問題文
流体機械の小型化(又は軽量化)を推進するプロジェクトリーダーを命ぜられた。対象とする流体機械を一つ選定し、この業務を推進するにあたり、以下の問いに答えよ。
(1) 対象とした流体機械の構造について説明せよ。
(2) 小型化(又は軽量化)を実現するための方法と課題を挙げよ。
(3) 予想されるリスクとその対策を述べよ。
模範解答(1) 簡易答案形式
(1)対象となる流体機械
脱硝装置の前に設置するアンモニア水気化チャンバー
アンモニア液を空気と混合し気化させる装置。3m×2m程度の装置で、チャンバー内に置いてノズルからアンモニア水を噴射し気化させた後、配管に戻す。後流の管内の流速は15m程度にする。
(2)-1小型化を実現させるための方法
(a)1箇所から噴出されるアンモニア水の流量を増加させ拡散率を上げる
(b)乱流が起こすためレイノルズ数Re=ρND2/μを上げるためチャンバーの径を大きくし、タービンの回転速度を上げる。長さ方向を短くすることで、全体を小型化する。
(2)-2小型化を実現させるための課題
(a) 拡散率を上げるため、ノズルから噴出されるアンモニア水の粒子を平均30μm以下にする。
(b) 気化されていないアンモニア水を回収するためのエリミネーターを設ける。
(c) 攪拌効率を上げるため、チャンバー内にバイパスを設けて、循環させる。
(d)チャンバーのダクト形状を凹凸のあるものにし、乱流の効果を上昇させる。
(3)予想されるリスク
アンモニアの容量が空気に対して15%以上になると爆発の危険がある。エリミネーターで回収したアンモニア水が気化し、濃度を上昇させる危険がある。
対策:
- エリミネーターで回収したアンモニア水を外からの吸引力で、チャンバーの外に速やかに排出させる。
- エアファンからの異物が発火の原因に影響を大きく与えるため、エアファンのフィルターを細かなものにする。
模範解答(2) 答案形式
1)対象となる流体機械
脱硝装置前に設置するアンモニア水気化チャンバー
アンモニア水溶液を空気と混合し気化させる装置。3m×2m程度の装置で、チャンバー内に設置されたノズルからアンモニア水を噴射し、気化させた後、配管に戻す。後流の管内の流速は15m程度にする。
(2) -1小型化を実現させるための方法
(a)ノズルから噴射される液体の拡散率増加
ノズル数を減少させるため、1箇所から噴出されるアンモニア水の流量を増加させ拡散率を上げる。さらに拡散率を増加させるため、チャンバー内にバイパスを設けて、混合気体をチャンバー内に循環させる。
(b)混合気体のレイノルズ数を増加させる
レイノルズ数の式がRe=ρND2/μであるから、乱流が起こるように、チャンバーの径を大きくする。径が大きくなるが、軸方向長さを短くし、全体の大きさを小型化させる。また、Re=ρvL/μであるから、混合気体の流速を上昇させるため、タービンの回転速度を上げる。
(2)-2小型化を実現させるための課題
(a)ノズルから噴出される液体粒子の微細化
アンモニア水の拡散率を上げ、気化速度を上げるために液体の粒子を平均30μm以下にする。そのためには、ノズル出口の液体の圧力調整が必要になる。
(b)チャンバー出口からの液体流出防止
チャンバー出口にエリミネーターを設ける。チャンバーの軸方向の長さを短くしたことにより、ノズルから噴出された液体が増量されているため、全て気化されない可能性がある。アンモニアの空気中における気体の濃度を一定に保つため、気化されない液体が、チャンバー出口から、流出しないようにする。
(c)チャンバー内を循環させる仕組みの構築
チャンバー内にバイパスを設けて、混合気体の流れに新たに循環させる流れを作り出す。アンモニアの濃度を計算に入れて、循環させる気体の量を決めておく。
(d)チャンバー壁の改良による乱流の増幅
チャンバーのダクト形状を凹凸のあるものにし、反射の角度を多様化し、乱流の効果を上昇させる。また凹凸部に液体が付着しない構造としておく。
(3)予想されるリスク
アンモニアの容量が空気に対して15%以上になると爆発の危険がある。エリミネーターで回収したアンモニア水が気化し、濃度を上昇させる危険がある。温度の影響もあるため、高温状態ではさらに危険が高まる。
対策: a)回収したアンモニア水の早期排出
エリミネーターで回収したアンモニア水を外からの吸引力等で、チャンバーの外に速やかに排出させる。また排出までの液体の気化量も考慮に入れる。
b) エアファンからの発火原因の異物除去と温度管理
エアファンのフィルターを細かなものにする。また温度管理のためインターロックの装置を設置しておく。