H28年 経営工学・生産マネジメント V-1問題 模範解答と解説 (検定、第1種の誤りと第2種の誤り)

問題文

 ある工場でこれまで製造された製品の収量(kg)は、N(75,32)の正規分布に従っていて安定している。収量を向上させる目的で一部装置の改良を行い、18回の製造試験を行ってn=18個のサンプルが得られ、統計量を計算したところ標準偏差は変わらずに平均収量が77kgとなった。“改良によって収量が増加した”といえるか否かの意思決定を行いたい。以下の問いに答えよ。

 


模範解答1 簡易答案形式

1.装置の改良によって収量が増加したどうかの検定と結果

・主張したいことは、「収量が増加したか」であり、これが対立仮説となる。

・帰無仮説H:μ=μ(μ0は75kg)、対立仮説H:μ>μで母平均の右片側検定を行う。

この検定では、有意水準α=0.05、棄却域は|u0|≧1.645で検証する。

・検定統計量は、u=(X−μ)/σ/√n=(77−75)/3/√18=2.828>1.645 となる。

・上記の検定結果から、帰無仮説は棄却され、対立仮説は採択される。

・装置の改良により、「収量は増加した」といえることになる。

2.第1種の誤り(α)と第2種の誤り(β)の関係について

・右上図で棄却域と採択域の境界値をaとして説明する。

・第1種の誤り(α)はaの右側の黒色部分で、αの確率で棄却域に落ちて、差がないのに差がある判定し、危険率といい、有意水準に等しい。 

・第2種の誤り(β)はaの左側の影の部分で、βの確率で採択域にデータが落ち、差があるのに差がないと判定する。

サンプル数と検出精度

・両者の関係では、αを小さく(aの値を大きく)したいが、βは大きくなってしまう。

・そこで、サンプル数nが大きくなる場合は、右下図のように正規分布の山が鋭くなり、a値が小さくなる。これにより、βも小さくなり、検出力の1−βを高めることができる。

・これは、右片側検定においては、a=μ+1.645×σ/√nと計算されるためである。

3.改良後装置の採択に関する可否について

1)装置の改良目標(母平均76.5kg以上)に対する検定と結果

・帰無仮説H:μ=μ(μは76.5kg)、対立仮説H:μ>μ、α=0.05、n=43で右片側検定を行う。

・検定統計量は、u=(X−μ)/σ/√n=(77−76.5)/3/√18=0.07<1.645 となる。

・上記の検定結果から、対立仮説は採択され、改良後の母平均76.5kg以上とはいえない。

2)改良後装置の採用可否の結論 

・採択可否の方針として、@検出力を95%以上とすること、A95%以上の検出力の確保には、サンプル数は43個必要との条件があり、この条件で改良後の母平均76.5kg以上の採用可否の検定を行う。

・母平均μ=76.5kg以上となる標本平均Xbarの95%信頼区間で検定統計量を活用する。

・母平均μの下限値と母平均μの上限値が同じになる点で、検出力が95%になるため、σ=3、n=43でμ値を計算すると、μ=77.503となる。

・上記の検定結果から、検出力95%以上とする方針では、改良後の装置は採択されない。

 


解説

 


模範解答2 完成答案形式

 

1.装置の改良により収量が増加したどうかの検定

 今回の検定では、以下の相反する仮説を設定する。

・帰無仮説H:装置改良でも平均収量は差がない。

・対立仮説H:装置改良により平均収量は増加した。

主張したいことは、「収量が増加したか」であり、これが対立仮説となり、今回は以下のように母平均の右片側検定を行い、検証する。

・帰無仮説H:μ=μ(μは75kg)

・対立仮説H:μ>μ

・有意水準α=0.05、棄却域は|u|≧1.645

ここで、検定統計量uは、以下のようになる。

=(X−μ)/σ/√n

=(77−75)/3/√18=2.828>1.645 となる。

上記の検定結果から、帰無仮説は棄却され、対立仮説は採択される。装置の改良により、「収量は増加した」といえることになる。

2.第1種の誤り(α)と第2種の誤り(β)の関係

1)仮説検定におけるαとβの両者の関係

ある母平均μがμに等しいという帰無仮説H:μ=μを立て、真の母平均μは帰無仮説で仮定した値μよりΔμだけ大きくなる関係を図1に示す。

図1で棄却域と採択域の境界値をaとして説明する。第1種の誤り(α)はaの右側の黒色部分であり、αの確率で棄却域に落ちて、母平均に差がないのに差があると判定し、危険率といい、有意水準に等しい。

第2種の誤り(β)はaの左側の影の部分で、βの確率で採択域にデータが落ち、差があるのに差がないと判定する。また、図1の斜線部分の1−βは、対立仮説が正しいときに、その対立仮説を採択するという正しい判断の確率であり、検出力と呼んでいる。

αとβの両者は、αを小さく(aの値を大きく)すると、βが大きくなるという関係がある。

2)αとβとサンプル数の関係

 サンプル数nの大小が検出力に関係するため、nを大きくした場合のαとβの関係を図2に示す。

図2では、HとH下の正規分布の分散が小さくなることで分布の形状が鋭くなり、a値も小さくなる。これにより、βも小さくなり、検出力の1−βを高めることができる。

これは、右片側検定のa値は次のように計算されるためである。a=μ+1.645×σ/√n

サンプル数と検出精度

3.改良後装置の採択に関する可否について

1)装置の改良目標(母平均μ=76.5kg以上)に対する検定と結果

帰無仮説H:μ=μ(μは76.5kg)、対立仮説H1:μ>μ、α=0.05、n=43で右片側検定を行う。検定統計量uは以下のように求められる。

=(X−μ)/σ/√n

=(77−76.5)/3/√18=0.07<1.645

上記の検定結果から、対立仮説は採択され、改良後の母平均μ=76.5kg以上とはいえない。

2)改良後装置の採用可否の結論 

 採択可否の方針として、@検出力を95%以上とすること、A95%以上の検出力の確保には、サンプル数は43個必要との条件があるため、この条件下で改良後の母平均μ=76.5kg以上の採用可否の検定を行う。

この場合は、母平均μ=76.5kg以上となる標本平均Xbarの95%信頼区間で検定統計量を活用する。

母平均μの下限値と母平均μ0の上限値が同じになる点で、検出力が95%になるので、以下の式でσ=3、n=43でμ値を計算すると、μ=77.503となる。

μ―1.645×σ/√n=μ+1.645×σ/√n

上記の検定結果から、検出力95%以上とする方針では、改良後の装置は採択されない。