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H29年 建設・鋼コン Ⅲ-3 模範解答と解説

問題

 近年、建設業界においては、就労者の高齢化や若年入職者の減少等が問題となっている。また、社会資本の大規模更新や震災復興事業が増加しており、生産性向上が求められている。一方、生産性向上と同時に品質確保が重要となる。このような観点から以下の各設問に答えよ。

(1)コンクリート構造物の建設において、建設現場の生産性を向上させるために検討すべき項目を多様な観点から記述せよ。

(2)(1)の検討すべき項目のうち、あなたが重要であると考える技術的課題を1つ挙げ、実現可能な解決策を2つ提示し、それぞれの具体的効果を記述せよ。

(3)(2)で提示した2つの解決策について、構造物の品質確保・向上の観点からメリット・デメリットを記述せよ。

模範解答1  専門とする事項 構造物維持管理 

1.コンクリート構造物の生産性向上の検討項目

(1)全体最適設計を図る

 現地と設計条件の不一致や施工性に配慮されていな設計図面など設計段階での検討不足により手戻りや手間が多く、生産効率が悪い問題がある。そこで、品質や生産性の向上などフロントローディングの考えに基づく、設計段階で評価できる全体最適を図る手法を検討する。

 道路橋の橋脚を対象とするコンクリート構造物と仮定する。現地と設計条件の不一致として、例えば、橋脚基礎を施工するためオープン掘削で設計したが安全勾配をとった結果、現道にかかり、土留工等の仮設が必要となる。施工性に配慮されていない設計図面は、杭基礎、フーチング、柱部の取合部に重ね継ぎ手を設けるなど。現地の制約条件から、部材の形状や寸法を大きくできずに過密配筋状態となった設計に対し、現場で鉄筋組立ができなかったり、鉄筋組立が可能であってもコンクリートが十分に充填できなかったりする。

 設計段階での検討不足の原因は、杭の軸方向鉄筋やフーチングの主鉄筋、橋脚柱部の軸方向鉄筋について、これらの鉄筋交差部にどのような配筋状態になるのかを検討していなかったことによる。以上の結果、設計変更による手戻りや鉄筋輻輳部などの締固めなど多くの手間が生じ、生産効率が悪い問題が発生する。

 これを防止するため、品質や生産性の向上などフロントローディングの考えに基づく、設計段階で評価できる全体最適を図る設計手法を検討する。例えば、鉄筋の輻輳する箇所は通常ならば2D表示で鉄筋干渉の有無が確認できない。これには3Dモデルの活用により、鉄筋干渉の有無や内部振動棒の挿入の可否がわかる。問題があれば、重ね継手部は機械式継手に変更する、鉄筋径を太くし配筋ピッチを広げる。

 現地調査により、設計した内容で施工できるか、維持管理を想定した点検のしやすい構造であるか、事後保全が困難な箇所は、通常よりも高品質高強度のコンクリートの採用や表面被覆工法などの予防保全を最初から設計で盛り込むなどの検討し設計段階で評価できる全体最適を図ることにより手戻りや手間を省き、コンクリート構造物の品質及び生産性向上が実現できる。

(2)サプライチェーンマネジメントの導入

 建設現場は一品受注生産が基本であり、資材発注後の仕様の確認、製造と手順を経る。このため、納品に時間を要することが問題である。そこで、発注情報(規格、数量)の事前発信により関係者間で共有すれば、早期の調達計画や材料調達のミスマッチを解消できる。その結果、待ち時間のロスがなくなり、生産効率が向上する。そこで、調達の効率化を図る手法であるサプライチェーマネジメントの導入を検討する。

 コンクリート構造物は一品受注生産が基本であり、足場設置、鉄筋組み、型枠組立、コンクリート打設と多くの手順を踏む。施工するには、まず、コンクリート工事を受注した建設会社から専門工事会社(鉄筋工、型枠大工等)、建材メーカー・生コン会社、材料メーカーへと発注し、その逆の流れで供給連鎖が発生する。この調達の流れの中でメーカーが仕様を確認、製造と手順を経る。

 例えば、塩害地域のコンクリート構造物に使用されるエポキシ樹脂塗装鉄筋は、加工後、特殊塗装を施すため、製作に時間がかかる。このため納期に時間を要する問題がある。この影響で後作業が進められず、工程に遅れが生じる。この他にも景観箇所に用いる特殊型枠や軽量コンクリートなど特殊材料を使用したコンクリートなども同様である。この解決策として工事発注前の情報でこれらの規格・数量などを発信し、関係者間で情報を共有する。

 例えば、エポキシ樹脂塗装鉄筋の数量や規格が事前に判明していれば、メーカー側は発注を待たずに製作を進められるため、受注業者からの発注を受け、すぐに納品できるようになる。その結果、後作業に待ち時間がなくなり生産性向上が実現できる。また、材料調達を分析すると、メーカー側は、仕様を事前情報で把握できるため、工事受注者側からの発注時の仕様(規格・数量)を誤る材料調達のミスマッチを防止できる。

 さらに、発注スケジュールの事前把握により、これらの早期の調達計画が可能となる。このように、調達の効率化を図る手法がサプライチェーンマネジメントである。

(3)コンクリート工の効率化

 土木現場は一品生産が原則であり、コンクリート構造物も現場ごとに寸法が異なり、鉄筋組立、型枠製作など人手を要する作業が前提となる。このようなコンクリート工事の特性を考慮し、生産性を向上させるには、プレキャスト化の適用や現場打ち作業の効率化を図れる手法を検討する。

2.重要と考える課題と解決策

(1)コンクリート工の効率化

 全体最適を図る設計手法やサプライチェーマネジメントなどのマネジメントによる生産性の効率化ではなく、直接的に生産性を向上できる「コンクリ−ト工の効率化」を最も重要な課題と考え述べる。

(2)プレキャスト化の活用

a)着眼点:従来のコンクリート工は、現場で足場、鉄筋組立、型枠製作、コンクリート打設、養生と多くの手順を要する。このため、これらの作業工程を省略することで生産性が向上することに着目する。

b)具体策及び効果

プレキャストやハーフプレキャスト部材を活用する。これにより、従来工法の作業工程を省略でき、生産性を向上できる。

(3)施工技術の向上

a)着眼点:従来のコンクリート工は、型枠製作、設置・撤去、コンクリート打設では特に過密配筋部のコンクリート締固めに多くの手間がかかる。そこで、この手間を省くことで施工効率が向上することに着目する。

b)具体策及び効果

埋設型枠や高流動コンクリートを採用する。これにより、従来工法の作業手間を省き施工効率を向上できる。

3.解決策のメリット、デメリット

(1)プレキャスト化の活用(解決策1)

a)メリット:以下に列記する。

①屋内施工のため外部環境(凍結、雨、風など)の影響を受けない、整った設備(治具による鉄筋組、鋼製型枠、工場内コンクリートプラントによる生コン投入時期の最適化、豊富な内部振動機による確実な締固め、自動プログラム温度制御による蒸気養生、熟練工による表面コテ仕上げ等)、打設前、製品、出荷前検査による不良品の完全除去、コンクリート試験による品質が保証されたプレキャスト製品のみ納品される。以上により工場製作は高品質化を実現できる。

②機械施工が主体となり作業のスピードアップによる時間短縮が図れる。

③型枠大工や鉄筋工の技能労働者の技術のバラツキによる品質の低下を防止し、安定した品質を確保できる。

b)デメリット:

①地下構造物やトンネルなど水密性が求められる場所では、プレキャスト部材の接合部の止水性能に劣る。

②作業の簡略化により型枠大工・鉄筋工の技術が衰退する。

③運搬上の制約を受ける。

(2)施工技術の向上(解決策2)

a)メリット:以下に列記する。

 埋設型枠により、ジャンカを防止し、工場製作のため表層部の緻密化を図ることができ、安定した品質を確保できる。高流動コンクリートは、自己充填性能によりコンクリート締固め不要で過密配筋内に密実にコンクリートを充填できる。これにより、ジャンカや空洞を防止し確実に品質を確保できる。

b)デメリット

 埋設型枠背面に打ち込まれたコンクリートとの一体性について、温度変化、乾湿繰返し作用、凍結融解作用など、これらの作用に対して長期的に一体化が確保できているかが実証できない。

 高流動コンクリートはコストが高い、採用するには発注者との協議が必要になり時間がかかる。ブリーディングがほとんど生じないため、表面の急激な乾燥に伴うプラスティック収縮ひび割れが発生しやすい。

模範解答2  簡易答案形式1 添削回数1  完成日2018/4/20 専門とする事項 コン維持管理

1.生産性を向上させるために検討すべき項目

1)女性労働者の活用:余剰900万人の女性の労働力参入により生産性向上を図る。2)ICTの活用:スランプ・強度などの管理項目につき、センサーをコンクリート内に設置し自動観測集計すれば、管理作業が縮減できる。

3)現場作業の省力化:労働環境の悪い現場を省力化することで効率化を図る。

2.現場作業の省力化

 日本はモンスーン気候帯にあたり、台風、梅雨、積雪で現場作業日数が少ない。夏季・冬季コンクリート打設は特別な対応を取らざるを得ず、計画的・効率的な現場作業が困難である。

生産性を向上するためには、現場作業をできるだけ省力化することが課題である。

1)プレキャスト製品の採用(解決策1):工場機械で型枠設置や配筋、コンクリート打設・締固めを行い、プレキャスト製品を作る。現場では、機械によるプレキャスト製品の組み立てを行う。

2)高流動コンクリートの活用(解決策2):コンクリート充填作業がたやすくなり、締固作業が不要となる。

3.メリット・デメリット

1)プレキャスト製品の採用(解決策1)

a) メリット:人力に替えて機械で作業するため、作業効率が大幅にアップする。天候中断がなく計画的・効率的に作業ができる。安定した足場で型枠設置や配筋が行えるため、製品の寸法・鉄筋設置精度が向上する。室内空調により温度湿度が一定し、フレッシュ及び硬化中コンクリート品質が安定するため、乾燥ひび割れや初期凍害がなくなり品質が高くなる。機械作業による省人化、空調による温度湿度安定で労働環境改善が図れる。労働環境改善で建設部門への新規及び女性参入者増加が見込める。

b)デメリット:接続部について、公的な構造形式が明示されていないため、プレキャスト製品接合部の長期耐久性の信頼性が保証されていない。

2)高流動コンクリートの活用(解決策2)

a)メリット:熟練工によるコンクリート締固作業が不要である。また過密鉄筋部の充填性が確保され、製品品質が高くなる。

b)デメリット:急激な温度変化で高流動コンクリートの施工性能が変化するため、フレッシュコンクリートの品質確保が難しくなる場合がある。

模範解答2  簡易答案形式1 添削回数6  完成日2018/5/24 専門とする事項 コン維持管理

1.コンクリート生産性向上のための検討項目

(1)現場作業の省力化:ユニット鉄筋をクレーン機械により設置する。あるいは、RCD工法でダンプ積込輸送及び機械振動機でマスコンクリートを大量打設し、日打設量を大幅に向上する。

(2)性能照査設計の採用:設計者は、構造物の使用状況に応じて要求性能レベルをできるだけ小さく設定する。次に限界値の設定値としての最小安全率を選択する。

(3)工事施工の平準化:債務負担による複数年の発注工期を採用し、受注者がその範囲内で任意の工期を決定する。あるいは、日打設量を考慮した構造物設計を行う。例えば、砂防ダムの縦目地間隔を狭め、ブロック割を小さくし日打設量を100m3以下にする。

2.最も重要と考える課題、2つの解決策とその効果

作業条件や労働環境が厳しいため、さらなる現場作業の効率化は困難である。生産性向上のためには、「現場作業の省力化」が課題である。

(1)プレキャスト製品の採用(解決策1)

a) 効果:プレキャスト製品の製作は、工場内の機械施工により作業効率が大幅に向上する。現場では、製品の組立作業のみで効率的に構造物を完成できる。製品製作の効率が大幅に向上する他、工期が3割〜6割縮減するため、現場経費が低減できる

(2)高流動コンクリートの活用(解決策2)

a) 効果:高流動コンクリートを採用すれば、充填を円滑にでき振動・締固め作業を削減できる。特に過密鉄筋箇所への充填性が向上する。

3.メリット、デメリット

(1) プレキャスト製品の採用(解決策1)

a)メリット:工場内の大型振動機により十分な締固エネルギーを与えられ、豆板や未充填が防止できる。また、自動機械の施工により配筋精度が高まる。さらに、工場内のため湿度温度の変動が少ないため、コンクリートフレッシュ性状が一定し施工のばらつきがなくなる。これらにより安定した品質が確保できる。

b) デメリット:製品接合部の水密性の確保が難しい。これに対しては、同種の接合部の劣化損傷の実績を調査し、劣化の時期、進行度を予測することで予防保全を実施、補修費用を最小限とする。

(2) 高流動コンクリートの活用(解決策2)

a)メリット:未充填や豆板等の初期欠陥が防止でき、高い品質確保と耐久性が向上する。従来のコンクリートでは十分充填できないコンクリート充填鋼管工法が可能となり、地震時座屈に強い品質の工法が採用できる。

b) デメリット:天候の変化により気温が変動し、スランプが大きく変化、充填性等が悪化しコンクリート品質が低下する可能性がある。事前に充填性等を満足するスランプフロー目標値から±5cmを超える温度の増減幅を確認し、それ以上気温が変化したら作業を中止する。

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