R1年 機械部門、材料強度・信頼性の答案について添削致しました。 20210312

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この答案についての講評

 この過去問答案の答案Ⅰの評価はBという残念な結果だったということです。他のⅡ、Ⅲ答案は時間切れでCとなっています。しかし、それぞれ改善点は見えていますのでコメントいたします。ここではB、CをAにするにはどうするか。AをAのまま維持するにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、この指導によって誰でも改善可能です。このような惜しい答案の方には、是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(46分35秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 持続可能な社会実現に近年多くの関心が寄せられている。例えば, 2015年に開催された国連サミットにおいては, 2030年までの国際目標SDGs (持続可能な開発目標)が提唱されている。このような社会の状況を考慮して,以下の問いに答えよ。   

(1)持続可能な社会実現のための機械機器・装置のものづくりに向けて,あなたの専門分野だけでなく機械技術全体を総括する立場で,多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。   

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。   

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。   

(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ。

■このⅠ答案は、一見よく書けているように拝見しますが、A判定だと思っていたのが実際はB判定でした。この原因の一つが問1の「いかに・・」という問題点を主体にした解答です。問題点の説明から入ると、話は分かりやすい一方、前置きが多くてなかなか結論に至りません。問2の解決策も結論まで至りませんでした。こうした解答は、単刀直入に述べるようにすると高得点が期待できます。

■このような前置きは不要です。下線も不要。

、持続可能な社会実現のものづくりへの課題

 持続可能な社会実現のための機械機器・装置のものづくりに向けた課題を述べる

(1) 資源の有効活用

 機械機器・装置に使用される資源は、有限であるため、資源を有効に活用することが課題となる。また、機械機器・装置の使用後は、処理できない材料は、産業廃棄物となって地中に埋めて処分されている。従来の「資源を採掘して」「作って」「捨てる」直線型システムから、今まで廃棄されている物を「再利用」「再使用」する循環型システムへ移行が求められている。

(2) 低炭素社会の実現

 人類が開発してきた製品、産業活動により、大気中の二酸化炭素が増加し、地球温暖化が進行している。例えば、化石燃料を使用した生産活動の排気ガスに含まれている二酸化炭素が原因となって、地球温暖化が進行している。このように、二酸化炭素をなるべく発生させないものづくりをすることが課題となる。

(3) 少子高齢化における生産競争力確保

 少子高齢化が進行し、生産年齢人口が減少している。このことから、女性や高齢者の潜在的能力を発揮し、生産競争力を確保することが課題となる。

■意味が違います。社会の持続可能性とは、生き残りのための企業や社員の競争ではなく、社会全体が繁栄することを目指しています。全く逆行です。

具体的には、子育てのため資格・能力のある女性、ベテラン技術者の経験を活かせるよう、短時間勤務による多様な働き方推進、テレワークを活用することが考えられる。

2、資源の有効活用のための解決策

 1章で述べた課題の内、(1) 資源の有効活用を最も重要と考え、以下に3つの解決策を示す。

(1) 解決策1:循環型社会の推進

 無駄になっている資源や捨てられている素材などを活用して生産をすることをめざす、「サーキュラー・エコノミー」への取り組み推進。資源の有効活用を重視した3R(リデュース、リユース、リサイクル)+リペアによる分別や再資源化が容易な素材や構造の開発、メンテナンスのしやすい製品設計により、製品を長く使用できる仕組みを推進する。

(2) 解決策2:再生可能エネルギーの活用

 石炭、石油、天然ガスを使用して発電を行ってきたが、これらの資源は限りがあるため、再生可能エネルギーでの発電を推進する。ただし、これらの発電は、気象条件に影響されるため、日中や気象条件のよい時に発電した余剰電力を活用する。蓄電や水素の製造・貯蔵し、電力不足時に活用することで、安定的に発電量を確保する。

 (3) 解決策3:発生副産物の有効利用

例えば、製鉄工程の副産物の再利用。鉄分を多く含むダストやスラッジについては、製鉄原料へ。また、鉄鋼スラグについてはセメント材料や土木材料などへ。さらに、環境修復材(海域環境改善材)への活用を推進する。

3、解決策に共通して生じる新たなリスクと対策

 高品質のリサイクル材料確保が難しくなるリスク

 リサイクル材料の需要が高まった場合、需要に対して国内外で品質の高いリサイクル材や発生副産物の供給が不足する可能性がある。  このリスクに対しては、複合素材など、複数種のプラスチックや金属が混在しているために再生利用が難しかった。これを、複合素材を細かく破砕し、破砕物に混在する素材ごとの物理的な性質(比重、形状など)の違いを利用した選別技術を組み合わせることによって、有用な材料を高純度で分離・回収し、新材同等の特性(物性、耐久性)を備えた材料を多く再生することにより対処する。

リスクとして挙げていることの意味が伝わりません。

品質の高いリサイクル材がなくなり、低質品になるのは急に起こるものではありませんし、リサイクルの種類もあるはずです。廃棄物同然のものはサーマルRへ処理されます。

発生副産物の供給が不足するとは、つまりリサイクル自体が不要となるわけで、社会としては好ましい傾向です。リスクは無いと考えられます。

4、業務遂行において必要な要件

 (1)循環型社会形成推進基本法遵守

この法律を基本的枠組み法として、個別のリサイクル法が次々と制定、改正されている。この中に、個別物品の特性に応じた規制が設けられており、これを遵守しなければならない。

■個々の法を遵守するのは技術者倫理以前の義務であって、問題外です。

例)犯罪に手を染めない。詐欺をしない。

(2) 材料に関する法令遵守

EUのRoHS指令やREACH規則に代表される世界的な製品含有化学物質管理規制の遵守。規制対象地域に製品を輸出する場合、対応が必要不可欠となっている。以上

■これも同じ。このような既存の法を遵守するために技術者倫理があるのではありません

本講座ではこのような細かい対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−2

炭素繊維強化プラスチック積層板について,材料強度の観点から留意すべき点を2つ挙げ,その内容とともに対処方法を説明せよ。

アンダーラインは不要

1、炭素繊維強化プラスチック積層板の材料強度の留意点と対処方を以下に述べ

(1)対象物強度に対し積層構成を正確に行う。

 炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)

の強度留意点として、炭素繊維の強度は異方性であるため、積層構成が正しくなければ、強度は全く違うものになる。通常、積層板は炭素繊維を一方向に並べた、プリプレグを強度に応じた構成を計算しておき、積層を行う。炭素繊維方向(0°)に対して繊維強度を発揮するが、(90°)方向はマトリックス強度ぐらいしかない。 

■強度に関する一般知識です。暗記したことを書きだしたものと読み取られてしまいます。

しかし、求めているのは留意点であって、強度を増す/確保するにはどうすべきかです。

 これに対しては、まず、繊維強度を計算し、どの方向に対して強度が必要かを正確に把握する。どの方向に炭素繊維方向を何枚向けて積層するか積層構成表を使い、施工側に正しく伝えことが必要である。

■作業連絡、業務連絡ではなく、正解は設計法です

(2)CFRP化した時の炭素繊維とマトリックスの内部状勢の確認。

 CFRP構成物中にどれだけの繊維が割合として含有されているか、ボリューム/ファイバー(以下、Vfという)の確認が必要である。Vfが低いと駆体となる炭素繊維が不足している状態であり、強度不足になる。

 これに対しては、構成物のサンプルによる測定を行う。Vfの測定方法は、CFRPのサンプルを、ミルにより粉砕を行い、気体封入型の真比重計にて真比重を測定し、アルキメデスの原理により、嵩比重を測定し、ボイド量を出して、その計算において測定する。以上

■技術士の留意点とは、強度確保の提案を求めています。それが技術士のコンピテンシーです。

具体的な作業内容ではありません。

測定法の暗記、知識を書き出しても△

Ⅱ−2−2

 機械製品は供用開始後に故障が発生,さらには破損に至ることも想定される。このため,使用環境及び稼働状況に基づいた多くの配慮の他,適切な材料の選定が設計段階で必要である。機械製品の設計要求及び性能を確保するため,あなたが材料強度の技術責任者であったとして,下記の内容について記述せよ。   

(1)機械製品を選定,その概要を示すとともに,設計に当たり「荷重」と「材料の強度」等には不確かさが存在することに関連して,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。   

(2)検討を進める業務手順について,留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。   

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1、炭素繊維強化プラスチック使用ライザー管を選定し、概要を述べる

 海洋発掘用ライザーシステムにおいて、軽量化に伴い、金属部分の量を減らし、炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)を鋼管外周部分に施工することにより、軽量化を図り、より深海部まで到達を実現する。

(1)荷重と材料強度の不確かさの存在

■いろいろ書かれていますが、では材料強度がなぜ不確か?回りくどい文章を8行読んで類推するしかなくなってしまいます。焦点を当てた書き方にしましょう。

 炭素繊維強化複合材料(CFRP)は高強度アルミニウム合金の20倍の比強度、高剛性の炭素繊維は、10倍の比剛性を有するが、実際には繊維を樹脂で固めるだけでなく様々な方向に配向する必要があるので、CFRPの比強度・比剛性は繊維と比較して数分の一になる。内部構造も複雑なために応力集中部や破壊ひずみの小さい部位から様々な損傷が発生・進展したのちに破壊する可能性がある。

■荷重の不確かさについては書かれていません。

(2)調査、検討すべき事項

CFRPの挙動を精度よくシミュレーションする。

マトリックス中に大きな応力集中が起きる。この応力集中は繊維体積含有率が高くなるほど大きくなるので設計時に憂慮する。メゾレベルでは層ごとの不連続があるうえに、積層方向に強化繊維が配向されていないので板厚方向の強度が面内の方向に比べて小さく、層がはがれる層間剥離が生じやすい。三次元的に応力が発生す状況では層間剥離の問題が無視できなくなる。

■調査して、検討すべきことは何か。3つ程度の「柱」を挙げるようにしましょう。

いろいろ書かれていますが、焦点が定まりません。

層間剥離ではなく、もっと構造的に大きな問題を取り上げるべきでしょう。

(2)検討を進める手順、留意点、工夫点

■一般試験をせよという話ではないので、標準試験法は不要です。

基本データを作成:強度は一般に、JISなどに決められている標準試験に従って測定する直交異方性材料なので、繊維方向と直角方向で強度が異なるだけでなく、引張と圧縮で破壊の様相が違うことに配慮。

②層間剥離への配慮:CFRPの積層厚みが大きくなると、積層間で剥離が生ずる。厚み方向に繊維を構成はできないので、積層厚みの選定と層間剥離強度試験(ILSS)を行う。必要に応じて、積層の外周側から内部方向への巻締め工程を入れる。

③CFRPに使用する炭素繊維の種類の選定:炭素繊維の種類の中でも、高強度品、高弾性品といった特徴がある。代表的に分けると、PAN系炭素繊維が高強度、ピッチ系炭素繊維が高弾性率を示す。構成物全体を設計する際に2つの特性を活かし、パートごとに使用材料を選定する。

■これらの機械材料の本質的事項について述べるようにしてください。

3、関係者との効果的な調整方策

 ■3は方向違いの解答です。

プロマネとしての、社内外関係者の取りまとめによる品質確保を求めています。

今回のプロジェクトは、ライザーシステムを取り仕切る団体と金属を専門にする会社とCFRPを専門にする会社での連携で成り立ったこである。お互いの専門知識、分野的立場や考えを理解し合うことの必要性。分析評価手順の決定。評価結果に基づき、意見を出し合って役割を見える化し、効率的成果が出せることが重要である。

Ⅲ−2

機械構造物の設計においては,顧客の多様なニーズに応えるために基本型から多くの型式の製品を派生させて対応することがある。このような製品の強度設計を担当する技術者として,以下の問いに答えよ。

 (1)具体的な製品を選定してその概要を示すとともに,時代とともに変化する社会の要請を踏まえつつ,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。     

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。    

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

製品の「コスト」や「安全性」などを求める単純な問題は、今は出題されません。

ここでは高度な時代的ニーズに対応しているか、経験が問われています。

1、燃料電池車水素ステーション用蓄圧器の概要

 燃料電池車水素ステーション用蓄圧器は、燃料電池車(以下、FCV車という)の燃料補充用水素ステーションに水素を搬入し、高圧に圧縮して貯蔵する高圧貯蔵用蓄圧器である。

会の要請として、環境問題になっているCO2を排出しないFCV車の利用拡大が図られている。これを踏まえ、以下に課題を述べる

■これは水素社会の到来であり、蓄圧器の意義にすぎません。一方、この問題の主題は「基本型からの派生製品の強度設計」です。それに対する社会の要請を考えましょう。

(1)FCV車の利用拡大を目指す上で、水素ステーションの設置数が不足している。その大きな要因として、設置費用が高額であること。ガソリンスタンドの約5倍である。コスト削減と安全性の確保が必要。

■結局何をすべきなのか。問題課題が混在。設置数不足,高額,コスト削減,安全性。 どれが課題ですか。焦点が定まっていません。

(2)水素の製造場所から、陸輸送で搬入ができなければならない。運搬時設備の確保、運搬時の破損、漏えい対策や運搬時の破損を防がなければならない。

(3)水素の温度管理。水素は分子量が小さく、単位体積当たり熱量も小さく、かさばるエネルギーである。水素蓄圧器は80Mpaと高圧で保存しなければならず、温度管理基準は-40℃〜85℃の範囲を保たねばならない。

2、1章で述べた課題のうち、(1)が最も重要と考え解決策を示す。

①水素ステーションコスト削減と安全性確保。

■これでは2つです 

水素ステーションの設置費用削減には、搬入から貯蔵、水素を送るホースに至る、各設備でそれぞれ行われている。その中の1例として、貯蔵用蓄圧器の製造

コスト削減について述べる。

図1水素貯蔵用蓄圧器のタイプ

水素貯蔵用蓄圧器は初期型のタイプ1からタイプ4まで開発されている。

(図1に示す)その中でも、鋼材を使用し、外周部のみに炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)を施工したタイプ2は炭素繊維使用量が少なく、1番コスト削減が見込める。強度を鋼材で持たし、繰返し荷重を引張り強度の高い炭素繊維が受け持ち、使用温度-40℃〜85℃の中で安全に最も安価で製造である。

■個別の形式ごとのコストダウンの話に埋没しています。

基本型から派生製品強度設計について答えていないので、ノーカウントとなる危険性があります。

②水素ステーションの安全への取り組み。

①と同じことです。

金属を使用するに当たっては、水素脆性を起こさないことが重要である。安定化ステンレス鋼や低炭素ステンレス鋼の使用が、まずなされるが高額である。そこで、鋼製の使用を検討がなされ、小サイズの物はSNCM435でも対応できるが、200リットルを超える大容量の物はSNCM439を焼鈍し処理を行い、引張り強度1000N以下(概ね940N)の物で表面粗さを一定の範囲におさえ使用すれば、水素雰囲気中の強度低下を防ぎ、水素の侵入を防ぐことができる。

3-1、解決策に対するリスク

■リスクとは何か。「頻度が小さく、経済損失が大きく、完成当初は一般人に予測できない危険性」です。

わかりやすい懸念事項や身近な問題解決ではありません。

何故技術士試験でリスクが求められるかを今一度考えましょう。

上記の水素貯蔵用蓄圧器、タイプ2についてのリス

クとして。

①使用済みになった時の廃棄及びリサイクル方法の確立が挙げられる。高圧ガス保安法により、高圧ガス容器は、再使用を防ぐためにくず化して廃棄が義務付けされている。リサイクルするためには、金属とCFRPの処理方法を考えなければならない。

②地震などの災害時でも安全が保たれる構造、安全装置の設置が必要である。

③鋼とCFRPの直接接触(電位差)による電食の発生。

3-2、リスクに対する対策

①水素貯蔵用蓄圧器、タイプ2については、CFRPと金属の廃棄物が出る。金属に関しては、溶かして再利用する。CFRPに関しては、分離後、電炉など再資源化施設で処理及び、CFRPの樹脂のみを焼失させて繊維のみを残し、マテリアルリサイクルする。

②地震、火災対策は、蓄圧器に火炎検知警報設備の設置、かつ、運転自動停止装置、温度上昇防止装置の設置。水素漏えいをいち早く検知するため、レーザーによる遠隔監視装置を設置する。また、CFRPの破損を防ぐために、再外層にガラス繊維で緩衝材にする。

③炭素は電気を通す元素であり、金属と炭素の電位差により電食発生防止が必要である。そこで、金属とCFRPの間に防食塗装を施す、あるいは、ガラス繊維を挟むことで通電を無くし防止する。

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