R1/2019年 建設部門 必須科目 T−1

問題文

 我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き手の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上等により、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。こうした状況下で、社会資本整備における一連のプロセスを担う建設分野においても生産性の向上が必要不可欠となっていることを踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)建設分野における生産性の向上に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2) (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を」示せ。

(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するにあたり必要よなる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。


模範解答1  (答案形式)  添削履歴 1回 2019.07.16  科目 鋼コン 専門事項 橋梁設計


(1)課題

1)新技術を活用した維持管理の生産性向上

インフラは社会経済・防災を担うため、健全性の維持が必要である。しかし、労働力不足の中、技術者が直接作業を行う従来の調査・設計・施工手法を継続した場合、全施設への維持管理が困難である。このため、ICTやロボット等の新技術を活用し、労働力不足を上回る生産性の向上・効率化を図り、少人数でも維持管理ができる体制を構築することが課題である。

2)全体最適の導入

 この下の部分やや説明が飛躍していますので具体的に補足すると良いでしょう。

 現在の建設生産プロセスは、各自が分離・独立しているため、前後間の条件不一致や修正が生じやすく非効率である。よって、調査・設計段階から専門メーカーが関与するECI方式を導入し、三者協議の前倒し・事前確認・技術提案を実施する必要がある。

3)地元建設業者の多能工化で生産性向上・活力回復

地元建設業は、地域のインフラ、防災、雇用、経済を担う重要産業である。一方、維持管理・防災の需要が増加しており、新設工事減により縮小する地元建設業者にとって好機となる。しかし、資金・人材不足から土工等の特定分野しか対応できず、受注が困難となる。このため、産学官の連携による支援やマニュアル作成により、専門技能の幅を広げる多能工化を推進し、地元建設業者の生産性向上図り、活力の回復を促すことが課題である。

(2)解決案

解決策1)i-constructionによる維持管理の生産性向上

インフラの周辺環境・構造は、高所部位置する、または部材数が多く密集することが多く、点検・補修部材の干渉照査・施工等に時間を要する。そこで、以下の自動化・非人力化を図るi- constructionの推進で維持管理の生産性を向上する。

@点検でロボット・ICTを導入

UAVや部材に取付けたセンサーによるモニタリングで、近接目視点検の施設数・部材数を低減する。

A設計で3D図を導入

3D図で補修部材の干渉や施工可否の確認を容易とする。

BICT建機を導入

3D図と地形データにリンクしたICT建機を導入し、自動制御・施工を可能とする。

解決策2)アセットマネジメント(AM)へのAI導入

 AMは、健全性や予算等の多様な観点とデータ分析で最適な補修優先順位を策定する必要があり、作業に多くの時間を要する。そこで、AI導入で健全性診断データ・補修工法の耐久年数・付着塩分量・残寿命・交通量のビックデータを分析し、これら要素の点数化で橋の重要度と最適な補修優先順位を自動決定する。

解決策3)鋼橋の健全性自動診断システムの構築

現在の健全性診断基準は定量的で無いため、診断のばらつき補正や診断ミスの照査作業に時間を要する。そこで、構造設計データと損傷データが連動し、鋼部材の減厚・欠損に対する自動応力計算により、健全性の定量的評価・自動診断ができるシステムを構築する。

 (3)リスク・対策

@リスク

自動化の一辺倒では、技術者はシステムの操作法しか習得できず、部材の応力状態や弱点の把握等の設計的知識が不足し、技術力の低下が生じる。

A対策

・退職した熟練技術者を活用した技術指導等のOFFJTの充実を図る。

・設計的知識を要する維持管理資格を導入し入札条件に加える等の対策で、技術力の向上を図る。

(4)業務遂行に必要となる要件

・技術者の確保

 将来、作業の自働化が定着しても、新技術を活用する次世代技術者は必要である。しかし、インフラ整備の認知度が低く、かつ、3Kのイメージから若者の土木離れが進行している。このため、インフラツーリズムを通じた建設業の魅力のPRや長時間残業削減等の働き方改革、ワークライフバランスの充実により、若者の入職意欲を奮起させる必要がある

 ここは、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ、となっています。この2つの視点から、すなわち答えは2項目となります。また問題の要求は、「倫理、社会の持続可能性を推進せよ」ではなく、(2)の解決策でご自分が提案したことを遂行する上の留意点としてのこれら2項目です。



模範解答2  (簡易形式1)  添削履歴 5回 2019/11/9  科目 河川砂防 専門事項 避難計画


1.建設分野における生産性の向上について

(1)担い手確保

 近年、建設業界においては若手入職者がいない、建設業に魅力がない等の慢性的な課題がある。それは、建設業は労働時間が長い、休暇が取れない、賃金が低い、女性の建設業従事者の出産、育児とは両立できないイメージの為、復職しにくいが原因である。

(2)作業の効率化

 ICT活用、AIの活用により、建設業における生産性の向上が図られた。作業の効率化を図るが、それを扱える若手技術者が少ないのが現状である。ICT技術を取り入れるには費用がかかる、技術についての講習機会が少ない等の原因がある。

(3)技術継承

 建設技術者の若手従事者への技術継承が円滑に進んでいない事が課題である。建設技能労働者の作業段取り、方法、作業・安全に対する取組み方等に対する技術を継承する機会が少ないのが原因である。

2.作業効率化における解決策

(1)ICT活用  

 3次元設計データを設計から施工・維持管理まで活用して作業効率の向上を図る。測量にかかる時間及び作業員を半分以下、丁張りにかかる作業員の人員を約1/3に削減し、重機における作業性の向上により施工能力を約1.5倍に向上できる。

(2)コンクリート工の規格の標準化

 各部材の規格(サイズ)を多様化し標準サイズを増設し、定型部材の組み合わせを増やす事でプレキャスト化し現場作業の効率化ができる。鉄筋をプレハブ化、型枠をプレキャスト化する事により、型枠設置作業等を無くし工期短縮を図る。

(3)情報の共有  

 設計から計画・調査〜施工〜維持管理までのデータを共有する事により新たに図面を作成・数量算出等における時間を削減する事ができる。BIM/CIMモデルを活用し、鉄筋の干渉具合のチェックが容易になり、手戻りが無くなり効率的に作業ができる。

3.リスクと対策

(1)技術に頼りきる 

 ICT技術等で正確に施工ができる事がわかると、技術を頼りきってしまい、確認作業を行わないリスクが生じる。対策としては、技術に対する理解と理論を身につける必要がある。また、確認作業はダブルチェックを行い、手戻りをなくす。

(2)予測不能なエラーに対して対処できないリスク

ICT技術は機械であるために、決まった行動に対しての判断はできる。しかし、予測不能な事態の場合、その状況を対処できる判断力がない。対策としては、予測不能な事態が起きた場合は、機械が停止しアラーム等で状況を知らせ、人間が判断を行う事が必要である。最終的な判断を機械ではなく、人間自身が行う。

(3)安全がおろそかになるリスク

 ICT技術向上を優先させてしまうと作業の安全がおろそかになるリスクがある。対策としては、生産性を向上させるのに優先させる技術を選別し、優先して失った部分は計測装置等で安全性をカバーする。

4.生産性を向上するのに必要な要件

(1)作業効率化と共に消費燃費の向上

 社会持続性の観点からICT技術を取り入れ生産性を向上させる為の重機等の建設機械の消費燃費も向上させる。また、それに伴い使用する重機等、付属の建設機械等も含めて、排出ガスの抑制に努め規制・基準内に適合する必要がある。

(2)生産性を向上させる業務において安全最優先

 技術者倫理として、公共の安全を優先させる事が大切である。生産性を向上させると共に作業の安全性も向上させる必要がある。人への危害又は損傷の危険性が、許容可能な水準であり、安全性が法令、基準に適合する為の安全性を確保する。

(3)ICT活用業務に多様な人材の活用

 社会持続性の観点から生産性を向上させ、女性や高齢者等の活躍できる社会を実現させる。女性や経験の浅い技術者等がICT技術を使用することにより、作業を効率化できる。また、高齢者が活用できる作業を選定し、建設従事者の人材を確保する。



 模範解答2  (答案形式)  添削履歴 10回 2019.9.22 科目 都市および地方計画 専門事項 交通計画


(1)-1ロボットで少人数施工

労働人口の減少を補完できるよう、下向きや上向きなど固定した体勢で作業者に負担を与える作業をロボットが施工する。

自動で鉄筋を結束するロボットや、自動で天井ボードを貼る機械など無人化ロボット等を活用することで人手作業を減らして少人数で施工する。

(1)-2生産過程のサプライチェーン化で短工期化

現場製作を減らして、工事用部材を効率良く作って配送するサプライチェーンを活用する。

プレキャストコンクリートのようにクレーン設備等が充実した工場で効率よく部材を作り、主に手作業で作る現場製作品を低減する代わりに出荷部材の運搬数量を増やすことで、全体工期を短縮する。

(1)-3スマート技術で人手減らしインフラ維持

これまで専門職の経験に頼ってきた業務で画像解析等を使った機械学習におきかえることで、人手を低減できるスマート技術を活用する。

ICT を活用した点検台帳の普及や、 UAV を活用した 画像データでの点検で人が行ってきた作業をスマート技術に置き換えインフラを効率的に維持する。

(2)課題:生産のサプライチェーン化で工期短縮

@解決策:部材を適切な時期に納入し作業効率向上

部位ごとに仕様が異なるプレキャストコンクリート等を適切な時期に納入するジャストインタイム方式で、狭い現場に種類や時期を考慮しながら資材を搬入し、作業効率を向上する。

A解決策:施工BIMでのモデル合意で製作期間短縮

関係者間で施工前にBIMを使った調整会議のBIMモデル合意を図ることで、部材製作のための意思決定を設計・施工レベルで短縮しつつ、決定後の変更等工事の手戻りを無くして部材等の製作期間を短縮する。

(3)リスクと対策

@リスク:中小企業の衰退

サプライチェーンによるジャストインタイム方式やBIMの施設整備には供給元の費用負担が大きいため、主に資金力のある大手企業で設計から製造まで内製化されている。

その結果、大手企業の流通だけが拡大し、企業間格差が広がって建設業界を下支えしている中小企業が衰退する。

@対策:BIMオブジェクトのプラットフォーム化

中小企業がサプライチェーンの商流に入れるよう、標準化された建材等を製造・販売できるBIMオブジェクトのプラットフォームを作ることで、中小企業が介入できる市場を構築することが重要である。

Aリスク:人依存型の供給で出荷元停止

工場製作等が充実すると、オーダーメイドタイプの複雑な製品の受注が増えて、従来の人依存型の生産技術だけでは出荷元が対応できず、出荷停止が発生する。

A対策:BIMデータ一元管理の生産体制構築

BIMのサプライチェーンマネジメントを導入し、仕様等の管理をBIMデータに集約化することで、複雑化した製品にも対応できる生産体制を確保することが重要である。

(4)(1)〜(3)を遂行するため必要な要件

要件@クラウドプラットフォームでデータ一元管理

技術者としての倫理の観点から、データの不正利用や情報漏えいを防止できるよう各方面からのクラウドプラットフォームへのアクセスを視覚化した上で、設計、製作、施工段階のデータを一元管理する。その結果、様々な関係者同士が確実性の高い情報をタイムリーに交換できるため、手戻りを低減できる。

要件ABIMデータによる部材プレハブ化

社会の持続可能性の観点から、関わる人員を低減し、無駄の無い生産サイクルを構築し、イニシャルコストを低減できるようBIMデータで作成した部材をプレハブ化する。その結果、一度にたくさんの部材を製作できるため、設計・製作・施工期間を短縮できる。