作業を減少、人間のエラー事故の低減
取組:規格化・標準化とプレキャスト製品導入による省人化
2)ICT活用による人と機械の分離
効果:ICT施工の工種拡大により測量、設計、施工、維持管理にいたる建設プロセスを3次元で繋ぎ、限られた人員による生産性の向上と、建設機械と人の輻輳作業の低減
取組:土工・舗装工・浚渫工以外にもICT施工を拡大させ建設生産・管理システムの効率化・高度化インフラデータの統一化を図る
模範解答1 (簡易形式2) 添削履歴 1回 2019.6.19 専門事項 施工計画
(1)作業内容や現場環境の特徴
1)墜落・転落
建設業では、高所作業や足場上での人力作業が多い。人力中心の高所作業では十分なスペースが確保できず不安定で危険な場所が多い。
加えて、現場は屋外が多く気象条件の影響を大きく受ける。これらに起因する転落・墜落事故が発生しやすい。
2)はさまれ・巻き込まれ
建設現場では、建設機械と人が輻輳する作業が多く、非常に狭隘なエリアで建設機械と作業員が共存することになり、はさまれ・巻き込まれ事故が発生しやすい。
(2)類似事故が発生している背景と問題点
1)人力に頼る生産形態
依然として気象状況の影響を直接受ける屋外生産作業が中心となっている。機械化が進んでおらず、狭隘な高所での人力作業が必要な工種が依然として多いことが、大きな発生要因となっている。
2)熟練技術者不足と高齢化
復旧や防災対策が各地で積極的に行なわれているため全国的な労働者不足が発生している。
建設業は、長時間労働、休日作業が多く就業環境が悪いため新規就業者が少ない上定着しない。
このため未経験者や高齢者にたよらざるを得ず、判断の誤りや高齢化による対応力低下による事故が発生頻度を高めている。
(3)問題解決のための方策、効果、必要な取組み
1)Pca化による人力作業の減少
効果:プレキャスト化により劣悪環境下での人力作業を減少、人間のエラー事故の低減やコンクリート工全体の生産性向上を図る。
取組:プレキャスト化や鉄筋のプレハブ化や機械式鉄筋定着工法の採用により、高所作業を省人化し安全性の向上と施工の効率化を図る。
2)ICT活用による人と機械の分離
効果:情報化施工ICT建設機械を使用し限られた人数での生産性の向上と、建設機械と人の輻輳作業の低減により安全性を向上させる。
取組:レザースキャナーをドローンに搭載して、人の入れない災害復旧箇所や急傾斜地の3次元データの作成を行なう。これを元に3次元での設計・施工方法の検討を実施し、人と機械の分離を図り災害を防止する。
また、維持管理においては、ロボットやセンサーを使用し3次元点検データによる可視化を行ない点検作業の縮減を図る。