H28年 衛生工学・建築環境施設 Ⅲ-1問題 模範解答と解説 (公共建築の地震発生後の給排水衛生設備BCP対策設計)

問題文

 2011年3月に起きた東日本大大震災、今年5月に起きた熊本地震において、都心部や市町村における様々な用途の建物が、莫大な被害を受けた。このような大規模な地震災害が発生した際に、防災拠点や避難拠点となる県・市庁舎等の公共建築、学校等の公共施設において、被災時においても事業を継続できる事業継続(BCP)計画、住民の生命や生活を維持できる生活維持計画(LCP)の整備が必要性とされている。これから、計画し建設される公共建築や公共施設においては、それらへの対策が強く求められている。特に建物周辺の水環境や建物内の給排水衛生設備は、生命維持や衛生性の確保等の観点から、優先的に検討されるべき要素であり、震災時への備えという観点からその具体的な方策が求められている。このような状況を踏まえ、公共建築、公共施設における水環境や給排水衛生設備の計画・設計について、以下の問いに答えなさい。

(1)事業継続計画、避難住民の生活維持計画への備えという観点から指摘できる建物及びその周辺の水環境や建物の給排水衛生設備の課題点を2つ以上述べなさい。

(2)(1)で述べた課題点を解決するための基本方針を2つ以上述べなさい。

(3)あなたが示した基本方針のもと、それを解決するための実現可能な要素技術を2つ以上提案し、それらの概要、計画方法、期待されるメリットとデメリットについて述べなさい。

模範解答1

(1)建物及びその周辺の水環境や建物内給排水衛生設備の課題点について

1.課題点①:トイレ環境の確保

1)課題点の内容

震災時、排水の放流先が確保出来なく事が想定される為、汚水を浄化処理して再度洗浄水として循環利用するシステムが必要となる。

2.課題点②.飲料水の確保

1)課題点の内容

震災により、長期にわたる避難生活を余儀なくされる場合を想定し、周辺の水環境から、水処理を行い飲料水として確保できる造水システムが必要である。

(2)(1)の課題点を解決するための基本方針

1)課題点①の基本方針

 浄化槽等の後処理装置に3次〜5次での多段槽による浄化処理機能を組み合わせる事で、クリーンな水質(BOD5ppm以下)が確保でき、トイレ洗浄水として再利用する。

2)課題点②の基本方針

 地下水・雨水・海水といった水源から、UF膜(限外ろ過膜)を使用した水処理設備を配置して、ウィルス、一般細菌、大腸菌をはじめ各種SS成分を除去し、飲料水を造水する。

(3)(2)の基本方針のもと解決するための実現可能な要素技術

(3)−1.課題点①の基本方針を解決する要素技術

1)要素技術

汚水再利用による無法流システム装置技術

2)要素技術の概要、計画方法、期待されるメリットとデメリット

イ)概要

 トイレから放流される汚水を、多段階的な生物処理槽による浄化過程を経て、再度トイレ洗浄水として再利用する。

ロ)計画方法

①従来の合併処理浄化槽による処理機能に、接触ろ材としてかき殻を使用した生物処理(嫌気性・好気性質)機能を組み合わせ、更に高度ばっ気室で浄化する。

②着色物質や臭いなどを吸着する為、活性炭による吸着装置過程を経て、送水用ポンプによってトイレ洗浄水として循環利用させる。

ハ)期待されるメリット

①浄化経路過程において、各段槽で浄化能力の高いかき殻によるろ材を接触させる浄化水路とする事で、循環水として良質な水質が得られる。

②処理水は放流せず再利用するので生活環境や自然環境の汚染が守られる。

二)デメリット

①多段槽での処理過程となる為、広い施設スペースが必要となる。

②エアーポンプ機器などのランニングコストがかかる。

(3)−2.課題点②の基本方針を解決する要素技術

1)要素技術

 膜処理による無菌水精製技術

2)要素技術の概要、計画方法、期待されるメリットとデメリット

イ)概要

周辺の水環境からの原水をUF膜モジュールに通水させる事で良質かつ無菌の飲料水を造水する。

ロ)計画方法

①原水を原水槽で貯留し、膜ろ過ポンプにより、原水中に含まれる不純物などを自動洗浄式ストレーナーで除去する。

②低圧でUF膜モジュールに通水させ、除菌及び精密ろ過処理する。

③処理水を浄水タンクなどに貯留し、蛇口などを設け飲料水として利用する。

ハ)期待されるメリット

①施設を小型化に集約できる。

②操作がし易く、災害時に素早く対応できる。

③自家発電機や大型貯水タンク等を付設する事で、停電時などに長時間稼動させる事が可能となる。

二)デメリット

原水水質の悪化など大きな変動があった場合、膜が微細の為、目詰まりし易く、浄水処理性能が低下する。

解説

模範解答2

(1)BCP、LCPの観点から指摘できる建物・周辺水環境・建物給排水の課題点2つ

1)市庁舎

  親水広場の水有効利用

  震災時の給水・排水確保

  業務継続(震災後の各種対応)

2)学校

  プールの水有効利用

  震災時の給水・排水確保

  避難場所としてLCP対策

(2)基本方針

1)震災直後の給排水確保

2)早急な給排水復旧

(3)実現可能な要素技術

1-1)非常用浄水装置

  概要:親水広場やプールの水を浄化して緊急飲料水として使う

  計画方法:可搬式の浄水装置、およびバッテリーを常備する

  メリット:上水道が破断しても飲料水を確保可能

  デメリット:上水道と比較すると水量が限定的

1-2)継続排水

概要:下水道本管が途絶した際に、一定期間、排水可能にする

  計画方法:下水ピットを2層に分け、非常時に開放し、また外部排水管にはマンホールトイレを設置可能にする

  メリット:下水道本管が途絶しても衛生的に(仮設含め)トイレを使用できる

  デメリット:排水期間が限定的

2 )給排水管の耐震施工

  概要:建物基礎貫通する配管を途絶しても復旧を容易にする

  計画方法:基礎貫通部分の配管をフレキシブル接続し、建物内部と外部を縁切り、地震の影響を軽減する

  メリット:配管破断時に復旧が容易

  デメリット:フレキシブル接続はコストアップとなる

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