H28年 機械・機械設計 Ⅱ−1−1問題 模範解答と解説

問題文

 機械や設備の故障率は時間とともに変わる。時間と故障率の関係を故障曲線と呼ぶ。故障率の定義を述べ、故障曲線の特徴を述べよ。

模範解答

(1)故障率の定義

 生産した製品の故障する確率として、以下の式で定義される。故障率=(故障した個数)÷(生産した個数)

(2)故障曲線の特徴

 故障率の時間経過を図に示すと、生産後の初期、中期、後期においてそれぞれ下降、水平、上昇するため、そのトレンド形状からバスタブカーブと呼ばれている。

①初期生産後は、故障率が高い。これは、製造ばらつきに起因する故障が発生することを示す。はんだ付けやねじ止めの不備等が検出され、次第に出尽くして減少する。高い信頼性が要求される部品では、初期故障除去として熱サイクル試験や振動試験を実施し、不良品が流出しないようにする。

②中期故障率が安定した状態である。一般の製品はこの状態で使用される。

③後期故障率が高くなる。これは、使用中の熱や振動のストレスにより、部品の一部が消耗することにより劣化が進行し、故障が増加するものである。時間と共に増加してやがて機能的に終末を迎える。

解説

 この問題は、故障率の定義とその特徴を問いかけるもので、バスタブカーブが思いつけは解答は難しくありません。用語の定義や原理を簡潔に表現すればOKです。

 技術士の問題では、どの様に答えるか、何を答えるかかは受験者の自由裁量に任されています。当研究所の指導ではどの様な場合でも、その問題の背景を考慮してベストに応えるように指導しております。このため1、2行の短い問題文であっても、出題者の意図を正しく捉えて的確な回答が可能です

H28年 機械・機械設計 Ⅱ−1−4問題 模範解答と解説

問題文

 コンカレント・エンジニアリング・デザイン(同時進行設計)について説明し、その期待効果について述べよ。

模範解答

(1)コンカレントエンジニアリング

 デザインの概要製品開発において、製品への要求仕様を達成するための機能性能設計部門と製造に関する生産設計部門が集まり、3Dモデルや模型を使用しながら、製造上の課題や解決策を協議し、同時に設計を進めていく手法である。

(2)期待される効果

 開発初期段階で品質の作りこみを行うことができ、品質、コスト、納期のバランスの取れた製品が設計できる。効果として以下の3点を示す。

①開発期間の短縮 製品設計と同時に生産設計を行うため、従来のように設計完成後に生産設計を行う場合と比べて、早い段階で製造上の問題点が検出でき、設計の手戻りを防ぐことができる。

②生産性の向上 生産部門では製造上の課題が把握できるため、製造用の設備や治工具を導入することができるため、効率的な製造に向けて準備ができる。

③不具合防止 設計部門と生産部門にて、過去の不具合を参照して相互に設計の確認ができ、不具合の再発を防止できる。を同時に実施する。 

解説

 (1)はコンカレントエンジニアリングデザインの同時進行性について問われていますので、同時に設計を進めることの必要性やその方法論について説明します。

 (2)は期待される効果ですから、①開発期間の短縮、②生産性の向上、③不具合防止といった機能を表す言葉で3つを表現します。このように答案作成は出題者の意図に対して一つ一つ丁寧に答えていくことが肝要です。試験では出題者の意図に沿った答えが前提条件であり、逆にそうした意図を無視して解答すると、内容的に正しくとも、答えが解答でなくなってしまい極端な場合はC評価を受けることも稀ではありません。

H28年 機械・機械設計 Ⅱ−2−1問題 模範解答と解説

問題文

近年「モデルベース開発手法」が注目されている。これは、設計段階において、システムの各部品を物理モデルで表し、さらにそれらを結合し計算機シミュレーションによって性能設計を進め、上流段階での品質を確保しようとするものである。あなたが責任者として、ある製品をモデルベースで開発を進めることになったとし、下記の内容について、記述せよ。

(1)開発する製品例を1つ挙げ、その技術的課題と、そこで用いる物理モデルを2つ挙げよ。

(2)(1)の2つの物理モデル計算によって確認されるであろう製品の性能や品質を述べよ。

(3)(1)の物理モデル計算によっても評価できない製品の性能や品質とその対策について述べよ。

模範解答

(1)開発する製品

 航空機に搭載する電子機器とする。形状は、信号処理や通信用の機能を有するプリント基板を、金属シャシに固定して構成される筐体である。プリント基板上にはIC等の電気部品が搭載されている。

(1-1)技術的課題

①航空機離着陸時の高い振動レベルに耐える強度を有すること。

②電子部品の発熱が放熱面で排熱され、部品の温度を使用基準温度以下に保てること。真空中であるため、伝導や輻射の熱伝達により排熱する。

(1-2)物理モデル

①剛性、強度設計用の構造解析モデル 各部の寸法形状とヤング率、ポアソン比、物質の密度等を入力する。ねじ止め部の拘束条件は、実機を参照して並進や回転の自由度を決める。

②熱設計用の熱解析モデル 各部の温度を算出するため、熱伝導率、熱容量、発熱部の位置、発熱量を入力する。ねじ締結面等の接触部での熱抵抗は、実験で検証した値を使用する。

(2)確認される製品の性能や品質

①構造解析モデル

 剛性設計として各部の固有振動数を算出して、他の機器と共振しないことを確認する。強度設計として、航空機離着陸時を想定し、シャシや電気部品のリード等に発生する応力を算出し、破損しないことを確認する。

②熱解析モデル

 使用環境における電気部品の最高温度を算出する。部品の使用基準温度以下であるか判定し、使用寿命を算出する。また、各部の温度差によって生じる変形や応力を算出し、はんだ付け部の疲労寿命を算出する。

(3)評価できない製品の性能や品質と対策

 錆や腐食等の化学的な変化による性能低下や損傷については、評価できない。これについては、コーティングや塗装で保護するとともに、サンプルでの代替実験により使用可能な期間を評価する。

解説

 「モデルベース開発手法」に関する応用問題です。問題の前提条件として

  1. 計算機シミュレーションによる性能設計
  2. 上流段階での品質を確保する
  3. 責任者として開発を進める
  4. ある具体的な製品を前提にモデルベース開発設計を行う

といった条件が与えられます。

 1〜3の問いの解答を、上記前提条件に沿って行うため、最初に骨子を書いてストーリーをチェックします。自分で書いて自分で修正する、こうした修正活動によって合格率が高まります。当講座の指導ではこの様な練習を添削のたびごとに行っています。

H28年 機械・機械設計 Ⅲ-1問題 模範解答と解説

問題文

失敗学」では、起こってしまった失敗に対し、物理的・人為的な直接原因と、背景・環境・組織を含む根本原因を究明する。それらの原因分析から教訓を得て、同じような失敗を繰り返さないように対策を講じる。また、得られた知識を社内の他部門や公共に対して公開することで水平展開をはかる。すなわち①原因究明、②失敗防止、③知識配布が「失敗学」の核となる。既存製品に不具合が発生し、あなたが原因究明と再発防止の責任者であるとして、次の設問に答えよ。

(1)強度不足など製品不具合の直接原因の例を1つ挙げ、それに至る根本原因として考えられるものを多面的に述べよ。

(2)(1)で述べた根本原因のうち、あなたが重要と考えるものを1つ挙げ、再発防止を図るための提案を示せ。

(3)(2)の提案だけでは、防止しきれないリスクあるいは限界について説明せよ。

模範解答 (簡易答案形式)

(1)製品不具合の直接原因とそれに至る根本原因

 製品不具合の直接原因:自動車搭載電子機器の筐体が走行時の振動にて破損。振動入力により金属シャシ部に発生した応力が、素材の強度を上回ったことによる。「シャシの強度不足」が直接原因。

根本原因①:構造設計時のCAE構造解析において、筐体結合部のモデルが現実の部品の脆弱部を表現できないか、または発生する応力を過小に評価する。

根本原因②:材料強度データの取得法に誤りがあり、実力より高い強度を有すると計測し、その強度で設計した。

根本原因③:コスト削減、軽量化のため、板厚を極限まで薄くした結果、製品のばらつきの範囲が大きくなり、部材によっては厚さが不十分となり強度が不足

(2)重要な根本原因と再発防止の提案

 重要な根本原因:CAE構造解析のモデル化不備による発生応力の見積もり誤り

再発防止:①実機での試験データを元に、筐体結合部を含めた解析モデルを検証しどこが脆弱部となるか把握して、そうした問題箇所を正確にモデルをベースとして解析を行い、設計に反映する。

②材料力学、振動工学の公式に基づく理論計算により、CAE解析結果が非現実的でないか妥当性の確認を行う。

③一体成形を採用し結合部をなくす設計とし、解析と合致しやすい構造を採用する。

(3)防止しきれないリスク

①FEM解析において、要素分割サイズや要素の種類の設定によりに応力が過少に算出され、実際の製品では素材強度を上回る応力が発生し、破損につながる。

②ねじ止め、接着等の組立状態のばらつきにより、振動共振時の応答倍率が大きくなり、過大な応答が発生し、製品の破損につながる。

③設計者の勘違い、計算ミスにより応力計算値が実際より低く算出され、破損。

解説

 この問題は、失敗学を題材としてその適用方法を活用法と限界を探る関する問題です。問1では強度不足を取り上げ具体例を1つ挙げて根本原因を多面的に分析することを求めています。技術士Ⅲ問題での一般的傾向ですが、まず最初に分析を行い対象とするケースを特定する問題形式となっています。具体的な事例を特定すると、それ以降は一般的見識では答えることが出来なくなり、個別の応用力が試されるということです。

 問2では、問1で述べた根本原因のうち重要と考えるものを1つ選んで再発防止柵を考えるというものです。ここで正解するためには都市で根本原因を正しく分析しておく必要があります。上記模範解答の(2)①は(1)で述べた根本原因に対応しています。③の接合部をなくすという対策も弱点を意識したものであり根本原因につながるものであると考えられます。

 一方、②は材料力学、振動工学の公式に基づいて検討するとありますが、これは予測式の基本的なエックに過ぎず、(1)で問題視していることの解決には直接的には対応していません。本来はこうした事までチェックして解答内容が一貫性があるようにまとめなければなりません。

 問3では、防止しきれないリスクあるいは限界について問われており、これは(2)で提案した内容についての反省や評価を求めていると捉えていいと思います。すなわち技術士の提案は問題点を解決するだけではなく、それによって発生する新たな影響や問題についてもリスクマネージメントをしなければならないという責任を負うことを意味しています。なぜこのような問いが行われるのかそれはかつてトンネル天井が崩落事故に見られたような建設時点で思いもよらないリスクが存在することを目の当たりにしたからです技術士はこうした一般的な市民や管理者では予見不可能なリスクまで予測しなければならないと言う責務を表しています。

 そして、このような問題として問われる理由は普段そのようなリスクを意識して対処している、すなわち技術士としての使命感を持ってリスクマネジメントに当たっているか、ということが問われているわけです。文部科学省としては具体的にそのような場面を設定して、念入りに技術士にふさわしい使命感を試していることになります。このようにコンピテンシーの試験では、答えを直接的に求めるとは限らず、出題者の意図を読みとれなければ回答が不適切になってしまう危険性もあり注意を要します。当研究所ではこうした出題者の意図を的確に捉えるように毎回音声ガイドによる解説を行っております。

H28/2016年 機械・情報精密 Ⅱ−2−2 問題 模範解答と解説

問題文:情報・精密機器の開発において、初期の量産過程で不良率が高止まりし、歩留まりが向上しない場合がある。あなたがこの不良率改善の技術的対策を統括する立場にあるとして、以下の問いに答えよ。

(1)不良率改善の技術的対策をするために、調査・検討すべき項目を3点述べよ。

(2)(1)で挙げた項目から、最も重要であると考えられる項目を1点挙げ、それによって明らかとなる不良の原因の例と対策を具体的に述べよ。

(3)(2)の業務を実際に進める際に留意すべき事項を述べよ。

模範解答1 (簡易形式1)  添削履歴 9回 2019/07/4   専門事項 精密機械技術開発

1.調査・検討すべき項目

1)製造装置の条件だしの的確さ

2)作業者の習熟度

3)各工程後の検査項目の的確さ

2.「製造装置の条件だしの的確さ」について不良原因例とその対策

部品の脱落不良が発生した例を挙げる。

あるべき接合状態とのかい離部分に寄与する製造装置の条件だしを確認する。

例1:ねじが緩み脱落したのなら、締め付け装置のトルク条件を確認する。

例2:接着剤の接合強度不足に対しては、接着剤の性能を発揮できるまでかくはんがなされているか、かくはん装置の条件を確認する。

例3:リフローはんだなら、リフロー炉の温度条件を確認する。

3.留意事項

①製造装置と結果物を測定する測定装置をB2B化、自動化し、条件出し時間を短縮する。例:ボルト締め付け装置と軸力測定装置のB2B化。

②複数の条件パラメータのある製造装置は実験計画法により条件出しを行い時間短縮する。例:かくはん装置の自転回転数、公転回転数、時間の条件出し。

③例:バッチ処理装置の状態が1バッチ内で均一になり、品質が均一になる様に条件出しをする。例:リフロー炉内の温度が炉口、炉奥など場所によらず均一になるように、ヒータやブローの条件出しをする。

H28/2016年 機械・情報精密 Ⅲ−1 問題 模範解答と解説

III-1: 製品開発に携わる技術者にとって、製品が市場でどのような競争力を持っているかは重要な問題である。常に製品競争力の向上に努めないと、たとえ現時点では市場で優位性を持っていても、いずれ競争力を失ってしまう。このような状況を考慮して情報・精密機器の開発責任者として以下の問いに答えよ。

(1) 対象とする情報・精密機器を1つ選択し、その機器の製品競争力を決定する主な要因を多面的な観点から3つ述べよ。

(2) (1)で挙げた3つの課題から、最も重要と考える課題を1つ選び、それに関する革新的な技術的提案とその効果を示せ。

(3) (2)の提案により生じるリスクについて説明し、その対処法を述べよ。

模範解答1 (簡易形式1)  添削履歴 1回 2019/06/28   専門事項 精密機械技術開発

(1) 「手術支援ロボット」の製品競争力の決定要因 

 手術支援ロボットは低侵襲アプローチが可能で、患者体表の複数の切除孔(ポート)からロボットアームを体内に挿入する。体内の様子をモニタで表示し、ロボットアームで外科医の精密な手技を再現することで、外科手術を支援する。なお、低侵襲とは、手術による患者身体への負担をできるだけ低減することを指す。

① ポート数の減少: 出血が少ない等の患者身体の負担低減と、従来の手術支援ロボットで課題であった体外でのアーム同士の干渉の低減が必要。

② 治療の自動化機能: 若手医師であっても、自動的に縫合する機能など、熟練医師と同等レベルで治療を代替する自動化機能が必要。

③ 手術時間の短縮: 操作性が良く、スピードや動きに無駄がない等が必要。

(2) 課題「① ポート数の減少」の革新的な技術的提案と効果 

(2)−1. 技術的提案: 体外からMRI患者身体の3Dデータを取得し、AIによる治療計画・支援に基づき、VRで対照しながら体外からの集束超音波によりポートなし(非侵襲)で手術する。

  • 観察: 予め取得した画像と対比しながら、MRIと超音波の画像で患部を観察。
  • 認識: 2つの画像に基づいて、AIがロボットを位置決めする。VR表示する。 
  • 治療: 予め計画した条件で治療用の集束超音波を照射し、照射前後の画像差異から治療成否をAIが判定する。

(2)−2. 効果: 切開不要により、次の効果が期待できる。

  • 時間のかかる縫合が不要となり、出血もなく、感染症の心配も要らない。
  • 専用のディスポ処置具が不要となり、バックヤード業務を削減できる
  • AIにより手術を半自動化できるため、医療品質を底上げ、均質化できる。
  • 日帰り手術が可能となり、病院の経営効率が向上する。

(3) 提案で生じるリスクとその対処法

  • 臨床情報の不足によるAI誤診断による医療インシデントのリスク: AI判断に必要な情報の質・量を予め設定。手術情報不足のとき、不足内容のアラートを出す。
  • 通信遅延による医師のVR酔いが原因の医療インシデントのリスク: VR生成に必要な高速大容量通信、低遅延の実現のため、第5世代移動通信システムを導入。

H28/2016年 機械・情報精密 Ⅲ−2 問題 模範解答と解説

III-2: IoT (Internet of Things)が普及する前段階として、社会に存在する多くの機器が広義の情報機器となり、M2M (Machine to Machine)のコンセプトに基づく機器間通信が一般的になり、多くの機器が統合的に機能するようになると予測されている。M2Mにより情報化した機器を例に、以下の問いに答えよ。

(1) これまでにない新たな機器へのM2M導入時に留意すべき課題を多面的な観点から3つ挙げ、その内容を述べよ。

(2)(1)で挙げた3つの課題から、最も重要と考える課題を1つ選び、それを解決するための具体的な技術的提案とその効果を示せ。

(3)(2)の提案により生じるリスクについて説明し、その対処法を述べよ。

模範解答1 (簡易形式1)  添削履歴 1回 2019/06/22   専門事項 精密機械技術開発

(1) 「生産工場」へのM2M導入で留意すべき課題

(1)-1.シームレスな機器の接続: M2Mで高度な制御が求められる。導入コストの関係上、工場では、既に導入済みの機器をM2M化する場合がある。機器が古くデータ出力や、ネットワーク接続が不可能な場合もある。データ取り出し装置の後付けや出力信号の変換等、異なる規格の機器同士を如何に接続するかが課題。

(1)-2.通信速度: M2Mでは、膨大なセンサデータの送信を行う。通信遅延は他の機器の動作に影響するため、通信速度を低下させないことが必要。

(1)-3.省エネ化: M2Mで通信電力も増加する。通信頻度低減が必要。

(1)-4.無線化に伴うセキュリティ確保: 利便性の観点で機器接続の無線化が進む。無線通信によるサイバーリスクに備え、暗号化等のセキュリティ担保が必要。

(2) 「シームレスな機器の接続」の課題解決の技術的提案と効果 

①技術提案: レトロフィットで、稼働中の機器を活用したM2M環境を構築する。

(i) アナログ出力の遠隔監視: アナログ出力の一例として、パトライトを挙げる。Webカメラでパトライトを撮影し、画像処理によってRGBの点灯をデジタル化する。色別の点灯データに基づき、コントローラが装置を遠隔制御する。

(ii)通信機能のない装置の部品、モジュール等を通信機能付きのものに交換する。

(iii) USB、RS232C、イーサネット等をGPIBに統一化し、Bluetoothで無線化する。

②効果

(i) 機器の稼働停止や交換をすることなく、後付けでM2M対応できる。

(ii) ネットワークを介して他の機器と組み合わせた制御が可能。

(iii) 古い機器にも搭載されているGPIBを介して無線化することで、

(3) 提案で生じるリスクとその対処法 

・レトロフィットでは、基本的に、旧来からの装置に後付けで機能を追加するため、以下のリスクがある。

①消費電力が増加し、ランニングコストが増えるリスク: 対処法は、追加するセンサとして「Normally off」タイプを優先的に採用する。または、エネルギーハーベスティング技術も合わせて導入する。

②新規設備を導入する場合と比較して、低効率/低性能となるリスク: 対処法としては、ボトルネックとなる装置の新規導入を検討する。

③レトロフィット後に装置本体が故障して投資回収できないリスク: レトロフィットを恒久的対策とせず、新規設備導入の計画も併せて検討する。

H28年 電気電子部門・電気設備 Ⅰ-1問題 模範解答と解説 (ケーブルを使用した地中電線路)

問題文

 電線にケーブルを使用した地中電線路の施設方式を挙げ、その中から2方式を選び、その方式の概要(構造、適用場所、所要性能等)と施設上の留意点を説明し、それぞれの特徴を比較せよ。

模範解答

1.管路式

1)管路式の概要

  • 熱伸縮を吸収できる管路構造
  • ケーブルの引入れ・引抜のマンホール
  • 重量物の圧力を受ける箇所も敷設可能

2)管路式の施設上の留意点

  • 水が浸入しにくい構造にする
  • 地震による管路の突き抜け防止
  • 管路切断防止用の明示措置

2.暗渠式

1)暗渠式の概要

  • 線間の余裕により送電容量低下少ない
  • 照明、換気設備があり保守点検が容易
  • 架空電線路の地中化に多く利用される

2)暗渠式の施設上の留意点

  • 保守用照明、換気設備の設置
  • 排水のための水勾配の設定
  • 関係者以外の侵入に対する防護措置

3)それぞれの特徴の比較

  • 暗渠式のほうが将来の増設が容易
  • 暗渠式のほうが保守点検が容易
  • 暗渠式はシールド工法が利用可能

H28年 電気電子部門・電気設備 Ⅰ-2問題 模範解答と解説 (コージェネレーションシステムの電主運転)

問題文

コージェネレーションシステムにおいて電力を主とした運転方式には、ピークカット運転、ベースロード運転、負荷追従運転の3種類がある。そのうち2種類を選び、各々の概要、特徴および適用を述べよ。

模範解答

1.ピークカット運転

1−1 ピークカット運転の概要

(1)需要ピーク時に電力を供給

(2)発電に伴う排熱を他の熱機器に利用

1−2 ピークカット運転の特徴

(1)発電設備への投資を低減させる

  (2)契約電力引き下げ効果

1ー3 ピークカット運転の適用

  (1)蓄電設備と組合せ需要急増に備える

  (2)電力使用ピークの時間帯に稼働する設定

  (3)重要度の高い機器に優先的に供給

2.ベースロード運転

2ー1 ベースロード運転の概要

  (1)負荷変動に関係なく一定出力で運転

  (2)最小需要電力を高効率に継続的に発電

2ー2 ベースロード運転の特徴

  (1)設備コストは高いが高効率運転可能

  (2)負荷追従性が悪い

  (3)ピーク効率に近い値で継続的に運用

2ー3 ベースロード運転の適用

  (1)排熱利用したコンバインドサイクル発電

 (2)夜間の排熱を蓄熱式暖房に利用

H28年 電気電子部門・電気設備 Ⅱ-2-2問題 模範解答と解説 (総合的な雷保護システム)

問題文

一般のビルを建設するに当たり、建物や人命を雷の被害より保護する建築物などの雷保護システム(外部雷保護システムと内部雷保護システム)と、建物内の電気及び電子システムの雷保護対策(雷サージ低減対策とSPDによる雷過電圧制御)から構成される総合的な雷保護システムを、電気設備の責任者として設計するにあたり、下記の問いに答えよ。

(1)     検討する雷保護システムや雷保護対策のうちから2項目をあげ、具体的な内容を説明せよ。

(2)     各業務を進めるにあたり、留意することを挙げ説明せよ

模範解答

(1)

1)接地システム

  • 等電位ボンディングによる電位均等化
  • 引き下げ導線と機器電源線の離隔
  • 回転球体法による保護エリアの設定

2)サージ防護対策

  • サージ侵入経路ごとのSPD設置
  • 絶縁トランスによる電気的絶縁
  • 鉄筋から誘導される雷サージ抑制

(2)

1)留意事項

  • 直撃雷、誘導雷に応じたSPD設置
  • 被保護空間を電磁的影響度に応じて分割
  • 種類、需要度に応じた保護レベルの設定
  • SPDと電子機器の連接接地

H28年 電気電子部門・電気設備 Ⅲ−1問題 模範解答と解説 (集合住宅における感電保護)

問題文

 電気設備に求められる安全・安心環境の構築を阻害する要因として、過電流、過電圧、感電など多くの事項が考えられる。これらの事項のうち、地絡などに起因する感電は、甚大な影響を与えることから、その対策は重要な事項である。ことに、老若男女が起居する集合住宅においては、感電保護は最も重要な事項の1つであることから、慎重な対応が求められている。

(1)集合住宅における感電保護として電源の自動遮断による方法を選定した場合において安全、安心環境の構築に当たりその阻害要因になる事項を列挙せよ。

(2)上述した阻害要因事項について、あなたが重要と考える事項を2項目選定し、それを解決するための技術的提案を示せ。

(3)あなたの技術的提案がもたらす効果・リスクを述べよ。

模範解答

1.安全安心の阻害要因

1-1内部の絶縁機能が雨水で劣化する

 ベランダ等の屋外に設置した洗濯機などの電気機器の絶縁抵抗値が雨水により低下し、金属部分に触れた時に感電する。

 昨今の住宅事情の変化により、本来は室内で使用するはずの洗濯機などの電気製品を室内ではなく、ベランダなどの屋外において使用する場合があり、本来接続されるはずのアース線が未接続だった場合、電気製品本体に絶縁不良が発生すると使用する人に感電の危険性が発生する。

1-2床面が濡れた状態で電化製品を操作

 風呂の残り湯を洗濯に用いる際、ポンプを使って洗濯機に移動する時に風呂場の床面が濡れている場合、絶縁抵抗が低下したポンプに触れ感電する。

 洗濯機に風呂の残り湯を使用する場合がある。しかし、使用者が水の移動に使用するモーターを充電した状態で持って風呂場に移動した場合、床面が水分で濡れていると使用者に感電の危険性が高まる。

1-3コンセントに挿したままの電気器具を子供が触る

 乳児は無意識に自分が手にした物を口に持っていく場合が多く、電気器具の充電部や延長コードの差し込み穴の部分を舐め、唾液により感電する場合がある。

 乳児は物を口で確認しようとするため、乳児が手を触れる場所に電気製品や電気器具を置く事で危険性が高まる。

2.技術的提案

2-1屋外の電気製品は外装を電気伝導度の小さい樹脂製にする(1-1に対応)

 電気製品の人が接触する部分を樹脂製に変更することで、直接金属部分に触れることを防ぎ使用する人の感電を防止する。

 屋外に設置した電気製品で感電の危険性を除去するため、アース線を確実に接続する以外に接触する部分を樹脂製にすることで、雨に濡れた状態でも感電を防止することが可能になる。

2-2ポンプの電源をDC12VからDC6Vに降圧(1-2に対応)

 使用する電圧の降圧により使用電流を下げ、感電の危険性を減少させ、風呂の床が濡れた状態でもポンプを使用中に漏電による感電を防止する。

 洗濯機の水の移動に用いられるポンプは、DC12Vが主流だが、風呂場での使用のため、水分による感電の危険性がある。このため、電圧の低いDC6Vのポンプを使い使用電流を下げ、感電の危険性を低下させる。

3.技術的提案がもたらす効果、リスク

3-1提案1:外装を樹脂製に

3-1-1効果

 屋外で使う電気製品の外装を樹脂製にすることで使用者が触れる部分の絶縁抵抗を高く保つことが可能となる。これにより感電の危険性を低下させることが可能となる。

使用者が電気器具を使用する際、感電を防止する目的の手段として非常に有効である。

3-1-2リスク

 樹脂製の採用により外装の絶縁抵抗は保てるが、洗濯機の場合、洗濯機内部の洗濯槽には水分があり、絶縁抵抗が低くなる恐れがある。使用者が脱水後の洗濯物を取り出す際にモーターや配線からの漏洩電流により洗濯機内の濡れた洗濯物に直接触れた際に感電する恐れがある。

 3-2提案2:ポンプ電源をDC6Vに

3-2-1効果

 使用電圧をDC12VからDC6Vに降圧することによって使用電流を小さくすることが可能となる。仮に絶縁抵抗が低下した場合でも使用者の感電の危険性を非常に低くすることにより安全確保する事が可能となる効果がある。

 3-2リスク

直流が漏電すると、付近に人がいた場合、漏電による危険性が発生するばかりでなく、直流による漏電は地中に漏れ続けると、風呂場の床面にある水を通して通電し、地下にある抵抗の小さな金属製の電線管や水道管に電食が発生し、腐食を発生させる恐れがある。

H28年 電気・電子部門、情報通信 Ⅱ−1−2

問題文

 カーナビゲーションシステムなどで広く利用されているGPSシステムについて、その原理を説明せよ。またGPSの特徴を2つ以上述べよ。 

模範解答1 (答案形式)

1. GPSの測定原理の説明

 周回衛星(6軌道に30機程度が配置)より発せられた電波を任意の地点で受信し、衛星からのメッセージ(送信の位置と時刻など)を元に、光速が一定であることを利用して地球上の位置を測位するものである。

 測位はGPS衛星と受信機が共に正確とみなせる時計がある場合、送信時刻(測定値)Tと受信時刻t差に光速cを掛けると距離が得られる。GPS衛星iの位置座標を(Xi,Yi,Zi)、受信機の位置を(x,y,z)とすれば、c^2(T-t)^2=(Xi-x)^2+(Yi-y)^2+(Zi-z)^2の関係式と受信したメッセージからGPS衛星の位置を得る。受信機の位置を示す3つの変数(未知数:x,y,z)を得るためには最低3つの連立方程式を解く必要があるため、3衛星から信号を受信する。

 通常は受信機の時刻tの精度が悪いものとし、これも未知数として4衛星から信号を受信して計算を行っている。

2.GPSの特徴:

  • 衛星に搭載された原子時計はRbまたはCsを用いており、非常に精度が高い(誤差:10^-12程度)
  • 衛星電波の到来が遮蔽物等により不安定になる場合、測位の精度は低下または不能となる。
  • 変調方式にSS方式を採用し、単一周波数で複数の衛星信号を受信できることからハードウェアを単純かつ安価に製造できる。

模範解答2 (簡易形式1)  添削履歴 2回 2019/3/9   専門事項 交通運行無線

1GPSの測位原理

 GPS衛星が中心でGPS衛星・GPS端末間の距離が半径の球面を3個導出し、その交点をGPS端末の位置として測位する。衛星・端末間の距離は、信号発信時刻と受信時刻差を用いるレンジングにより算出する。

2.GPSの特徴

①カバーエリア

高度約2万kmで約30基のGPS衛星が飛行しコンステレーションを構成しており、地球上全域とカバーエリアが広い。

②SS変調を用いた送信

GPS衛星からの送信電波はSS変調され、広いバンド幅による低電力な送信が可能な上、秘匿性が高い。

③GPS受信機の時刻精度

原子時計を用いる衛星に対し、クオーツを用いる受信機は時刻精度が低い。よって球面交点算出において補正を行う。

④GPS電波伝搬遅延

GPS衛星が低仰角の場合、電離圏や対流圏における電波特性変化による電波伝搬遅延が大きい。この際、DGPSを用いて遅延補正を行う。

模範解答2 (簡易形式2)  添削履歴 1回 2019/3/11   専門事項 交通運行無線

1.GPSの測位原理

 測位点の3次元座標を未知数と考え、3個のGPS衛星の座標を中心とする球面方程式を導出し、その解をGPS端末の位置として算出する。なお、球面の半径として用いる衛星・端末間の距離は、信号発信時刻と受信時刻差を用いるレンジングにより算出する。

2.GPSの特徴

①カバーエリア

 高度約2万kmで約30基のGPS衛星が飛行しコンステレーションを構成しており、地球上全域とカバーエリアが広い。

②SS変調を用いた送信

 GPS衛星からの送信電波はSS変調され、広いバンド幅による低電力な送信が可能な上、秘話性や秘匿性が高く、同一バンドの多重利用が可能である。

③GPS受信機の時刻精度

 30万年に1秒以下の誤差という高い正確性を持つ原子時計を用いる衛星に対し、クオーツを用いる受信機は時刻精度が低い。よって、測位において受信機時刻を未知数とするため4個目の球面を導出し、球面交点算出において補正を行う。

④GPS電波伝搬遅延

 GPS衛星が低仰角の場合、電離圏や対流圏における電波特性変化による電波伝搬遅延が大きい。この際、DGPSで基準局からFMにて送信される誤差補正情報を用いて遅延補正を行う。

H28年 電気・電子部門、情報通信 Ⅱ−1−4

問題文

 LTEで導入されている、ネットワークと1つの端末の間で複数のコンポーネントキャリアを結合して、あたかも1つの無線キャリアのように利用するキャリアアグリケーション(CA)の実現形態、2つ以上の技術的特徴、通信事業者から見た利点およびユーザーから見た利点をそれぞれ述べよ。 

模範解答1 (答案形式)

1.CAの実現形態と技術的特徴 

1)実現形態:

 現行のLTE(4G)方式で導入されている形態はキャリアの採用するシステムにより異なるが、一例として基地局から端末に向けた下り回線において、800MHz帯(最大:75Mbps)と2GHz帯(最大150Mbps)の周波数帯域を束ね利用し、高速なデータ通信を提供している。

 2)技術特徴:

 イベント会場等において、基地局が一度に収容するユーザー数が多数になる場合がある。その際は、適宜CA機能をソフト的にON/ OFFさせることで周波数利用効率を高い状態に維持することが可能である。

2.通信事業者およびユーザーから見た利点

1)通信事業者側

 帯域をまとめて使うことにより、分割損が減りユーザーに対するスケジュール管理に余裕ができる。周波数利用効率が高められ、従来よりも多くのユーザーを収容が可能となる。

2)ユーザー側

 電波が安定して到来している場所では通信速度が向上する。一方、弱電界であっても、従来であればほとんど通信が出来ないと感じていた場所でも通信が可能になるなど体感的に利便性の向上が判る。  

模範解答2  (簡易形式1)  添削履歴 1回 2019/3/7   専門事項 交通運行無線

1. CAの実現形態

 LTEに割当てられている周波数帯は700900MHz帯、1.5GHz帯、1.7GHz帯、2.1GHz帯等複数の周波数帯域に分かれている。その上、これらの周波数帯は3Gと並行運用しているため、連続した周波数帯域を確保しにくい。よって、各キャリアでSSやPBCHを同期させることでCAを実現している。

2.技術的特徴

 1)キャリア帯域幅

  通常のLTEの20MHzと比較し、CAにより100MHzと帯域幅が大きい。

 2)通信速度

  例えば2GHz帯の400Mbpsを1キャリア、3.5GHz帯の279Mbpsを2キャリアのCAで約1Gbps(958Mbps)と、通常のLTEの数百Mbpsと比較し高速である。

3.通信事業者から見た利点

  • 既存割当周波数帯域で対応可能のため、CA非対応の通常LTE端末も収容可能である。
  • 空きリソースを有効活用することで、周波数利用効率を高めることができる。

4.ユーザから見た利点

  • 通信速度が向上し、大容量のコンテンツの視聴、ダウロードが快適になる。
  • 周波数ダイバーシティにより、CAのあるキャリアに干渉が発生しても、別キャリアで通信を継続できる。

模範解答2  (簡易形式2)  添削履歴 4回 2019/3/12   専門事項 交通運行無線

1. CAの実現形態

 複数のコンポーネントキャリアがLTE無線基地局によって用意されており、それぞれ周波数、カバレッジが異なる。LTE端末は(その場で利用可能なカバレッジの)PCC、SCCを選択してデータ伝送し、両者をスケジューリングにより結合して、1つの通信として統合する。このためCAでは、それら複数のCCはあたかも1 つの無線キャリアのように利用される。

2.技術的特徴

 1)キャリア帯域幅が大きい

  通常のLTEの20MHzと比較し、CAにより100MHzと帯域幅が大きい。

 2)通信速度が高速                                                         

  例えば2GHz帯の400Mbpsを1キャリア、3.5GHz帯の279Mbpsを2キャリアのCAで約1Gbps(958Mbps)と、通常のLTEの数百Mbpsと比較し高速である。

3.通信事業者から見た利点

  • 既存割当周波数帯域で対応可能のため、CA非対応の通常LTE端末も収容可能である。
  • 空きリソースを有効活用することで、周波数利用効率を高めることができる。

4.ユーザから見た利点

  • 通信速度が向上し、大容量のコンテンツの視聴、ダウロードが快適になる。
  • 周波数ダイバーシティにより、CAのあるキャリアに干渉が発生しても、別キャリアで通信を継続できる。

模範解答2  (答案形式)  添削履歴 0回 2019/3/14  専門事項 交通運行無線 

1.CAの実現形態

 複数のコンポーネントキャリアがLTE無線基地局によって用意されており、それぞれ周波数・カバレッジが異なる。LTE端末は利用可能な周波数・カバレッジのPCC・SCCを選択してデータ伝送し、両者をスケジューリングにより結合し、1つの通信として統合する。このためCAでは、それら複数のCCはあたかも1 つの無線キャリアのように利用される。

2.技術的特徴

1)キャリア帯域幅が大きい

 通常のLTEの20MHzと比較し、CAにより最大100MHzと帯域幅が大きい。

2)通信速度が高速

 例えば、2GHz帯と3.5GHz帯のCAにより最大約1Gbpsと、通常のLTEの数百Mbpsと比較し高速である。

3.通信事業者から見た利点

  • 既存割当周波数帯域で対応可能のため、CA非対応の通常LTE端末も収容可能である。
  • 空きリソースを有効活用することで、周波数利用効率を高めることができる。

4.ユーザから見た利点

  • 通信速度が向上し、大容量のコンテンツの視聴、ダウロードが快適になる。
  • 周波数ダイバーシティにより、CAのあるキャリアに干渉が発生しても、別キャリアで通信を継続できる。

H28年 電気・電子部門、情報通信 Ⅱ−2−1

問題文

 位置情報は、現代社会の様々なアプリケーションに欠かせないものとなっている。ある駅地下街における携帯電話で利用可能なナビゲーションサービス導入の担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)上記ナビゲーションサービスに要求される項目を4つ以上述べよ。

(2)(1)で挙げた要求を満足するナビゲーションサービスを実現するための情報通信分野での技術的提案を述べよ。

(3)(2)で挙げた技術を用いて業務を進める際に、留意すべき事項を述べよ

模範解答 (答案形式)

1.ナビゲーションサービスに要求される項目:4つ

①階層の表示:地下街の階層数および現在地の階層を表示する。

②MAP情報:建物の階層を含めた地図情報を整備し、店舗や駅施設の位置を明確にする細かな情報を作成必要がある。

③ルート検索機能:ユーザーが現在地から目的地まで、どのような道筋で移動すればよいか検索機能を実装する。④ガイダンス機能:ルート上の分岐点において、ユーザーが進むべきルートを確実に選択出来るように音声アナウンスなどを実装する。

2.実現に向けた技術提案

①ポイントマーカーの設置

 スマートフォン携帯端末の利便性を損なわない様、外部に特殊な装置を接続せずとも搭載されたセンサーを有効活用して現在位置を確認できる手段を検討する必要がある。センサー毎の情報収集方法の一例を次の通り挙げる。

  • 無線LAN:アクセスポイントのSSID,MAC等
  • Bluetooth :位置情報をビーコンとして送信する
  • カメラ:位置情報を含んだQRコードの読取り
  • マイク:放送設備から超音波帯域により放送

 これらを地下街の主要な位置(改札、地下街出入り口、分岐点等)に配置し、ユーザーが持つ端末が自動的もしくは容易に情報を収集できるようにする。

②自律航法とマップマッチング

 スマホには3軸の加速度センサーが搭載されている。これを活用し自動車と同様にGPSが受信できない状態での自律航法と同等な仕組みを用い、地図情報と連携し表示をさせる。具体的には、前項に示すマーカによりユーザー自身の位置を検出する。加速度センサーの情報を解析し、どちら側の方向に進んでいるかを検出してマップマッチング技術により差分によるバラツキを排除して位置表示を行う。

3.ナビゲーションサービス実現に向けた留意事項

 地下街は複数の組織により管理運営されているため、組織間の連携が重要となる。駅は鉄道事業者、店舗の入居する地下街の管理者が挙げられる。先に挙げたポイントマーカーを整備する場合には、組織間で協議を行い、技術的な制約(APの周波数割当や不感知対策、Bluetoothビーコン、放送設備の改修等)や、QRコードを付したマーカーシートの掲示する場所選定や掲載方法やこれらの維持管理を協議する。技術面と共に効果的な配置や運用体制を構築することがサービス実現の留意事項と考える。

解説

 作成中

H28年 電気・電子部門、情報通信 Ⅲ−1

問題文

 車の運転の自動化については、一般に下記の複数のレベルが定義されている。

  • レベル1:加速・操舵・制動のいずれかをシステムが行う
  • レベル2:加速・操舵・制動のうち、複数の操作をシステムが行う
  • レベル3:加速・操舵・制動を全てシステムが行い、システムが要請したときにはドライバーが対応する
  • レベル4:加速・操舵・制動を全てシステムが行い、ドライバーが全く関与しない

 レベル3及び4の運転自動化の実現に当たっては走行環境認識の主体がドライバーからシステムに移るため、レベル1及び2とは利用する技術の幅が本質的に大きく異なる。システムに極めて高い性能や信頼性が求められルばかりでなく、地図、測位技術、レーダーやカメラの他にも情報通信の様々な技術を利用することが求められる。これを踏まえて以下の問いに答えよ。

(1)レベル3及び4の運転自動化の実現する際に、レベル1及び2と比較して、重大となる課題を多面的に列挙せよ。

(2)(1)で挙げた課題の中で、あなたが最も重要と考える課題を2つ挙げ、それぞれの課題に対する情報通信分野での技術的解決策を提案せよ。

(3)あなたの提案した解決策を実用化する際に生じ得るトラブル等の問題点を洗い出し、それぞれの技術的な対処方法について述べよ。

模範解答 (答案形式)

1.レベル3及び4の実現に向けた重大となる課題

①測位システムの高度化

 自車位置を特定するための技術としてGPSおよびIMUを採用している。測位分解能を向上させることで、ルート上の走行レーンの識別へ寄与できるほか、GPSの信号がトンネル等で遮蔽されてもIMUにより自車位置を割り出すことで運転制御が継続可能となる。

②デジタル地図システムの高度化

 車載コンピュータシステムは、車両の各種センサーから情報提供が受け、地図情報へ重ね合わせ、判断する基準が地図情報である。高精度な3D地図を持つことで、レーダーにより捉えた映像をマッチングさせ状況判断を高度化することに寄与できる。

③外部システムとの連携

 走行している地点および周囲情報を提供するエリア運行管理システム(路車間通信)や前後を走行する車両との車車間通信など外部からの運転制御情報を効率的に利用・発信することで運転自動化システムの最適化が図られる。

④車載コンピュータシステムの信頼性向上

 短時間のうちに情報を収集、判断、制御を行わなければならないため分散型システムを検討することが必要と考える。また、メインシステムに不具合が発生した場合、運転制御に致命的な影響が生ずる恐れがあるためシステムの二重化も検討する必要がある。

2.重要と考える課題:2つと技術的な解決策

課題1:測位システムの高度化

 現在実用化が進められている準天頂衛生からの信号を活用することを提案する。測位地点によっては従来のGPS衛星は低仰角な位置した場合、天空が開けていても測位できない、もしくは誤差が増大するという欠点がある。準天頂衛生による測位では衛星自身が概ね日本上空に対空する八の字軌道を採用していること、測位分解能も従来GPSの1m前後から、数十cmと飛躍的に向上することが見込まれているため実現が可能と判断する。

課題2:外部システムとの連携

 運転自動化は走行中の前後車両との連携も重要ではあるが、走行地点付近の様々な路側情報を提供する、道路状況を監視する機能を有する運行管理システムを導入されることを提案する。システムの導入により走行中の車両の状態を把握し、故障等が発生した車両への措置や付近を通行する車両に対する注意喚起などを確実に行うことができ、追突事故等を回避することが可能となる。

3.生じうるトラブルに対する技術的な対処方法

①準天頂衛星による測位不能

 高分解能なGPSが故障もしくは長距離のトンネル内では精度の高い測位が出来ず、誤差を生じてしまう。従来もIMUと連携し、位置情報を推定出来るような仕組みでも累積誤差が大きくなることが懸念されている。解決策として、レーザードップラー速度計との連携させることで、IMUの性能を改善し誤差を抑える方法がある。

②運行管理システムの障害対応

 システムを柔軟に拡張や不具合時のバックアップ系を構築するためにクラウド上の仮想基盤にシステムを立ち上げる。この方式であればスモールスタートでシステムを立ち上げることが可能であり、運行車両の管理規模に合わせシステム拡張を適宜行うことができる。追加する運行管理機能なども評価システムをクラウド上で検証することで可能であり、導入時には構築済みのシステムへ組み込む作業も容易に行えることが予想される。 

解説

 作成中

H28年 電気・電子部門、情報通信 Ⅲ−2

問題文

  今日、社会全体のICT化が進められる中、膨大な情報を収集して新たな価値を創出するビッグデータ分析等、匿名性を求められるデータ利活用の需要が高まっている。ソーシャルデータやパーソナルデータの利活用を促進するには、世帯や企業が、インターネットや情報通信ネットワークを、匿名性の視点から安心、安全に利用できることがますます求められる。このような状況を考慮して、情報通信に携わる技術者としての見識を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)匿名性の視点から検討すべき最も重要な課題を多面的に述べよ。

(2)(1)で挙げた課題に対して、情報通信分野としての技術的対策項目を提案せよ。

(3)(2)で提案した技術的対策項目から、あなたが重要と考える2つの項目について、それぞれ具体的な内容、効果及び新たに浮かび上がってくるリスクについて述べよ。

模範解答1 (簡易形式1)  添削履歴 0回 2019/6/27  専門事項 列車管制無線

1. 匿名性の観点から検討すべき最も重要な課題

1)データ収集デバイスのセキュリティ

2)データ伝送のセキュリティ

3)クラウドのセキュリティ

4)インターネットのセキュリティ

5)データの匿名化

2.(1)で挙げた課題に対する技術的対策項目

1)処理能力の低いデバイスにおける暗号化方式

処理能力の低いデバイスで処理可能で、実運用に耐える暗号化方式を利用する。

2)通常プロトコル以外の無線伝送

Wi-Fi等通常プロトコルの伝送では盗聴の可能性が高いため、別方式を利用する。

3)個人の特定・データ復元を難しくする方法

個人を特定できない署名や漏洩してもデータを復元できない方法を利用する。

4)VPNの利用

仮想的な専用回線を利用する。

5)単一個人を特定できないように加工する方法

複数項目を組合せても個人の特定に至らないデータ加工方法を利用する。

3.具体的内容、効果、リスク

・「通常プロトコル以外の無線伝送」について

1)具体的内容

NIDD(Non IP Data Delivery)を利用する。

2)効果

IPを用いた攻撃を回避できる。

3)リスク

デバイス固有ID漏洩によるハッキングのリスクがある。ワンタイムパスワードも併用してハッキングを回避する。

・「VPNの利用」について

1)具体的内容

IPsec、SSL/TLSを利用する。

2)効果

セキュアなデータ伝送を行える。

3)リスク

平文のDNS通信に盗聴リスクがある。DoHを用いてDNS通信をセキュアに行う。

H28年 電気・電子部門、情報通信 Ⅱ−2−2

問題文

 あなたは運用中の情報通信ネットワークシステムの設計・構築の担当者である。担当システムに関し、故障によるサービス影響が増加しており、可用性(ここでは故障等の事象が発生してもシステムユーザへのサービス提供を継続する能力とする)の改善要望を受けている。システムの更新を機に可用性の改善を進めるに当たり、以下の問いに答えよ。

(1)可用性の改善を進める際に必要な事前調査・検討の手順を示し、そのうち2つについて具体的に説明せよ。

(2)(1)の事前調査・検討で明らかになる可用性に関する主な課題を2つ想定し、それぞれにつきその課題と課題を解決するためのシステム要件について述べよ。

(3)複数ベンダへの提案依頼書(RFP Request For Proposal)の提示、及び複数ベンダから提出された提案書の内容の審査に関し、留意すべき点を2つ挙げ、具体的に説明せよ。

模範解答1 (簡易形式1)  添削履歴 2回 2019/3/18  専門事項 列車管制無線

1. 可用性の改善を進める際に必要な事前調査・検討の手順

①FWが故障した場合、外部からクライアントへの通信が断絶されるため、FWの設定を調査する。

②SWが故障した際、配下のL3NW・L2NW内の通信が断絶されるため、SW及びそこに接続するクライアントのトポロジを調査・検討する。

③クライアント自体における故障の場合、クライアントからの通信は不可能なため、アーキテクチャを検討する。

以下、②・③について具体的に説明する。

  • ②について、SW故障を考慮した際、L3・L2の違い、SWに接続するクライアント数で影響範囲が異なるため、現状のトポロジを把握する。
  • ③について、クライアントにおける通信インタフェース故障で通信不能となる場合があり、現状の機器アーキテクチャを把握する。

2.課題と課題を解決するためのシステム要件

1)SW・経路トポロジ見直し

 SW故障の際も冗長系によるサービス維持のため、トポロジを見直す。要件として、スタックによるSWの冗長化、STPを用いた経路冗長化を行う。

2)クライアントにおけるアーキテクチャの見直し

 NIC故障の際も通信維持できるよう、アーキテクチャを見直す。要件として、NICチーミング・ボンディングによりフォルトトレラント化を行う。

3.提案依頼書の提示、提案書の内容審査で留意すべき点

  • 複雑なSW設定を要する場合は、SDNによる一括制御や汎用計算機によるNFVの導入を検討する。

模範解答1 (簡易形式2)  添削履歴 0回 2019/3/20  専門事項 列車管制無線

1.可用性の改善を進める際に必要な事前調査・検討の手順

①FWが故障した場合、外部からクライアントへの通信が断絶されるため、FWの設定を調査する。

②SWが故障した際、配下のL3NW・L2NW内の通信が断絶されるため、SW及びそこに接続するクライアントのトポロジを調査・検討する。

③クライアント自体における故障の場合、クライアントからの通信は不可能なため、アーキテクチャを検討する。

以下、②・③について具体的に説明する。

  • ②について、SW故障を考慮した際、L3・L2の違い、SWに接続するクライアント数で影響範囲が異なるため、現状のトポロジを把握する。
  • ③について、クライアントにおける通信インタフェース故障で通信不能となる場合があり、現状の機器アーキテクチャを把握する。

2.課題と課題を解決するためのシステム要件

1)SW・経路トポロジ見直し

 SW故障の際も冗長系によるサービス維持のため、トポロジを見直す。要件として、スタックによるSWの冗長化、動的ルーティング、VLAN trunk、Link Aggregation、VRRP、STPを用いた経路冗長化を行う。

2)クライアントにおけるアーキテクチャの見直し

 NIC故障の際も通信維持できるよう、アーキテクチャを見直す。要件として、NICチーミング・ボンディングによりフォルトトレラント化を行う。また、HAクラスタリングを行いNIC以外のコンポーネントについても耐障害性を考慮する。

3.提案依頼書の提示、提案書の内容審査で留意すべき点

  • 複雑なSW設定を要する場合は、SDNによる一括制御や汎用計算機によるNFVの導入を検討する。
  • 通信性能要求が異なり、ネットワークリソースを共有して仮想的に切り分けを行いたい場合はネットワークスライシングを用いたトポロジを構築する。
  • ネットワーク障害による影響を最小限にしたい処理については。エッジコンピューティングを検討する。
  • 外部クラウドサービス利用等クライアントからゲートウェイまでのトラフィックのためネットワーク負荷が増大する場合は、インターネットブレイクアウトを行う。

模範解答1 (答案形式)  添削履歴 0回 2019/3/20  専門事項 列車管制無線

1.可用性改善推進に必要な事前調査・検討の手順

①FWが故障した場合、外部からクライアントへの通信が断絶されるため、FWの許可・禁止ポート等の設定を調査する。

②SWが故障した際、配下のL3NW・L2NW内の通信が断絶されるため、SW及びそこに接続するクライアントのトポロジを調査・検討する。

③クライアント自体における故障の場合、クライアントからの通信は不可能なため、アーキテクチャを検討する。

以下、②・③について具体的に説明する。

  • ②について、SW故障を考慮した際、L3・L2といったレイヤの違い、SWに接続するクライアント数の違いにより影響範囲が異なるため、現状のトポロジを把握する。
  • ③について、クライアントにおける通信インタフェース故障で通信不能となる場合があり、現状の機器アーキテクチャを把握する。

2.課題と課題を解決するためのシステム要件

1)SW・経路トポロジ見直し

 SW故障の際も冗長系によるサービス維持のため、トポロジを見直す。要件として、スタックによるSWの冗長化、動的ルーティング・VLANトランク・リンクアグリゲーション・VRRP・STPを用いた経路冗長化を行う。

2)クライアントにおけるアーキテクチャの見直し

 NIC故障の際も通信維持できるよう、アーキテクチャを見直す。要件として、複数NICを仮想的に束ねる技術のNICチーミング・ボンディングによりフォルトトレラント化を行う。また、複数台サーバの連携技術であるHAクラスタリングを行いNIC以外のコンポーネントについても耐障害性を考慮する。

3.提案依頼書提示・提案書内容審査で留意すべき点

  • 複雑なSW設定を要する場合は、ソフトウェアによりネットワーク機器の集中制御を行うSDNを用いた一括制御を検討する。
  • 障害発生時における代替機器の入手性を考慮する場合、仮想化技術を使ってネットワーク機能を汎用サーバ上で実現するNFVの導入を検討する。
  • 異なる性能要件の通信を、同一ネットワークリソースに収容したい場合がある。その際、要件毎にリソースを仮想的にスライスする、ネットワークスライシングを用いたトポロジを構築する。
  • ネットワーク障害による影響を最小限にしたい処理については、エッジコンピューティングを用いてよりクライアント側での処理を検討する。
  • 外部クラウドサービス利用する場合、クライアントゲートウェイ間のトラフィックのためネットワーク負荷が増大する。そうした場合、クライアント直近に専用ゲートウェイを設けるインターネットブレイクアウトを行い、ロードバランスを図る。

H28年 衛生工学・空気調和 Ⅱ-1-3問題 模範解答と解説 (ペリメータレス)

問題文

超高層集合住宅における給水方式の決定の考え方と給水配管設計の留意点を述べよ。

模範解答1

1) 超高層集合住宅における給水方式の決定の考え方

①最上階の水圧確保

直列多段型直結増圧方式により、給水ポンプから損失最大の部屋のシャワーにて70kPaを確保する。

②各階の水圧差を縮小

給水ポンプから最も遠方となる最上階に水圧を合わせた場合、最下階の水圧が高すぎるため、横枝管に減圧弁を設置して水圧差を縮小する。

③貯水槽の荷重・衛生管理

 最上部に貯水槽を設置する場合(高置水槽方式)、構造上の負荷が増大し、衛生面も配慮が必要なため、直結増圧方式とする。

(2) 超高層集合住宅における給水配管設計の留意点

 高層階に揚水するため、配管にかかる負荷が増大し、腐食や破損の可能性があるため、以下のように対策する。

①配管継手

水圧が高いため、継手は耐久性の高いメカニカル継手とする。

②配管材料

高層に揚水するため水圧が高く、配管摩擦が多いため、立て主管は耐摩耗性・耐腐食性が高いステンレスとし、横枝管は塩化ビニルライニング鋼管とする。

解説

模範解答2

1.給水方式の決定の考え方

 給水方式は、高置水槽方式を採用する。採用する考え方として、特に下層階では給水圧力が過大にならないようにする対策が必要である。その為、給水系統を10階程度で区分し、中間水槽によるゾーニングを行事で安定した圧力による水供給が可能となる。

2.給水配管設計の留意点

1)給水圧力による影響について

 過剰な給水圧力供給になると、ウォーターハンマーなどにより水栓や弁などの部品の消耗が著しくなり寿命が短くなる事が予想される。

2)給水圧力の上限圧について

 集合住宅という生活の場においては、300kPa〜400kPa程度に抑え、下層階にあたる箇所では、減圧弁を設置し、圧力調整を行う。

3)最低給水圧力の確保

 ゾーニングを行う系統の最上階にあたる箇所での必要最低給水圧力は、給湯機器の作動やシャワー水勢などを考慮して、700kPa以上が必要となる。その為、高置水槽又は中間水槽は、必要圧力を確保できる高さに配置計画する。

4)耐震性能を確保した配管材料の選定

地震時の変位追従性や繰り返しの変位に対して、耐久性を確保する為、配管材料は、耐震型高性能ポリエチレン管の高い柔軟性と融着接合の一体管路とする。

H28年 衛生工学・空気調和 Ⅱ-1-4問題 模範解答と解説 (劇場の熱負荷)

問題文

収容人数1000人の劇場における客席と舞台に関する熱負荷の特徴を5項目挙げて説明せよ。

模範解答

特徴①居住密度が高く単位面積あたりの負荷が大きい。

 床面積あたりの居住密度が0.89〜1.54m2/人であり、オフィスビルの約5m2/人と比較して高いため、単位面積あたりの年間熱負荷が451MW/(m2・年)と大きい。

特徴②温度分布が不均一である

 客席は、吹き抜け大空間であり壁面も大きいため、熱容量が大きく、冬期に舞台おろしが発生するなど温度分布が不均一となる。

特徴③ピーク負荷が大きく予冷、予熱に時間がかかる

 設置される装置容量に比べて、蓄熱負荷が大きく、舞台部の外壁面が大ききことから、ピーク負荷が大きく、予冷、予熱に時間がかかる。

特徴④人体による負荷が大きく潜熱の比率が高い

 人体からの発生熱量が大きいため、潜熱負荷の比率が高く、顕熱比が小さくなり、除湿コントロールが必要となる。

特徴⑤外気負荷の割合が大きい。

建物が無窓建築である場合が多いため、オフィスビルと比較して構造体からの負荷が少なく、外気負荷の割合が大きい。

解説

 収容人数1000人の劇場ですからその客席と舞台の大きさや構造はある程度イメージできます。劇場は無窓建築であることを考慮します。そして、客席は熱負荷が人体によるものであり、顕熱だけでなく潜熱を伴うこと発熱源が床付近に集中することが特徴です。一方、舞台は鉛直方向に長い区間であり壁面からのドラフトを考慮する必要があります。空間ごとの特徴に応じて解答をしなければならない難易度の高い問題と言えます。

H28年 衛生工学・空気調和 Ⅱ-2-1問題 模範解答と解説 (特別養護施設の設計)

問題文

 延床面積約10,000 m2の特別養護老人ホームをユニットケア型にリニューアルする計画の中で,空気調和設備では省エネルギー化と建設費削減を中心とした計画が求められた。当該施設はデイサービスを併設し,地上5階,地下1階である。また,建物には下水道,電力,都市ガスが供給されている。現状のシステムはガス焚き冷温水発生機,給湯ボイラ,フアンコイルユニット,換気扇の構成であり,冷温水(2管式),冷却水,空調排水,給湯の各配管は使用可能である。また,入居者等が居ながら行う改修上事は考慮しなくて良い。このような状況において,以下の問いに答えよ。

※「ユニットケア」とは,入居者のプライバシーが守られる「個室」と,他の入居者や介護スタッフと交流するための居間(リビングスペース)で構成され,入居者10人程度をひとつの「ユニット」として入居者の個性や生活リズムを尊重した暮らしをサポートするケア手法である。

(1)入居者(利用者),ケアスタッフ,施設管理者のそれぞれの立場に対し,空気調和設備を計画する上で留意すべき事項を説明せよ。

(2)この計画において,熱源システムと入居階系統の空調システムを1例提案し,その省エネルギー手法を3項目,システム上の建設費削減手法を2項目挙げて説明せよ。

 ただし,補助金等の行政施策は除くものとする。

(3)この空気調和設備のリニューアルを計画立案と実施において,業務を進める手順を簡潔に説明せよ。

模範解答

(1)   空気調和設備の計画において留意する事項

a.           入居者 個別に温度設定を可能とするため、各室に温度コントローラを設置

b.           ケアスタッフ 24時間空調が必要であるため、個別空調とする。

c.           施設管理者 遠隔で空調機の運転管理を可能とするため、BEMSを導入する。

(2)   熱源システムと入居系統の空調機システムの提案

a.省エネルギー項目

①          CO2換気制御により外気導入量を制御して空調負荷を低減

②          コージェネの廃熱を利用して空調、給湯へ利用

③          フリークーリングにより中間期は冷却塔で冷房する。

b.建設費削減手法

①コージェネからの廃熱を空調および給湯に利用することで、空調熱源機、ボイラ設備の建設費を削減する。

②在室人数情報をセキュリティとCO2制御に利用することで、BEMSとセキュリティ機能を統合することで建設費を削減する。

(3)   リニューアル計画立案と実施における業務を進める手順

①          廃熱、外気を有効利用するため電力、空調、給湯負荷の日負荷および外気条件を調査。

②          発電機設置に必要なスペースおよび耐荷重を調査してレイアウトを決定

③          工期短縮のため配管のユニット化、既存配管の流用を検討する。

解説

 延床面積約10,000 m2とある程度規模の大きい特別養護老人ホームの設計ケーススタディーです。空気調和設備の条件として、省エネルギー化と建設費削減といった目標や既存の設備の前提条件が与えられており、こうした趣旨に沿った設計が求められます。

 システムの選定が第一の課題となりますが、特別養護老人ホームと言う用途から考えて熱負荷がそれほど大きくないかつ、冬季の冷房負荷が発生しにくいことから、既設の二管式設備を踏襲した夏冬で冷温水を切り替えるシステムが無難かと考えられます。

 奇抜な設計で高得点を狙うためにオフィスビルのイメージでダブルバンドル冷凍機などを提案する方もいらっしゃいますが、この問題ではあまり得策とは言えません。その様な無理することなく普遍的な設計でバランスよい空調設備を提案することが肝要と考えます。

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