R1/2019年 電気電子・電子設備 Ⅱ-2-2

問題文 

 オフィスビル内のBEMS(BuildingEnergyManagementSystem)構成機器への電磁環境対策を計画することになった。この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。なお、BEMS構成機器には、受変電設備、動力設備、照明設備等の設備機器も含むものとする。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

模範解答1   (簡易答案1)    添削履歴4    作成日2020/6/5    電気電子部門  電子設備    専門事項 建築電気設備

(1)     査、検討すべき事項とその内容

l 受変電設備の低周波ノイズ調査、受変電設備と中央装置の離隔を検討 

l BEMS通信線のイミュ二ティ調査、電力線との離隔及びシールド化を検討 

l 動力、照明設備等インバータ機器のエミッション調査、高調波対策を検討 

l 雷サージ対策の調査、接地方式の見直し及びSPD設置を検討 

(2)     業務を進める手順、留意すべき点、工夫を要する点 

l  受変電設備から発するノイズがBEMS構成機器へ影響する範囲を特定し、そこから1m以上の離隔をとる、離隔が困難の場合は磁気シールドを行う

l  BEMS通信線と低圧幹線が並行布設となっている部分は0.3m以上の離隔をとるように配線ルートを検討し、低圧幹線は金属製配管に納める

l  インバータ機器から流出する高調波を抑制するため、入力及び出力側にリアクトル及び電源ラインフィルタを設置する

l  雷サージの流入を防止するため、電源線及び通信線にSPDを設置する

(3)     業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策

l  私がEMC対策としてビル接地方式を個別接地から統合接地に変更し、ビル内設備を等電位化することを要求する

l  しかし事業主はコストアップに難色を示し、建築施工会社は統合接地の施工に既存構造体の鉄筋をはつり出す工事を行うことに難色を示した

l  既存接地極間にSPDを追加し、雷サージが発生した場合のみ各接地極間のSPDが導通し等電位化することで、BEMS機器の損傷が回避できる

この問題について、添削でご指摘申し上げた事項です。

(1)      調査、検討すべき事項

Ø  EMIの要因は、これをまず調べることです。

Ø  わからないからとりあえずすべて確認では提案になりません。あたりをつけて調査、検討のねらいを定めて提案してください。それを考えるため次の4つにお答えください。

BEMS構成機器とは何か。BEMSではなくBEMS構成機器では何が違う。

何故、今BEMSの電磁環境対策が要るのか。ねらいは何か。

前記EMIの要因として予想されることはなにか?

BEMS構成機器に、受変電他設備が含まれる・・この意味は何か。

Ø  〇〇を調査し、(その結果より)〇〇を検討(考察、構築、計画)するという文になるようにしてください。調査は、視点が偏らず幅広く複数34とします。

(2)業務を進める手順、留意すべき点、工夫を要する点

Ø  下記がわかるように答えてください。

関係者とはだれか

私の意見は何か、また反対意見は何か

どうやって、それら意見をまとめるか。私の提案は

それによって仕事はどのように効率化されるか

Ø  (2)(1)に従って進めるようにしてください。関連性、一貫性が大事です。

Ø  )手順+留意点」の形にまとめる

Ø  手順として解決策まで含めて3項目程度を時系列に挙げ、留意点を添える。

Ø  解決策を、どう考えてどうやるかを書く、そこから留意点が出ます。

Ø  留意点は解決策ごとに挙げる。当たり前すぎだと価値なし、一般論ではダメ、技術が感じられません。

Ø  解決策を、なにをどうするかを書くように。

Ø  これは手順として書くべき事項、順番にそれぞれ上げることです。

Ø  「見直す」では何をどうするか不明です。ノイズの影響を巧みに低減するテクニックを示してください。

Ø  離隔とは何mか。ある程度定量的な話とするように。ダクト配線とは何?普通は効果なし。

(3)      業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策

Ø  3のヒントです。下記の4つを述べて下さい。

   関係者はだれか。できれば自分以外に2(2)以上挙げる。

   それぞれ意見は何か。自らの思いと相違する点を明確にする。

   私が技術提案することによって、問題となる意見の相違のもとを解決する。専門分野の技術応用によって仕事を改善して、反対意見を解消します。

   これによって、2者の意見がどう満たされる、すなわち擦り合わせできるかを言う。

Ø  これではどう解決するのか。なぜ落雷時のみでよいのか。どうしてこれで、2者が納得できるのですか。どうして解決できるのか根拠、理由がわかりません。

Ø  接地間SPDでどうして落雷時に等電位化されるのか、原理的説明(根拠)をしてください。

模範解答1   (簡易答案2)    添削履歴2    作成日2020/6/19    電気電子部門  電子設備    専門事項 建築電気設備

(1)調査、検討すべき事項とその内容

   受変電設備の低周波ノイズを調査し、BEMS中央装置が影響を受けない場所を検討する。

   通信線の布設ルートと配線仕様を調査し、電力線との離隔及び通信線のシールド化を検討する。

   動力、照明設備等のインバータから発生するノイズを調査し、ノイズ流出防止対策を検討する。

   雷サージの流入経路を調査し、接地方式の改善及びサージ防護対策を検討する。

(2)業務を進める手順、留意すべき点、工夫を要する点

1)  受変電設備の交流磁界による低周波ノイズがBEMS構成機器へ影響する範囲を特定し、そこから1m以上の離隔をとる。離隔が困難な場合は隣接する壁面に珪素鋼板を貼り磁気シールドを行う。

2)  通信線と低圧幹線が並行布設となっている部分は0.3m以上の離隔をとる。離隔が取れない場合は通信線を接地した金属製配管に納めて電磁シールド化し、電磁誘導ノイズに対するイミュ二ティを向上させる。

3)  動力、照明設備等に使用されるインバータの入力及び出力側にリアクトルとラインフィルタを設置し、ノイズ流出を抑制する。キャリア周波数を5〜7MHzに抑えてノイズ低減を図る。

4)  雷サージの流入経路となる電源線及び通信線の一次側にSPDを設置し、機器内への雷サージ流入を防止する。ビル内接地を統合接地方式として等電位化を行い、機器間の電位差による障害を予防する。

(3)  業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策

私がEMC対策としてビル接地方式を個別接地から統合接地に変更し、ビル内設備を等電位化することを要求する。

しかし事業主はコストアップに難色を示し、建築施工会社は統合接地の施工に既存構造体の鉄筋をはつり出す工事を行うことに難色を示した。

このため、既存接地極間にSPDを追加する方法を提案した。これにより、平常時は従来とおり個別接地であるが、雷サージが発生した場合のみ各接地極間のSPDが導通し等電位化するように機能するため、雷サージによるBEMS機器の損傷を防ぐことができる。

 既存接地端子盤内に接地間SPDを追加する工事を行うだけで、既存躯体をはつり出す工事は不要となり、大幅なコストアップもなく要求を満足することができる。

模範解答1   (完成答案)    添削履歴1    作成日2020/6/25    電気電子部門  電子設備    専門事項 建築電気設備

(1)   調査、検討すべき事項とその内容

①受変電設備から発生する低周波ノイズ強度を調査し、BEMS中央装置が影響を受けない場所を検討する。

②通信線の布設ルートと配線仕様を調査し、電力線との離隔及び通信線のシールド化を検討する。

③動力、照明設備等のインバータから発生するノイズを調査し、ノイズ流出防止対策を検討する。

④雷サージの流入経路を調査し、接地方式の改善及びサージ防護対策を検討する。

(2)   業務を進める手順と留意、工夫を要する点

①交流磁界シールド:受変電設備の交流磁界による低周波ノイズがBEMS構成機器へ影響する範囲を特定し、そこから1m以上の離隔をとる。離隔が困難な場合は隣接する壁面に珪素鋼板を貼り、磁気シールドを行う。

②電磁誘導ノイズ対策:通信線と低圧幹線が並行布設となっている部分は0.3m以上の離隔をとり、電源線の電流による磁界結合により信号線に誘起されるノイズ電圧の影響を受けないようにする。十分な離隔が取れない場合は通信線を接地した金属製配管に納めて電磁シールド化し、電磁誘導ノイズに対するイミュ二ティを向上させる。

③インバータノイズ抑制:動力、照明設備等に使用されるインバータの入力及び出力側にリアクトル及びラインフィルタを設置し、ノイズ流出を抑制する。インバータのキャリア周波数を5〜7MHzに抑え、直流電流の高速スイッチング動作で発生するノイズを低減する。

④サージ防護:雷サージの流入経路となる電源線及び通信線の一次側にSPDを設置し、機器内への雷サージ流入を防止する。ビル内接地を統合接地方式として等電位化を行い、機器間の電位差による障害を予防する。

(3)   関係者との調整方策

 私がEMC対策としてビル内の接地方式を個別接地から統合接地に変更し、ビル内設備を等電位化することを提案した。

 しかし事業主はコストアップに難色を示し、建築施工会社は統合接地を行うために既存構造体の鉄筋をはつり出す工事を行うことは建物強度の劣化につながる恐れがあるとして反対した。

 このため、既存接地極間にSPDを追加する方法を提案した。これにより、平常時は従来とおり個別接地であるが、雷サージが発生した場合のみ各接地極間のSPDが導通し等電位化するように機能するため、雷サージによるBEMS機器の損傷を防ぐことができる。

 提案を実現するために必要となる作業は既存接地端子盤内に接地間SPDを追加するだけで、既存躯体の鉄筋をはつり出す工事は不要となり、建物を傷めず大幅なコストアップもなく要求を満足することができる。

解説

(1)課題の分析のしかたについて 

与えられた条件すべてに対して解答のシナリオを作り、それぞれに対する対応姿勢を示すようにしてください。

あたりをつけて調査し、検討のねらいを定めて提案することです。

(2) 解決策の提案、方策の考え方、書き方などについて

「〇○を調査し、(その結果より)〇〇を検討(考察、構築、計画)する」という文になるよう記述すると良いでしょう。

調査は、視点が偏らず幅広く複数34とするのが良いでしょう。。

検討すべき事項は調査結果を基に品質、安全、経済、環境性能を高める方策を技術士として考察するようにしてください。

各項目に番号をつけ、箇条書きで示すように。

(3) 留意点などの考え方、書き方などについて

調査、検討する項目の順番に従って関連性を示します。一貫性を意識して記述するように。

手順として解決策まで含めて35項目程度を時系列に挙げ、留意点を添えるのが良いでしょう。。

解決策を、どう考えてどうやるかを書き、そこにも工夫した点として留意点を添えて書くと良いでしょう。

(4) 調整の考え方、書き方などについて

見出しは、見やすく冗長にならないため1行以内としてください。

関係者とはだれか、私の意見は何か、また反対意見は何か?どうやって、それら意見をまとめるか。私の提案は?それによって仕事はどのように効率化されるか?・・・以上のことが分かるように記述してください。

関係者はだれか。できれば自分以外に2(2)以上挙げると良いでしょう。

それぞれ意見は何か。自らの思いと相違する点を明確にするように。

私が技術提案することによって、問題となる意見の相違のもとを解決します。専門分野の技術応用によって仕事を改善して、反対意見を解消することを説明するように。

これによって、2者の意見がどう満たされるか、すなわち擦り合わせできるかを言うことです。

トレードオフ問題をすり合わせるため、反対意見に対する交換条件を提案し、WIN-WINの関係を維持してまとめるのが良いでしょう。

実際の体験より:工場の低圧幹線としてバスダクト+ボルトオンブレーカー分岐方式を採用したときのこと。協力会社はバスダクトメーカーの受注過多により生産が逼迫しており、設計仕様では納期が間に合わないと主張し、メーカーは設計数量では納期に間に合わせることは不可能という。私は施工性と工事費でメリットのあるバスダクト範囲縮小+幹線分岐盤を推奨した。安全性と保守性は原設計と変わらず、分岐盤設置により拡張性は向上することで取りまとめた。

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