H29年 建設・施工 Ⅱ−2−1問題 模範解答と解説
Ⅱ−2−1
中心市街地で軟弱地盤地帯に計画された高架橋下部工事において、橋脚(鋼矢板による山留め、掘削深さ5m)、基礎杭(杭径1000㎜、杭長30m、オールケーシング工法)の施工に当たり、以下の問いに答えよ。
(1)工事着手に当たり、施工計画作成に必要な事前調査項目とその概要を述べよ。
(2)基礎杭の施工時に生じやすい杭の品質・出来形に影響するトラブルを2つ挙げ、原因と防止対策について述べよ。
模範解答1 (簡易答案形式1) 添削履歴 3回 専門事項 施工計画
1. 事前調査項目
(1)地盤条件:地質・地盤構成、地盤のN値、地下水位、透水性等の調査
(2)敷地条件:敷地及び周辺地盤の高低差、施工個所の位置形状の調査。
(3)周辺環境:隣接建物の有無、地下水利用状況の調査。
(4)地中埋設物等:上下水道等のインフラ埋設物、既存山留壁の調査。
(5)既設構造物:既存建物の地下躯体等の調査。
2.杭品質・出来形に影響するトラブルと原因・防止対策
(1)杭頭部の杭径不足
1)原因:軟弱地盤の場合に、杭頭付近でケーシングを引き抜いた際に、土圧が生コンの側圧以上に大きくなり、コンクリートが圧縮されて杭径不足になる場合がある。
2)防止対策:杭頭部分の地盤改良又は杭頭部の余盛コンクリートを大きくする。
(2)鉄筋かごの共上がり:ケーシングチューブの引き抜き時に、ケーシングチューブと鉄筋かごが接触して共に浮き上がる場合がある。
1)原因
①ケーシングの傾斜。
②鉄筋かごの変形。
③ケーシング内部への土砂固着。
2)防止対策
①ケーシングチューブの鉛直度保持と鉄筋かご頂部の動き監視。
②鉄筋かごの適切な位置にスペーサーを設置する。
③ケーシングチューブ先端を掘削孔底面より先行させる。
模範解答1 (答案形式) 添削履歴 2回 専門事項 施工計画
1.施工計画作成に必要な事前調査項目と概要
(1) 地盤条件
地質・地盤構成、地盤のN値、地下水位、透水性等の調査。
(2) 敷地条件
敷地及び周辺地盤の高低差、施工個所の位置形状の調査。
(3) 周辺環境
隣接建物の有無、地下水利用状況の調査。
(4) 地中埋設物等
上下水道等のインフラ埋設物、既存山留壁、架空電線等の調査。
(5) 地下・既設構造物
地下鉄、既存建物の地下躯体等の調査。
2.杭品質・出来形に影響するトラブルと原因・防止対策
(1)杭頭部の杭径不足(先細り)の発生
1)原因
軟弱地盤の場合に、オールケーシング工法において杭頭付近でケーシングを引き抜いた際に、土圧が生コンの側圧以上に大きくなり、生コンの硬化までに土圧やケーシングを引き抜く際の反力等が側圧として杭中心方向に作用して、コンクリートが圧縮されて杭径不足になる場合がある。
2)防止対策
杭頭部分の地盤改良による孔壁の強化や、杭頭部の余盛コンクリートを大きくすることによる側土圧への抵抗力を高めることで杭径不足を防止する。
(2)鉄筋かごの共上がりの発生
オールケーシング工法において、ケーシングチューブの引き抜き時に、ケーシングチューブと鉄筋かごが接触して共に浮き上がる場合がある。
1)原因
①ケーシングの建て込み不良による傾斜が原因と考える。
②鉄筋かごの組立不良による変形が原因と考える。
③施工手順不良によるケーシングより削孔先行によるケーシング内部への土砂固着が原因と考える。
2)防止対策
①ケーシングチューブの鉛直度保持と鉄筋かご頂部にテープなどのマーキングによりケーシングチューブ引き抜き時の鉄筋かごの動き監視することにより防止する。
②鉄筋かごの適切な位置にスペーサーを設置することにより鉄筋かごの変形を防止する。
③ケーシングチューブ先端を掘削孔底面より先行させることにより孔底からの土砂やスライムの巻き込みによる土砂固着を防止する。
模範解答2 (簡易答案形式1) 添削履歴 2回 専門事項 建設生産システム
1.施工計画作成に必要な事前調査項目
1)地盤調査
地質調査・支持層の土質標本や柱状図、水文調査・地下水位・被圧層、汚染調査。
2)インフラ
地中埋設は、上下水道・ガス・消火栓・電力・電話・通信など、架空の電線など。
3)周辺構築物
周辺の構築物の構造・基礎形式・ひび割れ状況など、必要に応じて家屋調査。
4)道路状況
交通量調査、施工ヤードや工事車両の経路など、通学路、工事車両待機場所。
5)緊急時の対策
関連法令の手続き、インフラ損傷時の発注者・監理者・行政への連絡体制、対策工。
2.品質・出来高に影響するトラブル
1)杭支持層の判断間違い
杭支持層の判断間違いを挙げる。原因は、設計図書の深度のみで判断し、実際の地層と想定との異なり。防止対策として、掘削深度管理に加え、掘削先端の土砂と支持層の土質標本との比較やオールケーシングの揺動回転抵抗の変動にて判断する。
2)杭の天端レベルの下がり
ケーシング撤去時の杭のコンクリート天端の下がりを挙げる。原因は、ケーシング撤去時の杭径の膨れによる。防止対策は、類似地質の実績や先行杭のケーシング撤去後の杭天端の下がり実績を参考にし、コンクリート余盛を調整することである。
模範解答3 (簡易答案形式1) 添削履歴 8回 専門事項 施工計画
1.施工計画作成に必要な事前調査事項
①ボーリング調査
②敷地条件の確認
③支障物調査
2.事前調査事項の概要
①ボーリング調査:支持層確認。高止まり、支持層未到達の不具合。
②敷地条件の確認:重機搬入路は重機の搬入が可能か、掘削機・重機・設備・鉄筋加工場が配置。既設構造物との最小離隔距離。
③支障物調査:地下埋設物(上下水道、ガス、電気、通信、情報等)
試掘や探査等により埋設物の確認。
3.基礎杭の施工時に生じやすい杭の品質・出来形に影響するトラブル
①ケーシングの杭心ずれ、傾斜
原因:軟弱地盤により、杭心の設定に用いる逃げ心が施工中に動く。
防止策:杭の鉛直度をトランシット等により直交方向から杭の傾斜を確認。
②杭径がコンクリート充填不足等で所定の径より細くなる
原因:コンクリート打込時、ケーシング引き抜き後の孔壁に作用する外圧と内圧のバランスやコンクリートの充填性の不足。
防止策:単位水量を確保する為、高性能AE減水剤等を添加する。
模範解答3 (簡易答案形式2) 添削履歴 3回 専門事項 施工計画
1. 施工計画作成に必要な事前調査事項
①ボーリング調査
②敷地条件の確認
③支障物調査
2.事前調査事項の概要
①ボーリング調査(土質、地下水)
調査箇所は50〜100mに1箇所程度選点し支持層を確認する。連続した地層と支持力の確認、地下水の確認、圧密沈下層や液状化層の確認がある。
②敷地条件の確認事項
(1)道路運送車両の保安基準(道路運送車両法)・・・車両に対する制限
(2)車両制限令(道路法)・・・通行の制限
(3)道路交通法・・・積載の制限
(4)作業に使用する機械の設置で、設備・鉄筋加工場が配置され、作業に支障がない。
(5)杭打ち機と既設構造物との最小離隔距離を確認する。
③支障物調査
施工中に支障がある地下埋設物(上下水道、ガス、電気、通信、情報等)の有無の確認。
平面図や断面図で近隣の埋設物や構造物のチェックを行う。さらに、弾性波探査、電磁探査等の物理探査を実施する。
3.基礎杭の施工時に生じやすい杭の品質・出来形に影響するトラブル
①ケーシングの杭心ずれ、傾斜
原因:地盤中に転石や地中障害物が存在した場合、杭心ずれが発生する。
防止策:杭の鉛直度をトランシット等により直交2方向から杭の傾斜を確認。掘削孔の傾斜の管理値は、特記にない場合は1/100以下とする。掘削中の孔曲がりは、掘削機械の傾斜や土質の硬さが著しい変わり目に生じる事が多いので、表層地盤の強化や、掘削速度の調整等が必要となる。
②杭径がコンクリート充填不足等で所定の径より細くなる
原因:コンクリート打込時、ケーシング引き抜き後の孔壁に作用する外圧と内圧のバランスやコンクリートの充填性の不足。
防止策:単位水量を確保する為、高性能AE減水剤等を添加し、従来に比べて粘性の高いコンクリートを打設する。流動性の低下が懸念される場合は、遅延型の高性能AE剤を使用することで凝結性状を改善でき、トレミー管から先行打設したコンクリートを押し広げ、充填不足を防止する。
模範解答3 (答案形式) 添削履歴 3回 専門事項 施工計画
1.施工計画作成に必要な事前調査事項
①ボーリング調査
②敷地条件の確認
③支障物調査
2.事前調査事項の概要
①ボーリング調査(土質、地下水)
調査箇所は50m〜100mに1箇所程度選点し、支持層を確認する。連続した地層と支持力の確認、地下水の確認、圧密沈下層や液状化層について調査する。
②敷地条件(関係法令・施工条件)
1)道路運送車両に対する制限。
2)車両の制限における通行。
3)道路交通法で積載の制限。
4)作業ヤード配置。
5)杭打ち機と既設構造物の最小離隔距離。
③支障物調査(地下埋設物)
施工中に支障がある地下埋設物(上下水道、ガス、電気、通信、情報等)の有無を確認する。平面図や断面図で近隣の埋設物や構造物のチェックを行う。
さらに、地下の構造や状態、地下資源の存在などを調査する為、弾性波探査、電磁探査等の物理探査を実施する。
3.基礎杭の品質・出来形のトラブル
①ケーシングの杭心ずれ、傾斜
原因:地盤中に転石や地中障害物が存在した場合、杭心ずれが発生する。
防止対策:
杭の鉛直度をトランシット等により直交2方向から杭の傾斜を確認する。掘削孔の傾斜の管理値は、特記仕様書に記載がない場合1/100以下とする。
掘削中の孔曲がりは掘削機械の傾斜や土質の硬さが著しい変わり目に生じる事が多いので、表層地盤の強化や、掘削速度の調整等が必要となる。
②コンクリート充填不良で径不足
原因:コンクリート打ち込み時、ケーシング引き抜き後の孔壁に作用する外圧と内圧のバランスやコンクリートの充填性の不足により発生する。
防止対策:
a)コンクリートの流動性確保
単位水量を確保する為に、高性能AE減水剤等を添加する事で、従来に比べて粘性の高いコンクリートを打設する。スランプの経時変化により流動性の低下が懸念される場合は、遅延型の高性能AE減水剤を使用することで、凝結時間を遅延する。
b)トレミー管による打設
充填不足を解決する為に、コンクリートの打ち込み速度は1〜2m3/minとする。コンクリートの天端はアジテータ車1台分打ち込みごとに計測し、打ち込み中トレミーの先端が常にコンクリート中に2m以上挿入されていることを確認する。