問題文 (3枚以内にまとめよ)
高速大容量・高性能な通信環境が広く提供される時代の到来により、ライフスタイルやワークスタイルの変革が期待されている。それらの通信環境の特長を活かした高度なサービスでは一人ひとりの利用環境又は個々の端末に応じて柔軟にきめ細やかな情報を提供することが重要になる。この場合、インターネット経由のセンター集中型クラウドでは処理が集中するために、高速大容量・高性能な通信の利点がエンドツーエンドのネットワーク全体では活かせなくなる。それを活かすには、いわゆるエッジコンピューティングを活用することが求められる。このような状況を踏まえ、情報通信分野の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)上記のエッジコンピューティングを活用する上での課題を、技術者として多面的な観点から抽出し分析せよ。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。
(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうる懸念事項とそれへの対策について述べよ。
模範解答1 (簡易答案1) 添削履歴 1回 2019/8/31 専門事項 通信運用管理
(1)エッジコンピューティング活用の課題
1)エッジ端末群のセキュリティ対策
分散配置のエッジ端末で、センタ集中型クラウドと比較し攻撃を受けやすい。
2)エッジ端末群のスペック
自動運転等で、高詳細画像処理等の高負荷に耐えるスペックが必要。
3)エッジ端末がフェイルした際のバックアップ
リアルタイムサービス継続提供のため、フェイルした際のバックアップが必要。
(2)最も重要な課題「エッジ端末がフェイルした際のバックアップ」の解決策
1)エッジ端末のクラウド化
エッジ端末をクラウド化し、複数の仮想サーバを構築して冗長化を図る
2)フォグコンピューティングの利用
エッジ端末同士をネットワーク化し、負荷分散・冗長化を行う
3)ネットワークスライシングの利用
スライス優先度を調整し、エッジ故障によりセンタ処理に移行しても通信遅延を
最小限に抑える
(3)解決策に生じうる懸念事項と対策
1)懸念事項
仮想化によりレスポンス遅延やスループット悪化の懸念がある。
2)解決策
①SSD
ハードディスクのIO性能を高めるため、ストレージはSSDで実装する。
②仮想化環境の特徴を活用したバックアップ
定期バックアップによる遅延を排除するため、ストレージとバックアップサーバ
を接続し、仮想マシンのスナップショットを直接転送してバックアップする。
③UDP
伝送遅延を最小限にするため、UDPを利用する。
模範解答1 (簡易答案2) 添削履歴 1回 2019/9/15 専門事項 通信運用管理
(1)エッジコンピューティング活用の課題
1)エッジサーバ群のセキュリティ対策
分散配置のエッジサーバで、センタ集中型クラウドと比較し攻撃を受けやすいため、強いセキュリティ対策が必要である。
2)エッジサーバ群のスペック
自動運転における高詳細画像のリアルタイム処理等、高負荷に耐えるスペックが必要である。
3)エッジサーバがフェイルした際のバックアップ
リアルタイムサービス継続提供のため、フェイルした際のバックアップが必要である。
(2)最も重要な課題「エッジサーバがフェイルした際のバックアップ」の解決策
1)エッジサーバのクラウド化
エッジサーバをクラウド化し、単体物理端末に複数仮想サーバを構築し、エッジサーバフェイルの際も隣接仮想サーバがバックアップできるよう冗長化を図る
2)フォグコンピューティングの利用
エッジサーバ同士をネットワーク化し、複数サーバで協調してエッジ機能を提供することで、単体エッジサーバのフェイルを吸収するような構成とする。
3)ネットワークスライシングの利用
スライス優先度を調整し、エッジ故障によりセンタ処理に移行しても通信遅延を 最小限に抑える
(3)解決策に生じうる懸念事項と対策
1)懸念事項
仮想化によりバックアップ処理による遅延、単一ホスト内通信のセキュリティ、仮想マシンスプロールについての懸念がある。
2)解決策
①バックアップ転送方法見直しによる遅延対策
定期バックアップ処理による遅延を排除するため、ストレージとバックアップサーバを接続し、仮想マシンのスナップショットを直接転送してバックアップする。
②仮想セキュリティアプライアンス(VSA)を利用した単一ホスト内通信の監視
単一ホスト内仮想マシン間通信はハイパーバイザにより行われ、IPS/IDSから隠蔽される。そのため、仮想通信を監視するVSAを導入し、セキュリティを維持する。
③構成管理データベース(CMDB)を用いた仮想マシンスプロール防止
仮想マシンの増加に伴う設置場所特定や管理が煩雑になる仮想マシンスプロールを防止するため、CMDBを用いて厳格に管理する。
模範解答1 (答案形式) 添削履歴 3回 2019.7.30 専門事項 通信運用管理
(1)エッジコンピューティング活用の課題
1)エッジ端末群のセキュリティ対策
センター集中型のクラウドであれば、クラウドにシステムが集中しておりインターネットへの接続によるセキュリティホールはシングルポイントである。しかし、エッジ端末群は分散配置されており、個々がインターネットに接続しているため、セキュリティホールはマルチポイントとなる。
よって、クラウドと比較して攻撃を受けやすいエッジ端末群のセキュリティ対策が課題である。
2)エッジ端末のスペック
例えば、自動運転のレベル3・4ではシステムの判断領域が拡大し、エッジ端末でも高詳細画像処理を行う等、センターのクラウド並の判断処理を瞬時に行う必要がある。
よって、自動車1台1時間あたり1TB処理可能な高性能なCPU/GPU/メモリを備えた高スペックなエッジ端末を必要とする。
3)エッジ端末がフェイルした際のバックアップ
エッジ端末が提供する高度でリアルタイムなサービスについて、エッジ端末がハードウエア故障やソフトウエアのバグ等トラブルで停止した際にもサービスを提供継続する必要がある。
よって、エッジ端末のバックアップの構築が課題である。
(2)最も重要な課題と解決策
1)最も重要な課題
「エッジ端末がフェイルした際のバックアップ」が最も重要な課題と考える。理由として、エッジ端末がフェイルした際、処理のリアルタイム性が実現しなかった場合、人命への危害等重大な結果を招くケースが想定されるためである。
2)解決策
①エッジ端末のクラウド化
エッジ端末をクラウド化し、複数の仮想サーバを構築し、冗長化を図る。
これにより、ソフトウエアトラブルで1つの仮想サーバがフェイルしても、他仮想サーバでバックアップできる。
②フォグコンピューティングの利用
エッジ端末を複数用意し、ネットワークで接続することにより冗長化と負荷分散を可能にするフォグコンピューティングを利用する。
これにより、エッジ端末がフェイルしてもフォグネットワーク内の他端末でバックアップできる他、負荷分散により特定端末への処理集中を回避できる。
③ネットワークスライシングの利用
ネットワークの通信効率最適化について、通信リソースを仮想化して分割し、用途毎に割当てるネットワークスライシングを用いる。
これにより、エッジ端末がフェイルした際、優先度の高い通信を割当て、処理がエッジ端末からセンターのクラウドに移行した際でも、可能な限りリアルタイム性を失わない通信を実現する。
(3)解決策に共通して生じうる懸念事項と対策
1)懸念事項
解決策に共通したメリットは、仮想化を用いて端末等の使用効率向上であり、端末等が物理的に故障した場合、仮想化によるメリットを活かせない懸念がある。よって、端末等の冗長化技術が必要である。
2)対策
①VRRP
2つのルータに仮想的な1つのIPアドレスを割当て、片方のルータが故障した際もシームレスに他系のルータに処理が移行する技術の、VRRPを利用する。
②NICチーミング・ボンディング
サーバのNICを複数用意し、一体的に運用することでNICが故障した際、シームレスに他のNICに処理が移行する技術の、NICチーミング・ボンディングを利用する。
③HAクラスタリング
複数サーバをクラスタとして一体的に運用し、あるサーバがフェイルした場合も他のサーバに処理がシームレスに移行する技術の、HAクラスタリングを利用する。
模範解答2 (簡易答案1) 添削履歴9 作成日2020/3/23 電気電子部門 情報通信 専門事項 無線通信
.エッジコンピューティング活用の課題
a)端末増加に対する同時多接続状態維持:IoT機器増加に伴い同時多接続必要。回線輻輳で接続状態維持不安定可能性。不安定回避に複数種NWの統合化運用必須。
b)ネットワーク通信経路の冗長化:情報端末場所を選ばず同一サービス確保必要。使用状況で接続回線集中可能性。遅延無い最適通信経路選択手段の冗長化必須。
c)データ高速伝送のため誤り制御改善:産業・生活で高精細な大容量伝送が必要。周囲環境・状況でデータ誤り増大可能性、高速維持が困難。誤り制御方式改善必須。
2.誤り制御改善による高速大容量通信の安定化
a)AI監視とFEC採用による通信信頼性確保:通信状態(再送・応答回数、時間)の信頼性確保にAIで包括的監視。誤り制御FEC方式採用し情報伝送パケットの時分割処理に誤り検出コード(CRC)付加で通信保護。伝送品質向上、通信信頼性確保。
b)伝送線路状態整備によるデータ誤りの削減:伝送路監視補正装置の付加でS/N確保しデータ誤りを抑制。効果向上に有線でLANケーブル、光ケーブル高品質化にケーブル調査整備。無線の電波状態常時監視、回線品質を維持しデータ誤り削減。
c)I/Fソフトウエア化によるデータ誤り抑制:各通信ゲートウエイのI/Fをハード依存しないソフト化。ゲートウエイでの通信中継変換に誤り検出コード(FCC)でARQ誤り制御処理。ソフト化により装置間I/Fでの誤り発生箇所に迅速柔軟対応。
3.解決策での新たに生じる懸念事項と対策
a)セキュリティでの懸念事項:通信品質、速度向上で突発的な通信数増加。結果、外部認証(例えばRADIUS認証)セキュリティサーバ等へのアクセスがボトルネックの懸念。ストレージ設備増設及びセキュリティサーバの動作冗長化で回避。
b)無線通信回線での懸念事項:無線通信は通信状況や環境変化で回線劣化が発生。回線品質、ソフトGWでの対策でも複数障害同時発生可能性。通信速度維持に所要S/N確保の信号レベルが不足する懸念。信号レベル不足時、キャリアアグリゲーションで通信帯域拡大し伝送速度維持。他輻輳する通信回線は通常通りの時分割処理対応。
模範解答2 (簡易答案2) 添削履歴3 作成日2020/6/7 電気電子部門 情報通信 専門事項 無線通信
.エッジコンピューティング活用の課題
a)端末増加に対する同時多接続状態確保:ライフスタイルの変革は通信目的の変革から移動端末が増加となる。機能有効のためNWへの同時多接続が必要だ。NW接続数増加で回線輻輳しても通信不安定回避に複数種のNWを統合化した運用が必須になる。
b)ネットワーク通信経路の冗長化:ワークスタイルの変革は情報端末の使用場所が不特定となる。通信回線確保し同一サービスの実現が必要だ。通信状況によって回線に集中する可能性がある。低遅延の最適通信経路を選択する手段に冗長化が必須になる。
c)データ高速伝送維持に誤り制御改善:利用環境に影響されず、きめ細やかなサービスには高精細な大容量伝送が必要だ。通信周囲環境・状況変化は通信回線にデータ誤り増大の可能性で高速通信維持が困難。回避に誤り制御方式の改善が必須になる。
従って、これらの課題の中で、サービス向上には高速大容量通信が必須でエッジコンピューティングを最も効果的とするため誤り制御方式の改善が最も重要である。
2.誤り制御改善による高速大容量通信の安定化
a)AI監視とFEC採用による通信信頼性確保:通信サービス向上のため通信状態(再送・応答回数、時間)の信頼性確保にAIで包括的監視を行う。誤り制御にFEC方式を採用し、情報伝送パケットを時分割処理する際、誤り検出コードのCRCを付加して通信を保護する。これにより伝送品質を90%以上に向上し、通信の信頼性を確保する。
b)伝送線路状態整備によるデータ誤りの削減:高速伝送確保のため伝送路監視補正装置の付加で通信回線のS/N20dB以上確保しデータ誤りを抑制する。効果向上のため、有線回線ではLANケーブル、光ケーブルの高品質化のため通信ケーブルを調査整備する。無線回線では電波状態を常時監視し回線品質を維持してデータ誤りを削減する。
c)インターフェースソフトウエア化によるデータ誤り抑制:迅速な情報伝送のため各通信ゲートウエイのI/Fをハード依存しないソフト化とする。ゲートウエイでの通信中継変換に誤り検出コードのFCCを付加しソフト信号処理でARQ誤り制御処理を行いURLLC技術とする。装置間I/Fでの誤り発生時に1m秒以下の迅速で柔軟に対応する。
3.解決策での新たに生じる懸念事項と対策
a)データサイズ大型化による伝送路輻輳の懸念:安定した伝送路のためデータ大容量化が進み汎用化となった結果、時分割での情報パケットが増加し伝送路が輻輳する懸念がある。大容量化でも高速通信を維持するため、伝送情報中のNULLデータを圧縮化しデータ量を1/2以下として伝送路輻輳を回避する。
b)通信障害時の復旧に時間を要する懸念:従来の通信は汎用的ハードウエアのためシステムは単純で回線や端末に故障等障害が発生時、障害原因究明は早いがI/Fのソフト化は信号処理のため障害原因究明が困難の懸念がある。ソフトI/Fは2重以上の冗長化で障害時に通信不通を回避する。
模範解答2 (完成答案) 添削履歴1 作成日2020/6/28 電気電子部門 情報通信 専門事項 無線通信
1. エッジコンピューティング活用の課題
a)端末増加に対する同時多接続状態の確保
ライフスタイルの変革は、通信目的の変革で多様化につながり移動端末が増加となる。そのため、利用端末は通信ネットワークへ同時多接続となる。その結果、ネットワークへの接続数増加により、通信回線輻輳が不安定を可能性がある。通信の不安定回避のため複数種のネットワークを統合化した運用とする。
b)ネットワーク通信経路の冗長化
ワークスタイルの変革は、情報端末を使用する場所が移動することにつながり、不特定となる。そのため、所要数の通信回線を確保した同一サービス維持の利用が必要である。通信状況によって特定回線に伝送が集中する可能性がある。そこで、低遅延の最適通信経路を選択できるように通信経路を冗長化する。
c)データ高速伝送維持に誤り制御改善
快適な通信利用で、きめ細やかなサービスを行うには高精細な大容量伝送が必要になる。しかし、通信の周囲環境・状況変化は不可避からS/Nを劣化させる。データ誤り増大化の可能性で高速通信の維持が困難となる。これを回避するため誤り制御方式の改善を行う。
従って、これらの課題の中で、サービス向上には高速大容量通信が必須である。そこで、エッジコンピューティングを最も効果的とするために誤り制御方式の改善が最も重要である。
2.誤り制御改善による高速大容量通信の安定化
a)AI監視とFEC採用による通信信頼性確保
通信サービス向上のため通信状態(再送・応答回数、時間)の信頼性確保にAIで包括的監視を行う。また、情報伝送パケットを時分割処理する際、誤り検出コードであるCRCを付加して通信を保護する。そのため、ランダム誤り、バースト誤りのエラー訂正にFEC方式を採用する。これによって、誤り訂正能力改善させ、伝送品質を90%以上に向上し、通信信頼性を確保する。
b)伝送線路状態整備によるデータ誤りの削減
高速伝送を確保するために、伝送路監視補正装置を付加する。これによって、通信回線のS/Nを20dB以上確保して、データ誤りを抑制効果を向上するため次のことを行う。
・有線回線:LANケーブル、光ケーブルの高品質化のため通信ケーブルを調査整備。
・無線回線:電波状態を常時監視することで無線通信回線品質を維持。
c)ソフトウエア化によるデータ誤り抑制
迅速な情報伝送のため、各通信ゲートウエイのインタフェースをハードウエアに依存しないソフトウエア化とする。ここで、ゲートウエイでの通信中継変換に、誤り検出コードのFCCを付加する。また、ソフトウエア信号処理にARQの自動再送機能を搭載する。これによって、データ誤り訂正能力が強化されて、伝送品質が向上し、URLLC技術を実現する。装置間インタフェースでのデータ誤り発生時には、自動再送伝送によって1m秒以下の伝送速度高速化で対応する。
3.解決策での新たに生じる懸念事項と対策
a)データサイズ大型化による伝送路輻輳の懸念
誤り制御の性能向上によって、伝送速度データ大容量化が進む。これを安定した伝送路とするには、変調信号に関係なく回線の汎用化を進めなければならない。その結果、大容量データのために、時分割での情報パケットが増加し、伝送路が輻輳する懸念事項がある。そこで、データの大容量化を行っても高速通信を維持できるようにする。そこで、伝送情報中のNULLデータを検出し圧縮化できる機能をソフトウエアで搭載する。そのため、データ量を1/2以下に削減することが可能となり、伝送路の輻輳を回避する。
b)通信障害時の復旧に時間を要する懸念
従来の通信は汎用的ハードウエアで構成されており、通信システムは単純である。そのため、回線や端末に故障等障害が発生時、障害原因究明は早い。しかし、インタフェースのソフトウエア化は信号処理であり、単純な構成ではない。通信障害が発生した場合、原因究明が困難の懸念がある。そこで、通信障害時に対応できるようにソフトウエア化のインタフェースは2重以上の冗長化として通信不通を回避する。