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技術士試験問題と模範解答と解説 2024年 令和6年

建設部門 必須科目

Ⅰ-1

問題文
国が定める国土形成計画の基本理念として,人口減少や産業その他の社会経済構造の変化に的確に対応し,自立的に発展する地域社会,国際競争力の強化等による活力ある社会経済を実現する国土の形成が掲げられ,成熟社会型の計画として転換が図られている。令和5年に定められた第三次国土形成計画では,拠点連結型国土の構築を図ることにより,重層的な圏域の形成を通じて,持続可能な形で機能や役割が発揮される国土構造の実現を目指すことが示された。
この実現のために,国土全体におけるシームレスな連結を強化して全国的なネットワークの形成を図ることに加え,新たな発想からの地域マネジメントの構築を通じて持続可能な生活圏の再構築を図る,という方向性が示されていることを踏まえ,持続可能で暮らしやすい地域生活圏を実現するための方策について,以下の問いに答えよ。
(1) 全国的なネットワークを形成するとともに地域・拠点間の連結及び地域内のネットワークの強化を目指す社会資本整備を進めるに当たり,投入できる人員や予算に限りがあることを前提に,技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。(※)
(※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち,最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4) 前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり,技術者としての倫理,社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
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問題の解説

1. 出題者の意図

この問題は、**第三次国土形成計画(拠点連結型国土)**の政策背景を踏まえ、受験者が

  • 国土スケールのネットワーク形成と地域内ネットワーク強化をどう進めるか

  • 限られた予算・人員という制約下で、技術者として現実的かつ多面的に課題を抽出できるか

  • 課題に対して、実行可能で戦略的な解決策を提案できるか

  • その実施による波及効果と、懸念事項を分析し、対策を提示できるか

  • 倫理や社会的持続性の観点から、業務遂行上の留意点を説明できるか

を評価するものです。
単に政策用語をなぞるのではなく、国土全体と地域単位の双方を意識し、かつ実務レベルで落とし込む力が問われています。


2. 課題抽出のポイント

  • 観点→課題の順で書く(観点は「技術的観点」「経済的観点」「社会的観点」など、10字以内で簡潔に)。

  • 課題は「〜する必要がある」などの提案型で示し、単なる現状問題の羅列は避ける。

  • 国土スケールと地域スケールの双方を意識し、広域交通・物流網、地域拠点間連結、生活圏内の交通や情報ネットワークなどのレベル感を混在させず整理する。

  • 制約条件(予算・人員不足)を踏まえ、優先順位や効率化を前提にする。

例:

  • 技術的観点から、ICT活用による広域交通ネットワークの運行・維持管理の効率化を図る。

  • 経済的観点から、投資効果を最大化するための重点整備区間の選定を行う。

  • 社会的観点から、地域間格差是正のための公共交通アクセス改善を進める。


3. 解決策提示のポイント

  • (1)で挙げた課題のうち最重要なものを1つに絞り、その理由を簡潔に述べる。

  • 解決策は3案程度、異なるアプローチ(技術導入・制度整備・運営改善など)で重複しないようにする。

  • 実現可能性を高めるために、事例・技術名・仕組みを具体的に挙げる。

例:

  1. 広域道路・鉄道・港湾のデジタルツイン化による計画・維持管理の最適化

  2. 地域交通と物流のハブ機能を統合する複合拠点整備

  3. 民間企業や地元自治体とのPPP/PFI方式による資金・人材確保


4. 波及効果と懸念事項・対策のポイント

  • 波及効果は「経済」「社会」「環境」など複数側面で述べると加点が期待できる。

  • 懸念事項は、提案に内在するリスク(技術依存・運用コスト増・災害時の冗長性欠如など)を挙げる。

  • 対策は、冗長化・標準化・段階的実装など、リスク低減策を技術面と運営面で示す

例:

  • 波及効果:物流効率向上によるCO₂削減、地域雇用創出、観光需要の拡大

  • 懸念事項:ICT依存によるシステム障害リスク

  • 対策:バックアップ回線の二重化、運用マニュアルと訓練による障害復旧力強化


5. 倫理・社会的持続性の要件

  • 技術選定や優先順位設定における公平性・透明性の確保

  • 情報公開と住民参加による合意形成

  • 環境負荷低減や長期的な維持更新コスト抑制

  • 将来世代へのインフラ資産継承を意識した計画づくり

例:

  • インフラ更新の優先順位は公開された基準に基づき決定する。

  • 環境影響評価とライフサイクルコスト分析を計画策定段階で義務化する。


まとめ

この問題では、国土政策の理念→現場の課題→現実的解決策→波及効果・懸念事項→倫理・持続性という一連の流れを、制約条件下で論理的に組み立てられるかが評価の鍵です。
また、抽象的な表現よりも具体的技術や制度名・数値指標を用いることで、説得力と合格可能性が大きく高まります。

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答案1 選択科目:道路 専門事項:道路計画 作成日:2025/7/16

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(1)多面的な課題と観点

1)災害リスクを考慮した効率的なインフラ整備

優先順位の明確化と段階的な整備の観点から、災害リスクに基づくインフラ整備の優先順位設定を課題とする。人口減少が進行する地域と人口が集中する都市部のインフラ整備の重要性を評価し、災害リスクが高い地域や重要生活拠点から段階的に耐震補強や防災機能強化を行う。緊急性の高い道路や橋梁、避難所などの優先順位整備が求められ、耐震・制振構造の導入や橋梁補修技術を活用し、重要施設の安全確保する。

2)地域特性を活かした資源の再配分の観点から、地域ニーズに応じた特化型インフラ整備を課題とする

地域特性に応じて資源を最適に配分し、観光地、農業地帯、都市の発展に即したインフラ設計を行う。例えば、観光地では景観を考慮した橋梁や道路のデザイン、農業地帯では水資源を活用した灌漑システムの整備を行う。都市部では交通渋滞緩和のための地下空間の活用や高架道路を用いた立体的な交通インフラ整備を推進し、地域の発展に貢献することが必要である。

3)災害に強いインフラ構築の観点から、耐震・防災機能強化とリアルタイムモニタリング体制の構築を課題とする。災害リスクが高い地域における道路・橋梁・堤防の耐震性を強化し、洪水や地震に耐えうる構造を構築する。具体的には、最新の耐震基準に基づく補強工事や、洪水リスクが高いエリアでの堤防かさ上げ、排水設備の強化など、災害発生時に被害を最小限に抑える技術応用を行うことが必要である

(2)最重要課題の解決策

課題:耐震・防災機能強化とリアルタイムモニタリング体制の構築

1)耐震補強の高度化

道路や橋梁に最新の耐震補強技術を適用し、災害時の被害を最小限に抑える。具体的には、高強度コンクリートや耐震ダンパー、制振デバイスを用いた補強工事を施し、耐震性を向上させる。さらに、土木構造物には地盤変位への体制を高める基礎改良を加え、構造物の安定性を確保する。

2)堤防のかさ上げと排水設備の強化

水害リスクが高い地域では堤防のかさ上げを行い、浸水リスクを低減する。また、ポンプ場の増設や排水路の拡充により、雨水の排出能力を強化し、浸水被害のリスクを軽減する。

3)IoT技術を活用したリアルタイムモニタリング

IoTセンサーを道路・橋梁・堤防に設置し、振動や変位、水位のリアルタイム監視を行う。地震や洪水の前兆を検知した際には、自治体や管理者に即座にアラートが発信される体制を整えることで、迅速な対応と人命・財産の保護を可能とする。

4)データ解析に基づく保全計画の最適化

モニタリングで収集したデータを解析し、劣化や損傷の進行状況を予測する。予測結果を基に、点検やメンテナンスの優先度を判断し、資源を効率的に投入することで、インフラの長寿命化と維持管理の効率化を実現する。また、新技術を導入するための研修や講習会を定期的に実施し、技術者がIoTやデータ解析技術を現場で適用できるようスキルを向上させる。

(3)波及効果、懸念事項と対応策

1)波及効果:災害に強いインフラ整備により、観光業や農業などの重要産業が保護され、地域の経済活動が継続される波及効果が生じる。

2)懸念事項と対応策:モニタリング機器の故障や通信障害が発生した場合、異常検知の遅れが懸念される。対応策として、予備電源やバックアップ通信を導入し、システムの助長性を確保する。また、定期点検や故障予防のためのメンテナンスを計画的に実施する。

(4)業務遂行に当たっての要点・留意点

1)技術者としての倫理の観点:耐震補強や防災インフラ整備においては、地域住民の生命と財産を最優先に考慮する。設計・施工段階で安全性を妥協せず、最新の技術や基準に準拠する。

2)社会の持続性の観点:資材の選定や施工方法において環境負荷を最小限に抑えることに配慮する。再生可能な材料や低環境負荷の工法を採用し、地域の自然環境の保全に努める。

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講評

この答案は、全体的に落ち着いた構成で、出題意図にしっかり沿った内容になっています。特に「耐震・防災機能強化とリアルタイムモニタリング」を中心に据えて、技術的な裏付けと運用体制まで考えている点に、この方の強みと可能性がよく表れています。


良いところ(評価できる点)

  1. 観点の提示が明確で、多面的
    • 「優先順位付け」「地域特性活用」「災害に強い構造」の3つは、被災後の復旧方針としてバランスが取れています。
    • 課題文冒頭に観点を明示しているため、採点者がすぐに主旨を理解できます。
  2. 最重要課題の具体化が丁寧
    • 耐震補強や堤防強化といった伝統的な防災手法に加え、IoT・データ解析によるモニタリングを組み込み、古い技術と新しい技術を融合させている点は説得力があります。
    • 保全計画の最適化に「研修・講習会」を加え、人材育成まで視野に入れているのは高評価です。
  3. 波及効果と懸念事項が現実的
    • 経済活動継続への波及効果を示しつつ、通信障害など実務的なリスクを指摘できています。
    • バックアップ体制や定期点検など、現場で実行可能な対策になっています。
  4. 倫理・社会性の配慮が明確
    • 「安全性最優先」「環境負荷低減」という2本柱で倫理と持続性を押さえており、論理的です。

改善できる点(さらに可能性を広げるために)

  1. 観点の広がり
    • 現状は物理的・構造的対策が中心。ここに「情報共有と意思決定の迅速化」「災害対応人材の確保・訓練」などマネジメント系の観点を加えると、より多面的になります。
  2. リスクの掘り下げ
    • モニタリング機器故障以外にも、サイバー攻撃によるデータ改ざん、センサー誤作動、AI解析の誤判定など、DX特有のリスクを加えると、現代的な視点が強まります。
  3. 波及効果の定量化
    • 「観光業や農業の保護」に加え、被害額削減や復旧時間短縮など、数値イメージを示せると加点が期待できます。
  4. 社会性の一歩先
    • 環境配慮に加えて、地域施工業者や若手技術者の参画促進など、地域コミュニティ強化の視点を入れると、社会の持続性がより際立ちます。

この方の可能性

  • 技術の具体化と運用体制の描写がしっかりできるタイプで、現場経験や知識の引き出しが多いと感じます。
  • 今後は、構造的な対策だけでなく、情報・人材・マネジメントの視点を加えると、答案が一層深みを増します。
  • 技術と社会性のバランスを整えれば、安定して高得点を狙える答案が書ける力があります。

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Ⅰ-2

問題文

我が国では、近年、全国各地で大規模な地震災害や風水被害が多く発生しており、今後も、巨大地震災害や風水被害の大規模災害の発生が懸念されているが、発生後の復旧・復興に対して投入できる人員や予算に限りがある。そのような中、災害対応におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)への期待は高まっている。今後、DXを活用することで、インフラや建築物等について、事前の防災・減災対策を効率的かつ効果的に加え、復旧・復興を効率的かつ効果的に進めていくことが必要不可決である。このような状況下において、将来発生しうる大規模災害の発生後の迅速かつ効率的な復旧・復興を念頭において以下の問に答えよ。

(1)         大規模災害の発生後にインフラや建築物等の復旧・復興までの取組を迅速かつ効率的に進めていけるようにするため、DXを活用していくに当たり、投入できる人員や予算に限りがあることを前提に、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。()解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。

(2)         前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)         前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)         前問(1)(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

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問題文の解説

出題者の意図

この問題は、「もし大きな災害が起きてしまったら、その後の復旧・復興をどう進めるか」を、限られた人や予算しか使えない状況を前提に考えてください、という問いです。
特に、近年注目されている DX(デジタル・トランスフォーメーション) をうまく使って、より早く、より効率的に復旧を進める方法を、技術者の立場から提案する力を見ています。

ただ技術を並べるだけではなく、

  1. 課題を見つける力
  2. 課題の中から特に重要なものを選び、解決策を考える力
  3. 実行したときに起こる新たな問題を予測し、備える力
  4. それを社会の中で安全に、持続的に運用するための心構え
    これらを、一つのストーリーとして順序立てて書けるかどうかを評価します。

得点のポイント

  1. 観点と課題の書き方(設問1
    • まず「何を重視する視点(観点)なのか」を短くはっきり書きます。
      例:「安全性確保の観点から〜」「資源の効率活用の観点から〜」
    • その上で、その観点に基づいた課題を「〜する」と提案型で表現します。
      (「できない」や「不足している」ではなく、前向きな形にするのがコツです)
    • 観点は、技術面だけでなく、人員・情報・社会への影響など、多方面から3つそろえるとバランスが良いです。
  2. 最重要課題と解決策(設問2
    • 設問1で挙げた3つの課題の中から、「これが一番大事」と思うものを一つ選びます。
    • 解決策は3つほど示し、できるだけ違う角度からの方法にします。
      (同じことを言い換えるのではなく、別の切り口にする)
    • 方法だけでなく、「なぜそれが有効か」という効果や理由も添えると説得力が上がります。
  3. リスクと対策(設問3
    • 設問2で挙げた解決策を全部やっても、「新しく出てくるかもしれない問題」を考えます。
      例:データ精度不足、通信障害、システムの過信など
    • そのリスクに対して、どう備えるか、具体的に書きます。
      訓練、予備システム、ルール作りなど、実行できる方法にします。
  4. 倫理と社会の持続性(設問4
    • 技術者倫理では、「安全・公平・説明責任」をどう守るかを、自分の行動として書きます。
    • 社会の持続性では、地域の企業や若手技術者をどう生かすか、災害後の暮らしをどう維持するかなど、長期的な視点を入れます。
    • SDGsなど、社会的に通じる言葉を入れると一層評価されます。

この問題は、単なる技術提案だけでなく、災害後の社会をどう立て直すかを総合的に考える力を見ています。
観点の選び方と文章の順序がしっかりしていれば、あなたの持つ知識や経験がより高く評価されます。
「課題 → 最重要課題 → 解決策 → リスク → 倫理・社会性」の流れを意識して組み立てると、読みやすく高得点につながります。

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答案1 選択科目:都市及び地方計画 専門事項:緑地計画 作成日:2025/5/16

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(1)大規模災害直後の迅速・効率的なDXを活用しての復旧・復興の課題

①災害直後の緑地・建物被害を3Dモデル化・即時共有

 被害情報の初動活用の観点から、ドローンやレーザースキャナで取得した建物・緑地の損傷状況を3Dモデル化し、構造変状の定量化によって応急補強部材の仕様と設置箇所を即時に選定できる支援体制を構築する。これにより限られた人員でも早期に安全性を確保し、初動復旧に着手できる環境を整備する。

②リアルタイムで更新できるGSIプラットフォームの開発

 避難。復旧動線の確保と障害除去計画の観点から、地震や水害後における倒木・地割れ・流出物等の通行阻害要因をリアルタイムで抽出・位置情報と紐づけてマッピングし、優先通行経路上の障害物を限定的な重機・人員で段階的に除去するオペレーション手順を策定する。これにより、早期の避難・復旧アクセスの確保を実現する。

③景観再生マスタープランの策定

 被災都市景観の再生計画策定の観点から、被災前の景観軸や構造物意匠を3D都市モデル上で参照しながら、仮設施設や囲匠の意匠構成に配慮した再配置設計を行い、復興初期から都市景観の連続性を保持できる方針を確立する。これにより、精神的な安心感と地域アイデンティティの早期回復を両立させる。

(2) 最も重要とする課題とその解決策

①災害直後の緑地・建物被害を3Dモデル化・即時共有

1)仮補強工法を選定できる支援ツールの構築

 損傷部材の変状パターンを判別し、鋼管支柱・プレート補強・クランプ固定などの仮補強工法を選定できる部材別応急補修仕様ライブラリと連携した支援ツールを構築する。

2)構造安定性の確保

 地盤沈下や傾斜が発生した構造物には、沈下量・傾斜角に応じた仮設基礎(鋼矢板圧入・ジャッキアップ・指示杭)を設計する暫定支持構造計画を即時に実施し、構造安定性を確保する。

3)作業工程と資機材配置の最適化

 土砂流入は舗装破損が発生した区域では、作業帯のゾーニング・会談除去・簡易土留材(鋼矢板・連節ブロック)を活用した仮設施工計画を立案し、少人数でも作業工程と敷材配置の最適化が図れる体制を整備する。

(3)新たに生じうるリスクとその対策

①点群データの精度不足による復旧判断ミス

 精度のばらつきやノイズの混入による、構造物の誤判定。対策としては、TISとの併用による精度補完、誤差評価基準の導入、国交省の精度管理指針に準拠した実施体制の整備を行う。

BIM/CIMモデルの過信による現地柔軟性の喪失

 計画がモデルに固定化されすぎると現地での判断・変更が困難になる。対策としては、可変要素を分離した設計構成、現場裁量のある設計変更ルール、フィードバックによるモデル更新を行う。

③データ形式の不統一による初動遅延

 各自治体が異なるフォーマットで管理しているため、統合に時間を要し、判断が遅れる。対策としては、標準フォーマットの制定、変換スールの活用、定期的な訓練による体制整備をする。

(4)必要な要件、留意点

①技術者倫理に必要な要件、留意点

 点群データは解析対象によって精度が大きく左右されるため、構造物の損傷判定には、TIS画像・写真測量・現地肉眼観察を重ね合わせた三重確認体制を確立し、誤判定リスクを低減する補完手法の選定と適用条件の体系化が求められる。また、許容変位量や部材変状の判定閾値を構造種別ごとに定量化し、判定結果の説明を果たせるようにすることが技術者としての倫理の実践である。

②社会の持続性に必要な要件、留意点

 地域中小事業者の持続的活用を図るためには、高精度な点群解析を前提としない作業手順を開発し、限定的な機材・人員でも成立する簡易施工判定支援ツールを構築する必要がある。加えて、現場ごとの典型損傷パターンに応じた部材モジュール化施工を導入することで属人性を排除し、技術の平準化と継承が実現化される。

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講評

概要(出題趣旨への適合性・得点力の大まかな判断)

本答案は、設問の要求である「限られた人員・予算の下でDXを活用し、大規模災害後の迅速かつ効率的な復旧・復興を実現する」という趣旨に沿って構成されています。
(1)(4)を通じてDX活用事例(3Dモデル化、GSIプラットフォーム、景観再生等)が具体的に示されており、課題・解決策・リスク・倫理面の流れも明確です。技術的専門性も比較的高く、一定の得点力は見込めます。
ただし、観点の多様性や社会的要素とのバランス、文章構造の簡潔性において改善余地があります。


評価できるところ

  1. DX活用事例の具体性
    • ドローン・レーザースキャナによる3Dモデル化や点群データ活用など、災害復旧における実務的かつ先進的な事例が挙げられている。
    • BIM/CIMGSIプラットフォームなど、国交省系施策とも親和性が高い。
  2. 課題解決策リスク倫理の一貫性
    • 最重要課題を(1)から(2)に明確に引き継ぎ、(3)でリスクを特定し、(4)で倫理・社会的要件に落とし込んでいる点は構成として良好。
  3. リスクの具体性
    • 点群データの精度不足、BIM/CIM過信、フォーマット不統一など、現場で実際に起こり得る問題を具体的に示している。

改善点

  1. 観点の網羅性と多様性の不足
    • 3つの観点がすべて空間情報や設計系に寄っており、「人材確保・訓練」「情報共有・意思決定プロセス」「予算制約下の優先順位付け」など、災害対応全体のマネジメント観点が弱い。
  2. (1)の課題表現の簡潔性
    • 現状は説明が長く、採点者が「観点課題」の構造を一目で把握しづらい。
      → 観点を短く明示した後、課題を提案型で端的に述べると読みやすくなる。
  3. (4)の社会的持続性の広がり不足
    • 地域中小事業者の活用や属人性排除は良いが、災害時の平等性・公平性、弱者配慮、災害文化の継承など社会的価値に直結する要素を追加すると加点が期待できる。
  4. 文章構造の整理
    • 「作業帯のゾーニング・会談除去」のように漢字誤記(会談階段)や長文の詰め込みがあり、減点要因になり得る。
    • 特に(2)の解決策は3項目が長文化しており、もう一段階の要約で見やすくできる。

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答案2 専門科目:都市及び地方計画 専門事項:緑地計画 作成2025.6.3

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(1)大規模災害直後の迅速・効率的復旧・復興の課題

①被害状況の即時可視化

 大規模災害後の復旧は、被害の可視化から復旧の優先順位付け、施工資源の適正投入という一連の工程をDXで統合的に設計する視点が不可欠である。よって初動判断の迅速化の観点から、ドローンやレーザースキャナで取得した建物等の損傷状況を3Dモデル化し、構造変状の定量化する。危険個所を即時に判断し、復旧順位の優先度を明確化する体制を構築する。

②復旧対象の優先順位の優先順位決定

 社会便益の最大化の観点からGISAIを用い、病院・避難所・物流拠点などの社会的機能の高い施設の被災状況・アクセス制約をマッピングし、影響度と復旧必要度に基づいて優先復旧施設を決定するロジックを構築する。これにより、復旧資源の集中投入による効果的な復興を図る。

③施工資源の統合管理と配分最適化

 施工体制の全体最適化の観点から、自治体・事業者間で分散管理されている重機・人員・資機材の情報を一元化し、クラウド施工管理システムを用いて復旧工程に応じた優先配置を動的に最適化する。交通規制・干渉回避も含めて復旧効率を最大化し、資源のムダ・偏在を解消する。

(2)最も重要とする課題とその解決策

被害状況の即時可視化が最も重要とする課題とする。その対策として以下の対策を講ずる。

1) 構造変状の定量化

迅速な応急復興作業を行うため、3Dモデル化されたデータを解析し、柱や梁などの変形、沈下、剥落などの損傷を数値化し評価し、補強部材の最適な仕様を設定し、補修計画を立案する。例えば、狭隘空間や複雑な形状への補修は、高流動性とひび割れ抵抗性を兼ね備えた繊維補強コンクリートが有効であり、従来材と比べて施工性と耐久性の両面で利点がある。

2)構造安定性の確保

 傾斜、沈下した構造物の安定化を図り二次災害防止のために変位量の計測に対して「構造物の許容偏心率」を基に安全判断を行う。例えば、沈下による偏心応力が大きい構造物には、ジャッキアップ工法を用いて荷重バランスを回復させることで、初期段階から安全性を確保しつつ復旧作業を開始できる。

3)施工工程と資機材配置の明確化

 3Dモデル上で損傷建物ごとの損傷分類と資機材配分に「損傷分類基準(PI評価)を活用し、構造変状を段階的に分類する。施工エリアの交錯を回避する計画は、動線上のボトルネックを除去し、重機や人員の稼働率を高めるとともに、安全性の確保と工期短縮を同時に実現する。

(3)新たに生じうるリスクとその対策

①点群データの精度不足による復旧判断ミス

 対策として月1回の点群データ解析演習や現地測量結果との照合による訓練体制を整備する。また、点群異常時の代替判断フローをマニュアル化し教育に組み込み判断誤りの抑制を図る。

BIM/CIMモデルの過信による現地柔軟性の喪失

 計画がモデルに固定化されすぎると現地での判断・変更が困難になる。対策は、可変要素を分離した設計構成、現場裁量のある設計変更ルール、フィードバックによるモデル更新を行う。

(4)必要な要件、留意点

①技術者倫理に必要な要件、留意点

 点群データのみに依存することは、誤判定につがなるリスクがある。そのため三重確認体制を徹底する責任がある。画像解析の俯瞰的視点・現地観察の直観的把握・TISによる構造的安全性評価を組み合わせることで、判断精度を向上させる仕組みである。これにより安全性の確保、効率的な復興、復旧に繋がる。この慎重な姿勢が被災者の安全と信頼に応える技術者倫理の実践である。

②社会の持続性に必要な要件、留意点

 中小建設業もDX復旧に参画できるよう、施工BIMを基盤とした簡易ナビゲーションUIを整備する。これにより判断負担を軽減し、迅速な対応が可能となる。また多くの若い技術者が参画しやすくなり、担い手不足の解消につながる。

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講評

概要(出題趣旨への適合性・得点力の大まかな判断)

  • 設問(1)(4)まで一貫して「限られた人員・予算下でのDX活用による迅速かつ効率的な復旧・復興」という出題趣旨に沿って記述されています。
  • 観点の提示課題提示重要課題の解決策リスク倫理・社会持続性という構成が明瞭で、論理展開が把握しやすいです。
  • 技術内容は3Dモデル化、BIM/CIM活用、資源配分最適化など、国交省施策や実務にも即しており、得点力は中上位〜上位を狙える水準です。
  • ただし、観点の多様性(情報・技術・マネジメントのバランス)や(3)のリスク網羅性にもう一歩踏み込めば安定感が増します。

評価できるところ

  1. 観点と課題の明確化
    • 観点を短く提示し、その後に課題を提案型で書いており、採点者が設問要求を満たしているか即座に判断できる。
    • 「被害状況の即時可視化」「復旧対象の優先順位決定」「施工資源の統合管理と配分最適化」の3観点はDX活用の要所を押さえている。
  2. 技術内容の具体性
    • 3Dモデル化による損傷数値化、繊維補強コンクリート、ジャッキアップ工法、PI評価基準など、具体的技術や手法を例示しており説得力がある。
  3. 倫理・社会持続性の実務的視点
    • 三重確認体制や中小建設業の参画支援など、実際の災害現場を想定した現実的配慮が盛り込まれている。
  4. 文章の読みやすさ
    • 前半の(1)(2)は構造が整理されており、前の答案よりも「観点課題根拠」が一目で分かる形になっている。

改善点

  1. 観点の幅
    • 現状は「技術・資源管理」寄りで、情報共有の意思決定プロセス人材・訓練体制の観点がやや欠けている。
    • 例えば「住民・関係機関との情報共有と意思決定迅速化」や「被災時の技能者不足への対応」などを加えるとバランスが取れる。
  2. (3)リスクの網羅性
    • リスクは2つだけ(点群精度不足・BIM/CIM過信)だが、通信障害やデータアクセス制限AI誤判定による優先順位の誤りなど、DX特有の第三のリスクを入れると説得力が増す。
  3. 細部の表現・誤記修正
    • 「つがなる」は「つながる」、「会談除去」(前回の誤記は改善されているが、細部の誤記は要確認)。
    • 一部の文で接続詞や読点が少なく、長文になっている箇所は簡潔化すると採点者が読みやすい。
  4. (4)社会持続性の厚み
    • 中小建設業や若手参画の視点は良いが、「地域の復興力維持」や「災害文化の継承」など社会的価値を補強する記述を加えると加点対象になりやすい。

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答案3  専門科目:都市及び地方計画  専門事項:緑地計画  作成日:2025.6.3

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1)災害直後の迅速・効率的復旧・復興の課題

①施工資源の統合管理と配分最適化

自治体・事業者間で分散管理されている重機・人員・資機材の情報を一元化し、復旧工程に応じて優先配置を最適化する。クラウド施工管理システムにより交通規制・干渉回避も含めて動的に資源投入を調整し、復旧効率の最大化と資源のムダ・偏在の抑制を図る。

②被害状況の即時可視化

ドローンやレーザースキャナで取得した建物等の損傷を3Dモデル化し、構造変状を定量化する。危険箇所を即時に抽出し、初動判断を迅速化する体制を整備する。これにより、復旧優先度の明確化と資源投入の判断が可能となる。

③復旧対象の優先順位決定

病院・避難所・物流拠点などの機能性の高い施設を対象に、GISAIを活用して被災状況とアクセス制約をマッピングし、影響度と必要度に応じた優先復旧対象を論理的に抽出する。これにより復旧資源の集中投入による社会便益最大化を実現する。

2)最も重要とする課題とその解決策

施工資源の統合管理と配分最適化が最も重要とする課題である。その対策は以下の通りである。

{C}       {C}施工工程と資機材配置の明確化

3Dモデル上に損傷分類と資機材配分をマッピングし、損傷分類基準(PI評価)を用いて段階的に構造変状を評価する。施工エリア間の干渉を回避する動線計画により、稼働率の向上と安全性確保、工期短縮を両立する。

{C}       {C}構造安定性の確保

被災構造物の傾斜・沈下に対し、「構造物の許容偏心率」に基づいて安全性を評価する。例えば偏心応力の大きい構造物にはジャッキアップ工法を適用し、荷重バランスを初期段階で是正することで、復旧作業を安全かつ早期に実施できる。

{C}       {C}構造変状の定量化

損傷建物の3Dモデルを解析し、柱・梁の変形や沈下等を数値評価する。補修には繊維補強コンクリート等の高性能材料を選定し、施工性・耐久性の両面から最適化を図る。これにより応急復旧の技術的基盤を迅速に整えることができる。

3)新たに生じうるリスクとその対策

BIM/CIMモデルの過信による現地柔軟性の喪失

モデルに依存しすぎると現地判断が制限される。対策としては、可変要素を明示的に分離した設計構成や、現場裁量での変更ルール、現地フィードバックによるモデル更新体制を整備し、柔軟対応力を維持する。

②点群データの精度不足による復旧判断ミス

点群データ解析訓練(月1回)や現地測量との照合を制度化し、異常時の代替判断フローもマニュアル化して教育に取り入れることで、復旧初動における判断ミスを抑制する体制を構築する。

4)必要な要件、留意点

①社会の持続性に必要な要件、留意点

中小施工業者もDX復旧に参画できるよう、施工BIMを基盤とした簡易ナビゲーションUIを導入し、判断支援負担を軽減する。これにより若手技術者の参画も促され、担い手不足の課題解消にも寄与する。

②技術者倫理に必要な要件、留意点

点群データへの過信は誤判定の要因となりうる。TISによる構造的安全評価・画像解析の俯瞰・現地観察の直観を組み合わせた三重確認体制を徹底し、判断精度を高めることで、安全と信頼に応える技術者倫理を実践する。

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講評

概要(全体印象)

  • 課題解決策リスク倫理・社会性の流れが明瞭で、読み手が理解しやすい構成になっています。
  • 現場で使える具体的な技術(ジャッキアップ工法、繊維補強コンクリート、PI評価基準など)が盛り込まれており、説得力があります。
  • 各観点がDX活用の中核要素を押さえており、合格水準に十分届く内容です。
  • さらに得点力を上げるには、「マネジメント面」や「情報共有・意思決定プロセス」に触れて観点を広げるとより多面的な答案になります。

評価できるところ

  1. 最重要課題の選択が的確
    • 「施工資源の統合管理と配分最適化」を軸に据え、具体的技術と運用体制まで落とし込んでいる点は高評価。
  2. 解決策の実務性
    • 3Dモデル活用や動線計画、許容偏心率による安全性評価など、実務で即応可能な手法が並び、机上論に留まっていない。
  3. 倫理・社会性のバランス
    • 中小施工業者の参画支援や若手育成の視点を盛り込み、単なる技術解答にとどまらず社会的持続性を意識している。
  4. リスク対策の具体性
    • BIM/CIM依存や点群精度の課題を明確に指摘し、訓練や代替判断フローなど具体的な予防策を提示している。

改善できるところ(可能性を広げる視点)

  1. 観点の多様化
    • 現状は「施工資源管理」「可視化」「優先順位決定」と技術寄り。
      → ここに「情報共有と意思決定の迅速化」や「人材確保・訓練体制」などマネジメント観点を加えると、多面的な答案になる。
  2. リスクの追加
    • 通信障害、サイバー攻撃、AI誤判定などDX特有の追加リスクを入れると、現代的な視点が強まる。
  3. (4)社会性の厚み
    • 現状の「若手参画・担い手不足解消」に加え、
      → 被災地域の雇用創出や技術継承、災害文化の保持など、復興の長期的価値にも触れると評価が上がる。

この方の可能性

  • 技術的な知識を具体的事例に落とし込む力が高く、実務的な災害対応シナリオを描けています。
  • 社会的配慮や倫理観も意識できており、今後はマネジメントや広域連携の視点を強化すれば、より高い評価が得られます。
  • 特に「観点のバリエーション」と「DX特有リスクの網羅性」を伸ばすことで、答案全体の厚みと完成度は一段と向上します。

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答案4  専門科目:施工積算  専門事項:施工計画  作成日:2025.6.13

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(1)課題

1)ICT活用による災害対策

災害対策の安全性の観点から、被災状況をドローンによるデジタル情報収集の実施や応急復旧に遠隔操作のICT重機を使用することで、安全性を確保しつつ、高精度の情報収集と効率的な施工が実現する。

2)デジタルツイン活用による復旧計画

 復旧計画の修正の迅速化の観点から、復旧計画にデジタルツインを活用して実施することで、シミュレーションを経済的に多くのパータン実施可能となり、不確定要素が多い中、現場の状況変化に迅速に計画変更が可能となる。

3)インフラ履歴のデータベース化

復旧作業の優先度判断の観点から、建設年度・補修履歴・劣化進行をデータベース化し、AIの自動解析により残存性能や劣化予測を評価し、災害発生後、そのデータを活用して応急復旧・本復旧の優先順位の判断材料とする。

(2)ICT活用による災害対策

1)土砂崩壊箇所では、ドローンでの点群データを当初の地形データと重ね崩壊土砂の数量把握を定量化し、土質データの属性を加えることで、土砂撤去の安全性・経済的な運土計画に繋がる。

2)被災箇所をCIMモデル化して、自動計測の変位属性を加えることにより、対策工・施工計画を高度化・可視化することにより、復旧作業の配置人員・機械設備の効率化・安全化を図る。

3)被災状況データのプラットフォーム化

 被災状況データを広域的にプラットフォーム化することで、復旧・復興計画の重要度把握及び工程管理の高度化が図れる。

 (3)波及効果は、ICT活用促進で、多方面で利用可能となる。懸念事項は、ICT利用においては、効率的な作業となるが、本質的な技術力が不足する。解決策は、熟練技術者のVRによる可視化による技術的な内容を教育する。

(4)技術者倫理:持続可能な生活圏の構築、公衆の安全・健康及び福利を最優先に考慮する必要がある。社会の持続性:インフラ整備は、SDGs目標「住み続けられる街づくりを」にDX活の促進は、「産業と技術革新の基盤を作ろう」を実現する。

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講評

概要(全体印象)

  • 出題趣旨(限られた人員・予算の中でのDX活用による迅速・効率的な復旧)に沿って、(1)(4)の要素を押さえています。
  • ICT活用」「デジタルツイン」「データベース化」と、DXの代表的手段をバランス良く配置している点は強み。
  • ただし、課題文と解決策の関係がやや曖昧な部分があり、採点者が「観点課題根拠」を即座に把握しづらいところがあります。
  • (3)のリスク・懸念事項が1つだけで、やや表面的。具体的な事例や波及影響の深掘りが加わると得点力が増します。

評価できるところ

  1. DX活用の多面的提示
    • ドローン・CIM・デジタルツイン・AI解析と、DX技術を幅広く挙げており、技術的引き出しの豊富さが見える。
  2. シミュレーションと現場連動の視点
    • デジタルツインを用いた計画修正の迅速化は、現場の不確実性対応という重要ポイントを押さえている。
  3. 履歴データ活用の着眼
    • 補修履歴・劣化進行など、災害前からのデータ基盤を整備する視点は評価できる。
  4. 社会的意義の明示
    • SDGsの目標とDX活用を結びつけた点は、社会性のアピールとして有効。

改善できるところ

  1. 観点の明確化
    • 現状、「災害対策の安全性」「計画修正の迅速化」「優先度判断」など観点はあるものの、書き出しで明確に短く示すと採点者に伝わりやすい。
    • 例:「安全性確保の観点から、する」「優先順位設定の観点から、する」
  2. 課題と解決策の紐付け
    • (1)(2)で同じ要素が重複しており、課題最重要課題解決策の一貫性がやや弱い。
    • 例:最重要課題に選んだ項目だけを(2)で具体化する形に整理すると論理が通る。
  3. リスクの具体性と複数化
    • (3)は「本質的な技術力不足」という1点のみだが、DX特有のリスク(通信障害・データ改ざん・AI誤判定など)を複数提示すると説得力が増す。
  4. (4)の具体化
    • 技術者倫理と社会持続性は理念にとどまっており、災害現場の事例や具体的行動指針を加えると評価が上がる。
    • 例:被災弱者配慮、地元業者との協働体制、長期的な生活インフラの維持方策など。

この方の可能性

  • 幅広い技術キーワードを選び出せる力があり、最新動向にも敏感です。
  • 現状は「素材」がそろっている状態で、あとは構造整理と深掘りで完成度が一気に上がります。
  • 特に「観点の短文化」「リスクの充実」「理念の具体化」を行えば、合格ラインを安定して超えられる答案になります。

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建設部門 土質および基礎

Ⅱ-1-1

問題文

地盤の変形係数を設定するために一般的に用いられる原位置調査法について2種類挙げて,各試験内容と変形係数の求め方について説明せよ。また,原位置調査法を活用した際の留意点について,ひずみレベル,ばらつき,地盤物性等の観点から述べよ。

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問題文の解説

この問題は、地盤の変形係数を求めるための代表的な原位置試験について理解しているかを確認するものです。
出題者は、次の3点を順序立てて説明できることを求めています。

  1. 試験方法の選定と概要説明
    • 原位置で直接変形係数を評価できる試験を2種類挙げます(例:平板載荷試験、プレッシャーメータ試験)。
    • どのような装置を使い、どの物理量(荷重と沈下量、圧力と変位など)を測定するのかを簡潔に説明します。
  2. 変形係数の求め方
    • 測定結果から変形係数を算定する流れを示します。
      例として、平板載荷試験では荷重沈下曲線の傾きとポアソン比を用いる方法、プレッシャーメータ試験では圧力変位曲線の弾性域の傾きから求める方法があります。
    • 単位や仮定条件(弾性理論、平面ひずみ条件など)にも触れると加点が期待できます。
  3. 実務上の留意点
    • ひずみレベル:試験で得られる変形係数は、ひずみの大きさによって値が変わります。
    • ばらつき:地盤の不均質や試験条件の差によって試験値が変動するため、複数箇所での実施が望ましいです。
    • 地盤物性:土質・密度・飽和度などによって結果が異なりますので、地盤条件を踏まえて解釈する必要があります。

まとめますと、この問題では

  • 「どの試験を選び」
  • 「どのように測定・算定し」
  • 「使用時に何を注意するか」
    を、筋道立てて簡潔かつ正確に説明することが得点のポイントとなります。

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答案 専門科目 土質及び基礎  専門事項 土質調査並びに地盤  作成日 2025.4.25

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1.内容と変形係数Eの求め方

(1)PS検層

 PS検層は、孔内弾性波測定でせん断弾性係数G・変形係数Eを求める手法である。変形係数EE=2(1+ν)Gとして求められる。

(2)孔内水平載荷試験

 孔内水平載荷試験はボーリング孔壁に圧力をかけ、水平変位量を測定しGEを求める手法である。EE=(1+ν)rmΔp/Δrとして求められる。

2.留意点

(1)中~大ひずみ試験を併用しひずみ整合性検証

 実際の地盤挙動(中~大ひずみ)を設計に反映させるため小ひずみ領域のPS検層のVsGmaxに変換しG/Gmax-γ経験式よりGsec算出しEsecを算定する。各層で孔内水平載荷試験(中〜大ひずみ試験)Esecの整合性を検証し設計地盤定数の妥当性を評価する。

(2)ばらつきを統計的に評価

 深度方向試験は横方向のばらつきが評価困難であるため複数孔で層別平均・標準誤差を算出しt分布から信頼区間0.95を設定しばらつき要因を特定し、信頼性を考慮して代表値を算出する。

(3)地盤物性依存の弱信号にトレーシングを併用

 軟弱地盤や礫混じり地盤では起振波の散乱・減衰が著しく初動の自動判別が困難である。目視判読を併用し、地質・N値に基づく推定値との整合性を検証する。

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講評

この答案は、選んだ試験方法も説明内容も専門性が高く、出題要求にきちんと応えられていると感じます。特にPS検層と孔内水平載荷試験という組み合わせは、ひずみレベルの異なる試験を対比させやすく、計算式も明記しており、採点者にとって評価しやすい構成です。


評価できるところ

  1. 試験方法の適切な選定
    • PS検層(小ひずみ領域)と孔内水平載荷試験(中〜大ひずみ領域)を選び、それぞれの特徴と算定式を簡潔に提示しています。
    • 公式を明示しているため、変形係数の求め方が明確で説得力があります。
  2. 留意点の深い理解
    • ひずみレベル整合性の検証方法を具体的に書き、GmaxからGsecEsecへの変換手順まで触れています。
    • ばらつきを統計的に処理する方法(信頼区間の設定)まで言及しており、データ解釈の信頼性確保に配慮している点が好印象です。
    • 信号の弱いケースでの判定補助(トレーシング、目視判読)にも触れており、現場実務への対応力が見えます。
  3. 技術者らしい姿勢
    • 単なる測定値提示ではなく、整合性確認や信頼性評価まで行う姿勢が、技術士らしい責任感として表れています。

改善できるところ

  1. 用語と式の説明補足
    • EsecGsecなどの用語は説明なしで出てくるため、初見の採点者には少し難しく感じられるかもしれません。
      式の意味や物理的背景を一文添えるとさらに理解しやすくなります。
    • 孔内水平載荷試験の式 E=(1+ν)rmΔp’/Δr の変数定義(rmΔp’Δr)を明記すると丁寧です。
  2. 観点の明示
    • 留意点(1)(3)は内容は的確ですが、設問に沿った「ひずみレベル」「ばらつき」「地盤物性」というキーワードを冒頭に置くと採点者に伝わりやすくなります。
  3. 平易さのバランス
    • 高度な内容を盛り込んでいるため、専門的で堅めの印象があります。採点者に理解を促すため、要点を先に短くまとめ、その後に詳細を書く構成にすると読みやすさが増します。

この方の可能性

  • 高度な理論と実務経験をバランス良く持ち、数式や統計処理を活用して地盤定数を合理的に設定できる力があります。
  • 現場の制約やデータの限界にも目配りできるため、設計値の信頼性を高める工夫ができる方です。
  • 今後は、この専門性をより多くの人にわかりやすく伝えるための「表現の整理力」を磨くことで、試験答案としての完成度がさらに高まると思います。

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Ⅱ-2-1
問題文

模式図に示すように臨海地域の埋立地盤上に半地下構造の貯水槽を新たに建設する計画がある。また,この貯水槽には地中管が接続され,近傍には他事業者所有の事務所棟が存在している。貯水槽の仕様は,外径Φ12m,地下部分深さ5m,地上高さ5m,運転貯水深7m(EL+2.0m~+9.0m)となっており,ハーフプレキャスト構造であり,部材等は耐震含め要求性能を満足している。一方で,供用後に起こりうる地盤の変状についての検討をこれから行わなければならない。

貯水槽と地中管を建設するに当たり,計画業務の責任者として調査·設計·施工の複数の段階において,土質及び基礎を専門とする技術者の立場から下記の内容について記述せよ。なお,事務所棟は杭基礎構造であり常時·地震時ともに支持力や部材の健全性は確保されているとの情報を得ている。

(1)貯水槽と地中管の建設における調査·設計·施工の段階のうち,2つ以上の段階において検討すべき事項をそれぞれ挙げて説明せよ。

(2)本業務を進める手順を列挙して,それぞれの項目ごとに留意すべき点,工夫を要する点を述べよ。

(3)本業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

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問題文の解説

出題者はまず、調査・設計・施工のうち2段階以上で検討すべき事項を具体的に説明することを求めています(設問1)。
調査段階では、埋立砂質土・沖積砂質土・洪積粘性土の層構成(N230)、地下水位(EL+4.0m)、液状化・沈下・側方流動の可能性評価、地中管経路や接続部周辺の支持力・変形特性の把握が必要です。
設計段階では、貯水槽の不同沈下・浮き上がり防止設計(常時・地震時)、地中管接続部の変位吸収構造、隣接杭基礎建物への変位影響低減策、高地下水位下での浮力・浸透流対策を検討します。
施工段階では、掘削工法の選定、止水・揚水管理、周辺地盤の変形抑制、既設構造物やライフラインの影響管理、塩害や腐食リスクを見越した資材選定が重要です。

次に、業務手順を列挙し、各段階の留意点や効率化策を示すことが求められます(設問2)。
調査計画原位置・室内試験地盤解析・変形予測基礎形式・構造決定施工計画施工管理供用後モニタリングの順に整理し、各段階で調査結果の逐次解析による設計条件の早期確定や、計測データの自動収集・即時解析による変形監視など、判断サイクルを短縮する工夫を盛り込みます。

さらに、業務を効率的・効果的に進めるための関係者調整方策では(設問3)、単なる事務的連絡ではなく、土質基礎業務の判断を迅速化する情報連携が求められます。
調査結果や地盤計測データを設計・施工・解析担当が共通フォーマットで即時共有し、許容変位や沈下限界に基づく対応判断をリアルタイムで行える体制を構築することが重要です。

以上を踏まえ、段階ごとの技術的検討内容、効率化のための具体策、情報の迅速活用による判断プロセス短縮を明確に盛り込むことが、高得点につながるポイントです。

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答案 専門科目 土質及び基礎  専門事項 土質調査並びに地盤  作成日 2025.6.8

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(1)検討すべき事項

1)(調査)液状化層・支持力分布の検討

 SPTCPTを併用しRobertsonの土質性状分類図で連続的に地層を評価することで弱層・薄層を含めた面的な地層分布解析が可能となる

2)(設計)ボイリングへの対応設計の検討

 Terzaghiの方法で安全率を評価し必要に応じて井戸理論式で揚水井の配置設計を検討し、地下水位低下で浸透力を減少させ土留め安定を維持する。

3)(設計)不同沈下対策の過少過剰設計を防ぐ

 地盤・構造物を一体としてFEM弾粘塑性解析でレンズ状の局所的な地層も考慮して圧密沈下量、変位勾配を高い精度で評価することで、対応設計(可撓性継手、地盤改良など)が経済的なものとなる。

(2)手順と留意すべき点、工夫を要する点

1)調査 透水係数kを判断基準にした中間土の評価

 砂質粘性の境界であるk=10^-6m/sを基準に、これ以上を砂質土として排水条件のCPTの値、これ以下を粘性土として非排水条件の三軸圧縮試験を採用することで工学的特性を考慮して強度を評価する。

2)設計 貯水槽の液状化防止対策

 安全率を抵抗力(自重)/揚圧力>1.2で算定し必要に応じて有効応力増加または過剰間隙水圧抑制する浮き上がり防止羽根や透水性鋼矢板などを設計する。

3)施工 支保工変状に応じた対策フローの作成運用

 1次管理値は早期警戒基準として1%Hとし観測頻度を高くし急変化に即応できる体制をとる。2次管理値は早期対応基準値として2%Hを設定し薬液注入補強を実施し支保工安定を維持する。

4)施工後管理 実測観測による沈下収束確認

 解析は双曲線法(1次圧密)とカサグランデ図解法(2次圧密)を併用して行い、残留沈下量が許容沈下量以下となることを確認する。実測に応じた予測曲線修正で正確な収束確認が可能となる。

(3)関係者との調整方策

1)代表値選定の信頼性向上

 調査・設計者に対して地盤の不均質性を面的に補完するためCPTを併用させる。また参照する基準類・理論式や妥当性の評価方法の方針を両者で事前合意させることで透明性を確保し両者間の齟齬を防止する。

2)ボイリング対策のフロー化

 施工業者と発注者に対して気泡や濁りなど早期予兆ごとに揚水能力増加や地盤改良などの対策工を事前に合意させることで迅速対応が可能となる。

3)設計変更や構造物再構築による費用増加の防止

 設計者と発注者に対してFEMで変位解析を行い不同沈下による漏水リスクを示し可撓継手や地盤改良などの予防的措置の合意をとり合理的施工を行う。

 

添削で得られた知見(ナレッジ)は、添削の度ごとにご自身の言葉で答案末尾にまとめてください。

構造化を行うことで要素間のつながりが明確化される。またダブリ回避と優先順位の適切な設定が可能となる。

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講評

概要

この答案は、出題趣旨である「臨海部埋立地盤における貯水槽・地中管建設に伴う調査・設計・施工段階の検討、業務手順、効率的な遂行方策」に正面から応えています。
調査から施工後管理まで一貫した技術的提案を示しており、地盤工学の理論と実務経験に基づく具体性が高く、得点力も十分に高い答案です。


評価できるところ

  • 技術の具体性と裏付け
    • SPTCPT併用やRobertson分類図など、調査段階での面的かつ高精度な評価手法が明確。
    • Terzaghiの方法、井戸理論式、FEM弾粘塑性解析など、設計段階の根拠がしっかりしており説得力がある。
    • 施工管理値(1%H2%H)や対応フローが明示され、実務対応力が伝わる。
  • マネジメント視点の導入
    • 調査・設計・施工間の基準・評価方法を事前合意する方策など、単なる連絡調整ではなく技術判断の迅速化につながる提案になっている。
    • ボイリングや不同沈下など重要リスクに対し、予兆段階から対策を具体化している点は評価が高い。
  • 課題解決型の構成
    • 各段階で「課題技術的対応効果」が明確に示されており、答案全体に一貫性がある。

改善点(少し手を入れればさらに高得点)

  • 段階ごとの整理の明確化
    • 調査・設計・施工・施工後管理を見出しで分け、最初に論点を短く示すと、採点者が流れを把握しやすくなります。
  • 選定理由の一言補足
    • 採用した調査・設計・施工方法が「なぜこの条件に最適か」を一文添えると、説得力がさらに増します。
  • 数式や手法の簡潔説明
    • Robertson分類図や双曲線法など、名称だけでなく要点を一行説明すると理解が早まり、加点につながります。

これらは大きな修正ではなく、「見やすさ」と「理由付け」の追加だけで、答案全体の印象が格段に上がり、ほぼ満点レベルに届くはずです。


この受講生様の本質的可能性

  • 理論と現場対応の両面に強く、課題を的確に捉えた上で具体的かつ実行可能な提案を示せる力があります。
  • 設計・施工・管理の全工程を俯瞰し、リスクを予兆段階から管理するマネジメント力も高いです。
  • 今後は情報整理と見せ方を磨けば、試験だけでなく実務の提案書や技術報告でも一段上の評価を受けられる実力があります。

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Ⅲ-1
問題文

-1我が国では災害の頻発化・甚大化,社会の多様化・人口減少、限られた財源などインフラを取り巻く環境が変化している。このような中、高度成長期以降に集中的に整備されてきたインフラが建設後50年以上経過することとなり、そのインフラの数は加速度的に増加している。地盤構造物(盛土、切士、擁壁、構造物基礎等)はその多くを占めており、これらへの適切な対応が必要となっている。この対応に当たり土質及び基礎を専門とする技術者の立場から、対象となる地盤構造物を明記したうえで以下の問いに答えよ。

1)多面的な観点から3つ以上の技術的な課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。*解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。

2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。

3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

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問題文の解説

この問題は、老朽化が進む地盤構造物(盛土、切土、擁壁、構造物基礎など)を対象に、土質基礎工学の専門性を活かして課題・解決策・新たなリスク対策を体系的に示す力を問うものです。背景には、災害頻発化・人口減少・財源制約、高度成長期インフラの急速な老朽化があります。


出題者の要求

  1. 観点と対象を明記した課題抽出(設問1
    • 対象物(例:高速道路盛土、港湾護岸基礎など)を明示。
    • 安全性・維持管理性・環境適合性など多面的観点から3つ以上の課題を具体的に述べる。
  2. 最重要課題と複数の解決策(設問2
    • 1つ選び、専門用語を用いて複数の技術的対応策を示す(調査、解析、補強工法、モニタリング等)。
  3. 新たなリスクと対策(設問3
    • 対策後に発生し得る二次的リスク(周辺変位、維持管理負担、環境影響等)と、その抑止策を示す。

得点ポイント

  • 観点と課題は必ずセットで記述すること。
  • 課題は現象だけでなく原因まで示すと評価が高まる。
  • 解決策は複数かつ具体的に示し、専門用語を用いると説得力が増す。
  • リスクは、既存課題ではなく対策後に新たに発生する可能性のあるものを挙げること。

コンサルタント視点の着目点

  • 老朽化による支持力や変形特性の低下
  • 災害頻発化に伴う崩壊・沈下リスクの増加
  • 調査・点検の効率化(ドローン、3D計測、IoT計測機器などの活用)。
  • 限られた予算下での補修優先度設定とライフサイクルコストの最適化。

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答案 専門科目 土質及び基礎  専門事項 土質調査並びに地盤  作成日 2025.7.5

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対象となる地盤構造物:盛土

(1)技術的な課題とその内容

1)課題1 広域異常の早期発見

 財政の地域差の観点から、地方の財源人材不足による定期点検不足で高まる災害リスクに対して、自治体間の広域連携を行い2時期衛星SARで定期的にデータを取得し位相差から沈下や地すべり予兆であるクリープ現象を解析し、災害予兆を適切に抽出することが課題である。

2)課題2 空洞化への対策

 不可視部の健全性の観点から、H30.7豪雨による山陽自動車道のように内部侵食による土砂流出の進行によって盛土が崩壊し甚大な被害となるリスクに対して、ボーリングに表面波探査を併用し内部構造を把握し、薬液注入工法で安定性を改善することが課題である。

3)課題3 排水機能の改善

 豪雨災害頻発化・甚大化の観点から、線状降水帯やゲリラ豪雨により排水機能が設計耐力を超えてしまうリスクに対して、設計基準を見直し集水井や排水パイプを適切に配置することで、不測の外力に対する強靭な排水構造を検討することが課題である。

(2) 上記課題1:広域異常の早期発見に対する解決策

1衛星SARによる面的変位モニタリングの高度化
2時期SAR干渉(InSAR)や時系列解析(SBAS, PS-InSAR)を用い、盛土法面や天端の微小変位(mmcmオーダー)を長期的に追跡する。位相差解析により、地すべり性クリープや不均一沈下の進行を定量化し、異常成長速度を算出する。これにより、降雨や地震等の外力イベントと変位挙動の相関分析が可能となり、広域での危険箇所抽出を効率化する。解析結果はGIS上に重畳し、危険度マップとして維持管理計画に反映する。

2地上計測との統合による検知精度向上
SAR観測は植生や大気遅延の影響を受けやすいため、TLS(地上型レーザースキャナ)やSfMStructure from Motion)による三次元地形モデルを併用し、形状変化や沈下量の地上実測データを取得する。さらに、伸縮計(extensometer)、傾斜計(inclinometer)、間隙水圧計(piezometer)などの地盤計測機器を要所に配置し、地下の変形や間隙水圧変動を監視する。これらの計測データを時系列的に統合解析することで、SAR単独では検知が難しい局所的異常も把握でき、誤検出の低減と予兆抽出の信頼性向上を図る。

3維持管理への反映と予防的補修計画の策定
SARと地上計測で得られた変位・水圧・地盤物性のデータを用い、FEM(有限要素法)やMCM(質点系解析)による盛土安定解析を実施する。安全率(Fs)の時系列変化を評価し、低下傾向を示す箇所には排水工(横ボーリング排水、集水井)、補強盛土(補強土壁工法、地盤改良)などの予防的補修を優先的に実施する。また、LCC(ライフサイクルコスト)評価により、補修時期と規模を最適化し、限られた予算の中で最も効果的な維持管理を行う。これにより、異常発生から補修までのタイムラグを短縮し、大規模崩壊の未然防止を可能とする。

(3)新たに生じうるリスクと対策

1)   リモートセンシング特有の不確実性
InSARは植生変化・デコヒーレンス・大気遅延により偽陽性/偽陰性が生じ得る。また視線方向成分のみのため水平変位の取り逃しがある。
【対策】上り/下り軌道の多ジオメトリ解析、大気位相画面補正、PS/SBAS併用GNSS・水準測量・TLSの地上真値でデータ同化を行う。各ピクセルに**不確かさ指標(Coherence等)**を付与し、トリガー閾値をベイズ更新で改訂する。

2)   センサー網の運用リスク
傾斜計・間隙水圧計等は停電・故障・ドリフト、通信断やサイバー侵入のリスクがある。
【対策】冗長配置・二重化電源(太陽光+蓄電)・定期較正、エッジ保存と遅延送信サイバー対策(VPN・署名・アクセス制御)を実装する。異常時はフェイルセーフで警報を継続。

3)   予防補修による二次的影響
薬液注入は水みち閉塞による湧水経路変化や過剰注入による浮き上がり・側方土圧増を誘発し得る。排水工は目詰まり沈下加速の可能性がある。補強土は荷重再配分に伴う趾部不安定を生じ得る。
【対策】事前に浸透流FEMで流況変化を評価し、段階注入・低圧管理トレーサ試験で到達管理を行う。排水材は粒度適合と逆フィルタ設計背面洗掘対策を実施。補強は部分施工計測設計再評価観測施工法で進め、安全率(Fs)とトリガーレベルをあらかじめ合意する。

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講評

本答案は、出題趣旨である「老朽化した地盤構造物に対して、土質基礎工学の専門性を活かし、課題抽出・技術的解決・新たなリスク対策を体系的に示すこと」にしっかりと応えています。対象を盛土に特定し、調査・解析・設計・維持管理まで一貫した技術提案を展開しており、得点力は高いです。特に、観点の明示、最新技術(SARTLSFEM等)の応用、マネジメントを含む実務的対応が明確であり、合格レベルを十分に満たす内容です。


評価できるところ

  • 課題設定の的確さ
    観点を明示し、現象と背景リスクを関連づけて記載しています。広域異常監視を最重要課題とした選定理由も合理的で、他課題への波及効果を意識している点が評価できます。
  • 技術応用の具体性
    InSARの解析手法(SBASPS-InSAR)や地上計測との統合、FEM解析など、現場実装可能な具体策を提示しています。解決策ごとに目的・方法・効果が明確で説得力があります。
  • マネジメント視点
    広域監視、データ同化、LCC評価など、維持管理計画に結びつける流れがよく整理されています。
  • リスク対応の深さ
    計測精度や施工の副作用、モデル依存性まで踏み込んだリスク分析と対策が示されており、実務的です。

改善点

改善点は多くありませんが、もし加えるとすれば、各技術提案の実施優先度や費用感の簡潔な比較を示すことで、よりマネジメント力を強調できます。また、各観点での根拠データや基準値例を簡潔に挙げると、審査員の納得度がさらに高まります。


本質的可能性

本答案は、最新技術と土質基礎の専門性を有機的に組み合わせ、課題解決に導く力を示しています。特に、広域監視から予防補修までの一貫性は、将来的に地盤リスクマネジメントの中核を担うコンサルタントとしての資質を十分に感じさせます。

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建設部門 鋼構造及びコンクリート

Ⅱ-1-3

問題文

コンクリート構造物の変状には、アルカリシリカ反応、塩害、火害などがある。この3種類の変状の中から1つ選択し、その変状のメカニズムを概説せよ。また、選択した変状の程度を調査する方法、及び変状の程度を考慮した補修方法について述べよ。

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問題文の解説

この問題は、コンクリート構造物に生じる代表的な変状のうち1つを選び、劣化のメカニズム、劣化の程度の調査方法、劣化度合に応じた補修方法を体系的に説明することを求めています。
単に現象を列挙するのではなく、材料・環境条件・構造的要因といった背景を踏まえて、原因と進行プロセスを明確にすることが得点の鍵です。

選択肢はアルカリシリカ反応(ASR)、塩害、火害の3つであり、それぞれに特徴的な劣化メカニズムと調査・補修技術があります。
例えばASRでは、反応性骨材とアルカリ分、水分が化学反応を起こして膨張し、ひび割れや劣化が進行します。塩害では、塩化物イオンが鉄筋に到達し不動態皮膜を破壊、腐食膨張によってかぶりコンクリートにひび割れや剥離が生じます。火害では、高温によるコンクリート組織の脱水・強度低下や鉄筋の降伏点低下が問題となります。

得点のポイントは以下の通りです。

  • メカニズムは材料・化学反応・構造への影響の因果関係を含めて説明する。
  • 調査方法は目視・非破壊試験・採取試験を組み合わせ、精度・範囲・目的を明記する。
  • 補修は劣化程度に応じた工法の選定理由を述べ、予防保全と再劣化防止策も含める。

コンクリート工学のコンサルタントとしての着目ポイントは、

  • 劣化の進行速度や影響範囲を推定するための調査設計
  • 構造物の供用条件や環境条件に応じた補修材・工法の適合性評価
  • ライフサイクルコスト(LCC)を考慮した補修・補強計画の策定
  • 補修後のモニタリングと再劣化リスクの管理手法

要するに、本問題は劣化現象の理解から補修計画までを一貫して論理的に説明できる力を問うものであり、実務的な判断力と体系的な知識が評価されます。

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答案 専門科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造、設計  作成日 2024.12.04

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1.アルカリシリカ反応のメカニズム

セメント中に含まれるNa+K+などのアルカリ成分が水に溶け、高pH環境が形成されると、骨材中に含まれる反応性シリカが強アルカリ環境下で可溶化する。反応性シリカがアルカリ成分と水と反応することでアルカリシリカゲルが形成され、このゲルが水分を吸収すると、ゲルの吸水性の特徴により分子間距離が広がり体積が増加する。そして、コンクリート内部の骨材の膨張圧により、膨張骨材周辺のコンクリートが押し出され、結果的に亀甲状のひび割れが発生する。

2.変状の調査方法

1)目視調査:ひび割れからアルカリシリカゲルの滲出の有無、鋼材腐食に伴うさび汁の有無を確認する。

2)コア採取による顕微鏡観察:シリカ鉱物やガラス質物質を含有する骨材の使用を確認する。

3)弾性係数と圧縮強度の関係:圧縮強度や弾性係数の関係から劣化度合いを評価する。

3.補修方法

1)潜伏期:外部から構造物に水が供給されないよう止水・排水処理を行う。

2)進展期・加速期:ひび割れ注入や表面被覆工法により、ひび割れから水の侵入を抑制する。また、亜硝酸リチウムを内部注入し、ゲルの膨張を抑制する。

3)劣化期:鋼板巻立てや接着工法により、物理的に膨張を抑制する。

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講評

本答案は、出題趣旨である「劣化現象の理解から調査方法、補修方法までを一貫して説明する」という要求に十分応えており、得点力は高いです。メカニズムは化学反応・物理的影響を含めて整理されており、調査と補修も劣化段階別に提示されているため、論理の流れが明確です。合格ラインを超える内容であり、技術的説得力があります。


評価できるところ

  • メカニズム説明の精度
    アルカリシリカ反応の化学的背景(水酸化物イオンによるシリカ溶解、ASRゲル膨張)が正確で、現象の因果関係が明瞭です。
  • 調査方法の段階的提示
    目視コア観察力学特性評価と、精度と負担のバランスを取った調査計画が示されています。
  • 補修方法の進行度別整理
    潜伏期〜劣化期までの段階に応じた対策が提示され、予防保全から延命補強まで網羅しています。

改善点

  • 調査項目に「化学分析(化学法JIS A 1145等)」「膨張試験(JIS A 1146)」など規格準拠の試験名を加えると、専門性がさらに高まります。
  • 補修方法について、再劣化防止のための水分管理の長期計画モニタリング手法に触れると、マネジメント面の評価が上がります。

本質的可能性

この答案は、現象理解・技術的対応・段階別マネジメントの3要素がバランス良く組み込まれており、実務での劣化診断・補修計画策定にも直結する内容です。特に、段階別補修提案の組み立て力は、将来的にコンクリート構造物の維持管理戦略を設計できるコンサルタントとしての可能性を強く感じさせます。

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Ⅱ-1-4
問題文

コンクリート構造物の温度ひび割れの発生メカニズムについて説明せよ。

また、温度ひび割れの抑制対策を2つ挙げ、それぞれについて目的と留意点を述べよ。

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問題文の解説

この問題は、コンクリート構造物に生じる温度ひび割れについて、発生メカニズム、抑制対策2つの提示、各対策の目的と留意点を体系的に説明することを求めています。
単なる現象説明ではなく、熱的要因・力学的要因・材料性質の関係を踏まえて因果関係を明確にし、対策も目的と実施上の注意点まで示すことが重要です。

温度ひび割れは、主に以下の2種類が対象となります。

  • 初期温度ひび割れ:セメント水和熱による部材内部と表面の温度差、または拘束条件による引張応力の発生
  • 乾燥後の温度ひび割れ:環境温度変化による膨張・収縮差と拘束による応力蓄積

得点のポイントは、

  • 水和熱発生、熱伝導、温度応力発生の因果を材料・構造・施工条件に結びつけて説明すること
  • 抑制対策は「目的(何を防ぐか)」と「留意点(施工管理・構造条件・副作用防止)」を明確に書くこと

コンクリート工学のコンサルタントとしての着目ポイントは、

  • 構造形状・部材厚と断熱性、拘束条件の整理
  • 材料選定(低発熱型セメント、混和材)と養生条件の設定
  • 打設計画(打継ぎ位置・タイミング)や冷却・保温設備の配置
  • 温度応力解析によるひび割れ指数の評価
  • 施工後のモニタリングによる初期ひび割れ発生の早期検知と補修計画

この問題は、単なる現象解説ではなく、設計・施工計画・維持管理の3段階をつなぐ思考を評価します。
よって、材料工学的知識と現場マネジメントの両面を活かし、温度ひび割れを予防・管理する総合的提案ができれば高得点につながります。

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答案 選択科目 鋼構造及びコンクリート  専門事項 コンクリート構造物の維持管理  作成日 2025/5/26

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1.メカニズム

 セメントと水の水和反応によって、内部温度が最大で70~80℃近くに上昇する。この水和発熱に伴う温度の上昇、下降によって生じる周囲との内外温度差や構造的な拘束が存在する場合、内部に引張応力が発生する。特にマスコンクリート等の大型構造物において、打ち継ぎ目等の温度応力が集中する部位に発生しやすいひび割れである。

2.対策

1)パイプクーリング

目的:コンクリート打設時に内部を冷却することで水和熱の抑制を図る。

留意点:パイプクーリングの通水温度が低すぎると温度差の発生によりひびわれを助長することがあるので、対策として温度解析と通水温度の管理により、コンクリートと通水温度差は20℃以下とする。

2)混合セメント

目的:セメントによる水和発熱の上昇を抑制することで、特にマスコンクリートにおける温度上昇による膨張、温度低下による収縮を抑制する。

留意点:高炉セメントやフライアッシュセメントは中性加速度が早いため、かぶり厚や表面被覆による耐久性対策が必要である。また、水和速度が遅く低温の影響を受やすいため、木製型枠等の断熱性の高い型枠の使用、シート養生による保護が必要である。

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講評

本答案は、出題趣旨である「温度ひび割れの発生メカニズムと抑制対策(目的・留意点付き)」にしっかりと答えており、得点力は高いです。発生原因の説明は水和熱による温度差と拘束応力に焦点を当てており、マスコンクリートなど実務的な事例も含めて理解度が高く示されています。対策も目的と留意点が明確に整理されており、合格水準を十分に満たしています。


評価できるところ

  • メカニズムの理解度
    水和発熱と構造的拘束の相互作用による引張応力発生を明確に説明しており、現象の本質を押さえています。特に「打ち継ぎ目など温度応力集中部位」の指摘は実務的で的確です。
  • 対策の選定と具体性
    パイプクーリング、混合セメントという異なるアプローチを選び、施工・材料両面から抑制策を提案しています。通水温度差の数値管理や耐久性への配慮など、具体的な管理項目を提示している点は評価できます。
  • 留意点の実務性
    材料の中性化、低温影響への配慮など、実務で見落とされやすい副作用にも触れており、マネジメント視点を持った答案です。

改善点

  • メカニズムの説明で、内部と表面の温度勾配や、ひび割れ発生のタイミング(最高温度後の冷却過程)を明記すると、さらに説得力が増します。
  • 対策の効果を数値的に示す(例:ひび割れ指数の目標値)と、設計・管理の指標として評価が高まります。

本質的可能性

本答案は、原因の本質理解、具体的対策、施工・材料マネジメントをバランスよく盛り込んでおり、現場対応力と計画立案力を兼ね備えています。特に副作用まで含めた対策の提示は、将来的に構造物の長期耐久性を見据えたコンクリート施工計画を総合的にマネジメントできるコンサルタントとしての素養を強く感じさせます。

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Ⅱ-2-1
問題文

業務が進む過程で、施工計画の前提となる条件に変更が生じたため、計画を見直し、施工時における構造物の安全性を再検討する場合がある。あなたが制約条件の多い都市部の鋼構造及びコンクリート構造物の施工計画を担当する技術者として業務を行うに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象となる構造物、現地の状況及び条件の変更点を設定し、施工時における構造物の安全性を確保するために調査、検討すべき事項を複数挙げ、その内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)業務を効率化、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

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問題文の解説

この問題は、都市部の鋼構造・コンクリート構造物の施工計画において、計画前提条件の変更という不確定要素に直面した際に、技術者としてどのように安全性を確保しつつ計画を見直すかを体系的に説明することを求めています。
単に施工計画を列挙するだけではなく、変更の影響分析安全性確保のための調査・検討再計画の実行手順関係者調整の一連の流れを構造的に示す必要があります。


出題者の要求

  1. 条件変更の設定
    • 対象構造物(橋梁、高架、建築物等)と現場条件(敷地制約、近接構造物、交通・騒音規制など)を具体的に設定すること。
    • 条件変更(地盤条件の変化、施工順序の変更、資材搬入経路の制限など)が安全性にどう影響するかを説明すること。
  2. 安全性確保のための調査・検討事項
    • 構造安定性(支持力・沈下・変形)
    • 施工時荷重や仮設構造物の耐力確認
    • 周辺影響(近接構造物やライフラインの保全)
    • 気象・環境条件の影響
    • 施工方法や工程の変更に伴うリスク
  3. 業務の進め方と工夫
    • 調査・解析・設計変更・施工計画修正・安全管理計画の流れを明確化
    • 留意点(例えば都市部での夜間作業規制、振動・騒音対策、搬入制約への対応など)を具体的に示す
  4. 関係者との調整方策
    • 発注者、設計者、施工者、行政、近隣住民との情報共有ルート
    • 計画変更理由と影響範囲の可視化(図面・シミュレーション)
    • 代替案の比較と合意形成プロセス

コンクリート工学コンサルタントとしての着目ポイント

  • 都市部特有の制約下での施工安全性評価(仮設支持・部材搬入・施工順序の最適化)
  • コンクリート構造物では温度応力・早期型枠脱型・高密度配筋部の施工性確保
  • 施工条件変更による打設計画・養生計画の再検討
  • 3DモデルやBIM/CIMを活用した再計画・干渉チェック
  • 工程短縮と安全性確保を両立するためのリスクマネジメント手法

この問題は、単なる施工計画知識だけでなく、変更対応力・安全確保の技術的判断力・関係者マネジメント力を総合的に問うものです。

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答案 専門科目 土質及び基礎  専門事項 土質調査並びに地盤  作成日 2025.6.8

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1.      構造物、現地条件、変更点、検討及び調査項目

1)対象構造物、現地条件の変更点

PCaC-BOX施工時に通信管路の出現による構造体の分割施工、加えて地下水の上昇、夜間施工制限とする。

2)調査・検討すべき事項

①打継目の構造性能と耐久性の確保

構造継手の応力状態を構造解析により調査し、JCI継手指針に基づき止水性能・耐久性の両立を図る。

②地下水位情報に伴う水密性・耐久性の再検討

地盤の透水係数・水頭圧を調査し、浮力に対し底板の断面増厚・一体型フーチング構造と可とう性止水材の設計で対応する。

③夜間施工化と温度ひび割れリスクの管理

夜間施工時の初期温度を測定し、温度応力解析に基づき、低発熱セメント、膨張材の組合せと断熱マット養生により初期ひび割れを抑制する。

2.      業務手順、留意点、工夫点

1)         構造位置と継手位置の計画

特異点では応力値が極端に大きくなる可能性があるため、メッシュ密度を高くし、形状変更も検討する。

2)外水圧、浮力、止水性能への構造的対応

外水圧、浮力対応では浮力を定量評価し、基礎一体構造、段差継手に加え、敷網工法及びロープネット工法により、荷重の分散化を図る。また、ベンナイト系及び水膨張系の止水材により水密性、耐久性の確保を図る

3)材料選定と温度応力の抑制

初期ひび割れや乾燥収縮に対して、拘束条件を解析した上で、高炉セメント、フライアッシュによる水和温度応力の抑制に加え、ひび割れ制御鉄筋の採用である。

4)養生管理と強度発現の確保

夜間施工により、打設温度の低下、養生環境の悪化に対して、マチュリティ法を用いて打設後の強度発現を予測することで、脱型や荷重支持の適正時期を判断する。

3.関係者との調整方策

1)資材調達担当者

プレミックス型の低温環境対応コンクリートの使用に向け、要求性能(28日強度、早期強度、流動性)を具体的に示したうえで、性能照査型発注方式(PBD)に基づく技術提案型見積依頼を行う。これにより、施工環境に適した材料選定と納期逆算型の調達スケジュールを同時に成立させ、工期圧縮と余剰在庫削減による資材コストの最適化を図る。

2)設計者

JCI継手指針の合理性(構造解析との整合・施工精度の確保)を提示し、低応力部への継手再配置を提案。鉄筋継手長の縮小と止水処理の簡素化によって設計数量を削減し、コスト低減と施工合理化を実現する。

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講評

本答案は、出題趣旨である「条件変更下での施工計画見直しと安全性確保」を的確に捉えており、構造安全・耐久性・施工性をバランス良く検討しています。変更点(通信管路の出現、地下水位上昇、夜間施工制限)を明確に設定し、それに対する技術的な調査・検討事項、手順、関係者調整まで一貫して示しており、得点力は高いです。施工現場の実務知識とコンクリート工学の専門性が融合しており、合格レベルに十分到達しています。


評価できるところ

  • 条件変更の設定が具体的
    想定条件が現実的かつ制約の多い都市部施工の特徴を反映しており、以降の検討が自然に展開できています。
  • 技術的対応の深さ
    継手性能のJCI指針適用、地下水位対策の透水係数評価、水密・浮力対策など、根拠に基づく技術選定が的確です。
  • 温度ひび割れ管理
    温度応力解析や低発熱セメントの採用、マチュリティ法による強度管理など、施工環境に即した対策が盛り込まれています。
  • マネジメント視点
    資材調達を性能照査型発注方式(PBD)で組み込み、納期逆算や在庫最適化まで触れており、コスト・工程管理の意識が高いです。

改善点

  • 工程短縮と安全性の関係を明示
    夜間施工や分割施工による工程短縮と、品質・安全管理をどう両立させるかのリスク評価を加えると説得力が増します。
  • BIM/CIM等のデジタル活用
    継手位置変更や施工計画修正にBIM/CIMで干渉チェックを行うなど、計画検証手法を明記すると最新性が出ます。
  • 定量的指標の追加
    外水圧・浮力の安全率や温度差許容値など、数値目標を挙げると管理基準がより明確になります。

本質的可能性

本答案は、施工条件の変化に柔軟かつ科学的に対応し、構造性能・施工性・コスト最適化を同時に成立させる力を示しています。特に、制約条件下でも多面的にリスクを把握し、関係者と合理的な合意形成を進められる能力は、都市部大型プロジェクトや再開発工事で発揮できる大きな強みです。改善点を補えば、高得点での合格はもちろん、現場マネジメントと技術提案の両面で信頼されるコンサルタントとして活躍できるポテンシャルがあります。

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Ⅱ-2-2
問題文

構造物の改築、改修、補強の施工時点において、既設部の施工の不具合や設計との不整合が現場で確認される場合がある。このような場合、改築、改修、補強によって予定どおり構造物の性能が確保できるかどうかの判断と、確保されないと判断される場合には新たな対策の検討が必要となる。あなたが鋼構造物及びコンクリート構造物を担当する技術者として業務を行うに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする既設構造物と改築・改修・補強の目的、また不具合・不整合の内容を設定し、安全性若しくは耐久性を判断するために調査すべき事柄と必要な性能を確保するために検討すべき事柄を示し、その技術的内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)上記業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

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問題文の解説

この問題は、既設構造物の改築・改修・補強工事において、現場で発覚した施工不具合や設計との不整合に対し、性能確保の可否を判断し、必要に応じて対策を検討する能力を問うものです。
出題者は、現場条件の変化や予期せぬ事象に対して、技術的判断とマネジメントの両面から対応できる技術者像を想定しています。


出題者の要求の整理

  1. 対象構造物の特定と目的の明確化
    • 鋼構造物またはコンクリート構造物のうち、改築・改修・補強の目的(耐震性向上、耐久性延伸、機能改善等)を設定する。
    • 現場で確認された不具合や設計不整合の内容(例:配筋位置ずれ、断面欠損、材料劣化、寸法相違など)を明確化する。
  2. 性能確保のための調査・検討項目
    • 不具合部位の構造性能・耐久性への影響を評価するための調査(強度試験、非破壊検査、寸法計測、ひび割れ調査等)。
    • 必要な性能(耐力、変形性能、耐久性など)を満たすための技術的検討(補強方法、材料変更、施工方法改良等)。
  3. 業務手順の体系化
    • 調査評価対策立案関係者協議施工実施確認・記録、という流れを明確に列挙。
    • 各段階での留意点(例:調査の信頼性確保、設計変更承認の迅速化、施工性確保)。
  4. 効率化・効果的推進のための調整方策
    • 設計者、施工者、発注者、品質管理者の情報共有ルートと責任分担の明確化。
    • 技術的判断の裏付けとなるエビデンス(試験データ、解析結果)の迅速提示。

コンクリート工学のコンサルタントとしての着目ポイント

  • 不具合の原因特定と影響度評価
    (例:施工誤差が構造性能に及ぼす影響をFEM解析や断面検証で定量化)
  • 補強・改修技術の適用条件
    (炭素繊維シート補強、鋼板巻立て、断面修復材などの選定基準と施工条件)
  • 耐久性確保策
    (中性化・塩害・ASRの進行抑制策や表面保護工の必要性評価)
  • 施工中の品質確保と安全管理
    (仮設構造の安定性、作業時の安全確保、施工精度の管理方法)

この問題は、単なる補修設計の知識だけでなく、現場発見事項を起点に即時に調査・判断・対策まで落とし込める応用力と、複数関係者間での調整能力を評価する意図があります。したがって、答案では技術的裏付け+マネジメント手順をセットで示すことが高得点のポイントとなります。

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答案 専門科目 鋼構造及びコンクリート  専門事項 コンクリート構造、設計  作成日 2025.4.2

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1.調査、検討すべき事柄

RC構造の橋梁を対象とする。橋脚のせん断破壊抑制を目的とし、RC巻立てによる耐震補強を行う計画であったが、予定通りの性能確保が困難となる懸念事項として、ひび割れから鉄筋のさび汁が確認された。

(1)ひび割れ状況  

コンクリート表面を高性能カメラで撮影、AIを利用した画像解析を行う。また、超音波試験や電磁波レーダーを併用し、診断精度を向上させる。ひび割れ幅が0.2mmを超える場合、ひび割れ注入・充填を選定する。

(2)中性化による腐食

電磁波レーダー法により鉄筋位置を把握後にコアを採取する。割裂面にフェノールフタレイン溶液を噴霧し、中性化深さが鉄筋かぶり厚を上回るかを確認し、再アルカリ化や防錆モルタル塗布等の工法を選定する。

(3)鋼材の腐食状況

自然電位法測定、電気抵抗測定法によりアノード反応に伴うコンクリート中の鉄筋の電位を測定する。自然電位が-350mVよりも小さい場合、腐食進行の可能性が高いため、外付け鋼板補強への変更を検討する。

2.業務手順

(1)再アルカリ化処理の実施

中性化対策として含水状態・電気抵抗・鉄筋配置の事前確認に基づき通電設計を行い、予備湿潤やセクション分割により通電ムラを抑制。通電中は自然電位法で鉄筋の反応進行と副反応兆候を監視し、安全範囲内の密度制御を行う。処理後はコア抜きによるpH確認や電位再測定を実施し、処理効果を定量的に確認する。

(2)ひび割れ部への樹脂充填 

ひび割れに樹脂を充填し内部への通気、通水を遮断する。ひび割れ幅が小さいほど高圧注入が必要となり、圧力によっては躯体破壊の要因にもなるため、自動式低圧エポキシ樹脂注入方式を採用。温度変化により幅の変動が大きい場合、ポリウレタン樹脂を採用する。

(3)拘束ひび割れの抑制対策

打設後、コンクリートに収縮が生じた際、既設構造物との拘束により生じる拘束ひび割れを想定し、FEMにて温度応力解析で引張応力を求め、JCI法に基づきひび割れ指数(f/σ)を算出する。指数が1.0未満の場合、膨張材や低熱セメントの使用で応力緩和を図る。

3.関係者との調整方策

既設橋脚の劣化調査では、手作業によるひび割れ図作成により、手間と精度のバラつきに課題があった。私はプロジェクトマネージャーとして、AI画像解析に技術導入にあたって、当社で蓄積した他案件の知見をもとに、解析ツールの選定と使用手順を整備した。導入のハードルを下げるため、AI技術の適用を「新技術提案加点制度」の評価対象とし施工側の合意形成を図った。結果、従来比75%の短縮となり、補強工事の円滑な実施にもつながった。

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講評

本答案は、出題趣旨である「既設構造物の不具合や不整合を踏まえた性能評価と対策立案、手順整理、関係者調整」を的確に捉えており、技術的根拠と実務性が高く、得点力は十分にあります。RC橋脚の耐震補強を対象に、不具合(鉄筋腐食とひび割れ)を具体的に設定し、調査評価対策の流れが明確に構成されており、現場適用可能な内容になっています。


評価できるところ

  • 課題設定の具体性
    RC巻立て補強計画における「鉄筋腐食懸念」という現実的で説得力のある事象を設定し、それに基づく調査・検討項目が明確です。
  • 技術的裏付けの強さ
    • 調査では非破壊試験(超音波、電磁波レーダー、自然電位法等)の併用や基準値の明示があり、評価の客観性が高いです。
    • 対策では再アルカリ化、樹脂注入、拘束ひび割れ対策など、適用条件と留意点まで踏み込んでいます。
  • マネジメント要素の盛込み
    AI画像解析の導入による省力化と精度向上を「新技術提案加点制度」と絡めて合意形成した点は、現場の合意獲得プロセスとして高く評価できます。

改善点

  • 調査結果から性能評価に至るプロセスで、構造安全性(耐力)や耐久性(残存寿命)の定量評価をもう一段具体化すると、判断の裏付けがより強化されます。
  • FEM解析や温度応力評価の結果について、管理基準値や判定根拠の数値を追加すれば、答案全体の説得力がさらに向上します。
  • 関係者調整の部分に、発注者・設計者・施工者それぞれの役割や意思決定のフローを簡潔に加えると、マネジメント力の印象が強まります。

本質的可能性

この答案からは、技術的検証を実務に落とし込み、最新技術も取り入れて施工効率化と品質確保を同時に実現する力が見えます。特に、劣化診断技術と耐久性向上策の適用条件を整理し、現場マネジメントに結びつけられる力は、社会資本メンテナンス分野で非常に強みになります。改善点を加えれば、高得点での合格はもちろん、劣化構造物の診断・補修計画の分野で第一線を担うコンサルタントとしての活躍が期待できます。

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Ⅲ-2
問題文

日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言している。そのため、鋼構造及びコンクリートの分野においても、カーボンニュートラルの実現に向けて、CO2削減への取組を推進する必要がある。このような状況を踏まえ、以下の問に答えよ。

(1)              鋼構造及びコンクリート構造物の設計、製作・製造、施工、維持管理、改修、解体において、CO2削減を推進するうえでの課題を、技術者としての多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、この課題の内容を示せ。(※)

()解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門用語を交えて示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

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問題文の解説

この問題は、カーボンニュートラルの実現に向けて、コンクリート・鋼構造分野でのCO₂削減に関する総合的な技術的・マネジメント的能力を評価するものです。設計から解体までのライフサイクル全体を俯瞰し、複数の課題を抽出し、その中から重要課題を掘り下げて解決策を提示し、さらにその副作用や将来リスクまで視野に入れて考察できることが求められています。


出題者の要求の整理

  1. 課題抽出(問1
    • 観点を必ず明示(例:材料製造時のCO₂排出、施工時の省エネ、維持管理時の長寿命化、解体・再資源化など)。
    • 鋼構造・コンクリート構造を含めたライフサイクル全般から3つ以上の課題を設定し、課題の具体的内容を説明すること。
  2. 最重要課題の解決策(問2
    • 抽出課題から1つを選び、専門技術用語(例:低炭素セメント、BIMによる資材最適化、LCA評価、再生骨材、高炉スラグ微粉末)を交えて具体的かつ複数提示。
    • 技術的裏付けや適用条件を明確化すること。
  3. 将来懸念と対策(問3
    • 解決策の実施によって新たに生じるリスク(例:新材料の耐久性未知数、再資源化時の品質変動、サプライチェーン制約)を想定。
    • それらの影響を低減するための技術的対応策(モニタリング、規格整備、性能確認試験、BIM連携による情報管理など)を提示。

コンクリート工学のコンサルタントとしての着目ポイント

  • 材料段階でのCO₂削減技術
    • 低炭素型セメント(高炉スラグ、フライアッシュ)、再生骨材、CCUSCarbon Capture, Utilization and Storage)技術の活用可能性。
  • 施工段階の省エネルギー化
    • プレキャスト化による現場作業時間短縮、施工プロセスの最適化、運搬距離削減による排出削減。
  • 維持管理・長寿命化
    • 耐久設計(中性化・塩害・ASR対策)による補修頻度低減、BIMIoTによる予防保全。
  • 解体・再資源化
    • 解体時の分別解体技術、再生材品質管理、LCA(ライフサイクルアセスメント)による環境負荷定量化。

この問題は、単に省エネや低炭素材料の知識を問うのではなく、ライフサイクル全体でのCO₂削減シナリオを構築できるか、さらにその実施による副作用や長期的なリスクを想定しマネジメントできるかが得点の鍵になります。したがって、答案では「技術的裏付け+運用面での工夫」をセットで提示することが重要です。

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答案 選択科目 鋼構造及びコンクリート  専門事項 コンクリート構造物の維持管理  作成日 2025/6/16

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.多面的な観点と課題

1)低炭素コンクリートの普及に向けた適用技術の確立

セメントは日本のCO₂総排出量の4.5%を占めており、鉄鋼に次ぐ状況にある。高炉スラグ・フライアッシュ等の低炭素型材料は、

構造用途への適用において性能データや設計基準が整備されておらず、技術的な信頼性と品質管理体制の未確立が普及を阻んでいる。

したがって、材料設計の観点から、低炭素コンクリートの普及に向けた適用技術の確立が必要である。

2)低炭素化機械の供給体制の構築

建設部門では建設時や解体時に多くのCO₂を排出しており、そのことが脱炭素化を阻む要因となっている。

電動化・水素化などの低炭素機械の技術は確立されつつあるが、現場導入にはコスト高、出力性能不足、エネルギー供給体制の未整備等が障壁となっており、

普及の加速に向けた技術的・制度的支援が必要である。したがって、機械技術の観点から、低炭素化機械の供給体制の構築が必要である。

3)現場施工の省エネ最適化

プレキャスト化や工程短縮による重機稼働時間の削減に加え、ICT施工による自動化、高度化を推進することでエネルギー消費の最小化が求められる。

更なる普及のためには、部材規格の標準化に加え、継手構造の応力解析、止水性能、耐久性の向上が不可欠である。

したがって、施工プロセスの観点から現場施工の省エネ最適化が必要である。

2.重要な課題と解決策

CNの実現には材料設計の比重が最も大きい。したがって、1)低炭素コンクリートの普及に向けた適用技術の確立を最も重要な課題に選定し解決策を述べる。

1)       代替バインダの適用技術

低炭素型バインダとしての高炉スラグやフライアッシュの長期性能を明確に位置付け、構造用途に適用するための設計手法と基準の整備を進める。

具体的には、高炉スラグ・FAを用いたバインダ混合比の最適化と、強度発現曲線に応じた設計基準化を推進する。

混合比率の最適設計と初期強度不足への対応として、早強材の併用や練混時間の管理を導入する。

2)CO₂吸収型コンクリートの施工適用技術

CO₂を吸収する特性を持つコンクリートを安定的に適用できるよう、吸収効率と構造性能を両立させる配合および施工条件の確立を図る。

具体的には、吸収性混和材(γC2S:ダイカルシウムシリケートγ相)を用いたコンクリートを養生中に吸収反応させる。温湿度条件の制御と吸収量の定量管理を行うことで、構造性能と環境性能の両立を図る。

3)再生材による人工石灰石生成コンクリート

省エネルギー化と品質確保を両立できるプレキャスト部材の製造方法を開発し、CN時代に対応した効率的な構造物供給体制を構築する。

具体的には、廃棄物由来のカルシウム成分とCO₂を化学反応させてCaCO₃を生成し、セメント原料に再利用する。原材料の選別と反応管理によって安定した品質を確保する。

3.懸念事項とその対策

懸念①:高炉スラグ使用による初期強度の低下

影響:打設後の脱型や後続作業に遅れが出て、施工工程が長期化する可能性がある。

対策:試験施工により材齢ごとの強度発現曲線を把握し、脱型時期を施工業者が工程に反映。必要に応じて早強材を併用する。

懸念②:CO₂吸収型コンクリートの中性化リスク

影響:過度なCO₂吸収によりアルカリ性が低下し、鉄筋腐食を招く恐れがある。

対策:吸収量の上限設定と、かぶり厚補正、中性化深さの加速試験による適用限界の明確化を行う。施工者によるモニタリング記録の保存を行う。

懸念③:再生材品質のばらつきによる構造性能の不安定化

影響:構造物としての耐力設計値に達しない可能性が生じ、設計安全率を確保できなくなる。

対策:成分分析による使用基準の明確化や、発注者による受入基準の制定。再生材の用途別選別管理に加え、材料検査員による出荷前検査の管理を徹底する。

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講評

本答案は、出題趣旨である「CO₂削減に向けた課題抽出・解決策・将来懸念と対策」を的確にカバーしており、構造的に非常に整理された内容になっています。材料設計・機械技術・施工プロセスという多面的な観点から課題を抽出し、問2では最重要課題として低炭素コンクリートを選定、専門的かつ具体的な解決策を複数提示しており、得点力は高いです。将来リスクについても適切に想定し、技術的対策まで明記できています。


評価できるところ

  • 多面的な課題設定の明確さ
    材料、機械、施工の3観点を明示し、各課題の背景と阻害要因を論理的に説明しており、採点者に理解されやすい構成です。
  • 最重要課題の選定理由と納得感
    材料設計の比重が大きいことを理由として低炭素コンクリートを選び、理由づけと技術解決策が一貫しています。
  • 解決策の具体性と専門性
    高炉スラグ・FA混合比最適化、CO₂吸収型コンクリート、再生材利用など、実務レベルの技術用語と具体手法を提示。配合条件や管理方法にも触れ、単なるアイデアで終わらせていません。
  • 懸念事項への配慮
    材料特性の副作用(初期強度低下、中性化、品質ばらつき)を想定し、試験やモニタリングなどの管理策を提示している点は評価が高いです。

改善点

  • 1で鋼構造分野の視点(例:製鋼時のCO₂排出削減、耐用年数延伸によるライフサイクル削減)を簡潔に補足すると、より出題範囲の「鋼構造及びコンクリート構造物」に完全対応できます。
  • 解決策にLCA(ライフサイクルアセスメント)やBIM連携による環境負荷管理など、マネジメント的アプローチを加えると、技術+運用の両面でさらに高得点が狙えます。

本質的可能性

本答案は、課題分析の精度と技術解決力が高く、加えて副作用リスクまで含めた予防的思考が備わっています。この方向性を維持しつつ、材料技術と施工管理を横断的に結びつけるLCAや情報管理技術を盛り込めば、カーボンニュートラル時代の構造物計画を総合的にマネジメントできるコンサルタントとして、さらに強い発信力を持つ答案になります。

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建設部門 都市及び地方計画

Ⅱ-1-4

問題文

都市緑地法に基づく市民緑地には、市民緑地契約制度に基づくものと、市民緑地設置管理計画の認定制度(以下,「市民緑地認定制度」という。)に基づくものがある。平成29年に市民緑地認定制度が創設された背景を述べるとともに、両制度の共通点及び相違点について説明せよ。

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問題文の解説

この問題は、都市緑地法の中で位置づけられる市民緑地の制度設計と制度間比較を問うものであり、制度の背景理解と法制度の運用上の特徴を正確に整理することが求められます。特に平成29年の市民緑地認定制度創設の背景や、既存の市民緑地契約制度との共通点・相違点を、法律の趣旨と都市緑地の政策目的の両面から説明できるかがポイントです。


出題者の意図

  • 制度創設の背景
    平成29年改正で市民緑地認定制度が設けられたのは、都市部の緑の保全・創出の必要性が高まる一方で、従来制度だけでは対象や管理の柔軟性に限界があったためです。地権者や民間事業者の参画を促し、都市緑化を持続的に推進する新たな仕組みが必要とされました。
  • 比較分析能力
    市民緑地契約制度と市民緑地認定制度について、制度の目的・法的位置づけ・対象・管理運営主体・契約/認定の手続き・税制優遇などの共通点と相違点を体系的に整理できるかを見ています。

得点につながる整理の視点

  1. 背景説明の明確化
    • 都市緑地の減少やヒートアイランド現象、災害時避難空間の確保など都市環境課題
    • 従来制度では契約期間や対象地種別の制約が強く、幅広い活用が難しかった課題
  2. 共通点
    • 都市緑地法に基づき、民有地の緑地を保全・活用する目的を持つ
    • 地域住民の利用や環境保全、景観形成、防災性向上に寄与
  3. 相違点
    • 契約制度は市町村と地権者が契約を結び、期間や内容を直接規定する
    • 認定制度は地権者が自ら設置管理計画を策定し、市町村が認定する形で柔軟な管理が可能
    • 税制優遇や補助の内容・条件が異なる
  4. 制度運用上の着目ポイント(コンサルタント視点)
    • 都市緑地計画との整合性
    • 長期的な維持管理コストと担い手確保
    • 税制優遇の適用条件と更新手続きの負担
    • 市民利用と環境機能(防災・景観・生態系)の両立

この問題は、単なる法制度の暗記ではなく、なぜ新制度が必要だったかを都市環境の課題と結びつけて説明できるか、そして制度間比較を構造的に整理できるかが高得点の鍵となります。

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模範解答  専門科目 都市および地方計画  専門事項 緑地計画  作成日 2024.12.30

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1.平成29年度に市民緑地制度が創設された背景

(1)都市化による緑地面積減少への旧制度の対応限界

 緑地面積の減少対策として統一的な管理体制で持続性を高め緑地減少を抑える必要性があった。

(2)市民の協力と参加必要性

 維持管理費用や労働力が特定の参加者に依存し限られていたため、多くの市民の協力が必要とされ地域全体で取り組む仕組みが求められた。

2.両制度の共通点

(1)市民が主体的に地元ボランティアの植樹や除草活動などの維持管理活動に関わるしくみがある。

(2)自治体が緑地維持のための補助金制度や技術指導の実施など市民や団体を支援し連携するしくみがある。

(3)ヒートアイランド現象緩和や都市の景観向上など持続可能な都市環境改善へ寄与している。

3.相違点

(1)市民緑地契約制度

・個別で柔軟な管理ができるが、参加者の負担が集中するため、主に小規模な緑地が対象となり広域性がなく、短期的管理が中心となる。

(2)市民緑地認定制度

・自治体が統一的な管理基準を設けることで、管理責任の公平性が重視参加者の負担が軽減され、中規模から大規模な緑地が対象となり広域的で持続可能な管理確保されている。

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講評

本答案は、市民緑地認定制度創設の背景、両制度の共通点・相違点を簡潔にまとめており、出題趣旨におおむね的確に応えています。特に背景説明では、都市化による緑地減少や維持管理負担の集中という課題を明確に挙げ、制度創設の理由を説明できています。制度比較も共通点と相違点が明確に区分され、採点者にとって読みやすい構成です。得点力は高めで、現状でも合格水準に達する内容といえます。


評価できるところ

  • 背景説明の明確さ
    都市化による緑地減少と既存制度の限界、市民参加の必要性という2つの軸で説明しており、制度創設の必然性が伝わります。
  • 比較の整理方法
    共通点・相違点を箇条書きで簡潔にまとめ、視覚的にもわかりやすい。
  • 制度の目的との紐づけ
    ヒートアイランド対策や景観向上など、都市計画的効果に触れており、評価ポイントを押さえています。

改善点

  • 背景部分に、平成29年当時の社会的要因(例:都市緑地法改正の趣旨、民間地活用促進、地域防災機能向上など)を補足すると、より政策的背景の理解が深まります。
  • 相違点の説明に、**法的手続きや適用条件(契約 vs 認定、期間、対象地種別、税制優遇の有無)**をもう一段具体的に書くと、制度理解の深さが示せます。
  • 共通点の部分で、都市緑地法との直接的な法的根拠にも触れると、技術士答案としての完成度がさらに高まります。

本質的可能性

この受講生様は、制度の背景と比較を構造的に整理する力があり、都市計画制度の要点を短時間で伝えるスキルに長けています。今後は、制度や政策の背景にある法改正の経緯や社会的ニーズまで踏み込み、加えて数値的・制度的条件を具体的に書き込むことで、コンサルタントとしても実務的な制度提案力を発揮できると考えられます。

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Ⅱ-2-2
問題文

人口30万人の地方都市において、地震災害等の自然災害に対する防災構造を強化するために、市街地のない幹線道路に隣接した約20haの民間施設の跡地を取得して、広域避難地の機能と地域防災拠点の機能を有する都市公園(以下、「当該防災公園」という)を新たに整備することとなった。自然災害の発生時に当該防災公園が、広域避難地の機能と地域防災拠点の機能を適切に発揮できるようにする上で必要となる、事前の調査や当該防災公園の整備計画の策定に関する業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)事前に調査しておくべき事項とその内容について説明せよ。

(2)前問(1)の事前の調査の結果を踏まえ、当該防災公園の整備計画を策定する業務手順を列挙し、それぞれの項目ごとに留意するべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)事前の調査から剛体防災公園の整備計画の策定までを効率的、効果的に遂行するために調整が必要となる関係者を列記し、それぞれの関係者との連携・調整について述べよ。

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問題文の解説

この問題は、自然災害対応機能を備えた都市公園(広域避難地と地域防災拠点)を新設する際の計画業務全体を対象としており、技術者の総合的判断力と計画立案能力を評価するものです。設問は事前調査、計画策定手順、関係者調整の三部構成であり、相互のつながりと一貫性が重要です。

事前調査では、地盤や地形、災害履歴、浸水想定、周辺インフラの供給能力、アクセス条件、法的制約などを多角的に把握する必要があります。広域避難地機能としての安全性(耐震・耐火・浸水回避)と、地域防災拠点としての機能(物資供給、情報拠点、医療活動)を分けて整理し、必要な性能条件を定義します。

計画策定では、避難者動線と救援車両動線の分離、ヘリポートや緊急車両スペースの確保、貯水槽や発電施設の配置など、運用性を重視します。平常時利用との両立を図るため、芝生広場や多目的広場を避難スペースに転用する設計や、防災倉庫の景観配慮が求められます。

コンサルタント視点としては、災害種別ごとの設計条件設定、構造・設備の冗長性確保、自治体防災計画との整合、維持管理体制と運営コスト試算が重要です。さらに、関係者調整を計画初期から行い、施設設計や配置計画に反映させるプロセスマネジメント力が問われます。

本問題では、単なる施設整備案ではなく、災害時に確実に機能する根拠をもった計画を提示できることが高得点の鍵となります。

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模範解答  専門科目 都市および地方計画  専門事項 緑地計画  作成日 2025.2.7

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1.事前に調査すべき事項とその内容

(1)過去の地域特有の災害リスクの評価

①過去の地震・洪水・土砂災害・強風などの発生履歴を分析し、地域特有の災害リスクを把握する。

②ハザードマップ、シュミレーションデータを活用し当該地域で予想される被害範囲や強度を特定する。

2)防災公園の周辺の都市インフラ調査

①交通インフラとして幹線道路の耐震性・渋滞リスク・非常時の緊急輸送ルートを調査する。

②ライフラインとして上下水道、電気、通信設備の対災害性を評価し、災害時の機能維持策を検討する。

(3)防災公園の拠点配置分析

①避難者が効率的に収容されるためのシュミレーションを実施し滞留スペースや移動経路を設計する。

②物量拠点(支援物資の集積・配布施設)、医療・防災倉庫・炊出し施設などの具体的配置計画をする。

2.整備計画を策定する業務手順とその留意点、工夫点

(1)災害リスクを軽減する地形改変計画の立案

①洪水・浸水リスクを軽減するための排水計画(貯水池・排水ポンプの設置)をする。

②地震時の液状化対策として地盤改良(敷固め・排水強化)を検討する。

(2) 幹線道路、避難経路の整備計画の策定

①過去の災害時の避難データを分析し、避難経路のボトルネックを特定する。

②幹線道路との接続を考慮し避難者の集中を分散させる動線計画の策定をする。

③避難者が夜間・悪天候でも適切に誘導されるよう照明・案内標識を整備する。

(3)防災設備計画の策定

①給水・発電・通信設備の耐災害性を強化し、独立したライフラインを確保する。

②避難者の長期滞在を想定した快適性を考慮したシェルを設計する。

3.関係者との調整方策

(1)地方自治体(防災部門)との調整

①防災公園の運用ルールを自治体と協議し緊急時に確実に機能する体制を構築する。

②災害時の広域避難計画と整合を図り、行政が想定する避難誘導と公園の整備計画をすり合わせる。

(2)地域住民および自治会との合意形成

①防災公園の役割や活用方法を住民に説明し、日常利用と災害時の機能を理解してもらう。

②避難運営の協力体制を構築し、自治会と共同で防災訓練を実施する。

(3)専門業者(設計。施工業者)

①施工段階での耐災害性の確保(耐震設計・液状化対策・排水設備の導入)する。

②工事の進捗と周辺環境への影響を管理し、地域への影響を最小限に抑える。

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講評

この答案は、防災公園の整備に必要な事前調査、計画策定手順、関係者調整を体系的に整理しており、出題趣旨にしっかり応えています。リスク評価から設備配置、動線計画、ライフライン強化、地域合意形成まで一貫しており、実務にも直結する説得力があります。総合的に得点力は高く、合格レベルに十分達していると判断いたします。

評価できるところ

  • 事前調査項目が具体的かつ網羅的で、ハザードマップ活用やシミュレーション分析など、根拠ある判断プロセスが明確に示されています。
  • 整備計画の記述が「排水計画・液状化対策」「動線計画・照明標識」「ライフライン独立性」など、機能確保の視点で実践的にまとめられています。
  • 関係者調整において、防災計画との整合性や住民理解促進、防災訓練実施など、運用段階まで見据えた提案ができています。
  • 技術的な具体性(例:貯水池、敷固め、案内標識の整備)が明確で、単なる理念ではなく実行可能性の高い内容になっています。

改善点

  • 設計・計画と維持管理のつながりをさらに深め、平常時利用との両立(都市公園としての景観・利用価値)に触れると、より説得力が高まります。
  • 関係者調整のパートで、役割分担や情報共有の方法(例:防災情報システム、共通図面・データベース活用)に触れると、マネジメント面の得点が上がります。
  • 設問(1)~(3)の間で用語や視点を統一することで、一貫性がさらに際立ち、全体の完成度が向上します。

総評(可能性)
受講生様は、防災公園整備においてリスク評価から施設計画、運用体制構築までを俯瞰的にまとめられる力をお持ちです。実務経験に基づく具体性と課題整理力が強みであり、今後は維持管理・平常利用・ICT活用などの付加価値提案を加えることで、さらに高得点を狙えるレベルに到達すると考えます。

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Ⅲ-2
問題文

 密集市街地は、区域内に老朽化した木造の建築物が密集し、十分な公共施設が整備されていことなどから、火事又は地震が発生した場合において延焼防止及び避難上確保されるべき機能が確保されていない。首都直下地震等の巨大地震の発生が想定される中、密集市街地の安全性の向上は喫緊の課題となっている。このような状況を考慮して、以下の問いに応えよ。

(1)大都市において、密集市街地の街区内部の改善促進に取り組むに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

(2)前門(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つあげ、その課題に対する複数の解決策を専門用語を交えて示せ。

(3)前門(2)で示したすべての解決策を実施しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について専門技術をふまえた考えをしめせ。

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問題文の解説

この問題は、密集市街地における防災性向上を都市計画・まちづくりの視点で検討する力を問うものです。出題者は、技術者として多面的に課題を整理し、優先度の高い課題に対して専門的解決策を提案し、さらにその実施後に想定される二次的リスクへの対応まで一貫して考察できるかを評価しています。

まず(1)では、多面的観点として、防災(延焼防止・避難性)、都市インフラ整備(道路・上下水道・ライフライン)、社会的側面(住民合意形成・事業実現性)などが考えられます。課題設定では「現状の危険性」だけでなく、「なぜ改善が進まないか」という構造的要因を明確にすることが重要です。

2)では、抽出した課題の中で最も重要なものを選び、複数の専門的解決策を示す必要があります。例えば「延焼防止」を選んだ場合、延焼遮断帯形成(不燃化特区制度活用)、道路拡幅や防火水槽整備、不燃建築物整備促進事業などの具体策を、技術用語や制度名を交えて提示します。単に施設整備にとどまらず、事業スキーム(市街地再開発事業、防災街区整備事業)や補助制度との連動を示すと得点力が上がります。

3)では、解決策実施後の新たなリスクを想定し、二次的課題への先回り対応を提案します。例えば、地価上昇や住民移転によるコミュニティ分断、景観変化による居住環境悪化、災害時の一時的避難場所不足などが挙げられます。それらに対して、事業段階的実施や代替住宅確保、景観誘導ガイドライン策定、暫定避難スペースの設置などの対策を提示します。

都市・地方計画のコンサルタントとしての着目点は、防災性能と生活環境の両立、インフラ更新と土地利用再編の一体化、合意形成と事業スキーム設計です。これらを盛り込み、調査計画合意形成事業化モニタリングという流れを意識した解答構成にすると、技術的説得力と実務性の双方で高評価が得られます。

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模範解答  専門科目 都市および地方計画  専門事項 緑地計画  作成日 2025.3.20

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1)密集市街地の街区内部の改善促進の課題

       老朽木造建築の耐震・耐火性の向上

建築技術の観点から、老朽化した木造建築は倒壊・延焼リスクが高く、災害時の人的被害を大きくする。建物の耐震補強、不燃材料の使用、難燃処理木材の活用により、建築物の耐震・耐火性能の向上を図る。

       防災緑地の整備と活用

緑地計画の観点から、避難空間や延焼遮断帯として機能する緑地は、密集市街地において重要な防災インフラである。防災公園や線状緑地を整備し、避難動線の確保や雨水浸透機能を持たせることで、災害時の避難支援と都市環境の改善を両立する。

       敷地の再編による防災性能の向上

土地利用の観点から、敷地の細分化は避難路の確保や防火建築の導入を妨げる。土地区画整理や防災街区整備事業により、敷地の統合・集約を進め、防火性の高い建築配置を可能とする。

2)課題1「老朽木造建築の耐震・耐火性向上」に対する解決策

       建築構造の耐震化

既存建築物に対して、制振ダンパーや鉄骨ブレース、炭素繊維シートなどの補強技術を導入することで、耐震性能の確保と安全性向上を図る。

       耐火性能の向上

不燃材料による外装、CLT(直交集成板)の活用、ファイヤーストップ構造の採用などにより、延焼防止と避難時間の確保を実現する。

       延焼遮断と避難空間の確保

建築物間に線状緑地を設け、不燃性植栽や透水性舗装を用いることで延焼遮断帯としての機能を持たせる。これにより、避難経路や一時避難スペースとしても活用できる。

3)すべての解決策を実施しても新たに生じうるリスクと対策

       新たに生じうるリスク

再開発により地価が上昇し、低所得層が居住困難になる。また、人口集中により医療や救援体制など都市サービスが逼迫する可能性がある。

       対策

屋上緑化や壁面緑化、透水性舗装を活用したグリーンインフラの整備により、都市環境の持続性を確保する。あわせて、防災拠点の分散配置により都市機能の過密を緩和し、災害時の対応力を高める。

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講評

この答案は、出題趣旨である「密集市街地の街区内部改善に向けた多面的な課題整理・優先課題への解決策提示・二次的リスク対応」にしっかり沿っており、全体として得点力は高いと判断できます。特に、防災性能向上のための建築的・土地利用的・緑地的視点をバランスよく盛り込んでいる点は評価できます。

評価できるところ

  • 課題抽出で、防災(耐震・耐火)、緑地活用、敷地再編という異なる観点を明示しており、多面的視点の要件を満たしています。
  • 解決策では、制振ダンパー、炭素繊維シート、CLT、不燃植栽など具体的技術用語が多く、専門性が明確に示されています。
  • 二次的リスクに関して、地価上昇や都市サービス逼迫という社会的・運営面の課題に触れ、その対策としてグリーンインフラや拠点分散を提案しており、計画の持続可能性を意識した記述になっています。

改善点

  • 2)の解決策で、事業スキーム(例:防災街区整備事業、不燃化特区制度)や資金調達・合意形成の流れにも触れると、マネジメント面での説得力がさらに高まります。
  • 3)のリスク対策は環境・空間面が中心なので、コミュニティ維持や住民移転支援といった社会的合意形成策も加えると、都市計画としての総合性が強化されます。

総合評価
現状でも合格水準は十分に満たしており、加えて制度活用や事業化プロセスを明示すれば、高得点での安定合格が見込めます。技術的裏付けのある記述力に加え、制度・マネジメント面を組み合わせられる点に、この受講生様のコンサルタントとしての大きな可能性を感じます。

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建設部門 河川、砂防及び海岸・海洋

Ⅱ-1-3

問題文

河道閉塞を原因とする土石流,火山噴火による降灰後の土石流,地すべりのいずれかの1つの土砂災害を選び,重大な人的被害を引き起こすプロセスを説明せよ。また,選んだ土砂災害について,土砂災害防止法に基づく緊急調査(初動期)において,重大な土砂災害が想定される区域及び時期を設定する方法を説明せよ

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問題文の解説

この問題は、特定の土砂災害現象(河道閉塞土石流、火山降灰後土石流、地すべり)を選び、その発生から被害拡大に至るプロセスと、**土砂災害防止法に基づく緊急調査(初動期)**での区域・時期設定方法を問うものです。出題者は、技術知識だけでなく、迅速な判断と防災計画への落とし込み能力を評価しています。

発生プロセスは、外力(降雨・噴火・地震)地形・地質条件崩壊・堆積発生流下拡大人的被害の因果関係を整理します。河川砂防コンサルタントとしては、集水域形状、渓流勾配、堆積物特性、下流の土地利用状況を踏まえて説明することが重要です。

緊急調査では、区域設定として地形図・航空レーザー・既往災害履歴を用い、堆積源・流下経路・影響集落を特定します。時期設定では降雨量や降雨強度、火山降灰後の経過日数などから発生閾値を判断します。現地踏査による堆積物量確認や雨量観測体制の整備、暫定的な警戒避難基準設定も不可欠です。

まとめると、現象理解・科学的根拠に基づく区域/時期判断・迅速な防災体制構築が得点の鍵であり、コンサルタント視点では地形・地質・気象の複合評価と情報共有体制に着目することが求められます。

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模範解答1 専門科目 河川、砂防及び海岸・海洋  専門事項 河川構造物設計  作成日 2025.5.12

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 河道閉塞を原因とする土石流を選択し,記述する。

1.プロセス

河道閉塞による天然ダムが形成される。これが越流や浸透により突発的に決壊し,大量の湛水と土砂が一体となった高密度流体が谷筋を高速で流下する。特に扇状地末端に位置する住宅地に短時間で直撃するため被害が拡大しやすい。また,扇状地頂部は平坦で開発しやすく,高齢者施設等の立地が多く,避難困難性が高い。さらに,天然ダムの構成材料は不均質で構造観察が難しく,決壊時期の予測も困難である。

2.区域及び時期の設定方法

緊急調査では,ヘリコプター,UAV,レーザー計測により,天然ダムの位置,規模,現状の湛水・漏水状況を調査する。また,河道の縦横断形状,下流域の地形,天然ダムへの流入量等のデータを収集する。これらをもとに,1次元河床変動計算により,河道内の水位及び河床位の変動を計算し,氾濫開始点を設定する。それと併せて2次元氾濫計算により,河道外の氾濫範囲を推定することで,災害がおよぶ範囲を特定する。

時期の設定には,湛水高と越流開始高との差,浸透速度,降雨強度や継続時間等を評価し,決壊のタイミングを定量的に予測する。特に,越流開始前の湛水状況と降雨予測の組合せ,決壊の可能性が高まる閾値を判定することで,適切な警戒レベルを設定することが可能となる。

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講評

本解答は、出題者の要求である「特定災害の発生プロセス説明」と「緊急調査での区域・時期設定方法」に明確に答えており、構成も整理されているため得点力は高いと判断できます。特に、現象の物理的メカニズム(天然ダムの形成・越流・決壊)から被害拡大要因(扇状地形・避難困難性)までの流れが一貫して説明されており、実務経験に基づいた説得力があります。

評価できるところ

  • 発生プロセスが段階的に整理され、被害の地形的要因や社会的要因(高齢者施設の立地等)まで触れている点は、河川砂防技術者としての総合的視点が表れています。
  • 緊急調査方法で、ヘリ・UAV・レーザー計測など現代的な計測技術を具体的に挙げ、1次元・2次元解析を使い分けて区域特定している点は技術的完成度が高いです。
  • 時期設定において、湛水高や越流開始高、降雨予測との組み合わせといった定量的評価を導入しており、実務適用性が高いです。

改善点

  • 区域設定では、氾濫解析結果の住民・自治体への情報共有体制や伝達方法にも触れると、防災マネジメント面の得点がさらに伸びます。
  • 時期設定の説明は技術的に優れていますが、「緊急調査」という時間制約下での迅速性・簡便性の観点(例:簡易モデルや現場観測値の即時反映)を補足すると、現場適応力がより強調されます。
  • 被害想定の社会的インパクト(避難所運営、交通遮断リスク等)に触れると、課題解決提案の幅が広がります。

可能性
現象理解と解析技術の両面で高い力を持っており、今後は「技術的分析+防災マネジメントの統合」へと広げることで、より包括的なコンサルタント型技術者としての評価を確実に高められます。

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模範解答2 専門科目 河川、砂防及び海岸・海洋  専門事項 河川構造物  作成日 2024.11.24

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1.人的被害を引き起こすプロセス(土石流)

山間部の深層崩壊で生じた土石流により、河道閉塞を形成後、上流域の溜水(堰止め湖)の形成と水圧の増長による決壊の二段階のプロセスを経る。早期発見が難しく、決壊までのタイムラグがある場合が多いため、発見と対応が遅れやすい。決壊すると短時間で大量の岩石や土砂が下流域の低地の集落等に流下し、住民が避難する余裕がないため、被害が拡大しやすい。

2.想定される災害区域の設定方法

1)地形・地質調査:河道閉塞が発生した地点を中心

に、地形図や航空写真を用いて下流域を特定する。

特に急斜面や堆積物が多い箇所、人口密集地が存在する区域を重点的に分析する。

2)危険区域のモデル解析:河道閉塞箇所の留水量や堆積物の規模を基に、決壊時の土石流流下範囲をシュミレーションする。下流域の河川沿いに加え、洪水平野や都市部への影響範囲を予測し、災害区域の範囲の設定に反映させる。

3.想定される災害発生時期の設定方法

1)水文条件の解析:留水の増加スピードや堰止め湖の水圧を監視し臨界値に近づくタイミングを特定する。水位計や侵食状況の観測をリアルタイムで実施する。

2)地震や余震の影響:地震発生後、余震が多発する期間は特に決壊を引き起こすリスクが高いため、災害時期として設定する。

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講評
この答案は、出題要求である「土石流の発生プロセス」と「区域・時期の設定方法」に一応答えていますが、全体的に説明がやや概略的で、技術的根拠や解析手法の具体性が不足しています。そのため得点力は中程度と見られます。ただし、流れは理解でき、基本的な考え方は正しいため、改善すれば高得点に近づける内容です。

評価できるところ

  • 発生プロセスを「堰止め湖の形成決壊」という二段階で整理し、タイムラグや避難困難性など社会的影響に触れている点は明確です。
  • 区域設定で「地形・地質調査」「航空写真」「シミュレーション」を挙げ、基礎的な分析手順を示している点は評価できます。
  • 時期設定で「水文条件の監視」「地震・余震の影響」を加味している点は実務的な視点があります。

改善点

  • 技術的説明の具体度が低く、解析方法や使用データ(例:1次元/2次元氾濫解析、レーザー計測、越流開始水位の算定など)が不足しています。これにより専門性がやや弱く見えます。
  • 区域設定は「重点的に分析」としていますが、判定基準(例:流速・土砂濃度・到達時間)や危険度ランク化の視点を補うと、説得力が増します。
  • 時期設定では、降雨条件や浸透破壊の進行度など、水圧以外の決壊トリガーも評価対象に加えると実務的な精度が向上します。

可能性
この受講者様は、現象の流れとマネジメントの基本を押さえていますので、あとは「解析技術の具体化」と「評価基準の明確化」を加えることで、よりプロフェッショナルな答案に仕上げられます。現状は基礎理解がしっかりしているため、少しの技術的肉付けで楽に高得点を狙えるレベルです。

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Ⅱ-2-1
問題文

気候変動により水災害リスクが増大する中、災害に強いまちづくりを進めるに当たっては、ハザードの発生頻度とその規模、それによって生じる災害との関係を多段的に捉え、当該地域が抱えるリスクの本質を理解した上で、総合的・多層的に対策を講じていくことが必要である。あなたが洪水、土砂災害、津波・高潮災害等の水災害のリスク軽減又は回避を目的としてハード対策及びソフト対策が一体となったまちづくりの計画策定に携わることとなった場合を想定して、下記の内容について、記述せよ。

(1)計画策定着手に収集する・整理すべき資料や情報について当たって、あらかじめ収集・整理すべき資料や情報について述べよ。併せて、それらの目的や内容について説明せよ。

(2)計画を策定する手順について述べよ。併せて、それらの計画の策定に関し、、留意すべき点、工夫を要する点について説明せよ。

(3)計画策定を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

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問題文の解説

この問題は、水災害リスクの高まりを踏まえ、洪水・土砂災害・津波や高潮など多様なハザードに対応する総合的なまちづくり計画を立案する能力を問うものです。出題者は、技術者が「ハード対策(施設整備)」と「ソフト対策(警戒避難・土地利用・住民啓発など)」を一体的に考え、計画策定の初期段階から関係者調整までを体系的に進められるかを見ています。

まず(1)では、計画策定の基礎となる資料収集力が評価されます。過去の災害記録、ハザードマップ、流域や沿岸の地形・地質情報、気象・水文データ、将来予測(気候変動シナリオ)などの自然条件に加え、土地利用、人口・資産分布、重要施設位置など社会条件も網羅的に整理する必要があります。これらは「リスクの見える化」や被害想定の根拠となるため、地理情報システム(GIS)やシミュレーションモデルと組み合わせる視点が重要です。

(2)では、計画策定の手順を示し、各段階での留意点を述べることが求められます。典型的には、現況と課題の把握、リスク評価と優先度設定、ハード・ソフト対策案の検討、費用対効果や事業優先順位の評価、合意形成と計画化という流れです。河川砂防工学のコンサルタントとしては、施設整備案(堤防強化、遊水地、砂防えん堤など)と非構造対策(避難計画、土地利用規制、防災教育)の相互補完性を意識することが重要です。また、多段的な防護(防ぐ・減らす・避ける)と多層的な安全性確保を組み合わせることが求められます。

(3)では、効率的・効果的な進行のための関係者調整力が問われます。行政(防災部局・都市計画部局)、インフラ管理者、地域住民、企業、学識経験者など多様な主体との情報共有・役割分担が必要です。特に、防災拠点や避難経路整備は都市計画や土地利用規制と密接に関わるため、縦割りを超えた連携体制の構築がポイントです。

着目すべきは、単なる施設整備計画にとどまらず、被害ポテンシャルを減らす土地利用や住民の行動変容まで含めた総合的・持続可能なまちづくりを計画として具現化できるかという点です。これにより、気候変動下でも安全性と地域価値を維持できる計画が評価されます。

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模範解答 専門科目 河川、砂防及び海岸・海洋  専門事項 河川構造物設計  作成日 2024.12.14

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1.収集・整理すべき資料や情報

1)過去の被災履歴

シナリオプランニングを用い、複数年の確立規模(10年、100年)のシナリオを構築する。これより被害範囲を予測し、優先順位を付けた防災計画を立案する。また、自治体が保有する災害記録を収集・分析し、降雨量等の発生条件から災害メカニズムを解明する。

2)既存の防災インフラデータ

ハード対策として、既存施設の設計洪水に対する余裕度が想定外の災害に対してどの程度機能を発揮できるかを評価する。また、ソフト対策として、防災教育によるリスク認識や避難誘導標識等による行動計画の適切性を分析する。これらの対策が相互的に補完し合い、機能しているか評価し、改善点を洗い出す。

3)地域の人口や土地利用データ

災害時に被害を受けやすい都市部などの人口密集地やインフラ集中地などの位置情報を収集する。特に高齢者住宅や狭隘道路など救援活動や避難に支障が出る地域を優先して対策計画を策定する。

2.計画を策定する手順

1)河川流量解析と頻度分析

事前に収集したデータを基に河川流量解析と発生頻度分析を実施する。データが不十分な場合には類似流域の補完データを活用し、複数の確率で洪水リスクを評価する。その結果をもとに、短期的な対策から中長期的な総合計画の安全性向上を目指す。

2)浸水解析と危険区域の特定

浸水シミュレーションを活用し、浸水深や浸水継続時間を基準に影響の大きい区域を特定する。

3)土砂移動モデルによる危険斜面の評価

現場調査データと土砂移動解析モデルを組み合わせ、斜面崩壊のリスクを評価する。特に降雨強度や地質特性に基づき、透水層が飽和する条件下での崩壊リスクを数値化し、安全率を設定する。

4)緩衝地帯の配置検討

想定外の災害にも対応するため、緩衝地帯の配置を計画する。具体的には、河道周辺に氾濫原を設けて流出速度を低減し、湿地帯による水の浸透促進を図る。

3.効率的・効果的に進める関係者調整方策

1)浸水解析と危険区域の特定

建設コンサルタントと連携し、浸水シミュレーションを用いて視覚的なリスクマップを作成する。これを基に住民へリスク情報を共有し、優先的な対策エリアの合意形成を行う。

2)土砂移動モデルによる危険斜面の評価

地質調査技術者と連携し、水文観測データ(水位・濁度)と流出解析モデルを活用した地下水や間隙水圧をリアルタイムで算出する。斜面崩壊の危険度を評価し、メッシュ毎に危険アラート表示の運用を住民と共有することで実現可能性の高い計画を策定する。

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講評
この答案は、出題趣旨である「ハード・ソフト一体の水災害対策を踏まえた計画策定」の流れを的確に押さえており、技術応用・マネジメント・課題解決の3要素がバランスよく盛り込まれています。特に、河川流量解析・浸水解析・土砂移動モデルといった専門的手法の適用が明確で、評価できる内容です。

評価できるところ

  • 収集すべき資料の列挙が自然条件・社会条件ともに網羅的であり、被害ポテンシャルの分析視点がしっかりしている点。
  • 河川砂防分野で重要な解析(流量頻度分析、浸水シミュレーション、土砂移動解析)を具体的に示し、計画策定に直結する形で説明している点。
  • 関係者調整の部分で、住民・技術者間の情報共有方法(リスクマップ、アラート運用)まで踏み込んでいる点。

改善点

  • 手順部分はやや解析技術の説明に比重が置かれており、ハード・ソフト対策の組合せ方や優先順位の設定プロセスをもう少し具体的に示すと、マネジメント面での評価がさらに高まります。
  • 関係者調整については、行政や防災部局との制度面での連携や、避難計画への落とし込み方法も触れると、実効性が明確になります。

総じて、この答案は十分な技術的裏付けと構造的な説明力を持っており、現場経験と理論を両立できる力が示されています。改善点を補えば、高得点での合格はもちろん、実務でも計画立案の中心的役割を担えるだけの内容になっています。

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Ⅱ-2-2
問題文

洪水、土砂災害、高潮は段階的に災害発生の危険度が高まる災害であるにもかかわらず、逃げ遅れにより被災する人が後を絶たない。住民等の避難を促すために市町村長が発令する避難情報は、その受け手である住民等が自分事として捉えられるよう、適切なタイミングで適切な区域に対して発令するとともに分かりやすく伝えることが重要である。あなたが市町村長による避難情報の発令判断の支援に携わることとなった場合を想定して、下記の内容について記述せよ。なお、解答に当たっては、洪水、土砂災害又は高潮のうち1つの災害を選び解答すること。

(1)市町村長による避難情報の発令判断を支援するために、選んだ災害について平時に収集すべき資料や情報について述べよ。併せて、それらの目的や内容について説明せよ。

(2)災害発生の危険度が高まる際に粗町村長による避難情報の発令判断を支援するために行う業務の項目について3つ述べよ。併せて、業務の実施に関す、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的なものにするための関係者との調整方策について述べよ。

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問題文の解説

この問題は、洪水・土砂災害・高潮のいずれかを対象に、市町村長の避難情報発令判断を技術的に支援するための考え方と手順を問うものです。
出題者は、**「平時の備え」「発災時の判断支援」「関係者調整」**という3段構成で、災害リスク情報の収集・分析から、発令タイミングの見極め、情報伝達の工夫までを総合的に整理できるかを見ています。

まず(1)では、平時に整えておくべき情報の体系化がポイントです。対象災害の発生メカニズムや影響範囲を把握できる地形・地質データ、過去の被災履歴、ハザードマップ、観測網の位置や性能などを示す必要があります。これらは、発令基準の設定や予測精度の向上につながるものでなければなりません。河川砂防のコンサルタント視点では、降雨量・水位・土壌含水量などの時系列データや、危険箇所の空間分布をGISで可視化できる形で整理することが重要です。

(2)では、危険度が高まる過程での支援業務を3つにまとめる必要があります。例えば、リアルタイム観測データの監視としきい値到達の判定、数値予測モデルによる被害想定区域の更新、情報発信案の作成と広報部門との共有、などが考えられます。ここでは、判断を誤らないための情報の即時性と精度確保、および住民が「自分事」として受け止めやすい表現・媒体の工夫が着目点です。

(3)では、行政内部の防災部門、警察・消防、自主防災組織、気象台など多機関連携のあり方を整理します。特に、**情報共有のタイムラグを最小化するための事前合意(発令基準・役割分担)**と、訓練による実効性確認が重要です。また、メディア・SNSを通じた広報連携も、避難行動率向上に直結します。

まとめると、出題者は「科学的根拠に基づく避難情報発令の支援スキーム」を体系的に説明できるかを問うており、技術データの分析力と、マネジメントによる迅速・的確な判断支援体制の構築が、合否を分けるポイントとなります。

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模範解答 専門科目 河川、砂防及び海岸・海洋  専門事項 河川構造物  作成日 2025.3.17

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1.収集・整理すべき資料や情報(洪水)

1)洪水発生のタイミングを判断する情報

 降雨流出解析(HEC-HMS)を活用した洪水予測手法の導入により、流域特性に応じたピーク流量を予測する。また、不定流解析(SOBEK,iRIC)により、水位・流速の変動をリアルタイムでシミュレーションし、避難情報の発令基準を最適化する。

2)浸水や被害を受ける区域を特定する情報

 2次元氾濫解析(iRIC/Nays2DFlood,HEC-RAS 2D)を用いて氾濫流の広がりをシミュレーションし、優先的な避難区域を設定する。リアルタイムの雨量や水位データを基に、浸水危険区域の特定を動的に調整する。

3)住民が避難しやすくなる行動誘導

 橋梁の基礎洗掘リスク評価(スカウアリング解析)により、避難ルートの安全性を確保する。冠水予測モデルを用いて、安全な避難経路をリアルタイムで提示する。過去の洪水データを基に地域ごとの最適な基準を設定・視覚化し、住民への説明資料として活用する。

2.発令判断を支援する業務の項目

1)避難情報の発令基準の策定と自動通知

 水理解析を活用し、流域特性を考慮したピーク流量(○○m³/s超)や水位(堤防高-m)を避難基準として設定する。自動アラートシステムを導入し基準超過時に市町村長へ通知し、迅速な判断を支援する。

2)リアルタイム監視システムの運用とリスク可視化

 GISを活用した洪水リスクの可視化を行い、市町村長が即座に判断できるダッシュボードを作成する。水位計・雨量計データを統合し、リアルタイム監視体制を強化する。住民向けにも洪水リスクを簡単に理解できるよう、マップの色分けやアニメーション化を行う。

3)発令後の迅速な情報伝達と避難支援の実施

 防災行政無線・エリアメール・SNSなどの多重活用に加え、道路冠水・橋梁の洗掘リスク評価を基に、浸水時の避難経路の安全性を確保する。要支援者リストを活用し福祉施設と連携した個別避難支援を実施する。

3.効率的・効果的に進める関係者調整方策

1)避難情報の発令基準の策定と自動通知

市町村防災担当課に対し、経験則に基づく避難発令基準を、流域モデリング(HEC-RAS, MIKE 11)による水理解析を活用した統一基準へ修正するよう指導する。これにより、降雨強度や地形特性を統合的に評価し、発令判断のばらつきを抑えるとともに、即時の避難情報発令を可能とする。

2)リアルタイム監視システムの運用とリスク可視化

河川管理者に対し、固定観測点ベースの水位監視から、GISAI解析(LSTMモデル等)を活用したリアルタイム監視体制へ移行するよう指導する。これにより、水位計・雨量計データの統合可視化を強化し、市町村長が即時に洪水リスクを把握できる環境を整え、発令判断の迅速化と精度向上を図る。

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講評

この答案は、出題趣旨である「平時からの情報整備」「危険度上昇時の発令判断支援」「関係者調整」の3要素を明確に盛り込み、洪水を対象とした具体的かつ技術的裏付けのある記述になっています。
解析手法(HEC-HMSiRICHEC-RAS 2D等)の活用や、基準設定・可視化・伝達方法までを体系的に示しており、得点力は高い内容です。

評価できるところ

  • 洪水予測、氾濫解析、リスク可視化など技術応用が具体的で、実務に直結している。
  • 発令基準の定量化や自動通知システムの導入など、マネジメント視点と技術視点の両立ができている。
  • 避難経路の安全性評価や要支援者対応など、課題解決の現場適用性が高い。
  • 関係者調整についても、解析結果を基準統一や監視体制高度化に結び付けており、説得力がある。

改善点

  • 技術用語や解析モデル名が多く、専門外の採点者には理解しづらい可能性があるため、要所に平易な補足説明を加えるとさらに評価が安定する。
  • 関係者調整の部分で、住民や自主防災組織との情報共有・訓練といったソフト面の取組にも触れると、より総合性が増す。
  • 避難情報発令後の「行動変容を促す伝え方」(心理的要因への配慮)まで示すと、実効性をより高められる。

総じて、技術的完成度は非常に高く、少し説明のバランスを整えることで、楽に合格水準を超えられる答案です。特に、解析結果を行政判断や住民行動に直結させる視点をもう一段加えることで、コンサルタントとしての提案力がさらに際立つでしょう。

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Ⅲ-2
問題文

近年、全国各地で水災害が(洪水、内水、高潮、土砂災害)が激甚化し・頻発化するとともに、気候変動の影響により、今後、降雨量や洪水発生頻度が全国で増加することが見込まれている。このため、従来の治水対策を一層加速させるとともに、上下流や本支流、海岸を含めた流域全体を俯瞰して取り組む「流域治水」が必要となっている。投入できる人員や予算に限りがあることを前提に、以下に答えよ。

(1)流域治水を進めるに当たって、多面的な観点から3つの課題を抽出し、従前からの治水対策の状況と共にその課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術を踏まえて示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考え方を示せ。

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問題文の解説

この問題は、近年激甚化・頻発化する洪水、内水、高潮、土砂災害に対し、従来型の個別治水から「流域全体を俯瞰した流域治水」への転換を前提としています。
出題者は、単に施設整備の列挙ではなく、上下流・本支流・海岸の一体的管理人員・予算制約下での優先度付けを意識した課題抽出と解決策提示を求めています。

まず(1)では、多面的な観点から課題を示す必要があります。視点例としては、

  • 技術面(ハード施設の老朽化や設計外力超過への対応)
  • マネジメント面(流域間・自治体間の情報共有不足、計画・事業調整の難しさ)
  • 社会・環境面(土地利用規制や住民意識の不足、環境保全と治水の両立)
    が考えられます。従前の対策状況(ダム・堤防・遊水地整備など)を踏まえ、現状の限界やボトルネックを明確にすることがポイントです。

次に(2)では、選んだ最重要課題に対し、複数の具体的かつ技術的な解決策を示す必要があります。例えば、洪水リスク低減であれば、

  • 上流での雨水貯留・浸透施設の面的展開
  • 氾濫原や遊水地の確保と多目的利用
  • リアルタイム水位予測とゲート操作最適化
    など、流域単位でのハード・ソフト組み合わせを具体的に述べることが重要です。ここでは、治水機能強化とともに、コスト効率や持続可能性も考慮します。

(3)では、提示した解決策に共通する新たなリスク(例:上流貯留による下流渇水、遊水地利用時の用地確保トラブル、維持管理負担増)を想定し、その技術的対策(運用ルール整備、モニタリングシステム導入、関係者合意形成の仕組みなど)を示すことが求められます。

コンサルタントとしては、流域全体のリスク構造を可視化し、関係主体間の合意形成を促す技術的裏付けを持たせることが、合格答案の鍵になります。

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模範解答 専門科目 河川、砂防及び海岸・海洋  専門事項 土質調査並びに地盤  作成日 2025.7.5

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1.流域治水を推進していくうえでの課題

1)洪水被害の分散化

1-1)RRIモデル

気候変動への適応の観点から従前の構造的対策や流域の分割管理を主体とした治水計画から、RRIモデル構築による流域全体を俯瞰した統合管理へ転換する。

1-2)水田貯留効果

流量調整板等の設置により水田排水量を絞り、公共水域のピーク時の流出量や水位を抑制する。RRIモデルによる過去の洪水再現解析では、水田貯留効果が確認され、浸水被害の低減が可能であることが示唆されている。流域スケールで氾濫許容させる被害分散型整備の推進により、被害の集中化を防ぎ被害総量を減少させる。

2)老朽化施設管理の効率化

防災インフラレジリエンスの観点から従前の定期点検による防災インフラの事後補修から老朽化施設の優先度評価と効率的な更新計画を立案する。構造物の変位をモニタリングし、劣化や損傷等の発生箇所や度合いについて動的解析を行う。推定モデルに基づいた予測評価結果を踏まえ、老朽化施設の分布データを流域管理に統合し、予測評価に基づく優先度を策定する。

3)避難行動の迅速化

洪水リスク管理の観点から従前の長期的な気象観測と水文データに基づく構造的対策設計や避難計画策定において、リアルタイム洪水予測技術を導入する。流出解析モデルにおいて、避難行動のきっかけとなる水位の立ち上がりの過小評価を抑制し、予測適正誤差を考慮したピンポイント水位情報提供により避難時間短縮や効率向上を図る。

2.最も重要と考える課題:洪水被害の分散化

1)農業インフラの活用

農業インフラの整備・維持管理等にデジタル技術を導入するPRISM施策を推進する。IoT水位センサーやネットワークカメラ等でため池を遠隔監視し、リアルタイム水位データを無線通信で情報共有する。事前放流可能水位等の予測シミュレーションによる放流量を算出し複数のため池を対象とする洪水調節機能強化を図る。

2)既存ダムの水害対策容量の確保

RRI解析モデルによるダムへの流入量の予測データから事前放流に伴う貯水位低下量を算出する。事前放流で、より多くの容量を確保するための放流ゲートを改良する。具体的には既存ダムのより大きな水圧に対応したゲートの改良設計によりさらに低い位置に放流設備を設置することにより洪水調節容量を拡大する。

3)グリーンインフラの活用

氾濫原及び湿地の再生等の自然の貯留、浸透機能を活用して洪水を管理するNFM手法を導入する。人工林の整備により、遮断蒸発や地表面粗度を増強し、流出総量の減少や流出速度を抑制する。

洪水再現解析では、流下速度の低減効果が確認され、ピーク流量減少による浸水被害の低減が可能であることが示唆されている。NFM施策の推進により、浸水被害の低減や分散化に寄与する。

3.共通して新たに生じるリスクと対策

1)利水容量の不足

RRI解析モデルを活用した洪水予測では、降雨流出の応答が早い中山間地河川の土壌水分条件による誤差の影響により、水位誤差が発生する可能性がある。降雨流出が過大に予測され、事前放流量が過剰になった場合、利水容量が不足し、農業用水の確保に悪影響を及ぼす。

対策としては、予測モデルの逐次修正やフィードバック技術の導入で誤差を低減し、適正な放流量を算出する。洪水予測モデルの精度を高めることで、農業用水の確保と洪水調節を両立させる。

2)水資源の枯渇

NFMに基づく湿地や氾濫原等の再生により、流れの分散化が進み、洪水時にピーク流量を抑制する一方で、平時の河川への還元水量が減少し、水資源の確保が困難になるリスクがある。

対策としては、農業用水の循環過程を組み込んだ分布型水循環モデルの導入により、河川の低水流況を精密に計算し、用水計画、貯水池の放流量決定等の適応計画に反映させる。

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講評

この答案は、出題趣旨である「流域全体を俯瞰した治水計画」に対して、多面的な課題設定と技術的裏付けを伴った解決策が提示されており、得点力の高い構成になっています。

評価できるところ

  • 課題を「洪水被害の分散化」「老朽化施設管理」「避難行動の迅速化」と明確に分類し、それぞれに流域治水の視点を盛り込んでいます。
  • RRIモデル、NFM(自然洪水管理)、PRISM施策など具体的な専門用語や技術名を用いており、技術者としての説得力があります。
  • 最重要課題に対して、農業インフラ・ダム改良・グリーンインフラの3方向から解決策を提案しており、ハード・ソフト両面を組み合わせた総合的アプローチになっています。
  • 新たなリスク(利水容量不足、水資源枯渇)に対しても、予測モデルの精度向上や水循環モデルの活用といった具体的な対策を示しており、実務性が高いです。

改善点

  • 課題1で触れている「被害分散型整備」の説明はやや長く、他の課題説明とのバランスがやや不均衡です。もう少し簡潔化して他の課題にスペースを回せば全体の読みやすさが増します。
  • ダムゲート改良などの具体策は優れていますが、費用対効果や施工制約に触れると、現実性と説得力がさらに向上します。
  • NFMの説明で「浸水被害低減」の効果は明示できていますが、モニタリングや維持管理体制の必要性にも一言触れると、持続可能性の観点が補強されます。

総評
流域治水の本質である「流域全体の最適化」と「多主体の連携」をしっかり押さえており、現場での実装可能性を伴う良質な答案です。改善点を取り入れれば、さらに説得力と完成度が高まり、合格圏から余裕をもって高得点を狙える内容になります。

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建設部門 道路

Ⅱ-1-1

問題文

車道の曲線部においては,当該道路の区分,曲線半径に応じ,1車線につき,それぞれ拡幅量として定められた値を拡幅することとされているが,その設定の考え方について述べよ。また,その設置に当たっての留意点について説明せよ。

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問題文の解説

この問題は、車道曲線部における拡幅の設定根拠と、設置時の留意点を問うものです。出題者は、道路設計の理論的背景(走行特性、車両運動特性)と、実務における安全性・快適性の両立を理解しているかを確認しています。

まず、拡幅設定の考え方は、主に車両が曲線を通過する際の内輪差や車体のオーバーハング、走行軌跡の偏差に基づきます。曲線半径が小さいほど内輪差は大きくなり、車線内での安全な通行を確保するために拡幅が必要となります。また、設計速度や道路区分(高速道路、一般道路)によっても必要拡幅量が異なります。車両の大型化や交通構成比(大型車混入率)も考慮すべき要素です。

道路工学のコンサルタントとしては、設計基準類(道路構造令、設計要領第二集等)の設定根拠と数値算定の背景を理解し、現地条件に応じた調整が可能であることが重要です。特に山間部や市街地のように用地制約がある場合、拡幅不足は安全性低下につながり、逆に過剰拡幅はコスト増や用地買収負担を招きます。

設置に当たっての留意点としては、以下が挙げられます。

  • 走行安全性:車両が曲線部で速度を適切に保ちながら走行できるよう、縦横断線形と組み合わせて拡幅量を設定する。
  • 視距確保:曲線外側の視距障害物(法面、構造物、植栽)を除去または後退させ、見通しを確保する。
  • 排水計画:外側拡幅による路面排水の流向変化や集水位置の変更に伴い、側溝や排水構造の見直しを行う。
  • 維持管理性:積雪寒冷地では除雪作業の効率性を考慮し、拡幅部と本線部の路面レベル差や縁石形状を適正化する。
  • 交通安全施設との整合:ガードレール、照明柱、標識位置を拡幅後の余裕幅に応じて再配置する。

まとめると、この問題では単に「拡幅量の値」を知っているかではなく、「なぜその値になるのか」「どのような現地条件・交通条件で調整するか」を説明できることが評価のポイントとなります。設計理論と現場対応力を結びつけて説明できることが、高得点につながると考えます。

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模範解答 専門科目 道路  専門事項 道路計画  作成日 2025.5.16

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(1)曲線部の拡幅量の設定の考え方

道路の区分や曲線半径に応じた拡幅量は、車両の安全・円滑な走行空間の確保を目的に設定される。具体的には、以下の要素により合理的に設定する。

① 曲線半径:半径が小さいほど遠心力の影響が大きく、拡幅量を大きくする。

② 道路区分:高速走行を前提とする道路では、安定走行のため拡幅量を大きくとる。

③ 車線数・車両種別:大型車や多車線の道路では軌跡差を考慮し、拡幅量を増やす。

加えて、車両の走行軌跡に応じた必要幅の算出には、設計車両の旋回性能や内輪差・オフトラッキングの考慮が不可欠である。また、積雪寒冷地では除雪帯の確保として地域特性を踏まえた設計が重要となる。

(2)拡幅設置に当たっての留意点

① 視距の確保:障害物を避けるなどして、接触リスクを減らす。

② 緩和区間と排水:すり付け区間を設け、勾配変更も滑らかにし排水機能を維持する。

③ 安全距離の確保:分離帯や側道との距離を再検討し、車両・歩行者の安全を確保する。

さらに、拡幅に伴い標識・照明柱・縁石などの道路付属物の配置変更が必要となる場合があり、統一的な道路景観の保持にも配慮が求められる。施工段階では仮設規制計画との整合、維持管理を見越して設計する。

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講評

この答案は、出題趣旨である「拡幅量設定の考え方」と「設置時の留意点」について、構造的に整理されており、得点力の高い内容になっています。理論背景(曲線半径、道路区分、車両特性)と地域条件(積雪寒冷地)にも触れており、評価できます。

評価できるところ

  • 拡幅量の設定要素を曲線半径・道路区分・車両条件と明確に分けて説明しており、設計理論を理解していることが伝わる構成になっている点。
  • 設計車両の旋回性能や内輪差・オフトラッキングの考慮を明記しており、実務的かつ専門的視点を示せている点。
  • 設置時の留意点として視距・排水・安全距離確保に加え、付属物配置や景観、施工時の仮設規制まで言及しており、マネジメント面も押さえている点。

改善点

  • 拡幅量算定の背景となる「設計速度」や「大型車混入率」など、数値設定に直結する条件への触れ方がやや薄いので、加えるとさらに説得力が増す。
  • 「緩和区間と排水」については、縦横断線形との整合性やクロソイド曲線の適用など、道路設計の具体的工法用語を加えると技術的精度が上がる。
  • 積雪寒冷地への配慮に触れているため、排雪スペースや融雪排水設計など具体的事例を一言添えると、地域適応力を強く示せる。

総じて、すでに高得点水準にある答案であり、上記の補強を加えれば、設計理論・実務経験・マネジメント力を兼ね備えた答案としてさらに完成度が高まり、楽に合格点を超える内容になると評価できます。

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Ⅲ-2
問題文

東日本大震災以降,災害初動時における道路啓開の重要性が大きく認識され,関係機関との連絡体制の構築,発災直後から対応可能な人員及び資機材の確保など,全国各地で事前の備えが進められてきた。しかしながら,令和6年能登半島地震では,道路啓開に時間を要するなど,被災地支援の初動対応が取りづらい状況が発生した。このような状況を踏まえて,以下の問いに答えよ。

(1)   大規模災害時において道路啓開を迅速に行うにあたり,道路に携わる技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題の内容を示せ。

(2)   前問(1)で抽出した課題のうち,最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)   前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

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問題文の解説

この問題は、大規模災害時における道路啓開を迅速化するための実務的課題とその解決策を、道路技術者の視点で体系的に整理する力を問うています。出題者は、単なる「啓開作業手順」の理解ではなく、マネジメント・技術応用・課題解決の総合力を見ています。

まず(1)では、課題を「多面的な観点」から抽出することが求められています。これは、土木構造・交通運用・組織マネジメントなど異なる切り口で整理することが重要です。例えば、物理的制約(崩落・路面損傷・障害物)、資機材・人員配置(オペレーター確保・機材運搬ルート確保)、情報伝達・連携体制(災害対策本部との情報共有、現場の優先順位決定プロセス)といった視点です。ここでは「観点名」を明確に示すことが採点上のポイントになります。

次に(2)では、選んだ最重要課題に対して複数の解決策を提示する必要があります。道路工学的には、災害時のアクセスルート確保や応急復旧技術の導入、代替ルート設定、事前の危険箇所モニタリングなど、設計・施工・維持管理の各段階に基づく対策を組み合わせることが評価されます。また、解決策は具体的な技術名や手順(例:ドローン計測による早期状況把握、可搬式橋梁や応急舗装材の事前備蓄、路肩崩落部の緊急土留め工法など)を挙げると説得力が増します。

(3)では、提案した解決策の実施後に想定される二次的リスクを示し、その対策まで言及する必要があります。例えば、啓開ルート集中による交通渋滞や二次災害リスク、応急復旧の品質不足による早期損傷、資機材の長期占用による他地域対応の遅れなどです。ここで重要なのは、単にリスクを並べるのではなく、それらを技術的にコントロールする方法(耐久性確保のための舗装厚管理、資機材運用の優先度ルール策定、車両通行管理システムの導入など)を示すことです。

総じて、この問題は「技術とマネジメントを横断した総合的提案力」を評価するものであり、道路工学のコンサルタントとしては、物理的条件・資源配分・情報共有体制の三本柱に着目して論理的に構成することが高得点の鍵となります。

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模範解答 専門科目 道路  専門事項 道路計画  作成日 2025.6.5

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(1)多面的な課題と観点

1)道路ネットワークのレジリエンス確保

道路ネットワークのリダンダンシーとレジリエンスの観点から、主要道路の優先開通ルートの設定を課題とする。災害時には主要幹線道路が寸断される可能性があるため、代替ルートの確保と、被災後の迅速な復旧が求められ。リダンダンシーを備えることは、代替経路の確保や複数ルートの事前計画を通じて、緊急時に機能する道路ネットワークを維持するために必要である。また、道路のレジリエンスを高めることにより、被災後の復旧力や柔軟な対応可能とすることが必要である

2)情報収集体制と通信インフラの確保

迅速な情報収集と通信インフラの確保の観点から、通信インフラの被害による情報共有の遅れへの対応を課題とする。災害初動時には、道路の被害状況や交通の状態を迅速かつ的確に把握することが求められる。通信インフラの維持・確保と、ドローンやリアルタイムマッピング技術の活用により、現場状況に応じた優先ルートの設定や、緊急車両の誘導を迅速に行うことが必要である。

3)緊急対応体制の即応力強化

緊急対応機材・人材の配置計画と即応力の強化の観点から、人員の迅速な配置の実現を課題とする。災害時に即応可能な機材・人材の確保と、現場への迅速な展開は初動対応の重要な要素である。よって、機材や人材を地域に分散して配置することで、交通網が寸断されても支援が可能な体制を構築する。また、機材や人材が適切に運用されるための訓練も必要である。

(2)最重要課題の解決策

課題:1)主要道路の優先開通ルートの設定

1)代替ルートの事前整備と複数経路の確保

災害時に優先開通が必要なルートが寸断された場合に備え、複数の代替ルートを事前に整備し、維持管理を行うことでリダンダンシーを確保する例えば、幹線道路の通行止めに備え、GISを活用した複数の代替ルートを設定し、耐震強化工事を施すとともに、交通流制御システムを導入して、災害時の円滑な物資輸送を確保する。

また、優先開通ルート以外にもアクセス可能な複数経路を持つことで、主要ルートが使用不可になった場合においても対応を可能とする。

2)災害シミュレーションによる優先ルートの見直し

地震や土砂災害などの発生に応じたシミュレーションを行い、優先開通ルートが妥当かどうかを定期的に検証・見直しを行う。これにより、最新の地形やインフラの状態に合わせて最適なルートを設定でき、実際の災害発生時に即応可能なルートを維持する。

また、発災直後に迅速な人員配置を実現するため、リアルタイム交通制御やドローンによる事前調査を併用し、分散拠点から最適ルートで人員を派遣する体制を構築する。

3)アクセス制限の迅速な解除とデジタル情報の活用

ドローンやリアルタイムのデジタルマッピング技術を利用して被災状況を迅速に把握し、緊急開通が必要な箇所の優先順位を効率的に決定する。また、災害時には自動的に交通制限が解除されるシステムの導入を検討し、アクセス制限が解除された区間を通行可能な経路として活用する。

さらに、通信インフラ被害時でも情報共有ができるよう、衛星通信とメッシュネットワークを導入し、ドローンやIoTセンサーで現地状況をリアルタイム把握し、デジタルマッピングで情報の迅速な共有を可能とする。

(3)新たに生じうるリスクと対策

1)リスク:代替ルートを確保しても、災害時には救援・物資輸送が一時的に集中し、交通容量を超えて過密化する可能性がある。これにより、渋滞により緊急車両の移動が妨げられ、救援・物資輸送が遅延する可リスクが生じる。

2)対策:高度道路交通システム(ITS)や交通需要マネジメント(TDM)を導入し、リアルタイム交通制御や信号調整を行い、優先車両のルートを確保する。さらに、インシデントマネジメントシステムで交通の円滑化を図る。

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講評

この答案は、出題趣旨である「多面的な課題整理」「最重要課題への複数解決策」「実施後の新リスクと対策」の3要素をしっかり網羅しており、総じて高得点が期待できる内容です。特に、観点名を明示して課題を整理している点や、GIS・ドローン・衛星通信など最新技術を活用した具体的解決策の提示は評価できます。

評価できるところ

  • 課題設定が「道路ネットワーク」「情報収集体制」「緊急対応体制」と、構造・情報・運用の3面からバランスよく抽出されている。
  • 最重要課題の解決策に、事前整備・シミュレーション・情報活用の3方向からアプローチしており、現実性と実効性が高い。
  • 新たに生じうるリスクとして交通集中の問題を挙げ、ITSTDMといった道路分野の具体的技術で対策している点が専門性を感じさせる。
  • 技術応用とマネジメント視点が両立しており、コンサルタント型の提案力が表れている。

改善点

  • 解決策部分は技術面の厚みがある一方、人的資源マネジメントや事前訓練・協定面の補強がやや薄く、災害時の実運用まで踏み込むとさらに説得力が増す。
  • 新リスクの分析が1点に絞られているため、例えば「通信障害下でのシステム依存リスク」などを加えるとリスクマネジメント力がより高く評価される。
  • 課題と解決策の間で、「なぜこの課題を最重要としたか」という選定理由をもう一文加えると論理構成がより明確になる。

この受講生様は、技術的知見と情報活用の提案力に優れており、災害対応分野での道路コンサルタントとして高い適性があります。人的体制や運用訓練の視点を補えば、さらに完成度が高まり、余裕をもって合格ラインを超える答案になるでしょう。

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建設部門 施工計画、施工設備及び積算

Ⅱ-1-3

問題文

令和5年3月の労働安全衛生規則改正で足場からの墜落防止措置が強化されたが,その概要について述べよ。また,高さ2m以上ある場所での施工に当たり,墜落災害の発生を防止するために施工計画に盛り込むべき安全対策について,検討の優先順位を踏まえ具体的な内容を2つ説明せよ。

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問題文の解説

この問題は、施工計画分野において労働安全衛生規則の改正内容を理解し、それを現場の安全計画に反映させる能力を問うものです。出題者は、単なる法令暗記ではなく、法改正の背景や趣旨を踏まえ、施工現場の実情に応じた安全対策を具体的かつ優先順位を持って提案できるかを評価しています。

まず、前半では令和53月改正の労働安全衛生規則における足場からの墜落防止措置の強化について説明する必要があります。ここでは、手すりの高さ・強度基準、開口部の覆い・囲い、作業床の幅や隙間の制限、昇降設備の確保など、従来基準との変更点を整理することが重要です。背景として、足場からの墜落が依然として死亡災害の主要原因であることを踏まえ、構造的防護と墜落制止用器具の併用を義務化した点に着目することが求められます。

後半では、高さ2m以上の場所での施工計画における墜落防止策を、リスクアセスメントの優先順位(危険源の除去隔離個人用保護具の活用)に沿って、具体的に2つ示すことが求められます。たとえば、構造的措置として先行手すり工法や可搬式作業床の採用、作業手順や動線計画を工夫して高所作業時間を最小化する、などです。ここでは、単に器具の使用を述べるのではなく、「施工計画に盛り込みやすい具体策」「現場条件との適合性」「安全管理体制との連動性」を示すことが得点につながります。

施工計画のコンサルタントとしては、法改正の技術的要件を現場にどう落とし込み、構造・作業手順・教育訓練・管理監督の各段階で安全を確保するかを多面的に提案できる視点が重要です。特に、強化された規定を守るだけでなく、現場固有の危険要因を事前に洗い出し、予防的に対策を組み込む姿勢が評価されます。

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模範解答 専門科目 施工計画、施工設備及び積算  専門事項 施工計画  作成日 2025.4.17

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1.労働安全衛生規則改正の概要

①一側足場の使用範囲の明確化

幅が1m以上の箇所において足場を使用する時 は原則として本足場を使用しなければならない。

②足場の点検者の指名義務化

業者・注文者による足場(吊り足場を含む)の点検を行う際は、あらかじめ点検者を指名することが必要になります。

③点検記録への点検者氏名の記載

事業者又は注文者が行う足場の組立等の点検後の記録・保存すべき事項に、点検者氏名を追記した

2.施工計画に盛り込むべき安全対策

①フルハーネス型安全帯の使用徹底

 高所作業者には、原則としてフルハーネス型安全帯の使用が義務つけられており、親綱やアンカー設置基準も整備されている。施工計画においても墜落制止用器具の適正な使用管理を盛り込む。

②先行手すりや安全ネット等の設備による安全対策

 ヒューマンエラーによる墜落災害の発生が頻発しているので、設備的な安全対策を盛り込む。

安全性を高める目的で先行手すり式の足場や安全ネットの設置・開口部養生により、作業中の安全対策を実施する。

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講評

本答案は、出題趣旨である「法改正の概要の正確な理解」と「施工計画における具体的な墜落防止対策の提示」に概ね的確に応えており、得点力は高い水準です。改正内容のポイント(足場の使用範囲、点検者指名義務化、記録の明確化)を簡潔に整理しており、後段では施工計画に反映すべき安全対策を、器具使用と設備的措置の2本立てで提示できています。構成も明快で、読みやすい答案です。

評価できるところ

  • 改正内容を3点に整理し、要点を押さえて説明できている。
  • 施工計画で考慮すべき安全対策を、「個人用保護具」と「構造的措置」に分けて記述しており、リスク低減の優先順位を意識した構成になっている。
  • フルハーネス、安全ネット、先行手すりなど具体的な用語が盛り込まれており、実務性・説得力がある。

改善点

  • 改正の背景や目的(墜落災害が依然高水準である現状や、予防的対策の強化方針)を簡単に触れると、理解の深さがより伝わり、得点力が上がります。
  • 施工計画上の安全対策について、優先順位(危険源の除去隔離個人用保護具)に沿って示すと、体系性が増します。
  • フルハーネスの使用に関しては、アンカー位置の計画や親綱配置図など「計画段階での具体的管理方法」に触れると、施工計画らしさがさらに強まります。

総合コメント
現状でも合格水準ですが、背景説明と計画段階での技術的工夫を少し加えるだけで、より高得点が狙える内容です。安全管理を単なる遵守事項ではなく、施工計画の中で積極的に組み込む姿勢が明確になれば、この分野での強みがさらに引き立ちます。

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Ⅱ-2-1
問題文

市街地の道路下に鉄筋コンクリート構造物(18m×高さ12m×延長200m)を構築する工事において、地下水位が高く軟弱地盤のため、模式図のようにソイルセメント地下連続壁にて開削工事を行う計画としていた。地盤調査では掘削床付け面付近に粘性土層の存在が確認されている。道路敷地内の地下埋設物や架空線については、すでに仮移設は完了しているものとする。本工事の担当責任者として下記の内容について記述せよ。

(1)             ソイルセメント地下連続壁構築中に追加地盤調査を実施したところ、事前の地盤調査では把握できていなかった被圧帯水層が粘性土層下部に確認され、盤ぶくれ対策を実施する必要が生じた。考えられる対策を2つ挙げ、本工事の特性を踏まえてその特徴を2つの評価軸で比較せよ。

(2)             上記盤ぶくれ対策を実施のうえ、掘削作業に進むことになった。地盤掘削時における周辺地盤の変状対策について、PDCAサイクルにおける計画段階(P)で考慮すべき事項を挙げ、計画実施後の検証段階©及び是正段階(A)でのそれぞれの具体的方策を述べよ。なお、是正段階の回答に当たっては、検証段階(C)にて得られた結果が、当初の計画段階(P)の想定から逸脱していたことを前提とすること。

(3)             施工ヤードの制約のため、発注者が別途発注した設備工事の施工業者と同一開口部にて揚重機1台を共用する必要が生じた。利害関係者及び衝突する利害を挙げ、具体的にどのようにその利害を調整するか説明せよ。

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問題文の解説

この問題は、市街地での大規模地下構造物建設において、施工計画上の想定外事象(被圧帯水層発見)や周辺地盤影響管理、さらには他業者との施工設備共用による利害調整まで、多面的なマネジメント能力を問う内容です。
単なる技術的知識だけでなく、リスクマネジメント・工程調整・関係者調整を統合的に行えるかが出題者の狙いです。


(1)盤ぶくれ対策の比較検討
被圧帯水層による盤ぶくれリスクに対して、技術者は本工事の条件(市街地・高地下水位・軟弱地盤・開削工法)を踏まえ、複数の対策案を挙げ、その特徴を定量・定性的に評価することが求められます。
比較軸としては、施工性・工期への影響、止水効果・安全性確保の確実性、などが考えられます。
コンサルタント視点では、止水壁延長や薬液注入、ウェルポイント・ディープウェルなどの工法特性を現場条件に適合させて評価する姿勢が重要です。


(2)周辺地盤変状対策とPDCA活用
掘削時には周辺構造物やライフラインへの影響を最小化するため、PDCAの各段階で具体的な管理を行う必要があります。

  • 計画段階(P)では、変位・沈下の許容値設定、計測ポイント配置、計測頻度、施工手順の事前検討などが重要です。
  • 検証段階(C)では、計測結果のリアルタイム分析、変状進行速度の評価、計画値との比較を行います。
  • 是正段階(A)では、逸脱時の対処手順(掘削中断、補強工の追加、揚水調整など)を即応的に実施します。
    ポイントは、計画時に「もし逸脱したら何をするか」までシナリオ化しておくことです。

(3)揚重機共用に伴う利害調整
施工ヤード制約下での設備工事業者との揚重機共用は、工程、荷役安全、責任範囲などで利害が衝突します。
想定される利害関係者は、土木施工側、設備施工側、発注者、安全管理部門です。
衝突しうる利害は、揚重時間枠の取り合い、作業優先順位、安全責任分担、機材損傷リスクです。
調整では、週次工程会議での共有、日単位の揚重スケジュール化、緊急時対応ルール、責任区分を明文化することが求められます。
施工計画コンサルタントとしては、物理的制約条件を前提に、工程・安全・契約条件を一体で整理するファシリテーション能力が評価されます。


この問題では、技術的提案力に加え、計画の柔軟性と関係者調整能力を示せる答案が高得点につながります。

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模範解答1 専門科目 施工計画、施工設備及び積算  専門事項 施工計画  作成日 2024.8.11

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1.考えられる対策と評価軸での比較

1-1考えられる対策

(1)立坑内粘性土以深の底盤改良

 粘性土以深の底盤改良方法として、薬液注入工法や深層混合処理工法などを検討する。薬液注入で施工する場合、地盤の適用範囲が広く、地下水以深でも効果が高い水ガラス系を用いる。

(2)土留壁長の延長

 盤ぶくれを防止できる長さまで、土留壁長を延長する。土留壁構築工法では、原位置混合攪拌や置換などが考えられるが、土とセメントを原位置で混合・攪拌できるSMW工法を検討する。

1-2評価軸での比較

(1)工期への影響

底盤改良は、施工範囲が局所的であり大型重機への配置変更は不要である。土留壁延長は、当初より大幅に長くなれば、重機の規格変更が必要となる。立坑延長がL=200mと長いことから、工程に影響を及ぼす。

(2)コスト面での比較

 底盤改良は、局所的で済み長期耐久性に優れている。土留壁延長は、延長分のコンクリートや鉄筋量の増加が考えられるため、材料費や労務費に影響を及ぼす。

以上より、底盤改良を基本案として検討する。

2.変状対策

(1)計画段階(P)

 発生する変状として、掘削時の土留め壁頭部変位、周辺地盤のひび割れ、掘削完了時の底盤変位が挙げられる。頭部変位に対してはトランシット等の計測器を使用し、周辺ひび割れに対しては沈下計を設置し、底盤変位に対しては目視確認により計測を実施する。

(2)検証段階(C)

 許容値を設定し、定期的にデータ確認を行い、許容値内に収まっているか、許容値を超えているか評価する。掘削中や掘削完了時における地下水位の管理を行い、急激な水位上昇では、排水対策を実施する。

(3)是正段階(A)

 急激な土留壁の変形や底盤変位がみられた場合、掘削方法の変更を行う。変更方法として、掘削速度や掘削深さの調整を行い、周辺地盤への影響を最小限に抑える。また、地盤変状が地下水位に連動している場合、排水ポンプを増減させて、地盤の安定化を図る。

3.具体的な利害の調整方策

(1)設備工事業者

 設備工事業者と協議を行い、揚重機の使用スケジュールを調整する。各業者の工程から算出した使用計画を基に、使用時間や日時等について明確に割り当てる。

(2)下請負業者

 現場内の作業エリアを明確にし、楊重作業時には他の作業員が近づかいないように管理する。また、定期的な安全確認を行うことで、事故の発生を防止する。

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講評

この答案は、出題趣旨である「想定外の地盤条件に対する工法比較」「周辺地盤の変状対策をPDCAで整理」「施工ヤード制約下での利害調整」という3つの要素をしっかりカバーしており、全体として得点力は高い内容です。特に、盤ぶくれ対策で複数案を提示し、工期とコストの2軸で比較している点は、技術者としての合理的判断を示せており評価できます。

評価できるところ

  • 対策案の提示と評価軸の明示が明確で、意思決定プロセスが分かりやすい。
  • 変状対策をPDCAに沿って整理しており、計画・検証・是正の流れが論理的。
  • 利害調整の項目で、スケジュール調整や安全確保といった実務的観点が盛り込まれている。

改善点

  • 工法比較の評価軸を「工期・コスト」のみでなく、安全性・施工リスク・適用条件などもう1~2項目加えると、より説得力が増す。
  • PDCAの「検証」や「是正」部分では、計測頻度や判断基準値などの数値例を加えると、現実性と具体性がさらに向上する。
  • 利害調整では、発注者や安全管理者など他の関係者への情報共有体制にも触れると、マネジメント力をより強く示せる。

この受講生様は、技術的判断力と現場マネジメントの両面で基礎がしっかりしています。改善点を反映すれば、より総合点が高まり、実務経験を背景にした説得力のある答案となり、楽に合格水準を超える仕上がりになると考えます。

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模範解答2 専門科目 施工計画、施工設備及び積算  専門事項 施工計画  作成日 2025.4.28

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(1)  盤ぶくれ対策(2案)及び特性について

ディープウエル工法による地下水位低下と、掘削底

面に対する地盤改良工法である。

 前者は、広範囲の水位低下によって被圧水を低下させ盤ぶくれを緩和するが、A効果の安定性において、被圧帯水層の透水性や流動状況により予定の圧力低下が得られない可能性がある。B周辺への影響としても、大量用水により地盤沈下や井戸枯れのリスクもあり、市街地での適用が難しい。

 後者の地盤改良工法では、掘削底面直下に固化材を注入し、上昇水圧に対して直接的にせん断抵抗性を付加する。A効果の安定性においては、力の作用位置に確実井抵抗でき、対策効果も安定して発言する。B周辺への影響においても、施工範囲が限定されており、近接構造物や地下インフラへの影響を最小限に抑えられる。

(2)地盤変状防止に向けた(PCA)対策

2.1P(計画段階)で考慮すべき事項

掘削により変状防止するために、FEM解析に基づき、掘削進捗毎の支保工・切梁に発生する応力の増加傾向を把握し、切梁配置間隔の最適化や支保工剛性を設定する。特に重要構造物やライフラインの近接で変異が集中する箇所には、事前に地盤改良を実施して、初期変形の進行を抑制する構造とした。

2.2 C(検証段階)の具体的対策

施工中は、傾斜計・沈下計・ひずみ計・水位計などを用いて常時モニタリングを行い、設計時に設定した許容変位や水位と実測値を比較しながら管理する。する。

2.3A(是正段階)の具体的対策

①掘削中断と条件再検討

検証で想定から逸脱が確認された場合は、掘削を一中断し、応急対策(抑え盛土等)を実施し、支保工の設置タイミングやスパン条件を再検討する。

②構造的な是正措置

逸脱した条件で、再度設計見直しを実施して、掘削ステップの細分化と支保工の前倒し設置、中間支柱の追加によるスパン短縮、断面剛性の強化といった対策を講じ、再発防止を図る。

(3)揚重機共用における利害の本質と調整策

①利害関係者と利害の内容

工事施工者は支保工設置から掘削と連動し、短時間

揚重機使用が随時必要となる。一方、設備工事業者

は搬入時は荷下ろし・仮置きに一定時間の占有を要

し、作業タイミングと使用時間が衝突する。

②利害調整方策

 掘削区画を分割し、支保工設置中に他側で搬入する。また、搬入物の小口化し、クレーン使用時間を分散。さらに補助揚重機(ミニクローラクレーン等)を導入し、両作業の並列施工を可能にする。

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講評

この答案は、出題趣旨である「盤ぶくれ対策の比較」「地盤変状対策をPDCAPCAと表記)で整理」「揚重機共用の利害調整」を網羅しており、技術的な具体性と実務的な視点が明確に示されています。特に、盤ぶくれ対策では安定性と周辺影響という評価軸を設定し、それぞれの長所・短所を的確に述べている点は高く評価できます。

評価できるところ

  • 盤ぶくれ対策の比較で、安定性(効果の確実性)と周辺影響という明快な評価軸を設定しており、結論の根拠が分かりやすい。
  • 地盤変状防止策では、計画段階でのFEM解析や重要構造物近接部での事前地盤改良など、現場条件に応じた設計工夫が具体的。
  • 検証・是正の段階で、計測器の種類や応急対策の例を挙げており、実務での即応性を意識した記述になっている。
  • 揚重機共用の利害調整で、工程分割や作業時間分散、小型機導入など複数案を提示し、柔軟な解決策を示している。

改善点

  • 盤ぶくれ対策の比較で、工期・コストなど経済性の評価軸も加えると、技術判断の説得力がさらに向上する。
  • PDCAの表記は正確に「PDCA」とする方が試験での評価が安定する。
  • 利害調整の項目では、発注者や安全管理者との情報共有体制、共用計画の事前承認プロセスに触れると、マネジメント力の印象が強まる。

総合的に、この受講生様は施工計画の技術的理解と現場調整能力がバランスよく備わっています。評価軸の充実やマネジメント面の記述を少し加えるだけで、より高得点を確実に狙える答案になると考えます。

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Ⅲ-1
問題文

建設業が持続的に発展していくためには、建設工事従事者の処遇改善や働き方改革の取組を推進していくことで、新規入職者を推進し、将来の担い手の確保・育成を図っていくことが不可欠である。同時に、建設業を取り巻く昨今の厳しい環境変化に的確に対応しつつ、適正な請負契約の下で円滑に建設工事が実施される環境づくりも極めて重要である。このような状況を踏まえ、施工計画、施工設備及び積算分野の技術者としての経験と知見に基づき、以下の問いに答えよ。

(1)             建設工事従事者への適切な水準の賃金支払いを進めるに当たり、投入できる人員や予算に限りがあることを前提に、多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を具体的に示せ。

(2)             前問(1)で示した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。

(3)             前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

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問題文の解説

この問題は、施工計画・施工設備・積算の分野における技術者として、建設業の持続的発展に向けた人材確保・処遇改善と、円滑な工事実施のためのマネジメント能力を問うものです。単なる賃金引き上げの是非ではなく、限られた人員・予算の中での優先順位付けと多面的な課題分析が求められます。

(1) では、課題抽出にあたり「観点」を明確に書くことが重要です。たとえば、労務管理の観点では技能者の定着率や就労環境、コスト管理の観点では単価設定や積算精度、施工効率化の観点では機械化・省力化による生産性向上などが挙げられます。出題者は、この段階で受験者が課題を総合的に捉えられるかを評価します。

(2) では、抽出した課題の中で最も重要なものを一つ選び、その理由を簡潔に示した上で、複数の技術的解決策を提示します。ここでは施工計画技術や積算技術の具体語を用いることが望まれます。例えば「BIM/CIMによる施工計画の最適化」「歩掛の見直しによる積算の精緻化」「自動化施工機械の導入による労務費削減」などです。単に解決策を羅列するのではなく、技術的根拠や期待される効果を併せて説明することが得点につながります。

(3) では、提案した解決策によって新たに発生しうるリスクとその対策を論じます。ここでは「解決策の副作用を予見できる能力」が問われます。例えば、機械化による初期投資負担増、IT導入による教育不足や操作ミス、単価調整による下請負業者間の競争激化などが考えられます。その対策としては、ライフサイクルコスト分析による投資判断OJT・研修による技能習得支援、契約条件の透明化などが有効です。

施工計画のコンサルタントとしては、これらの課題を技術・コスト・人材マネジメントの三方向からバランスよく分析すること、さらに提案とリスク対応を一連のPDCAサイクルの中で位置付けることが、答案全体の完成度を高める鍵となります。

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模範解答1 専門科目 施工計画、施工設備及び積算  専門事項 施工計画  作成日 2025.7.2

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1.建設工事従事者への適正賃金支払いに向けた課題

(1)施工時期の平準化

 働き方改革の観点から、施工時期の集中を分散させて週休二日制の導入を促進する。設計段階から現場調査を実施し、プレキャスト部材を計画的に導入する。分割発注による前倒し施工を実施することで、年度末集中を緩和する。同種作業の工程を分離して、作業干渉の回避を行い、残業時間を減らし、長時間労働を抑制する。

(2)契約構造の透明化

 賃金の公正支払いの観点から、下請構造の明確化とICT活用により、適切な労務費支払いを実現する。施工体制台帳の整備と、ICTによる労務管理システムを導入することで、中間下請の抑制と設計労務単価の反映を図る。中間マージンの搾取を防止するため、一人親方との直接契約を推進し、技能労働者へ直接賃金の支払いを行う。

(3)通年雇用の実現

 担い手確保の観点から、閑散期業務を計画的に配分して、技能継承と人材定着を推進させる。点検・維持管理業務を閑散期に集中させ、通年雇用を確保することでOJTを継続し、若手技術者には社内研修を通じてOFF-JTを実施する。労務管理計画により、作業員配置の長期計画を作成し、技能労働者の雇用継続率を向上させる。

2.施工時期の平準化の解決策

(1)ICT施工の導入

 ドローンや3Dスキャナ、GNSS測量を活用し、現地確認や出来形管理の自動化によって作業効率を高め、省力化により、日数を最大40%短縮を実現する。測量業務では、定点確認や報告書作成を含めて、35人日の省力化が可能である。橋梁下部やダム等の点検業務では、仮設足場の設置・撤去が不要となり、一カ月程度の工程短縮が見込める。

(2)プレキャストの採用

 標準部材を設計段階で確定し、鉄筋や型枠作業を工場内で完結させ現場工数を30%削減するとともに、品質の安定化を図る。現場作業では、据付を中心とし作業工程を簡素化することで、躯体工事の工程短縮を行う。接合部の仕様や据付条件についても、設計段階で検討し現場に適した構造とする。設計成果物は、関係者間で共有し施工図に反映させて明確化する。

(3)BIM/CIMの活用

 施工手順・仮設構造を3Dモデル化し、干渉確認や納まり検討を事前に行い、関係者間で鉄筋加工図や工程計画を共有し、作業の手戻り工数の回避と協議迅速化を達成する。施工中は、タブレットを活用して確認体制を整備する。工事完了後では、点検・診断を定期的に実施し、3Dモデルにより履歴を保管し、今後の施設の更新に活用する。

3.新たに生じうるリスクとそれへの対策

(1)リスク:設計段階での判断負荷増大

 プレキャスト化やBIM/CIM導入により、設計段階での納まりや仮設構造に関する判断負荷が増大する。設計判断が熟練技術者に依存するため、若手技術者の技能習得機会が制限される。

(2)対策:段階教育と電子化による設計品質向上

①段階教育

 代表的施工条件に基づいた標準手順書を整備し、技能レベルに応じた段階教育を実施する。CCUSとの連携により教育管理体制を導入し、中堅技術者によるOJT体制を明確化することで属人化を防ぎ、技術継承を促進する。

②情報共有

 CDEによって、設計図・変更履歴を集約管理し、関係者が常時確認できる体制とする。現場ではタブレット端末を活用し、最新版を即時確認可能とする。設計図と実施工記録の突合せを自動化し、整合性確認と品質記録を同時に実現する。

③設計品質向上

 プレキャスト製品にIDを付与し、寸法・品質を電子管理することで、設計図と照合する。FMEAを設計に組み込み、過去の不良事例を分析し仕様へ反映する。ナレッジベースを構築し、設計変更の履歴管理を自動化させることで設計品質を向上させる。

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講評

以下の答案は、出題趣旨にしっかり沿っており、施工計画分野の技術応用とマネジメント視点が明確に盛り込まれています。
特に、施工時期の平準化を主課題に据え、その解決策としてICT施工、プレキャスト化、BIM/CIM活用といった実務的かつ最新の技術を体系的に提示している点は高く評価できます。
また、新たなリスクまで踏み込み、段階教育や情報共有基盤の整備といった持続可能な運用策を提示しており、得点力は十分に高いと判断できます。


評価できるところ

  • 課題抽出が明確で、観点(働き方改革・契約透明化・担い手確保)が端的に示されている。
  • 主課題の解決策が、最新の施工技術と省力化効果を具体的数値で示しており説得力が高い。
  • BIM/CIMCDEなど、情報共有・施工効率化のためのICT活用に踏み込んでおり、マネジメント力の高さが伺える。
  • 新たに生じうるリスクも現実的で、対策が教育・情報共有・品質管理の三本柱で整理されている。

改善点

  • 解決策に関する費用対効果や導入優先順位の説明が加わると、より計画としての説得力が高まる。
  • 契約構造の透明化については、第2問以降の技術的解決策にも少し触れると、全体の一貫性が強まる。
  • ICTBIM/CIMの活用事例が多い反面、従来工法との比較や現場適用時の留意点にも触れると、実務的厚みが増す。

総合すると、本答案は出題要求に的確に応え、実務経験に裏打ちされた提案力とマネジメント視点が十分に備わっています。
改善点を補えば、高得点での合格はもちろん、今後の業務提案書としても通用する完成度になると考えられます。

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模範解答2 専門科目 施工計画、施工設備及び積算  専門事項 施工計画  作成日 2025.5.26

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(1) 建設工事従事者への適正水準賃金支払推進の課題

.ICT活用による稼働率向上

建設業は、将来の担い手の確保が急務の中で、建設工程全体の生産性向上の観点から、ICTを活用した配置最適化や工程可視化の取組を実施し、技術者稼働率の向上を図る。測量・設計・施工・管理の各段階での導入が、労務生産性を高め、建設工事従事者への処遇改善と担い手確保につながり、建設業の安定した利益確保が実現する。

.先進施工技術の積算反映

積算制度の見直しの観点から、新技術・DX活用等の先端技術を適正に積算へ反映される体系を整備する。初期投資費用・省力化・CO2削減量等を定量評価し、加算評価できるような積算体制の構築を提案する。積算体系の見直しにより先端技術の資金原資が確保でき安定的に建設工事従事者へ分配できる。

.施工標準化による信頼度向上

施工の反復性向上の観点から、設計・施工の標準化により、品質・工程・安全の安定確保を図る。プレキャスト部材の規格統一、設計・施工マニュアルの整備を通じ、属人的判断への依存を低減する。導入により、再現性のある施工手順を確立し、生産性と信頼性を向上させることで、安定した利益確保につながる。

(2)1ICT活用による稼働率向上の解決策

1)仮設計画のCIM化による施工の合理化

現状の仮設計画では、重機配置や施工ヤードを2次元的計画となり現場担当者の経験則の依存度が高く、重機配置や動線が非効率となり稼働率にばらつきが生じていた。そこで、設計段階からCIMモデルを4D化して、干渉検証を行い、工程シミュレーションと連動することで、準備工・重機・資材動線を合理化し、重機稼働率の平準化・安全性の向上を図った。

2)ICT建機活用による重機自動化

ドローンによる空中撮影により地形状況の点群データを撮影し、AIにより自動解析を実施して、自動制御装置を搭載したICT建機に設計データを連動させることで、重機の自動化を行う。また、切盛土工の施工時は、土質データ等の属性を加えることにより、土配の高度化・効率利用を可能とする、また、技術者が直接作業箇所に立入らず、安全性・施工効率向上となる。

3)遠隔による管理の公理化

現場単独対応は、労働時間制約・担い手不足により、夜間・給仕などの対応遅れ、個々の判断による属人化が問題である。そこで、施工データやカメラ映像を支店側で一元的にモニタリングし、複数現場の状態を横断的に把握し、映像はAI補助により異常動作や未稼働時間を検出し、安全・品質・工程を包括的に管理することで、現場負担の軽減と初動対応の迅速化を両立・管理標準化することで、定量的な判断基準となる。

(3)新たなリスクと対策

1-1)リスク

ICT導入工程で工程促進した内容が、次工程の従来作業に反映されず資材・技術者の配置が遅延し、結果とし待機時間が発生し、工期コストが逆に増加する。

2-1)解決策

現場からCIMモデル上に施工実績を逐次反映させ、支店側で即時に対応・更新できる体制とする。また、支店では工種別の予定・実施の差や変更要素を自動修正し、工程会議等でタクトを再調整する。CIM上で次工程への影響をシュミレーションし、施工計画を即時に更新することで、全体調整のPDCAを確立する。

1-2) リスク

ICT建機やBIM連携が前提となる現場では、地盤条件のバラツキやデータ取得時間差の現地変化により、設計データと実施工の齟齬が生じる。

たとえば、地盤の土砂と軟岩境界が想定より浅い場合、自動掘削の能力的な問題で、施工不良を引き起こすことにより、待機時間が発生し、工程遅延となる。

2-2)対策

現場では、施工実データをリアルタイムで取得・分析し、設計との乖離が検知された場合は現場側が即時に施工条件を補正できる体制を構築する。また、事前地盤調査を追加実施し、初期リスク低減に努める。工程BIMと連携し、映像情報と施工進捗を統合的に把握し、誤判断を避け効率的なマネジメントを実現する。

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講評

この答案は、全体的に出題趣旨を的確に捉えており、施工計画分野におけるICTCIMBIMなど先進技術を中核に据えた生産性向上策が整理されている点が高く評価できます。
特に、課題抽出から解決策、さらに新たなリスクと対策までが論理的につながっており、技術者としての現場実務とマネジメント視点がバランスよく表れています。


評価できるところ

  • 課題設定が具体的で、ICT活用・積算反映・標準化という三つの切り口が明確。
  • 主課題の解決策において、CIM4D化による工程可視化AIを活用した遠隔管理など、最新技術を実務適用する具体像が示されている。
  • 新たに生じるリスクも現実的で、工程調整やデータ齟齬といった実務上ありがちな事象を取り上げている。
  • 対策がPDCAやシミュレーション、リアルタイムデータ活用など体系的に整理されており、マネジメント力が高い。

改善点

  • 課題「先進施工技術の積算反映」が第2問以降に反映されていないため、答案全体としての一貫性がやや弱まっている。解決策の中に積算・契約面の具体策も一部組み込むと説得力が増す。
  • リスクと対策は実務的だが、優先度やコスト影響の評価が入ると、計画の実効性がさらに高まる。
  • ICTCIM/BIMを強調しているため、従来工法やアナログ手法との比較や、現場適用時の教育・習熟期間の課題にも軽く触れると現実味が増す。

総合すると、この答案は技術的な深みとマネジメント的な広がりを兼ね備えた高得点が期待できる内容です。
改善点を補えば、施工計画技術者としての先進的かつ実務的な提案力を示す模範答案となるでしょう。

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Ⅲ-2
問題文

建設会社、建設コンサルタント、調査・測量会社等の建設関連企業は、自然災害が発生した直後からインフラ施設の管理者である国、自治体、民間企業等からの要請、指示、委託等を受け、インフラ機能の早期回復や被災影響の低減を図るうえで必要不可欠な役割を果たしている。今後、気候変動による被災の激甚化・頻発化が懸念されるなかで効果的に災害応急対策を実施するには、被災状況に応じて、利用可能な資源を適切に割り当てる等の調整・マネジメントを実施したうえで、適切な契約を行うことが極めて重要である。このような状況を踏まえ、施工計画、施工設備及び積算分野の技術者としての経験と知見に基づき、以下の問いに答えよ。

{C}(4)             災害応急対策を実施するため、インフラ施設の管理者と建設関連企業が契約を締結するに当たり、投入できる人員や予算に限りがあることを前提に、多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を具体的に示せ。

{C}(5)             {C}前問(1)で示した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門用語を交えて示せ。

{C}(6)             {C}前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

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問題文の解説

この問題は、自然災害直後の災害応急対策契約において、施工計画・施工設備・積算の立場から、限られた人員や予算の中で資源を最適配分し、契約から実施・リスク対応まで一貫して構想できる力を問うています。

出題者は、単なる技術解答ではなく、マネジメント力・調整力・契約運用の実効性を重視しています。
1問では「人員配置」「予算制約」「契約条件」「資機材確保」「情報共有体制」などの観点から課題を具体的に示すことが重要です。施工計画の観点では、緊急度や優先順位付け、即時投入性、複数現場対応力を明確化すると効果的です。

2問では、抽出課題への複数解決策を技術的に提示します。例として、BIM/CIMによる施工シナリオ事前作成、資機材ストックポイント分散、モジュール化機械の活用、緊急時単価契約による迅速発注などが挙げられます。限られたリソースを最大活用する方法を具体化することが鍵です。

3問では、想定外の被災規模やアクセス困難、契約解釈の齟齬など新たなリスクを設定し、予備契約や代替資源リスト化、事前訓練、マニュアル共通化などで予防・対応策を示します。施工計画コンサルタントとしては、契約条件と施工リソース計画の整合性即応性と安全性の両立が特に着眼点となります。

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模範解答 専門科目 施工計画、施工設備及び積算  専門事項 施工計画  作成日 2025.5.22

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1.災害応急対策を実施するための課題

(1)即応性を担保する契約手法の整備

 契約手続き遅延により初動が遅れる。包括契約により迅速な対応を図る。公共インフラを守る社会的責任を果たすための迅速対応の観点から、従来の随意契約に加え、災害直後に即時対応できる包括契約や事前協定契約を平時から締結する。これにより、応急対策工事の発注手続きの簡素化と早期着手が可能となり、関係者が迅速に運用できる体制を構築する。

(2)広域的なリソース配分体制の構築

 人員・資機材の手配は、災害発生直後であり工期が遅れる。社会資源を有効に活用する協調的マネジメントの観点から、作業を計画通りに進めるため、人員・資機材を最適配分する。そのためには、技術者や資機材情報の台帳を事前に整備・共有し、広域的に連携できる情報連絡体制を構築する。

(3)初動対応における権限・役割の明確化

 権限・役割が明確でなく、指揮命令系統が混乱する。工事の方向性が決まらず、協働作業が進まない。協働体制構築の観点から、災害初動時における施設管理者と建設企業との役割分担や判断権限を明確にした「合同行動容領」等を整備し、現場での判断と行動が一体的にできる体制を構築する。

2.「広域的なリソース配分体制の構築」の解決策

広域支援ネットワークの構築を基本方針とし、以下3点によりその実現を図る。

(1)リアルタイム情報に基づく動的資源配分

ドローン・IOTICTを連携させ、各現場の被災状況とリソース稼働情報を可視化・共有する。可視化・共有は、写真を大量に撮影し、三次元図面を作成することで、応急対応における最適な配置判断を即時に行う。そのため、初動対応から多くの人員を送り込むことなく、全体計画を見据えた上で、最適な人員による作業が可能となる。

(2)相互支援協定の整備と共通台帳の運用

事前に災害協定を締結し、支援可能な人材・資機材の登録制度を整備し、人材や資機材を融通できる共通台帳と運用ルールを構築する。共通台帳に基づき、必要なリソースの所在と稼働状況を即時に把握・手配できる体制とする。速やかに支援するため、台帳はある程度のエリアで分けることとし、災害が発生したエリア内で動的資源を配分する。

(3)マルチスキル人材の育成と柔軟配置

応急復旧に対応可能な多能工的技術者を養成し、状況に応じて広域的に投入できる機動力の高い人材を育成する。応急工事では、スピード感を持った対応が求められている。なお現場では、瞬時に的確な判断を行い、作業を実施する能力を持った人材が必要である。これらの人材は、共通台帳に基づき多能工が実行し、ドローン・ICTがその裏付けを支える。

3.新たに生じうるリスクとそれへの対策

(1)新たに生じうるリスク

被災直後には、道路寸断や通信障害等により、災害発生個所へのアクセスや現地状況の把握が困難となる。ドローン映像のみでは、地下構造の損傷や液状化兆候を十分に把握できず、現場状況との乖離が生じる。これにより、リソース配分判断を誤り、応急作業の遅延や二次被害を引き起こすリスクが発生する。

(2)それへの対策

①現場初動班によるスクリーニングと簡易評価

 ポケットレベル・クラックスケールなどの簡易機器を用いて、現地状況を即時評価する。また、「傾斜角15度超」「亀裂幅3㎝超」等の基準で危険度を判定し、現場判断力を補強する。

②災害種別ごとの現場裁量ルールブック整備

 土砂災害・洪水・地震等に応じて、退避基準・応急通路の設置基準・作業継続判断を明文化する。また、通信不能時にも、自律的に行動できる指針として活用する。

③情報源の冗長化と経験値の活用

 衛星通信端末や仮設基地局を活用して多重通信体制を構築し、通信途絶リスクを軽減する。また、液状化兆候・流木堆積・地盤クラックなどを識別する訓練を実施し、異常検知能力を向上させる。

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講評

この答案は、出題趣旨である「限られた人員・予算の中での災害応急対策における契約・マネジメント・技術的対応」に的確に答えており、課題抽出、解決策提示、リスク対応まで一貫性があります。特に、即応性・広域的資源配分・役割明確化という3つの課題設定はバランスが良く、実務経験を踏まえた説得力のある内容です。


評価できるところ

  • 課題設定が明確で、観点(即応性・資源配分・権限明確化)が明示されており、論点がブレていない。
  • 解決策は技術面(ドローン・ICTIoT活用)とマネジメント面(協定、台帳、マルチスキル人材育成)を組み合わせ、現実性と先進性の両立ができている。
  • リスク部分で「地下構造や液状化兆候の見落とし」という具体的事例を挙げ、机上の空論に終わらない危機感と対応策を示している。
  • 対策が段階的(初動班ルールブック情報冗長化)に整理されており、施工計画技術者としての整理力が高い。

改善点

  • 技術用語や事例がやや多く、読み手によっては全体像の把握に時間がかかるため、最初に全体の狙いを短く提示するとさらに説得力が増す。
  • 「包括契約」「共通台帳」など重要キーワードについて、簡単な効果説明や導入時の留意点も添えると、審査側への理解が深まる。
  • 広域資源配分の部分で「優先順位の判断基準」を一文で示すと、マネジメント方針がより明確になる。

総合評価
実務性・技術性・マネジメント性の三拍子が揃った答案で、現状でも高得点が期待できます。改善点を踏まえれば、より短時間で読み手に意図が伝わる構成となり、楽勝で合格圏に入る内容です。現場経験と俯瞰的マネジメント力が強みとして光っています。

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上下水道部門 必須科目

Ⅰ-2

問題文

我が国においては、上下水道の普及が進むなかで、平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震。令和6年能登半島地震など浄水場や下水道施設の被災事例が見られ、上下水道施設の耐震化の加速が重要な課題である。こうした状況の下で、以下の問に答えよ。(1)上下水道施設(特に浄水場、下水処理施設)の耐震化を加速するうえで、技術者としての立場で多面的な観点から上下水道施設に共通する技術的課題を3つ抽出し、その内容を観点とともに示せ。(2)前門(1)で抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、上下水道の専門技術用語を交えて示せ。(3)前門(2)で示したすべての解決策を実行しても残るリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考え方を示せ。(4)業務遂行に当たり必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

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問題文の解説

この問題は、上下水道施設(特に浄水場・下水処理場)の耐震化をテーマに、施設の共通課題の抽出最重要課題の解決策提示実行後に残るリスクとその対応技術者倫理や社会的持続可能性まで、一連の技術的・マネジメント的思考を問うものです。


まず(1)では、上下水道施設の構造・機能・運用に共通する耐震上の弱点や課題を、観点とともに3つ整理する必要があります。観点は例えば「構造耐震性」「機能維持性」「復旧容易性」などが想定されます。単に施設の種類ごとの個別課題ではなく、浄水場と下水処理場の両方に共通する技術的視点で挙げることが重要です。

次に(2)では、その中から最も重要な課題を選び、複数の解決策を上下水道の専門用語を交えて提示します。例えば「重要機器の免震化」「配水・送水管の耐震継手化」「沈砂池や最終沈殿池の耐震補強」などが想定されますが、単なる名称列挙ではなく、耐震設計指針や水理機能維持の観点から理由づけすることが評価されます。

3)では、提示した解決策をすべて実施しても残るリスクを想定します。ここは「対策後も完全には防げない被害」の想定力が問われます。例えば想定外地震動による機器故障、長期停電による運転停止、資材・人員不足による復旧遅延などです。それに対して、BCP(事業継続計画)や代替施設利用、応急処置手順など、運用面での補完策を提示することがポイントです。

最後の(4)では、技術者としての行動指針を倫理・持続可能性の観点から述べます。例えば、「安全最優先の設計・施工」「公共インフラとしての公平性確保」「長寿命化・省エネ化による環境負荷低減」などです。ここでは社会的使命感と長期的視点が評価されます。

上下水道のコンサルタントとしては、

  • 構造安全性だけでなく機能の維持・復旧力に着目すること
  • 設備・配管系統・制御系統の総合的耐震化を検討すること
  • 技術的提案とあわせて資源制約下での優先順位付けを示すこと
    が特に重要となります。

全体として、単なる構造補強案ではなく、技術・マネジメント・倫理を統合した耐震化戦略を示すことが、得点力向上の鍵となります。

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模範解答 専門科目 下水道  専門事項 下水渠  作成日 2025.7.13

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{C}(1)         {C}重要課題とその内容

{C}1)     {C}優先的な耐震化整備計画

耐震性能強化の観点から、基幹施設である浄水場、配水池、処理場、ポンプ場は、耐震化率が低く地震時の機能維持が困難である。技術的課題として、耐震化基準の適用が新設にかたより、既存施設の改修が進まない。特に老朽施設の耐震補強に高度な技術と費用が必要である。そのため、機能重要度と被災リスクから優先的順位付けを行い、段階的に経済性を考慮し、耐震診断・補強技術(例:鋼製ブレースの追加、補強鉄筋打ち増し等)を用いて整備を推進する。

{C}2)     {C}監視・維持基盤DX推進

運用効率化と災害対応力の観点から、浄水場・処理場は、運用管理におけるデジタルトランスインフォメーションが進ます、災害時の迅速な対応や効率的な維持管理が困難である。そのため、施設の状態把握、点検、災害時の被害予測、復旧判断を可能にするデジタル基盤(Iot,GIS,BIM)用いて災害時の復旧を迅速化しつつ、施設全体のライフサイクルマネジメントを効率化する。

3)浄水場・処理場の老朽施設持続的な維持管理対応

維持管理と機能継続の観点から、浄水場や処理場が耐用年数を超過し、災害時の破損リスクと、維持管理能力が低下し処理できない災害時に影響が出る。そのため、耐用年数を超過した施設の浄水場・処理場に対しストックマネジメント手法に基づく診断と耐震補強等の優先順位行い計画的に維持管理を図る。

 (2) 最も重要な課題と複数の解決策

最も重要課題は「優先的な耐震化整備計画」である。

{C}1)  {C}浄水場・処理場の重要施設の優先順位付け

重要施設を水道の浄水場、配水池、取水施設、下水道の処理場ポンプ場などシステム全体の機能維持に不可欠な施設を対象に耐震診断を行ない、更新計画を策定・実施する。なお、基幹施設を優先順位化し、耐震結果に基づいて鋼製ブレースや免震構造の導入を含む補強工事も段階的に実施する

{C}2)  {C}浄水場・処理場の再構築 

施設老朽化を解消するため、単純補強でなく機能統合・地域広域化により浄水能力向上を含む再構築とし・耐震性能・BCP対応力・維持費低減を図る等の総合的向上を図る。

{C}3)  {C}浄水場・処理場の処理方式変更

下水処理場を膜分離活性汚泥法に変更し、処理能力水質確保を維持しつつ、構造物のコンパクト化と施設の耐震施設容易化を図る。

4)簡易施設の活用

簡易処理施設を分散配置し大規模災害時の代替え機能として活用することで、冗長性を確保したレジリエンスとして向上させる。

3)解決策を実行しても生じるリスクそれへの対応

1)リスク

新規浄水場・処理場は、既存施設と新システム併用し稼働しているため、管理が併用となり技術者の誤作動により、処理能力が低下し危険を及ぼす。

2)対策

最新のDXAIを活用し、操作性の向上を図る。また、異常流入時にはAI解析で沈砂池やポンプの操作自動調整し、早期異常検知を可能とする。さらに、スマート管理・データ解析・遠隔監視等のDXを多様化する。

(4)業務遂行において必要な要件、留意点

1)技術者倫理

技術者倫理の観点から、耐震化設計において、浄水場のポンプ停止による断水や処理場の停止で及ぼすリスクを最小化し、設計振動を超える余裕を持たせた構造設計や冗長性からバックアップ電源を徹底し、上水道の停止が復旧遅延や二次災害しないように安全マージンを確保する。

2)社会の持続可能性

社会の持続性の観点から、技術者として耐震化工事で使用する資材(例コンクリート、鋼材)の環境負荷を低減するため、再生資材(例リサイクル骨材、高炉セメント)や低炭素コンクリートを優先採用する。また、施工のエネルギー消費を抑えるためCO2排出を低減した重機を使用する。これは、SDGsの住み続けられる街づくりに相当する。

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講評

この答案は、上下水道施設の耐震化をテーマに、出題の4設問に沿って一貫性のある構成でまとめられており、技術的視点とマネジメント視点がバランス良く盛り込まれています。特に、上水道と下水道に共通する課題設定や、BCP・広域化・処理方式変更などの複数の解決策提示は評価できます。

評価できるところ

  • 課題抽出が「耐震化計画」「DX活用」「老朽施設維持管理」と明確に整理され、観点と内容がはっきり示されています。
  • 最重要課題として耐震化計画を選定し、優先順位付けから再構築・処理方式変更・冗長化まで多面的に解決策を展開している点は高得点につながります。
  • リスクと対応策の部分で、DXAI活用による操作性向上や異常検知の仕組みまで言及しており、現代的かつ実効性のある提案になっています。
  • 技術者倫理や持続可能性の観点も具体的で、SDGsとの関連づけまで踏み込んでおり、社会的責任を意識した記述になっています。

改善点

  • 課題や解決策の説明の中に、やや具体的設備名称や工法の列挙が多く、全体の論旨に対する因果関係や優先順位の説明が薄れる箇所があります。理由づけを簡潔に補うと、さらに説得力が高まります。
  • 「再構築」「処理方式変更」など大規模投資を伴う解決策については、実施条件や段階的導入の視点を加えると現実性が増します。
  • リスク対応策におけるDXAI活用は優れた方向性ですが、耐震化という本テーマとの関連性をもう一歩明確にすると、採点者への印象がより強くなります。

総じて、この答案は出題意図に的確に応えており、上下水道の耐震化を構造・機能・運用の三位一体で捉えている点が強みです。改善点を踏まえれば、さらに完成度が高まり、十分に高得点が狙える内容です。

 上下水道部門 下水道

Ⅱ-1-2
問題文

地震よる液状化現象によりマンホールが浮上するメカニズムについて説明し、浮上防止対策を述べよ。

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問題文の解説

この問題は、地震時の液状化によって発生する下水道施設被害のうち、マンホール浮上に焦点を当てています。出題者は、現象の物理的メカニズムを理解し、その上で現場条件に応じた効果的な対策を提案できる能力を確認しようとしています。

着目すべきは、液状化の発生条件(地下水位の高さ、地盤構成、地震動強さ)と、浮上の力学的要因(浮力と自重のバランス、周囲地盤の支持力低下)です。コンサルタントとしては、単に現象を説明するだけでなく、施工条件や維持管理体制に適合した防止策を検討できる視点が求められます。

浮上防止策の検討では、

  • 構造的対策(マンホールの重量化、アンカー固定、周囲地盤の改良)
  • 地盤対策(地下水位低下、透水性の改善、液状化対策工法の採用)
  • 設計段階でのリスク評価(液状化予測、浮上力計算)
    など、多面的な方法を比較し、コストや施工性、維持管理性を踏まえた最適案を提示する必要があります。

また、対策は新設と既設で適用可能な工法が異なるため、その適用条件を明確に示すことも重要です。さらに、地震後の迅速な点検・復旧の仕組みを併せて提示することで、より実務的で高評価となります。

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模範解答 専門科目 下水道  専門事項 下水渠  作成日 2024.10.24

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(1)マンホール浮上のメカニズム

1)地下水圧の上昇

地震で地盤が振動すると、間隙水圧が上昇し、土粒子同士の摩擦力が低下する。これにより、地盤が液状化し、マンホールが周囲の土よりも軽いので浮上する。

2)マンホールの重量不足

マンホールはコンクリート等で作られ、液状化が発生すると周囲の液状化した土に比べ軽いので浮上する。

3)土の支持力低下  

液状化によって土の支持力が低下、マンホールが埋設状態で保持できない、結果として地表に浮上する。

(2)マンホール浮上の防止対策

1)地盤改良

管路周囲の地下水位以下の地盤をセメントの改良剤で周囲地盤を締固め、せん断強度増加で液状化を防ぐ。

2)過剰間隙水圧消散

砕石ドレーンによる地中杭等を構築し、間隙水を地下水位の上あるいはマンホール内へ排水させ、地震時の過剰間隙水圧発生を抑制する。

3)アンカー

マンホール底部等から非液状化の支持層へアンカーを設置し、過剰間隙水圧による本体の浮上に抵抗する。

4)重量化

管渠をコンクリート基礎やマンホールも底部を打ち増し・既製品ウエイト等重量増しで浮き上りを防ぐ。」

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講評

この答案は、出題趣旨である「液状化によるマンホール浮上のメカニズム理解」と「具体的な防止対策の提示」にしっかり対応しており、得点力は高い内容です。現象の因果関係が簡潔かつ論理的に整理されており、基礎的理解の確かさが感じられます。

評価できるところ

  • メカニズムを「地下水圧上昇重量不足支持力低下」という流れで整理しており、理解しやすい構成になっています。
  • 対策は「地盤改良・排水・アンカー・重量化」と主要な手法を網羅しており、新設・既設双方で適用可能な工法が含まれています。
  • 専門用語を適切に使用しており、技術者らしい説得力があります。

改善点

  • メカニズム説明において、「浮力と自重の関係」や「アーキメデスの原理」など力学的視点を補足すると、より説得力が増します。
  • 対策については、それぞれの長所・短所や適用条件(例:都市部既設下水道での施工制約)を簡単に示すと、実務的な比較検討能力が伝わります。
  • 「過剰間隙水圧消散」については、砕石ドレーン以外の代表例(サンドコンパクションパイル等)も触れると、提案の幅が広がります。

総じて、基礎理解と提案力のバランスが良く、このままでも高得点が期待できます。上記のように力学的説明と適用条件を加えれば、満点レベルの答案になる可能性が高いです。

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Ⅱ-2-1
問題文

近年では、気候変動の影響と思われる短時間による集中豪雨や長時間に及ぶ降雨が発生するなど雨の降り方が変化しており、生命や財産を脅かすような甚大な浸水被害が増加している。中核都市Aでは、ライフラインなどの社会基盤が整備され都市機能が発達した結果、中心部においては地下街の活用を含め駅や商店街などの都市機能が集積し、周辺部においては河川沿いや低地にまで住宅が建ち並ぶなど、浸水に対する危険度が高まっている。こうしたことから、都市内における内水氾濫に対する安全度の向上を目指して、効果・効率的な施設整備を進めるため、計画的を策定することとなった。あなたが、この業務に担当者に選ばれた場合、下記の内容について記述せよ。(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。(2)業務を進める手順とその際に留意すべき点、工夫を要する点を述べよ(3)業務を効率的、効果的に進めるため、関係者との調整方策について述べよ。

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問題文の解説

この問題は、都市部の内水氾濫対策を対象に、現状把握から計画策定までの一連のプロセスを、下水道技術とマネジメントの両面から問う内容です。出題者は、短時間豪雨や長時間降雨による浸水被害の増加を背景に、都市特性に応じた効果的・効率的な施設整備計画を立案できる能力を評価しようとしています。

まず着目すべきは、(1)調査・検討項目の体系的整理です。降雨特性や流域特性(地形・土地利用・排水系統)に加え、既存雨水排水施設(ポンプ場、貯留施設、管路)の能力評価、浸水履歴、被害想定、経済性評価などを調査対象とする必要があります。特に、下水道コンサルタントとしては、流出解析モデルや確率降雨解析を用いた現況安全度の把握が重要です。

次に、(2)業務手順と留意点では、現況調査モデル構築課題抽出対策立案評価・優先順位付けという流れを明確に示し、限られた予算や工期の中で段階的整備を行う視点が求められます。モデル解析では地下街や低地住宅地など重要エリアの被害低減効果を重点評価し、景観・交通・施工制約など都市固有の条件を考慮することも大切です。

さらに、(3)関係者調整方策では、市や下水道管理者、河川管理者、商業施設管理者、地域住民など多様な利害関係者間の合意形成が不可欠です。浸水リスクや整備効果をわかりやすく可視化し、説明会やワークショップで共有することで、計画への理解と協力を得やすくなります。

全体として、調査・解析・合意形成の各段階を論理的に構築し、技術的根拠と社会的受容性の両立を図る姿勢が重要です。

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模範解答 専門科目 下水道  専門事項 下水渠  作成日 2025.4.13

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(1)調査検討すべき事項とその内容

1)被害調査と重点地区の検討

内水氾濫やバックウォーターの浸水被害は、浸水被害や現時点の施設整備状況やと土地利用状況を調査し、雨水出水想定区域を作成する。内水氾濫の規模を評価し、河川沿い住宅や低地部・地下街や商店街など浸水危険度に応じて重点整備区域を設定する。

2)計画降雨に対する安全性の検討

計画降雨は浸水実績降雨を調査し、地域に対して計画降雨レベル1により管渠の圧力状態を許容し解析評価する。気候変動を考慮した照査レベル1´で解析し、既存施設の貯留施設やポンプ場を評価して検討する。

3)都市内の既存施設調査・検討  

既存施設活用ため、樋門やゲートを調査し遠隔化や自動化の導入を検討し操作性の評価を図る。河川に水位センサー設置や水位評価を行い、既存地下貯留施設や雨水ポンプ場の運転状況を調査確認する。逆止弁設置やゲートポンプ増強による排水能力向上検討する。

(2)業務遂行順と留意・工夫点

1)浸水履歴の収集とリスク分析と重点地区特定

過去の浸水履歴や降雨データを基に、浸水リスク分析し重点地区を決定する。短時間豪雨・長時間降雨の照査降雨を設定し、施設のリスク評価を行う。

2)既存排水施設の能力評価

浸水シミュレーションで表面流モデルと管内水理モデルより、管渠内圧力状態や逆流リスクを評価することで、管渠能力不足や貯留容量把握し、施設整の優先順位を設定する。既存の管路網をネットワーク計画する。気候変動を考慮し増加降雨を、新規ポンプ場や貯留施設容量・バイパス管等施設の優先順位を策定する。

3)排水施設対策の立案と技術選定

各重点地区に応じて、バイパス管・貯留施設追加・管渠の増強等段階的な改善計画を図る。操作性向上を図るため遠隔操作や早期警戒システムの導入を進める

4)施設整備計画の策定

施設の新設・増設・改善に際し、コスト・工期を踏まえた整備優度を明確にし、短期。中期、長期と予算に合わせて実効的な段階的整備計画を策定する。

(3)関係者との調整

)河川管理者との調整

河川管理者とは、樋門ゲートの手動操作で内水氾濫が発生したため、遠隔制御導入し河川水位センサー設置と連動した自動開閉システムを協議し、河川水位低下しだい自動開閉で内水氾濫被害の軽減が図れる。

2)下水道管理者との調整

既存管渠の流下能力と貯留機能を最大限に活用するため、管内シミュレーションで評価し、RTCによる流下制御で最適配置を提案する。これにより、下水道課は、合理的な設備導入を進めるやすくなり、結果として局所的な内水氾濫の抑制が可能となる。

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講評

この答案は、出題趣旨に沿って調査・解析・計画・調整の各段階を丁寧に構成しており、総合的に高得点が期待できる内容です。特に、浸水リスク分析施設能力評価改善計画関係者調整の流れが明確で、技術的裏付けも適切です。

評価できるところ

  • 調査項目が被害状況、計画降雨、安全度照査、既存施設活用と多角的であり、内水氾濫対策の要点を網羅しています。
  • 技術面では、流出解析や管内水理モデル、RTC(リアルタイム制御)等の専門用語を適切に使い、解析と施設整備を結び付けています。
  • 関係者調整において、河川管理者との遠隔制御化や自動開閉システムの提案など、具体的で実現性の高い方策を示しています。

改善点

  • 調査・計画の優先順位や段階整備の判断基準が、もう少し定量的(例えば浸水深や被害額による順位付け)に示されると説得力がさらに増します。
  • 関係者調整部分で、住民や商業施設管理者など利用者側の合意形成や説明方法にも触れると、社会的受容性の観点が加わり評価が高まります。
  • 技術選定の部分で、各施設整備案の効果比較やコスト評価の視点を簡潔に添えると、マネジメント能力がより明確になります。

総じて、この答案は技術的な網羅性と論理的構成がしっかりしており、改善点を補えば楽に合格水準を超える力を持っています。特に、リスク評価と計画優先度の定量化を加えれば、より完成度の高い答案になります。

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Ⅲ-2
問題文

分流式下水道を採用しているD市の公共下水道において、計画降雨を超過しない降雨の際に、雨天時侵入水によると考えられる流量の増加に伴い、汚水幹線管きょのマンホールから溢水が発生する事態となった。対策を検討するに当たり、以下の問いに答えよ。なお、D市においては、近年、計画降雨の見直しは行われていない。(1)下水道技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考え方を示せ。

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問題文の解説

この問題は、分流式下水道で計画降雨以下の降雨にもかかわらず汚水幹線から溢水が発生する原因を分析し、技術的かつマネジメント的に解決策を提示する力を問うています。出題者は、雨天時侵入水(I/IInflow/Infiltration)問題への理解と、それに伴う施設能力評価や維持管理計画策定の能力を評価しようとしています。

まず、課題抽出では「水理的能力不足の観点(管きょ断面不足や流下能力低下)」「施設劣化や不適切な接続の観点(ひび割れや誤接続によるI/I流入)」「計画条件や維持管理基準の観点(計画降雨条件や流入特性の更新不足)」など、多面的な整理が必要です。単に雨水混入を疑うだけでなく、計画条件と現状の乖離を評価する姿勢が重要です。

次に、最重要課題の選定では、原因特定がすべての対策の出発点であるため、I/I流入の定量化と発生箇所の特定を重視すべきです。解決策は、CCTV調査や管内流量計測、管渠更生(SPR工法やライニング)、マンホール蓋の気密化、宅内排水設備の適正化指導など、調査・改修・管理の複合的対応が求められます。

また、全対策実施後にも残るリスクとして、未把握の流入経路や異常気象時の再発が考えられます。そのため、モニタリングの継続、流量監視システム導入、計画降雨の見直しといった長期的PDCAが必要です。

コンサルタントとしては、原因分析の精度向上と費用対効果を意識しつつ、技術的改善策と管理運営の両輪で再発防止策を組み立てることが評価ポイントになります。

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模範解答 専門科目 下水道  専門事項 下水渠  作成日 2025.6.15

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{C}(1)         {C}重要課題とその内容

{C}1)     {C} 施設老朽化による雨天時侵入へ対応

施設の水密性の観点から、雨水が蓋等からの直接流入水と老朽管渠の継ぎ目やクラックから侵入する浸透浸入水により不足で蓋や桝から溢水する。D市全体の流入水の特定が困難となっている。そのため、雨天時侵入、発生流域をCCTV調査等水密の定量評価し、施設管渠の更生や貯留施設を計画的に対応する。

2)          維持管理情報の未活用による対応遅延

維持管理の観点から、雨天時侵入水による発生修理対応や管渠点検・目視情報などの事後保全対応で施設管路されて溢水減少されない。そのため、D市施設全体のストックマネジメントとして、維持計画が必要である。施設のネットワ-ク体制を強化し、情報集約・分析し、施設管理へ体制を構築する。

3)都市化と気候変動を踏まえた雨水排水計画

流域雨水管理の観点から、都市化による不浸透領域の拡大や気候変動による短時間豪雨の頻度によるもので溢水が増加している。そのため、雨天時侵入増加を、流域全体で雨水排水の全体計画の見直しが必要である。雨水浸透や調整池等雨水流出量の削減を図る。

 (2) 最も重要な課題と複数の解決策

最も重要課題は、老朽化施設からの雨天時侵入水への対応である。

{C}1)  {C}老朽施設の改築更新

水密性が低下した管や桝・取付管などCCTV調査など侵入源を特定し、改築更生工法(SPR工法・スリップライニング工法)による水密性を抑制し、それでも残る部分を貯留する。

2)流域単位で雨天時侵入水発生流域の流域解析

降雨時の流量量と処理量の比較より、流入が顕著な区域を抽出し、対象区域を集中的に整備する。さらに、管きょ能力増強し全体的な雨水整備を行う

3)一時貯留の確保

貯留施設の整備として、管渠の流下型貯留・処理場敷地内施設における貯留施設・一時的な貯留施設の整備し流量緩和を行う。

4)ポンプ場の強化:

ポンプ場の運転管理の強化を図り、降雨に備えた自動運転制御体制を構築する。さらに、不足個所へ新規ポンプ施設増加を図る。

5)侵入源の調査特定

領域内の雨天時侵入水の流域を特定するため、CCTV調査や誤接続調査・温水調査等診断技術活用し、流域を特定する。

3)全ての解決策を実行して生じるリスクと対応

1)生じるリスク

幹線管渠やポンプ能力の増強を行うことにより、下流側の処理場や合流点に流量が集中し処理場の能力が不足するリスクが発生する。

2)対応

①処理場能力増強

対応として処理場に流量調整池の設置・消毒設備の設置・沈殿能力の増強を行う。

②ポンプ能力の増強

雨天時侵入水の増加により、処理できない分をポンプ増強により分配貯留する。

③管渠貯留

処理場前に分水人孔から貯留管渠へ分水貯留する。降雨後ポンプで処理場へ排水する。

④高速ろ過設備の設置

処理場の処理能力が不足するため、」高速ろ過施設を設置し、処理を行う。

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講評

この答案は、出題趣旨である「計画降雨以下での汚水幹線溢水発生」という現象に対し、雨天時侵入水(I/I)への技術的対応を中心に、調査・解析・施設整備の方向性を多面的に提示しており、基本的な得点力は高い内容です。課題抽出も「施設老朽化」「維持管理情報活用不足」「都市化・気候変動対応」という異なる観点で整理されており、評価できます。

評価できるところ

  • 原因を老朽化による水密性低下と捉え、CCTV調査や誤接続調査など具体的な診断手法を示している点。
  • 解決策に改築更新・流域解析・一時貯留・ポンプ強化など、短期的対応から長期的整備までのバランスを取っている点。
  • リスクとして「下流側処理場の負荷増大」を挙げ、処理場能力強化や高速ろ過などの対策を明確に示している点。

改善点

  • 「最も重要な課題」選定後の解決策がやや羅列的で、優先順位付けや実施順序が明確だとさらに説得力が増します。
  • 気候変動や都市化による降雨パターン変化への対応が課題抽出に含まれているが、解決策側では十分に反映されていないため、施設更新と同時に計画降雨の見直しや流域雨水管理施策も絡めると一層良いです。
  • 維持管理情報の活用(ストックマネジメント)について、解決策内での具体化が弱いため、モニタリング体制やデータベース整備も加えると網羅性が高まります。

総じて、基礎技術・課題認識ともにしっかりしており、改善点を補えば安定的に高得点を狙える答案です。特に、流域単位でのI/I低減マネジメントと計画条件更新を加えることで、さらに完成度が高まります。

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機械部門 必須科目

Ⅰ-1

問題文

機械を小型化することで、省スペース化、省エネルギー化、省資源化等が図れるだけでなく、従来の機械が働けない場所での作業を行う等、新たな用途の拡大が期待できる、機械の小型化に伴い代表寸法を小さくすると、働く力や作用等の大きさ・比が変わり、挙動が変化する。幾何学的に相似な物体において、この代表寸法と挙動の関係を近似的に示したものをスケール効果と呼ぶ、表1に代表的なスケール効果の例を示す。

本門は、機械を小型化する際に、スケール効果に基づく機械工学の知見を踏まえて、その性能や効率、設計、製造等がどのように変化するかを問うものである、機械製品を1つ想定し、以下の問いに答えよ。

{C}(1)   {C}想定した機械製品とその概要を説明せよ。その機械製品に関して、構造を変えず相似的に100分の1程度に小型化することの実現性を検討する。その際の主要な課題を、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。

{C}(2)   {C}前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する複数の技術的な解決を、機械部門の専門技術・手法を用いて示せ。

{C}(3)   {C}前問(2)で提示したすべての解決策を実行しても残存しうる若しくは新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

{C}(4)   {C}前問(1)~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から題意に即して述べよ。

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問題文の解説

この問題は、機械の小型化に伴うスケール効果を踏まえ、実務的に課題を特定・解決する能力を問うものです。単なる理論説明ではなく、設計・製造・運用を見据えた多面的分析が求められます。

(1)では、具体的な機械製品を選び、100分の1スケールでの実現性評価を行います。強度・剛性の低下、摩擦や表面張力の影響増大、熱伝達の変化、制御応答特性の変化など、スケール効果の本質を踏まえた課題抽出が必要です。

(2)では、最重要課題を選び、理由を明確化します。解決策は、材料選定、加工精度向上、構造最適化、アクチュエータ・センサ選択など、機械部門らしい専門技術を具体的に盛り込みます。

(3)では、解決後も残るリスク(摩耗寿命低下、熱暴走、組立誤差影響など)を挙げ、技術的裏付けを持った対策を示します。

(4)では、安全性、省エネルギー、資源消費低減、リサイクル性など、倫理・持続可能性を技術提案と結びつけて記述することが評価につながります。

コンサルタント視点では、スケール効果による性能変化の把握、製造限界と精度管理、総合的リスク評価、社会適合性との連動が重要です。

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模範解答 専門科目 材料強度・信頼性  専門事項 生産設備の設計・保全  作成日 2025.2.8

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1.機械製品を1/100に小型化するための課題 

 圧延機を想定する。2本のロール(直径550mm×幅2000mm)で金属を挟み、高い圧力(1000トン)を加えて、ロール回転とともに薄く延ばす。

(1)高潤滑圧延油の開発

 圧延機を1/100に小型化すると、接触弧長が微小化し摩擦力が支配的となる。これにより圧延荷重が増大し、ロールの剛性不足やトルク不足を引き起こし、従来の圧延方式が成立しにくくなる。潤滑の観点から、高分子吸着技術により、微小高圧環境でも油膜形成を確保し摩擦係数μを低減することで、圧延荷重を軽減する。

(2)マイクロ圧延ロールの最適設計製造

 ロール剛性低下と圧延荷重増大は、ロールの変形と摩耗の促進を引き起こす。ロール精度の観点から、①炭化タングステン(WC)を用いた高剛性ロール化、②ナノ結晶技術による靭性向上化、③ロール表面の精密粗度加工による摩擦低減化を組合せ、圧延荷重の最適化を図る。

(3)圧延トルク増大への対応

 圧延荷重増加に比例し、回転トルクが増大する。ロール駆動の観点から、高回転・低トルクのマイクロモータを活用するため、微細切削加工技術により高精度なマイクロ遊星歯車減速機を製作する。これにより、低回転・高トルクを発揮でき、駆動系の高効率な圧延トルク伝達を実現する。

2.課題(2)マイクロ圧延ロールの最適設計の解決策 

 小型化による圧延ロールの変形と摩耗は、圧延製品の寸法精度に直接大きな影響を及ぼすため。

(1)材料選定と製造技術の確立

 従来の高クロム鍛鋼に比べ約3倍の非常に高い剛性と耐摩耗性を持つ炭化タングステン (WC)を生成する。WCの高い硬度・溶解温度は加工性を悪くするため、WCを超微粒子化しコバルトで結合させた粉末冶金法により焼結する。成形品は静水圧プレスにより組織を緻密化しダイヤモンド研削・放電加工によりミクロン単位で製作することで、ロール剛性と精度を確保する。

(2)革新複合材による材料強度設計

 WCによるロール製造は高強度化する一方、靭性値が低下する。圧延荷重による脆性破壊を防止するため、ナノ結晶熱処理技術を適用し、結晶粒径を1μm単位のフェライト組織へ超微細化する。さらに、繊維強化金属材料技術により、曲げ方向にカーボン繊維を含侵配合することで、ロールの大幅な強靭化を図る。

(3)ロール表面粗度の最適化

 粗度設計により摩擦増大を抑制するため、EHL理論による高圧接触部のロール表面弾性変形と潤滑挙動を解析する。粗度先端が油膜予測厚みを突出し直接接触によるμ上昇を防止するため、ナノレベルの凹凸をロール表面にダル加工する。これにより、流体潤滑を実現かつスリップ防止するμとし圧延荷重を最適化する。

3.新たに生じうるリスクと対応策

(1)ロールの長期使用による破損リスク

 WC複合材は繊維界面からき裂が進展するため、従来の疲労寿命曲線と不整合の可能性がある。対策として回転曲げ試験により最適疲労曲線を取得し、デジタル画像法により実圧延荷重と歪測定を行い累積損傷を予測する。非破壊検査により保守時期の最適化を図る。

(2)ロール硬質化による再生補修リスク

 ロール費用低減のため再生利用が求められる場合、硬質化により研削に長時間要し運用コスト増大につながる。対策として、ダイヤモンド砥粒の硬度・粒度を最適化し、高効率な再生研磨技術の標準化を図る。

4.必要な要件

(1)技術者倫理

 小型化に伴い、ロール強度が脆弱部となるため、AE診断により異常を常時監視し、予兆検知により事故防止を行う。万が一、破損した小型部品が飛散し作業者が被災しないよう回転部分を安全防護する。これは技術士倫理の安全・健康・福利の確保に資する。

(2)社会持続可能性

 オンラインμモニタリングにより圧延油の適応型粘性制御を活用しさらなる消費動力▽30%、圧延製品不良率▽5%を削減する。これにより、製造効率向上と環境負荷低減を図り持続可能な製造技術の確立に貢献する。これはSDGSs12つくる責任つかう責任に相当する。

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講評

本答案は、圧延機を題材にスケール効果の影響を多面的に分析し、材料選定・構造設計・加工法・潤滑技術など機械部門らしい具体的提案を盛り込んでおり、出題趣旨に十分沿っています。課題の抽出から解決策、リスク評価、倫理・社会的持続可能性まで一貫した構成ができており、得点力は高いと判断できます。特に、摩擦・剛性・トルクといったスケール化で顕著になる現象を的確に捉えている点は評価できます。

評価できるところ

  • スケール効果を踏まえた課題設定が明確で、各課題に観点を明記している点。
  • 材料工学・加工技術・摩擦潤滑・動力伝達と、機械工学全般の知見を広く応用している。
  • 解決策において、材料特性と加工限界の両面に配慮した実務的提案がなされている。
  • リスク評価が具体的かつ現実的で、保守管理や検査技術の活用まで踏み込んでいる。
  • 倫理面・持続可能性について、数値的効果やSDGsとの関連を示しており説得力がある。

改善点

  • 各課題の記述量がやや多く、要点が埋もれがちです。段落冒頭で結論を端的に示すと、採点者に伝わりやすくなります。
  • 専門技術用語が多く、論旨の流れがやや硬く感じられます。部分的に因果関係を短文化して読みやすくすると、さらに印象が良くなります。
  • 倫理・持続可能性の部分で、社会的意義をもう一文加えて製造現場とのつながりを強調すると、総合力がより際立ちます。

全体として、すでに高得点が見込める完成度です。文章構成の整理と結論先出しの工夫を加えれば、より楽に合格圏に到達できる答案になると考えます。

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Ⅰ-2

問題文

日本の製造業は高性能かつ信頼性の高い製品を大量かつ安価に生産することで、一時は世界市場を席巻することができた。しかし近年は他国における技術力の工場、生産性及び品質の工場、価格競争等の影響から世界的な競争力を失いつつあり、国内資源が乏しく加工貿易を軸にしてきた日本全体の経済活動を今後持続していくための戦略が必要とされている。対応策としてイノベーションを推進すること等が提唱されているが、より具体的な対策として、他国製品に対して大きな競争力となる新たな付加価値をつける、あるいは現在の付加価値を他の追随を許さないほどに強化することが考えられる。現在の日本を取り巻く様々な状況(人口、教育、経済、環境保護等)を踏まえたうえで、以下の問いに答えよ。

{C}(5)   {C}機械製品を1つ想定し、その製品に対して機械技術者の立場から考えたときに有効と考えられる付加価値を1つ提案せよ。さらに、その付加価値の実現のためにどのような課題が考えられるか、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題内容を示せ。

{C}(6)   {C}前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する複数の技術的な解決を示せ。

{C}(7)   {C}前問(2)で提示したすべての解決策を実行しても残存しうる若しくは新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

{C}(8)   {C}前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。

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問題文の解説

この問題は、日本の製造業が国際競争力を高めるために、機械製品へ新たな付加価値を付与し、その実現プロセスを技術・マネジメントの両面から構想できるかを問うています。出題者は、単なる発想や理想論ではなく、現実の産業構造・社会的条件を踏まえた実践的提案を期待しています。

(1)では、具体的な機械製品を一つ選び、その製品において有効と考える付加価値の提案を求めています。ここでの付加価値は、省エネや軽量化、耐久性向上、知能化など多様に考えられますが、提案は製品の競争力に直結し、日本の社会条件(人口減少、高齢化、環境負荷低減など)に適合することが重要です。併せて、その実現に向けた技術・市場・運用など多面的な課題を3つ抽出し、観点を明記して記述します。

(2)では、抽出した課題の中から最重要課題を特定し、その理由を論理的に説明します。そのうえで、材料、構造、制御、製造プロセス、ICT活用など、機械工学の専門知識を応用した複数の解決策を示す必要があります。ここでは、技術的実現性だけでなく、コストや信頼性への配慮も加えると評価が高まります。

(3)では、全ての解決策を実行しても残るリスクや、新たに生じる可能性のあるリスクを挙げます。これは安全性や品質低下だけでなく、サプライチェーンの脆弱化、メンテナンス性悪化、社会的受容性低下なども含まれます。対策は、監視・診断技術、冗長設計、予防保全、規格適合など実務的手段を提示することが求められます。

(4)では、業務遂行における技術者倫理(安全確保、情報開示、環境配慮など)と社会の持続可能性(省エネルギー、資源循環、地域貢献など)の観点から必要な要件を記述します。抽象論にとどまらず、提案内容と直接関係する倫理・環境配慮行動を具体的に述べることが重要です。

機械工学のコンサルタント視点で着目すべきは、付加価値が市場優位性に与えるインパクト、実現に向けた課題の抽出精度、技術的解決策とマネジメントの両立、リスク管理の実効性、倫理・持続可能性との結びつきです。これらを体系的に押さえることで、論理性と説得力のある答案が構成できます。

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模範解答 専門科目 材料強度・信頼性  生産設備の設計・保全  作成日 2025.1.13

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.新たな付加価値とその課題

 航空機燃料に水素を使用できるようにする。

(1)航空機用液体水素タンクの開発

 燃料の貯蔵の観点から、体積エネルギ密度の小さい水素を極低温液化しかつ従来燃料の4倍容積を搭載することで航続距離を確保する。タンク大容量化による最大離陸重量制限を保つには、耐低温・軽量材料に高断熱技術を適用しタンク重量を大幅軽量化する。大容量タンクのスロッシングや抗力増大を抑制し安全で効率的な飛行を実現するタンク設計製造技術を確立する。

(2)タービン燃焼器の超耐熱・強靭化材料の開発

 水素燃焼により、従来1400℃から2000℃へ超高温化し、かつ水蒸気が発生する。耐久性の観点から、材料複合化技術により、セラミックスをカーボン繊維で強靭化した繊維強化セラミックス(CMC)を開発する。高温水蒸気による酸化減肉からCMCを保護するためには、耐環境コーティングを適用する。これにより、水素燃焼への耐熱衝撃性と耐酸化性を向上する。

(3)機体大型化・複雑形状化への対応

 空力性能の観点から、大型タンク搭載による複雑形状・重量増加が機体全体の流体力学的特性に与える影響を最小化する。このため、空力設計により機体形状を最適化し抗力低減を図る。機体全体の重量を削減しつつ強度を保つため、一体成形複合材技術を適用により、大型曲面パネルを製造し30%以上の軽量化を図る。

2.課題(1)航空機用液体水素タンク開発の解決策 

 大容量タンクは運航重量50%占め、航続距離確保や機体性能の維持に直結するため。

(1)水素タンク複合技術の総合設計

 -253℃極低温を保持するため、真空断熱二殻構造とする。内殻は極低温強度と軽量化を両立するAℓ合金を選定する。内・外殻との真空層は断熱性と振動吸収性を持つGFRPで支持し飛行中の内殻振止めをする。タンク外形は空力設計により流線形を最適化し抗力増大の最小化を図り燃費効率に貢献したタンク設計とする。

(2)燃料スロッシング抑制技術の確立

 飛行時の大容量タンクの液面変動を抑制するため、流体挙動を安定化させる設計アプローチを採用する。流体-構造連成解析により、バッフル形状の孔形状や配置を比較検証し、タンク内で往復運動する流体エネルギーを最小化する。これにより、飛行運動と同調した流体衝突荷重や蒸気圧上昇による過負荷防止を図り、タンクの耐久性を向上する。

(3)タンクの異材接合技術の確立

 タンクAℓ合金とパネル複合材を高速・高強度組立するため、摩擦を利用した固相接合法を採用する。これにより、接合部の欠陥を少なくし、従来接合法に比べ接合プロセスを高速化し製造コストを低減する。接合部の強度を高めるため、極低温水素環境での高靭性化と飛行サイクル疲労強度をともに満足する接合条件を確性する。これにより、タンク安全性を確保する。

3.新たに生じうるリスクと対応策

(1)液温上昇によるタンク破損リスク

 バッフル孔の整流効果で流体運動エネルギが熱エネルギとして散逸し液温上昇・蒸発圧力上昇によりタンク破損する。対策として、気化ガスを水素吸着材料に吸蔵しておき、回収した水素は再利用時に放出する。

(2)長期運用に伴う材料劣化による漏えいリスク

 実際の液面変動領域から水素脆化が促進され、予測より早くき裂が発生し漏えいする。対策として、液面変動幅にテフロンコーティングを施し水素侵入を緩和する。定期的な非破壊検査により微小欠陥を診断する。

4.必要な要件・留意点

(1)技術者倫理

 FMEAを活用し水素タンク各部品の破損、漏洩、爆発に繋がるシナリオを特定しリスク評価を行う。防爆構造等の許容可能なリスク低減策を講じ、評価の妥当性や対策について、利用者や関係者に的確に説明し理解を図る。これは技術者倫理の真実性の確保に相当する。

(2)社会持続可能性

 タンク構造のモジュール化設計を導入し、廃材の分離・再利用を容易にする。Aℓ合金は電解精製により高純度回収し、GFRPは過熱蒸気で長繊維を回収する。これにより廃棄物を減らし、循環型社会の形成を促進する。これはSDGs12つくる責任つかう責任に相当する。

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講評

本答案は、水素航空機という高度かつ先進的なテーマを選び、付加価値の提案から課題抽出、最重要課題の解決策、リスク評価、倫理・持続可能性まで一貫して構成されています。機械工学全般の知識(材料、構造設計、流体解析、接合技術、信頼性評価など)を幅広く応用しており、出題趣旨に的確に答えています。内容の専門性・実務性ともに高く、得点力は十分に高いと考えられます。

評価できるところ

  • 付加価値提案が社会的要請(脱炭素・航空分野の革新)と直結しており、意義が明確。
  • 課題抽出が「燃料貯蔵」「燃焼器材料」「機体設計」と、多面的で技術領域も広い。
  • 最重要課題の理由づけが明確で、構造・材料・流体・接合の複合的アプローチで解決策を提示している。
  • リスク評価が実際の運用条件に基づき、具体的な現象と技術的対策を結びつけている。
  • 倫理・持続可能性の記述で、SDGsとの関連を具体的に示し、数値的効果や再利用プロセスまで踏み込んでいる。

改善点

  • 解答全体の情報量が多く、やや密度が高い印象です。採点者に要点が伝わりやすいよう、各段落の冒頭で結論を簡潔に先出しするとさらに効果的です。
  • 一部の専門用語や工程説明は簡略化しても主旨は伝わります。紙幅を浮かせて、社会的効果や実用化インパクトをもう一文補うと、説得力が増します。
  • 倫理・持続可能性の項では、国際規格や航空安全基準などの外部枠組みへの適合性にも触れると、マネジメント視点がさらに強まります。

総じて、高度な専門性と社会的意義を兼ね備えた完成度の高い答案です。構成の整理と結論先出しの工夫を加えれば、より読みやすく、確実に合格点を超える内容になると考えます。

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機械部門 機械設計

Ⅱ-1-2
問題文

CAEを活用した設計を進める際に、解析の結果と実際の製品において性能に差が生じる場合がある。具体的な製品を示したうえで、CAEで誤差が生じる原因として考えられる入力条件を3つ挙げ、それぞれの理由を述べよ。

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問題文の解説

この問題は、CAEComputer Aided Engineering)を活用した設計において、解析結果と実機性能との間に生じる差異の原因を、入力条件の観点から特定できるかを問うています。出題者は、単なる原因列挙ではなく、製品例を前提に具体的・技術的に理由を説明する力を評価しています。

まず、製品は自分がよく知るものを選びます。回転機械、圧力容器、構造部材など、解析モデル化しやすく、かつ試験や実機評価との比較がイメージしやすいものが望ましいです。製品の選定時には、荷重条件や環境条件が明確で、解析モデルへの反映が課題になりやすい事例が適しています。

CAE誤差の原因は多くありますが、本問では「入力条件」に限定して3つ挙げることがポイントです。入力条件には、材料特性、境界条件、荷重・外力条件、初期条件、接触条件などが含まれます。これらは設計者の仮定や実測データの精度に依存するため、誤差の主要因になりやすいです。

理由の説明では、単に「精度が低いから」では不十分です。例えば、材料特性であれば温度依存性や製造ばらつき、境界条件であれば拘束部の剛性や摩擦係数の不確かさ、荷重条件であれば動的荷重や衝撃荷重のモデル化不足など、現実の製品挙動とモデル化の差を具体的に示すことが重要です。

機械設計工学のコンサルタント視点で着目すべきは、①CAEモデル化における現実との乖離要因、設計初期段階での入力条件の取得・精度管理の方法、実機試験や運用データとのフィードバックループ構築、解析の前提条件を明確化する文書化・トレーサビリティ確保、です。

また、単に誤差要因を挙げるだけでなく、設計マネジメントの視点として「入力条件の妥当性確認プロセス」や「不確かさ低減のための試験計画」など、組織的な品質確保策にも触れると答案の深みが増します。

まとめると、本問は「CAE結果と実機性能差の原因特定力」と「設計プロセス全体での誤差低減策への理解度」を試す問題です。答案作成時は、要因理由設計改善の方向性、という因果関係を明確にすると、高評価につながります。

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模範解答 専門科目 機械設計  専門事項 CAE  作成日 2024.12.17

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製品としてベルトコンベアを選択する。

入力条件ⅰ:摩擦係数

動解析において、コンベアローラーの軸受の摩擦係数をCAEで一定値に設定する。しかし実際には経年劣化や潤滑剤の減少により摩擦係数が変動し、摩擦損失が過小評価される。その結果、動力にプラスの誤差が生じる。摩擦係数が誤差原因となる理由は、CAEモデルが時間的な変化を考慮していないからである。

入力条件ⅱ:振動特性

振動解析において、駆動モーターの振動特性をCAEでは単純化して設定する。しかし実際は移動中の輸送物からの荷重など複雑な外力の影響を受ける。そのため動的荷重が過小評価され、振動影響にマイナスの誤差が生じる。振動特性が誤差原因となる理由は、実際の振動環境が持つ多自由度の影響や、実際の振動環境が持つ外力の不規則性を十分に反映できていないからである。

入力条件ⅲ:材料特性

構造解析において、コンベアを支持するフレームの材料特性をCAEでは一様に設定する。しかし実際は接合部の溶接や加工の影響で局所的に剛性が低下する。そのため全体の強度が過大評価され、プラスの誤差が生じる。材料特性が誤差原因となる理由は、局所的な異常を反映できないCAEモデルの限界や、加工や製造過程のばらつきを評価対象としていないからである。

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講評

本答案は、ベルトコンベアを対象にCAE入力条件の誤差要因を3つ(摩擦係数、振動特性、材料特性)に整理し、それぞれについて実機との差異と理由を明確に記述しています。出題趣旨である「具体的製品を示し、入力条件の誤差要因と理由を説明する」という要求に沿っており、得点力は高いと判断できます。特に、各条件の説明が因果関係を伴っており、機械設計工学の知見が活かされています。

評価できるところ

  • 製品例(ベルトコンベア)が具体的で、解析対象の想像が容易。
  • 入力条件ごとに「CAE上の設定」「実機との差異」「誤差発生の理由」を順序立てて説明しており、構成が明確。
  • 摩擦係数、振動特性、材料特性と、機械設計の主要分野(トライボロジー、動解析、材料力学)を網羅している。
  • 誤差の方向(プラス/マイナス)を明示しており、解析結果の解釈に説得力がある。

改善点

  • 各説明の冒頭に要点を短い結論文で示すと、採点者が素早く理解でき、評価が安定します。
  • 「時間変化を考慮していない」「不規則性を反映できない」といったモデル化の限界について、補足的に対策例(例:時系列データ入力、試験データ併用)を加えると、解答の実務性がさらに増します。
  • 材料特性の項で「加工や製造過程のばらつき」の説明は良いですが、CAEモデリング時にどう扱えば誤差低減できるかにも触れると、マネジメント視点が強まります。

総じて、構成・技術内容ともに完成度が高く、現状でも十分合格圏内です。要点先出しと実務的対策の一文を加えることで、さらに高得点が狙える答案になります。

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Ⅱ-2-1
問題文

あなたは設計部門の開発リーダーとして、コストや納期を考慮したうえで、CAEとサロゲートモデル(応答曲面)を用いて機械部品(若しくは機械構造や機構等)の最適設計を進めることになった。関係者と調整しながら業務を進めるとして、下記の問いに答えよ。

{C}(1)         {C}設計対象を具体的に1つ挙げ、①用いたサンプリング手法、②サロゲートモデルを用いる理由とその利点、③対象とする機械部品等の特徴を踏まえ、機械設計の立場から設計変数、目的関数、制約条件等を明らかにし、その理由を述べよ。

{C}(2)         {C}用いるサロゲートモデルの特徴を明らかにしたうえで、最適設計を進める手順をまとめ、留意すべき点や工夫を要する点を具体的に述べよ。

{C}(3)         {C}デザインレビュー(DR)に加え、業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方法を述べよ。

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問題文の解説

この問題は、CAEとサロゲートモデル(応答曲面)を活用した機械設計の最適化プロセスを、開発リーダーとして計画・実行・マネジメントできるかを評価するものです。単なる理論説明ではなく、設計対象の具体化から、解析・最適化・関係者調整までを一貫して構想する力が問われます。

1)では、設計対象を一つ選び、サンプリング手法(例:ラテン超方格法、直交表、モンテカルロ法など)を明示します。その上で、サロゲートモデルを使う理由(計算負荷低減、設計空間の可視化、探索効率向上など)と利点を示します。設計変数・目的関数・制約条件は、対象部品の特性を踏まえ、力学性能、寸法、重量、コスト、耐久性などを因果関係とともに整理することが重要です。

2)では、サロゲートモデルの特徴(例:多項式近似の単純さ、ガウス過程回帰の柔軟性、機械学習モデルの高精度性など)を述べ、最適設計の手順を順序立てて説明します。CAE解析結果からサロゲートモデルを構築し、最適化アルゴリズムで設計案を探索、検証CAEで再評価するという流れを明確にする必要があります。留意点として、サンプル点の分布バランス、外挿領域の精度低下、パラメータ感度分析の活用などを挙げます。

3)では、デザインレビュー(DR)以外の調整方法として、定期的な進捗会議、可視化資料による意思決定支援、関係部署との要件すり合わせ、コスト・納期情報の共有などを具体的に述べます。特に、解析担当、製造、品質保証、購買など多部門連携の中で、情報伝達のタイミングと形式を明示すると評価が高まります。

機械設計工学のコンサルタント視点で着目すべきは、①CAEとサロゲートモデルの役割分担と適用範囲、設計変数・目的関数・制約条件の妥当性、サンプリング精度とモデル汎用性の確保、最適設計プロセス全体の品質保証、関係者間調整による意思決定の迅速化です。これらをバランス良く押さえることで、実務的かつ採点者に明確に伝わる答案となります。

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模範解答 専門科目 機械設計  専門事項 CAE  作成日 2025.2.24

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(1) サロゲートモデルを用いた最適設計

(1-1) 対象製品:風力発電のタービンブレードの最適設計を挙げる。

(1-2) サンプリング手法:ラテン超方格サンプリングを採用する。あたえられた確率密度分布内で効率よくサンプリングでき、サンプリングの期間を短縮できるからである。

(1-3) 理由・利点:理由は、複雑な流体や構造計算を簡易な数学モデルで代替することで、設計を効率化するためである。利点は物理計算を短縮し、設計コストを低減できることである。

(1-4) 設計変数・目的関数・制約条件:設計変数はブレードのⅰ)翼厚、ⅱ)翼弦長、ⅲ)材料の強度特性とする。目的関数は発電効率(回転トルクの最大化)とする。制約条件は素材の疲労強度である。理由は、剛性不足による変形やクラック発生からの破損を防止するためである。疲労強度が不十分なのは、剛性不足が原因であり、局所剛性向上のために翼厚・材料特性を最適化する。

(2) 特徴、手順、工夫点および留意点

(2-1) 特徴:ラテン超方格サンプリングにより、設計変数を広範囲に均等に配置し、サロゲートモデルの精度向上を図ることである。

(2-2) 手順・留意点

ⅰ)主要断面抽出:発電効率に影響の大きい断面(根本部、中間部など)を抽出し、それらを重点的に設計する。それにより、翼全体を最適化して設計するより、設計コストを抑える。

手順ⅱ)設計変数の定量評価:根本部は曲げモーメントやせん断力が大きいので剛性やねじれ角を優先し、逆に先端部は回転時に遠心力を受けるため翼弦長や空力設計パラメータ、迎角を重視する。

手順ⅲ)目的関数を最大化する設計変数の選定:サロゲートモデルを利用して、目的関数を最大化する最適な設計変数の組み合わせを探索する。

手順ⅳ)結果の検証:サロゲートモデルは、物理法則を反映しない近似予測なので、流体-構造連成解析(FSI)を行い、ブレードのたわみやねじれ変形、フラッター振動もなく、所定の揚力・抗力係数が得られることを確認する。空力弾性振動に対しては回転数と共振しないようにダンパーを使用する

(3) 関係者との調整方法

CAE 担当者:根本部の補強リブ追加を提案する。トポロジー最適化を活用し最小限の補強で疲労強度を向上させ、軽量化と耐久性向上を両立させることで、コスト増の受容性を高める。

②製造担当者:CFRP積層設計の変更を申し入れ、田口メソッドを活用し試作回数を削減することで、剛性向上と品質安定性を両立し、製造コスト増を抑える合理的提案とする。

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講評

本答案は、風力発電タービンブレードを対象に、サロゲートモデルとCAEを組み合わせた最適設計プロセスを具体的に構築しており、出題趣旨に的確に対応しています。サンプリング手法の選定理由、設計変数・目的関数・制約条件の設定、最適化手順、関係者との調整方法まで一貫して記述されており、技術的説得力とマネジメント視点の両面を備えた高得点が狙える答案です。

評価できるところ

  • 設計対象の選定(タービンブレード)が明確で、解析や最適化の適用イメージが湧きやすい。
  • ラテン超方格サンプリングの採用理由が具体的で、モデル精度向上とコスト短縮の関係が理解できる構成。
  • 設計変数・目的関数・制約条件を力学的背景と結びつけて説明しており、機械設計の専門性が明確。
  • 最適化手順において、断面ごとの力学特性や空力条件を考慮した設計の重点配分が示されている。
  • 検証段階で流体-構造連成解析(FSI)や空力弾性振動への対策まで触れており、信頼性設計の視点が盛り込まれている。
  • 関係者との調整方法が具体的で、CAE担当・製造担当それぞれへの提案内容が合理的かつ実務的。

改善点

  • サロゲートモデルの特徴や限界(外挿精度低下、過学習の可能性など)にもう一文触れると、適用範囲の理解がより明確になります。
  • 手順の記述がやや説明的で長く感じられる箇所があるため、工程ごとの結論を先に簡潔に述べると読みやすくなります。
  • 関係者調整の項において、コスト・納期・性能のバランス評価方法(例えばDRでのKPI管理や数値指標)を加えるとマネジメント面の完成度がさらに高まります。

全体として、技術的内容とマネジメント要素のバランスが良く、現状でも十分合格水準に達しています。上記の補強を行えば、さらに説得力が増し、安定して高得点を狙える答案になると考えます。

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機械部門 材料強度信頼性

Ⅱ-1-1
問題文

内圧を受ける円筒容器胴を設計する。容器胴の板厚の設定に安全率を用いる設計手法と目標信頼度に基づく信頼性設計手法を用いる場合を想定し、以下の3つについて述べよ。

①2つの手法による設計方法の差異

②2つの手法で定まる板厚の差異

③信頼性設計手法を用いる場合の留意点

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問題文の解説

この問題は、内圧容器の板厚を、安全率設計と信頼性設計で求めた場合の違いを比較し、信頼性設計の実務上の注意点を説明する力を問うています。単なる定義ではなく、設計方法・結果の傾向・運用時の留意点を整理して述べることが重要です。

1つ目の設問では、両手法の設計思想を対比します。安全率設計は基準応力に安全率を掛ける決定論的手法で、過去の経験値を重視します。信頼性設計は荷重や材料強度のばらつきを統計的に扱い、所定の破損確率(信頼度)を満たす板厚を確率論的に決定します。

2つ目の設問では、結果の傾向を比較します。安全率設計は保守的になり板厚が厚くなる傾向があり、信頼性設計は必要最小限に抑えられる場合があります。ただし、ばらつきが大きい場合や高信頼度を要求する場合は、信頼性設計でも板厚が増えることがあります。

3つ目の設問では、信頼性設計の留意点を整理します。荷重条件・材料特性・製造誤差などの統計データの整備、分布形や相関の妥当性確認、破損確率の設定根拠の説明、品質管理との整合が必要です。

機械・材料強度信頼性工学のコンサルタント視点では、設計思想の構造的比較、板厚結果の実務的傾向分析、信頼性設計導入時のデータ・管理体制要件、の3点に着目すると質の高い答案になります。

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模範解答 専門科目 材料強度信頼性  専門事項 材料力学  作成日 2025.5.18

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1.2つの手法による設計方法の差異

 安全率を用いる設計では、使用内圧や材料強度のばらつきに対して、材料強度に一定の安全率を見込み、許容応力度を決定することにより板厚設計を行う。

信頼性設計では、使用内圧や材料強度のばらつきを確率変数として扱い、統計的に評価された許容破損確率を満足するように板厚設計を行う。

前者は保守的で簡便、後者は合理的であるが統計的評価が求められる。

2.2つの手法で定まる板厚の差異

安全率を用いる設計では、一律の安全率を用いた設計であるため、ばらつきの大きさに関係なく、一定の裕度を持った設計となり、必要以上に板厚が大きくなる傾向がある。

信頼性設計では、ばらつきを確率分布で評価し許容破損確率を満たす最小限の板厚を設定するため、合理化が進み、板厚が薄くなる傾向がある。

3.信頼性設計手法を用いる場合の留意点

信頼性設計では、確率変数として取り扱う使用内圧、材料強度の分布特性(平均・標準偏差)の設定が設計精度に直結する点に留意する。データの偏り、母集団の代表性に注意し、現場実測データを基に設計時の確率分布を更新する仕組みを構築する。このことにより確率分布モデルの精度を高めて、信頼性向上に努める必要がある。

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講評

本答案は、安全率設計と信頼性設計の手法的差異、設計結果の傾向の違い、信頼性設計における留意点を整理しており、出題趣旨に適切に答えています。説明は簡潔で、設計思想と統計的アプローチの違いが明確に伝わるため、得点力は高いと判断できます。特に、信頼性設計のデータ特性(平均・標準偏差)への言及や、現場データの反映による精度向上の視点は評価できます。

評価できるところ

  • 両手法の特徴(保守的・簡便/合理的・統計的)を明確に対比しており、設計思想の違いがわかりやすい。
  • 板厚差の説明で「傾向」と「理由」をセットで記載しており、因果関係が明確。
  • 信頼性設計の留意点に、データの偏りや代表性、モデル更新の重要性など、実務的視点が盛り込まれている。
  • 全体が簡潔で読みやすく、要点が過不足なく押さえられている。

改善点

  • 信頼性設計の留意点に、統計モデル選定(正規分布以外の可能性)や、破損確率設定時の安全・経済性バランスにも触れると、よりマネジメント的視野が広がります。
  • 板厚差の説明では、「ばらつきが大きく高信頼度を求める場合は、信頼性設計でも板厚が増える場合がある」など、例外的ケースを補足すると理解が深まります。
  • 実務適用時の課題(データ取得コスト、品質管理との整合)を一文加えると、答案の現実性がさらに高まります。

現状でも十分に合格水準に達していますが、統計モデルの適用範囲や設計判断の社会的影響まで視野を広げれば、より安定して高得点を取れる答案になると考えます。

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Ⅱ-1-3
問題文

高温環境下にある機器や部材においては、鉄鋼材料のクリープ破断寿命を予測するうえで、ラーソンミラーパラメータを用いる方法がよく知られている。ラーソンミラーパラメータを説明し、これを用いてクリープ寿命を予測する方法を説明せよ。

また、ラーソンミラーパラメータを用いた寿命予測において留意すべき点を述べよ。

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問題文の解説

この問題は、高温下での鉄鋼材料のクリープ破断寿命を、ラーソンミラーパラメータ(LMP)を用いて予測する方法と、その留意点を問うものです。LMPは、温度と時間の関係を一つの指標で整理し、異なる温度条件下の破断データを統合する手法です。一般に
LMP = T × (C + log tr)
T:絶対温度[K]tr:破断時間[h]C:材料定数)
で表されます。

寿命予測では、複数温度条件での破断試験データを取得、各データからLMPを算出、応力–LMP線図を作成、使用条件からLMPを求め破断時間を逆算します。短時間試験から長期寿命を推定できる点が利点です。

留意点は、試験条件と使用条件が大きく異なると外挿誤差が大きくなる、②C値は材料や組織に依存するため適切な試験で校正する、酸化・腐食などLMPに含まれない劣化要因は別途評価する、安全率や信頼性評価を加える、の4点です。

コンサルタント視点では、LMP適用の前提条件確認、試験データの統計的処理、外挿時の信頼区間設定、寿命予測結果の保守計画への反映が着目点となります。

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模範解答 専門科目 材料強度信頼性  専門事項 生産設備保全  作成日 2024.9.23

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1.ラーソンミラーパラメータ(LMP)について

 LMPは、温度T、クリープ破断時間trとしたとき、T・(log trC)で定義され、応力σと温度Tの関係を統一的に扱えるパラメータである。温度Tを変化させたとき応力σとLMPは線形関係となる。

.クリープ破断寿命の予測方法

 通常、クリープ破断寿命は数年以上と長期間となる。このため、クリープ破断実験は実際の使用温度より高温状態での加速試験を行い、試験時間の短縮を図る。高温領域での実験を複数点実施し、σとLMPの線形関係を得る。

次に、実際の使用温度TにおけるLMPとσを線形延長線上に外挿すれば、使用温度T、使用応力σにおける破断時間trすなわちクリープ破断寿命を予測する。

3.寿命予測における留意点

 ラーソンミラーパラメータ(LMP)は、材料ごとに異なる定数Cを用いて定義される。適切なCを選定することで、異なる温度条件下でも1本のσ-LMP線に統一でき、精度の高い寿命予測が可能となる。

 他方、温度範囲が広がると、クリープ変形機構が変化し、σ-LMP線図が統一されないことがある。

 対策として、温度範囲を分割し、最適なCを調整することで、各範囲ごとにσ-LMP線図を統一し、より正確な寿命予測が実現できる。

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講評

本答案は、ラーソンミラーパラメータ(LMP)の定義、クリープ破断寿命の予測方法、留意点を順序立てて説明しており、出題趣旨に沿った構成になっています。パラメータの意味と計算式、高温加速試験を活用した寿命予測の手順が簡潔にまとまっており、得点力は高いと判断できます。特に、温度範囲によるクリープ機構の変化やC値調整の必要性に言及している点は、実務的視点として評価できます。

評価できるところ

  • LMPの定義と役割が明確で、数式を用いて簡潔に説明できている。
  • 高温加速試験から寿命予測に至る流れが段階的に記述されており、理解しやすい。
  • 留意点で、クリープ機構の変化やC値調整に触れ、現実的な適用上の課題を把握している。
  • 用語や表現が専門的でありながら冗長でなく、試験答案として適切な分量に収まっている。

改善点

  • C値の選定」について、材料組織や化学成分との関連、またはデータベース活用など選定根拠を一文加えると説得力が増します。
  • 外挿時の注意点(例:外挿距離が長い場合の誤差増大、データの信頼区間)にも触れると、信頼性工学的視点がより強まります。
  • マネジメント面では、試験条件の設定やデータ管理方法についても簡単に示すと、設計・運用計画に結びついた答案になります。

現状でも十分に高得点を狙える完成度ですが、C値選定の根拠や外挿リスク管理を補足することで、さらに安定感のある答案となり、合格圏での優位性が高まります。

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Ⅱ-2-1
問題文

高経年の機械設備において、重要部品に亀裂が生じて疲労損傷するという大規模な事故が発生した。当該設備のメンテナンス責任者として、原因究明と今後の対策を講じなければならない。次の設問に答えよ。

(1)亀裂の発生や進展を評価し、原因究明及び今後の対策に繋げるために調査・検討すべき事項を3つ示し、それらの内容について説明せよ。

(2)想定される原因を2つ挙げ、それぞれに対して緊急に取るべき対策とその際に留意すべき点、工夫すべき点を述べよ。

(3)上記の業務のそれぞれを効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

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Ⅱ-2-1問題文の解説

この問題は、高経年機械設備の重要部品で亀裂が発生・進展し疲労破壊に至った場合の、原因究明・対策立案・関係者調整を総合的に行う能力を問うものです。出題者は、材料強度信頼性工学の知識を活用しつつ、メンテナンス責任者として技術的分析とマネジメントを両立できるかを評価しています。

(1)では、亀裂評価と原因究明のための調査・検討項目を3つ提示します。典型例は、亀裂の位置・形態・寸法を把握する非破壊検査(UTPTAE等)、材料特性や組織変化の分析(硬さ試験、金属組織観察、成分分析)、荷重履歴・応力解析による破壊力学的評価(ΔKK_IC算定)などです。これらは原因特定だけでなく、残存寿命推定や補修方針決定にもつながります。

(2)では、想定原因を2つ挙げ、それぞれについて緊急対策と留意点を説明します。原因例としては、設計応力超過(運転条件逸脱、外力増大)や、経年劣化による材料疲労強度低下(腐食疲労、摩耗)などが考えられます。対策は、応力集中部の補強や運転条件の即時見直し、部品交換や表面処理の緊急実施などです。留意点として、作業中の安全確保、停止時間の最小化、再発防止のための恒久策との整合を意識します。

(3)では、調査・対策・調整の効率化に向けた関係者連携を述べます。技術部門・製造部門・安全管理部門・外部専門家との役割分担を明確にし、情報を共有できる会議体やオンライン連絡系統を整備します。検査結果や解析モデルは可視化資料で共有し、意思決定を迅速化します。緊急対応と恒久対策のタスクを並行して進める進行管理も重要です。

機械・材料強度信頼性工学のコンサルタント視点で着目すべきは、非破壊検査と破壊力学評価の統合による亀裂進展予測、材料劣化メカニズムの特定と寿命予測モデル構築、緊急対応と長期保全計画のバランス、関係者間での情報精度と共有速度の確保です。これらを押さえれば、技術面とマネジメント面の両方で高評価を得られる答案になります。

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模範解答1 専門科目 材料強度信頼性  専門事項 生産設備保全  作成日 2024.9.28

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1.調査・検討すべき事項

(1)疲労寿命  

 設計計算書を調査し、疲労寿命を検討する。亀裂発生までの寿命は、累積疲労損傷度で評価する。累積疲労損傷度が1に到達し亀裂発生後の亀裂進展は、パリス則で評価し、破壊靭性値到達までの寿命を検討する。両者を合算した設計疲労寿命と実際の運用とを比較調査し、原因を検討する。

(2)荷重頻度・使用環境

 運転稼働履歴を調査し、運用状況(稼働率・負荷率)から荷重頻度を検討する。破面を調査しビーチマークから荷重の種類と大きさ、SEMストライエーションから繰り返し回数を検討する。FEMにより応力頻度を調査し設計疲労曲線より実際の累積疲労損傷度を検討する。破面腐食状況を調査し使用環境を検討する。

(3)材料・製造品質

 材料分析を調査し、亀裂の起点となる介在物組織や材料強度劣化がなかったか検討する。材料表面品質を調査し、亀裂の起点となる有害な表面粗さや、切り欠き、硬度ムラ、溶接部による応力集中等がなかったか検討する。

.想定される原因と緊急対策、留意点・工夫点

(1)溶接部応力集中および残留応力

 溶接止端部半径および余盛角が小さく応力が集中し亀裂起点となった可能性がある。対策として、き裂部をガウジング除去後、再接合し溶接止端部はバーグラインダーやTigフラッシングで平滑とし、余盛角を極力平滑にする。溶接部における引張残留応力が応力に上乗せされ疲労を促進した可能性があるため、超音波ピーニングで圧縮応力を与える。再接合は入熱最小とするTig溶接と低温変態溶接棒により残留応力を低減する。

(2)機械構造部材の疲労強度低下

 重要部品の断面積変化部における切欠き効果により、材料の疲労限度を低下させた可能性がある。

 対策として、切欠き部のフィレット形状曲率を極力大きくとり、応力集中を緩和する。材料強度低下要因となる溶接部と切欠き部の位置を離す。部品の高周波焼入れにより、表面部に大きな圧縮応力を付与し、疲労限度の向上を図る。

3.関係者との調整方法

 保全部門に対して、き裂の再発を防止するため、フェーズドアレイUTによる非破壊検査を標準化し、き裂点検とき裂進展管理による適正な補修計画を図る。

 施工部門に対して、溶接施工品質を保証するため、余盛高さはビード幅の0.16以下とし、溶接欠陥の非破壊検査を定めた施工要領書と検査記録表を指導する。

 操業部門に対して、腐食環境による疲労き裂促進を防止するため、ph計による環境モニタリングをし、漏えい個所の特定と腐食性物質の除去による環境改善を指導する。全体取りまとめ、対策の信頼性を上げる。

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講評

本答案は、疲労損傷の原因究明から緊急対策、関係者調整までを体系的にまとめており、出題趣旨にしっかり対応しています。材料強度信頼性工学の視点(累積疲労損傷評価、パリス則、破壊靭性、応力集中緩和等)と、マネジメント視点(検査標準化、施工品質管理、環境改善)を両立させているため、得点力は高いと判断できます。特に、原因評価では計算・観察・解析の3手法を組み合わせ、対策は施工条件や環境条件にまで踏み込んでおり、実務的説得力があります。

評価できるところ

  • 調査項目が「寿命評価」「使用条件」「材料品質」と多面的で、原因究明の網羅性が高い。
  • パリス則や累積疲労損傷度など、材料強度信頼性分野の解析手法を適切に引用している。
  • 対策が具体的かつ技術的根拠に基づいており、応力集中低減や残留応力緩和など改善効果が明確。
  • 関係者調整で各部門に応じた具体行動(検査標準化、施工要領、環境モニタリング)を提示している。

改善点

  • 調査項目で、非破壊検査の種類や適用理由を簡潔に入れると、信頼性評価の手順がさらに明確になります。
  • 緊急対策の効果検証方法(例えば、補修後の再計測や疲労試験)に一文加えると、実施後の妥当性確認が伝わります。
  • 関係者調整の部分に、情報共有の仕組み(定期報告会、データベース化など)を加えると、マネジメント力の強化が示せます。

現状でも十分に合格水準の完成度ですが、検証手順や情報共有体制を補足すれば、技術的信頼性と組織マネジメント力の両面でさらに高得点を狙える答案になります。

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模範解答2 専門科目 材料強度信頼性  専門事項 材料力学  作成日 2025.6.15

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1,調査・検討すべき事項

① 破面観察と応力集中評価

 破面調査により、疲労起点、破壊進展を特定し、応力集中要因や進行性を評価する。設計仕様との整合性と許容応力を超える要因を評価し、再設計に向けた構造改善の基礎とする。

② 荷重履歴の確認と負荷パターン分析

 操業ログやセンサ記録から実荷重履歴を確認し、「設計限界を超えた運転の有無」と「定常外の荷重要因と疲労損傷の相関」を求め、運転パターンの適正化を図る。

③ 材料ロット履歴と環境因子の分析

材料のロット履歴・点検記録を精査し、微細陥や腐ピットなどの初期陥がどのように顕在化したかを評価する。経年変化と環境因の効果も検証し材質見直し、検査周期の見直しに活用する。

2.想定原因、緊急対策、留意点および工夫点

原因1:長年使用により異常摩耗が進み、不均一な荷重が段付き軸部等の形状不連続部に加わり、設計時に考慮していない応力集中が発生し疲労破壊となる。

① 緊急対策:疲労損傷箇所に応力集中緩和設計(R加工、補強リブ)を実施する。FEM解析で最大応力分布を把握し設計応力との乖離を最小化する。

② 留意点・工夫点: FEMを用いて最大応力や応力勾配を定量把握し、応力集中箇所の特定により応力分散設計を行う。またMiner測により損傷許容限界を求め、累積損傷率を0.7以下に抑制することを交換周期の基準として導入し、信頼性を維持する。

原因2:シャフトに発生する点状腐食や鋳造時の微細介在物は検査限界のため点検時に検出できず、形状変化への応力集中が疲労破壊の原因となる。

① 緊急対策:フェーズドアレイ超音波探傷器による重要部位の高感度検査を実施し、欠陥や腐食の形状と位置を把握し破壊への寄与を確認する。必要に応じ表面処理(窒化処理)で耐食性向上を図る。

② 留意点・工夫点:腐食環境を再評価し、換気・温湿度管理を強化し恒常的監視体制を整備する。

3.効率的効果的に進めるための関係者との調整方策

 操業部には、程別の負荷履歴をセンサログに基づいて鋼種切替時の荷重急変の有無の明確化を依頼する。荷重変動の平準化が疲労軽減となることを助言し、運転計画の見直しを図った。その結果、特定部材に集中する荷重が分散し故障率を20%抑制できた。

 検査部には、破損履歴と非破壊検査記録の相関を可視化させ、確率的手法を用いた優先検査対象の設定法を説明した。リスク部位では精度技術(フェーズドアレイ法)を適し、低リスク部位では、簡易探傷を適用し、検査効率とコストの最適化を図った。これにより、疲労破壊の予兆検出精度を維持しつつ、検査体制全体の持続可能性を確保した。

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講評

この答案は、破損原因の分析から緊急対策、長期的な改善策、関係者調整までを論理的に構成しており、出題趣旨に十分応えています。材料強度信頼性工学の基礎(応力集中評価、荷重履歴解析、腐食・欠陥評価など)を具体的に適用しており、さらにFEM解析や非破壊検査(フェーズドアレイUT)の活用など、実務的な技術適用力が高く評価できます。数値基準(累積損傷率0.7以下、故障率20%低減)を盛り込んでおり、成果の見える化もできていますので、得点力は高い答案です。

評価できるところ

  • 調査項目が「破面観察・応力集中」「荷重履歴」「材料・環境因子」と多面的で、原因究明の網羅性が高い。
  • FEM解析やMiner則など、機械材料強度信頼性分野の解析手法を具体的に適用している。
  • 緊急対策が具体的かつ技術的根拠に基づき、短期と長期の改善策をセットで提示している。
  • 関係者調整では、操業部・検査部の双方に対し、負荷管理や検査効率化の提案が明確で効果数値も提示されている。

改善点

  • 調査・対策間の因果関係を、冒頭で簡潔にまとめると、全体構成がさらに読みやすくなります。
  • 腐食や介在物については、表面処理以外の恒久的対策(材質変更、製造工程改善)にも触れると、再発防止策としての説得力が増します。
  • 関係者調整部分に、情報共有の仕組み(例:データベース化、定期レビュー)を補足すると、マネジメント面の評価が高まります。

全体として、技術的分析・実務的対策・マネジメント提案がバランス良く盛り込まれており、現状でも十分に高得点が見込めます。構成の冒頭に因果関係整理や恒久対策の補強を加えれば、さらに完成度の高い答案になると考えます。

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模範解答3 専門科目 材料強度信頼性  専門事項 計測器設計  作成日 2025.4.3

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(1)疲労損傷した機械設備の調査・検討事項

①運転条件の変動による疲労累積の加速

運転履歴分析とFEM解析による局所応力評価で疲労累積を調査する。修正マイナー則で疲労損傷を定量化し、実負荷回数からき裂進展を検討する。

②腐食環境要因

顕微鏡、SEMEDXでビーチマーク、ストライエーション,塩化物等を調査する。断面の色調や組成から腐食有無を判定し、腐食や異物混入の影響を検討する。

③保守方法と検査基準

非破壊検査のき裂早期検出の適用性を調査する。具体的に超音波探傷法では,き裂向きや局所的な検査が原因で,き裂進展を見落とすことが問題である。予防保全として広範囲検査が可能なAE法導入,損傷閾値と検査間隔の再設定を検討する。

(2)想定される原因と緊急の対策、留意点と工夫点①孔食や粒界腐食による急激な強度低下

 SEMEDXで破断面のストライエーション幅と腐食成分増加の相関から破壊過程を解明する。運転履歴の負荷との相関も評価し、腐食の影響と実負荷・き裂進行の関係を定量化し、破壊条件を明確にする。

対策: 耐食性材料(高NiSUS等)使用やクロメート処理を実施する。Ni42%超の合金は従来金属より耐久期間が300倍以上長いと見込む。クロメート処理は,従来使用される6価クロム化合物は有毒なため,3価クロム化合物を使用した処理液で実施する

②応力集中による局所的な疲労強度低下

微細凹凸や材料の溶融凝固による応力集中を考える。

対策: FEM解析やX線測定で応力評価し、応力緩和のためグラインダ処理(疲労強度約20%向上)やショットピーニング(500MPa以上の圧縮応力付与)を行う。処理部付近のひずみ測定で処理効果を定量評価する。

(3)効率的、効果的に進めるための調整方策

2で示した技術的対策の定着と活用体制を確立するため,以下の調整方策を構じる。

①ひずみゲージ活用で表面加工の信頼性データ蓄積

材料特性と応力評価を信頼性設計につなげる。設備管理部門に,応力緩和処理前後の外観とひずみ量変化の相関データ蓄積を申し入れる。表面粗さとひずみの関係から表面粗さ基準を設定し、加工を均一化する。そしてデータの定期レビューで信頼性を向上させる。

②リアルタイム点検導入とデータ共有でコスト削減

信頼性向上とコスト最適化のため,運転管理業者に対しAE法リアルタイム点検導入を申し入れる。亀裂進展時の信号(200kHz程度)検知時に,人や設備停止を伴う点検を実施し,保守コストを低減する。過去の実績により,点検頻度50%削減と保守費20%の削減を見込む。データ取得はシステムで自動収集しオンラインで点検データを共有,フィードバックの即時反映を行う。現場負荷を低減し保守体制を最適化させる。以上

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講評

この答案は、疲労損傷の原因究明、具体的な緊急対策、長期的な信頼性向上策、そして関係者との調整方法を体系立てて記述しており、出題趣旨にしっかり答えています。材料強度信頼性工学の知識(修正マイナー則、FEM解析、AE法、腐食メカニズム解析など)と具体的数値効果(疲労強度20%向上、コスト20%削減など)を組み合わせており、技術的説得力と実務性の高さが光る答案です。定量的評価とマネジメント的提案の両面で評価が高く、得点力は十分高いと考えられます。

評価できるところ

  • 調査項目が「運転条件・荷重評価」「腐食要因」「検査方法改善」と幅広く、原因究明の網羅性が高い。
  • 修正マイナー則やFEMSEM/EDX分析、AE法など、信頼性工学・材料工学の代表的手法を具体的に適用している。
  • 緊急対策に数値根拠(耐久期間300倍、疲労強度20%向上、圧縮応力500MPa付与など)を示し、効果の見える化ができている。
  • 関係者調整では、データ蓄積基準化フィードバックという改善サイクルを明示し、マネジメントの質が高い。
  • コスト削減効果や点検頻度削減など、実務での成果を意識した記述がある。

改善点

  • 腐食対策において、材料変更や表面処理以外の恒久策(環境条件改善、流体管理など)にも一文触れると再発防止性が高まります。
  • FEM解析やひずみ測定の結果活用について、設計変更や寿命予測モデル更新への展開を簡潔に示すと、技術応用力がさらに際立ちます。
  • 調査・対策・調整の各パートのつながりを冒頭で短く整理すると、答案全体の一貫性がより強くなります。

現状でも非常に完成度の高い答案ですが、恒久的な環境改善策や設計フィードバックの視点を少し加えることで、技術的信頼性とマネジメント力の両方でさらに高得点を狙える内容になります。

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Ⅲ-1
問題文

巨大地震などの自然災害によってインフラ設備が破損し、生活に大きな影響が生じる場合が多い。生活における重要なインフラ設備の1つに水道設備が挙げられるが、水道管を従来から多用されているダクタイル鋳鉄からポリエチレン管に交換することが地震対策として有効な手段の1つとされている。

 この対策に関わる材料強度・信頼性評価の技術者の立場として、以下の問いに答えよ。

{C}(1)   {C}水道管としてポリエチレン管を使用する際の課題を多面的な観点から3つ以上示し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

{C}(2)   {C}前問(1)で抽出した課題の中で、最も重要と考える課題をその理由とともに示し、遂行方策と解決策を複数示し、具体的に説明せよ。

{C}(3)   {C}前問(2)で示した解決策を実行した場合の波及効果と残り得るリスクへの対策について専門技術を踏まえて示せ。

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問題文の解説

この問題は、水道管をダクタイル鋳鉄からポリエチレン(PE)管に更新する際の、材料強度および信頼性評価上の課題抽出と解決策立案能力を問うものです。出題者は、単なる材料置換の是非ではなく、構造・環境・運用条件など多面的な視点から課題を抽出し、その中から重要度を判断して技術的に実現可能な対策を示すことを求めています。

(1)では、課題を観点とセットで提示することが重要です。例として、

  • 力学的観点PE管は延性が高く耐震性に優れるが、長期荷重下でのクリープや座屈に弱く、埋設深度や土圧条件で強度設計が必要。
  • 環境耐性観点:紫外線による劣化、薬品による応力亀裂(ESC)への耐性確保が必要。
  • 接合・施工観点:熱融着・機械継手の施工品質が水密性や耐震性を左右するため、施工標準化と検査制度が不可欠。
  • 維持管理観点:埋設後の非破壊検査が困難で、劣化進行のモニタリング技術が求められる。

(2)では、最も重要な課題を選定します。たとえば「長期強度・耐久性確保」を最重要課題とし、その理由を「埋設環境下で数十年単位の安全供用を求められ、交換コストや供給停止リスクが極めて高い」などと説明します。遂行方策としては、長期クリープ試験と設計応力の適正化、耐候・耐薬品性向上のための多層構造化や添加剤配合、埋設環境の土質・荷重条件に応じた管種選定、施工管理による残留応力低減などが挙げられます。

(3)では、解決策の実施による波及効果(地震時破損率低減、漏水ロス削減、ライフサイクルコスト低減、CO₂排出削減など)を示します。一方、残り得るリスクとしては、施工不良による局所弱点、予期せぬ薬品曝露による早期劣化、非破壊検査困難による異常発見遅れなどがあります。対策としては、IoT圧力センサによる異常検知、交換部位の優先順位付け、劣化加速試験結果に基づく定期更新計画などが有効です。

コンサルタント視点での着目点は、①PE管の力学特性と経年劣化特性を定量評価する試験・解析計画、設計・施工・維持管理を一貫した信頼性保証プロセス、リスクベースの更新・保守戦略、の3点です。これらを押さえることで、理論と実務の双方から高評価が得られます。

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模範解答1 専門科目 材料強度信頼性  専門事項 生産設備保全  作成日 2025.3.10

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1.水道管としてポリエチレン管を使用する際の課題 

(1)長期耐久性の向上

 ポリエチレン(PE)管は軽量で柔軟性が高く地震に追従する一方、鋳鉄管と比べ弾性係数や引張強度が低下する。インフラのレジリエンス設計の堅固性の観点から、地震動だけでなく長期の水圧・脈動・寒冷地への強度を確保するため、クリープ・疲労・低温への耐久性を検証し最適化する。さらなる耐久性の向上のためには、ポリマー改質技術により、PE材料の改良を図る。

(2)管路の耐外圧設計

 PE管は鋳鉄管と比べ剛性が低く、外部からの土圧や地盤沈下、交通荷重による変形リスクが高い。構造物の安全性の観点から、座屈を防止するため、地盤条件(埋設深、地耐力)によるFEM解析モデルを作成し座屈挙動を予測する。埋設実証試験を実施し解析を補完することで、地盤条件に応じた最適な設計基準を設定する。これにより、座屈防止する管路剛性を確保する。

(3)管継手部の接合強度の確保

 PE管は現地溶着接合が標準であり、気温・湿度等の施工条件によって接合部の強度が母材より低下するリスクがある。施工品質保証の観点から、接合強度を均一に管理するため、引張試験及び水圧試験により接合部の剥離強度を評価する。これにより、溶着条件(温度・時間・継手寸法)を最適化し、超音波探傷検査(UT)を標準化することで、接合強度を保証する。

2.「課題(1)長期耐久性の向上」の遂行方策と解決策

 水道管は地震災害時のみならず長期にわたる給水確保が求められ耐震性とともに長期耐久性が必要のため。

(1)クリープ特性の評価と対策

 PE管は長期の水圧でクリープ変形が進行する。このため、ISO9080長期水圧試験法に基づく熱間クリープ促進試験で長期の変形量を評価し、50年以上の寿命を確保する。さらに、施工後の実際の水圧条件下でのクリープ量をモニタリングすることで、耐久性データを蓄積する。これにより、PE管のクリープ寿命の予測精度を向上し、今後の維持管理計画を最適化する。

(2)変動負荷・低温環境下での強度確保

 PE管には水圧脈動や輪圧による繰返し荷重が負荷するため、JISK6774ポリエチレン管全周ノッチ式疲労試験を実施し、疲労限を評価する。また、冬季低温環境下の脆性破壊を防ぐため、JISK7111プラスチックシャルピー衝撃試験を実施し、適用温度範囲を明確化する。これにより、水圧・温度環境ごとに設計基準を設定することで、PE管の耐久性を保証する。

(3)PE管の耐震・耐久性向上に向けた材料改良

 耐クリープ・疲労限を向上するため、PEを重合化し高密度化することで、弾性係数・引張強度を向上する。また、低温脆化を抑制するため、高分子架橋技術により、鎖状PE高分子を立体網目構造とする。改良材料を耐震リスクの高い地域から導入し、施工後の有効性を評価することで、全国展開の適用可能性を調査する。

3.波及効果とリスクの対策

(1)波及効果

①水道インフラの耐久性向上:長期耐久性が向上したPE管の導入によって、災害時の断水リスクを低減し、地域のライフラインの安定性を向上する。

②維持管理コストの削減:クリープ・疲労・低温脆性を抑制することで、水道管の交換頻度低減、メンテナンス費用を削減する。また、施工基準の標準化により施工不良率を低減する。

PE管の適用範囲拡大による産業発展:長期耐久性と施工性が向上したPE管は他のインフラ(ガス管・電力ケーブル管路)に適用が広がり、新たな市場と雇用の創出につながる。

(2)リスクへの対策

PE管の破損リスク:一定振幅による疲労限設計をしているため、実際の変動荷重により早期破損する可能性がある。対策として、光ファイバーセンサーを活用したリアルタイム監視システムを導入することで、異常時の即時対応を可能にする。

②環境影響の増加リスク:PEは金属材料と比較し、製造時のエネルギー消費や廃棄物の増加の可能性がある。対策として、ISO14040に基づくライフサイクルアセスメントを実施し、CO2排出量を評価する。製造条件最適化による省エネや再生利用技術の導入を推進する。

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講評

この答案は、ポリエチレン管の長期耐久性向上を軸に、力学的性能・施工品質・環境耐性など多面的に課題を抽出し、さらに規格試験や解析手法、材料改良など具体的な解決策を体系的に提示しています。出題趣旨である「材料強度・信頼性評価を踏まえた課題解決」に的確に答えており、技術的裏付けのある記述、規格番号や試験法の明示、波及効果と残存リスクの整理など、高得点が見込める完成度です。

評価できるところ

  • 課題抽出が「耐久性」「耐外圧設計」「接合強度」と明確に分類され、観点と内容の対応がはっきりしている。
  • 解決策において、ISOJIS規格試験、FEM解析、材料改良手法など、信頼性工学・材料工学の標準技術を具体的に引用しており説得力が高い。
  • 材料改質(高密度化、架橋化)や施工条件最適化など、設計から材料開発まで一貫した改善策が提示されている。
  • 波及効果では、インフラ信頼性向上・コスト削減・市場拡大と、社会・経済への影響を広く捉えている。
  • リスク対策に光ファイバーセンサーやLCA評価など先進的技術を盛り込み、将来性と環境配慮を示している。

改善点

  • 耐外圧設計や接合強度確保の課題についても、(2)での解決策の中に簡潔に触れると、課題間のバランスがより良くなります。
  • 波及効果・リスク対策の部分で、数値目標(例:破損率%低減、CO₂排出量%削減)を加えると、成果の測定可能性が示せます。
  • 課題選定理由を冒頭で「長期耐久性が他の課題より優先される理由」として12文で整理すると、論理の流れがさらに明快になります。

総じて、材料強度信頼性工学の知見を豊富に取り入れた完成度の高い答案です。数値目標や他課題への触れ方を補足すれば、技術的説得力とマネジメント力の両面で一層高得点が狙える内容です。

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模範解答2 専門科目 材料強度信頼性  専門事項 材料力学  作成日 2025.6.28

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1)課題

①寿命予測法の整備

長期信頼性の観点から、地震時に大きな地盤変位が生じた際の追従性を備えつつ、長期埋設に耐える材料の選定に向けて、加速劣化試験結果を基にした応力-時間換算による寿命予測モデルの整備が必要である。本モデルにより使用中の損傷蓄積、損傷進行を事前に把握し、材料選定や応力低減策を講じることができる。

②継手構造の最適化

異種材料接合部の構造信頼性の観点から、段差緩衝スリーブの採⽤や接合部形状の⼯夫により、応⼒集中を緩和する構造設計を実施することにより、経年での接合部劣化を抑制する。異種接合部では、弾性係数や熱膨張係数の差等の材料特性の差異により応力集中が生じやすく、破損の原因となるため注意を要する。

③非破壊検査を強化

施⼯信頼性の観点から、施工後のポリエチレン管の微小な初期⽋陥を可視化するためには、高周波数プローブによる超音波検査を行う。また埋設後のポリエチレン配管に対しては⾮破壊検査(AE法、GPR)を導⼊し、品質異常の早期検出を図る体制整備が必要であり、非破壊検査の強化が課題である。

(2)最重要課題と解決策

地震時にポリエチレン管の可とう性があっても継手部が破損すれば機能停止となり、材料選定や施工管理整備よりも早期断水リスクを招く。従って異種材料接続部の継手構造の最適化が最重要課題である。

遂行方策1:異種材料の熱膨張差、硬度差を考慮し密着性と耐久性を有する継手部設計を行う。

解決策1異種材料の硬度差、熱膨張差を吸収する段差緩衝構造を採⽤し、異種材接合部における断面繰返し変形への追従性を確保する応⼒緩和構造設計を⾏う。断面剛性に差があると一方に応力集中が発生しやすく、亀裂などの原因となるため応力分散のために有効である。熱膨張係数に差があると温度変化により異なる伸縮が生じ界面に熱応力が集中するため、段差形状により応力を広範囲に分散することが有効である。

遂行方策2:FEM解析による継手部の残留応力や応力集中分布の可視化により耐震性評価を行う。

解決策2:材料特性の異なる接合部における応力集中や変形挙動をFEM解析により把握し、最適な形状や肉厚、接合角度を設計に反映する。熱収縮の差による応力集中の対策については、FEM解析結果をもとに余裕寸法を確保した継手部設計を行い、影響を吸収する構造とする。

遂行方策3:異種材料継手部は、材料特性の違いや接合界面の不連続性により疲労による損傷が蓄積しやすい。このため長期耐久性の検証を行い使用期間中の性能維持を図る。

解決策3:使用環境(温度、湿度、荷重サイクル)を考慮した加速劣化試験で劣化挙動を把握し、継手部の断面欠損を考慮した安全率設定により長期耐久性を確保できる寿命設計を行う。加速劣化試験をもとに設計にマージンを持たせることが有効である。

(3)波及効果と残り得るリスクへの対策

波及効果:継⼿部構造の信頼性向上により断⽔リスクを低減し、漏水による周囲インフラへの損害を防ぐことができる。断水リスクの低減により点検周期を3年から6年に延⻑することのより、点検保守の人件費、交通規制などの間接コストが下がる。以上の効果で維持管理コストは15%削減となる。

残存リスクと対策:地下埋設環境において、交差点部や沈下地盤で偏⼼荷重が⽣じ、接合部破損の恐れがある。継⼿部にひずみセンサを内蔵し、応⼒状態や微小な変形を常時監視して漏水や破損の予兆を早期可能となる。これにより異常応力を事前に検知して事前補修を行うなどの予防保全の実施が可能となる。

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講評

この答案は、課題抽出から波及効果・残存リスクまでの流れが明確で、特に異種材料接続部の継手構造最適化を軸に一貫性を持たせている点が評価できます。出題趣旨である「材料強度・信頼性評価に基づく課題解決」にしっかり応えつつ、FEM解析、加速劣化試験、段差緩衝構造など、技術的根拠のある手段を提示しており、実務に直結した提案となっています。全体として高得点が期待できる答案です。

評価できるところ

  • 課題抽出が「寿命予測法」「継手構造」「非破壊検査」と、観点を明示して整理されており読みやすい。
  • 最重要課題の選定理由が明快で、「地震時の可とう性を持っていても継手破損で機能停止」という説得力のある根拠を示している。
  • 解決策が具体的で、構造対策(段差緩衝構造)、数値解析(FEM)、耐久性評価(加速劣化試験)と、多層的アプローチを組み合わせている。
  • 波及効果でコスト削減を定量(15%削減)で示しており、成果の測定可能性が高い。
  • 残存リスク対策にセンサ監視を提案し、予防保全の観点を盛り込んでいる点も評価できる。

改善点

  • 課題「寿命予測法の整備」と課題「非破壊検査強化」について、(2)以降の中で補足的に触れると、課題間のつながりがより強まり、全体の一貫性が高まります。
  • 波及効果で示したコスト削減率や点検周期延長の根拠を簡潔に補足すると、説得力がさらに増します。
  • 解決策において、材料選定(PEのグレードや改質手法)についても一文触れると、材料強度信頼性工学の広がりがより表現できます。

総評
構造・解析・試験・監視といった信頼性向上の全プロセスを押さえており、技術者としての実践的視点が際立っています。改善点を補えば、論理性と包括性がさらに高まり、安心して高得点が狙える答案です。

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Ⅲ-2
問題文

従来から行われているネットワークケーブルや電カケーブル海底敷設に加え, 海底鉱床やメタンハイドレートなどの海洋資源の活用や海底下CCS(Carbon dioxide Capture and Storage :二酸化炭素回収・貯蔵)などで, 深海中で機械製品を使用することが検討されている。 水深800m以上の海中や海底で使われる機械製品を想定し, 製品開発を進める材料強度・信頼性評価の技術者の立場として, 以下の問いに答えよ。

(1)水深800m以上の海中や海底で使われる機械として製品開発を進めるものを1つ取り挙げ, 技術者としての立場で多面的な観点から課題を3つ抽出し, 分析せよ。

(2)前間(1)で抽出した課題の中で, 材料強度・信頼性の観点で最も重要と考える課題をその理由とともに示し, 遂行方策を含む解決策を複数示し, 具体的に説明せよ。

(3)前問(2)で抽出した課題に示した解決策を実行しても想定されるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

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問題文の解説

この問題は、深海(800m以上)という高水圧・低温・腐食性環境下で使用される機械製品の開発を想定し、材料強度と信頼性の観点から課題を抽出し、その中で最も重要な課題を深掘りして解決策・残存リスクまで論理的に展開させる内容です。

(1)では、まず具体的な機械製品を1つ明確に設定することがポイントです(例:ROV、海底ポンプ、掘削機、CO₂注入バルブなど)。このとき、単に「海底で使う機械」とするのではなく、使用条件(水圧、温度、腐食環境、振動負荷、設置期間など)を具体化し、設計や信頼性評価に直結する課題を3つに整理します。課題は「材料強度」「密封・防水」「耐腐食」「耐摩耗」「メンテナンス性」など多面的に設定し、それぞれを評価します。

(2)では、3つの課題から最も重要なものを一つ選定し、その理由を「破損時の致命性」「交換の困難さ」「安全性や環境影響」などの視点で示す必要があります。解決策は複数提示し、材料選定(高強度金属、複合材料)、表面処理(溶射、PVD、樹脂コーティング)、構造対策(応力集中緩和設計、冗長化)などを組み合わせます。加えて、試験・解析手法(FEM、加速劣化試験、圧力槽試験)を明記することで、材料強度信頼性の専門性を示せます。

(3)では、解決策を実行しても残るリスク(微小欠陥による破壊、腐食の進行、接合部劣化、極低温脆化など)を想定し、それらの監視・予防策を述べます。具体的には、リアルタイムモニタリング(ひずみゲージ、AE法、光ファイバーセンサ)、定期的な非破壊検査(UTX線)、冗長設計、交換モジュール化などが有効です。

全体として、課題抽出最重要課題選定複数解決策残存リスクと対策という構造を明確に保ち、深海特有の環境条件を踏まえた材料強度・信頼性評価の具体性を盛り込むことが高得点につながります。

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模範解答 専門科目 材料強度信頼性  専門事項 計測器設計  作成日 2025.7.2

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製品:深海用ROV耐圧ハウジングを想定する。

(1)水深800mの深海で使用される製品の課題と分析

①高圧対応設計(塑性変形・座屈)

構造強度上の観点で,水深800mを超える高静水圧はハウジングに極大な圧縮応力を生じさせる。これは材料の塑性変形と構造の座屈につながる問題がある。解決のため,高強度材料の選定と有限要素法(FEM)による構造最適化で座屈破壊防止と,構造寸法やリブ形状を最適化による必要安全率確保が課題である。

②腐食疲労による寿命低下への対応

ROVは潜航と浮上を繰り返し、ハウジングは圧力変動による繰返し応力を受ける。同時に高濃度の塩化物イオンを含む海水が孔食を起因として腐食疲労き裂が発生・進展するリスクがある。腐食環境の観点から、腐食疲労対策技術の導入により疲労寿命を延長し,海水中での孔食進展を防止する方策が課題である。

③溶接部の信頼性確保

ハウジング製造時の溶接は、その熱影響部に母材と異なる金属組織を形成させる。熱影響部では靭性が低下し、特に海中という腐食環境下で優先的に侵食され疲労強度の低下が危険である。さらに,溶接残留応力は応力腐食割れや疲労き裂の発生源となる。製造工程の観点から、溶接部の健全性を確保し、疲労破壊や応力腐食割れの発生を防止することが課題である

 (2) 最も重要と考える課題と解決策

上記課題の中で「②腐食環境と圧力変動による疲労寿命低下への対策」が最も重要な課題と判断する。  

理由:静的破壊や製造欠陥と異なり、腐食疲労は運用中に進行し破壊の予見が困難である。突発的な破壊はROVの全損や環境汚染に直結するため、最も優先して解決すべきである。以下に具体的な解決策を示す。

①腐食疲労特性評価と寿命予測(評価技術の観点)

大気中での疲労データは腐食環境下では危険側の評価となるため、実機環境を再現した試験が必須である。高圧・実海水環境を再現したオートクレーブ内で、耐孔食指数が40以上のスーパー二相ステンレス鋼(例:UNS S32750)を用い、腐食疲労試験を実施する。これにより実環境下でのS-N線図を取得し、マイナー則を用いてROVの運用計画における累積損傷度を算出し、設計寿命を定量的に予測する。

②高耐食材料と表面改質(材料の観点)

疲労き裂は材料表面が起点となるため、表面改質が有効である。高強度(降伏応力σy550 MPa)と高耐食性(PREN ≥40)を両立するUNS S32750の採用に加え、ハウジング外面にショットピーニングを施工する。表面層に-300MPa以上の圧縮残留応力を付与し、腐食孔食からのき裂発生・進展を抑制し、疲労寿命を向上させる。

③損傷許容設計の導入(設計の観点)

製造時の微小欠陥等の存在を前提とし、それらが致命的な破壊に至らないことを保証する設計を導入する。非破壊検査の検出限界を初期き裂長さと仮定し、腐食疲労試験で得たパリス則(da/dN=C(ΔK)m)に基づきき裂進展解析を行う。き裂が材料の破壊靭性値に至る寿命を算出し、設計寿命を上回ることを確認することで、安全性を担保する。

(3) 想定されるリスクと対策

リスク:早期き裂検知による破壊予防

金属組織や残留応力の不均一性が疲労に対する弱点となり、想定外の速さでき裂が進展する可能性がある。対して、以下の多重的な対策を講じる。

①:製造段階における溶接部健全性の追求

溶接入熱等を定めた溶接施工要領書(WPS)を確立する。施工後は、溶接部全域に対して浸透探傷試験(PT)等の非破壊検査を実施し、マクロな欠陥の不在を保証する。さらにX線回折法で残留応力を実測し、設計通りの品質を保証する。

②運用段階における健全性モニタリングの導入

設計・製造段階の対策に加え、運用中の状態監視を行う。ハウジングにアコースティック・エミッション(AE)センサを設置し、き裂進展時に発生する微弱な弾性波を常時監視する。このシステムにより、き裂の発生・進展を早期に捉え、ROVを緊急浮上させて詳細検査を行うことで、致命的な破壊を未然に防ぐ。以上

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講評

この答案は、出題趣旨に非常に的確に応えており、得点力は高いと判断できます。
特に、製品設定(深海用ROV耐圧ハウジング)が具体的で、課題抽出最重要課題の選定複数の解決策残存リスクと対策という論理展開が明確にできています。専門的な用語や数値基準(降伏応力、PREN値、圧縮残留応力値など)を示しており、材料強度信頼性の技術者としての説得力も十分です。


評価できるところ

  • 製品の特定と課題設定が具体的で、深海環境の特性(高圧・腐食・溶接部の弱点)をきちんと反映している。
  • 最重要課題を腐食疲労に絞り、その理由付けが「予測困難性」と「致命性」に基づき説得力がある。
  • 解決策において、評価技術・材料・設計3視点で構造化されており、バランスが取れている。
  • 数値基準や規格(ISO9080S-N線図、パリス則)を明記し、信頼性設計のプロセスを具体的に表現できている。
  • 残存リスク対策も製造段階・運用段階の両面から提示し、品質保証と状態監視の両立が図られている。

改善点

  • 課題も深海特有の条件に沿ってよく書けているが、材料選定と構造設計の相互作用(例:座屈防止設計における材料選択の影響)をもう少し明示すると、課題間の関連性が強まり一層説得力が増す。
  • 腐食疲労の解決策で「表面改質」と「損傷許容設計」を挙げているが、実環境モニタリングデータの設計フィードバックまで触れると、よりマネジメント視点の完成度が上がる。
  • 残存リスク対策のAE監視について、誤検知やセンサ劣化などの二次的リスクとその管理方法も簡潔に触れると、リスクマネジメント力がさらに高く見える。

総合的に、本答案は現状でも十分に高得点が狙える内容です。改善点を反映すれば、より包括的で信頼性工学のプロとしての完成度が増し、楽に合格点を超えるレベルに仕上がります。

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情報工学部門 ソフトウェア工学

Ⅱ-1-3
問題文

要求獲得において要求に関する情報をステークフォルダーから収集する方法を3つ挙げ、その概要と留意点を説明せよ

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問題文の解説

この問題は、ソフトウェア開発の上流工程における「要求獲得(Requirements Elicitation)」をテーマとしています。出題者は、受験者が要求定義の全体像と、その中で情報収集が占める役割を理解しているかを確認したいと考えています。特に、情報工学部門の技術士として、単なる方法論の暗記ではなく、関係者の立場や利害、開発プロジェクトの制約条件を踏まえた適用能力を問う構造です。

着目すべきポイントは以下のとおりです。

  • 対象は「ステークホルダーからの情報収集」に限定されているため、分析や仕様化は範囲外。
  • 3つの方法は、異なる性質(例:直接的ヒアリング型、観察型、ドキュメント解析型など)を選び、重複を避けることが重要です。
  • それぞれの概要では、どういう場面に有効か・どのような情報が得られるかを端的に述べること。
  • 留意点では、利害関係の調整、情報のバイアス、認識の齟齬防止、記録方法など、実務上のリスクとその対策に触れることが得点につながります。

コンサルタントとしての視点では、

  1. プロジェクトの規模や文化に応じた手法選定の妥当性。
  2. 手法ごとのコスト・期間・精度のトレードオフ評価。
  3. ステークホルダー間での優先度や要求の競合を可視化・整理する仕組みの提案。

また、単なる「面談」「アンケート」列挙では差がつきにくいため、情報工学らしい体系性(例:IEEE 830BABOKに基づく枠組み)や、ソフトウェア工学の技術応用(オンラインインタビュー、ログ解析、自動化ツール活用など)を組み合わせると、専門性が伝わります。

さらに、留意点には品質特性(ISO/IEC 25010など)やユーザビリティ、セキュリティ要件の潜在化リスクも含め、幅広い観点から整理すると、総合的な判断力を示せます。

全体としては、3手法×(概要+留意点)の簡潔な構造で記述し、方法の多様性と適用場面の使い分けを明確にできる答案が高評価につながります。

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模範解答 専門科目 ソフトウェア工学  専門事項 プロジェクト管理  作成日 2025.6.19

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プロトタイピング
概要:顧客が持つシステムや収集データなどをもとに簡易モデルを作成し、利用者に提示することで要求を収集する方法。実際の動作を通じて、新たな要求や改善点を把握することが可能。
留意点:完成品と誤認されないよう、目的や開発段階を明示する必要がある。プロトタイプは仕様変更を前提に柔軟に設計し、操作による潜在的な要求の顕在化を促すことが求められる。

ワークショップ
概要:複数のステークホルダーを招集し、ファシリテータの進行のもとで共同でブレインストーミングや業務の整理を行いながら要求を収集する方法。参加者の相互理解や合意形成を得る手法でもある。
留意点:特定の参加者に意見が偏らないような進行が必要。また意見を可視化・整理し、対立を調整する力が求められる。参加型であるため、合意を促す環境づくりも重要となる。

インタビュー
概要:客先と直接対話を通して要求を収集する方法。対話により背景や暗黙的な要求まで引き出すことが可能であり、深い理解を得られる。
留意点:対象者の選定と話しやすい空気づくりに留意が必要。利害関係や参画度などを踏まえて対象を選定し、誘導的質問を避けつつ傾聴の姿勢を大切にする。継続的なヒアリングも有効である。

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講評

本答案は、出題者が求める「3つの方法+概要+留意点」を的確に押さえており、情報工学部門・ソフトウェア工学としての技術応用とマネジメントの視点がしっかり反映されています。方法の選定もプロトタイピング・ワークショップ・インタビューと性質の異なるものを挙げており、重複がなく、適用場面の多様性が示せています。構成も明確で読みやすく、得点力は高いと判断します。

評価できるところ

  • 3手法が直接的なヒアリング型・共同作業型・モデル提示型とバランス良く選定されており、応用場面の広がりが表現できています。
  • 各概要で「何ができるか」だけでなく「どのように役立つか」まで言及されており、単なる用語説明に留まらず実務イメージを伝えられています。
  • 留意点において、誤解防止・意見偏り防止・対象者選定など、マネジメント上の配慮が具体的で、プロジェクト管理者としての視点がしっかり表れています。
  • 専門用語の使い方が適切であり、情報工学部門としての専門性が伝わります。

改善点

  • 各手法の概要で「どの場面で特に有効か」という適用条件をもう一段明確にすると、実務的判断力がより際立ちます。
  • 留意点に、情報工学らしい技術的補強(例:オンラインプロトタイプ共有ツール、ワークショップでの電子ホワイトボード活用、インタビュー内容の自然言語処理による整理など)を一言加えると、最新技術応用の印象が強まります。
  • 全体としては既に高水準ですが、手法間の比較や使い分けの観点を最後に12文補足すると、論旨のまとまりがさらに良くなります。

本答案は既に合格水準を超える完成度です。適用条件や最新技術活用の視点を少し加えるだけで、より高得点を狙える答案になると思います。受講生様は論理の組み立てと説明力が優れており、今後も方法選定の根拠と実装上の工夫を結びつける書き方を磨くことで、さらに説得力のある答案が書けると確信します。

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Ⅱ-2-1
問題文

既存の大規模なソフトウェアを流用してエンハンス開発を行うプロジェクトにリーダの立場で参画することとなった。流用対象のソフトウェアでは不具合が散見されているが、設計ドキュメントやテスト仕様書の信頼できるものは入手できず、品質の状態を容易に把握できない。そのためソフトウェアの設計の技術的負債の評価を行う方針とした。評価に際しては、成果物に対する解析やメトリクスの活用を考えている。このような大規模再利用開発の技術的負債の課題について、以下の問いに答えよ

{C}(1)      {C}大規模再利用開発の技術的負債の課題について、解析やメトリクスを活用した効果的な評価のために、調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ

{C}(2)      {C}技術的負債の評価において、手順、留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

{C}(3)      {C}プロジェクトを効率的かつ効果的に進めるために調整が必要となる関係者を列記し、それぞれの関係者との連携・調整について述べよ

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問題文の解説

この問題は、既存の大規模ソフトウェアを流用したエンハンス開発における技術的負債の評価とマネジメントをテーマとしています。出題者は、受験者がソフトウェア工学の技術応用とマネジメント能力を総合的に使い、品質不明な資産を安全かつ効率的に再利用するための実務的戦略を立案できるかを確認しています。

まず(1)では、「技術的負債の課題」を抽出し、解析やメトリクスを活用した評価計画を立てる力が問われています。ポイントは、単にメトリクス名を列挙するのではなく、品質特性(保守性、信頼性、性能など)に結び付けて調査項目を整理し、限られた情報源から信頼性あるデータを引き出す手段を示すことです。ソフトウェア工学のコンサルタント視点では、静的解析・コードクローン検出・テストカバレッジ推定などの自動化ツール適用の有効性を盛り込むと専門性が高まります。

(2)では、評価の「手順」「留意点」「工夫」を体系的に示すことが求められます。評価プロセスの前後関係(例:資産棚卸解析ツール適用評価指標算出判定基準との比較)を明確にし、留意点には不完全な資料による誤評価のリスクや、既存不具合との因果関係の切り分けなどを含めます。工夫点としては、リスクベースでの優先度設定やサンプル解析からの推定など、時間・コスト制約下での実践的手法が挙げられます。

(3)では、関係者調整の範囲と連携方法が評価されます。開発チームやQA部門だけでなく、元システムの保守担当、顧客の業務部門、経営層など、情報提供・合意形成に必要な全ステークホルダーを挙げ、それぞれに対して「何を」「どのように」調整するかを簡潔に書くことが重要です。調整の観点としては、情報開示範囲、改善優先度の合意、追加検証の実施条件などが考えられます。

全体としては、

  • 技術的負債の定義と評価軸を明確化する力
  • 解析・メトリクス活用による客観的根拠の提示
  • 関係者間の合意形成を促すマネジメントスキル
    3点をバランス良く示すことが高得点につながります。単なる理論列挙ではなく、品質不明な既存資産を短期間で診断し、再利用に耐える計画へ落とし込む実務的判断力を前面に出す答案構成が望ましいです。

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模範解答 専門科目 ソフトウェア工学  専門事項 プロジェクト管理  作成日 2025.6.19

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1)調査、検討事項

1.過去の履歴情報の分析
変更履歴情報を分析し、変更が頻発している機能や障害が多発する領域を抽出する。これにより、保守負荷の高い箇所や改修リスクが大きい箇所を特定し、重点的なリファクタリングや再設計の対象とすることができる。

2.過去のテスト情報の把握
既存システムのテスト結果を分析し、網羅度や不具合の検出傾向などを数値で把握する。さらに、試験戦略の偏りや仕様とのトレーサビリティの欠如などを抽出し、品質保証の観点から技術的負債の影響範囲を明らかにする。

3.ソースコードの静的解析
コーディング規約違反や複雑度、依存関係などを抽出し、保守性・拡張性に与える影響を定量評価する。構造的な欠陥や技術的負債の深刻度を把握し、対策優先度を判断する材料とする。

2)手順、留意点、工夫点

<手順>以下の手順にて実施する。

1.対象システムの構成やモジュール単位での全体像を把握
2.履歴情報や障害発生状況を分析し、リスクの高い箇所を抽出
3.静的解析を併用し、ソース単位の複雑度や依存性をメトリクス化
4.機能別に影響度や修正工数を数値化し、優先順位を明確化する

<留意点>以下2点に留意する。

1.単なる数値比較にとどまらず、機能や設計意図の整合性、周辺モジュールとの関係性も考慮する。
2.関係者ヒアリング等でドキュメントに記載されない情報も加味し、定性的な視点を組み合わせる。

<工夫を要する点>以下2点に工夫の余地がある。

1.信頼できる設計資料が不足する場合は、ソースから設計構造を逆解析し、構造図や依存関係マップを再構築するなど、リバースエンジニアリングを活用する。
2.技術的負債の深刻度や対策コストをスコア化し、関係者間での優先度の合意形成を支援する。

3)プロジェクトを効率的かつ効果的に進めるために調整が必要となる関係者とその連携・調整について

既存システムの開発・運用担当者
設計上の意図や運用ノウハウ、文書に現れない仕様をヒアリングし、設計整合性や再利用可能性を評価する。負債の深刻度に応じた対応策をともに検討し、合意を図る。

利用主幹部門の責任者
改善方針や再構築の方向性がビジネス要件に適合しているか確認し、業務影響を抑制する調整を行う。また、品質に対する期待値や可用性要求を明確化し、仕様合意を得る。

経営者(意思決定者)
技術的負債の影響範囲や改善コストを可視化し、経営的判断の材料を提供する。再構築のROIや全体最適に資する情報を共有し、プロジェクト推進における承認と支援を得る。

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講評

本答案は、出題者の要求である「解析やメトリクスを活用した技術的負債の評価」「評価の手順と工夫」「関係者調整」をバランスよく網羅しています。方法論・マネジメント・課題解決の3視点がきれいに組み込まれており、ソフトウェア工学の専門性が十分に伝わります。構成も整理されていて読みやすく、得点力は高いと判断します。

評価できるところ

  • 調査・検討事項で、履歴分析、テスト分析、静的解析と性質の異なる3アプローチを選び、重複がなく網羅性が高いこと。
  • 各手順が論理的な順序で示され、実務での適用をイメージしやすい構成になっていること。
  • 留意点で、単なる数値比較にとどまらず、設計意図や周辺モジュールの関係性を考慮する点が、技術士としての俯瞰力を示していること。
  • 工夫点にリバースエンジニアリングやスコア化を挙げ、限られた資料環境での創意工夫を具体的に表現できていること。
  • 関係者調整の記述が具体的で、役割ごとに「何をどう調整するか」が明確に書かれており、マネジメント能力が伝わること。

改善点

  • 調査・検討事項に「メトリクスの種類と品質特性の対応関係(例:保守性=循環的複雑度、信頼性=欠陥密度など)」を一言添えると、解析結果の意義がより明確になります。
  • 手順の最後に、評価結果を改善計画へ反映させるための「フィードバック工程」を加えると、プロジェクト推進力の印象がさらに強まります。
  • 関係者調整の箇所で、情報共有の具体的手段(例:ダッシュボード、定例レビュー会議)を示すと、説得力が増します。

本答案は既に合格水準を超える完成度です。評価軸と改善計画のつながり、情報共有の仕組みまで加えることで、より戦略的かつ経営層にも響く答案となり、楽勝で高得点を狙えると考えます。受講生様は分析力とマネジメント力の両方を備えており、今後も評価から改善への橋渡しを強化する視点を意識されると、さらに大きな強みとなります。

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Ⅲ-1
問題文

パブリッククラウドサービスの種類には大まかにIaaS/SaaS(それぞれインフラストラクチャ/プラットフォーム/ソフトウェアを提供するクラウドサービス)がある。ソフトウェア開発においては、既存のIaaSPaaSを利用し、新たなSaaS型のクラウドサービスを開発することが求められるようになった。このようなソフトウェアの設計を担当する立場で、次の問いに答えよ。

{C}(1)   {C}パブリッククラウドサービスの技術的な特徴や特性を述べ、それらを踏まえて多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ

{C}(2)   {C}前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する複数の解決策を、専門技術・手法を用いて示せ

{C}(3)   {C}前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ

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問題文の解説

この問題は、パブリッククラウド(IaaS/PaaS/SaaS)の技術的特性を踏まえ、新たなSaaS型サービスを設計する立場での課題設定から解決策、さらに将来の懸念と対策までを体系的に論じる力を問うています。出題者は、受験者がクラウドサービスの構造的理解と、情報工学・ソフトウェア工学の専門技術応用によるマネジメント能力を兼ね備えているかを確認しようとしています。

(1)では、まずパブリッククラウドの技術的特徴や特性(例:オンデマンド性、スケーラビリティ、マルチテナンシー、課金モデル、API連携など)を整理し、それらを踏まえた課題を3つの異なる観点で抽出する必要があります。観点は「性能」「セキュリティ」「運用コスト」などのように明確に書き分けることが求められます。ここでは単なる問題羅列ではなく、なぜその観点が重要なのかを背景とともに説明することが得点につながります。

(2)では、(1)の3課題のうち最も重要と考えるものを選び、その選定理由を技術面と事業面の両方から説明することが期待されます。さらに、その課題に対する複数の解決策を示す必要があり、ここでは具体的な専門技術・手法(例:コンテナオーケストレーション、ゼロトラストセキュリティ、CI/CDパイプライン、自動スケーリング設計など)を活用して、実現可能かつ説得力のある提案を行うことが重要です。

(3)では、解決策の実施後に新たに浮上しうる将来的懸念(例:依存するクラウドベンダのロックイン、利用規模拡大によるコスト急増、法規制・データ主権リスクなど)を挙げ、その対策を専門技術の視点で述べます。ここでは、単なる予想ではなく、過去事例や業界動向を踏まえた現実的な懸念と具体策(マルチクラウド戦略、監査ログ強化、負荷予測モデル導入など)を示すと評価が高くなります。

コンサルタントとしての着目点は、

  1. 課題の観点を明確化し、技術特性との因果関係を説明すること
  2. 解決策の多様性と実効性を技術的根拠とともに示すこと
  3. 短期的な効果と長期的なリスクの両方に対応する設計思想を提示すること

全体としては、「課題重要課題の選定複数解決策将来懸念と対策」という流れを明確に構成し、技術力とマネジメント力をバランス良く表現できる答案が理想です。

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模範解答 専門科目 ソフトウェア工学  専門事項 プロジェクト管理  作成日 2025.6.19

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(1)技術的な特徴と3つの課題について

技術的な特徴を4点記載する。

・スケーラビリティと従量課金:システムの負荷変動に応じてリソースを自動的に増減可能であるが、コスト管理において、設計が必要となる。

・管理負荷の軽減と高可用性:データセンターが分散化・冗長化されており、障害時でもサービス継続性を確保することができる。

・多テナント型によるリソース共有:複数のユーザが同じハードウェア(仮想基盤)を共有していること。

・自動アップデートなどの継続的なサービス提供:クラウドベンダーがOS、MW、サービスに対してセキュリティパッチや機能追加を行う。

これらを踏まえて以下3つの観点から課題を記載する

課題①:スケーリングの柔軟性と予測性を両立する。SaaS提供では利用者の負荷変動を前提としてリソース最適化が求められる。スケーラビリティとコストの制御の観点から、リソース過剰確保によるコストの肥大、または、スケール不足によるシステムのパフォーマンスの劣化を防ぐため、設計時点でスケーリングルールの設計と、適切な予測リアルタイムな監視・制御計画を行うためのメトリクス連動型の自動監視を統合する構成とする。

課題➁:モジュール分割により品質と責任範囲を明確化する。クラウドサービスではすぐに利用できるコンポーネントやサービスがあらかじめ準備されている。品質保証の観点から、品質問題、セキュリティ問題が発生した場合の切り分けや責任の所在が不明確になる。利用するコンポーネントを明確にすること。また機能の設計時にマイクロサービス化を図るなどモジュール結合度が高い構成とする。

課題③:既存資産を活かしてクラウド特性を実現する。維持管理性と移行性の観点から、オンプレミス型のシステムに対してもクラウド化が行われているが、クラウドの特性を生かした新システムの構成と、初期導入費抑制のため既存システム資産の再利用を考慮し、維持管理しやすい柔軟なシステム設計を行う。

(2)最も重要な課題とその解決策について

最も重要な課題:①スケーリングの柔軟性と予測性を両立する。理由:本課題はサービス構成の基礎となるスケーリング設計にかかわるものであり、持続性、安定性、コストの各面において根幹を成す。対して課題➁は運用段階での品質管理、課題③は既存構成の最適化であり、設計当初に優先されるべき要素としては①が最も本質的である。

解決策:解決策を以下に記載する

・設計時にログ分析やトレースから平常時・ピーク時の負荷予測を行う。また、運用シナリオと想定データを作成し、負荷試験を行うことで平常時、ピーク時の処理性能とリソース状況の見積もりを行う。複数の運用モードに応じたスケーリングポリシーを段階的に設計。非同期処理キャッシュ技術の導入により、ピーク時負荷を平準化する構成とする。

CPU負荷、リクエスト数、利用傾向に基づくスケール予測を設計段階に行う。CloudWatchなどの監視ツールを用いてCPU負荷やリクエスト数に応じて、仮想サーバ数を自動的に増減するよう自動スケーリング制御を行う。

・スケールごとに予算上限を設計段階で設定し、クラウドの機能を用いて(AWSCostExplorerAWSBudgetsなど)コスト状況の可視化を行い、閾値を超えた場合に通知や構成調整が行われるよう設定する。

(3)将来的な懸念事項とその対策について

懸念事項:制御指標への過度な最適化による品質低下。メトリクス連動の制御により、一時的な負荷変動の上昇に過敏に反応してリソースの過剰投入やスケールダウンが発生する可能性がある。結果、ユーザ体感の品質が一貫性を欠く状態となる。

対策:IaCツールを用いてインフラ構成をコードで一元管理し、構成情報をリポジトリで共有する。またCI/CDツールと連携し、構成変更を自動テストすることでスケーリングの事前検証を実施。定期的にトラフィックシミュレーションを行い、制御反応の妥当性を評価・記録する体制を整備する

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講評

本答案は、出題者が求める「パブリッククラウドの特性理解多面的課題抽出最重要課題の理由と解決策将来懸念と対策」という流れを丁寧に踏襲しており、情報工学・ソフトウェア工学の技術応用とマネジメントの両面でバランス良く構成されています。課題の観点も明確で、専門用語や具体例の使い方が適切なため、得点力は高いと判断します。

評価できるところ

  • 技術的特徴を4点に整理し、その特性を課題設定に直接つなげているため、因果関係が明確です。
  • 課題が「スケーリング」「モジュール分割」「既存資産活用」と性質が異なり、多面的でバランスが良いです。
  • 最重要課題の選定理由が、サービス構成の根幹や優先度の観点から具体的に説明されており、納得性があります。
  • 解決策が設計時の分析、監視ツールの活用、コスト管理までカバーしており、実務的かつ現実的です。
  • 将来懸念も、指標最適化の副作用という技術的リスクを挙げ、それに対してIaCCI/CDによる検証体制整備という適切な対策を示しています。

改善点

  • 課題の解説に「なぜ従来型の設計では十分でないのか」を簡潔に補足すると、設計思想の先進性がより伝わります。
  • 解決策の中で、スケーリング予測の精度向上にAI/MLの活用(需要予測モデルなど)を一文加えると、最新技術応用の印象が強まります。
  • 将来懸念の記述で、ユーザ体感品質低下の例(レスポンス遅延や不安定な画面表示など)を具体的に示すと、説得力がさらに増します。

本答案は既に合格水準を超えていますが、背景説明と最新技術の一言補強を加えるだけで、より戦略性と先進性が際立ち、楽勝で高得点を狙える内容になります。受講生様は、課題の抽出から解決策までを因果関係でつなぐ構成力に優れており、今後も背景・根拠・実装技術の三位一体の記述を意識されると、さらに完成度が高まります。

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