問題文
Ⅲ-2 地盤構造物(盛土、切土、擁壁、構造物基礎等)に発生するトラブルでは、地盤の不確実性に起因するものも多い。そのため、地盤構造物の計画及び建設に当たっては、調査・設計・施工の各段階において、地盤の不確実性の影響によるリスクを可能な限り把握し、低減させるよう努める必要がある。
(1)地盤構造物の計画及び建設に当たり、地盤の不確実性の影響に対応するため、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
模範解答1 (簡易答案1) 添削履歴8 作成日2020/4/5 建設部門 科目:土質基礎 専門事項 土質
(1)地盤の不確実性に対応する課題
①ボーリングデータには数の限りがあり、それだけでは地質が三次元的に読めないためマクロ地形データを活用して、基礎地盤の構造を細かく把握する。
②設計段階で安全率、地耐力等の性能変動幅上限値を設定し、施工時の前提条件のの不確実さを小さくする。
③基礎施工しながら、同時に支持層を確認し、また原位置試験等により土質を確認し、設計条件を満足しているか判定する。
④施工後の地盤沈下等を想定して、地盤改良工法などの対策工を検討し、地質の不確実性に対処しやすいよう備える。
(2)施工における支持層確認
①支持層が浅い場合には平板載荷試験を実施し、原位置において直接的に支持層の確認を行う。
②杭の施工に際しては、、打撃による貫入量の減少やリバウンド量の増加により支持層到達を確認する。場所打ち杭では、掘削土や掘削速度の減少、掘削抵抗の増加により判断する。
③支持層に対して土質試験を実施し、設計時に定めていた支持地盤の土質分類や粘着力、内部摩擦角、単位体積重量等を確認する。得られた定数から支持力公式により支持層が得られる地盤であるか判断する。
(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策
リスク:施工時の原位置試験の支持層確認による地盤破壊や、土質試験のためのサンプリングに伴う地盤の乱れにより、支持地盤の強度低下が懸念される。
対策:原位置試験においては、地盤破壊に留意して極限支持力を求めるのではなく、設計値が得られているかどうかだけを確認することで、地盤が破壊する可能性を減らし地盤の乱れを回避する。
支持層の土質試験のためのサンプリングにおいては、支持地盤の中でも計画床面より上部を採取することで、支持地盤の乱れが施工に影響しないようにする。
模範解答1 (簡易答案2) 添削履歴2 作成日2020/4/9 建設部門 科目:土質基礎 専門事項 土質
(1)地盤の不確実性に対応する課題
①ボーリングデータには数の限りがあり、それだけでは地質が三次元的に読めないためマクロ地形データを活用して、基礎地盤の構造を細かく把握し、限られた調査の中で不確実性の影響を少なくする。
②設計段階で安全率、地耐力等の性能変動幅上限値を設定し、施工時における現地盤の前提条件との不確実差を小さくする。
③基礎の施工においては同時に支持層を確認し、また原位置試験等により土質条件を把握して、設計条件を満足しているか判断することで不確実性の影響を低減する。
④施工後における地盤の沈下等を想定して、地盤改良工法などの対策工を検討することで、地盤の不確実性の影響に対処できるように備える。
(2)施工時における支持層地盤の確認方法
①原位置における支持力の直接算出
支持層が浅い場合、平板載荷試験を実施することにより、原位置において直接的に支持力を算出して、支持層として必要な地耐力が得られる地盤であるか確認する。
②杭施工における打撃回数や掘削抵抗の確認
打ち込み杭の施工においては、打撃による貫入量の減少やリバウンド量の増加により支持層到達を判断する。場所打ち杭では、掘削土の目視による確認や掘削速度の減少、掘削抵抗の増加により支持層到達を判断する。
③地盤定数結果からの支持力算出
支持層に対して粒度試験や三軸圧縮試験、湿潤密度試験を実施し、設計時に定めていた支持地盤の土質分類や粘着力、内部摩擦角、単位体積重量等を確認する。得られた定数からテルツアーギの支持力公式を利用して、構造物基礎形状と各地盤定数の関係により支持力を算出し、支持層が得られる地盤であるか判断する。
(3)解決策のリスクとそれに対する課題
①支持層確認に伴う地盤の乱れ
施工時における平板載荷試験の実施による地盤破壊や、杭施工における過度の打撃や回転力による支持層の乱れ、土質試験のサンプリングに伴う地盤の乱れにより、支持層地盤の強度低下が懸念される。
②地盤を乱さないための支持層確認
平板載荷試験においては、地盤破壊に留意して極限支持力を求めるのではなく、設計値が得られているかどうかだけを確認することで、地盤が破壊する可能性を減らし支持層の乱れによる強度低下を回避する。杭の施工においては、無理に孔径以上の根入れを行おうとするのではなく、土質柱状図や試験杭により定めた打ち止め一打あたりの貫入量や回転抵抗により根入れ深さを決める。土質試験のためのサンプリングにおいては、支持地盤の中でも計画床面より上部を採取することで、支持地盤の乱れが施工に影響しないようにする。
模範解答1 (完成答案) 添削履歴0 作成日2020/4/10 建設部門 科目:土質基礎 専門事項 土質
(1)地盤の不確実性に対応する課題
①マクロ地形データ活用による地盤把握
ボーリングデータには数の限りがあり、それだけでは地質が三次元的に読めないために、支持層の深さなどのばらつきを把握することが困難である。そのため、マクロ地形データを活用して、基礎地盤の構造を細かく把握することで、限られた調査の中で不確実性の影響を少なくする。
②設計時の安全率、性能変動幅上限値の設定
設計段階で安全率、地耐力、地盤定数等の性能変動幅上限値を設定し、施工時における現地盤の前提条件との差を小さくすることで、地盤の不確実性の影響を低減する。
③施工における支持地盤の確認
基礎の施工においては同時に支持層を確認し、また原位置試験等により土質条件を把握する。施工の段階で設計条件を満足しているか確認することで、設計と施工の条件の違いによる地盤の不確実性の影響を回避する。
④不確実性の影響における対策工の検討
地盤構造物の施工後に発生する沈下等のトラブルを想定して、地盤改良工法などの対策工を検討しておくことで、地盤の不確実性の影響に対処できるように備える。
(2)施工時における支持層地盤の確認方法
①原位置における支持力の確認
支持層が浅い場合は平板載荷試験を実施することで、原位置において直接的に支持力を確認する。これにより、支持層として必要な地耐力が得られる地盤であるか判断し、地耐力が得られなければ地盤改良などの対策工を検討することで、地盤の不確実性による影響を回避する。
平板載荷試験はあくまで支持に対する照査であり、試験における応力の影響範囲は一般的に載荷板幅の1.5〜2.0倍程度である。そのため、それより深い場合に圧密等が懸念される場合には、土の段階載荷による圧密試験など実施し、地盤の長期圧密に対する照査を行う。
②杭施工における打撃回数や掘削抵抗の確認
既製杭の施工においては、打込み杭は打撃による貫入量の減少やリバウンド量、回転杭は回転抵抗値や押込み力の増加などを確認することで支持層到達を判断する。
場所打ち杭では、掘削土の目視による確認や掘削速度の減少、掘削抵抗の増加などを確認し、必要によっては掘削土に対して土質試験を実施することで支持層到達を判断する。
③地盤定数結果からの支持力算出
支持層に対して粒度試験や三軸圧縮試験、湿潤密度試験などを実施し、設計時に定めていた支持地盤の土質分類や粘着力、内部摩擦角、単位体積重量等の土質定数を確認する。得られた定数からテルツアーギの支持力公式を利用して、構造物基礎形状と各地盤定数の関係により支持力を算出し、支持層が得られる地盤であるか判断する。
(3)解決策のリスクとそれに対する課題
①支持層確認に伴う地盤の乱れ
施工時における平板載荷試験の実施に伴う支持層の破壊や、杭施工の支持層確認に伴う過度の打撃や回転力・押込み力などによる支持層の乱れ、土質試験のサンプリングに伴う支持層の乱れによって、支持層地盤の強度が低下すること懸念される。
②地盤を乱さないための支持層確認
平板載荷試験においては、地盤破壊に留意して極限支持力を求めるのではなく、設計値が得られているかどうかだけを確認することで、地盤が破壊する可能性を減らし支持層の乱れによる強度低下を回避する。
杭の施工においては、無理に孔径以上の根入れを行おうとするのではなく、土質柱状図や試験杭により定めた打ち止め一打あたりの貫入量や回転抵抗により根入れ深さを決めることで、支持層確認に伴う地盤の乱れを回避する。
土質試験のためのサンプリングにおいては、支持地盤の中でも計画床面より上部の試料を採取することで、採取に伴う支持地盤の乱れが施工に影響しないようにする。
解説
(1)課題の分析のしかたについて
課題とは、解決策とまではいかないが、ある程度どうするか方向性を示したものです。
問題文の前置きを理解して、順をおって課題を抽出すること。
トラブルとは何か→なぜそれが起こるのか→これを低減するにはどうするか→これが課題です
(2) 解決策の提案、方策の考え方、書き方などについて
なぜこれが重要なのかという前置きはいらない。本題の内容を書くことでそれらを示す。
判定を行うだけでなく、○○して行うなど具体的に書く。
支持力が得られる地盤であると確認するではダメ。どうやって確認するかを書く。
複数の解決策を示すとき、似たような解決策、ダブりがあってはダメです。
見出しは問題文をそのまま書きうつす必要はなく、簡潔に示すのが良いでしょう。
そして見出しは、新聞の見出しのように、見ただけで内容がわかるように書いてください。
(3)リスクの導き方、書き方などについて
未開発の新技術が必要や時間がかかるものは、実現性に何がありますので、提案として好ましくありません。
一般人が気づかない、専門的に取り組んでいる人しかわからない技術的な応用を書くこと。
文章は長すぎず、わかりやすく区切る。1文は2、3行で書くように。