H30年 電気電子部門、情報通信の答案について添削致しました。(2)

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この答案についての講評

 正しい見識をお持ちのようで、答案の内容に誤りはありません。ただ残念なことに解答趣旨を単刀直入に書くことができていないようです。このため、前置きが長く、答えの中心が薄くなっています。提案の一部の例示に集中したり全体像をつかんでいないようです。答えの内容としては、要求事項すなわち問いに対して、具体的でかつ、汎用性があり、漏れがないようにすると良いでしょう。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(17分7秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題

Ⅱ-1-1   LPWA(LowPowerWideArea)技術について、その主な特徴を3つ挙げ、この技術の用途について説明せよ。

解答

1. LPWA技術の特徴

①省電力

 電力の消費量を抑える要素技術としてeDRXとPSMがある。eDRXは端末が基地局のページングを受信する間隔を長くすることで省電力化を行い、従来10秒程度だった受信間隔をLTE-Mで40分程度、NB-IOTで2時間程度まで長くしている。PSMは「接続」状態と「待ち受け」状態の他に「省電力」状態を具備したものである。省電力状態ではページングの受信も行わず、電力消費の低減を実現する。

②低速・低コスト

 通信速度を低く抑えることでデバイスの構造が簡素になり、これによりコストの低減が図られている。

③広域通信

 従来のBluetoothやZigbeeでは通信可能な距離が数十メートル程度であったが、IoTではLTE並みの通信距離が求められ、例えばSigfoxにおいては50キロメートル程度の距離まで接続可能である。

2. LPWA技術の用途

IoTの利用に最適である。通信には電力が必要であるが、IoTでは多くのモノにデバイスを取り付けるため、電池の交換作業を頻繁に行うことは困難である。また、数多くのデバイスを取り付ける必要もあるため、デバイスのコストは安価でなくてはならない

もともと通信技術なのでIOTには役立つに決まっています。通信技術としての用途は何かが問われています。その後の文は、制約条件(〜ができない)になっていて、結局用途が何かわかりません。

Ⅱ-1-4

 ネットワーク・スライシング技術について、技術の背景、機能、想定される適用例(ユースケース)の3項目を説明せよ。

解答

1. ネットワーク・スライシング技術の背景

 5GではeMBB、URLLC、mMTCといった様々な要求条件を満たす必要があるが、従来のように単一のネットワークでこれを実施することは困難である。そこで考え出された手法がネットワーク・スライシイングである。

2. ネットワーク・スライシングの機能

 下の図1に示したイメージ図のように、従来は一つのネットワークで複数のサービス要件を実現する必要があったが、ネットワーク・スライシングによって、要求条件の異なるサービスの提供を分けることでネットワークを効率的に使用することができる。

機能の説明としては曖昧過ぎます。下の図も読み手に推論させることを求めているみたいで好ましくありません。

電気電子情報通信2019年Ⅱ-1-4問題

3. ネットワークスライシングの想定される適用例

 大容量通信はVRやAR、あるいは4Kや8Kといった高画質が要求されるサービス、高信頼低遅延は遠隔医療や自動車の自動運転、他端末接続は物流管理やヘルスケアといった分野での適用が想定される。

なぜこのような用途なのか、想定される理由、根拠がわかりません。そうした納得いく説明がコンピテンシーの1つ、「コミュニケーション能力」として求められてます。

Ⅱ-2-1

約10年前に大型屋外アミューズメント施設に設置された無線LANシステムの老朽化に伴い、上がらしい顧客向けサービスを提供可能な無線LANシステムへの更新を計画することになった。あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)   計画策定に当たって調査・検討すべき事項

(2)   業務を進める手順

(3)   業務を進めるに当たって留意すべき事項

解答

1. 計画策定にあたって調査・検討すべき事項

 まず、無線LANシステムの利用形態及びアプリケーションを調査する。10年前であればアミューズメント施設の情報を入手するといったWEBアクセスが主なアプリケーションであったと思われるが、今後提供する新しいサービスについて技術的な実現方法を検討する必要がある。例えば混雑状況をリアルタイムに表示するようなサービスが考えられる。

 また、トラフィックも検討すべき事項である。これは一日の中での時間帯および一週間の中での曜日におけるトレンドも把握すべきである。

 このような通信技術のマーケットニーズがお分かりになっていないせいか、具体的な検討内容が示されていません。ニーズを推論し、シナリを作って方針を立案してください。

2. 業務を進める手順

①現状調査

 現在のシステムの状況を確認するとともに、ユーザ数や通信量の現状を把握する。

②要件定義

 どのようなシステムを構築するか技術的要件を確定させる。

③スケジュール策定及び予算措置

 新システム稼働開始までのスケジュールを策定し、それに伴い必要となる予算の確保を行う。

④システム設計

 確定した要件に基づき、システムの設計及び開発を行う。

⑤設置工事及び試験

 実施に新しいシステムを設置する工事を行い、機能試験を実施する。機能単体の試験のみならず、システム全体で問題なく稼働するかの確認や信頼性(稼働率)の試験も行う。

⑥新システムの稼働開始及び監視

 新しいシステムを実際に稼働し、監視を行う。安定稼働が確認されたら、旧システムの撤去を行う。

3. 業務を進めるに当たって留意すべき事項

機能試験は通常の使用状態のみならず、トラフィックが急増することも想定して実施する必要がある。また、多くの人が集まる場所であるので安全性の確保に留意すべきである。そして、システムが故障が発生した場合に備えてバックアップ構成も検討しておく必要がある。

 割とありきたりの事項であって、どこでも当てはまることです。このご提案のプロジェクトでの正解とは考えにくいです。答えは物件の特徴を外さない答えとしてください。

Ⅲー2

 大規模震災は、情報通信インフラに甚大な被害を与え、避難、救助、住民の生活や復興などに大きな影響を与える。今後、情報通信インフラをどのように整えるべきか、以下の問いに答えよ。

(1)   大規模震災が情報通信インフラに与える影響を述べよ。

(2)   情報通信インフラの機能維持又は早期復旧のための技術的対策を3つ提案せよ

(3)   最も有効な対策の具体的内容、効果、留意点について述べよ。

解答

1.1.大規模震災が情報通信インフラに与える影響について

 まず、通信設備が被災することによりネットワークが機能不全に陥り、通信ができなくなることが考えられる。震災時においては可搬性の良いモバイル通信が有用であるため、モバイルネットワークについて論じる。ネットワークはRANとCOREに分けることができる。RANの通信設備は基地局であり、基地局が被災するとそれがカバーしているエリア全体で携帯電話がつながらなくなる。CORE設備は複数の基地局とつながっているため、CORE設備が被災すると複数のエリアで通信がつながらなくなる恐れがある。

 これらが震災による物理的で直接的な影響であるのに対して二次的な影響としてトラフィックの輻輳が考えられる。トラフィックが輻輳すると、それが更なるトラフィックの増加を招き雪だるま式に輻輳が大きくなる。

 また、設備自体が被災していなくても、電源供給が絶たれたり、伝送路がつながらなくなると通信ができなくなる。

2. 情報通信インフラの機能を維持又は早急に復旧するための技術的対策

①設備の冗長化運用

 主にCORE設備で用いられる対策であるが、冗長化した設備を地理的に離れた場所に設置することで、例えば東京の設備が被災しても大阪の設備が代替機として機能するということが可能である。

②可搬型基地局

 これは被災地に臨時の基地局を開設するものである。可搬型基地局は自動車で運べる大きさで、被災地に設営して衛星の電波をつかみ通信を提供するものである。被災地では商用電源が使えないこともあるため、ガソリンで自家発電することも可能である。

③気球による臨時基地局

 臨時の基地局という点では②と同様であるが、気球を使うことで迅速に開設することが可能となる。災害時に通信ネットワークが機能しない場合はその迅速な復旧が何よりも重要である。

可搬も気球も分かりやすいアイデアです。あまり難しくないアイデア中心の提案となっています。情報通信技術を応用した対策となるようにしてください。

3.1.最も有効と考える対策の具体的な内容

 気球による臨時基地局が最も有効と考える。①の冗長化設備はどちらも同時に被災するというリスクがある。これに対して、三重化や四重化を行えばリスクを低減することができるが発生するコストとのトレードオフとなる。②の可搬型基地局は被災地に赴いて開設する必要があるため、移動に困難を伴う可能性がある。

3.2.気球による臨時基地局の効果

 可搬型基地局と異なり、気球による臨時基地局は被災地に赴く必要がないため、迅速にネットワークの復旧が実現できる。可搬型基地局は災害が生じたその日に開設することは困難と考えられるが、気球による臨時基地局はそれが可能である。

3.3.実現する上での留意点

 大規模震災が発生すると複数の通信事業者の設備が被災することが考えられ、各社が同様に気球を使おうとした場合、その軌道で衝突等の事故が起こる恐れがある。したがって、気球の利用にあたっては、事前に通信事業者の間で充分な整理を行っておく必要がある。また、各社がそれぞれ気球を飛ばすのではなく、共同で利用するようなスキームも検討する価値がある。

3.4.おわりに

 主に設備の復旧について論じてきたが、情報通信インフラは今日の社会で欠かすことができないライフラインである。大規模震災で通信ができなくなることがないよう、官民を問わず関係者が皆協力して情報通信インフラの安定稼働に取り組むべきであると考える

 残念ながら、このような見解は求められていません。それよりも問いの趣旨に答えることに集中するようにしてください。

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