H26年 機械部門、機械設計 Ⅱ-1-1問題(機械要素) 模範解答と解説

問題文

 機械システムは、全体として見ると複雑そうであっても、細かく見ると単純な部品から構成されている。機械システムに使われている部品のうち、特定の機械用ではなく広く共通に用いられているものを機械要素という。例えば、流体を導いたり、流体を用いて信号を送ったりする機械要素は流体伝達要素と呼ばれる。その具体例としては配管継ぎ手が挙げられる。機械要素を他に3つ挙げ、各々についてその機能や目的を具体例と共に述べよ。

模範解答(1) 答案形式

1.締結要素

①機能や目的

 機能は部材を接合して動かないようにするものであり、2つの部品を固定する目的がある。

②具体例(六角ボルト)

 螺旋状に加工した雄ネジをネジ溝に沿わせることで部品を締め付ける。

2.密封要素

①機能や目的

 外力を加えることで変形を起こし物体に密着するものであり、液体や気体の漏出防止を目的としている。

②具体例(Oリング)

 ゴムで形成されたOリングを接合面に設置し、部品間で圧縮させゴムが持つ弾性力により流体を封止する。

3.伝達要素

①機能や目的

 力を持つ物体と持たない物体の間に設置し力を移送する機能を持つ。また、動力や運動を受け取った側が次の部品へと力を供給する目的で使用される。

②具体例(歯車)

周速度から均一に歯を摩擦させ、歯車を噛み合わせながら回転することで次の歯車を回転させ力を伝えていく。

H26年 機械部門、機械設計 Ⅱ-1-2問題(DR;デザインレビュー) 模範解答と解説

問題文

 効率的な設計審査会(DR;デザインレビュー)を主催し運営するためには、事前に準備すべきドキュメント類、DR開催中での留意事項、並びにDR終了後のフォロー事項など様々な工夫が必要である。これらの工夫点のうち、あなたが重要と考えるポイントを3つ挙げ、その具体的内容について述べよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

.審査会前に準備すべきドキュメント類

(1)FMEA実施結果

 設計者がFMEAを実施し、各構成品の機能故障時にシステム全体に与える影響を評価し、必要な対策を講じる。特に前号機からの設計変更点や顧客の使用条件の変更等に起因して不具合が起きやすいため、この変更点に注目してFMEAを充実化させる。

(2)CAE数値解析による重要特性の検討結果

 PC上で3Dモデルを構築し、CAE解析を活用して、熱特性、構造特性等の重要な品質特性の検討を行う。試作品による試験検証を行う場合は計画書も併せて準備する。

2.DR開催中での留意事項

(1)過去の不具合事例の反映状況の確認

 類似製品の過去の不具合事例を社内のデータベース等からもれなく吸い上げ、原因と対策が、本設計に反映されているか確認する。不具合事例に基づく、再発防止チェックリストを準備し、設計の確認を行う。

H26年 機械部門、機械設計 Ⅱ-1-4問題(ユニバーサルデザイン) 模範解答と解説

問題文

 近年の急激な高齢化・グローバル化に伴い、国内外での法令化や規格化が進み、製品にユニバーサルデザインを配慮した製品が望まれてきた。一般にユニバーサルデザインでは7つの原則が知られている。そのうち3つの原則を挙げ、各々についてどのような配慮がなされているかを具体的な製品を挙げて述べよ。

模範解答(1) 答案形式

ユニバーサルデザインの配慮と具体的な製品

1.公平な利用

配慮:老若男女や障害の有無に関わらず、誰もが同じ手法で使用できる設計とする事。

具体的製品(万人向けハサミ):ハサミの取手の部分がカバーで覆われており、握るように使用するため、握力の弱い方や右利き左利き問わず使用することが出来る。

2.認知できる情報

配慮:意味を一目で理解できるよう強調したデザインである事。

具体的製品(警告板、標識):文字の使用を抑え、意味をイラストで表すことで視覚的に意味を理解することが出来る。

3.単純で直観的な利用

配慮:正しい使用方法のみ操作することが出来、誤操作が起きない設計である事。

具体的製品(USBメモリ):正しい方向のみ挿入することが可能であり、確実にデータを記録できるよう設計されている。

H26年 機械部門、機械設計 Ⅱ-2-2問題(最適設計) 模範解答と解説

問題文

 新製品開発においては、過去の設計、製造、市場での失敗事例などの経験を踏まえて設計を行うことが重要である。あなたが開発の責任者であるとして、機械設計の観点から、技術的知識の伝承を進めるためにどのような取り組みが可能か、以下の問いに答えよ。

(1)設計時に必要な明文化されていない技術的知識を具体的に3つ挙げ、これらを設計プロセスでどのように活用するか、それぞれ述べよ。

(2)それぞれの技術的知識を伝承するための課題とその解決策を述べよ。

模範解答 簡易答案形式

(1)−1 明文化されていない技術的知識

①安全率の設定方法 ②工具レスで組立可能な設計方法 ③分解・部品交換がし易い設計技術

(1)−2 設計プロセスへの活用方法

①安全率を適切な値にすることで安全を確保しつつ、コストを最小限とする設計をすることができる。

②工具や治具を使用せずに組立が可能な設計とすることで組立の制約条件を排除して組立コストを下げる。また工具の選定検討時間や治具の設計費用を削減できる。

③分解や部品交換をし易い設計として、サービス性やメンテナンス性を高めた製品設計を行い製品ライフサイクル全体でのコストダウンを図る。

(2)−1 伝承のための課題

①安全率の設計は勘や経験に基づいて決められることが多い。これらの暗黙知を形式知化することが課題である。

②工具レスを実現するためには組立工程での作業を理解する必要がある。そのため設計者の組立作業に対する知識や経験を向上させることが課題となる。

③分解を容易にするための手法として部品点数の削減がある。部品削減のためには部品や基板の統合や集約が重要であり、どのように統合・集約するかを判断する知識・技術が必要である。

(2)−2 課題解決策

①過去のトラブルや実績をデータベース化して設計条件を入力すれば安全率の目安が表示できるようにする。

②3DCADを用いて設計を行い製品設計と同時に組立工程設計を行う。アニメーション等を使って組立作業のシミュレーションを行い組立性について製造部門と一緒に検討する。

③各機能単位で部品を統合してモジュール化することで効率よく部品の統合・集約が可能となる。QFDを用いて各部品と機能の関連性を把握する。

H26年 機械部門、機械設計 Ⅲ-1問題(3Dプリンティング) 模範解答と解説

問題文

 2013年,米国のオバマ大統領は一般教書演説の中で,3Dプリンティング技術によるものづくりは,製造業の将来を牽引する新しい存在であると称えている。また,我が国では,2014年版ものづくり白書にて,「新しいモノの作り方として3Dプリンタを始めとする付加製造技術が,モノの作り方に大きな変革をもたらし得る技術であり,デジタルものづくりの流れを大きく進展させるものである。」との記述がある。このように近年,3Dプリンティング技術が注目されるようになったのは,従来にない高い自由度でものが作れるようになり,製造業のありかたを大きく変えていくのではという期待がもたれているからである。 3Dプリンティング技術を活用するとすれば,ものづくりの何が変わるかを想定して,以下の問いに答えよ。

(1)3Dプリンティング技術の普及によって,具体的な技術あるいは製品分野にどのような変革が想定されるか,また変革の結果,発生するであろう課題にはどのようなものがあるかを,機械設計者の観点から多面的に述べよ。

(2)(1)で述べた課題に対し,あなたが最も大きな課題と考える項目を1つ挙げ,その課題を解決するための具体的方策を提案せよ。

(3)(2)で述べた提案がもたらす効果やメリットを示すとともに,そこに潜むリスクやデメリットについて述べよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

1)具体的な変革と発生するであろう課題

(1−1)想定される変革

 3Dプリンタでは、樹脂又は金属の粉末に局所的にレーザー光線を照射して溶融させ、3次元的に積層することにより、複雑な形状を3次元的に一体成形することが可能である。3次元ラティス構造による軽量で高剛性な製品の実現、シームレス構造による部品間の接触面での熱伝導ロスの削減が可能となる。また、3次元CADデータに基づき、忠実に形状を加工することができる。

(1−2)発生するであろう課題

 3Dプリンタの製造方法では、成型時の熱膨張/収縮により変形し、寸法精度を満足できない。また、結晶組織が不均一となり強度が不安定となる等の問題点がある。 

①  形状、寸法精度確保 ア.プロセス中の熱膨張、熱収縮を事前に予測しておき、加工寸法の補正を実施。イ.加工後の熱処理により残留応力を除去。ウ.寸法のばらつきを吸収する製品設計の採用。

②  安定した強度確保 ア.粉末の溶融温度と冷却速度の最適化による結晶組織の均一化 イ.3Dプリンタ装置内に粉末金属の溶融状態をモニタするカメラを設置し、粉末の焼結工程と同時に金属内部の溶融状態、欠陥有無を診断する。

(2)最も大きな課題と解決するための具体的方策

 安定的に寸法精度を確保、また生じた寸法ばらつきを吸収するため、以下を実施。

①   熱変形量の予測 3Dモデルを使用し、プロセス中の熱膨張、熱収縮を予測する数値解析を実施。予測した変形量を考慮して、初期の加工寸法を決定。

②   残留応力除去 焼結成形後に焼きなまし温度にて熱処理を行い、製品内部に残留する応力を除去。成形後の熱変形を防止。

③  寸法ばらつきを吸収する設計 他部品との結合面等精度が必要な部位には、柔軟性のある材料を挿入して、寸法ばらつきによる形状の凹凸を吸収する設計を採用。

(3)(2)で述べた提案がもたらす効果やメリットとリスクやデメリット

・メリット 

ア.安定した寸法精度を確保でき、高精度な寸法が必要な製品への適用が可能となり、3Dプリンタの応用範囲が拡大。

イ.ユーザ使用時の温度変化等による寸法変化が生じない。製品の長寿命化が可能。

・デメリット 

ア.個々の製品にて変形量予測の検討期間、また加工後の熱処理工程が必要となり、コスト増、生産期間が長くなる。

イ.結合面に適用する柔軟性のある材料について、熱特性、構造特性を考慮した選定が必要となる。

H26年 機械部門、機械設計 Ⅲ-2問題(介護ロボット) 模範解答と解説

問題文

 経済産業省と厚生労働省によって提案された「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」においては、介護者の負担を低減するための介護機器、歩行等をアシストする介護機器認知症の人を見守るための介護機器などが提案されている。今後の社会において、このような介護機器の役割はますます重要になっていくと考えられる。このような現在の日本の社会背景から、以下の問いに答えよ。

(1)具体的な介護機器の例を1つ挙げて、その機器の開発・設計・導入・普及のために発生するであろう課題はどのようなものがあるかを、機械設計者の観点から多面的に述べよ。

(2)(1)で述べた課題に対し、あなたが最も大きな課題と考える項目を1つ挙げ、その課題を解決するための具体的方策を提案せよ。

(3)(2)で述べた提案がもたらす効果やメリットを示すとともに、そこに潜むリスクやデメリットについて述べよ。

模範解答(1) 答案形式

 介護機器の一つであるパワーアシストスーツを例に挙げ以下を述べる。

1.開発、設計、導入、普及のための課題

①安全確保

 パワーアシストスーツは身体に直接装着するものであり、スーツの誤作動により関節を損傷する危険性があるため人体を保護する方策は重要である。

②身体的負担の軽減

 このスーツは高齢者の使用も考慮しているため、フレームをハニカム構造にするなど強度を保ちつつスーツの小型化、軽量化を行い使用者の負担軽減を実施する必要がある。

③稼働時間の延長

 介護の現場で使用するため電池を大容量化し稼働時間を可能な限り延長する必要がある。また、急速充電を実現し、充電が完了した電池を交換することでスーツの稼働を止めないよう設計を行う。

④信頼性

 スーツを使用中にアシスト機能が停止した場合、全荷重が人体に掛かるため品質を向上し不具合を起こさない製品にすることが大事である。

 2.安全確保のための具体的方策

①FMEA(故障モード影響解析)

 FMEAにて構造部品に起こりうる故障を予測し、予測した故障に発生確率、影響度を定量的に評価し優先度を設定する。優先度が高い故障から対策を行うことで、考えられる不具合を事前に改善することが出来る手法である。例えばスーツのメインモータの軸受について解析を行い、考えられる故障モードを列挙する。摩耗、発熱、損傷などの故障モードを評価し、総合した評価値の高いモノから優先に設計上の改善、対策を検討する。

②危険除去設計

 製品事故の原因となるものを取り除く、または低減するよう設計を行う。スーツの不具合により関節が損傷するリスクがあるため、スーツの関節部に角度検出センサを設け、人体の関節の可動域を超えたことを検出した場合モータを停止させる措置を取る。同時に、関節の可動域外ではモータを起動できないよう設定し人体を保護する。

 また、万一角度検出センサが故障した場合に備え、物理的に関節を保護するストッパーを設置することで予想外の不具合にも備える必要がある。

③フォルトトレランス設計

 フォルトトランス設計により、製品に不具合が生じても予備の系統に切り替えて運転を継続する設計を行う。万一スーツの全電源を突如喪失した場合、アシスト機能が停止し、持ち上げている荷重が急激に使用者に掛かり使用者や介護者が怪我をする可能性がある。そのため、アシスト機能を急に失った場合でも本体側に設けた予備の電池にてアシスト機能を継続させる二重防護をとる。

3.上記提案の効果や潜むリスク

①効果

 FMEAや危険除去設計を行ったことにより、問題が発生する前に潜在的な故障や不具合を予防したことにより品質向上が見込まれる。さらに製品開発の初期段階に大きな作業負荷を掛けることにより、製造工程での事故発生予防や製造工程の効率化に向けた改善などに結びつき、初期工程にて品質を作り込むことができるフロントローディングも実現できる。

②潜むリスク

 安全設計を行うが不具合の予測や対策の検討により開発期間に遅れが生じ、市場に投入する時期が遅れるリスクがある。市場への投入が遅れた場合、納期の延滞により顧客の信頼を損なう恐れや、他の競合企業などに市場を占領されることがある。対処法としてコンカレントエンジニアリングを適用し、複数の工程を同時並行で進め、各部門間での情報共有や共同作業を行う事で、工程の短縮を実現させ納期短縮を実現する。

H26年 機械部門、流体機械 Ⅱ-1-1問題(サージング) 模範解答と解説

問題文

 ポンプ運転中に、吐き出し圧力と吐き出し量が激しい周期的変動を生ずることがある。この現象をサージング(surging)という。ポンプ揚程曲線を描きこの発生原因と対策を述べよ。

模範解答(1) 答案形式

 1.サージング発生原因右のP−Q曲線に示すようにサージングの原因は吐き出し量が少ない箇所において、抵抗曲線とP-Q曲線が並行もしくは重なり、P-Q曲線上で運転点が前後に動き、流量、圧力が定まらないからである。

2.サージングの対策

1)抵抗曲線の緩和P−Q曲線の抵抗曲線の勾配を緩和させるように、具体的には流量調節弁を開いてポンプ後の抵抗を少なくし、ポンプ内の抵抗を改善する。それにより抵抗曲線の傾きが緩やかになり、流量が多い箇所で、P-Q曲線と抵抗曲線の交点がはっきりと現れるので、安定した運転が可能となる。

2)流量増加P−Q曲線の流量を増加させるように、具体的にはバイパスなどをつけて流量を多くする。それにより、ポンプ内の圧力を緩和することができ、抵抗が少なくなり、抵抗曲線が緩やかになることで流量の多い箇所で抵抗曲線とP-Q曲線の交点ができ、安定して運転が可能となる。

H26年 機械部門、流体機械 Ⅱ-1-4問題(ピトー管とオリフィス) 模範解答と解説

問題文

 ピトー管を用いた流速計測法とオリフィスを用いた流量計測法について各々の原理を図を用いて説明せよ。またその計測方法の使用上の注意事項について述べよ。

模範解答(1) 答案形式

1. 計測原理

1-1  ピトー管

静圧が同じと考えることができるため、動圧がビトー管内の圧力差として表される。V12/2g+P1/ρ=P2/ρ+⊿PでP1=P2より、 として流速V1を導く。

1-2  オリフィス

V12/2g+P1/ρ= V22/2g+ P2/ρより、オリフィス通過前の流体の圧力がオリフィスを通過すると低下する。オリフィス前後の流量が同じで、オリフィスにより断面が狭くなることで、流速が早くなるためである。、およびCを流出係数とすると となり流速を求めることができる。

2. 使用上の注意

1)測定する流体の流れを均一な状態にする。

a)整流板を断面に設置し、均一にする。

b)管内の温度を一定に保ち、温度差を作らない。

c)測定前の段階で一度流体を撹拌させ、密度を同じ状態にする。

2)測定箇所を管内の断面で複数測定することにより、平均化する。

3) オリフィス板の穴部中心と配管の軸中心がずれると管内の上下で測定差が生じ正確な測定値がでない。

H26年 機械部門、流体機械 Ⅱ-2-2問題(流体機械の小型化) 模範解答と解説

問題文

 流体機械の小型化(又は軽量化)を推進するプロジェクトリーダーを命ぜられた。対象とする流体機械を一つ選定し、この業務を推進するにあたり、以下の問いに答えよ。

(1)   対象とした流体機械の構造について説明せよ。

(2)   小型化(又は軽量化)を実現するための方法と課題を挙げよ。

(3)   予想されるリスクとその対策を述べよ。

模範解答(1) 簡易答案形式

(1)対象となる流体機械

 脱硝装置の前に設置するアンモニア水気化チャンバー

 アンモニア液を空気と混合し気化させる装置。3m×2m程度の装置で、チャンバー内に置いてノズルからアンモニア水を噴射し気化させた後、配管に戻す。後流の管内の流速は15m程度にする。

(2)-1小型化を実現させるための方法

(a)1箇所から噴出されるアンモニア水の流量を増加させ拡散率を上げる

(b)乱流が起こすためレイノルズ数Re=ρND2/μを上げるためチャンバーの径を大きくし、タービンの回転速度を上げる。長さ方向を短くすることで、全体を小型化する。

(2)-2小型化を実現させるための課題

(a) 拡散率を上げるため、ノズルから噴出されるアンモニア水の粒子を平均30μm以下にする。

(b) 気化されていないアンモニア水を回収するためのエリミネーターを設ける。

(c) 攪拌効率を上げるため、チャンバー内にバイパスを設けて、循環させる。

(d)チャンバーのダクト形状を凹凸のあるものにし、乱流の効果を上昇させる。

(3)予想されるリスク

アンモニアの容量が空気に対して15%以上になると爆発の危険がある。エリミネーターで回収したアンモニア水が気化し、濃度を上昇させる危険がある。

対策: 

  • エリミネーターで回収したアンモニア水を外からの吸引力で、チャンバーの外に速やかに排出させる。
  • エアファンからの異物が発火の原因に影響を大きく与えるため、エアファンのフィルターを細かなものにする。

模範解答(2) 答案形式

1)対象となる流体機械

 脱硝装置前に設置するアンモニア水気化チャンバー

 アンモニア水溶液を空気と混合し気化させる装置。3m×2m程度の装置で、チャンバー内に設置されたノズルからアンモニア水を噴射し、気化させた後、配管に戻す。後流の管内の流速は15m程度にする。

(2) -1小型化を実現させるための方法

(a)ノズルから噴射される液体の拡散率増加

 ノズル数を減少させるため、1箇所から噴出されるアンモニア水の流量を増加させ拡散率を上げる。さらに拡散率を増加させるため、チャンバー内にバイパスを設けて、混合気体をチャンバー内に循環させる。

(b)混合気体のレイノルズ数を増加させる

 レイノルズ数の式がRe=ρND2/μであるから、乱流が起こるように、チャンバーの径を大きくする。径が大きくなるが、軸方向長さを短くし、全体の大きさを小型化させる。また、Re=ρvL/μであるから、混合気体の流速を上昇させるため、タービンの回転速度を上げる。

(2)-2小型化を実現させるための課題

(a)ノズルから噴出される液体粒子の微細化

 アンモニア水の拡散率を上げ、気化速度を上げるために液体の粒子を平均30μm以下にする。そのためには、ノズル出口の液体の圧力調整が必要になる。

(b)チャンバー出口からの液体流出防止

 チャンバー出口にエリミネーターを設ける。チャンバーの軸方向の長さを短くしたことにより、ノズルから噴出された液体が増量されているため、全て気化されない可能性がある。アンモニアの空気中における気体の濃度を一定に保つため、気化されない液体が、チャンバー出口から、流出しないようにする。

(c)チャンバー内を循環させる仕組みの構築

 チャンバー内にバイパスを設けて、混合気体の流れに新たに循環させる流れを作り出す。アンモニアの濃度を計算に入れて、循環させる気体の量を決めておく。

(d)チャンバー壁の改良による乱流の増幅

 チャンバーのダクト形状を凹凸のあるものにし、反射の角度を多様化し、乱流の効果を上昇させる。また凹凸部に液体が付着しない構造としておく。

(3)予想されるリスク

 アンモニアの容量が空気に対して15%以上になると爆発の危険がある。エリミネーターで回収したアンモニア水が気化し、濃度を上昇させる危険がある。温度の影響もあるため、高温状態ではさらに危険が高まる。

対策: a)回収したアンモニア水の早期排出

 エリミネーターで回収したアンモニア水を外からの吸引力等で、チャンバーの外に速やかに排出させる。また排出までの液体の気化量も考慮に入れる。

b) エアファンからの発火原因の異物除去と温度管理

 エアファンのフィルターを細かなものにする。また温度管理のためインターロックの装置を設置しておく。

H26/2014年 機械・情報精密 Ⅲ−2 問題 模範解答と解説

III-2: 温室効果ガスの排出量削減、大量廃棄型生産プロセスからの脱却、エネルギー消費の低減などを満たしながら、社会・経済活動を発展維持させる21世紀型の持続可能な産業・社会構造に我が国を転換していく必要がある。研究開発活動では、いわゆる”持続可能なモノづくり技術”の推進が挙げられるが、その技術について以下の問いに答えよ。

(1) 持続可能なモノづくり技術の研究開発に関して、あなたが携わる技術あるいは製品分野において検討すべき項目を多面的に述べよ。

(2) 上述した検討すべき項目に対して、あなたが大きな技術課題と考える項目を1つ挙げ、課題を解決するための技術的提案を示せ。

(3) あなたの技術提案がもたらす効果を具体的に示すとともに、実施する際に予想されるリスクについて述べよ。

模範解答1 (簡易形式1)  添削履歴 1回 2019/07/7   専門事項 精密機械開発

(1)  「手術支援ロボット」の持続可能なモノづくりとして、検討すべき項目

 手術支援ロボットとは、従来、外科医による患者の開腹、患部切除、縫合の動作を低侵襲に支援・代替するロボットのことである。患者体表に開けた複数の切除孔(ポート)からロボットアームを体内に挿入し、体内の様子をモニタ表示し、ロボットハンドで外科医の精密な手技を再現する。

①医療廃棄物の削減: ロボットハンド先端の処置具は血液等と接触する為、医療廃棄物となる。今後のロボット手術の普及に備えて、環境負荷の低減が必要である。

②小型化・軽量化: 現在の手術ロボットは大型で重量がある。つまり、多くの資源とエネルギーで製造されている。ロボット製造の省資源化、省エネ化が必要。

③医師の負担軽減: 長寿命化により、医師の仕事量が増加している。医師が直接操作しなくても済む制御機能の搭載など、医師の負担軽減が必要である。

(2) 課題「① 医療廃棄物の削減」の技術的解決策 

 体外からMRIで患者体内をモニタリングしながら、体外からの集束超音波により切除孔(ポート)なしで手術する。

  • 計画: 患者カルテ情報とMRIの3Dデータに基づき、AIが治療計画を立てる。
  • 観察: 予め取得した画像と対比しながら、MRIで患部を観察。
  • 認識: MRI画像に基づいて、AIがロボットアームに搭載された超音波音源を位置決めする。患部3DデータをVR表示する。 
  • 治療: 予め計画した条件で集束超音波を照射する。超音波照射法に応じて組織除去や蛋白凝固を行う。照射前後の画像差異から治療成否をAIが判定する。

(3) 効果と予想されるリスク 

(3)-1. 効果: 持続可能な病院経営を提供する 

          医療廃棄物をほぼゼロにし、バックヤード業務を削減できる。

          感染症の心配が要らない(追加の医療行為が発生しない)。

          切開や縫合等の複雑な動作が不要となるため、ロボット構成を簡素化できる。

(3)-2. リスク 

  • 臨床情報の不足によるAI誤診断による医療インシデントのリスク: AI判断に必要な情報の質・量を予め設定。手術情報不足のとき、不足内容のアラートを出す。
  • サイバーリスク: オンライン接続される電子カルテや装置のエッジ、ルーター、クラウドにおいて、暗号化や高度な個人認証、異常信号検知等の対策を行う。

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