H26年、2014年 電気・電子部門、電気設備 Ⅱ-1-1問題 模範解答と解説

問題文

 自家用電気工作物の低圧側において、過電圧が発生する事例を2つ挙げ、それぞれについて過電圧発生の原因、メカニズム及び対策について述べよ。

模範解答 

1)雷サージによる過電圧が発生する事例 

①過電圧発生の原因

落雷による電磁誘導や静電誘導

②メカニズム

直接、屋外配線に落雷し、その雷撃電圧が配電線の電圧に印加される。また、落雷による電磁誘導の静電誘導により配電線に電圧が誘導され過電圧が発生する。

③対策

サージプロテクトデバイス(以下SPDと述べる)を保護対象機器と並列に接続することにより、SPDを経由し、サージ電流を接地極へ流し過電圧を防止する。

(2)マイクロサージによる過電圧が発生する事例

①過電圧発生の原因

インピーダンス不整合で発生する反射現象

②メカニズム

電圧キャリア周波数によって、ケーブルと電動機の接続点でインピーダンス不整合が起こると、接続点で反射現象が発生して、入力電圧と反射電圧が重なり過電圧となる。

③対策

3レベルインバーターおよびサージフィルターにてキャリア周波数を低くし、インピーダンス不整合による反射現象を無くして過電圧を防止する。

模範解答2 

1.過電圧が発生する事例

①変圧器の不平衡

②高調波電流発生

2.原因と対策

2.1変圧器の不平衡

①原因

 変圧器を複数設置する場合、変圧器の容量に大きな差があると変圧器が不平衡になり、過電圧が発生する。

②対策

 変圧器を複数設置する場合は、変圧器の容量を同じにする。

2.2高調波電流発生

①原因

 インバータ機器を設置すると高調波電流が発生し、過電圧が発生する。

②対策

 変圧器の1次側にコンデンサを設置する。

H26年、2014年 電気・電子部門、電気設備 Ⅱ-1-2

問題文

 電気設備の低圧側において地絡の故障が生じた際に、感電するメカニズムを述べ、有効となる感電保護対策を2例挙げ、それぞれの対策について述べよ。

模範解答 

1)感電のメカニズム

電気機器で地絡事故が発生した場合、地絡電流が電気機器内部から接地極と接続された電気機器筐体に流れる。その筐体に接触した場合に、筐体の抵抗値と接触した者の抵抗値により、地絡電流が分流されて流れることで接触した者が感電する。

(電気機器の筐体接地抵抗値(10Ωもしくは100Ω)と接触した者の抵抗値(500〜2000Ω)で並列回路となり分流された地絡電流が流れる)

(2) 感電対策

(2.1)接地抵抗値を小さくする

電気機器には筐体接地が行われているため、筐体接地の接地抵抗値を小さくすることにより、地絡電流を筐体接地に多く分流出来し、接触した者に流れる地絡電流値を小さくする。したがって有効な感電保護対策である。 

(2.2) 漏電ブレーカーの設置

電気機器の回路に漏電ブレーカーを設置することにより、漏電ブレーカー内部のZCTで地絡電流を検出し、短時間で回路を遮断することが出来る。(15mA・30 mA以上の零相電流を検出し、0.1秒以内で遮断する)したがって地絡発生後、すぐに回路が遮断されるため、有効な感電保護対策である。

模範解答2 

1.感電するメカニズム

 地絡故障が生じると漏れ電流が発生し、人が触れると人体から対地に流れる。

2.感電保護対策

①分電盤の分岐ブレーカーをELBにする。

 地絡故障が起きるとELB(漏電遮断機付き)が動作し、回路への電源供給を止める。電源供給が無いため感電しない。

②低圧絶縁監視装置を低圧幹線毎に設置する。

 地絡故障は、ケーブルや機器の絶縁抵抗が低下すると発生する。低圧絶縁監視装置を設置することにより

常時、絶縁抵抗の監視を行うことができる。

H26年、2014年 電気・電子部門、電気設備 Ⅱ-2-1

問題文

 近年、データセンターは国家に欠かせない社会基盤の一つとなっている。また、その性格からデータセンターのセキュリティーは最も重要な要件となっている。データセンターのセキュリティーのうち、入退室に関するアクセス管理(以下、アクセス管理という。) の電気設備に関して、以下の問いに答えよ。

(1)計画の際に検討すべき事項を述べよ。

(2)アクセス管理の概要と使用されるシステムについて述べよ。

(3)アクセス管理におけるシステムを1つ選び、その機能と留意すべき」事項を述べよ。

模範解答 

1) 計画の際に検討すべき事項

(1.1) ゲート数や対象人数に合わせたシステムの検討

 アクセス管理では、対象ゲート数および対象人数に合わせて、ゲート情報や対象者情報のデータ登録を行わなければならないため、ゲート数や対象人数に合わせたアクセス管理システムを選定する。

(1.2)エリアのレベル設定の検討

 重要エリアへの入室者を限定し、警備の強化や防犯を行うため、建物内を共通エリア、専用エリア、重要エリアごとにセキュリティーのレベルを定める。

(1.3)対象者ごとの入退出エリアの検討

 建物内で働く方(事務員・保守員・警備員・清掃員など) の仕事内容に合わせて、入退出できるエリアを定める。

(2) アクセス管理の概要と使用されるシステム

(2.1)アクセス管理の概要

 共通エリア、専用エリア、重要エリアごとに入退出できる人を制限することにより、部外者等を侵入させないように出入口でアクセル管理を行い、エリアの安全性を確保する。

 (2.2) 使用されるシステム

①出入口の開閉を行う電気錠とその制御を行うローカル制御盤システム。

②入退出者の情報を取得する認証装置とその取得情報を登録データと判断するシステム。

③ローカル制御盤の開閉制御情報および入退出者や現在の在出者情報を管理パソコンにて可視化するシステム。

(3) システムの機能と留意すべき事項

(3.1) 選定したシステム

 カード認証方法で扉の開閉を行うシステムであり、認証装置で取得したカード情報をローカル制御盤で判断して、電気錠の開閉制御を行う。また、ローカル制御盤の情報を管理パソコンと送受信して、アクセス管理の状況など総合管理を行う。

(3.2) システムの機能

 1台のローカル制御盤の機能として、1面あたりでゲート (電気錠)の開閉を制御できる台数は最大8ゲートである。また、1台のカード認証装置が1分間に認証できる最大件数は50件である。

(3.3) 留意すべき事項 

 電気錠によるゲート開閉は、1分間に16〜12名の処理能力しかない。したがって出勤時など従業員がゲート前で停滞する。

 時間当たり最大利用者数となる出勤時を想定し、ゲートやローカル制御盤の設置台数の設計を行う。また、電気錠によるゲートよりも開閉速度が速い自動改札機タイプのゲート(1分回で約25名の処理が出来る)の採用も検討する。

H26年、2014年 電気・電子部門、電気設備 Ⅲ-1

問題文

 我が国において、エネルギー需要に占める電力の割合の増大や、東日本大震災以降の深刻な電力不足に対して、エネルギー使用の合理化によるエネルギー消費量の大幅な削減が強く求められている。これらを踏まえ、将来のビルや工場におけるエネルギー使用の削減計画を立案することを想定し、以下の問いに答えよ。

(1)基本的な考え方を述べよ。

(2)基本的な考え方を実現する技術を2つ提案せよ。

(3)提案がもたらす効果及び提案を実現する課題を述べよ。

模範解答 

(1)基本的な考え方について

 エネルギー使用の削減計画に対する基本的な考え方として、電力の変換技術で発生する電力損失の削減を述べる。

電力の変換技術とは、変圧器による電圧の変換技術、LED照明や高効率電動機などの電力から光および動力へのエネルギー変換技術を対象とする。

 また、動力に関しては、インバータ制御機器などの周波数(交直)変換技術を活用した電気機器の効率向上(損失削減)も含む。

(2)基本的な考え方を実現する

(2.1)高効率電動機技術

 高効率電動機技術は、電動機で消費される損失を削減させ、効率向上を行う技術である。電動機の損失には「負荷損」、「無負荷損」、「機械損」があり、それぞれ以下のように削減させる。

①負荷損は、電気抵抗によって発生するジュール熱による損失であるため、損失削減として、コイル電線の断面積を大きくし抵抗を抑えることによりI

2

Rの損失を削減する。

②無負荷損は、磁気回路の磁場の変化に伴って鉄心に発生する損失であるため、磁束密度の最適化および低損失鉄心材料の採用を行うことにより損失を削減する。

③機械損は、回転子と固定子の軸受の摩擦抵抗による損失、冷却ファンの風損などであるため、冷却ファンの小型化や低損失グリースにより削減する。

 (2.2)インバータ制御技術

 交流電力を整流器で直流電力に変換し、その後IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)にて高速スイッチングを行う。その結果、電動機へ供給する電力周波数を変化させ電動機の回転速度を制御する。

 (3)提案がもたらす効果

(3.1)高効率電動機技術

 電動機と比べて損失が小さいため、省エネルギー効果が得られる。また、損失を削減した設計のため電動機自体の温度上昇や振動も小さくなり長寿命・高信頼性となる。さらに、軸受の摩擦抵抗の削減により軸受の保守回数が減少する。高効率電動機技術は様々な電動機を対象とするため波及効果が大きい。

(3.2)インバータ制御技術

 不要な定格運転を無くすことにより、省エネ効果が得られる。また、電動機の始動電流を低減させ、連続的に回転速度を変化させるため、電動機やポンプ・ファンなどの設備負担を軽減できる。したがって、ポンプやファンでは長寿命・高信頼性となる。さらにインバータ制御技術も、様々な動力設備に適用出来るため波及効果が大きい。

(4)提案を実現する課題

(4.1) レアアースに依存しない高性能磁石の開発 

 高効率電動機の性能は、磁性材料に依存しており、高効率電動機の磁性材料であるネオジム磁石により無負荷損の低減に貢献している。しかしながら、ネオジムはレアアースとして特定国の生産動向に影響されるため、価格や納期変動により安定供給に問題がある。 

そこで、レアアースに依存しない高性能磁石の開発や損失を少なくする軟磁性材料を用いた高効率電動機の設計および開発が必要である。

(4.2) SiC(シリコン・カーバイト,炭化珪素)半導体によるインバータの開発

 現在のインバータにて、電力の制御や供給を行いエネルギーの有効利用をになうIGBTにSi(シリコン)製の半導体が使用されている。このSi製の半導体では、損失を最小限に抑える限界値に迫っており、大幅な効率向上や小型・軽量化の実現が困難になってきている。

 そこで、SiC半導体を使用することにより、IGBTのスイッチングでの抵抗が小さくなり、発生する電力損失を低減でき、インバータ全体の電力損失を15〜30%低減する。また、200℃以上の高温動作が可能であるため、冷却機構を小型化することもできる。

 しかしながら、SiC半導体の高品質な大口径ウエーハを得ることが難しいなどの製造面の問題があるため、SiC半導体の高品質ウエーハの製造が課題である。

模範解答2 

1.基本的な考え方

近年、業務・家庭といった民生部門のエネルギー消費量が増大している。民生部門において継続的な省エネ対策が重要になっている。また、災害時に電源供給を止めないエネルギー供給体制の強化が重要になる。

2.実現する技術

2.1需要サイドの継続的な省エネ対策

(1)ピーク時間帯に使用する電気を燃料、熱エネルギーに転換させる。

①自家発電設備の活用

 ガスタービンエンジン、ディーゼルエンジン、蓄電池等を活用する。

②空気調和設備等の熱源を変更する。

 コージェネレーション設備を使用する。

(2)電気需要平準化時間帯における節電の徹底

①電力消費量のデマンド監視装置、BEMSの併用

②三相誘導電動機、電球型LEDランプを使用する。

 消費電力の少ない機器を使用する。

③設備の使い方を工夫する。

 タスクアンビエント照明や空調設備を集約し稼働させることにより消費電力を削減する。

(3)電気を消費する機械器具の使用する時間帯の変更(昼間から夜間へ電気消費エネルギーをシフト)

①電気器具、設備を使用する時間帯の変更

②蓄電池、蓄熱システムの活用

蓄電池は、リチウムイオン蓄電池、鉛蓄電地を想定している。蓄熱システムは、水蓄熱、氷蓄熱を想定している。

2.2エネルギー供給体制の強化

①自然エネルギーを利用した分散型電源を設置する。

 需要家の近くに太陽光発電設備、風力発電設備、蓄電池を設置する。

②災害を考慮したスマートコミュニティの活用

 スマートグリッドと連系させたシステムを構築することにより電力会社からの電源依存を少なくできる。

3.効果と課題

3.1効果

①資源制約、環境制約を乗り越える。

 発展途上国に省エネ、電源供給技術を提供することにより実現する。

②技術を核とした新産業を産み出し雇用にも貢献する。スメートコミュニティ技術を活用する。

③安定した電源供給を実現する。

 災害時に電気を止めない電源供給システムを構築する。

3.2課題

①太陽光発電、風力発電を大量導入した際に系統周波数の変動拡大や出力変動拡大による系統周波数の調整力が不足する。

②サイバー攻撃によるスマートコミュニティの機能停止。

③需要家のコスト負担が増える。

 自家用発電機、蓄電池等の設置を検討する際は、省エネとのトータルコストを検討する。

H26年、2014年 電気・電子部門、電気応用 Ⅱ-1-2問題(ハイブリッド駆動システム) 模範解答と解説

問題文

 自動車などの駆動システムでは、近年、内燃機関に蓄電装置とインバータ・回転機器を組合わせたハイブリッド駆動システムが多く用いられるようになった。このハイブリッド駆動システムが内燃機関のみで駆動される自動車に比べて、燃費低減や排出ガス削減が可能となる理由,及びハイブリッド駆動システムの課題を説明せよ。

模範解答1 

1)従来技術による自動車の燃費と排ガスの問題

 従来の内燃機関のみの自動車では、低速域の燃料効率が悪く、トルクも出せない出力特性のため排ガスを多分に排出していた背景がある。このため市街地など低速,停止などを多用する運転領域では無駄に燃費を消費させ燃費低減の原因と排ガス多く出す要因になっていた。

(2)HEVによる燃費低減と排ガス削減の理由

 内燃機関の効率は、低速域では低く排ガスも多く排出する。しかし、高速回転域では効率も高く低速域と比較し排ガスが抑えられる特長がある。HEVの燃料低減と排ガス削減の理由は主に、低速域と高速域の使い分けを以下内容で行っていることが挙げられる。

①無駄な燃料と排ガスを抑える高速高効率領域でエンジンを安定駆動させ発電機により発電する。

②発電した電力を蓄電池に蓄え、効率が悪く排ガスを多分に排出する低速域での走行時に、モーターを使用し走行する。

(3)HEVの課題

 更なる燃費及び排ガス削減には、現在低速域でのモーター駆動の対応を中速域まで使用範囲を拡張してゆくことが挙げられる。その為には、現在最大のエネルギー密度を持つリチウムイオン二次電池の更なる機能向上や新電池の開発。IPMSM等の駆動系やINVを含めた制御系の改善も合わせ行う必要がある。

H26年、2014年 電気・電子部門、電気応用 Ⅱ-1-3問題(巻線型誘導機可変運転) 模範解答と解説

問題文

 巻線型誘導機を可変運転する制御方法を2つ挙げ,その概要と特徴について説明せよ。

模範解答1 

1)一次電圧制御(二次抵抗速度制御)

①概要:トルクが一次電圧のほぼ2乗に比例する特性を利用した制御法。外部抵抗器で2次電圧を下げ低減するため損失及びすべりも大きく制御幅も狭い。

②特徴:損失とすべりの相関は次式で表すことができる。 Pi2=P0/(1-S)=Lc2/S 

(但し、Pi2;二次入力,Po;出力,Lc2;二次銅損)

 すなわち、Lc2=Pi2×S,Po=Pi2(1−S)となる。本制御はすべりSが大きいためニ次銅損も大きくなり出力が減少するため効率が悪化する。

 巻線型誘導電動機の場合、巻線に2次抵抗を接続し速度制御が可能となる(二次抵抗速度制御)。その場合、R2/S=一定の比例制御となることからR2を可変させることで回転速度の制御が可能となる。

(2)周波数可変 インバータ制御

①概要:N=120f/P×(1-s)但し N;回転数,f;入力周波数,P;極数,s;すべり。

よって、1次入力周波数を可変することにより速度制御を行う。実際は、入力電圧を可変させないで周波数のみ下げ制御を行うと磁気飽和となるためV/f一定制御でインバータにより周波数と電圧を可変させるVVVF制御を行うことで速度を制御する

②特徴:V/f一定制御では同一負荷トルクに対してすべりの発生が3〜7%と低く抑えられるため効率が高くできる。

H26年、2014年 電気・電子部門、電気応用 Ⅱ-1-3問題(インフラの海外展開) 模範解答と解説

問題文

 昨今,我が国で実績のある電力,鉄道,水道などのインフラを海外に展開するケースが増えている。その展開において,あなたが電気機器やパワーエレクトロニクス機器などの電気分野の責任者となった。このような状況において,下記内容について記載せよ。

(1)着手時に調査すべき内容

(2)業務を進める手順

(3)業務を進める際に留意すべき事項

模範解答1 

 わが国の優位性のある電気分野のインフラには、再生可能エネルギーとNaS蓄電池等がある。しかし再生可能エネルギーは変動の多い自然エネルギーを利用しており平準化のための蓄電システムが近年注目されている。また、デザーテック(アジア)等が提唱する砂漠地帯で発電した再生可能エネルギー(太陽光発電,風力発電)を長距離直流送電で消費地に送電する構想と組合せた電力供給システムが今後海外に展開されるケースが想定される。この想定をもとに、下記内容を述べる。

(1)調査すべき内容

①ロケーション調査:海外展開先の電力状況(需給量,電圧規格,技術品質レベル等)の調査を行う。

②再生エネルギー選定調査:今回の導入が見込まれる地域は、風力、太陽光発電ともに有望と考えられる砂漠地帯と仮定。風力発電または太陽光発電の選定するため、風量,風向,年間日照時間等の天候調査を行い地域に適した再生可能エネルギーの選定を行う。   

③目標と規模の調査:展開国の要望調査を行い。将来の電力需給予測とそれにともなう発電規模の拡張を予測した計画を行う。

 (2)業務を進める手順

①提案と計画の承認:上記調査により、太陽光パネル発電と蓄電池による電力貯蔵システムを用いた、直流送電による電力供給化計画を提案。承認を得る。

②太陽光発電所と都市間を結ぶ直流送電線等の送電インフラを構築する。

②太陽光発電所を順次建設し、メインとなる電力集電所及び変電所を構築する。

③分散した太陽光発電所をICTと電力網で連係し、マイクログリッドを構築する。

(3)留意すべき事項

 計画業務の課題:電力貯蔵付き太陽光発電では、太陽光パネルで発生したDC電力を蓄電池に蓄え平準化を行い、パワーコンディショナによりDC/AC変換し系統に連結し送電線で送る。このため電力変換と共に交流送電による都市部への長距離送電ロス10%を発生させる。

解決策の提案:

①分散した各太陽光発電所の蓄電池間を直流送電でネットワーク化を行う

②電圧差により潮流制御を行うことで、主電力貯蔵システムに集電し、都市部近郊までDC送電を行う

③都市部でDC/AC変換を行うことで交流配電を行う。上記より、太陽パネルで発電した直流電力を都市部まで直流送電することで電力変換ロスと送電ロスを低減させることが可能となる。(下図参照) 

H26年、2014年 電気・電子部門、電気応用 Ⅲ-2問題(メンテナンスの省力化) 模範解答と解説

問題文

 交通・物流,電力,情報通信などのライフラインにおいて,電気機器や関連設備は重要な役割を担っている。近年,これらのメンテナンスにおいて,経費削減の要求や労働環境の変化などにより,いっそうの省力化や効率化が求められている。このような状況を踏まえ,以下問いに答えよ。

(1)電気機器や関連設備のメンテナンスの省力化や効率化を図る上で検討すべき課題を多面的に述べよ。

(2)あなたが挙げた課題から1つ選び,それを詳述するとともに,解決するための技術的提案を示せ。

(3)あなたの技術的提案がもたらす効果を具体的に示すとともに,そこに潜むリスクやデメリットについても論述せよ。

模範解答1 

(1)電気関連設備のメンテナンスの課題

①水力貯水ダムのコンクリートのひび割れ検出

 コンクリート劣化によるひび割れなどによるダムの崩壊は、下流域に住む住人や都市部に大きな被害を与える。しかし、コンクリートのひび割れ等による歪み検査は、目視にたよるしかなく、また広範囲の検査を必要とするため省力化が難しい。さらに破壊が生じるなど緊急を要する危険を検出するには、遠隔通信技術を用いたリアルタイムによる測定が必要になる。 

②電信柱のひび割れ(耐久性診断)

 超音波発振子により超音波を発生させ、超音波を特定の深さと位置に収束させ画像化することで電信柱の内部のひび割れ等を診断できる超音波探傷装置が現在研究開発されている。

③地中送電ケーブルのメンテナンスと設置箇所の確認

 電磁波を地中に照射し、反射波の時間を計測することで地中埋設管や地中送電ケーブル,空洞の調査に電磁レーダー使用されおり、短時間に広範囲の調査を実現するため、電磁波レーダーを搭載した巡視車が活躍している。

 課題は、電磁波の周波数により深さと画像の分解能が異なるため、ワイドバンド化やソフトによる評価法など複合的な技術改善による判断制度の向上が必要になっている。   

(2)水力貯水ダム等のコンクリートインフラ検査技術

 水力発電用の貯水ダムのひび割れ劣化等による大型コンクリート構造物の歪み検査の省力化と緊急時の対応のためリアルタイムに検査が可能な光ファイバー歪み測定装置の使用を提案する。

[原理]

 光ファイバーはガラス分子密度のムラによる屈折率の違いからレイリー拡散する反射光の波長が異なる固有特性を持つこれにより

①歪み箇所で反射光の波長のズレを発生

②歪み前後の反射光を比較することで発生位置と歪み量を検出できる。

[概要]

 光ファイバーケーブルを対象物であるダムの表面に貼り付けることで、連続的な線や面を対象にした広範囲な歪み検出を、目視による人手を掛けずにリアルタイムに行うことが出来る。

(3)提案の効果及びリスク

[効果]

①センサー部の給電が不要のため、駆動電力の供給やメンテナンスが不要となる

②雷などによる電磁界の影響を受けない

③ガラスを使用しているため、経時変化が少なく耐腐食性が高い

④低損失の特性より長距離の計測が可能で、現状最長もので30kmまで検出が出来る

⑤現状までの目視による検査と比較しコスト・設置時間の削減と省力化が可能となる

⑥制度とともにリアルタイムでの測定が可能である

[リスク及びデメリット]

 現在の光ファイバーによる最長の歪み測定装置の実力としては、測定距離30km、測定箇所としては5〜6ポイントのリアルタイムによる測定が可能となっている。しかし、絶対的に測定ポイントの数が少ないため配置箇所にムラがある場合、コンクリートクラックが見過ごされ危険を検出できないリスクがある。

 このため、測定ポイントを密にし、更なる大型インフラや遠隔地からの検出が可能なよう、広範囲の測定能力と測定距離の向上が必要とされている。

 測定ポイント数の高密度化の対応としては、光ファイバーの複線化等が必要である。

また、遠隔地からのリアルタイム計測の対応としては、ICTを活用しデータを中継する基地局を配置するなど、測定エリアの拡大や拡張,遠隔地からの測定が可能なよう更なる改善を進めて行く必要がある。

H26年、2014年 電気・電子部門、電気設備 Ⅱ-2-2

問題文

  ビルの屋上に太陽電池発電設備を導入するプロジェクトに、電気設備の担当者として参画することとなった。導入する発電設備を計画するに当たり、以下の問い答えよ。(1枚以内)

(1)経過うするに当たって確認すべき項目を3つ示し、そのうち最も重要と考える1つについて、その具体的内容を述べよ。

(2)太陽電池発電設備を構成する主要機器のうち最も重要と考える機器1つについて、選定又は施工上で考慮すべき内容を述べよ」。

(3)発電設備の設計・業務の手順を説明せよ。(2枚以内)

模範解答 簡易答案形式 

1.計画時の確認事項

①太陽光発電電力容量

②災害時の電源供給対策

③系統連系事故対策

2.最も重要な確認項目

①系統連系事故対策

災害時や事故時、保守点検時に感電しないように系統連系保護装置を設置する。

3.主要機器で重要と考える機器

(1)パワーコンディショナ盤

①選定又は施工上で考慮すべき事項

 保守を考慮して10KW毎に機器を分ける。また、災害時に盤が倒壊しないように床面・壁面の両方を固定する。

4.発電設備の設計・業務の手順

①太陽光発電電力容量検討

②太陽光モジュール設置スペース検討

③自然災害を考慮した耐震対策検討

④系統連系事故対策

H26年 応用理学部門、地質 Ⅱ-1-4問題(地熱資源) 模範解答と解説

問題文

 地熱資源の地質的要因と探鉱法を簡潔に述べよ(1枚以内

模範解答(1) 答案形式

1.地熱資源の地質的成因

地下深部に浸透した雨水(天水)が、火山活動1万年から100万年の間の火山性熱源で温められた結果、200〜300度の地熱熱水となる。地熱熱水は浮力を得、地下深部から上昇するようになる。上昇した地熱熱水は帽岩と呼ばれる難浸透層が存在する地質構造で、かつ断層・破砕帯が存在するような場に地熱貯留層を形成し地熱資源となる。

2.地熱資源の探鉱法

①  地質学・地化学的手法:有望地域における火山活動年代の把握、高度粘土化帯(変質帯)の把握、温泉水の分析による地化学的貯留層温度の抽出。

②  地球物理学的調査:重力探査による密度(基盤)構造、断層・断裂位置の抽出。電磁探査MT法による比抵抗構造から断層・断裂位置、高温域、帽岩の抽出。

③  試錐調査:有望域において構造試錐を行い、「噴出-還元試験」の実施。貯留層シミュレーションを行い、開発計画を策定する。

H26年 応用理学部門、地質 Ⅱ-2-2問題(地質調査の不確実性) 模範解答と解説

問題文

 地下を対象とした土木事業や開発事業において事前の地質調査は、立地条件や設計条件、開発条件などを明らかにするために実施されるが、地質調査の手法や数量には制約があるため、調査結果には地質的要因による不確実性がつきまとう。事業実施段階(施工段階)において、これらの不確実性に起因する事業コスト増加あるいは採算性の低下が懸念される事象が発生した際の対応について、以下の問に答えよ。

(1)対象とする事業を1つ設定し、事業実施段階においてコスト増加に繋がる地質的要因を3つ挙げよ。

(2)(1)で挙げた要因のうち1つを選び、コストを最小化するための対応手順を述べよ。

(3)対応に当たって留意すべき点について述べよ。

模範解答 簡易答案形式

(1).道路新設工事のコスト増要因

コストが何故かさむのか

地すべり等不安定斜面の崩壊:路線位置が寸断され、地すべり対策工事が発生し路線変更費がかかる。

断層等不連続面の発生による遮断:不連続面の発生により路線上に段差・亀裂が生じ、道路修復費がかかる。

軟弱層による沈み込み域:車両往来に伴う想定荷重に耐えられない路線であることが明らかとなり、追加杭基礎施工、コンクリート補強費がかかる。

(2)コストを最小化するための地すべりの対応手順

①  排土工:地すべり頭部付近の不安定土塊を除去し、滑動力を低める。

②  押え盛土工:地すべり斜面末端部に盛土を施し、地すべり進行を防ぐ。

③  表面水・地下水対策:地すべり地は降雨で活動が活発化することが多いことから、地表の開口クラックにはブルーシートを設置し水の吸収を防ぐ。すべり面からの大量の湧水があれば地下水排除を行うため、横ボーリング排土工を行う。 

3.対応に当たっての留意点

①地すべりは上方に進展しやすい。よって排土工実施前は上方のクラックの有無に留意し、上方の地質踏査、空中写真判読による安定範囲で排土量を決定する。

②地すべり範囲における地表地質踏査を行い、湧水、微細亀裂、軟弱層からすべり面弱部を推定する。すべり面弱部を結ぶ測線で電気探査を行い、低比抵抗部である強度低下部を抽出し、横ボーリング工で滑動力を低減する。

③地盤変位量・変位方向、雨量・地下水位モニタリングを実施する。地盤変位傾向を経時的に観測し、定常滑りが加速する状況を捉えられる計測体制を構築する。

H26年 応用理学部門、地質 Ⅲ-2問題(他分野技術者との協同プロジェクト) 模範解答と解説

問題文

 地質技術者は、これまで社会基盤等の建設、資源開発、農地開発、防災対策等の事業において、他分野の技術者や専門家と協同しつつプロジェクト推進をはかってきた。社会情勢の変化や技術の進歩に伴い、今後地質技術者の活躍する領域はさらに広がっていくものと考えられる。

 このような情勢を踏まえ、地質技術者と他分野の技術者や専門家との協同プロジェクトについて、以下の問いに答えよ。

(1)協働プロジェクトを1つ設定し、地質分野と他分野の構成を示した上で、各々の分野の技術者や専門家が担う役割について記述せよ。 

(2)他分野の技術者や専門家との協同プロジェクトにおいて、あなたが特に重要と考える課題を2つ挙げ、その理由を述べよ。 

(3)上記の2つの課題について、解決するためのあなたの提案を課題ごとに述べよ。その際、あなたの提案がもたらす可能性のある負の効果についても触れ、これを最小にするための方法も記述すること。

模範解答 簡易答案形式

1.協同プロジェクトの設定とメンバー構成

 協同プロジェクトとして地熱開発事業を取り挙げる。

メンバー構成:地質技術者。掘削の技術者。社会工学の専門家。

“地質技術者”の役割:火山年代、地質構造を把握する。全体の統括を行う。

“掘削技術者”の役割:坑井掘削を行い、坑井を利用し資源量を明らかにする。

“社会工学専門家”の役割:行政、地権者、温泉事業者、地元住民との調整。

2.協同プロジェクトにおける2つの課題と理由

①地熱流体の循環。理由は生産する地熱流体と地下で循環・供給される地熱流体の収支バランスをとることにより、持続可能な発電に結びつくからである。

②温泉帯水層に影響しない地熱貯留層を開発すること:理由は周辺住民を含めたトータルの公益性を高めることである。

3. 2つの課題の解決法とその解決策での負の効果、最小化する方法

①についての解決策・負の効果・最小にするための方法

 解決策としては断層・断裂帯の形状を明らかにし、生産井・還元性を利用した地熱流体の循環を行う。負の効果は貯留層に新たな水みちを作ってしまい、周辺の地下水利用に異常を生じさせてしまうこと。最小化のためには、生産・還元井の配置・深度の変更を行い、モニタリング結果から、安全側の開発規模にしていく。

②についての解決策・負の効果・最小にするための方法

解決策:温泉帯水層と地熱貯留層の流動位置、特性を求める精度を上げること。負の効果は精度を上げた結果、データの内容が細部にわたる詳細なものとなり、結果判断に専門的な解釈が必要となること。最小化のためには、流体流動解析を実施し周辺影響を定量的に評価し、影響が統計的な許容範囲(信頼区間内)内であることを示す。

H26年 衛生工学部門、空気調和 Ⅲ-1問題(河道閉塞・天然ダム) 模範解答と解説

問題文

 わが国でも公共サービスの提供に際して公共施設が必要な場合に、民間資金や民間の技術を活用して、民間に施設整備と公共サービスの提供を委託するPFI制度が定着してきた。PFIについて以下の問いに答えよ。

(1)  PFIにおける発注者側の利点と事業者側の利点をそれぞれ説明し、さらに、このPFIを成功に導く重要な項目を3つ挙げ、項目ごとに説明せよ。

(2)  PFIで事業者側が応札する際に空気調和設備の担当責任者として留意すべき事項を3つ挙げ、項目ごとに説明せよ。

(3)PFIに潜むリスクを空気調和設備の範囲で2つ挙げ、その内容と対応策について述べよ。

模範解答1   簡易答案形式

(1)-1<発注者注者側の利点>

①  初期費用の低減が可能

民間の資本を利用できるため、初期費用が低減でき本来の公共サービスに資金を使うことが可能となる。

②  長期的に優れたシステムの採用が可能

設計から施工、運営まで含めた評価であるため、長期間で事業運営技術を評価することが可能となり、LCCの最小化など恩恵を享受できる。

<事業者側の利点>

①  受注範囲が広がることでの収益向上

設計から施工、維持管理まで行うことで従来の設備工事のみの場合と比較して受注範囲が拡大して収益が向上する。 

②  長期間の契約による安定経営。

長期契約により安定的な収入が得られ、人員の計画的な配置が可能となる。

(1)-2<成功に導く重要な項目>

①  当事者の役割および責任分担を明確化

発注者側が必要とするものを明確にした上で、当事者間の役割や責任分担を明確にして、変動要素を考慮した費用の負担に関する取り決めを行う。

②  公共施設として省エネルギー性に優れたものとすること

採用するシステムはトップランナー製品の採用や自然エネルギーの利用など省エネルギー性に優れたものとする。

③  リスクの適正評価

リスクを過大に見積せず、設備の重要性を考慮しリスクを定量評価できるものとできないものの区別を明確にする。

(2)PFI応札時に空気調和設備の担当責任者として留意すべき事項

①事業目的(財政負担の縮減、省エネルギー等)を把握して、考えられるリスクと責任分担を明示し、変動要素に対する費用負担の考え方に留意する。

②高断熱材や高効率モータなどのトップランナー製品に加えて、外気冷房の採用など自然エネルギーの利用を積極的に提案し優れた省エネ提案とする。

③施設の重要性に応じた過剰設備とならない提案とする。リスクの定量化が困難な事項は発注者側に予め明示して、応札時に過渡なリスクテイクは行わないようにする。

(3)潜むリスクと対策

リスク1.公共サービスの利用度が想定と異なることによる委託料の変動

対応策1.事業者への委託料を基本料金と従量料金に分けて、変動が予想される公共サービスの利用に関しては、柔軟に対応できる料金体系とする。

リスク2.事業終了時の周辺環境や撤去条件の変更など定量化が困難なリスク

対応策2.事業終了の一定期間前に、双方で修繕費用、撤去・原状回復費用の確保手続きについて取り決めるようにする。

模範解答2   答案形式

(1)-1<発注者注者側の利点>

①初期費用の低減が可能

 民間の資本を利用できるため、初期費用が低減でき本来の公共サービスに資金を使うことが可能となる。

②長期的に優れたシステムの採用が可能

 設計から施工、運営まで含めた評価となるため、長期間での事業運営技術を評価することが可能となり、LCCの最小化、民間事業者の経営上のノウハウや技術的能力などの恩恵を享受できる。

<事業者側の利点>

①  受注範囲が広がることでの収益向上

 設計から施工、維持管理まで受注できることで従来の設備工事のみの場合と比較して受注規模・範囲が拡大して収益が向上する。 

②  長期間の契約による安定経営

 長期契約に安定的な収入が得られ、人員の計画的な配置が可能となるなど、長期的視野に立った安定的な経営に貢献できる。

(1)-2<成功に導く重要な項目>

①当事者間の役割および責任分担の明確化

 発注者側が必要とするものを明確にした上で、当事者間の役割や責任分担を明確にする。

②  省エネルギー性に優れたものとする

 発注者である公共団体は、地球温暖化防止に対する法律により、率先して省エネルギーに取り組むことと規定されている。また事業の合理性を市民に対して説明する責任がある。このためシステムは、トップランナー製品や自然エネルギーの利用など省エネルギー性に優れたものを採用して、LCCの最小化により費用対効果の高いものとする。

③  リスクを適正評価し信頼性を高める

 設備の重要性を考慮のうえ、機器故障時の影響度を適正に評価して、空調熱源の複数台設置、遠隔監視による予防保全、汎用機器の採用による故障時の短納期対応等にてリスクを低減することで信頼性を高める。

(2)応札時に空調設備の担当責任者としての留意事項

①冗長性、応答性の高いシステムの採用

 発注仕様が仕様規定である民間工事と異なり、PFIは性能規定となる。このため、温湿度条件や運転時間などの変動に追従する必要があり、システムは冗長性や応答性を高めたシステムとする。

②  省エネルギー、LCCの最小化提案

 高断熱材や高効率モータなどのトップランナー製品に加えて、外気冷房の採用など自然エネルギーの利用した優れた省エネ提案とする。また、LCCの最小化のために、電力負荷パターンに即した電力小売事業者の選定候補を盛り込んだものし、設備費低減については経済産業省などの補助金の利用を提案する。

③  過剰設備とならないようリスク評価する

 公共施設であることから、災害時にも電気、空調が必要となるが、施設の重要性を考慮してリスクを定量的に見積り、過剰設備とならないようにする。その際、VFM(Value for Money)での評価により、従来方式とPFI方式を比較した際に、結果として公的財政負担の縮減となるようにする。

(3)潜むリスクと対策

リスク1.委託料の変動に関するリスク

 契約が長期であるため公共サービスの利用頻度の変動により、委託料が想定と異なることがある。変動要素に対する委託料の考え方の取り決めが必要である。

対応策1.委託費用を基本・従量料金制とする

 事業者への委託料を基本料金と従量料金に分けて、変動が予想される公共サービスの委託料に関しては、料金体系を細分化する。

リスク2.周辺環境変化など定量化が困難なリスク

 周辺環境や法規制の状況などリスクの定量化が困難な場合がある。例えば契約終了時、設備の撤去条件が変わり、設備の再利用が困難になることが考えられる。

対応策2.流動性のあるシステムの採用

 システムは汎用性、流動性のあるものとする。例として機器はユニット化し、配管等は極力、単一材料を採用することで機器や配管財の再利用を容易にする。

平成26年、2014年 金属部門、金属材料 Ⅱ-2-1問題(海外技術供与) 模範解答と解説

問題文

 海外の鉄鋼メーカーヘ,高強度鋼板の製造技術を有償で供与することになった。本契約の締結に当たり,技術系の担当責任者として留意すべき以下の内容について述べよ。

(1)現地の工場ラインで製品を製造するに当たって,予測される問題点

(2)必要となる具体的な技術的調査項目

(3)海外へ技術譲渡することで発生しうるメリット,及びデメリット

模範解答 答案形式

測される問題点

1.1熱間圧延・冷却工程管理不足による強度未達 

 高強度化には、熱間圧延での大きな圧下率、および硬いミクロ組織生成のための大きな冷却速度が必要である。しかし、これらの工程管理技術の不足により、高強度鋼板が製造できない。

1.2熱処理不備による高強度化での成形性悪化

 熱処理制御不備によりミクロ組織の大部分を硬質組織が占めるため、強度が高いが延性が低下し、成形性が悪い鋼板が製造される。

技術的調査項目

2.1熱間圧延条件調査

2.1.1オーステナイト結晶粒の大きさ

 高強度化に必要な直径1μm以下を基準として、オーステナイト結晶粒の大きさを測定・比較し、海外メーカーの熱間圧延工程での圧下率を確認する。

2.1.2冷却条件調査

 ミクロ組織観察により、高強度化に有効な硬質組織(ベイナイト、マルテンサイト)の生成状況から、冷却制御レベルを確認する。

2.2熱処理条件調査

2.2.1軟質と硬質組織の割合

 高強度鋼の成形性は、延性に優れる軟質フェライトと、強度向上に有効な硬質ベイナイトおよびマルテンサイトの生成割合で決まるため、熱処理(焼鈍)の状況を確認する。

3.発生しうるメリット・デメリット

3.1メリット

3.1.1海外拠点への設備投資・開発費の抑制

 海外拠点への莫大な投資による設備導入より、現地メーカーの既存設備で製造・開発される鋼板に対するロイヤリティーを供与する方が、収益性が高くなる。

3.1.2高強度鋼板のスタンダード化による市場拡大

 高強度鋼板に対する新興国市場のニーズは、まだ低い。しかし、今後省エネルギー化促進のため、軽量化に有効な高強度鋼板が新興国で一般化されることで、市場ニーズが拡大する。

3.2デメリット

3.2.1技術情報流出

 海外現地の知的財産保護の不十分さから、技術ノウハウの無断での売却、現地技術者が他メーカーへ持ち出すことにより、技術情報が流出する恐れがある。

3.2.2マーケットシェア低下

 海外メーカーは、最新鋭の設備を導入し、優れた人材を確保し、潜在的高い技術を保有する。そのため、海外メーカーは、比較的短期間で、我が国の技術レベルに達する可能性がある。また海外メーカーは、地理的な距離の近さ、低い製造コストから、マーケットシェアを奪う可能性がある。

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