2018年2月8日 機械部門、熱工学科目の方の電話による指導

 この日のコーチングによる指導時間は17時00分から、40分間に行なわれ,その受講者様は機械部門、熱工学科目を目指す方で、場所は東京から電話を用いて相談されました。機械部門熱工学のA様は順調にU-2問題を解いてこられて実力をつけられてきました。
 しかし次の段階としてV問題を解こうとしたところ、急に問題の答え方のスタンスが違うことに気づかれて苦労されていました。U問題では機械部門・熱工学の専門知識や応用的主体でしたが、一方V問題ではマーケットの熱工学技術成果に対する需要や技術応用の知識が要求されるからです。具体的に問題をご説明しましょう。

問題文は次のようなものでした。
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V-1

 エネルギー自給率が低い日本においては、特定のエネルギー源への依存を過大としないことが求められており、地球温暖化対策と合わせて再生可能エネルギーに一定の期待がされている。このような現状を背景として、技術的観点から、以下の問いに答えよ。
(1)エネルギーセキュリティ向上及び地球温暖化対策のためには、国産の再生可能エネルギー利用促進が期待されるが、どのような国産の再生可能エネルギーが考えられるか。3つ挙げて説明せよ。
(2)日本において、エネルギー源の一定量を海外から導入する場合、地球温暖化対策を考慮して何が将来のエネルギー源となるか考えを述べよ。
(3)(2)のエネルギー源を使用した発電システムを1つ挙げ、その構成例と特徴及び課題について述べよ。
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 これに対して俺様も最初の解答は次のような内容となっていました。
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1.国産の再生可能エネルギー
1−1.太陽光発電 
 半導体の一種である太陽電池によって、太陽光エネルギーを直接電気に変える。太陽光を直流に変える太陽電池と、直流から交流に変換するインバータで構成する。
1−2.風力発電 
 風の運動エネルギーの最大40%程度を電気エネルギーに変換することができる。効率は周速比によって異なることから、風速に適した回転速度が重要となる。
1−3.地熱発電
 地熱貯留層から高温の蒸気と熱水を取り出し、気水分離器で分離した後、蒸気でタービンを回して発電するため天候に関係なく安定して発電が可能である。
2.地球温暖化を考慮した将来のエネルギー源
 地球温暖化が深刻化する中で、電気や熱への変換時において水素が以下の理由で有力であると考えられている。
2−1.無尽蔵かつハイパワー 

水や化合物として存在し、単位重量当たりの発熱量がガソリンの2.7倍。
2−2.エネルギー媒体 大容量の電力を長時間貯蔵する電力貯蔵媒体に適している。
2−3.エネルギーセキュリティ 水電解や燃料改質、自然エネルギーから製造可能でエネルギー自給率向上につながる。
3.水素を利用した発電システムの構成例と特徴及び課題
 発電システムとしては燃料電池システムが挙げられる。
3−1 構成例 
 アノード側に水素、カソード側に空気を供給し、化学反応を発生させて直流電力を出力する燃料電池スタックと、水素と酸素の化学反応を安定化するために燃料電池スタックの温度を一定に保つ冷却水回路と冷却水ポンプと、燃料電池スタックから出力された直流電力を交流電力に変換するインバータから構成される。 
3−2 特徴及び課題 
 燃料電池システムは水素の持つエネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、エネルギー損失が非常に少なく、発電効率が高い。また、携帯用電源として持ち運べる程、小型化が可能であるので、自動車や家庭において自立型分散電源として使用できる特徴がある。
課題としては、燃料電池スタックにおいて使用している触媒中の希少金属の価格が高価であり他の化石燃料を使用した発電システムよりも高価となるため、発電コストの低減が挙げられる。

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 さて添削結果の説明です。問題VではUと違ってここの技術提案をするわけではありませんので、機械部門、熱工学の全体像を俯瞰的なマーケットや技術営業に関する意見が必要です。
 「1.国産の再生可能エネルギー  1−1.太陽光発電」では U-1と同じような専門知識に基づいた技術解説がされていますが、ここではエネルギー市場の中で太陽光エネルギーがる位置づけをされているかというような、もっと大きな視点が必要です。まずはこうした再生可能エネルギーがどれだけ存在しているか賦存量が焦点になるかと思います。
 次に再生可能エネルギーを考えるときに欠かせことができないのがエネルギーの買取コストです。こういった経済的事情によってエネルギーの将来性が大きく左右されるからです。そして最後にエネルギー自給というセキュリティ問題についても着目しなければなりません。

 このような視点で考えて行くとなると、たとえ解答として水素エネルギーを選択されたとしてもその選択理由が違ってくると思います。上記で回答としてA様がお書きになった「単位重量当たりの発熱量がガソリンの2.7倍」とか「大容量の電力貯蔵媒体に適している」は視点がミクロすぎてふさわしくないということがわかるかと思います。

 またエネルギーセキュリティについては、問題文に「日本において、エネルギー源の一定量を海外から導入する場合」と書かれていることから、水電解や燃料改質などによって、国内で自給できるものは対象外であるということがわかるかと思います。このように問題文を深読みすることによって大きな減点を回避できる可能性があるのです。

 3に書かれた発電システムの構成例と特徴及び課題とは、A様が日頃業務で行っている、いわば得意分野の内容です。「アノード側に水素、カソード側に空気を供給し・・燃料電池スタックと、水素と酸素の化学反応を安定化するため・・直流電力を交流電力に変換するインバータから構成される。」と力説されていました。これだったら自信持っていくらでもプレゼンできそうです。

 しかしこうした得意分野の内容は、それに影響されて答えを誤った方向に誘導する危険性もあります。A様も実際にはこの添削の後に誤りに気づかれ大きく修正されました。問2の解答方針がもし誤りであったとしたら、 問い3の解答は即座に別な内容に修正する必要があります。臨機応変に対応する必要があるといえます。

 そして実際の正解の答案は次のようになりました。

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正解

1.国産の再生可能エネルギー
1−1.太陽光発電 
国内では再生可能エネルギーの12.5%を占める。固定価格買取り制度を推進力として今後も普及が進むと考える。本体や施工などの低コスト化が重要である。
1−2.風力発電 
コストにおいて既に火力発電と遜色ないレベルまで到達している。今後は出力変動に対する系統の受入能力を高めること、そして系統運用の広域化が必要である。
1−3.地熱発電
資源量としては世界3位の賦存量を誇り、出力が安定的で発電コストもLNG火力発電に匹敵する。今後は温泉事業者の理解を得ながら、地元と共生した持続可能な開発を進められるかが鍵となる。
2.地球温暖化を考慮した将来のエネルギー源
CO2排出量の観点ではLNG火力発電は石炭火力発電の半分のCO2排出量であり、化石燃料の中では最も有利である。また、エネルギーセキュリティの観点ではLNGの海外調達先は他の化石燃料とは異なり一極集中ではなく広く分布しており、より安全に日本へ導入できると考えるため、LNGが主力のエネルギー源になると私は考える。
3.LNGを利用した発電システムの構成例と特徴及び課題
発電システムとしてはコンバインドサイクルが挙げられる。
3−1 構成例 
1段目にガスタービン、2段目に蒸気タービンを設置し、さらに発電機、復水器、排熱回収ボイラから構成される。 
3−2 特徴及び課題 
特徴:燃料を運動エネルギーに変換するガスタービンと熱エネルギーを運動エネルギーに変換する蒸気タービンの2段階のエネルギー変換を用いる。熱効率が54%と非常に高いためCO2削減効果が高い。
課題:
@冷熱利用 LNGは非常に低温であるため、都市ガスとして活用する際において加温や昇圧のために非常に多くのエネルギーを消費する課題がある。LNGから都市ガス製造時における消費エネルギーを低減するために液体ガスの製造、冷熱発電等などの冷熱利用によるエネルギーの有効利用が必要であると考える。
A輸送コスト LNGは埋蔵拠点が世界各地に分散しているため、埋蔵地点が集中している他の化石燃料と比較して輸送コストが高額になるので、数社での共同調達の促進取り組みが必要であると考える。
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 問1では広い視点でエネルギーの分析が行われていますし、問い2では輸入すべき将来のエネルギーについてLNGを選択されています。そして問い3ではその構成および特徴、課題について具体的に述べているためを理想的な答案を作成されたということです。

 このように本講座の指導では、簡易形式の答案によって骨子の作成の仕方を学び、短い回数で正解に至る考え方を習得できるようになっています。今までの添削指導で合格できなかった方でも、試験官の採点方法がかかるため得点するためのコツが掴めるかと思います。そしてクイックレスポンスの指導によって短期間に合格力を高められますので直前にしたとしても合格力を付けられる事は間違いありません。  

コーチングがいかに役立つかご理解いただけましたか。本研究所では受講生様の進度に合わせてスピードラーニング指導しています。論文の理解度が欠けていると判断ときや、業績についても新しい視点が必要と判断したときは、随時電話、スカイプにてご相談の時間を持つように講師の側からお知らせしております。皆さんの技術士合格への疑問を短時間で解決するよう努めています。