1. 技術士試験とは何か  文部科学省は「コンピテンシー」を求めています

 技術士二次試験の合格基準は文部科学省技術士分科会で決定されます。その方針の柱として、知識ではなくコンピテンシーと言う尺度が提唱されています。詳しくはこの技術士分科会議事録をご覧ください。

この資料を見ますと、文部科学省が『コンピテンシー』という尺度で技術士能力を評価しようとしていることがうかがえます。

この「コンピテンシー」とは、

職務における効果的、ないしは優れた行動に結果的に結びつく個人特性

という意味です。つまり、仕事の品質や性能を高めるような行動をとれる人の特性です。実際に、仕事の現場に出向くわけには行きませんので、試験では事務の場面を模擬して、試験官が答案等から推し量ります。ですので、コンピテンシーをよりわかりやすい形で表現できれば、得点は上がるはずです。

「コンピテンシー」の詳しい内容は次の資料をご覧ください。

【資料6】今後の技術士制度の在り方について(中間報告)  (PDF:914KB)

この会議資料の別紙2では、コンピテンシーのいろいろな側面について書かれています。

2. 技術士二次試験の方針 (文部科学省見解)

技術士二次試験の方針は次のイメージ図にわかりやすく書かれています。

これを見ますと、技術士二次試験は

申込み書(業務経歴ほか)筆記試験口頭試験

の3段階で考課され、それぞれの趣旨が明確に定義されています。

筆記試験でチェックされること(合格基準)については次のページ詳しく定義されています。

抜書きするとこうです。これらは筆記試験の問題番号にリンクしており、それぞれ問題の性格を表しています。

 専門の技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理等に関わる汎用的な専門知識を確認する                                       ・・・・・・Ⅱ-1 

 また、これまでに習得した知識や経験に基づき、与えられた条件に合わせて、問題や課題を正しく認識し、必要な分析を行い、業務遂行手順や業務上留意すべき点、工夫を要する点等について説明できる能力(応用能力)を確認する。                       ・・・・・・Ⅱ-2

 さらに、社会的なニーズや技術の進歩に伴い、社会や技術における様々な状況から、複合的な問題や課題を把握し、社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て、解決策の導出にあたって論理的かつ合理的に説明できる能力(問題解決能力、課題遂行能力)を確認する。 ・・・・・・Ⅲ

3. 技術士試験の判定基準

 「今後の技術士制度の在り方に関する論点整理」に記されていた、技術士に求められる特性、すなわちコンピテンシーについて委員の考えが示されていて、これが判定基準をイメージさてくれます。

(1)広い知識と深い専門性

T型、Π型のような、技術横断的に広く問題を把握し解決できる能力と深い専門技術を兼ね備えていること。

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(2)経済的価値の創造

技術者のリーダーとして、幅広い基礎技術と基盤技術・技能を有するとともに、知の結合によって社会的経済的価値を創造できる人材(Σ型人材という)

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(3)実社会での対応力

正解のある問題を解けるだけではなく、実社会で遭遇する課題に適切に対応できる。別な見方をすると、企業等が行うエンジニアリング業務ができること。

4. 技術者、技術士に何が求められるている? (もう少し詳しく) 

 前述の委員会資料「技術士制度に関するヒアリング結果」では、さらに分析されて、技術者、技術士に求められる資質としてまとめられています。これらの具体的イメージを表す特性は、技術士二次試験の問題文の文言とピタリと一致しています。

4-1技術者に求められる資質・能力

  • 問題解決のためのストーリー(シナリオ)を描く力、それに必要な技術力を保有し、それを具現化するための適応力、説明力、調整能力
  • 問題解決に向けて、課題を抽出し焦点化する能力
  • 問題、課題を理論的に思考し、実践する能力
  • 問題に対するより高度な解と品質向上のために粘ることができる能力(気質)
  • 抽出された問題を解決するために、必要なチームを組成し、資金運営を含めて、マネジメントする能力
  • 幅広い技術的な基礎は言うまでもなく、応用力現場条件、顧客ニーズ等に合わせた設計上の工夫をする能力)
  • 与えられた業務を正確かつ迅速に処理する実行力

4-2 技術士に求められる資質能力

  • 問題・課題をそしゃくし、自分の持っている知識や技術を基礎にして、不足する知識・技術を身に付けて解決する。
  • 取りまとめ力・管理能力 自分にはないが、問題解決の能力のある人材/組織を活用して目的を達成する能力(特に昨今はプロジェクトの規模が大きく複雑化し、自分の専門分野以外の広い知識分野も協調させて目的を達成しなければならないケースが多い。)
  • 自らの専門分野の知識・見識を幅広く有して、業務上の課題を発見し、分析する能力
  • 業務上の課題発見・分析能力: 様々な制約条件下での対策案を企画立案できる能力
  • 全体を俯瞰し総合的に検討しコーディネートする能力
  • 論理的思考能力、戦略的思考能力
  • 技術をベースにした問題解決能力
  • プロジェクトマネジメント能力(成果の品質、工程、コスト、人材等の投入等を管理できる能力)
  • リスクマネジメント: 万一事故が発生した場合の影響を十分に認識し、社会に対する責任を常に持つ

5. 技術士試験で求められる特性のまとめ

 以上、まとめますと、「T型」の専門能力を持ち、経済的価値を生み出し、エンジニアリングの実務ができる、あるいはプロジェクトにおいて課題を発見し、制約条件下でのベストの対策案を立案できる能力といえます。こうした技術士試験の合格基準となってくる事項が次のページで整理されています。

 こうしたことに重点を置いて答案を書いていけば、自然と試験官に評価されることになるのです。

 技術士試験の問題文ではこのような要求が明示されることはありせん。しかし、必ずそのような出題意図が背景にあるものと考えて、問題解答に臨んでください。この出題意図の分析により、問題の正解率をずっと高めることが可能です。

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