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「良いことを書いた」だけでは、合格答案にはなりません。
実際の再現答案から、技術士試験で得点につながる「考え方」を一緒に読み解きます。
試験が終わってから、
「あの書き方でよかったのだろうか」
「もっと別のことを書くべきだったのではないか」
「手応えはあったが、本当に合格圏なのか」
「逆に、まったく自信がない」
そんな思いが何度も頭をよぎっている方もいると思います。
技術士試験には、単純な「正解」がありません。だからこそ、自分の答案がどのように評価されるのか、自分一人ではなかなか判断できません。
そこで今年も、2026年度技術士二次試験の再現答案を対象に「無料合格判定」を行います。
ただし、今年はこれまでより一歩踏み込みます。
一つ一つの答案を添削して、単に「A判定」「B判定」と並べるだけにはしません。
2026年度に実際に出題された問題と、実際に受験された方の再現答案から、「なぜ評価されるのか」「なぜ得点につながらないのか」まで読み解きます。
一人の答案を判定するだけで終わらせず、そこから他の受験生にも役立つものを見つけ出す。
それが、今年の無料合格判定です。
もちろん、試験を受けた方にとって「合格できそうか」は一番気になるところでしょう。
しかし、せっかく何か月も勉強し、本番で懸命に考えて書いた答案です。
「A判定でした」「ここが悪かった」で終わらせてしまうのは、もったいないと思います。
大切なのは、
なぜ、ここは評価されるのか。
なぜ、ここは得点につながりにくいのか。
では、どう考えればよかったのか。
そこまで振り返ることです。
今年の無料合格判定では、合格可能性だけでなく、その理由まで考えていきます。
受験生の答案を読むと、皆さん、本当によく勉強しています。
専門知識もあります。社会的に大切なことや、技術者として望ましい施策もよく知っています。
例えば、
「DXを推進する」
「人材育成を行う」
「関係者と連携する」
「安全性を向上させる」
どれも大切なことです。
しかし、技術士試験では、良いこと、立派なことを書けば評価されるわけではありません。
問われているのは、
「出題者が解決を求めている問題に対して、あなたの提案がどう貢献するのか」
です。
自分が知っている施策を書くのではなく、まず問題文を読み、「この問題では何を解決しなければならないのか」を捉える。
そのうえで、自分の専門技術を使って解決に貢献する。
ここに、得点できる答案と、なかなか得点につながらない答案との差が現れます。
今年も、実際に受験された方の再現答案を読み始めています。
そこから見えてくるのは、単なる知識量の差ではありません。
専門知識をたくさん書いているのに、問題の本質から少し外れてしまっている答案があります。
反対に、派手な表現や目新しい技術を書いていなくても、問題の本質を捉え、課題と解決策が筋道立ってつながっている答案があります。
この違いを、2026年度の実際の答案を通して考えていきます。
問題文を読んだとき、
「この技術を書こう」
「この施策が使えそうだ」
と、すぐに解決策を考えてしまうことがあります。
しかし、その前に考えなければならないことがあります。
「そもそも、この問題で解決しなければならないことは何なのか」
ということです。
まず、与えられた状況を分析する。
そこから、本質的な問題を捉える。
その問題を解決するために、何を実現しなければならないのかを「課題」として示す。
そして、その課題に対して実行可能な解決策を提案する。
問題を分析する
↓
本質的な問題を捉える
↓
課題を設定する
↓
実行可能な解決策を示す
このつながりが大切です。
これは、答案をきれいに見せるための「型」ではありません。
技術士として、与えられた問題の解決にどう貢献するのか。
そのための思考そのものです。
解決策そのものが高度であれば、得点できるわけでもありません。
AI、ICT、DX、新技術――。
どれほど優れた方法であっても、設定した課題とつながっていなければ、「なぜそれを行うのか」が分からない答案になります。
大切なのは、
この問題がある。
だから、この課題に取り組む必要がある。
その課題を解決するために、この方法を使う。
という筋道です。
解決策の名前を先に考えるのではなく、問題から課題へ、課題から解決策へと考える。
そうすると、単なる知識の列挙だった答案が、技術者としての問題解決の提案に変わっていきます。
模範答案だけを読んでいると、すべてがきれいに整理されています。
しかし、本番の試験ではそうはいきません。
時間に追われ、問題文の意味を考え、何を書くべきか迷いながら答案を作ります。
だからこそ、実際の受験生が本番で書いた再現答案には価値があります。
2026年度の再現答案について、
なぜ、この部分は評価できるのか。
なぜ、この部分では得点を伸ばしにくいのか。
どこで問題の本質から離れてしまったのか。
どう考えれば、もっと問題の核心に近づけたのか。
そこまで掘り下げていきます。
答案そのものを真似してもらうためではありません。
初めて見る問題に出会ったとき、自分自身で考えられるようになるためです。
そして、再現答案が増えてくれば、
「多くの受験生がここで迷っている」
「この問題では課題設定で差がついている」
「専門知識は十分なのに、問題への答えになっていない」
といった2026年度試験の特徴も、次第に見えてくるはずです。
2026年度試験を受験された皆さんの再現答案を募集します。
合格の手応えがある答案でも構いません。
「失敗した」と思っている答案でも構いません。
時間が足りなかった答案、途中で何を書けばよいのか分からなくなった答案にも、大きな価値があります。
まずは、あなた自身のために、
何が評価されるのか。
何が足りなかったのか。
なぜ、そこで迷ったのか。
どう考えれば、さらに得点できる答案になったのか。
を一緒に振り返ります。
あなたの答案を判定して、それで終わりにはしたくありません。
その答案の中には、これから受験する人にも役立つものがあるはずです。
「ここは多くの受験生が間違えやすい」
「この課題の捉え方は参考になる」
「この解決策へのつなぎ方は学ぶ価値がある」
そうしたものを一つずつ見つけ、これから受験する方が学べる形で残していきます。
受験した方には、自分の答案を客観的に振り返る機会になる。
これから受験する方には、実際の答案から問題解決の考え方を学ぶ教材になる。
そして答案が集まるほど、2026年度の技術士試験で何が求められていたのかが、よりはっきり見えてきます。
一人の答案を、一人だけの反省で終わらせない。
皆さんから寄せていただく2026年度の再現答案を積み重ねながら、本当に受験勉強に役立つ無料合格判定にしていきたいと考えています。
合格の手応えがある方も、不安を感じている方も、ぜひ再現答案をお寄せください。
無料合格判定を希望される方へ
再現答案をお寄せください。合格可能性だけでなく、答案のどこが評価され、どこに得点を伸ばす余地があるのかまで丁寧に判定します。
問題文 気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化や生物多様性の損失など、環境問題が深刻化している。こうした中、地域の安全・安心の確保や暮らしの質の向上を図るため、社会資本整備に際しては、自然の多様な機能を活かすグリーンインフラを活用し、人と自然が共生する社会づくりを進めていくことが求められている。 こうした背景を踏まえ、令和7年6月に策定された「国土交通省環境行動計画」では「グリーンインフラの活用が当たり前の社会」を目指すことが、重点分野の1つとして位置づけられた。 このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1) 令和8年1月に策定された「グリーンインフラ推進戦略2030」を踏まえ、グリーンインフラを活かした具体の取組みを進めるに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その技術課題の内容を示せ。 なお、観点は人と自然が共生する社会づくりに関するものとする。 ※解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示した解決策に関して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4) 前問 (1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
本問は、気候変動による災害の激甚化・頻発化や生物多様性の損失を背景に、「グリーンインフラの活用が当たり前の社会」をどのように実現するかを問う問題です。
設問は、次の流れで読むと整理できます。
①背景
自然災害の激甚化・頻発化、生物多様性の損失が進んでいる。
②目標
地域の安全・安心と暮らしの質を向上させ、人と自然が共生する社会をつくる。
③手段
自然が持つ防災・減災、環境保全、地域振興等の多様な機能を社会資本整備に活かす「グリーンインフラ」を実装する。
④問われていること
その具体的取組を進める際の技術課題を多面的に抽出し、最重要課題に対する複数の解決策、新たに生じるリスク、さらに技術者倫理・社会の持続可能性まで一貫して論じる。
したがって、「環境問題だから脱炭素」「自然環境だから環境保全」と一般論へ広げるのではなく、「自然の機能を社会資本としてどう活用するのか。その実装を阻む技術的問題は何か」まで絞り込むことが、本問を読み解く鍵になります。
問1 技術課題の抽出
課題として、①低炭素技術の導入コストや自治体の財政・人材不足を背景とする「インフラの脱炭素化」、②予算・人員やモニタリング不足を背景とする「自然環境・生物多様性の保全」、③専門人材・財源・連携体制不足を背景とする「地域特性を踏まえた自然環境対策」の3点を挙げています。
1.合格判定
判定:B判定の可能性が高いです
今回の答案を読んで最初に感じるのは、「知識がないから書けなかった答案ではない」ということです。
課題を3つに整理し、最重要課題を選び、複数の解決策を示し、さらに新たなリスクと対策まで展開しています。LCA・LCC、BIM/CIM、IoT、AI、低炭素材料、再生資材、PPP/PFIなど、建設部門の技術者として必要な知識も相当程度盛り込まれています。
実際、最重要課題とした「インフラの脱炭素化」に対して、LCA・LCCによる評価、DXによる維持管理・施工の高度化、地域資源と官民連携による資源循環という3つの解決策を提示しており、文章としての論理も通っています。
それでも、B判定となる可能性があると考えます。
なぜでしょうか。
ここに、技術士第二次試験で多くの受験者が陥る、非常に重要な問題があります。
今回の問題には、
「自然の多様な機能を活かすグリーンインフラ」
という重要な言葉が置かれています。
さらに、「グリーンインフラ推進戦略2030」を踏まえて、グリーンインフラを活かした具体的な取組を進める際の技術課題を問うています。
つまり、出題者は単に、
「現在の環境問題について論じなさい」
と聞いているのではありません。
ところが答案では、最初の課題として「インフラの脱炭素化」を挙げ、これを最重要課題として選択しました。そしてLCA・LCC、低炭素舗装、省エネルギー設備、DXによる施工合理化などへ展開しています。
一つひとつは間違った内容ではありません。
むしろ、どれも現在の建設行政において重要な取組です。
だからこそ、このタイプの答案は自分では間違いに気づきにくいのです。
「間違ったことを書いている」のではなく、「問われたことと少し違う正しいことを書いている」。
技術士試験では、これが怖いのです。
今回の答案から、多くの受験者に共通する一つの傾向が見えてきます。
問題文を読んだときに、
グリーンインフラ
→ 環境問題
→ 脱炭素
→ CO₂削減
と、自分がよく知っているテーマへ置き換えてしまうことです。
これは決して珍しいことではありません。
例えば、
「自動物流道路」と書いてあれば「物流問題」へ、
「流域治水」と書いてあれば「水害対策」へ、
「インフラDX」と書いてあれば「生産性向上」へ、
「カーボンニュートラル」と書いてあれば「環境対策」へ、
と無意識に一般化してしまいます。
一般化すれば、自分が勉強してきた知識をたくさん使えます。
そのため、答案も書きやすくなります。
しかし、ここで一度考えてみてください。
出題者は、なぜわざわざ「環境問題」ではなく「グリーンインフラ」と書いたのでしょうか。
この問いを持つことが非常に大切です。
脱炭素は重要です。
しかし、脱炭素とグリーンインフラは同じものではありません。
グリーンインフラの中心にあるのは、自然が本来持っている多様な機能を社会資本整備に活用するという考え方です。
例えば、緑地や湿地の雨水貯留・浸透機能を活かす。植生や樹林の機能を防災・減災に活かす。緑化によって暑熱環境を改善する。生態系ネットワークを形成しながら地域の魅力や生活環境も向上させる。
こうした「自然の機能を社会資本の機能として活かす」ことが中心にあります。
したがって、この問題を読んだときには、
「CO₂をどう減らそうか」
より先に、
「自然の機能を社会資本として本当に活用しようとすると、技術者として何に困るのだろうか」
と考えたかったところです。
ここまで考えられると、課題の方向が変わってきます。
今回の答案で特に惜しいのはここです。
問(2)そのものは、かなりよく書けています。
「インフラの脱炭素化」という課題を選んだ以上、それに対してLCA・LCC、DX、資源循環を挙げたことには論理があります。
つまり、
設定した課題に対しては、きちんと答えているのです。
ところが、最初に設定した課題そのものが出題の中心から少し外れていました。
すると、
問(1)
脱炭素化を最重要課題とする
↓
問(2)
低炭素材料、DX、資源循環を進める
↓
問(3)
新技術の性能不足や技術者の習熟不足をリスクとする
というように、答案の内部ではきれいにつながっていても、答案全体が少しずつ「グリーンインフラ」から離れていきます。
これは技術士試験でぜひ注意してほしいところです。
最初の課題設定を間違えると、その後を上手に書けば書くほど、違う方向へ論理的に進んでしまうことがあります。
一方、問(3)は評価したいところです。
答案では、低炭素技術やDXの導入が進むことによって、性能検証や技術者の知識・技能が追いつかず、品質低下や維持管理上の不具合が生じるリスクを挙げています。
さらに、性能評価、試験施工、技術基準・ガイドラインの整備、リスキリング、ベストプラクティスの横展開へつなげています。
これは、「解決策を実施した後に新しく生じる問題」を考えようとしています。
よくある答案では、問(1)で挙げた課題を問(3)でもう一度書いてしまいます。
しかし本問で求められている「新たに生じるリスク」は、
課題がある
→ 解決策を実施する
→ 課題が改善する
→ しかし、その結果として別のリスクが生じる
という因果関係で考える必要があります。
この答案には、その考え方ができています。
したがって、答案作成能力そのものが低いわけではありません。
むしろ、ここまで論理的に展開できるからこそ、問(1)の入口で問題の焦点を正確に合わせられなかったことが惜しまれます。
問(4)では、コストや工期を優先して品質を低下させないこと、公益性を最優先すること、さらにライフサイクル全体での環境負荷低減や資源の有効活用、次世代への持続可能性に配慮することを述べています。
技術者倫理、社会の持続可能性という設問には、きちんと答えようとしています。この点は評価できます。
ただし、ここでも「グリーンインフラを業務として遂行する際に何を守るのか」と、もう一段問題固有の内容に結びつけられると、さらに良くなります。
例えば、自然環境には一度損なうと容易に回復できないものがあること、生態系や地域住民、将来世代への影響を短期的なコストや事業効率だけで判断しないことなどです。
問(4)も一般的な技術者倫理を書くのではなく、「この事業だからこそ何に留意するのか」まで考えることが大切です。
難しいことをする必要はありません。
答案を書き始める前に、問題文の中から、
「この問題でしか使われていない固有の言葉」
を拾ってみてください。
今回なら、
「グリーンインフラ」
「自然の多様な機能を活かす」
「人と自然が共生する社会」
「具体の取組を進める」
です。
そして、自分が考えた課題に対して、
「これはグリーンインフラでなければ成立しない課題だろうか」
と問いかけます。
もし「脱炭素」「人材不足」「予算不足」「DX推進」など、他の問題にもそのまま使える課題になっていたら、一度立ち止まってみることです。
一般論が悪いのではありません。
一般論を、今回の問題固有の技術課題まで掘り下げることが必要なのです。
不合格になると、多くの受験者は、
「もっと勉強しなければならない」
「キーワードをもっと覚えなければならない」
「新しい施策を知らなかったから書けなかった」
と考えます。
もちろん、知識を増やすことは大切です。
しかし今回の答案を見る限り、まず必要なのは知識量を増やすことではないと思います。
すでに相当な知識を持っています。
問題は、
その知識の中から、今回の出題者が求めているものを選び出すこと
です。
技術士試験は、知っていることを全部書く試験ではありません。
問題文を読み、
「出題者は何を問題にしているのか」
「なぜこの言葉を使ったのか」
「技術者として何を解決してほしいのか」
を考え、その要求に必要な知識だけを選び、因果関係をつくって答案にする試験です。
今回の答案を「脱炭素を書いたから駄目だった」とだけ理解してしまうのは、もったいないと思います。
本当に学んでほしいのは、もっと根本のところです。
問題文の固有語を、自分の得意な一般論に置き換えないこと。
そして、
課題を設定する前に、「この問題だからこそ問われている課題になっているか」を確認すること。
この二つです。
知識もあります。文章も書けています。問(2)、問(3)へ論理を展開する力もあります。
だからこそ、あと必要なのは、答案を書き始める前の「問題文との対話」なのだと思います。
今回のような答案は、決して合格から遠い答案ではありません。
むしろ、ある程度勉強し、答案も書けるようになった受験者ほど陥りやすい不合格答案です。
「何を書けばよいか」を考える前に、
「何を聞かれているのか」
をもう一度考えてみてください。
その一呼吸によって、同じ知識、同じ文章力でも、答案は大きく変わります。
今回の答案には、そのことに気づけば次へ進めるだけの力が十分に見えています。
今後、人口減少が見込まれる我が国において、物流をはじめとする社会インフラを維持し、持続的な発展を実験するためには、道路ネットワークの多機能化を図り、物流課題の解決に資する自動物流道路の実現が求められている。 こうした状況の中で、自動物流道路に関する検討会等において、自動物流道路の実現に向けた検討が進められている。
(1) 自動物流道路の実現に向けて、道路に携わる技術者として、多面的な観点から課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について専門技術を踏まえた考え方を示せ。
(1) 自動物流道路の実現に向けて抽出する課題
① 幹線道路ネットワークの再構築
物流拠点を支える道路ネットワークの機能が不足している。これは、EC市場の拡大や小口・多頻度配送の増加により物流需要が変化する一方、高規格道路と物流施設とのアクセス性やネットワークの連続性が十分確保されていないためである。よって、物流効率化の観点から、物流需要の変化と自動化に対応した幹線道路ネットワークの再構築が課題である。
② 関係者間の連携強化と商慣行の見直し
物流の効率化・省人化が十分に進んでいない。これは、荷主・物流事業者・道路管理者が個別最適で運用しているほか、荷待ち時間や低積載率など非効率な商慣行が残存し、限られた輸送力を有効活用できていないためである。よって、物流システム最適化の観点から、関係者間の連携強化や商慣行の見直しが課題である。
③ 新技術実装・普及体制の強化
物流革新に向けた新技術の社会実装が円滑に進んでいない。これは、自動化・デジタル化を活用できる人材やノウハウが不足しているほか、官民連携や異業種間の連携が十分でなく、技術開発の成果が現場へ展開できていないためである。 よって、推進体制強化の観点から、産官学連携による人材育成や官民連携を通じた新技術の実装・普及体制の強化が課題である。 (2) 最も重要とする課題
自動物流道路や物流DXは、それらを支える道路ネットワークそのものが十分に機能していることが前提であるため、「幹線道路ネットワークの再構築」を最も重要とする課題と考え、以下に解決策を述べる。 ① 高規格道路の機能強化
高規格道路のミッシングリンク解消や暫定2車線区間の4車線化を推進するとともに、物流施設と高規格道路のアクセス性を強化する。
また、災害時の代替経路を確保することで、ネットワークの多重性・代替性を向上させる。
さらに、自動物流道路との接続性を強化することで、平時・災害時を通じて安定した物流機能を発揮する道路ネットワークを構築する。
②自動物流道路とスマート道路インフラの整備
自動物流道路や自動運転トラックの本格導入を見据え、路車協調システム、高精度通信基盤、交通管制設備、自動運行補助施設等のスマート道路インフラを整備する。
また、道路管理データを標準化して一元管理するとともに、道路管理者と物流事業者等とのリアルタイムな情報共有を可能とするデータ環境を整備する。これにより、自動物流システムとの円滑な連携を実現し、安全性の向上、輸送効率の改善、省人化を図り、次世代道路空間を形成する。
③ 道路DXと物流データ連携による交通マネジメントの高度化
道路情報と物流情報を共通データ基盤(CDE)上で統合して標準化し、AIによる交通需要予測や最適配車、動的経路誘導などの交通・物流マネジメントを導入する。また、高規格道路、自動物流道路、物流拠点を一体的に運用するとともに、共同配送や中継輸送を促進し、輸送需要や交通状況に応じた最適なルート・輸送手段を選択できる環境を構築する。さらに、災害時には通行規制や被災情報をリアルタイムに共有し、代替経路へ迅速に誘導する。これにより、ネットワーク全体の利用効率と信頼性の向上を図る。
(2) 新たに生じるリスクと解決策
データ環境によるシステムへの依存性が高まり、通信障害やサイバー攻撃、広域災害発生時に、意思決定の遅れ、責任所在の不明確化など、平時・災害時双方において、物流機能が停滞するリスクが生じる。
このため、ゼロトラスト型セキュリティやバックアップ通信網を整備し、アナログ手段も含めた冗長性を確保したシステム設計を行う。
また、応援受援計画や指揮命令系統を事前に明確化するとともに、代替輸送計画の標準化やBCPの充実を図り、障害発生時にも物流機能を継続できる運営体制を構築する。
Bさん(仮名)は、問(1)で次の3つを課題として挙げました。
① 幹線道路ネットワークの再構築
高規格道路と物流施設とのアクセス性やネットワークの連続性を改善する。
② 関係者間の連携強化と商慣行の見直し
荷主、物流事業者、道路管理者の連携を進め、荷待ち時間や低積載率などを改善する。
③ 新技術実装・普及体制の強化
産官学連携による人材育成や官民連携を進め、新技術を現場へ普及させる。
そして「幹線道路ネットワークの再構築」を最重要課題とし、高規格道路の機能強化、自動物流道路・スマート道路インフラの整備、道路DXと物流データ連携という3つの解決策を示しました。
内容はよく整理されており、道路・物流に関する知識もしっかりしています。
それだけに、非常に惜しい答案です。
Bさんの答案から、ぜひ考えていただきたいことがあります。
問(1)に書かれた「幹線道路ネットワークの再構築」「商慣行の見直し」「新技術の実装・普及」。どれも現在の物流政策を考えるうえで重要な課題です。
では、なぜこれで十分ではないのでしょうか。
問題文をもう一度読んでみます。
出発点は、人口減少によって物流を担う人手が減っても、物流機能を維持しなければならない。そのために自動物流道路を実現するということです。
したがって問われているのは、
「物流をよくするためには何をすべきか」
ではなく、
「自動物流道路を実現しようとすると、何が障害になるのか」
です。
ここには似ているようで大きな違いがあります。
例えば「商慣行の見直し」は物流全体にとって重要です。しかし、荷待ち時間や低積載率を改善すれば、直ちに自動物流道路が実現できるわけではありません。
一方、
と考えると、**「自動物流道路を実現するために解かなければならない問題」**が具体的に見えてきます。
Bさんは決して的外れなことを書いたわけではありません。
むしろ、道路・物流についてよく勉強していたからこそ、知っている重要施策が先に浮かんだのだと思います。
ここで必要だったのは、もう一度問題文に戻って、
「それは、自動物流道路の実現を何によって妨げているのか」
と自分に問いかけることでした。
問(2)にも、惜しいところがあります。
Bさんは「幹線道路ネットワークの再構築」を最重要課題としました。
そのため、①「高規格道路の機能強化」はよくつながっています。
ところが、②は「自動物流道路とスマート道路インフラの整備」、③は「道路DXと物流データ連携」です。
②③の内容そのものはよく書けています。むしろ自動物流道路というテーマにはかなり近い内容です。
しかし、
「幹線道路ネットワークの再構築」という一つの課題を解決するための3つの解決策か
と考えると、①と②③の方向が少しずれています。
技術士試験では、
課題を一つ選ぶ
→ その課題を解決するために複数の解決策を示す
というつながりが大切です。
個々の解決策が優れていても、課題との関係が切れてしまえば、答案全体の説得力が弱くなります。
一方、問(3)はよくできています。
Bさんは、DXやデータ連携を進めることでシステムへの依存性が高まり、通信障害やサイバー攻撃によって物流機能が停滞するという**「解決策を実施したからこそ生じる新たなリスク」**を捉えています。
さらに、ゼロトラスト型セキュリティ、バックアップ通信網、冗長性、代替輸送計画、BCPまで具体的な対策を書いています。
ここは、設問の意図をかなり的確に捉えています。
だからこそ、今回の答案は惜しいのです。
知識もあります。解決策を具体化する力もあります。問(3)では設問にもきちんと応えています。
問(1)の最初の段階で、
人口減少で物流維持が難しくなる
→ 自動物流道路で解決したい
→ その実現を妨げているものは何か
→ その障害を解消することを課題とする
と整理できていれば、問(2)、問(3)まで一本につながり、もっと書きやすく、より評価される答案になったと思います。
技術士試験では、正しいことを書けばよいとは限りません。
道路政策として正しい。
物流政策として重要である。
国が実際に進めている施策である。
それでも、
「この問題で、それがなぜ課題なのか」
が説明できなければ、出題者の求めから離れてしまうことがあります。
Bさんの答案には、合格答案につながる材料が十分にあります。
あと一歩です。
問題を読んだら、すぐに知っている課題や施策を書き始めるのではなく、
「出題者は、私に何を解決してほしいのだろう」
と一度考えてみてください。
その問いから、問題 → 課題 → 解決策 → 新たなリスクを一本につなぐ。
今回の答案は、その大切さを非常によく教えてくれる答案だと思います。
問題
人口減少、人手不足、若者・女性の地方離れが進む一方、インバウンド、リモートワーク、AI・デジタル技術など新たな可能性も生まれています。こうした変化を踏まえ、政府は今後10年間を見据えた「地方創生2.0」を進めています。
問題では、地方創生の目標として、
「強い経済」「豊かな生活環境」「選ばれる地方」
の3つを示し、その実現につながる18項目のアウトプットが提示されました。
そのうえで、自分がよく知る事業・組織を一つ取り上げ、次のことが問われました。
(1)自分の事業・組織が地方創生に貢献する2つの取組を示す。
(2)それぞれについて、地域のステークホルダーとの連携、アウトプットにつながる理由、実施上の障害と対応方策を、総合技術監理の5管理とトレードオフを踏まえて示す。
(3)さらに自分の事業・組織を離れ、日本全体として地方創生のために行うべき2つの施策について、有効性・実現性、重大な障害と対応方策を示す。
つまり、単に**「地方創生のために良い施策を提案する」問題ではありません。**
自組織の技術・人材・情報などを地域のステークホルダーとどう組み合わせ、5つの管理分野のトレードオフを調整しながら、地方創生という社会的成果につなげられるか――総監技術士としての俯瞰力とマネジメント力が問われた問題です。
Cさんは、全国で土木工事を施工する建設会社を対象組織とし、インフラ整備・維持管理を通じて地方創生に貢献する設定としました。
問(1)事業・組織と地方創生への2つの取組
地方創生への取組として、次の2つを選びました。
取組1「k. インフラの維持」
施工DXプラットフォームを導入し、BIM/CIM、工程、出来形、品質、安全、原価、環境データをクラウドで共有。施工管理の効率化、原価低減、CO₂削減等を図るとしました。
取組2「h. 人材育成・リスキリング」
勤務データ、離職率、技能評価等をデータベース化・可視化し、人材不足への対応、離職予兆や工程遅延の予兆管理につなげるとしました。
問(2)ステークホルダーとの連携を含む具体的な取組
取組1では、ウェアラブル端末、ドローン、BIM/CIM、デジタルツイン等を活用した安全DXとナレッジマネジメントを提案。熟練技能者の暗黙知を形式知化し、安全・品質、生産性を維持するとしました。
障害として設備投資、教育訓練、データ入力負荷、サイバーリスクを挙げ、安全管理と経済性管理、情報管理と人的資源管理のトレードオフを考慮しています。
取組2では、女性、高齢者、外国人、障がい者、育児・介護中の社員などの多様な人材の活用とリスキリングを提案。柔軟な勤務制度、適材配置、共同教育等によって人材確保・定着を図るとしました。
問(3)我が国として取り組む2つの施策
組織の枠を離れ、国全体として、
施策1「k. インフラの維持」
就業継続、技能継承、リスキリング、公共工事の平準化、地域維持型契約等を組み合わせ、地方の建設人材と災害復旧力を確保する。
施策2「l. 災害対応の強化の促進」
BIM/CIM、クラウド、デジタルツイン等の建設DXを標準化し、設計・施工・維持管理データをライフサイクルで活用することで、生産性、維持管理力、災害復旧力を向上させる。
としました。財政負担、人材不足、企業間格差、サイバーリスク等も挙げ、費用便益分析、人材育成、標準化、セキュリティ対策等を示しています。
BIM/CIM、デジタルツイン、人的資本経営、リスキリング、ゼロトラスト、ISMS、BCP、費用便益分析など、使われている技術や管理手法は豊富です。また、安全管理と経済性管理、情報管理と人的資源管理など、異なる管理分野のトレードオフも意識されています。特に問(2)の「死亡・重篤災害リスクは許容しない」としたうえで、費用便益を考慮して高リスク工種から段階導入する考え方は、単に5管理の名称を並べるのではなく、何を優先し、どう調整するかまで考えようとしています。
ここはCさんの強みです。
そのうえで、もう一段考えてほしいことがあります。
今回の問題で出題者が最も見たかったのは、「総監の知識をどれだけ書けるか」ではなく、その知識を使って地方創生という目的をどう実現するかではないでしょうか。
問題文には、わざわざ「強い経済」「豊かな生活環境」「選ばれる地方」という3つの政策目標と、a~rのアウトプットが示されています。さらに、産官学金労言士など地域の多様なステークホルダーが、それぞれの人材、資金、ノウハウを活かして連携することまで明記されています。
つまり、答案には、
自分の会社には何ができるのか
→ 誰と、なぜ連携するのか
→ その結果、地域に何が生まれるのか
→ それが地方創生の目標にどうつながるのか
という一本の流れが必要だったと考えられます。
Cさんは取組1に「k.インフラの維持」を選び、施工DXプラットフォームによって施工管理工数や原価、CO₂を削減するとしています。取組2では「h.人材育成・リスキリング」を選び、人材データベースによる離職兆候や工程遅延の予兆管理を挙げています。
いずれも建設会社の経営・施工改善策としては十分理解できます。
ただ、ここで一度、
「それによって、地方の何が変わるのだろう」
と問いかけてみてください。
例えば施工DXによって少ない技術者でも地域インフラを維持できるようになる。その結果、人口減少地域でも道路や上下水道等の機能を維持でき、住民が安心して暮らし続けられる。
ここまでつながれば、
施工DX → 生産性向上 → 地域インフラの持続的維持 → 豊かな生活環境
という地方創生への道筋が見えてきます。
出題趣旨を読み解くうえでは、「手段の実施」を成果と取り違えないことが大切です。
問(2)は、Cさんが持っている総監の知識が最もよく表れています。
一方、この設問では「地域のステークホルダーとの連携方法」を明確に求めています。ところが答案は、ウェアラブル端末、ドローン、BIM/CIM、教育訓練、アクセス権限、ゼロトラストなど、自社内部で行うマネジメントが中心になっています。
ここが惜しいところです。
「自治体と連携する」と一言加えればよいわけでもありません。
例えば、自治体は地域インフラの維持需要や災害情報を提供する、地元協力会社は施工力と地域事情を提供する、自社はDX基盤と技術者を提供する、教育機関は人材育成を担う――。
誰が何を持ち寄り、なぜ一社ではできないことができるようになるのか。
そこまで書けると、総監技術士として地域全体を動かしている姿が見えてきます。問題文が産官学金労言士を挙げた意味も、ここにあると考えられます。
問(3)では、Cさんは国全体の施策へ視野を広げています。この切替え自体はできています。
特に建設DXについて、国による標準仕様、共同利用クラウド、人材育成、税制優遇、サイバーセキュリティ基準まで示した点は、個別企業だけでは実現できない制度的な対応を考えており、評価できるところです。
さらに良くするなら、ここでは「建設会社にとって何が必要か」からもう一段離れ、**「日本全体として地方創生を実現するには何を変えるべきか」**という高さから考えてみたいところです。
問題は、問(1)では自組織、問(2)では自組織と地域のステークホルダー、問(3)では事業・組織の枠を超えた我が国全体へと、意図的に視野を広げる構成になっています。
Cさんの答案は、決して材料が足りない答案ではありません。
むしろ反対です。材料はかなり揃っています。
だからこそ、次に必要なのは新しい用語をさらに覚えることではなく、持っている知識を、
地方創生の目標
→ 自組織の役割
→ ステークホルダーとの連携
→ 具体的な取組
→ アウトプット
→ 地域・人々に生じる変化
→ 5管理のトレードオフを調整して実現する
という一本の筋に並べ直すことだと思います。
総監では、DXを知っていることも、5管理を知っていることも大切です。しかし、それ以上に問われるのは、異なる人・技術・資金・情報を束ね、利害やリスクを調整し、社会的な成果まで持っていく力です。
Cさんは、そのために必要な知識も、具体策を考える力も十分に示しています。
あとは、何かを書くたびに、
「これは地方創生の何につながるのか」
「誰と何を組み合わせるのか」
「なぜ、この取組でその成果が生まれるのか」
と問い直してみてください。
そうすれば、豊富な知識が単なるキーワードの集積ではなく、総合技術監理技術士として全体を動かす答案へと変わっていくと思います。
(1)新技術・DXに活用によるインフラ価値向上を進めるに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から3つの技術課題を抽出し,それぞれの観点を明記した上で,その技術課題を明記したうえで,その技術課題の内容を示せ。(※)なお,観点はインフラの価値に関するものとする。(※)解答の際は必ず観点を述べてから技術課題を示せ。
(2)前問(1)で抽出した技術課題のうち,最も重要と考える課題を1つ挙げ,その技術課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうる懸念事項とそれへの対応策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり,技術者として倫理,社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
2026年度・建設部門の問題Ⅰ-1は、AI、ドローン・ロボット、ビッグデータ、IoT、リモートセンシングなどを背景として、**「新技術・DXの活用によるインフラ価値向上」**を問う問題でした。
1 新技術・DX活用インフラ価値向上の多面的課題
(1)経済性観点:LCCを最小化する維持管理
インフラを整備するにあたって,劣化状況を調査するのに高精度カメラを搭載したドローン空撮による画像をAIによる診断を行う。これらの調査診断情報をBIM/CIMで管理し,データベースを構築して,調査・機能診断に基づき,施設をどのタイミングでどのような対策工法で補修補強をするかを,AI技術を用い評価して,LCCを最小化するアセットマネジメントを行うことが課題である。
(2)監視の観点:インフラを監視する技術開発
コンクリート構造物の劣化状況を調査するのに高精度カメラを搭載したドローン空撮による画像をAIによる診断を行う。例えば地震発災時に一早く法面崩壊等を把握する衛星SAR,UAVによる航空LiDARがある。よって,これらのインフラを監視する技術開発が課題である。
(3)環境配慮の観点:脱炭素化対策のインフラ整備
中温化コンクリートやフライアッシュセメントによる低炭素化資材による脱炭素化に向けた工事を行う。
また,道路整備ではTDM交通需要マネジメントやMaasの利用を推進し,ITS技術導入整備されている。よって脱炭素化対策のインフラ整備が課題である。
2.最も重要な課題と解決策
最重要課題は,「LCCを最小化するアセットマネジメント」である。選定理由は,インフラ価値向上に,直結するからである。以下に,解決策を述べる。
(1)UAV・ドローンを活用したインフラの調査・診断
メンテナンスに必要な情報を効率的に得るために,高精度カメラを搭載したドローン空撮による画像をAIによる診断を行う。それらのデータを,点群データとして取込み3次元図面データを構築しBIM/CIMデータとして管理しデータプラットフォームを作成する。そして,3次元モデルに点検結果を記録・蓄積する。(2)AI技術による劣化診断・評価断
ドローンによる自動ひび割れ計測や、センサーによる内部欠陥の非破壊検査、AI画像診断を導入する。施設の調査診断した情報をBIM/CIMデータとして管理しデータプラットフォームと取得した3次元点群データ等と連動させ、施設健全度評価データベースを構築し,施設の長寿命化対策を行う。
(3) BIM/CIMデータプラットフォームの構築とAIによるLCC評価判断
データプラットフォームをBIM/CIMデータとして管理する。さらに,AIにより施設毎に施設をどのタイミングでどのような対策工法で補修補強をするかを,AI技術を用い評価して,LCCを最小化するアセットマネジメントを行う。
3新たに生じうる懸念事項とそれへの対応策
懸念事項:構築したプラットフォームデータベースに対するサイバー攻撃とAIによる診断が劣化情報を見落とす懸念がある。
対策:サイバーセキュリティ対策を万全にすることとAIによる診断を妄信せず,専門技術者が現地を確認し,機能診断を最終判断する。
4技術者倫理,社会持続性の観点から要件,留意点
(1)技術者倫理の観点から
必要となる要件は,公益の確保(公衆の福祉と安全を確保すること)である。また,データの改ざん等はあってはならない。
(2)社会持続性の観点
将来世代に確実に価値あるインフラ資産を継承する意識を持つことが,社会の持続可能性(サスティナビリティ)に繋がる。
Aさん(仮名)は、道路分野の受験者です。
問(1)では、
の3課題を挙げ、ドローン、AI、BIM/CIM、衛星SAR、LiDAR、TDM、MaaS、ITSなど、多くの技術を盛り込みました。
さらに問(2)では、「LCCを最小化するアセットマネジメント」を最重要課題として、ドローンによる調査、AIによる診断、BIM/CIMによるデータ管理、AIによる補修時期・工法の判断まで展開しています。
一見すると、かなりよく書けています。
では、なぜ十分ではないのでしょうか。Aさんの答案で最も考えてほしいのは、知識不足ではなく、考える順番です。
例えば「監視の観点」では、ドローン、AI、衛星SAR、LiDARなどが登場します。
しかし、これらの技術名を一度消してみると、
「何のために監視を高度化するのか」
が見えにくくなります。
この問題で問われているのは、新技術そのものではありません。
例えば、
災害時にも必要な道路機能を早期に確保する
という価値を高めたいのであれば、
広域に存在する道路や法面、構造物の被災状況を、限られた人員で迅速に把握できないことが問題になります。
そこから、
被災状況を迅速かつ面的に把握できる体制を構築すること
が課題として導かれます。
そのうえで初めて、
衛星SARやUAV、AIを活用する
という解決策が出てきます。
つまり、
衛星SARがあるから使うのではありません。
解決すべき問題があるから、衛星SARを使うのです。
ここが、この答案から学んでほしい最大のポイントです。
Aさんは最重要課題として「LCCを最小化するアセットマネジメント」を選びました。
これも重要な考え方ですが、問題の主題は**「インフラ価値の向上」**です。
安全性、信頼性、災害対応力、持続的なサービス提供など、まず社会にどのような価値を提供したいのかを考える。
その価値を妨げている問題を捉える。
そこから課題を設定し、その課題を解決するための技術を選ぶ。
この順番が必要です。
一方、問(3)では、サイバー攻撃やAIによる診断の見落としを懸念として挙げ、**「AIを妄信せず、専門技術者が現地を確認し、最終判断する」**としています。これは評価できる記述です。
AIを使うこと自体を目的とせず、その限界を認識して技術者が責任を持つ姿勢が表れています。
問(1)(2)でも同じように、
「この技術を書こう」ではなく、「この問題を解くために何が必要か」
から考えられていれば、答案はさらに強くなったはずです。
この答案から学んでほしいのは、次の順番です。
問題を捉える
→ 課題を設定する
→ その課題を解決するために技術を使う
AI、DX、ドローン、BIM/CIMなどの技術名を多く書くことが目的ではありません。
出題者が解決を求めている問題に対して、自分の専門技術をどう使うのか。
そこまで一本につながったとき、知識を並べる答案から、技術士として問題を解く答案に変わります。
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