鉄道設計技士試験模範答案 鉄道電気 H27「踏切り内障害物検知装置」

問題

 踏切の安全性向上のハード対策として、障害物検知装置の設置が挙げられる。この障害物検知装置の主なセンシング方式としては(a)光電式(赤外線、レーザー式)(b)ループコイル式、(c)ミリ波式、(d)レーザーレーザー式、(e)超音波式 がある。これらのうち、3つの方式を選び、それぞれについて障害物の検出原理と長所および短所を述べなさい。

模範解答

1.光電式(赤外線式、レーザー式)について

検出原理

 光電式は投光器及び受光器で構成されており、投光器から赤外線やレーザー光の近赤外線領域光を発光し、受光器で受光している。この受光器で受光した光を電気信号に変換し電気信号が一定時間途絶えたことを検知すると障害物が有と検知している。投光器と受光器間に自動車が進入すると赤外線やレーザー光を遮ると自動車によって反射し受光器に光が届かなくなり電気信号がなくなる。これによって踏切道内の障害物を検知している。

長所

 投光器と受光器のみの構成であるため、装置価格が安い。また、設計時においては光軸を踏切道内にどのように張り巡らせるかを考えればよく、ループコイル式やレーザーレーダー式に比べて設計が簡単にできる。 

短所

 線路内に投受光器を設置するため、作業時間が限られる。雪による光軸レベルの減衰が大きいことから積雪が多い線区では冬場の使用を停止しなければならないことから障害物を検知できない期間ができてしまう。また、投受光器のレンズ面が汚れることから定期的な清掃作業が必要となりメンテナンスに手間がかかる。

 また、光電式はLEDの赤外線式も使用されているが、濃霧に強くない点がある。また、列車の前照灯の高輝度HIDランプが受光器に照射されると投光器からの信号と判断し誤動作を起こす。

2.ループコイル式について

検出原理

 ループコイル式は踏切道内の地面下に埋設したループコイルに検知用の100kHz程度の信号電流を流して磁場を生成している。通常時はこの信号電流に変化はないが、踏切道内に自動車が滞留するとループコイル上に自動車の床下の金属で磁場が乱されると信号電流の周波数が変化する。この変化量が基準値を超えたときに踏切道内に障害物があると検知する。

長所

 ループコイル式は磁場の変化により障害物を検知する方式のため、積雪や雨など気象条件は非磁性体であるため影響を受けない全天候型である。

短所

 踏切道内にループコイルを設置するには舗装軌道下に埋設する工事しなければならず工事の手間と費用がかかる。また、軌道下にループコイルを埋設してしまうことから保守を行う上でループコイルの汚損・損傷を点検できない。

  また、磁性状態は温度に依存するため、気温の変動で信号電流の周波数が変動し障害物として誤検知してしまうことがある。

3. レーザーレーダー式障害物検知装置について

 検出原理 

 レーザーレーダー式は建築限界外の高さ5mに設置されたレーザーヘッドから踏切全体を俯瞰するようにパルス状のレーザー光を照射している。踏切道上の支障物に当たった反射レーザー光が返ってくるまでの時間から距離を計測して支障物の有無を判断している。また、レーザーヘッドから照射されるレーザー光は、上下左右にスキャニングされており踏切全体の物体の位置と大きさを三次元計測し、位置と大きさによって障害物の有無を判断している。

長所

 建築限界外に設置されているため、工事や調整に線路内に立ち入る必要がなく、レーザーヘッドのガラス面の汚れの清掃も光電式に比べ格段に少ない。反射板を設置することで方向・送信出力の自動調整が可能となるため、メンテナンスが容易である。

短所

 レーザー光の反射を入力信号とするため、豪雨や濃霧に弱い。また、レーザー光を送受信しその時間差により障害物の有無を3次元計測させることから機器のハード費用・ソフト費用がかさむため、装置単価が高い。

鉄道電気 H26「輸送力増強」

問題

 電化区間の在来鉄道において、輸送力増強のため、線区最高速度を110km/hから130km/hに引き上げたい。このとき、運転保安設備のうち、以下のものについてそれぞれ確認すべき事項を具体的に述べなさい。 ①自動列車停止装置について ②連動装置、信号装置、閉塞装置、軌道回路、転てつ装置のうちから2つについて述べよ。なお、設備の条件は、複線、地上信号方式、自動閉塞式、連動駅ありとする。

1.自動列車停止装置について

ATS速度制限パターンの確認

 線区最高速度が向上しても現行のATS速度制限パターンで停止信号現示の外方までに列車が十分に停止できるか確認する。

確認方法は、以下のとおりである。

①車両ブレーキ特性に応じた線区最高速度の非常ブレーキ距離を確認する

②ATS速度制限パターンに抵触した地点から非常ブレーキ距離に応じて列車が停止する位置を算出し、停止信号現示の外方までに停止できるか確認する。

 上記の確認によって条件が満足できない場合は、対策方法として、点制御方式の場合は地上子の移設、連続制御方式の場合は軌道への打ち込み点の変更等を行い、ATS速度制限パターンの変更を行う。

車上側でATS信号を受信できるか確認

線区最高速度が向上したことによってATS車上装置が地上側からATS信号を受信できる時間が短くなる。このため、列車が地上子を通過する時間の算出を行い、ATS車上装置が定めるATS信号受信可能時間が満足しているか確認する。

確認方法としては、線区最高速度での列車が地上子を通過する時間の算出を行う。ATS車上装置のATS信号受信可能時間以上に列車が地上子上を通過しなければならないため、机上計算により地上子通過時間の算出を行う。また、現車走行試験なども実施し理論値通りATS信号を受信できるかの確認も行う。

 上記の確認によって条件が満足できない場合は、対策方法としてATS車上装置の受信時間を狭めるか、地上側のATS信号を送信する時間を長くする必要がある。

2.信号装置について

信号機の見通し確認距離の確認

 線区最高速度が向上しても、運転士が信号機の現示を確認し常用ブレーキを動作させ、現示に応じた速度までに減速できるか信号機の見通し確認距離が十分であることを確認する。

 確認方法は、車両ブレーキ特性から常用ブレーキ距離を確認し、信号機の見通し確認距離と比較し運転士が信号機の現示を確認して常用ブレーキにて現示に応じた速度までに停止できるか確認する。

 上記の確認によって条件が満足できない場合は、対策方法として信号機の見通しを改善するために既設信号機の建植位置の変更を行う。または現示展開の変更を実施し、列車速度を抑えることで常用ブレーキ距離を短くする方策が考えらえれる。

3.軌道回路について

ノイズによる軌道回路の不正動作確認

 線区最高速度の向上に伴って新型車両の導入が考えられる。新型車両に新たに新しい新型の各種装置が搭載されるが制御装置や補助電源装置等から発生するノイズが軌道回路の軌道継電器に印可し、軌道回路が不正動作するかどうかを確認する。

 確認方法は、新型車両を工場内や車庫内・本線走行試験を行い、軌道継電器が定める落下電圧の1/2以下であることを確認する。

上記の確認によって条件が満足できない場合は、対策方法として車両制御装置等にノイズを低減させるコアやアクティブフィルタ、パッシブフィルタを取り付ける。また、軌道回路への対策としては軌道継電器に緩動継電器を用いて一定時間のノイズによって軌道回路が不正動作することを防止する。

鉄道電気 H24 「軌道回路の不正落下の原因及び対策」

問題

 軌道回路の不正落下は、発生すると輸送障害を引き起こすため、安定輸送を阻害する一因となることがある。軌道回路の不正落下の原因及び対策について3つ挙げ、具体的に述べなさい。

模範解答

1.大雨や塩害等による軌道回路の不正落下について

原因

 レールと対地間は道床によって電気的に絶縁されているが、大雨や塩害によってレールと対地間の漏れコンダクタンスが大きくなることで軌道電流が道床などに流れる。これによって軌道回路の受信器に入力される信号電流が減衰し、列車在線状況と同じ信号電流レベルまで低下すると軌道回路の不正落下が発生する。

対策

 対策方法しては、軌道回路の送信器側の電圧を昇圧させ、大雨時等の短絡感度でも軌道回路が扛上するにし、適正に軌道回路が動作するように受信器側のレベル調整を行う。また、軌道継電器を駆動するのに十分な受信電圧を確保できるように軌道回路の長さを分割する。

2.AF軌道回路における軌道回路の不正落下について

原因

 AF軌道回路においては商用周波数軌道回路等に比べて信号波の周波数が高く漏れコンダクタンスの影響を受けやすい。晴天と雨天との受信レベルの減衰量差が大きく、気象条件によって大幅に信号波レベルが変化するため、軌道回路の不正落下が発生する。

対策

 列車在線による信号電流の変化と気象条件による信号電流の変化は異なっている。対策方法として気象条件による信号電流では軌道回路を落下させず、列車在線による信号電流の変化のみ軌道回路を落下させる。軌道回路が落下する最小動作レベルを自動追従する機能をAF軌道回路装置に導入する。最小動作レベル追従機能はシステム立ち上げ時に最小動作レベルを所定の値に設定しておき、軌道回路の漏れ変動等に起因する緩慢な入力変動に応じて最小動作レベルを自動的に変更する機能である。

3.軌道回路の不平衡による不正落下について

原因

 レールには帰線電流と信号電流が流れており、インピーダンスボンドによって隣接する軌道回路に帰線電流だけを通す。この左右レールに流れている帰線電流が不平衡を起こすと、インピーダンスボンド内で磁束を打ち消すことができず帰線電流に流れているノイズが軌道回路の受信器に流れ込み、軌道回路の不正落下を起こす。また、同様にインピーダンスボンドの定格電流以上に帰線電流が流れ込むとインピーダンスボンド内のトランスが磁気飽和を起こし、磁束を打ち消しあうことができず帰線電流のノイズが軌道回路の受信器に流れ込み軌道回路の不正落下が発生する。

対策

左右のレール間で抵抗に差がある場合は、ジャンパー線の太さや長さを調整し左右のレール抵抗を同程度までに施工する。また、インピーダンスボンドの定格電流が不足している場合は、流れ込む帰線電流よりも定格電流の大きいインピーダンスボンドに更新するかクロスボンドを追加し、帰線電流の迂回経路を構成し電流経路の多重化を図る。

鉄道電気 H23 「踏切の制御方式」

問題

 踏切の制御方式には「連続閉電路式」と「点制御式」がある。以下の3つについて具体的に述べなさい。

(1)   それぞれの制御方式の考え方

(2)   上記の制御方式を1つ選び、その制御回路を構成する装置や回路構成上のメリット、デメリットおよびその特徴

(3)   フェールセーフ性を確保する方法

1.連続閉電路式・点制御式の考え方

 連続閉電路式とは列車自体をスイッチとして考えると警報開始点からスイッチが「ON」の状態が警報終止点まで続く方式である。この警報区間に列車が在線し続ける限り、踏切警報が鳴動を続け、連続した警報区間の途中で列車によってスイッチ「ON」の条件が構成されても踏切が鳴動を開始する。

 一方、点制御式は警報開始点と警報終止点の上でのみ、スイッチ「入」「切」の条件を構成・論理判断し、踏切警報を鳴動させる方式である。この警報区間の途中で列車が在線しても、踏切制御子上のみで制御しているため、警報は動作しない。駅近傍の踏切制御は複雑な回路となるが、論理処理させて踏切警報を行っている。

2.      連続閉電路式のメリット・デメリット・特徴  

2−1.メリットについて

 続行列車対策回路や瞬間停電対策が必要となる点制御方式に比べて、連続閉電路式の踏切制御回路は信号機を制御する軌道回路条件を直列に接続するだけの構成となり、シンプルな踏切制御回路となる。

 また、列車種別によって踏切制御パターンを変更する急緩行選別回路を踏切制御回路と並列に接続することで容易に踏切警報時間の適正化を図ることができる。

2−2.デメリットについて

 閑散線区や単線などの踏切警報区間のレールが電気的に接続されていない軌道回路方式の場合、連続閉電路式を導入するには警報開始点と警報終止点間のレールを電気的に接続する必要があるため、コストがかかる。

2−3.特徴 

 連続閉電路式は警報区間全体の軌道回路で警報動作をさせている。車軸数軸が短絡不良を起こしたとしても他軸によって軌道短絡をするため警報動作をするため安全性が高く、公民鉄事業者で多く導入されている。

 また、警報終止点と軌道境界が離れている場合、踏切道を列車が通過しても一定時間警報が鳴動を続けるため、警報時間が長くなってしまう。このため、AFO軌道回路を踏切終止点箇所に設置して踏切警報時間の適正化を図っている。

3.      フェールセーフを確保する方法

 連続閉電路式は軌道回路条件を利用しているため、レジン制輪子などに起因する軌道回路の短絡不良防止対策を軌道回路に施す必要がある。具体的にはレジン制輪子などによってレール上の表面に形成された半導体被膜を破壊するために軌道回路の送信出力を3Vほど昇圧させる対策を実施する。

 一方、点制御式は警報終止点の踏切制御子に開電路式を採用した場合、機器が故障すると「列車あり」と同じ状態に転移し、最悪の場合、列車が踏切道に接近している途中に警報が停止し事故が発生する恐れがある。このため、警報終止点の踏切制御子に閉電路式回路を導入し、機器が故障して警報が停止することを防止する。

鉄道電気 H19「ATS、ATC」

問題 

 ATSまたはATCを用いて曲線部の速度超過を防止する対策を合計3つ挙げてそれらの得失を述べなさい。また対策はATSやATCの動作方式と合わせて仕組みを説明すること。

模範解答

 ATSの曲線部速度超過対策について述べる。

1.    階段状点速度照査形地上子で速度制限する

①  対策  

 曲線部手前に転覆危険率に応じた制限速度情報を記録した地上子を設置する。列車が地上子上を通過すると読み取り側である車上装置と地上子間でアナログ通信方式のパッシブRFIDで伝送する。これを車上側は曲線部の制限速度と判断し、自列車速度が超過していると曲線部手前までに列車速度を減速させる。

列車が曲線区間を通過している際も車上側にて制限速度を保持し、曲線区間に列車が在線している間は制限速度以下で走行する。

② メリット・デメリット 

曲線部手前と終端部付近に地上子を設置するだけで曲線部速度超過防止対策が可能となり、設置費用が安価である。

車上装置が制限速度を保持する仕様でない場合、曲線区間内を制限速度以下で走行させるため、曲線区間内に複数個の地上子を設置するか、車上装置で制限速度を保持する仕様に変更しなければならなく、改修費用が高くなる。

2.階段状連続速度照査形ATSで速度制限する。

① 対策 

 曲線部手前から列車が曲線部を抜けきるまで転覆危険率に応じた速度制限情報を連続して車上側に送信する。レールに速度制限に応じた周波数の信号電流を流し、列車がレール上を通過すると読み取り側である車上装置とレール間でアクティブRFIDで伝送する。これを車上側はレールからの情報をもとに曲線部の制限速度と判断し、自列車速度が超過していると列車速度を減速させる。

②   メリット・デメリット  

 曲線区間に送信する信号電流の周波数を転覆危険率に応じた速度制限情報の周波数に変更するだけで実施できるため、ATS送信器の周波数変更を行う配線変更のみで対応でき安価に改修ができる。

 運転士は階段状の速度制限に応じた乗り心地のよい運転走法を実施するため、パターン状連続速度照査型ATSよりも速度追従性が低い。

3.パターン状連続速度照査形ATSで速度制限する

① 対策 

 曲線部手前に地上子(トランスポンダ)を設置し、列車の減速度に応じた速度制限パターンを発生させる。列車が地上子上を通過すると読み取り側である車上装置と地上子間でデジタル通信方式のパッシブRFIDで伝送する。車上側は列車の減速度に応じた速度制限が発生し、運転士はこの速度制限パターンに応じた運転走行する。

これにより曲線部手前までに転覆危険率に応じた制限速度まで減速させる。曲線区間は連続速度照査によって列車が制限速度を超えないようにし、曲線区間を列車が抜けきると制限速度を解除する。

③   メリット・デメリット 

 列車の減速運転とほぼ相似したパターン状連続速度照査形ATSは列車の速度追従性が高く、一段制動ブレーキでの運転が可能となるため乗り心地が良い。

 福知山脱線事故を受けて法令上、ATSの主機能として線路の条件に応じて制限速度を設けることになった。点速度照査型や連続速度照査型では速度追従性が悪く速達性という視点で不利となる。この法改正を受けて多くの事業者ではパターン状連続速度照査形ATSを導入した。しかし、地上・車上装置両方とも改修が必要となるため、導入コストが高くなる。

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