H28年 建設・施工 Ⅲ-1問題 模範解答と解説
問題文
我が国の労働人口が総じて減少する中で、将来にわたる社会資本の品質確保を実現するためにその担い手(建設技術者、建設技能労働者)の中長期的な育成及び確保を促進するために対策を講じる必要があると考えられる。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)担い手不足が生じる要因を2つ挙げ、それに伴って発生する施工分野の課題を記述しなさい。
(2)(1)で挙げた課題について、あなたが実施できると考える具体的な対応策と期待される成果を発注者、受注者の立場を明確にしたうえで記述しなさい。
(3)担い手不足に対応するために建設部門全体で取り組むべきとあなたが考える方策を記述しなさい。
1.担い手不足が生じる要因と課題
①少子高齢化により労働人口が減少している。さらに3K等に代表されるマイナスイメージから技能労働者が増えてこない。課題はグローバルな視点で労働力を確保して作業の品質・工程を維持することである。
②工事量の膨大化や自然災害対策や高度経済成長期に建設された構造物が一斉に更新期を迎えるため、施設維持工事が滞っている。課題は、維持工事の技術者の育成である。
2.担い手不足の対応策と期待される成果
①建設需要の増大に対応するために外国人労働者を積極的に採用する。型枠工事や鉄筋工など人による作業が適しているものを行う。期待される効果は、品質と工程の確保である。
②維持管理工事の現場で、少ない人数で効率を上げられるようにICT技術の活用を図る。特に維持・管理にICT技術の活用を図る。期待される成果は、難度の高い維持工事も若手技術者でもできるようになる。
3.建設業全体で取組むこと
①業界全体で外国人技能者の国の風習・習慣を学ぶ機会を設ける。また、外国人労働者の派遣国に日本人講師を派遣し、鉄筋工や型枠工などの技術を現地で習得する機会を設ける。
②ICT技術・IOT技術を活用する。市町村・県・国など個別に管理していた構造物情報をクラウドコンピューティングを利用し集積し、専門家による判断・補修方法を行うシステムを構築する。
解説
この問題は建設技術者、建設技能労働者の担い手の不足といった労働力需給に関する問題です。問1では担い手不足が生じる要因を2つ挙げ、その課題を求められています。原因については社会経済的な背景を述べると良いでしょう。一方、課題については3k問題や他産業との労働需給などといった問題点の指摘ではなく、建設、施工の視点から解決策をに至る方針を示す必要があります。
一般的に「課題」と言う言葉の意味は、「〜すること」と「〜という問題点がある」の2つの意味で用いられています。例えばこの問題で言うと、
- 建設技術者が不足していることが課題である。
- 建設技術者が不足している(問題点)ため、その確保が課題である。
というように問題点を課題として取り扱うことも一般的に行っれています。ただし技術士試験ではエンジニアの判断力を問いかけるため、
「課題は?」と問われたら問題点ではなく技術的な判断を添えて回答する
ことが望ましいといえます。出題者の意図は、単なる問題点を把握するという一般的な見地ではなく、エンジニアとしての問題解決の姿勢を問いかけているわけです。この時に技術的な判断が伴わなければ、建設、施工の答案として採点することができないからです。
問2では、対応策と成果を問われています。この理由は解決策の提案とその方策が目指す解決イメージが具体的にできているかを問いかけるものです。こうした解決済を目指す方策提案というのがコンピテンシーの本質であることから新たにこのような形式の問いが出題されたのだと考えます。コンピテンシーとは何か?こちらをご覧ください。
「発注者、受注者の技術者の立場を明確にしたうえで」とは、誤解しやすいようです。この意味は、もしあなたが発注者なら、発注者の技術者としての立場を明確にしたうえで、その立場上必要となる品質管理の必須事項に触れて解答せよという意味です。発注者と受注者両方の立場からそれぞれ述べると言う事ではありませんのでご注意ください。
問3では建設部門全体で取り組むべきことが求められています。この意味は個人的な見解ではなく、組織やあるいは会社の枠を超えた業界としての対応姿勢や考え方を求めるものです。すなわち、技術士と言うものは指導者の資格であり、自分自身がどう行動するかだけではなく、組織や業界をどう導いていくかというマネジメント力が求められるということです。このような能力を「取りまとめ力」と呼んでいます。取りまとめ力は技術士が備えるべき能力として、文部科学省技術士分科会でも位置づけられており、今後もⅢ問題などで出題されることが予想されます。専門知識での解決ばかりでなく組織運営をどうするかや、他の専門集団を指導して取りまとめていく工夫が求められるということです。
1.担い手不足の要因と施工分野の課題
(1)技術者の高齢化による減少
日本の高度経済成長期を支えてきた高度な技術は、中心となって活躍した技術者が、高齢化により引退し始めているため、減少してきている。これに伴い、現場でのいわゆる職人技についても、高齢化した技術者では、身体的に複雑な作業の実行は困難である。
このような高齢化による人手不足や、身体的な衰えに対しては、作業の機械化による省力化や効率化をすすめることが課題である。
(2)新規入職者の減少
建設業は他産業と比べて労働時間の長さと賃金の低調さ、残業が多いなど、就労環境が悪い実態がある。このため、建設業に対する魅力を感じない人が増加し、新規入職者は継続的に減少している。
このような状況を改善するためには、女性や外国人などの未経験者でも従事しやすいように、特別な技能や知識が無くても従事が可能状況なを整備して、労働者への負担を軽減しながら、生産性を向上することが課題である。
2.対応策と効果
(1)機械化による重労働の削減
建設現場での労働者の体力や持続力、器用さなどの能力差により、製品の制作の可否や品質が異なる結果になっている。これを解消するために、資機材の運搬や設置、組立には、重機械を積極的に活用することで労力を軽減できる。また、現場の状況により重機械が入らないような狭隘な場所においては、小型化した機械の活用で対応ができる。また、既設構造物が近接していて人がかろうじては入れるような狭隘な場所では、人がロボットスーツを着用することにより、身体的な負担を軽減しながら、作業ができる。
以上の効果として、既存の習得した専門知識や経験を生かして、少人数で従来と同等以上の労働生産性を向上させることができる。
(2)ユニット化の導入
施工現場での複雑な作業を低減しながらも品質を確保できる方法として、資機材のユニットがある。現場合わせの多い足場工においても、ユニット化が進み、従来よりも組立解体作業が早く正確に施工できる。
また、本体構造物においては部材をプレキャスト化することで、現場条件に左右されない安定した場所で事前に鉄筋や型枠を組立てられるため、高い品質が確保できる。
以上の効果としては、未経験の作業者でも品質確保ができるため、女性や高齢者、外国人などを含め、就労人口の向上が期待できる。
3.建設部門全体で取り組むべき方策
(1)他分野の個別技術の活用
担い手不足の解消のため、新たに他分野との接点を見出して活用することが必要である。従来は単独の会社や分野だけで行われていたため、多様な案が不足していた。例えば、土木工事に欠かせない測量技術においては、無人飛行体(ドローン)の活用や、医療分野のCTスキャン技術を適用して、早く正確な座標化が可能である。
このように、近年急速に発達してきた技術ならば、従来からの固定観念がないため、新たな技術を導入しやすい。
(2)ビッグデータの活用
多様な事項をデータ化するビックデータの活用により、近年問題化してきているインフラの老朽化による上下水道の漏水検知システムの構築ができる。このような社会インフラの点検や損傷程度データ蓄積は、老朽化による劣化予測を可能にし、インフラの長寿命化に活用することができる。これは従来の構造物毎に個別に状態を判定する考え方と異なる新しい技術といえる。
今後、国内のインフラ老朽化に置ける情報を諸外国のものを含めて、さらに大きなデータとしてシステム構築していくことで、精度を高め、世界のインフラ管理技術を先導できると思う。以上。
解説
1.では、担い手不足の原因を分析し、その根本的な要因に対して対策を提案します。
2.の対応策と効果は、建設部門施工科目としての具体的な対処方法を延べ、それによって得られる解決イメージを示します。こうした効果や成果を求められる理由は、解決に結びつけると言うコンピテンシーの考え方が備わっているかということを確かめています。
3.建設部門全体で取り組むべき方策とは、単一の企業ではなく業界全体としての幅広い取り組みについての考えがあるかどうかが問われています。個人の見解を述べる事は簡単なことですが、業界全体としてどう推し進めていくかを答えねばなりません。こうした業界全体の方針策定や組織の運営というものは、マーケットに対する見識や取りまとめのノウハウが必要であり、技術マネージャとしてのコンピテンシーそのものなのです。このため、こうした能力がが技術士としての必須な資質として試験で問いかけられると言うことです。
(1)-1担い手不足の要因
①給料が安い,休みが少なく労働時間が長い
(1)-2担い手不足による施工分野の課題
①社会資本の整備ができずに寿命が短くなる
②災害復旧の対応が遅れ危険性が増す
(2)実施できる具体的な対策
①受注者として記載する
②建設労働者のために
- 社会保険に全員が加入する
- そのための社会保険料を工事費とは別に支払う
- 工事費の単価を見直す
- 生産性を向上させる工法,技術の導入
③建設技術者のために
- 残業をしない日を決めて終業時刻がきたら退社する
- 休日出勤に対し代休を取得させる
- ICTを利用した検査システムを活用し業務時間短縮
(3)担い手不足のために建設部門全体で取り組むべき内容
①生産性を向上させる
- プレキャスト化,プレファブ化.工業化
- ICTの活用
②女性の活躍推進
- 作業環境整備
- 出産後の現場支援
- 業務復帰のシステムの構築
③若手の活躍できる場をつくる
- 実務経験がなくても資格試験を受験できる
- 教育訓練の充実
④適正工期で工事を受注する
- 国交省と日建連で作成した標準工期設定システムを活用して工期を設定
⑤適正な単価で発注する。
- 重層下請の構造を改める
・プレキャスト化,プレファブ化.工業化
・ICTの活用
簡易答案形式で表しています。当研究所では、3枚問題の答案全体をこのような全40行程度の箇条書きで表す練習を行っています。この方法ですと答案の文章の直しに忙殺されることなく、答案骨子の作成と言う本質な勉強を行うことができます。 この方法では、まず与えられた命題である担い手不足問題を分析し、それに対して具体的な対策を挙げ、次に建設部門全体で取り組むべき内容へと、全体を見渡して視点を変えて述べることがしやすくなります。 この全体を見渡すということが全体のまとまり感を出すのに役立っています。 技術士試験の合格基準が何かほとんど公表されることありませんが、今年の総合技術監理部門の問題には次のような採点基準を表す文章がありました。 「書かれた論文を評点する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして論文全体のまとまりを特に重視する。」 このことから全体的なまとまりが大切なことがうかがえます。
1.担い手不足が生じる要因
(1)建設投資額の減少と受注競争の激化
長期的な傾向として建設投資額が減少する事により、公共投資額が減少し、その内訳も新規投資余力はあまり見込めず、大規模プロジェクトも減少傾向にあった。しかし近年ではオリンピックなどの需要を背景に建設投資が急増している。このため増加した工事量に対して建設技術者の比率が低下傾向にあり、技術者不足が生じている。また、コストダウン要求が強い一方で、建設材料や労務といった原価は上昇しており、建設業の収益構造は厳しくなりつつある。その為、労働者は、高い賃金を望めずしわ寄せが、労働者に行っている。労働者の就労環境が悪化し、これを看過すると技能労働者等のさらなる減少が生じ、平常時においても技能労働者等が著しく不足する事態が懸念される。
(2)技術者不足
近年、著しく人口が減少し高齢化社会となっていくと同時に、建設技術者も大幅に不足している。熟練労働者は高齢化により引退していき、一方若年労働者は建設業に対して、他産業に比べて魅力が感じられなくなっているため敬遠する傾向にある。その為、技術労働者が全体的に不足している。
2.担い手不足に伴って発生する施工分野の課題
建設市場において、低価格要求が強まり繁忙化すると、これまでのような標準的工期でじっくりと技術継承できるような工事が少なくなり、熟練労働者・技術者の技術が伝えられずに途絶える危険性がある。このため、若年労働者に技術伝承する時間、場を増やして、継承機会を増していく必要がある。この具体的な方法は、熟練労働者・技術者の定年後再雇用など、雇用期間を延ばすことで可能である。
一方、技術継承の受けて(担い手)として建設労働者以外に、女性労働者や外国人労働者など、新たな労働者市場から人材を調達することも必要である。
3.実施できると考える具体的な対応策と期待される成果
3-1定年後熟年労働者の再雇用
近年熟年労働者が大量に定年を向かえ退職しているが、これらの方を再雇用して、若手の指導に当たってもらう事が有効である。体力を要する労務は軽減し、若年労働者に指示したり、説明したりすることによりほとんどの技術継承は可能である。こうした労働者の活躍により大きなコスト増を生むことなく、技術継承が可能となる。
ただし熟練労働者の多くは、自らの技術が継承に値するものであるという意識が薄かったり、技術はあってもそれを伝えるコミニケーション能力が不足していたりするケースが多い。このため技術継承のための伝える技能を高める指導が必要である。
3-1女性、外国人労働者の雇用
建設業は国内産業かつ環境条件も厳しいためのため、日本人男性労働者以外には閉鎖的な業種であつたが、近年女性や外国人は確実に増加しつつある。これらの労働者をさらに増やすため、ユニバーサルでグローバル対応できる快適な環境を目指すべきである。建設現場特有の危険性を排除するとともに、肉体的な制約も排除するため機械化していく。外国人対策としては欧米人、アジア人以外に中東地域の人も招くため、ハラル対応の給食や礼拝所を取り入れていく。これらの対策によって、かつてない建設労働者の確保が可能となる。
4.建設部門全体で取り組むべきと考える方策
4-1 建設業の魅力アップ
建設業が若者に対して魅力あるものとなるため、労働賃金の向上、労働環境の改善、土日、祝日等休日の確保、残業時間短縮を業界で足並みそろえて進めていく。
4-2 IOT技術による効率化
建設産業の効率化を図るため、業界から情報通信分野に要請し、情報化技術の助けを借りて、建設の施工分野にIOT技術を導入し、効率的な現場管理を目指し、生産性を上げていくことが必要である。一方で、担い手の定着率を高めるため、これまでKKDとか言われてきた現場技術を誰もが理解しやすく、汎用性の高い専門知識として再構築していく必要がある。こうした建設技術のナレッジマネジメントは、熟練労働者等若手労働者及び外国人労働者のコラボレーションによって達成可能であると考えている。
解説
この回答は、担い手不足が生じる要因をマーケットの状況や建設需要の動向から分析しようとしたものです。現在日本が置かれている環境を考えると、これから迎えるオリンピックの需要期を控え担い手不足が深刻になることが予想されます。こうした一段と厳しい状況を乗り越えるため、出題者は特段言及してはいませんが、実際には思い切った方策が必要とされているという前提を感じ取る必要があります。
「2.担い手不足に伴って発生する施工分野の課題」
ここでは少ない人材によって、これまで以上に技術継承を行っていくためのあなたの方法論について述べられています。日本人男性労働者以外に担い手を増やすためには、必然的に女性や外国人労働者を受け入れる必要があるため、そのような新たな対応を模索する必要があるということです。この背景として、変化に対応できる技術者の能力を求めている(これが技術者コンピテンシーの1つ)ことを感じ取る必要があります。
「3.実施できると考える具体的な対応策と期待される成果」
ここでは具体的にどのように熟練労働者保確保して担い手に指導を行っていくなと言う方法論について具体的に述べています。このように中段では、前段で整理した課題に対して、論理的に矛盾が生じないような一貫性のある解決策を提案していきます。この改善策は次ページの最終段とも整合させる必要があるため、中段では、個別の解決策、そして最終巻では業界全体としての解決策といったスケール感を持たせる工夫が必要です。
「4.建設部門全体で取り組むべきと考える方策」
上記3で提案した方策に対して建設業全体としてどう推進していくかという考え方を示します。この個人ではなく組織としての対応を求めるゆえんは、技術士の資質として指導的能力あるいは取りまとめ力といった能力が求められるからです。個人の貢献だけでなく、周囲や専門外の技術者も巻き込んだプロジェクト全体としての業績をまとめる視点が求められています。
こうした取りまとめ力、指導力といった能力は、技術者のコンピテンシーとして最も高い能力として位置づけられるため、その回答による得点、力は相当大きな物となることが予想されます。ここで専門家らしい見解を表明できれば、それだけで十分合格力が期待できるということです。
担い手不足の要因と施工分野の課題
【担い手不足の要因】
①敬遠される労働環境:建設部門の担い手は、平成9年ピーク時の75%に減少し、中でも入職者は半減した。
これは、長期にわたった建設投資の減少による労働市場の縮小と少子高齢化に伴う労働人口の減少が背景にある中で、とりわけ3Kと云われる建設業のマイナスイメージによる、入職者の敬遠が主な要因である。
②高まる建設需要:平成23年東日本大震災を契機に、我が国の建設投資は上向きに転じた。これは、震災復興ほか地震対策、異常気象災害等の自然災害対策、急増する老朽化インフラの維持管理など生活及び安全確保のインフラ整備、ならびにオリンピック・パラリンピック準備に係る建設需要の増加が主な要因である。
【施工分野の課題】
①入職者確保のための、快適性向上、安全確保など処遇、労働環境の改善
安全で快適な職場づくりにより、処遇・労働環境のマイナスイメージを排除し、入職者を確保する。
②若手担い手早期育成のための、教育訓練の推進
担い手の教育訓練を外部で行うなど、職業訓練校等の活用により、人手不足で弱体化した社内OJT教育を補い、若手への技術・技能継承と早期育成を促進する。
③生産性向上のための、ICT、IoT等新技術、PCa等新工法の活用
情報新技術、新工法などの活用により、建設生産分野での省力化、効率化、高度化を拡大し、人手不足を凌ぐ生産性向上を推進する。
具体的な対応策と期待される効果
受注者の立場として、
①対応策:未経験者からも好感の持てる、快適な職場への改善及び作業の危険性排除など労働環境の改善
【期待される効果】若手未経験者の入職を促し、人手を確保することで、品質・工程が確保できる。また、人手不足によるムリを軽減し、長時間労働の改善、休日の確保など労働環境を改善できる。このことで、入職者の定着も促進できる。
②対応策:中核技術者・技能者による社内研修及び外部教育訓練機関での担い手研修の導入
【期待される効果】人手不足により弱体化したOJT教育を補い、若手担い手への技術・技能継承確保と担い手の早期育成ができる。また、中核技術・技能者の現場負担を軽減できる。
③対応策:ICT建設機械などICT、IoT技術の活用促進
【期待される効果】情報制御の機械・器具を適所で活用することで、作業が省力化、効率化、高度化できる。また、未熟練技能者まで就業機会が拡大することで、人手不足と重労働を軽減するとともに、技能習熟度に依存しない品質確保と作業能率向上が促進できる。
建設部門全体で取組むべき方策
①適正な工期設定による労働環境改善
工事施工において、受発注者の工程管理担当間で、施工フロー・工事全体のクリティカルパス、施工中の現場工程など工程管理情報を共有し、工期設定支援システムを積極的に共同活用する。これにより、従来の人手作業に伴う、担当者の習熟度、情報量による差異や不透明性を排除し、施工中の条件変化等に対し、速やかに適切な工期変更を行うなど、適正な工期設定を促進する。
②市場要求を組込んだ教育訓練による担い手育成
専門工事業、教育・訓練機関がゼネコンと連携して、担い手の職種・技能レベル別教育訓練体系と実務的教育内容、教材等を整備し、全国各地の訓練校へ普及推進する。ゼネコンの工事動向、職種・技能ニーズを共有し、これに応える職種育成、技能研鑽を組込むことにより、教育訓練の充実、質的向上を推進する。
③情報新技術、新工法活用のための条件整備
調査・設計、維持管理など建設生産に関係する、他分野と施工技術情報を共有し、調査、設計段階からのICT等情報技術、PCa等新工法の採用、施工段階での新技術導入を促進する。そのために、設計基準、その他技術基準、歩掛り等の基準類整備を推進し、調査・設計段階のほか、様々な建設生産プロセスでの新技術・新工法の活用と普及拡大を促進する。
模範解答6 (簡易形式1) 0回 2019/7/6 専門事項 現場施工管理
(1)担い手不足の要因と課題
①若手入職者の減少
要因:低賃金、長時間労働、休みが無いなどによる労働環境の悪化と、少子高齢化による生産年齢人口の減少。建設技能労働者不足は、社会資本整備の遅延の原因のため問題である。
課題:建設技能労働者不足を解消し社会資本整備の遅延を防止する、生産性の向上。
②指導者不足
要因:団塊世代の一斉の退職により指導者不足となり、建設技術者の担い手不足が生じる。建設技術者不足は、社会資本の品質低下の原因のため問題である。
課題:社会資本の品質に影響を与えない、効率的な建設技術者の育成。
(2)対応策と成果(受注者の立場)
①ICTの活用
対応策:ドローンによる山岳地などの起工測量や、盛土工・舗装工をマシンコントロールなどによる情報化施工とする。
効果:ドローンの高精度のデータ取得。情報化施工の高効率、高精度の作業。
②効率的な育成
対応策:ナレッジマネジメントによる熟練者のマニュアル化しにくい暗黙知を形式知に変えて育成する。ディスプレーによる仮想空間により建設現場を体験する。
効果:熟練技術を形式知化するため、多くの後継者に共有ができる。
仮想実現は、現場に行く必要がないため、いつでもどこでも研修が可能である。
(3)アイ・コンストラクションによる建設部門全体での取り組
①施工時期の平準化
繰越制度や債務負担行為の活用により工期・工事時期を適正化し生産性を向上する。
留意点は、発注機関により工事時期が重複し技術者が不足する。
対策は、CIMの活用による施工条件の誤認防止などにより、技術者不足に対応する。
②規格の標準化
作業の簡素化により、現場での複雑な作業を減少する。女性や外国人など未経験者でも作業が可能である。工場製作のため工期短縮により生産性を向上する。
留意点は、製品が大型のため市街地などの搬入が困難である。
対策は、製品を小型化しハーフプレキャスト化にする。