R1/2019年 化学部門 必須科目 T−2

問題文

I-2

 日本の化学産業は。自動車、電機、電子産業などのニーズに応えた高付加価値部材、高機能製品を提供することにより競争力を高め発展してきた。しかし、最近は中国、台湾、韓国などの技術力向上により、これらの川下産業の国際競争力が低下傾向にある。また、グローバル化の進展、技術情報の急激な進歩および地球温暖化に伴う環境規制強化など、競争環境の急激な変化に見舞われ、従来の施策のみでは今後の日本の化学産業の展開には限界がある。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)日本の化学産業が国際競争力を高めるために検討すべき課題を、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、分析せよ。

2)抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げて、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に関連して新たに生じうるリスクとその対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の」持続可能性の観点から述べよ。


模範解答1   (簡易答案1)    添削履歴8    作成日2020/4/22    化学部門  科目:高分子化学    専門事項 成形加工


(1)日本の化学産業が国際競争力を高めるために検討すべき課題

@再生可能材料から高付加価値部材を造る。

・高付加価値部材を再生可能材料で造る。

・高機能製品の原料を石油製品だけに頼らないようにする。

A高付加価値部材・高機能製品の品質を上げる。

・高付加価値部材を生み出すための合成方法、配合方法を研究する。

B高機能化学製品を造ることと並行して、顧客へのソリューションを提案する。

 ・顧客の抱えている問題点、望みを引き出し、高機能化学製品を開発する。

(2)最も重要な課題に対する複数の解決策

 最も重要な課題:再生可能材料から高付加価値部材を造る。

@バイオマスアルコールの製造・貯蓄方法の確立。

・多岐に及ぶバイオマスをアルコールに変換、高付加価値部材の原料とする。

・製造は、アルコール発酵と蒸留。製造工場近くに保管プラントを設定する。

A植物を配合したバイオプラスチックを高付加価値部材に適応。

・特定の植物(ケナフ・ヘンプなど)を従来の樹脂に配合して部品を造る。

B無機化学製品との複合材料を検討する。

・再生可能材料から得られる樹脂などと無機化学製品の組み合わせを検討する。

(3)新たに生じうるリスクとその対策

リスク@バイオマスアルコールを造ることは、樹脂原料の「石油資源」を人類が造ることであり新たなエネルギーが必要となる。対策:このエネルギーを、石油を消費しない電力とする。例えば、バイオ燃料の火力発電、再生エネルギー発電などを適用する。

リスクA:環境負荷増加。高機能材料は接着・フィラー混合など新機能を他材料の結合で造る。廃棄時に分離不可リサイクル困難、埋め立て処分となり、環境負荷が増える。対策:廃棄時の処理方法を想定して製造を行う。分離に多大なエネルギーが必要な場合は、バイオマス発電に使用する。

(4)技術者倫理・社会持続性から見た業務遂行における必要要件

@技術者としての倫理:

・残渣処理、産廃棄物、廃材、稲わらなど、廃棄物など、優先的に生態系を破壊しないものでの、バイオマスアルコール製造を提案する。 

・造られた高付加価値部材・高機能製品の一部に植物性部材を用いたとき、消費者の選択資料として石油製品との混合割合を、明確に提示する。

A社会の持続可能性観点: 「二酸化炭素排出量削減」の観点よりバイオマスアルコール製造、バイオプラスチックの適用、顧客へのソリューション提案を行う。


模範解答1   (簡易答案2)    添削履歴0    作成日2020/5/2    化学部門  科目:高分子化学    専門事項 成形加工


(1)日本の化学産業が国際競争力を高めるために検討すべき課題

@再生可能材料から高付加価値部材を造る。:石油資源量には限りがある。また、石油資源量を使用することにより、二酸化炭素排出量も高まる。再生可能材料にて高付加価値部材を造ることで、高機能製品の原料を石油製品だけに頼らないようにする新技術を確立する。

A高付加価値部材・高機能製品の品質を上げる。最小限のエネルギーと最短のスピードで、効率よく高付加価値部材を生み出すための合成方法、配合方法を研究する。この際、製造プラント及び貯蔵方法も検討する。

B高機能化学製品を造ることと並行して、顧客へのソリューションを提案する。:普遍的に必要とされる高機能化学品開発にターゲットを絞るため、顧客の抱えている問題点・望みを統計処理する。並行して顧客に対してソリューションを提案且つ意見収集、フィードバックする。

(2)再生可能材料から高付加価値部材を造るための解決策

@バイオマスアルコールの製造・貯蓄方法の確立。:バイオマスアルコールの原料は、サトウキビ・トウモロコシ・麦わら・廃木材・ネピアグラス・稲わらなど多岐に及んでいる。これをバイオマスアルコールに変換、安定して高付加価値部材を合成できるようベース原料とする。製造は、アルコール発酵と蒸留である。製造工場近くに保管プラント設置し貯蓄しやすくする。

A特定の植物(ケナフ・ヘンプなど)を石油系樹脂に配合し、自動車部品などを造る。例えばケ  ナフないしはヘンプをポリプロピレンに配合したドアトリム、インストルメントパネルである。

B再生可能材料から得られる樹脂と無機化学製品のハイブリッド化を検討する。例えば、アセチルセルロースとアルコキシシランを原料として、セルロース−ガラスのハイブリッド材料である。これにより軽量且つ透明度の高い材料ができ、自動車フロントガラスなどに適用する。

(3)新たに生じうるリスクとその対策

@新たなエネルギーが必要なこと。リスク:バイオマスアルコールを造ることは、樹脂原料の「石油資源」を人類が造ることであり新たなエネルギーが必要となる。対策:このエネルギーを  石油消費のない電力とする。例えばバイオ燃料の火力発電、再生エネルギー発電などである。

A環境負荷増加:リスク:高機能材料は接着・フィラー混合など新機能を他材料との結合で造る。廃棄時分離に多大なエネルギーが必要な場合は、還元剤としてバイオマス発電に使用する。

(4)技術者倫理・社会持続性から見た業務遂行における必要要件

高付加価値部材・高機能製品の一部に植物性部材を用いたとき、消費者の選択資料として石油製品との混合割合を示する。ケナフやヘンプを石油系樹脂に配合して成形材料を造る場合「植物系材料」だけではなく、ナフ30%、PP70%など明示する。これは技術者倫理「@ねつ造しない」に当たる。

A社会の持続可能性観点:「二酸化炭素排出量削減」の観点よりバイオマスアルコール製造、バイオプラスチックの適用、顧客へのソリューション提案を行う。「二酸化炭素排出量削減」は、SDGs目標13のターゲット3 「気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。」の「気候変動の緩和」にあたる。


模範解答1   (完成答案)    添削履歴2    作成日2020/5/5    化学部門  科目:高分子化学    専門事項 成形加工  


(1)日本化学産業が国際競争力向上検討課題

@再生可能材料から高付加価値部材を造る。

化石燃料の資源地球温暖化もすすむ。量には限りがある。また、化石燃料を使用することにより、二酸化炭素排出量が増加し、

高付加価値部材を植物などからの再生可能材料から造ることで、高機能製品の原料を石油製品だけに頼らないようにできる新技術を確立する。そのうえで、石油製品の使用量と二酸化炭素の排出量を削減する。

A高付加価値部材・高機能製品の品質向上

最小限のエネルギーと最短のスピードで、効率よく高付加価値部材を生み出すための合成方法、配合方法を研究する。この際、高付加価値部材の精度・安定性を向上させる製造プラント及び貯蔵方法も検討する。

B高機能化学製品とソリューションの並行提案

普遍的に必要とされる高機能化学品開発にターゲットを絞るため、顧客の抱えている問題点・望みを収集、統計処理する。並行して顧客に対してソリューションを提案且つ意見収集、製造にフィードバックする。

(2)再生可能材料から高付加価値部材への解決策

@バイオマスアルコールの製造・貯蓄方法の確立

バイオマスアルコールの原料は、サトウキビ・トウモロコシ・麦わら・廃木材・ネピアグラス・稲わらなど多岐に及んでいる。これをバイオマスアルコールに変換、一定原料として安定して保管を容易にする。高付加加価値部材を合成できるようベース原料とする。製造は、アルコール発酵と蒸留である。製造工場近くに保管プラント設置し、貯蓄を確実とする。

A特定植物と石油系樹脂への配合 

ケナフないしはヘンプをポリプロピレンに配合してドアトリム、インストルメントパネルを製造する。PPとケナフの接合強度を高めることで、従来品を20%軽量化したドアトリム及びシートバックボード基材を造ることができる。

B再生可能材料樹脂と無機化学製品のハイブリッド化

アセチルセルロースとアルコキシシランを原料として、セルロース−ガラスのハイブリッド材料を造る。

本来水と油のように相性の悪い有機物のセルロースと、無機物ガラスを分子レベルで結合させる。これにより軽量且つ透明度の高い材料ができ、自動車フロントガラスなどに適用する。

(3)新たに生じうるリスクとその対策

@環境負荷増加

リスク:高機能材料は接着・フィラー混合など新機能を他材料との結合で造る。廃棄時分離に多大なエネルギーが必要となる。

対策:還元剤としてバイオマス発電に使用する。

Aベース資源製造に新たなエネルギーが必要なこと。

リスク:バイオマスアルコールを造ることは、ベース資源の「石油資源」を樹脂原料から人類が造ることである。現時点で得られる再生可能材料をベース資源まで持っていくための新たなエネルギーが必要となる。

対策:このエネルギーを石油消費のない電力とする。バイオ燃料火力発電、再生エネルギー発電などである。これで新たな二酸化炭素の排出を抑えることができる。

(4)技術者倫理・社会持続性からの業務遂行要件

@技術者倫理

高付加価値部材・高機能製品の一部に植物性部材を用いたとき、消費者の選択資料として石油製品との混合割合を示す。ケナフやヘンプを石油系樹脂に配合して成形材料を造る場合「植物系材料」だけではなく、ケナフ30%、PP70%など明示する。これは技術者倫理「公正かつ誠実な履行」に当たる。

A社会の持続可能性観点

「二酸化炭素排出量削減」の観点よりバイオマスアルコール製造、バイオプラスチックの適用、顧客へのソリューション提案を行う。この二酸化炭素排出量削減は、「SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を」の中の、「ターゲット13-2気候変動対策を国別の戦略及び計画に適応する」に当たる。