R2年2020年合格判定結果。得点、減点の要因、改善点についてご説明いたします。音声ガイドコーチング付き

合格判定の年度別一覧>

R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210427

R2年 建設部門、道路の答案について添削致しました。20210408

H30年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210402

R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210330

R1年 機械部門、材料強度・信頼性の答案について添削致しました。 20210312

R2年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 20210310

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210226

H30年 建設部門、港湾及び空港(港湾)の答案について添削致しました。20210218

R2年 衛生工学部門、廃棄物・資源循環の答案について添削致しました。 20210130

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210130

R1年 機械部門、機構ダイナミクス・制御の答案について添削致しました。 20210125

R2年 情報工学部門、情報基盤の答案について添削致しました。 20210123

R2年 環境部門、環境保全計画の答案について添削致しました。 20210123

R2年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 20210121

R2年 機械部門、流体機器の答案について添削致しました。 20210119

R1年 建設部門、都市及び地方計画の答案につて添削致しました。 20210117

R1年 機械部門、熱・動力エネルギー機器の答案について添削致しました。 20210114

R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210114

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210114

R2年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 20210114

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210114

R2年 建設部門、道路の答案について添削致しました。20201031

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20201029

R2年 衛生工学部門、建築物環境衛生管理の答案について添削致しました。 20201017

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210114

R2年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 20201010

R2年 建設部門、建設環境の答案について添削致しました。 20201007

R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20201006

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20200927

R2年 上下水道部門、上水道及び工業用水道の答案について添削致しました。 20200927

R2年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 20200923

R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210427

答案の一覧>

この答案についての講評

 試験の敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは不可能です。技術士合格の方法としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(27分26秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1)社会インフラのメンテナンスする上での課題

■↓分析(力)が不十分です。何をどうしたら良いのか、明確に突き止められていません。ダブリも多いようです。

「戦略的なメンテナンス」の真意がとらえられていません。

 老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進する上での課題を次に挙げ

  ①どのようにして予算を確保し、どの施設より優的にメンテナンスを行っていくか。

  ②優先順位の低い小規模施設のメンテナンス

  ③どのように長寿命化するか。

 ①我が国の社会インフラの多くは高度経済成長期に整備されているため、それらの社会インフラは今後一斉にメンテナンス時期を迎えるが、どのようにして予算を確保し、また限られた予算の中で、どのような施設より優先的にメンテナンスを行っていくかが課題である。

■↑漠然としてこれだと「どうしたら良いかわからない」という印象を与えかねません。

②優先順位的に低くなることが想定される小規模施設のメンテナンスをいつ実施できるかが課題である。

■↑優先順位?なのですか。不要施設を廃棄するなど具体的な焦点を明確に言うと良いでしょう。

③インフラ整備はメンテナンスし、今後も継続して維持管理を行っていく必要があるが、今後さらに50年以上活用していくためには、どのように長寿命化を行っていくかが課題である。

■↑今後50年維持することを課題として言うように。50年維持するには何すればよいのか提案するようにしてください。

(2)最も重要な課題とその解決策

 課題のうち、最も重要な課題は「③どのように長寿命化するか」である。その解決策としては次の内容が考えられる。

  ①定期点検および健全評価の実施

  ②長期間の補修サイクルの設定

  ③新技術の開発・導入

■↑この①②③の方向性は悪くはありません

①長寿命化を行っていくには、定期点検を実施し、健全度評価を行うことが有効である。定期点検や災害後の点検により、劣化状況を確認し、その点検結果を

基に健全度評価を実施する。健全度評価により予防保全段階で補修・補強を実施していくことで、インフラ整備の長寿命化を図ることが可能である。②各施設の部位・部品ごとに補修サイクルを設定し、部位ごとに補修していくことで長寿命化を図る。③新技術の開発・導入により、護岸背面の吸い出し防止材の修復など、現状補修困難な箇所などの補修を行うことで、長寿命化を図る。

■↑①②③ごとに段落を分けて、方法論、根拠を明確に示す。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクと対策

 解決策により新たに生じうるリスクを次に挙げる。

■↓これは問1の前提事項となりますので、△です

  ①維持管理費用の増大

  ③将来の維持管理を担う人材の確保・教育

 ①点検、補修、補強を行う費用の増幅がリスクとなる。特に今後ほとんど施設でメンテナンスが必要となり、単年度に集中することが懸念される。対策としては、点検結果による健全度評価にて補修の必要性を検討することや、施設自体の必要性を検討し、近接している施設との統合を行うことが有効である。また、予算確保を行うために、各機関の管理区域内で施設全体の維持管理計画や予算計画を策定し、予算の平準化を実施し、長寿命化計画を見直す。③少子高齢化の影響もあり、建設業に携わる技術者も減少している。そのため、維持管理を行っていく上での人材を確保、育成することがリスクと考えられる。対策としては、人材教育の観点より、資格制度を充実や、教育機関の設置が考えられる。

(4)業務を遂行するに当たり、必要となる要件

 が国の少子高齢化に伴う技術者の減少、インフラ整備の老朽化によって、インフラを計画的に維持管理することにより、国民の安全・安心の確保やトータルコストの縮減・平準化を図る必要があるため、新たな技術開発は重要であると考えられる。

■↑残念ながら、ここは題意に応えた解答とは言えません。

「業務として遂行するに当たり必要となる要件」・・業務とは何か

「技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。」この意味は?

この真意は難解です。これがわからないと、意味ある答えになりません。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。例えば、

問2の(1)〜(3)をただ業務遂行するのでなく、(技術士にふさわしく)技術者倫理も高めてするには、〇〇を〇〇をする。これは技術士倫理綱領の〇〇に相当する。

問2の(1)〜(3)をただ業務遂行するのでなく、(技術士にふさわしく)社会持続可能性を高めてするには、〇〇を〇〇をする。これはSDGsの№〇の「〇〇」に相当する。

この文に合うように作成するだけで、ほぼ正解に近くなります。

Ⅱ−1−1

河川改修により確保された流下能力を維持するための河道流下断面の維持管理についてその手順を説明するとともに、河川改修後に低下した流下能力を回復させる対策を検討する際の技術的留意点を2つ以上述べよ。

1.河道流下断面の維持管理手順

■↓前置きは不要です。大事なことを優先的に書くように。

河川改修により確保された流下能力を維持するための河道流下断面の維持管理は次の手順行う

②       横断測量などによる定期的な河道断面の確認

②維持掘削や河道内樹木の伐採■わかりにくい

  定期的な横断測量や航空測量を行い、改修後の土砂の堆積状況や河道内樹木の繁茂状況を確認し、土砂の堆積や樹木の繁茂が顕著に確認された箇所においては維持掘削や樹木伐採を実施し、流下断面を維持する。

■手順とは時系列の作業項目、4、5程度が妥当でしょう

2.流下能力回復を検討する際の技術的留意点

■留意点を求めているのは、決まった答えではなく、技術者が任意に判断して、上手に品質管理するコンピテンシーを測るためです。ここを得点のチャンスと考えて、テクニックを披露してください。

 低下した流下能力を回復させる対策を検討する際の技術的留意点としては以下の内容が挙げられる。■不要

②  確実に施工でき、かつ安価な対策を検討する。

  ②対策後の流下能力低下を防止する。

■共に一般的事項にすぎません。普通の技術者ならそうする前提条件のようです。さらにコンピテンシーを高めた提案をしましょう。

 ①について、流下能力の回復としては一般的に掘削工事が考えられるが、工事用進入路や仮締切が伴う。

従って、確実に施工できるか、他工法と比べて安価な工法かを検討し、施工方法も踏まえて最適な工法の検討が必要である。 ■施工法が見えていない?

 ②について、対策実施後にも土砂の堆積や樹木の繁茂等による流下能力低下の再発が懸念される。従って、

 対策検討時は、対策後の経年的な再発を防止できる工法を検討しておく必要がある。

■つまりどうするのですか。具体的に行動を指定するようにした方が良いでしょう。

Ⅱ−2−2

近年、激甚な災害が各所で発生しているが、被災地の復旧に当たっては再度災害防止の取り組みが重要となる。あなたが水害・災害の被災地における再度災害防止対策に関するプロジェクトの規格・立案を担当することとなった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、下記の内容について記述せつ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について、説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方針について述べよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容

 河川分野における被災地の災害防止対策について、調査、検討すべき事項を次に挙げる。

②  被災箇所の調査、被災原因の検討

  ②設計対象流量の見直し ■①〜③を見出しとし段落で示す

  ③再発防止を踏まえた復旧工法の検討

 ①復旧対策検討に先立ち、被災が発生した場所を調査し、被災箇所数や被災状況を確認し、被災原因を究明する。②調査結果、原因究明により確認した被災箇所および被災原因を基に、対象流量、水位の見直しを行う。③見直した対象流量に対し満足する堤防形状や、堤防構造などの検討を行う。

■空き行は不要

(2)業務を進める手順についての留意点、工夫点

 業務を進める手順の留意点、工夫点を次に挙げる。

  ①被災状況を考慮した対策工法の提案

  ②比較的安価な対策工法の提案 ■①〜③を見出しにする

  ③地域住民が賛成する対策工法の提案

■↓問題点(黄色)が長すぎます。課題(緑)の説明に文字数を割くように

または問題点は目的に書き換える。③のように

 ①調査結果より確認した被災状況を基に対策工法を検討する。例えば堤防に関しては、越流により、川裏の法尻より洗堀し堤防決壊となる原因が多いが、その場合は堤防高の確保に加え、今後発生する想定以上の洪水流量で堤防越水が懸念されるため、法尻補強を実施する。

■↓問題点ではなく、③のように目的に書き換える。

河川の被災は堤防決壊によるものが多くみられるが、その場合被災延長が長く工事費が高価となることが懸念される。そのため、比較的安価な対策工法が必要であり、例えば築堤材料の土砂流用や、被災が懸念される河川狭小部のみ高規模堤防とするなどの対策が考えられる。③業務を円滑に進めるためには地域住民の理解が必要不可欠であり、そのためには、対策後の景観面や利用面に留意した対策工法を検討とする必要がある。例えば、防天端幅を拡幅する場合では、堤防天端を公園などに活用するなどの対策が考えられる。

■↑例示は答えの汎用性を損なうので、一般例として表すようにしてください。

(3)効率的、効果的に進める関係者との調整方針

 業務を効率的、効果的に進めるためには自治体、漁協組合、地域住民などとの調整を行いながら検討を進めていく必要がある。ただし、各機関ごとに調整を進めることは非効率であり、さらに各機関で意見が異なり、検討方針の決定に長期間必要となるケースが考えられる。従って、委員会などを設立し、各機関が合同で意見交換を行える場を設けることで、検討状況や対策方針を共有でき、効率的、効果的に業務を進めることが可能であると考えられる。

■↑調整の中身の具体的な話がありません。あるのは合理化、委員会の手法だけ。

これだと、本当に調整力があるかどうか伝わりません。

「委員会を設ける」は、一見よさそうですが、しかし他者に依存するので、プロマネとしては好ましくありません。

Ⅲ−1

 社会資本分野における情報通信技術(ICT)の全面的な導入により、活用される3次元デジタルデータは、より細かく、より多くなってきた。そのため、平常時、災害時に関わらず、これらのデータの共有を図るためのデータプラットフォームづくりが進められている。このような状況を踏まえて、河川、砂防及び海岸・海洋の分野の技術者として以下の問いに答えよ。

(1)データプラットフォームの実現を前提として、ICTを調査・観測に活用していく上での課題を、技術者としての立場で多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)前門(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

■ICT活用の一般論に終始していて、「河川、砂防及び海岸・海洋の調査・観測」の課題が見えません。

「河川、砂防及び海岸・海洋の分野の技術者として」問いに答えられていません。これがないくて、ICTだけでは正解は成立しません。

(1) ICTを活用していく上での課題とその内容

 データプラットフォームを前提としてICTを調査・観測に活用していく上での課題を次に挙げる。

  ①ICT導入の環境整備

  ②ICT技術の伝達

  ③データ管理方法

 ①ICTを活用するにあたり課題となるのが環境整備である。現状活用していないICTを導入するためにはコスト面が懸念される。特に中小企業では、この課題が顕著となることが想定される。②もう一つの課題はICT活用に向けた技術の伝達である。ICT技術を活用するに当たり、技術を有する必要があるため、その技術をどう会得して、将来的にどのように伝達していくかが課題である。③ICTにより取得したデータをプラットフォームにて一元管理することとなるが、そのデータの管理や活用方法について、どのように行っていくかが課題である

(2)最も重要な課題に対する解決策

■残念ながら本質的なことが書かれていないので、これの状態では修正は難しいです。以下のコメントは省略いたします

 最も重要な課題は「①ICT導入の環境整備」である。

課題解決方法としては、次の方法が考えられる。

①調査業者や施工業者にインセンティブを与える

 ②講習会の実施

 ③ICT活用に対する評価

 調査業者や施工業者などの受注者側については、ICT機器等の高価かつ高度な技術を導入するといった負担が発生するため、ICTを普及させるためには導入に対するインセンティブを与える必要があると考えられる。②ICT導入する際に、発注者および受注者においてはICTへの理解を深めることが重要であるため、講習会等を実施し、ICT 工事の特徴を正しく理解し、発注、工事の実施を行う必要がある。③業務成果としてICT活用により一定の成果を上げた場合は正しく評価される制度を設けることで、受注者へのICT導入を促進することになると考えられる

■↑河川、砂防及び海岸・海洋の分野の視点がないので建設・河川の選択科目としては、採点無理。

(3)解決策で生じる波及効果と対応策

■ICTで技術が低下するとは考えにくいです。現実と逆行していませんか。

 ICT導入の環境整備を行う上での波及効果としては、施工精度や施工品質の低下、技術者の技術力の低下が考えられる。ICT技術の導入により技術者の作業や確認行為が少なくなり、完成したインフラ設備の品質が低下する。また、ICTに頼ることで、生産性は向上するが、技術者の作業内容が減少することで技術力が低下することがICT導入による波及効果として考えられる。これらより、将来的にICT全面活用となった場合は、検討不足や確認不足が発生し、技術力や品質低下が考えられ、その対応策としては、次の内容が考えられる。

①従来技術の伝達

②研修施設や資格の充実

③ICT活用時の照査基準の設定

①今後、熟練技術者による従来技術の伝達により技術を継承していくことで、若手技術者の育成を図ることが有効であると考えられる。また②建設業の研修設備や資格を充実させ、教育環境を整備することが重要であると考えられる。施工精度や品質を確保していくために③ICT活用時の照査基準を設定し、品質を確保する。施工後の確認、照査内容をすべて基準化することで、徹底した照査を行え、照査結果を明確にすることが可能であると考えられる。ただし、各施設で照査内容が異なることが想定されるため、幅広い内容での照査基準を設定するとともに、技術者は設定された照査基準以外にも、各施設で必要に応じて個別で照査内容を追加設定することが望ましいと考えられる。

R2年 建設部門、道路の答案について添削致しました。20210408

答案の一覧>

この答案についての講評

 この答案Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの評価はそれぞれB,A,Cでした。答案の内容についてはそれぞれ改善するべきところは見受けられますが、やはり評価の悪かった答案では本質的な事項が答えられていないように拝見いたします。こうした出題者が要求する答えの中心について的確に答えることが正解に近づく方法かと考えます。本講座では無駄な記述を無くすことにより、簡潔な文章で正解の本質を鋭く突く論述をお勧めしています。これをすることによって答えが発散することなく、間違いなく正解にたどり着けるということです。このHPの添削の中では残念ながらすべての正解をお示しすることはできませんが、受講された方に対してはマンツーマン方式で丁寧にご説明しておりますのでご安心ください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(30分46秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.戦略的なメンテナンス推進の課題

(1)地方自治体の管理体制の強化

我が国では、橋梁70万橋、トンネル1万本存在しているが、そのうち橋梁の9割、トンネルの7割を地方自治体が管理している。

しかし、公共事業費の削減、職員数の削減の進行するなか、人材不足、予算不足、技術力不足で相対的に管理体制が不十分で負担が大きく対応が困難である。

したがって、戦略的なメンテナンスサイクル推進を行う地方自治体の管理体制の強化が課題である。

■↑たくさんの問題に対して「管理体制強化」だけではなく、技術的解決へつなげるようにしましょう。

(2)個別施設計画の策定

多数の社会資本の老朽化が加速度的に上昇する中、すべての施設の劣化状況や管理方針や維持費の概要を把握して戦略的な維持管理する必要がある。

しかし、個別施設計画の策定率は橋梁で8割、トンネルで5割と進んでおらず、全体を俯瞰して優先順位を考慮した戦略的な維持管理ができない。

したがって、戦略的なメンテナンスを行うために必要な個別施設計画の策定が課題である。

■↑戦略的な維持管理だとどうして個別計画なのかではなく、今一度論理的につながるように考えましょう。

(3)担い手の確保育成

維持工事は、建設時の品質や立地条件、建設後の利用履歴や管理状況などをもとに適切な補修設計・工事が必要であるため高い専門技術力が必要である

しかし、維持工事を担う多くの熟練技術者が、高齢化により、今後10年間で退職が見込まれており技術力不足により対応が困難となる。

したがって、戦略的なメンテナンスサイクル推進に必要な担い手不足が課題である。

■↑良く書けています〇

(4)劣化予測技術の高度化

戦略的なメンテナンスサイクル推進のためには、点検データを元に健全な評価を行い修繕、更新を行うために劣化予測技術の高度化が必要である。

しかし、施設管理者間でメンテナンスサイクルや新技術活用による計測、点検、補修などのデータを共有する仕組みがないため予測技術の高度化が図れない。

したがって、施設管理者間でデータ共有することによる劣化予測技術の高度化が課題である。

■↑劣化予測は手段に留まっているためメンテにはならないので、これをどう補修につなげるかという視点が必要です。

2.地方自治体の管理体制の強化の解決策

大多数の施設に影響することから「地方自治体の管理体制の強化」を最重要と考え、以下に解決策を述る。

(1)民間活用

解決策は、民間を活用した維持管理を行うことである。

理由は、活用することで地方自治体が行っている発注、施工管理、受入検査などのマネジメント業務の全部または一部を肩代わりすることで、地方自治体の管理体制を補うことができるからである。

具体的には、CM方式を導入する。導入により、民間の創意工夫や技術力によりメンテナンスの高度化が図られる。

■↑PFIやPPPは民間のノウハウを利用するわけであって、肩代わりではないことを理解しましょう。

(2)修繕計画の立案、設計、工事の一括発注

解決策は、包括発注方式の導入である。

理由は、地方自治体の事務処理の手間が削減でき、発注規模の大型化により不調不落の防止が図れることで発注の安定化が図れるからである。

具体的には、各管理者が一体となった契約方式の導入や修繕計画から修繕工事までを一括で発注することでさらに効率化が図ることができる。

■↑一括ですべてが効率化は無理があります。自治体の事務処理の手間よりもっと本質的な事項を挙げるようにしましょう。

3.新たに生じうるリスクと対策

新たに生じうるリスクは、責任の所在が不明瞭になることと安全面への配慮を欠くおそれがあることである。

方策は、契約後に速やかに責任の所在を書面に記録しておくことと、過度に利益至上主義にならないよう安全面の注視が必要である

■↑事務的な措置で解決することは、あまり提案価値がないため、建設・道路の技術応用を前提とする提案をするようにしましょう。

4.必要となる要件

技術者としての倫理の観点から、行っている業務が社会に与える影響を正しく理解し公衆の安全、健康、福利など公益の最優先が必要である。

社会の持続可能性の観点から、環境負荷の小さい施設を積極的に活用することや、コスト削減や省人化を図り経営面での考慮が必要である。

以上

■↑心構え、一般論ではなく、求めているのは2の業務、すなわち民間活力と一括発注を行う上での要件です。技術士として技術者倫理を高めるにはどうするかと、社会持続可能性を高めるにはどうするかという答えを提案しましょう。

Ⅱ−1−2

令和 2 年 5 月の道路法改正により創設された歩行者利便増進道路の概要を述ベよ。また,それにより期待される効果を説明せよ。

1.歩行者利便増進道路の概要

歩行者利用増進道路の背景は、高齢化社会の進行により運転能力の低下した高齢者が運転免許証を返納していることや、若者の車離れなどにより道路の需要が変化していことである。

■↑交通量が減っていることを端的に言うと良いでしょう。

さらに、低炭素社会を目指したコンパクトシティの推進による環境負荷の小さい公共交通や歩行者など歩いて暮らせるまちづくりも後押ししている。

歩行者利便増進道路の内容は、占用条件の緩和により、歩行者利便増進道路に指定することで専用期間を最長20年とするものである

■↑ここは無くてもよいです。

2.歩行者利便増進道路の効果

歩行者利便増進道路の効果は以下のとおりである。

・地域活性化(観光)

・事故の減少(安全効果)

・利便性向上

・低炭素社会の実現

・高齢化社会への適応

・経済効果 

以上

■↑内容的に間違いではありませんが、この書き方は減点になる可能性があります。一応普通の文章で書くのが基本です。コミュニケーション能力を問われる恐れがあるためです。

Ⅱ−2−2

道路の地下空間には様々な占用物件が埋設されているが,近年,占用物件の老朽化に起因する路面陥没や上水道の断水といった事象が発生し,問題となっている。これらの事象を踏まえ,市街地での舗装修繕工事の計画を立案し実施する担当責任者として,下記の内容について記述せよ。

(1)調査・検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順と,その際に留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための,関係者との調整方策について述べよ。

1.調査、検討すべき事項

(1)占用物件

占用物件の種類と事業者、平面的な位置と埋設深を可能な限り詳細に調査する。さらに、経過年数と補修歴を調査する。

占用物件台帳が存在しない場合は、試掘を検討する。

(2)道路の利用状況

埋設管の強度設計を検討するために道路利用状況、特に大型車両について調査する。

(3)道路の構造

舗装修繕工事設計に必要な舗装構成や幅員構成について調査する。道路施設台帳が存在しない場合は試掘を検討する。

2.業務を進める手順

(1)調査

占用物件、道路の利用状況、道路の構造についてできるだけ詳細に調査する。

■↑↓同じことのダブリになっています。

留意すべき点は、可能な限り詳細に調査することである。工夫を要する点は、電子データを活用することである。

(2)分析、検討

調査した項目をもとに分析、検討を行う。

留意すべき点は、できるだけ定量的に分析することである。 

■↑ほとんど「道路」「占有物」と関係のない内容になっています。

(3)計画、設計

分析、検討した結果をもとに設計を行う。

留意すべき点は、過剰スペックとならないようにコスト削減に留意する。工夫を要する点は、CIMを積極的に活用し3次元モデルによる設計の効率化を図ることである。

■↑ほとんど「道路」「占有物」と関係のない一般論です。

(4)施工

設計図をもとに現場条件に合わせた施工を行う。

留意すべき点は、市街地のため騒音、振動に注意する。工夫を要する点は、設計の3次元モデルを活用したICT施工で行うことである。

■↑「道路」「占有物」と関係のない一般論です。

(5)管理

■↓ごく一般的な事項になっています。技術士としての手順や留意点を提案しましょう。

舗装修繕工事に関する道路施設台帳および完成図を納品する。

留意すべき点は、道路管理に重要であることを理解し照査の確実な実施である。工夫を要する点は、完成図に誘導できるよう

補修歴に工事名を記入することである。

■こちら↑の意味は?

3.関係者との調整方策

道路用者、地域住民、民間企業、警察、教育機関など多くの利害関係者が関わっており、円滑な業務の推進に向けて、事業の構想段階から関係調整会などで共有し、合意形成を図る必要がある

以上

■↑調整会では何をどうするのか。「私」の役割は?具体的に書きましょう。

Ⅲ−2

甚大な被害をもたらした東日本大震災から9年が経過したが,その後も,大きな地震や集中的な豪雨,豪雪による甚大な災害が発生しており,また今後も首都直下地震や南海トラフ巨大地震が高い確率で発生することが予想されてい。るこのような状況を踏まえ,道路の防災対策に携わる技術者として,以下の問に答えよ。

(1)激甚化・頻発化する災害に備え,道路が発災時に救命救急・復旧活動や広域的な物資の輸送等に貢献し続けるため,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と,新たな懸案事項への対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.道路の交通機能確保における課題

(1)無電柱化の推進

2019年に発生した台風15号により千葉県内で2000本の電柱が倒壊し、救命活動などに支障をきたし無電柱化の必要性を再認識させた。

地震、台風発生時の交通機能の観点から無電柱化は必要であるが、コストが電柱と比較して3から5倍と高額であるため進んでいない。

したがって、地震、台風時の交通機能確保の観点から無電柱化の推進が課題である。

■↑無電柱化は別な要因で推進されています。コストがかかりすぎるので防災目的だけでは困難でしょう。現実的ではありません。

(2)雨量事前通行止め基準の見直し

大雨による災害から道路利用者の安全を確保するために災害リスクの高い区間において事前通行止め基準が定められ雨量超過時に通行止めを実施している。

しかし、大雨時の通行機能の確保から、事前通行止め基準に達して通行止めとなったにもかかわらず通行止めに至る割合がほぼ皆無である

したがって、大雨時の通行機能の確保から雨量事前通行止め基準の見直しが課題である。

■↑何を問題視しているのか分かりにくいです。事前通行止めの予測をしても、現実には通行止めしないのは訳があってしていることです。

(3)予防的通行止めの実施

大雪時に除雪作業を効率的に行えるようにするために災害対策基本法を適用して事前に区間を定めて自動車を排除することが可能となった。

しかし、大雪時の通行機能の確保の観点から、大雪時にスタック車両の発生により大規模な交通停留が発生している。

したがって、大雪時の通行機能の確保の観点から予防的通行止めが課題である。

■↑提案は間違いではないですが、このような制限を設けること自体はたやすいことであり、技術士の提案とは言いにくいです。いつどう判断するか、それはどうするかを提案しましょう。

(4)交通ネットワークの機能強化

激甚化する災害時において、救命活動や復旧活動が行えるためには、道路の交通機能を継続的に発揮させることが必要である。

しかし、高速道路は現行2車線区間が4割を占めており、過去の経験上、通行止めに至る割合が高く交通ネットワークの信頼性が低い。

したがって、広域的な交通機能の確保の観点から交通ネットワークの機能強化が課題である。

■↑高速道路が2車線だから交通ネットワークを機能強化するといっても具体的にどうするのか答えを提案しましょう。

2.無電柱化推進の解決策

無電柱化推進は国民のニーズが高く、国際的にみて日本の整備水準が低いことから最重要課題と考え、以下解決策を述べる。

(1)技術基準の緩和

解決策は、技術基準の緩和である。

理由は、技術基準の緩和により安価な材料の採用や施工期間の短縮が可能となることでコストを3割削減できるからである。

具体的には、埋設管路の強度基準をつるはしによって壊れない基準からスコップで壊れない水準に緩和する。

■↑防災の話ではなくなっています

(2)新技術活用

解決策は、新技術活用である。

理由は、新工法、新材料を採用することで材料費が安価になることや施工期間が短縮することで間接費が削減できるからである。

具体的には、例えば、FEP管を採用することでコスト削減が図れると同時に施工性が優れていることで工期短縮による間接費削減による低コストも実現できる。

■↑道路の技術応用の話ではなくなっています

(3)一括発注

解決策は、一括発注である。

理由は、一括発注することで事務負担が軽減でき、発注規模が大型化することで不調不落を回避することができ発注が安定するからである。

具体的には、県や地域規模で一括で発注したり、設計、施工を一括で発注することで発注規模を大型化でき、さらにコスト削減ができる。

■↑(1)(2)は解決策の記述ではなかった?

「一括発注によるコスト削減」という手法に頼るのは危険です。建設・道路の本質的な技術応用を考えましょう。

3.波及効果と懸念事項と対策

波及効果は、無電柱化の推進による防災効果だけではなく、電柱、電線がなくなることによる景観向上や電柱回避による事故の減少がある。■↑景観は、第一の目的です。

懸念事項は、責任の所在が不明瞭になることと安全面への配慮が欠落することである。

対策は、契約後早めに書面により責任の所在を明確にしておくことと、極端に利益至上主義とならないよう安全面を注視することである

以上

■↑懸念事項の意味が分かりにくいです。

「書面で管理」は事務的手法のため、答えになりません。試験官は技術者コンピテンシーを測っています。建設・道路の本質的な技術応用を考えましょう。

H30年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210402

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この答案についての講評

 正解の要件は一応押さえられているようで結構です。ただし、コンピテンシーのアピールという視点ではやや物足りなさが残るようです。出来れば問題の本質をとらえて力強く提案してもらいたいところです。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このような方でも練習で能力を高められますのでお勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(29分35秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅱ−2−2

総合土砂管理計画の策定が各地で進められてきていることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1) 総合土砂管理の検討が必要な流砂系の特徴と課題をのべ、総合土砂管理計画策定において通常検討すべき事項を概説せよ。

(2) (1)で述べた課題に対する具体の土砂管理対策を3つ挙げ、それぞれについて、対策の概要及び実施にあたっての留意点をのべよ。

■要求は、「1流砂系の特徴」と「2課題」、それから「3総合土砂管理計画策定で検討すべき事項」です。まずはこれら3つの見出しを宣言してから書くように。「文字で埋める」では採点されずに終わる危険性がありますので、「聞かれたことの答えを逐一書く」のです。それが難しい。

 (1) 次のような土砂に関する問題が生じている箇所において、総合土砂管理の検討の必要性が高いといえる。例えば、ダム貯水池の堆砂の著しい進行・河道砂洲地形の樹林化・河床の粗粒化をはじめとした河床材料構成の変遷がある。特に、中央構造線が位置する中部地方では土砂生産が活発であり、ダム堆砂が顕著である等土砂に関する問題が多く報告されている。

■↑例示ではなく、一般論として概念的にもれなく整理するようにしてください。

前掲のような問題が見られる流砂系では、土砂被害を防止し、適切な流砂系の利活用を促進するために、総合的な土砂管理を実施することが推進されている。その際の主な課題としては、以下のものがあげられる。①土砂が不連続で、非定常な動態であることから、土砂動態の計測・予測方法の確立、②土砂に関する問題の原因究明、③複数の管理主体間における連携方針の合意形成、④実現性のある堆砂対策を計画・実施である。

■↑課題を短文列挙するだけでなく、重要課題に絞って議論を深めるように補足説明すると良いでしょう。

出題者としては、考え方が見えないと〇を与えられない。

 上記課題に対して、総合土砂管理計画を策定することで、適切な土砂管理を試みる。通常、総合土砂管理計画策定で検討される主な項目としては、河道状況やダム堆砂状況の把握等による土砂動態に関する現状の把握」「河床変動計算等による土砂動態の予測を踏まえた、対策方針の設定」「対策方針の合意形成及び周辺住民への合意形成行動」「対策実現に向けた実用性のある検」がある。

■↑検討項目とは河川の具体的分析です。行政の一般的な手続きでは答えたことになりません。議論の焦点を絞って「柱」となることを書く。河川・土砂管理の本質が見えるよう絞り込むようにしましょう。

 (2) (1)で示した課題に対する土砂管理対策として、①河床変動計算による土砂動態の予測、②ダム堆砂の分析に基づく堆砂対策の検討、③ダムにおける排砂バイパストンネルや下流土砂還元の推進がある。

■↑これらの対策は、決定力に欠けるため、前頁の検討事項に移してはいかがでしょうか。

 ①で使用する河床変動計算は既往の河道横断方向の河床変化に基づき土砂動態を分析・予測する手法である。当該計算により、堆砂対策の効果を可視化することができるとともに、有効な堆砂対策の立案が可能となる。

■↑河床変動計算は検討手段に過ぎないため、全体的な目的を目指すような方策を検討するようにしましょう

①における留意点としては、モデル構築が困難であり専門技術者の配置が必要となる点や、予測精度の検証が必須である点等がある。

■↑これは必要負担事項、制約事項であり、あまり聞いても仕方ないです。改善になることを書きましょう。

 ■↓事務的、消極的に見えるため、対策としての実行可能な提案をしましょう。

②について、ダムは流水を遮断するだけでなく、土砂移動も遮断する施設である。そのため、ダムへの堆積土砂は流入する土砂の一部が堆積することから、流入土砂の粒度特性や土砂量の分析・予測の基礎資料として活用できる。通常ダムでは貯水池堆砂測量が毎年実施されるため、測量成果を分析することで土砂動態の概要が把握可能となる。ただし留意点として、測量精度の検証が必要となる点等がある

↑当たり前のことでは? 技術士コンピテンシーを感じる提案をすると良いでしょう。

 ③について、ダムは他施設と比較し大きな構造物であり、流水を遮断するだけでなく、土砂移動も遮断することになる。この結果、下流への土砂供給が減少し、下流河道では土砂不足による問題が発生する。

■↑この対策ありきで考えていませんか。前置き長く結論が冗長です。

これを踏まえ、排砂バイパストンネルの建設や下流土砂還元により土砂を下流に供給することが可能となり、下流河道環境の改善を図るものである。②における留意点としては、初期費用が膨大となる可能性がある点や、効果の程度を予測しづらい点等がある。

この書き方だと提案者としてのコンピテンシーを計りかねます。費用は前提としてわかりやすいことですし、提案しておいてから「効果が予測しづらい」とはどう判断したらよいのか。事業主なら困ってしまいます。欠点を克服する提案をすると良いでしょう。

R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210330

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この答案についての講評

 この過去問答案の評価はBBAだったということですが、それぞれコメントいたします。ここではBをAにするにはどうするか。AをAのまま維持するにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(25分26秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.戦略的メンテナンス推進の課題

a) 機能向上対策

■やや視点が違います。

 豪雨災害の頻発化により、近年激甚な災害が増している。構造物の補修などによる維持管理対策のみでは、外力の増大に追随できない。

 維持管理・更新対策を通じて、機能向上を図ることが課題である。

b) 点検・診断の効率化

■ここは良く書けています。〇です

 高度経済成長期に築造された建設生産物は、今後10年程度でその60%以上が更新期を迎える。経済的な制約がある中で、戦略的なメンテナンス計画が実施されないと社会経済活動に必要な重要インフラまでが機能喪失してしまう。

 戦略的維持管理を実施するため、点検・診断の効率化が課題である。

c) 作業の効率化

■これは更新のことですか?Bとダブリのようです。

業務量の低下や過度な競争の発生により、建設産業の疲弊が続いている。今後、災害対策や維持管理など大型の需要を予測する中で、人手不足により業務不履行となることを懸念する。大量の需要に対応するため、作業の効率化が課題である。

(2) 点検・診断の効率化

a) ドローン技術の活用

現状の点検・診断は技術員による目視点検や測量により実施されているが、多くの時間と労力を必要としている。業務の省力化を図るには、ドローン技術を活用し、効率的かつ精度の高いデータを取得する。

 解決策として、①概括的な判読資料を得るために短写真画像からAIによる自動判読技術を用い、広域的な状況を判定する。②3次元データ点群データから、地形の精細な変化を読み取り設計データとして役立てる となる。

b) 非破壊検査技術の活用

 現地でのコア破壊は、少なからず構造物にダメージを与え、効率性が低い。構造面に損傷を与えず、正確な機能劣化度を判定できる、非破壊検査技術の活用を促進すべきである。

 解決策として、①地中部の探査に、衝撃弾性非破壊検査により、地中構造物の劣化度を調査する ②地上部の診断に、赤外レーザ探査により、構造内部の状態を把握する となる。

c) 診断結果の活用

 LCCの低減には、次回の対策を考慮し、データベース化する必要がある。IoT・ICT技術を活用しシステム化することで、次回の利便性が高まる。

 解決策として、①REMaDISなの維持管理ソフトを活用し、利便性を高める ②検査の省人化・効率化を図るため、AIによる検索技術を構築しておくことで作業の省人化を図る となる。

(3)新たなリスク

■(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクです。やや違うように感じます。

a) ドローン技術の活用

 管理地域の樹林化極度に進行した場合、計測できないリスクが発生する。このリスクに対して、地上型レーザスキャナにより補測することで、解消できる。

b) 非破壊検査技術の活用

 人口減少が更に進行し、入職者不足により、非破壊検査技師が不足するリスクがある。このリスクに対しては、検査作業を無人化するため、検査ロボットの開発によって、解消できる。

c)診断結果の活用

 大量のデータ量を処理しきれず、システムが機能しないリスクがある。このリスクに対して、ICT技術を更に活用する。ビッグデータ+AIのディープラーニング機能にて解決できる。

(4)技術者としての倫理

a) 機能向上対策を実施する際は、強靭な国土づくりの観点から、高い予測技術を提供する。これは、「公正かつ誠実な履行」に相当する■やや論理性に欠けています。国づくりと高い予測とは必ずしも直結しないからです。

b) 点検・診断の効率化を計画する際は、質の高い社会資本整備を念頭に、科学的技術を平易に説明し信頼感をうる。これは、「相互の協力」に相当する

■これも△かも

c) 診断結果の活用は、「防災レジリエント」を念頭に危機的状況に対応できるシステムを提供する。これは、「持続可能性の確保」に相当する。 

■良く書けています。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−1

河川改修により確保された流下能力を維持するための河道流下断面の維持管理についてその手順を説明するとともに、河川改修後に低下した流下能力を回復させる対策を検討する際の技術的留意点を2つ以上述べよ。

1.維持管理の手順 ■河川改修後の流下断面の維持管理です

(1)点検・巡視 ■曖昧過ぎ。もっと単刀直入に

整備した河川がその機能を発揮しているか、点検・巡視により調査する。目視などにより行う。

(2)診断

■流下断面の維持管理とは何かを考えましょう。

河川構造物の機能低下度を判定するため、構造物毎の機能判定を行う。打音調査・音響調査などから得られたデータを指標により判定する。

(3)維持管理対策  ■こちら↓をもっと詳述するようにしましょう。

機能低下が著しい区間について、流下能力の向上を目指し、対策を実施する。河道掘削などを実施する。

2. 流下能力回復対策検討の技術的留意点

(1)河床低下による樹林化

樹林化による攪乱頻度の低下により、河川粗度の上昇が発生する。適切な粗度を維持するため、伐採・浚渫を実施する■対策そのものではないです

(2)堤防天端高の維持

経年の基礎地盤の変状によって堤防高の低下により河積断面の不足が発生する。計画高水位に沿った堤高を維持するため、嵩上げや浸透水排除工を実施する。

(3)堤体の機能低下 ■技術的原理や要点を書くようにしましょう。

洪水の影響などによる亀裂の発生により崩壊リスクが上昇する。浸透破壊の弱点部分を維持補修することで耐浸透性を保つ。

Ⅱ−2−1

近年、毎年のように発生する大規模な水害・土砂災害において、逃げ遅れによる犠牲者が数多く発生している状況を踏まえると、住民の適切な行動を促し避難の実効性を高めることが極めて重要となる。あなたが台風襲来時の水害・土砂災害に対する市町村における警戒避難体制の整備にかかる業務を担当することとなった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、下記の内容について記述せよ。

(1)   調査、検討すべき事項とその内容について、説明せよ。

(2)   業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)   業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)河川分野の調査、検討すべき事項

a)地域の水害危険性 ■Ⅱ-2は惜しいです。

水害リスクの想定が不足すると的確な避難計画が構築できないため、市町村管理の河川での浸水想定の情報を調査し、水害の危険性を検討する。

b)水害リスク情報の作成

中小河川の水害リスク情報は膨大となるため、洪水に対する安全性を調査することで、簡易的な水害リスク情報の作成を検討する。

c)水位観測体制の整備

近隣の水位情報が迅速な避難の判断材料となるため、水位観測体制の整備方法を調査することで、水位情報の取得体制を検討する。

(2)業務を進める手順

a)情報の収集

氾濫解析の基礎資料となる情報を取得する。データ取得の効率化を図るため、D技術を活用する。LPデータの取得によって実測作業を低減する

b)流出量の把握

氾濫流解析によって、流出量を把握する。洪水調節施設の無い河川の流出量解析は線形モデルで行う。合理式を用いアメダス確率雨量計算で精度を上げる。

c)氾濫解析

流量に対し、不等流計算で水位を求める。概略的に水位を把握するため、一律の粗度係数を用いる。

過去の被災歴と参照することで予測精度を高める。

d)想定区域図の作成

浸解析データから水想定範囲図等を作成する。想定範囲の精度を高めるため、滑らかな形状の浸水想定範囲を抽出する。SHPデータの作成によって、GISなどへの汎用性を高める。

■避難解析とか訓練とかはないのですか。

e)水位観測体制の整備 ■2はやや書きすぎでしょう

適確な避難行動につなげるため、出水時の水位情報の取得体制を整備する。避難に要する時間を把握するため、水位上昇速度を取得する。経済性に配慮し、メンテナンスフリーのインフラを整備する。

(3)関係者との調整

a)発注者

合理式のみの流出量予測では精度が低いことを懸念され、理解が得られない。しかし、流域規模が小さい中小河川では判断材料となる降雨量データが不足している。そこで、アメダス確率降雨量計算プログラムを用い降雨強度を設定する手法を用い、流出量予測の精度を上げることで理解を促す■留意点のようです

b)地域住民

洪水時の観測水位から避難情報を提供する方策を住民側に提案する。その際、避難までのリードタイムが短い懸念から理解が進まない場合、雨量情報から氾濫予測する手法を組み合わせることで同意を得る。

■同意が得られないので、下記のように考えてみましょう。

問4に書くべきことは、問2に書いた業務を効率的に進める、そのための関係者との調整方策です。

次の3要件を同時に満たすようにしてください。

①「調整」の言葉の意味は、過剰と不足を移して均して最適化することです

  例:スピード調整、年末調整、与党の党内調整など

  既にあるものを移すだけで、新たに資金投入などははしません。

②受験者は河川砂防のプロマネなのですから、関係者を指導して対して納得しやすい理想的プランを申し入れる。すなわち、指導力によって、関係者の行動変容を促し、結果として全体プロジェクト取りまとめる。(お願いや自身の頑張りではありません)

③建設・河川砂防の技術応用による技術士らしい解決策を提案してください。
 (連絡係やスケジュール管理など、事務担当者でもできることは×です)

Ⅲ−1

 社会資本分野における情報通信技術(ICT)の全面的な導入により、活用される3次元デジタルデータは、より細かく、より多くなってきた。そのため、平常時、災害時に関わらず、これらのデータの共有を図るためのデータプラットフォームづくりが進められている。このような状況を踏まえて、河川、砂防及び海岸・海洋の分野の技術者として以下の問いに答えよ。

(1)データプラットフォームの実現を前提として、ICTを調査・観測に活用していく上での課題を、技術者としての立場で多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)前門(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

1.調査・観測に活用する上での課題

a)計測段階の自動化・効率化 

■ほとんど前提では

これまでの調査・観測は技術員による現地作業が主体であった。こうした作業は危険性を常に有し、多数の作業員を必要とした。現地作業の試験性の除去と効率化のため、調査観測の自動化が課題である。

b)設計手法の二極化 

■キーワードを述べるだけでなく、方針を伝えるようにしましょう。

設計段階は、これまでの経験上2次元データでの運用が続いている。3次元設計への切り替えは多くの技術習得が必要でありデメリットが多数発生する。

2次元での技術や経験を生かすため、①2.5次元 ②3次元 と二極化した設計法を許容すべきである。

c)維持管理運用システム

これまでの維持管理データは、現場ごとに記録されたカルテ型式が主体である。紙データでは検索等に時間がかかり、有効に活用できないデメリットがある。維持管理業務の効率化を図るため、RiMaDISなどの運用システムの活用が課題である。

(2)課題「計測段階の自動化・効率化」の解決策

a)点検・巡視の自動化

経済的・人員的に制約が続くことが懸念される中、点検・巡視作業を省力化するために、ドローンを使用した計測技術を普及させることが有効である。

解決策として、①広範囲なデータ収集に「単写真画像からのAIによる自動抽出」にて、概括的な河川要素や植生の状態等を把握する。 ②地形などの正確なデータを得るために、「3次元点群データからの差分抽出解析」によって、河床変動を把握する ③構造物の劣化状態を把握するため、「温度別データ」を取得することで、亀裂・陥没などを確認する となる。

b)流量観測の無人化

現在は浮子式が主体であり、危険性が高く多人員が必要である。危険性除去と省人化を図るため、定点設置型の観測機器を導入する。

解決策として、①流量観測の効率化を図るため、「電波型流速計・画像処理型流速計」の常設を進めることで、操作ミスの少ないデータを入手する ②観測状況を監視するため、「簡易型監視カメラ」を設置し、状態観測を行う となる。

c)水位予測の高精化

緊急活動に使用する予測データは、観測地点毎の計測データである。現地計測データと予測情報を一体監視することで予測技術の向上を図る。

 より精度の高い予測情報を開発することで、防災行動の確実性を高めるべきである。

 解決策として、①河川データが充実している河川では、「土研分布モデル+一次元不定流解析」によって河川全体の水位情報を提供する ②中小河川では、「RRIモデル+降雨歴からのH−Q式」によって、2時間以内の洪水予測を可能にする となる。

(3)懸念事項への対応策

■(2)で示した「すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と、専門技術を踏まえた懸念事項」への対応策が見当たらないので、書くようしましょう。

a)点検・巡視の自動化

 植生・樹林の繁茂が進行した区間では計測不能となる。この懸念に対しては、地上からの捕捉作業が有効な解決策となる。例えば、繁茂が激しくレーザー光が地上に届かない場所を、VRF測で標定を設け、地上型レーザスキャナで捕捉することで、3Dデータを取得できる。

■↑↓これは、2の解決策を実行していなかったのでは・・と考えてしまいます。

b)流量観測の自動化

台風時等の計測であるため、通信設備に障害が発生した場合は、通信の空白が起きる。この懸念に対しては、強風時でも飛行可能な、「全天候型ドローン」の導入によって解決できる

c)水位予測の高精化

 広域での洪水が発生した場合は、データ処理速度が追い付かず、正確な水位が計算できない懸念がある。

この懸念に対しては、観測地点毎に分割する「カスケード手法」の開発が有効手段となる。

地点毎に区切ったデータを連動計算することで、広範囲な地域でも水位計算が可能となる。

R1年 機械部門、材料強度・信頼性の答案について添削致しました。 20210312

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この答案についての講評

 この過去問答案の答案Ⅰの評価はBという残念な結果だったということです。他のⅡ、Ⅲ答案は時間切れでCとなっています。しかし、それぞれ改善点は見えていますのでコメントいたします。ここではB、CをAにするにはどうするか。AをAのまま維持するにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、この指導によって誰でも改善可能です。このような惜しい答案の方には、是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(46分35秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 持続可能な社会実現に近年多くの関心が寄せられている。例えば, 2015年に開催された国連サミットにおいては, 2030年までの国際目標SDGs (持続可能な開発目標)が提唱されている。このような社会の状況を考慮して,以下の問いに答えよ。   

(1)持続可能な社会実現のための機械機器・装置のものづくりに向けて,あなたの専門分野だけでなく機械技術全体を総括する立場で,多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。   

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する解決策を具体的に3つ示せ。   

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。   

(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ。

■このⅠ答案は、一見よく書けているように拝見しますが、A判定だと思っていたのが実際はB判定でした。この原因の一つが問1の「いかに・・」という問題点を主体にした解答です。問題点の説明から入ると、話は分かりやすい一方、前置きが多くてなかなか結論に至りません。問2の解決策も結論まで至りませんでした。こうした解答は、単刀直入に述べるようにすると高得点が期待できます。

■このような前置きは不要です。下線も不要。

、持続可能な社会実現のものづくりへの課題

 持続可能な社会実現のための機械機器・装置のものづくりに向けた課題を述べる

(1) 資源の有効活用

 機械機器・装置に使用される資源は、有限であるため、資源を有効に活用することが課題となる。また、機械機器・装置の使用後は、処理できない材料は、産業廃棄物となって地中に埋めて処分されている。従来の「資源を採掘して」「作って」「捨てる」直線型システムから、今まで廃棄されている物を「再利用」「再使用」する循環型システムへ移行が求められている。

(2) 低炭素社会の実現

 人類が開発してきた製品、産業活動により、大気中の二酸化炭素が増加し、地球温暖化が進行している。例えば、化石燃料を使用した生産活動の排気ガスに含まれている二酸化炭素が原因となって、地球温暖化が進行している。このように、二酸化炭素をなるべく発生させないものづくりをすることが課題となる。

(3) 少子高齢化における生産競争力確保

 少子高齢化が進行し、生産年齢人口が減少している。このことから、女性や高齢者の潜在的能力を発揮し、生産競争力を確保することが課題となる。

■意味が違います。社会の持続可能性とは、生き残りのための企業や社員の競争ではなく、社会全体が繁栄することを目指しています。全く逆行です。

具体的には、子育てのため資格・能力のある女性、ベテラン技術者の経験を活かせるよう、短時間勤務による多様な働き方推進、テレワークを活用することが考えられる。

2、資源の有効活用のための解決策

 1章で述べた課題の内、(1) 資源の有効活用を最も重要と考え、以下に3つの解決策を示す。

(1) 解決策1:循環型社会の推進

 無駄になっている資源や捨てられている素材などを活用して生産をすることをめざす、「サーキュラー・エコノミー」への取り組み推進。資源の有効活用を重視した3R(リデュース、リユース、リサイクル)+リペアによる分別や再資源化が容易な素材や構造の開発、メンテナンスのしやすい製品設計により、製品を長く使用できる仕組みを推進する。

(2) 解決策2:再生可能エネルギーの活用

 石炭、石油、天然ガスを使用して発電を行ってきたが、これらの資源は限りがあるため、再生可能エネルギーでの発電を推進する。ただし、これらの発電は、気象条件に影響されるため、日中や気象条件のよい時に発電した余剰電力を活用する。蓄電や水素の製造・貯蔵し、電力不足時に活用することで、安定的に発電量を確保する。

 (3) 解決策3:発生副産物の有効利用

例えば、製鉄工程の副産物の再利用。鉄分を多く含むダストやスラッジについては、製鉄原料へ。また、鉄鋼スラグについてはセメント材料や土木材料などへ。さらに、環境修復材(海域環境改善材)への活用を推進する。

3、解決策に共通して生じる新たなリスクと対策

 高品質のリサイクル材料確保が難しくなるリスク

 リサイクル材料の需要が高まった場合、需要に対して国内外で品質の高いリサイクル材や発生副産物の供給が不足する可能性がある。  このリスクに対しては、複合素材など、複数種のプラスチックや金属が混在しているために再生利用が難しかった。これを、複合素材を細かく破砕し、破砕物に混在する素材ごとの物理的な性質(比重、形状など)の違いを利用した選別技術を組み合わせることによって、有用な材料を高純度で分離・回収し、新材同等の特性(物性、耐久性)を備えた材料を多く再生することにより対処する。

リスクとして挙げていることの意味が伝わりません。

品質の高いリサイクル材がなくなり、低質品になるのは急に起こるものではありませんし、リサイクルの種類もあるはずです。廃棄物同然のものはサーマルRへ処理されます。

発生副産物の供給が不足するとは、つまりリサイクル自体が不要となるわけで、社会としては好ましい傾向です。リスクは無いと考えられます。

4、業務遂行において必要な要件

 (1)循環型社会形成推進基本法遵守

この法律を基本的枠組み法として、個別のリサイクル法が次々と制定、改正されている。この中に、個別物品の特性に応じた規制が設けられており、これを遵守しなければならない。

■個々の法を遵守するのは技術者倫理以前の義務であって、問題外です。

例)犯罪に手を染めない。詐欺をしない。

(2) 材料に関する法令遵守

EUのRoHS指令やREACH規則に代表される世界的な製品含有化学物質管理規制の遵守。規制対象地域に製品を輸出する場合、対応が必要不可欠となっている。以上

■これも同じ。このような既存の法を遵守するために技術者倫理があるのではありません

本講座ではこのような細かい対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−2

炭素繊維強化プラスチック積層板について,材料強度の観点から留意すべき点を2つ挙げ,その内容とともに対処方法を説明せよ。

アンダーラインは不要

1、炭素繊維強化プラスチック積層板の材料強度の留意点と対処方を以下に述べ

(1)対象物強度に対し積層構成を正確に行う。

 炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)

の強度留意点として、炭素繊維の強度は異方性であるため、積層構成が正しくなければ、強度は全く違うものになる。通常、積層板は炭素繊維を一方向に並べた、プリプレグを強度に応じた構成を計算しておき、積層を行う。炭素繊維方向(0°)に対して繊維強度を発揮するが、(90°)方向はマトリックス強度ぐらいしかない。 

■強度に関する一般知識です。暗記したことを書きだしたものと読み取られてしまいます。

しかし、求めているのは留意点であって、強度を増す/確保するにはどうすべきかです。

 これに対しては、まず、繊維強度を計算し、どの方向に対して強度が必要かを正確に把握する。どの方向に炭素繊維方向を何枚向けて積層するか積層構成表を使い、施工側に正しく伝えことが必要である。

■作業連絡、業務連絡ではなく、正解は設計法です

(2)CFRP化した時の炭素繊維とマトリックスの内部状勢の確認。

 CFRP構成物中にどれだけの繊維が割合として含有されているか、ボリューム/ファイバー(以下、Vfという)の確認が必要である。Vfが低いと駆体となる炭素繊維が不足している状態であり、強度不足になる。

 これに対しては、構成物のサンプルによる測定を行う。Vfの測定方法は、CFRPのサンプルを、ミルにより粉砕を行い、気体封入型の真比重計にて真比重を測定し、アルキメデスの原理により、嵩比重を測定し、ボイド量を出して、その計算において測定する。以上

■技術士の留意点とは、強度確保の提案を求めています。それが技術士のコンピテンシーです。

具体的な作業内容ではありません。

測定法の暗記、知識を書き出しても△

Ⅱ−2−2

 機械製品は供用開始後に故障が発生,さらには破損に至ることも想定される。このため,使用環境及び稼働状況に基づいた多くの配慮の他,適切な材料の選定が設計段階で必要である。機械製品の設計要求及び性能を確保するため,あなたが材料強度の技術責任者であったとして,下記の内容について記述せよ。   

(1)機械製品を選定,その概要を示すとともに,設計に当たり「荷重」と「材料の強度」等には不確かさが存在することに関連して,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。   

(2)検討を進める業務手順について,留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。   

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1、炭素繊維強化プラスチック使用ライザー管を選定し、概要を述べる

 海洋発掘用ライザーシステムにおいて、軽量化に伴い、金属部分の量を減らし、炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)を鋼管外周部分に施工することにより、軽量化を図り、より深海部まで到達を実現する。

(1)荷重と材料強度の不確かさの存在

■いろいろ書かれていますが、では材料強度がなぜ不確か?回りくどい文章を8行読んで類推するしかなくなってしまいます。焦点を当てた書き方にしましょう。

 炭素繊維強化複合材料(CFRP)は高強度アルミニウム合金の20倍の比強度、高剛性の炭素繊維は、10倍の比剛性を有するが、実際には繊維を樹脂で固めるだけでなく様々な方向に配向する必要があるので、CFRPの比強度・比剛性は繊維と比較して数分の一になる。内部構造も複雑なために応力集中部や破壊ひずみの小さい部位から様々な損傷が発生・進展したのちに破壊する可能性がある。

■荷重の不確かさについては書かれていません。

(2)調査、検討すべき事項

CFRPの挙動を精度よくシミュレーションする。

マトリックス中に大きな応力集中が起きる。この応力集中は繊維体積含有率が高くなるほど大きくなるので設計時に憂慮する。メゾレベルでは層ごとの不連続があるうえに、積層方向に強化繊維が配向されていないので板厚方向の強度が面内の方向に比べて小さく、層がはがれる層間剥離が生じやすい。三次元的に応力が発生す状況では層間剥離の問題が無視できなくなる。

■調査して、検討すべきことは何か。3つ程度の「柱」を挙げるようにしましょう。

いろいろ書かれていますが、焦点が定まりません。

層間剥離ではなく、もっと構造的に大きな問題を取り上げるべきでしょう。

(2)検討を進める手順、留意点、工夫点

■一般試験をせよという話ではないので、標準試験法は不要です。

基本データを作成:強度は一般に、JISなどに決められている標準試験に従って測定する直交異方性材料なので、繊維方向と直角方向で強度が異なるだけでなく、引張と圧縮で破壊の様相が違うことに配慮。

②層間剥離への配慮:CFRPの積層厚みが大きくなると、積層間で剥離が生ずる。厚み方向に繊維を構成はできないので、積層厚みの選定と層間剥離強度試験(ILSS)を行う。必要に応じて、積層の外周側から内部方向への巻締め工程を入れる。

③CFRPに使用する炭素繊維の種類の選定:炭素繊維の種類の中でも、高強度品、高弾性品といった特徴がある。代表的に分けると、PAN系炭素繊維が高強度、ピッチ系炭素繊維が高弾性率を示す。構成物全体を設計する際に2つの特性を活かし、パートごとに使用材料を選定する。

■これらの機械材料の本質的事項について述べるようにしてください。

3、関係者との効果的な調整方策

 ■3は方向違いの解答です。

プロマネとしての、社内外関係者の取りまとめによる品質確保を求めています。

今回のプロジェクトは、ライザーシステムを取り仕切る団体と金属を専門にする会社とCFRPを専門にする会社での連携で成り立ったこである。お互いの専門知識、分野的立場や考えを理解し合うことの必要性。分析評価手順の決定。評価結果に基づき、意見を出し合って役割を見える化し、効率的成果が出せることが重要である。

Ⅲ−2

機械構造物の設計においては,顧客の多様なニーズに応えるために基本型から多くの型式の製品を派生させて対応することがある。このような製品の強度設計を担当する技術者として,以下の問いに答えよ。

 (1)具体的な製品を選定してその概要を示すとともに,時代とともに変化する社会の要請を踏まえつつ,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。     

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。    

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

製品の「コスト」や「安全性」などを求める単純な問題は、今は出題されません。

ここでは高度な時代的ニーズに対応しているか、経験が問われています。

1、燃料電池車水素ステーション用蓄圧器の概要

 燃料電池車水素ステーション用蓄圧器は、燃料電池車(以下、FCV車という)の燃料補充用水素ステーションに水素を搬入し、高圧に圧縮して貯蔵する高圧貯蔵用蓄圧器である。

会の要請として、環境問題になっているCO2を排出しないFCV車の利用拡大が図られている。これを踏まえ、以下に課題を述べる

■これは水素社会の到来であり、蓄圧器の意義にすぎません。一方、この問題の主題は「基本型からの派生製品の強度設計」です。それに対する社会の要請を考えましょう。

(1)FCV車の利用拡大を目指す上で、水素ステーションの設置数が不足している。その大きな要因として、設置費用が高額であること。ガソリンスタンドの約5倍である。コスト削減と安全性の確保が必要。

■結局何をすべきなのか。問題課題が混在。設置数不足,高額,コスト削減,安全性。 どれが課題ですか。焦点が定まっていません。

(2)水素の製造場所から、陸輸送で搬入ができなければならない。運搬時設備の確保、運搬時の破損、漏えい対策や運搬時の破損を防がなければならない。

(3)水素の温度管理。水素は分子量が小さく、単位体積当たり熱量も小さく、かさばるエネルギーである。水素蓄圧器は80Mpaと高圧で保存しなければならず、温度管理基準は-40℃〜85℃の範囲を保たねばならない。

2、1章で述べた課題のうち、(1)が最も重要と考え解決策を示す。

①水素ステーションコスト削減と安全性確保。

■これでは2つです 

水素ステーションの設置費用削減には、搬入から貯蔵、水素を送るホースに至る、各設備でそれぞれ行われている。その中の1例として、貯蔵用蓄圧器の製造

コスト削減について述べる。

図1水素貯蔵用蓄圧器のタイプ

水素貯蔵用蓄圧器は初期型のタイプ1からタイプ4まで開発されている。

(図1に示す)その中でも、鋼材を使用し、外周部のみに炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)を施工したタイプ2は炭素繊維使用量が少なく、1番コスト削減が見込める。強度を鋼材で持たし、繰返し荷重を引張り強度の高い炭素繊維が受け持ち、使用温度-40℃〜85℃の中で安全に最も安価で製造である。

■個別の形式ごとのコストダウンの話に埋没しています。

基本型から派生製品強度設計について答えていないので、ノーカウントとなる危険性があります。

②水素ステーションの安全への取り組み。

①と同じことです。

金属を使用するに当たっては、水素脆性を起こさないことが重要である。安定化ステンレス鋼や低炭素ステンレス鋼の使用が、まずなされるが高額である。そこで、鋼製の使用を検討がなされ、小サイズの物はSNCM435でも対応できるが、200リットルを超える大容量の物はSNCM439を焼鈍し処理を行い、引張り強度1000N以下(概ね940N)の物で表面粗さを一定の範囲におさえ使用すれば、水素雰囲気中の強度低下を防ぎ、水素の侵入を防ぐことができる。

3-1、解決策に対するリスク

■リスクとは何か。「頻度が小さく、経済損失が大きく、完成当初は一般人に予測できない危険性」です。

わかりやすい懸念事項や身近な問題解決ではありません。

何故技術士試験でリスクが求められるかを今一度考えましょう。

上記の水素貯蔵用蓄圧器、タイプ2についてのリス

クとして。

①使用済みになった時の廃棄及びリサイクル方法の確立が挙げられる。高圧ガス保安法により、高圧ガス容器は、再使用を防ぐためにくず化して廃棄が義務付けされている。リサイクルするためには、金属とCFRPの処理方法を考えなければならない。

②地震などの災害時でも安全が保たれる構造、安全装置の設置が必要である。

③鋼とCFRPの直接接触(電位差)による電食の発生。

3-2、リスクに対する対策

①水素貯蔵用蓄圧器、タイプ2については、CFRPと金属の廃棄物が出る。金属に関しては、溶かして再利用する。CFRPに関しては、分離後、電炉など再資源化施設で処理及び、CFRPの樹脂のみを焼失させて繊維のみを残し、マテリアルリサイクルする。

②地震、火災対策は、蓄圧器に火炎検知警報設備の設置、かつ、運転自動停止装置、温度上昇防止装置の設置。水素漏えいをいち早く検知するため、レーザーによる遠隔監視装置を設置する。また、CFRPの破損を防ぐために、再外層にガラス繊維で緩衝材にする。

③炭素は電気を通す元素であり、金属と炭素の電位差により電食発生防止が必要である。そこで、金属とCFRPの間に防食塗装を施す、あるいは、ガラス繊維を挟むことで通電を無くし防止する。

R2年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 20210310

答案の一覧>

この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はBCCとのことでした。その理由としてⅠは具体的な提案ができていなかったことがあげられます。またⅡ、Ⅲでは主題が見えないため答えが発散してしまったように拝見いたします。敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(38分27秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.戦略的メンテナンスを行うための課題

■これは問題の前提事項の追認、解釈ですので、このようなことは省略して、具体的に本題に入るようにしてください。

1)管理限界数を越えた社会インフラのメンテナンス

 度経済成長期建設の社会インフラは老朽化し、更新・補修・点検の時期を迎えているが、管理限界数を越えているのが現状である。社会インフラを次世代に継承していくために、いかにして効率的なメンテナンスを行っていくか、いかにしてメンテナンスのための新技術活用を行っていくか、いかにして官民の連携を図っていくかが課題である。

■↑↓複数の課題が混在していて、方針が定まっていません

2)地方インフラメンテナンスと地方過疎化

 地方には多くの大小インフラが存在するが、過疎化による人員・技術者不足で、メンテナンスサイクルが回せていない現状がある。いかにして人材不足の中メンテナンスを行っていくか、いかにして回目以降のメンテナンスサイクルを回していくかが課題である。

3)メンテナンス費用に対しての財政難

■コストは究極すぎて、課題にならず、それを下げること自体が難題であり、その課題が求められています。「コストが高い/かさむ」ことがわかったのみでは仕方ないことを理解しましょう。。

 高度経済成長期に建設された社会インフラは、メンテナンスへの配慮がされていないものが多く、整備していくには費用がかかる傾向がある。いかにして効率的に点検・維持管理いくか、いかにしてコストを削減したメンテナンスを行っていくかが課題である。

2.戦略的メンテナンスへの最も重要な課題と解決策

2−1 最も重要な課題

1)管理数を越えたインフラメンテナンスの重要

■効率的なメンテナンスは、問題文の主題である戦略的メンテナンスとほぼ同じことです。新技術の活用、官民の連携は解決策となります。

課題は3つから1つ選びます。

 人材不足の中、多くの社会インフラを効率的に管理し次世代に継承していくには、「効率的なメンテナンス」、「新技術の活用」、「官民の連携」が重要であるとともに、今後の生産性向上と国民経済の発展に繋がると考える。以下に3つの解決策を示すこととする。

2−2 課題に対しての解決策

■取捨選択のみではメンテナンスになりません。ここは予防保全の考え方、手法などを提案するのが良いでしょう。

1)社会インフラストック効果を見据えた選択と集中

 安全安心効果、生活の質の向上効果、生産性向上効果を見据えた見える化(積算)による選択が必要である。必要性・利用年数に応じた選択を行い、社会インフラを廃棄・廃止を見据えた判断を行う。

またメンテナンスサイクルを構築し長期計画に基づく維持管理を持続することも重要である。

果を出すから、引き出すへと発想を転換して、戦略的メンテナンスへと繋げ

2)メンテナンス新技術の活用

 ICT 技術によるi-constructionの推進を行う。メンテナンス最新技術を・・

■↓ここは不要です

用いれば、作業の効率化が図れるが、技術者の高齢化により疎い傾向があり、対応速度が遅いのが現状である。そこで、電磁波レーダー車による高速道路の路面調査やドローンによる無足場点検等を実施していくことで、点検・補修の効率化を図る

さらにメンテナンスNETIS  を活用して、最新技術の効果の確認・検証を含めて実施を行い、評価できるもの対して入札制度に考慮できるようなシステムを構築していく。

3)官民の連携

■良く書けています。

 PPP/PFIの活用を行う。社会インフラの維持管理・運営を協力し合うことで、メンテナンスの効率化をはかる。

 新技術の開発にて、民間の資金不足で、開発が止まっているベンチャー企業に対して協力を行い、更なる技術開発によるメンテナンス効率化を図る。

3.共通するリスクと対策

■効率的にメンテナンスすると、どうしてチェックがおろそかになるのでしょうか。必ずしもそうではないと思います。このような矛盾を無くしていくことが大事です。

 リスクは、「効率的なメンテナンス」、「 新技術の活性化」、「官民の連携」によりメンテナンスの効率化が図れるが、途中段階のチェックを行う機会が失われる傾向により劣化を見逃すことである。さらに若手技術者の技術力向上の機会を失い易くなり、技術の継承もしづらくなることである。

 対策は、若手技術者に対して教育制度のシステム構築と資格保有を推進できる環境作りである。技術力向上と技術継承の推進を行っていくことが大切である。

4.技術者倫理と社会の持続可能性

■問題を誤解されています。2の解決策を遂行するのに技術者倫理と社会の持続可能性がどうあるべきかという要件の問いです。 自身の心構えでは△

 科学技術の向上と国民経済の発展に資することを技術者倫理とし、常にエンドユーザーの安全安心に配慮し、整理して終わりでなく、維持管理し続けることで安全な社会を持続することと考え、社会の持続可能性とする。 

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−3

 コンクリート構造物の品質を確保した上で生産性向上に資する取組について,次の①と②のうち1つを選択し,下記の内容について説明せよ。

① 機械式接手工法のコンクリート構造物への適用に関する各種ガイドライン等が整備され,機械式継手工法の採用が拡大している。機械式継手工法による生産性向上の効果について述べ,機械式継手工法を採用した場合の設計・施工の留意点について述べよ。

② JIS A 5308 (レディーミクストコンクリート):2019に,普通コンクリートの呼び強度とスランプフロー45cm, 50cm, 55cm, 60cmの組合せが追加された。これらのコンクリートの特色と,コンクリート構造物に採用する上での効果と留意点について述べよ。

①を選択する。

1.生産性向上の効果

 建設業の一品製作方式は、生産性が上がらない方式である。また労働集約型製作方式は、天候・気温の影響を受けるため工程・品質の管理が困難である。部材同一・屋内生産が行えるプレキャスト生産方式は、生産性向上に寄与するが、運搬・架設のために鉄筋を分割して現地にて一体化(連続化)する必要がある

 機械式継手工法は、安定した品質・耐荷力・施工性を有しており、プレキャスト化による生産性向上には、効率化が図れる構造である。

2.設計・施工の留意点

)設計の留意点

 機械式継手は、継手部の直径・長さが鉄筋部より大きいため、骨材の落下の障害となる場合がある。配筋計画には、十分な間隔を確保し、コンクリートの充填不良のないよう留意する必要がある。さらに事前に耐荷試験を行い性能確認を実施することも有効である。

2)施工の留意点

 機械式継手の連結は、工法毎の基準に準じた管理を行い、確実な施工を行うよう留意する。また継手部が過密であれば、型枠バイブレータ等を使用し、充填不良がないような施工計画を基に、品質を確保できる施工を実施する。

Ⅱ−2−2

   既設構造物を使用しながら,改築・増築,又は補修・補強に関する業務を行うこととなった。この業務を鋼構造あるいはコンクリートの技術に関わる担当責任者として進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする構造物を1つ挙げ,工事中の既設構造物の使用条件を設定し,業務の内容を明確にした上で,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順とその際に留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。。

コンクリートを選択する。

1.道路橋の橋脚の長寿命化・耐震性向上の工事

1)対象の構造物と使用条件

化コンクリート橋脚の長寿命化・耐震性向上を図る工事で、一般車両が通行する状況で、供用が条件とする

■「一般車両通行、供用」は前提条件です。ありふれていて、特に「制約」とは言えません。

2)調査する事項

■初期調査の説明で留まっています。もっと決定的なプロの判断をするための調査を提案しましょう。

設計図書を調査する。建設時の設計図・基準・要求性能を確認し、当時の設計条件を整理する。

 周辺環境を調査す。構造物のおかれた状況(気候・温度・気中・土中・水中等)を確認して、構造物の劣化状況を調査する。

 周辺住民・利用状況を調査する。工事を行う上で、周辺住民への影響、利用の時間・利用者数の調査を実施する。また工事に必要なヤードの可否も調査する。

3)検討する事項

■道路橋の橋脚、鋼コンの専門的内容が読み取れません。現場管理の一般論で留まっています。または、建設部門の施工管理科目の視点になっています。鋼コンの技術応用を提案するようにしましょう。

 補強方法を検討する。調査結果に基づき、劣化状況に応じた補強で、長寿命化・耐震性向上が確保でき周辺への影響が少ない施工が行える補強方法を検討する。 

 補強範囲・規模を検討する。維持管理計画に基づき今後の使用年数を見据えた必要以上でも以下でもなく、さらに施工が円滑に行える範囲・規模を検討する。 

 設計・施工方法を検討する。要求性能を満たし効率的な設計・維持管理に配慮した計画を検討する。品質が確保でき周辺住民に配慮できる施工計画を検討する。

2.業務を進める手順・留意点・工夫点

1)業務を進める手順

■効率的、適正にするのは当然です。これだけでは留意点になりません。

 業務計画を行う。調査・検討結果をもとに、長寿命化・耐震性向上が効率的に行えるよう計画する。

 補強計画を行う。劣化状況・耐震要求から計画を進める。耐震では地震力低減・耐荷力向上・免震化からRC巻立て工法・炭素繊維補強等適切な工法を選定する。

 設計・施工を行う。点検・維持管理に配慮し補強しやすい設計と、周辺住民・利用者に配慮しつつ長寿命化品質を確保できる施工を行

■具体的にどうするのか、建前、基本姿勢だけでは△

2)留意する点

■当然すべき事項に留まっています。技術応用で品質を高める提案をしましょう。

 工の内容が、維持管理計画とあっているか発注者と十分協議し、目的が異なっていないか、補強方法・範囲・規模は適切か留意する必要があ

3)工夫すべき点

■こちらも最低限すべき事項です。

 維持管理計画の中で、今回の工事が管理しやすい補強工事となるように、点検孔設置・見える化がなされているよう工夫する

3.関係者との調整方法

■調整の中身が伝わりません。自身で行う一方的活動では△です。

 プロマネとしての取りまとめの資質能力が問われています。

 発注者と調整する。維持管理計画を確実に実施していける計画になっているか十分協議する。

 周辺住民と調整する。長寿命化・耐震性向上の目的重要性を十分説明し、理解・協力を得るよう調整する。

 利用者と調整する。看板・アナウンスにて危険喚起や情報提供し安全に努め工事を実施する。

Ⅲ−1

 Ⅲ−1 国土交通省は,調査・測量から設計,施工,検査,維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICT等を活用する「i ―Construction」を推進し,建設現場の生産性を,2025年度までに2割向上させることを目指している。建設業で生産性を低下させている要因の1つとして,2次元の紙の図面で各種作業を進めていることが挙げられることから,建設生産・管理システムでも3次元モデルを利活用することで,全体の効率化・高度化を図る,いわゆるIM/CIMが生産性革命のエンジンとして推進されている。このような 状況を踏まえ,鋼構造あるいはコンクリートに関わる技術者の立場から以下の問いに答えよ。

(1)BIM/CIMの活用により生産性の向上が期待できる業務を1つ挙げよ。また,BIM/CIMを導入してその業務の生産性を向上させるために解決すべき課題を多面的な観点から抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前間(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

コンクリートを選択する。

1.プレキャスト化生産方式への変更業務

1−1 BIM/CIMを活用したプレキャスト化

建設業は、一品製作・労働集約型生産方式のため生産効率が上がっていない。ICT 技術を活用したi-cons

tructionを推進し、BIM/CIMを活用し効率化を目的としたプレキャスト化生産方式への変更業務を行う。

1−2 プレキャスト化のための課題

1)効率的なプレキャスト化

■PCのための課題がまとまっていません。焦点を定めましょう。

 BIM/CIMは、生産性向上へのプレキャスト化に寄与するが、技術者の高齢化で疎い傾向があり、対応速度が遅い現状がある。さらに効率化を図る中、品質確保も重要である。いかにして一般化に向けた規準類の整理を行うか、いかにして設計仕様化・部材標準化による品質確保をしていくか、いかにして効率的なプレキャスト化を実施していくか課題である。

2)技術者不足の中でのBIM/CIM技術の活用

■担い手確保か、新技術か。目的と方策を混同しないようにしましょう。

 高齢化の技術者不足の中、BIM/CIM技術の活用を進めていくには、作業し易い環境作りが重要である。いかにして扱いやすいシステム構築や新技術開発をしていくか、いかにして技術者不足補うかが課題である。

3)プレキャスト化によるコストの削減

 ■コスト削減は当初の方針、目的であって、前提事項のようなものでは?

  「コスト削減」は建設の究極の目標。どうやってコスト削減するか見えるようにしましょう。

BIM/CIMを活用したプレキャスト化は、人員不足の中、効率化が図れるがコストが上がる傾向にある。いかにして生産コストを削減していくかが課題である。

2.プレキャスト化での最も重要な課題と解決策

2−1 最も重要な課題

■課題の選定理由は求められていません。

また選定するのは1つです。

1)効率的なプレキャスト化を行うことの重要性

 BIM/CIMを活用したプレキャスト化を行い生産性向上を図っていくには、「規準類・ガイドラインの整理」、「設計仕様化・部材標準化による品質確保」、「効率的なプレキャスト化」を進めていくことが重要である。

以下に3つの解決策を示す

2−2 課題に対しての解決策

1)規準・ガイドラインの整理 

■課題の内容とあまり変化なし。BIM/CIMは前提事項なので、答えになりません。論理を進展するようにしましょう。

 BIM/CIMを活用しやすくするために、規準を整理し情報の統一化を図る。 規準整理による情報の統一化で、生産から維持管理まで、次世代に伝えていけるシステムの構築を行う。さらに技術者の高齢化に対して、高齢者にも扱いやすいようガイドラインの整理を行い、BIM/CIMの一般化を図ることで、効率的なプレキャスト化から生産性向上へと繋げる。

■BIM/CIMは前提事項なので、答えになりません。

それを具体的にどう進めるかが問われています。

2)設計仕様化・部材標準化による品質確保

一品製作は生産性効率が上がらない。労働集約型生産方式は天候・気温の影響を受けるので工程・品質管理が困難である。そこでBIM/CIMを活用した同一部材・屋内施工が行える効率的な設計仕様化・部材同一化を実施することで、生産環境と生産効率が良いプレキャスト生産方式へと変更を図る。プレキャスト化による品質を確保した生産を行い生産性向上へと繋げる、

3) BIM/CIMを活用した効率的なプレキャスト化

■BIM/CIMは問題文で求められた前提事項。それが答えにはなりません。

BIM/CIMをどうやって広めるかの解決策が求められています。

 BIM/CIM技術は、プレキャスト化を行う上で作業の効率化を図ることができるが、技術者高齢化等により疎い傾向がある。例えばラーメン構造のプレキャスト化は、隅角部が過密配筋となるので、突出鉄筋の配置精度が施工効率に影響する。そこで、BIM/CIMにより、2次元の面チェックでなく3次元の立体モデルの取り合い確認を行ことで組立不具合の無い計画を行う。さらに製作・運搬・架設・組立の一連の作業をビジュアル化を図ることで、不具合の無い施工を行い効率的なプレキャスト化から生産性向上へと繋げる。

3.共通したリスクとその対策

■2の解決策をやっても中間チェックを省略はしないし、若手の技術力向上の機会を失う事にもなりません。論理的に正しい推論をしましょう。

リスクは、「基準・ガイドラインの整理」、「設計仕様化・部材標準化による品質確保」、「効率的なプレキャスト化」を進めていくことで効率化が図れるが、途中段階チェックを省略することとなるので、不具合が発見しづらくなることである。さらに、若手技術者は技術力向上の機会を失う傾向となり、技術の継承の妨げとなることもリスクである。

対策は、教育制度のシステム構築や資格保有の推進を行い、若手技術者の技術力向上と技術の継承が行える環境整備をしていくことである。さらに、技術講習や技術者保有資格を評価項目に考慮し、入札条件に積極的に取り入れていくことも有効であると考える。

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210226

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この答案についての講評

 この試験答案Ⅲの評価はAとのことで、合格点をクリアしているレベル感があります。ただし、一方で減点されているところもあり惜しい感じがいたします。添削で具体的にご指摘致します。その理由として、テーマに対して対策、方法論的な説明に終始ししていたことがあげられます。改善に向けた具体的な提案ができればよかったと思います。課題の分析でやや難しい方向に入り込んでしまったことが残念です。このほか、解決策でやや周辺事項に発散した可能性があります。試験では技術士としての「技術応用」が採点されますが、ここで基軸を失わないことが肝要かと思います。この記述ではテーマの「担い手」から離れた可能性があります。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。

 本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(11分26秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅲ-1 

 我が国は人口減少局面にあることに加え,総人口に占める高齢者の割合は増加しており,他国も経験したことのない超高齢化社会を迎えようとしている。こうしたなか,全国平均に比べて早い時期から高齢化が進行している過疎地域では,今後の地域社会の維持・継続が困難になる事態が多数発生すると危惧されている。このような状況を踏まえ,施工計画・施工設備及び積算分野の技術者として,以下の問いに答えよ。

(1)        過疎化が進行しつつある地域におけるインフラの維持管理・更新を実施するに当たって,多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)          前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)         前問(2)で示した解決策の実施に際して生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.過疎化地域でのインフラ維持管理・更新の課題 

(1)担い手不足の観点 

■この着目点は〇です。良く書けています。

 規模の小さい市町村では、約30%の割合でインフラ維持管理・更新を専任で行う技術者が不在である。また、建設業は他産業に比べ高齢化が進んでおり、地方ではよりその傾向が強い。今後は大量の退職者が見込まれており、従事者は増々減少していく。これらの要因から、過疎地域では発注者・施工業者ともに担い手の確保が課題である。 

(2)維持管理・更新に必要なデータ不足 

■漠然とデータ不足という手段的事項ではなく、点検(目的)のことを言うべきです。

 インフラの維持管理・更新を効率的に実施するためには、正しく現状を把握する必要がある。国の管理する施設は定期点検や日常点検が行き届いているが、過疎地域では人手、技術力、財政の不足により十分でないのが現状である。施設の維持管理・更新を効率的に継続するため、点検実施とデータ収集の推進が課題である。 

(3)非効率なインフラ配置 

■これは結果であって、仕方ないことです。しいて言うと計画時の予測が甘かったということかと思います。

 過疎地域では、人口流出と高齢化に伴い市街地では空家が増加し、周辺集落は限界集落に近づいている。

このため使われないインフラが多数点在しており、維持管理・更新業務が非効率で、機能・安全性に支障が生じる施設も増加している。これらの要因から、施設の廃止や集約、用途変更を推進し適正なインフラ配置への転換が課題である。

2.最も重要と考える課題

 最も重要と考える課題は「担い手の不足」である。あらゆる支援策を講じ、体制・人材・財政面で脆弱な過疎地域を支援することが重要と考える。以下に解決策を述べる。

1)解決策 

(1)技術力の確保 

■この自前の人材育成は〇です。良く書けています。

 専任の担当が不在でも業務が実施できるよう、自治体職員の技術力確保と、ノウハウ取得のため、研修・講習の充実と、参加しやすい環境整備を推進する。また技術的な課題の相談窓口を設置し、職員のサポートを行う。さらに専門技術者を派遣し直接指導を行う。

 民間資格を有効活用するため、国が公的資格として認定することを促進し、維持管理・更新業務を責任を

を持って従事できる人材の増加を図る。

(2)新技術の活用 

■新技術は「担い手」と直接の関係ありません。PPP/PFIも同じです。

 メンテナンスNETISへの登録を推進し、広く発注者・設計コンサルタントに新技術を周知させ、導入促進を図る。また国民メンテナンス会議の自然発生的な技術のマッチングではなく、過疎地域を新技術の社会実装の場として活用し、新技術導入をコーディネートすることにより、維持管理・更新業務の生産性向上を図る。

(3)PPP/PFIの推進

 過疎地域での案件形成を促進するため、自治体職員向けにスキル習得のための研修・講習を充実させる。

また、自治体首長同士での意見交換会を開催し、案件形成に関する課題解決を図る。さらにモデル事業を形成し、広く横展開するこで、維持管理・更新業務の効率化とトータルコスト削減を図る。

3.生じるリスクと対策 

(1)生じうるリスク 

■離職するのは過疎地の事情です。提案内容に由来するものを挙げましょう。 

 自治体、地元企業における離職者の発生と、後継者不足による廃業により、新たに蓄積されたノウハウや知見が継承されず失われてしまう。これにより、維持管理・更新業務の継続が困難となる。

(2)リスクへの対策 

1)地域一括発注の活用 

■市町村の事業に都道府県が地域一括発注することが可能ならこのような問題は発生しないのでは?と考えられます。

 自治体同士の横断的つながりを活発にし、ノウハウ・知見の共有と技術継承を行うため、市町村の事業を都道府県が地域一括発注する制度の活用を推進する。

自治体の量的・質的補完が図れ、新たな知見の発見があり、継続的な業務の発展が可能となる。

2)地域維持型契約方式の活用 

■地域維持型建設企業体の事例を挙げましょう。

中小建設会社が結集したとしても、そして交流したとしても、それだけでは技術の継承や、若手技術者の技術力向上は難しいと思われます。

 企業同士での交流を活発にし、ノウハウ・知見の共有と技術の継承、若手技術者の技術力向上を図るため、複数の中小建設会社による地域維持型建設企業体を形成する。工事の大型化により企業の収益確保、人材・機材の有効活用が図れ、安定して継続した企業経営が可能となる。 

H30年 建設部門、港湾及び空港(港湾)の答案について添削致しました。20210218

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この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はBBBとのことでした。その理由としてやはり問題の問2解決策の記述が不足していたように感じます。Ⅲではリスクの考え方やや違うようです。敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(29分03秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.戦略的なメンテナンスを推進するための課題

1.1 予防保全への転換

 老朽化した社会資本の急増に伴い、近年、コンクリート片が落下し電車が停止する事故や岸壁エプロンが陥没し荷役中のクレーンが転倒するなどの災害も発生している、このため、従来行ってきた事後保全型の維持管理から、アセットマネジメントの考え方を取り入れた予防保全に転換し、ストック効果の維持と費用の縮減を実現す津頃が課題である。

■この1.1は良く書けています。

1.2 データベース化と情報共有

 これまでの社会資本の点検診断は、熟練技術者各々の判断基準で行い、紙資料に取りまとめ施設管理者が保管していた。しかし、従来の方法では、膨大な社会資本の維持管理の優先順位が分からず、的確なメンテナンスが不可能と考える。このため、維持管理データのデータベース化と情報共有が課題である。

1.3 社会資本の集約と改変

 我が国では超高齢化社会が進展しており、人口減少は今後も継続する。このため、社会資本が更新期を迎えた場合、同じ施設に更新するのではなく、今後の計画や地域の要請に応えた施設に集約・改変することが改題である。なぜなら、社会資本が時代の要請に応えることができなければ、国民生活の質や安全・安心が低下してしまうからである。

2.最も重要な課題と解決策

 口構造の変化に伴う税収減少で、地方自治体では技術系職員も減少している。このような状況では、地方自治体間、国や県などの上部組織と密接に連携した社会資本の維持管理が必要と考える。このため、維持管理情報のデータベース化と情報共有を最も重要と考え、以下に解決策を示

2.1 データベース化・情報共有

 維持管理計画に従い施設を定期的に点検しマニュアルの基準を用いて診断する。これを共通の様式に記入しデータベース化し、情報共有する。

■課題の内容と同じで、解決策の中身が少ないので、建設のDX技術の提案をしましょう。

2.2 CIM モデルの活用

 近年、調査・設計段階で作成したCIM モデルを施設の建設でも活用する技術が進展している。今後は、この3次元データに維持管理データも付加し、維持管理の効率化と修繕や更新期の合意形成の迅速化を図ることが有効と考える。

3.新たに生じるリスクと対策

 建設業では他の産業より高齢化が進展しており、今後10年間に1/3 の技術者が離職する。一方、老朽化した社会資本は急増するため、社会資本を維持管理する技術者が不足するリスクが生じる。

■ここは「解決策に共通して新たに生じうるリスク」です。課題と無関係なことは△です。リスクに由来した内容を提案しましょう。

3.1 生産性の向上

■細かい対策内容の説明が冗長となっています。簡潔に説明するようにしましょう。

 これまで社会資本の点検診断は、熟練技術者の目視や打音検査で行われてきたが、今後はICTやAIなどの新技術を活用し施設の点検診断の効率化を図る。具体的には、橋梁の点検にドローンで撮影した画像をAIで分析する改善や桟橋建設時に鉄筋腐食センサーを組込み、IoT技術を活用した遠隔モニタリングで省力化の改善である。この改善で、点検診断作業の安全性も向上できると考える。

3.2 女性や高齢者の活躍

建設業界は労働時間が長く高所など危険も多いため、女性の入職や高齢者の雇用延長が抑制されてきた。このため、今後は労働環境の改善と業務の適材適所で、女性や高齢者が生き々と活躍できる産業へと変革する。

4.必要となる要件

4.1 技術者としての倫理の観点

■この4.1は良く書けています。 

 予防保全での施設の維持管理では、定期的に点検を行い、劣化や損傷が軽微なうちに補修を行う。施設の点検で利用者の危険が判明したら、利用者の安全を最優先に考え、利用制限や禁止措置を行うことが要件である。

4.2 持続可能性の観点

■この4.2は良く書けています 

 老朽化社会資本の維持管理は世界共通の課題である。現在、官民学が連携して維持管理技術を開発しているが、他産業の技術も応用し技術革新し、国内の社会資本を確実に維持管理する。これを海外でも通用する技術に高度化を図り、海外の防災社会資本の維持管理も行い、現地の経済発展や防災・減災にも貢献することが要件である。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−3

 港湾におけるコンテナ取扱能力又は空港における離着陸処理能力のいずれかを選択し,その拡大方策についてハード,  ソフトの両面から合わせて3つ提案し,それぞれの方策により実現する内容と計画に当たっての複数の配慮事項を説明せよ。 ただし, 埠頭及び滑走路の新設は除く 。

1.港湾におけるコンテナ取扱能力拡大方策

 コンテナ取扱能力の拡大方策を以下に3つ提案し、実現する内容と配慮事項を説明する。

1.1 RTG の自動化・遠隔操作化

(1) 実現する内容:労働人口が減少する状況下での高効率な荷役作業の継続・作業環境の改

■大まかなので、具体的に書きましょう。

(2) 配慮事項:自動化されたRTG は正確に動作するが、外来トレーラーは人が運転するのでヒューマンエラーを起こす。このため、フェンスを設けるなどの物理的な隔離やセンサーを設置してのフェールセーフ設計などの安全面に配慮する。

1.2 外来トレーラーの事前予約化

(1) 実現する内容:トレーラー到着時間の平準化による渋滞解消・到着前の事前荷繰り

(2) 配慮事項:事前予約情報をターミナルへの入退管理にも活用する更なる効率化に配慮する

■対象が他用途になっています。港湾の技術出来ることを提案しましょう。

1.3 AIの画像認証技術を応用したダメージチェック

(1) 実現する内容:短時間化

(2) 配慮事項:開発過程の技術であるので、抜き取り調査等を実施し、正確性の確認に配慮する。

■開発途上では△なので、ある程度確立した技術を提案しましょう。

1.4 全体的な効率化  

 コンテナターミナル全体の効率化は、ガントリークレーン、構内トレーラー、RTG 、外来トレーラー各々の稼働状況を把握に配慮し、改善していくことで全体的な効率化が図れると考える。

Ⅱ−2−2

   A港 (又はA空港) において, 供用中のケーソン式係船岸又は供用中の滑走路を対象に新たに地震対策が求められ, 耐震性向上のための改良設計を行うこととなった。 あなたがこの業務を担当責任者として進めるに当たり, 港湾又は空港のいずれかを選び、下記の内容について記述せよ。              (1)調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。  (2) 業務を進める手順について, その際に留意すべき点, 工夫を要する点を含めて述べよ。  (3) 業務を効率的, 効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

■前置きの作業でなく、技術士が判断した「調査、検討すべき事項」を書きましょう。

技術士として経験的知見からコメントするのが良いでしょう。

1.調査、検討すべき事項

1.1 既存施設の点検診断

 改良設計でも新たに設定した供用期間渡って、要求性能を満足しなければならない。このため、既存施設を調査し、劣化や損傷の程度を検討する。

1.2 設計書の確認

 施設の増増や使用材料を確認するため、設計書を調査する。設計基準には1979年に液状化対策が規定された。このため築造年がこれ以降の場合、液状化対策済みである可能性が高い。

1.3 岸壁の稼働状況・背後の設備や前面の航路

 岸壁の稼働状況を調査し、荷役作業と並行しての改良工事が可能か検討する。また背後の荷役設備や前面の航路までの距離を調査し、輻輳の程度などを検討する

2.業務を進める手順

2.1 現有耐力の把握

 まず、点検診断結果から、現有耐力を把握する。近年の海上輸送の効率化のため船舶が大型化しているため、岸壁前面水深を確認し、洗堀の有無の確認も留意する

■手順と留意点を対にして述べると良いでしょう。

液状化対策のことばかりで、これがケーソン式係船岸の地震対策なのでしょうか。具体的にケーソン式係船岸に特化した手順、留意点が求められています。

2.2 工法の選定

 次に、施設利用者と荷役作業と並行して改良工事を行うか否かを決定する。工事の制約条件や土質条件などを鑑み、最適な工法を選定する。耐震性を向上させる液状化対策工法は、締固め工法、間隙水圧消散工法、地盤改良工法など多数あるが、必要とする施工スペースや適用地盤が大きく異なる。荷役作業と並行して液状化対策を行う場合、地盤改良工法のなかの薬液注入工法が省スペース工法ではあるが、事後ボーリング等を実施し施工後の品質確認に留意する。

2.3 改良設計

構造物のコンクリート強度は設計より高いことが多く、背後地盤が粘性土であれば圧密のよる強度増加が期待できる。このため、改良設計では実測値を採用する工夫で既存施設を有効活用できる。 

3.関係者との調整方策

3.1 近隣事業者との調整

■基本的な港湾工事の留意点であって、問いの「調整」答えるようにしましょう。

「2の手順を効率化するためには、業者や設計者、発注者にどう働きかけて改善しますか」という問です。

こうした難解な答えの対処法について本講座では各受講者様の経験に基づいて最適な提案が出来るようにコーチング指導しております。

 改良工事は、工事用車両の出入りや振動の発生など、近隣事業者に少なからず影響を与える。このため、計画段階で工事内容を周知し、効率的に施工時期などを調整する。

3.2 港湾管理者や海上本部との調整

 港湾工事の許認可申請は複雑である。このため、港湾管理者や海上保安部にも計画時点で、工事内容を説明し、必要な許認可申請の内容と申請時期などを確認する。この工夫で、港湾管理者や海上保安部と効果的に調整ができると考える。

Ⅲ−1

  我が国は, 平成28年に 「明日の日本を支える観光ビジョン  一世界が訪れたくなる日本へ一」 を定め, 外国人の訪日旅行の振興に精力的に取り組んでいるところである。              その中で, 国際ゲートウェイである港湾及び空港は,  ビジョンの実現に向けて大きな役割を果たしていくことが期待されている。

  (1) 訪日旅行の振興によって国民経済的便益を増大させていく上での課題を, 港湾及び空港分野の技術者として多面的な観点から抽出し, その内容を観点とともに示せ。

  (2) (1)で抽出した課題のうち最も重要であると考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3) (2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策にっいて,専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.訪日旅行の振興の港湾の課題

1.1 クルーズ船の寄港増加への対応

 近年、アジアの経済発展や海外旅行ブームに伴い、我が国へのクルーズ船の寄港がこの10年間で3 倍と急増している。我が国の港湾施設の多くは高度成長期に整備され、クルーズ船に対応した岸壁の整備は限定的である。このため、クルーズ船の寄港増加への対応が課題である。

■「対応」のみでは曖昧になるので、港湾の技術士として技術応用の提案をするようにしましょう。

1.2 魅力ある街づくり

 我が国には歴史があり、寺社仏閣や日本食など魅力的な文化がある。しかし、居住環境や物流効率などが低く、保有する魅力を活かしきれていない。このため、魅力ある街づくりが課題である。

一応、国、自治体が努めていることです。港湾の技術士としての専門的な見地から提案をするようにしましょう。

1.3 利便性の向上

■利便性はわかります。しかし、フィンテック(金融)やWIFI(情報工学)は建設・港湾の課題になりません。 

 我が国ではキャッシュレス化が普及しておらず、キャッシュレス決済が習慣となった外国人旅行客にとっては不便である。加えて、英語を始めとする外国語を理解する日本人の割合は低く、スマートフォンで観光情報を探そうとしても、無料でWIFI を利用できる環境も少ない。このため、訪日旅客のための利便性の向上が課題である。

2.最も重要な課題

■問題の前提に留まっています。一部を切り取ったら、汎用性を失うので答えとしてはマイナスになります。幅広い視点で課題を捉えるようにしましょう。 

 今後もアジアの経済発展は継続すると予想する。従って、今後も我が国へのクルーズ船の寄港も増加すると考える。このため、クルーズ船寄港増加への対応を最も重要な課題と考え、以下に解決策を示す。

2.1 クルーズ船専用岸壁の整備

 クルーズ船は、喫水が同程度の貨物運搬船と比較し、長さが長く、風圧面積も広いため、貨物専用岸壁では安全に離着船できないと懸念する。このため、クルーズ船専用岸壁を整備する。クルーズ旅客の増加に伴い、クルーズ船の大型化が進展している。クルーズ船専用岸壁を橋梁より内陸側に整備する場合は、橋梁の桁高の確認に留意する。

2.2 旅客ターミナルの整備

 これまでの貨物荷役岸壁での対応では、旅客ターミナルが無く、CIQ (税関など)に2時間程度かかり、公共交通を利用できる場所まで徒歩移動を強いられていたことも問題であった。このため、クルーズ船専用埠頭には、公共交通の交通結節点も設けた旅客ターミナルを整備する。

2.3 陸上旅客輸送の改善

 我が国の港湾周辺や都心部は慢性的に渋滞が発生し、陸上旅客輸送の効率が悪い。このため高速道路のICから港湾までの幹線道路の整備や環状道路のミッシングリンクを解消する改善で、陸上旅客輸送を効率化する。ETC2.0プローブ情報をAIで解析・抽出した渋滞原因にピンポイントで対策し、渋滞を解消させることも費用対効果が高いと考える。また、無電柱化を推進し、歩道を拡幅するなどの改善も旅行客の快適性を向上させると考える。

3.新たに生じるリスクとそれへの対策

■下記内容は前提の否定となり、本来のリスクではなくなります。問題の趣旨は「クルーズ船ターミナルをやればやるほどリスクとなることは何か」です。

なぜ、リスクが問われているか考えてみましょう。 

 人口構造変化に伴い、我が国は厳しい財政状況下にあると分析する。このため、クルーズ専用埠頭の整備を計画しても、財源不足で整備ができないリスクが生じる。以下に対策を示す

3.1 民間企業の技術・資金力を活用

 クルーズ船専用埠頭の整備には、コンセッション方式を導入する。なぜなら、民間企業の技術や資金力を活用し、賑わいを創出できるからである。この際、発注者は事業期間と要求性能を定め、要求通りに運営しているかのモニタリングおよび改善指導に留意する。

3.2 既存施設の最大活用

 クルーズ専用埠頭は、既存施設を改良して整備する。なぜなら、新たに建設するよりも費用を抑制することができるからである。具体的には、背後地盤を改良し前面海域の増深や前面海域に桟橋を構築する改良が考えられる。既存施設の有効活用を図るため、土質やコンクリート強度等は実測値を用いて設計することに留意する。

R2年 衛生工学部門、廃棄物・資源循環の答案について添削致しました。 20210130

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この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はCBBとの残念な結果でした。その理由としてⅠは衛生工学としての全体形を目指した提案ができていなかったことがあげられます。またⅡ、Ⅲでは主題が見えないため答えが発散してしまったように拝見いたします。敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(25分26秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 2017年に国立社会保障・人口問題研究所が公表した我が国における15〜64歳の生産年齢の人口は、2015年の国勢調査では、7,629万人だったものが、2029年には出生中位推計によると7,000万人を割るものと推定されている。衛生工学部門に関係のある事業には公共性の高いものが多く、こうした人材不足の中においても、国民に公共サービスを十分に提供していく責務を持っている。以上のような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)         人材不足となる中においても事業運営を着実に維持していくために、技術者としての立場で多面的な観点から複数の課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)         抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)         すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

(4)         業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

(1)人材不足での事業運営継続の課題と、その観点

人材不足でも安定した施設の運転・運営をすることで国民に十分なサービスを提供する必要がある

■↑ここは不要です。

1)処理施設内の自動運転・AI化による省人化

施設内業務には、機械操作、中央制御室運転監視、メンテナンス、巡回点検業務があり、それぞれ担当者がいる。AIや自動運転を導入し制御技術を確率し、これらの業務の人員削減、業務効率化、人員共通化、固定費も削減する。

2)遠隔運転による省人化

 施設人員削減をバックアップし安定運転する遠隔監視を導入する。これにより制御支援や、制御権限を遠隔に移譲することにより運転員が別途現地対応、休憩を取得でき省人化できる。

3)収集・使用料等の省人化

ごみ、浄化槽汚泥、し尿等の収集人員のなり手不足が発生する。省人化のために域内自動収集や、海外と同じロボットアームによるボックス回収を行い省人化・効率化する。上下水の使用料もスマートメーター導入とRPAによる自動データ収集・請求により人員削減を図る。

■画像判定は一部の手段で留まっています。衛生工学の技術応用としては自動分別、選別のロボット化です

(2)最も重要な課題とその解決策

1)AI画像判定による自動運転技術導入による省人化

上下水場の曝気槽状態、汚泥・ごみ焼却の燃焼画像で、水面画像(泡の量、にごり)と水質データ、燃焼画像(火炎状態)と炉出口温度の組み合わせによるAI判定制御を導入し熟練運転員と同等の安定運転を行。これにより中央制御室で常時監視員を省人化できる。

2) メンテナンスでの予知保全導入による省人化

施設では、これまで経験に基づく部品交換等のメンテナンスを行ってきた。しかし運転時間、個別特性により施設運転中に故障、設備停止し修理対応人員を要した。振動計・温度等センサーのビッグデータを収集し、AI検知で予防保全から予知保全に変える。これにより故障を事前に把握・対応でき、メンテナンス人員を他施設と共通化できる。

3) 運転管理 巡回点検支援技術による省人化

施設では、これまでルーチンワークとして循環点検を実施してきた。現地確認、データ記録、データ入力、報告書作成と施設の設備毎に人員を要し残業となっていた。Bluetoothにより巡視時のルート支援、AR技術でのipad等で機器にかざし点検項目、入力項目をだし、点検と同時に報告書ができるようにし人員共通化による人員削減と作業負荷低減につながる。

(3)波及効果と懸念事項への対応策

波及効果:AI・自動運転導入により熟練運転員でなくても安定した処理を実施でき、また省人化によ固定費削減によりコストを低減できる。

■この先を提案しましょう

懸念事項:AI・自動運転等の導入による省人化での懸念事項は、①AI故障・誤作動時の対応②災害発生時での対応③情報漏洩の危険性が挙げられる。

■1つでよいです。

対応策:① 遠隔監視側に熟練者を配置し制御支援、制御権限移譲により運転を行う。② 遠隔隔での故障診断、運転条件未成立項目支援、現地人員は実機確認に徹する。③情報漏洩させないためにPVN構築やセキュリティを高める措置を取るが挙げられる。

(4)技術者倫理、社会持続可能性観点での要件・留意点

技術者倫理を高めるためには、安定した自動運転による施設運営と適正処理での衛生向上を提案する。これは技術士倫理綱領の地域住民の安全、健康および福利に繋がる。

社会の持続の可能性を高めるためには、上下水汚泥・し渣・廃棄物による発電による送電により、化石燃料由来のGHG排出の代替し削減できる。これはSDGsの13気候変動に具体的な対策に繋がる。

 本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−4

 汚泥再生処理センターの汚泥の助燃材化に関する脱水技術を二つ挙げ、その原理と特徴及び採用に当たっての留意点を述べよ。

(1)資源としての助燃材化

平成16年より資源化を目的として、2項目を満たす条件で燃料化が追加された。

①汚泥の含水率70%以下、②ごみ焼却施設でごみと混焼する場合に補助燃料を使用する必要がない。

汚泥は水分多く(含水率95%以上)で脱水必要である。

(2)脱水機の原理、特徴及び留意点

1)加圧脱水機(フィルタープレス)

ろ布の両面に圧力差を作り、汚泥に400〜500 kPa程度の圧力をかけて水分を移動し、最後に圧搾して脱水する。

従来、本機のみ条件①を達成、ただし機械が大きく、臭気が発生する欠点があった。

2)遠心脱水機

1000〜3000Gの遠心力で高速回転させた外胴の内側に汚泥を濃縮脱水させ、濃縮した汚泥は外胴とわずかな回転速度差のあるスクリュによって排出する小型で設置買い容易である。条件①を達成できる。ただし高速回転のため消費電力が高く、騒音を発生するため防音設備が必要である。

(3)共通する留意点

生物処理した余剰汚泥等は含水率が下がらない。

汚泥に脱水補助剤(繊維質)を添加脱水で低含水率化。

繊維質の多い浄化槽汚泥等と混合脱水で脱水補助剤の添加量を低減でき、維持管理費低減できる。

Ⅱ−2−1

   地域に新たな価値を創出する廃棄物処理施設の整備が求められる中で、あなたが廃棄物処理施設の整備計画策定の担当責任者として業務を進めるにあたり、下記の内容について述べよ。

(1)     地域に新たな価値を創出する廃棄物処理施設の整備を行うために、調査検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)     業務を進める手順とその際に留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)     業務を効率的、効果的に進めるために関係者との調整方法について述べよ。

■じっくり分析するプロセスが求められています。

(1)新たな価値創出の廃棄物処理施設の調査検討項目

1)地域のエネルギー拠点 ■熱だけで良いと思います。

地域に熱や電気を供給する。廃棄物量やごみ質を調査し、廃棄物発電やメタン発酵が可能か検討する。下水汚泥との発酵や木質バイオマスとの混焼も考える。

■ここが一番大事「地域の新たな価値創出」を考える

2)地域循環の構築

動脈産業と静脈産業の循環を構築する。廃棄物処理上からのメタン発酵残渣を肥料に、木質バイオマスと混合燃焼により産業と循環を構築できるかを調査する。発生する熱を空調やビニルハウスへ、電気を産業に供給し地域循環共生圏を構築できるか検討する。

3)棄物処理施設の強靭

地域の防災拠点化を目指す。災害発生時に運営および継続できるかを調査する。

■↓これは違う目的のための検討になります。

強靭化により避難場所や防災の拠点にできるかを検討する。

■本来外機能です。実際の処理場はこのようなことしていますが、しかしそれは行政の別な視点からです。

 (2)業務手順と留意点および工夫点

1)廃棄物受入れ量から処理量を決め

人口から

■(1)の2)に入れる収集できる廃棄物発生量を推計し、またそのごみ質から廃棄物発電による売電が可能か、メタン発酵可能かを検討する。発電可能な70t/日以上に集約化する、木質バイオマス混焼、ボイラ6MPa×450℃での最大化、高効率化できるか検討する。

■↑「価値創出」のためにやっています。

2)廃棄物処理場の建設 ■整備なので新規建設ではない

廃棄物処理場の設置場所を検討する。地域に熱や電気エネルギーを供給できるか、災害に強い設備か、災害時に1週間分の水、薬品、燃料のユーティリティを確保、洪水等でごみピットや非常用発電機が浸水しない設備できるかする。

3)発電計画と地域連携

■一般論にならないようにしましょう。

電力需要に応じた発電計画を立てる。夏季や昼の高需要時に電力を供給するたその熱や電気を産業と、メタン発酵残渣を農業と連携できるかも検討する。

(3)業務を効率的、効果的に進める調整方法

■ごみ収集ではなく、問2の業務の効率化です。

「地域の新たな価値創出」と関係がある内容を提案しましょう。

ごみ収集会社:利益優先で、ごみ内容物を無確認で収集車1台4t以上の収集持込みを主張する。

設備運転員:受入ごみの品質確認と異物除去を行わず、設備運転のみ実施すると反対する。

これら2者間を運営担当者として調整する。

ごみ収集会社には、ごみ品質が連続して高い場合(焼却、再生利用品、不適物分別)に取引価格を上げる。ダイナミックプライシング手法を用いてごみ収集業者にゴミ確認と分別収集させる。一方、設備運転員には、メンテ不良トラブルによる設備停止がなく、連続して再生品品質・連続売電量が高い時は報奨金を出す。設備停止させないため設備運転員が機械投入前にトラブル原因となる異物を除去させる。

以上より売電量が安定し、再生品品質が高く、稼働率・処理量を向上し、収支で経済性も向上することができる。

Ⅲ−1

 環境と成長の好循環に結びつく環境課題の解決策(ソリューション)をビジネスチャンスになるような廃棄物処理が求められている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。

(1)あなたが専門とする分野における廃棄物処理上の今日的な環境課題について、技術者としての立場で多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対してビジネスチャンスに結びつくような廃棄物処理上の複数の解決策(ソリューション)を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)環境と成長を結ぶ環境課題解決策とその観点

棄物による動脈と静脈の地域循環、物質の有効利用、地域域循環共生圏を構築することで、環境と成長を結びつけ解決できる

■考えではなく課題を示すようにしましょう。

■「有効利用」の中身、方法論が問われています。

1)廃棄物の有効利用

棄物処理は、平均発電効率12%と低い、都市部において再生可能エネルギーとして供給できるよう広域化、高効率化し熱電供給する。地方では、農業・漁業に利用し、メタン発酵残渣を肥料等に利用し循環を構築。

2)廃プラスチックの使用量削減有効利

■話が冗長になっています。「ビジネス化」を主題にしましょう。

国・東南アジアで廃プラスチック輸入を禁止し、日本が輸出していた100万t/年程度が国内滞留している。処理は有効利用25%、サーマルリサイクル57%、未利用18%程度である。対策は、プラスチックに代る生分解性・バイオマスプラスチックの代替できる産業を作る。サーマルリサイクルは、GHGを排出するので有効利用できない廃プラを処理し熱回収する。マテリアルリサイクルは、光学高精度選別機を用い、PP、PE、PSといった材料のリサイクル循環を構築させる。ケミカルリサイクルは、ナフサ等の原料に戻すことができ重要な解決策となる産業を生む。

■負荷低減ではなく「ビジネス化」を言うようにすると良いでしょう。

3)質の循環とゼロエミッション 

家電、小型家電、食品、自動車、建設、容器包装等の個別品目の再生利用率を構築しゼロエミッションを目指す。特に一般廃棄物の食品再生利用率は6%と低く、循環産業を構築する必要がある。アルミ・貴金属については、“都市鉱山みんなで作ろうメダルプロジェクト”の機運を活用し、機運を高め循環産業を創出する。

(2)重要課題の解決策

廃棄物を有価物・エネルギーへ変換し産業化 

1)廃棄物処理と地方との連携

地方では、人口が少なくごみ量も少ない。有機廃棄物をメタン発酵し、メタンガス発電で熱と電気を回収する。発酵残渣や液肥は肥料として農業に活用でき、循環を構築できる。

2)廃棄物処理と都市との連携

都市では人口が多くごみ量を確保できる。スケールメリットを生かして収集範囲を拡大し廃棄物発電大規模化し発電を最大化、電気および熱を産業と連携し活用する。

3)都市と地方の連携

都市で発生する下水汚泥や食品廃棄物を地方でメタン発酵し、廃液と残渣を液肥および肥料として農業利用する。都市には地方のプラスチック等を集め廃棄物発電を大規模化し、電気を都市・地方に供給する。連携により新たな循環を構築できる。

(3)リスクとその対策

リスク:一部施設長期停止による廃棄物処理停止と循環経済の停止

金属類や異物混入等での施設破損による長期停止、再生品等の価格低下等による施設運営の行き詰りが発生する。これにより、廃物処理停止での衛生状態の悪化、メタン発酵や廃棄物発電停止によるGHG排出量の増加、肥料等の農業利用の循環が停止する。さらに循環経済停止により地域産業が衰退してしまう。

解決策

①多面的な処理を構築する

都市地方の2者間では、廃棄物量変動や設備停止時に循環が停止してしまう。解決策として隣接する複数の市町村と連携し、県単位で多面的に実施により廃棄物処理および熱電供給を保全できる。

②都市と地方のシュタットベルケを構築する

熱や電気などの公共インフラサービスを管理運営するシュタットベルケを構築する。シュタットベルケを構築することにより、地域で物質・お金の地産地消を構築できる。廃棄物で熱・電気エネルギーを供給し、副産物を動脈へ還元する地産地消による地域循環共生圏を構築する。

実例

みやま市と柳川市でのシュタットベルケ構築がある

人口が少なく農業主体のみやま市で、食品残渣を受入れメタン発酵を行い発酵残渣を肥料に、柳川市で発酵不燃物等を受入れ廃棄物発電を最大化、産業に電気供給している。これらをシュタットベルケで運営し安定運営と地域循環を構築できている。

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210130

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この答案についての講評

 この過去問答案の評価はⅠⅡⅢで、ABA、Ⅱ+ⅢではAというラッキーな評価でした。一応、合格点だから何も言うことはないのですが、次の口頭試験で楽勝でパスされるには、弱点を押さえておく必要があります。口頭試験で筆記関連連問題が聞かれるからです。それぞれコメントいたします。ここではBをAにするにはどうするか。AをAのままさらに高得点にするにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(19分56秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当り、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2) (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)    (2)で示した解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)    (1)〜(3)を業務として遂行するに当り必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1)課題

①財源不足

我が国は人口減少・高齢化、莫大な財政赤字(国と地方を合わせて1000兆円の借金)を抱える中、税収は期待できない。また毎年の様に多発する水害、土砂災害の頻発、激甚化による複合災害、新型コロナウィルス対策費などに政府の予算を割り当てることになり、維持管理に当てあてられる予算は限られている。費税の増税などの取り組みも行われているが、税収は減少している。今後50年で190兆円もの財源が必要となるため、今後も財源が不足していくと思われる。

②技術者不足

■出来れば問題点ばかりでなく、技術者の視点で解決方針も示した方がよいでしょう

社会インフラの適切な維持・更新は定期的な点検結果を正確に診断できる技術が必要である。しかし、建設業全体と同時に技術者が減少する傾向にある。高度成長期に貢献した熟練技術者の退職、若手技術者の入職者数の減少は技術力の伝承が困難となっているため、定期的な点検結果の正確な診断が困難となり、適切な維持管理・更新を阻害する要因となっている。

③非効率な手法による維持・更新

これまでの維持管理・更新工事においては、スクラップアンドビルトと言われてきたように、社会インフラの老朽化が顕著になってから、建替や補修、補強工事を行う事後保全型が主体であった。そのためコストがかかり長期的な視点ではなく、プライオリティーが不明確で、これまでの非効率的な維持管理手法が課題であった。

(2)最も重要と考える課題と解決策

①アセットマネジメント

事後保全型から予防保全型への移行が有効と考える。

具体的には、アセットマネジメントを適用し社会インフラを資産としてとらえ、長寿命化を図るために更新時期をコントロールしコストの標準化を図る。

ライフサイクルコストの低減のため、点検診断、劣化予測、保全履歴をデータベース化し共有化を図り、必要な時期に誰でも検査利用できる仕組みを構築することにより的確かつ効率的維持管理更新工事に取り組むことができると考える。

②ICTの推進

休息に技術革新が続いているICT技術を高度に利用することで、社会インフラ施設の維持管理の効率化を図る。これにより最小の人員で最適な維持管理を行う。

具体策として、光ファイバー網を活用したCCTVによる遠隔管理、構造物に埋め込んだICチップによる施工情報・補修履歴管理及びこれらの情報のデータベース化による一元管理、住民等から道路管理施設の異常情報等を受け取る双方向型の情報提供システムの構築が挙げられる。

(3)リスクと対策

■リスクは〇です

地方自治体の維持管理の業務は、小規模で複雑な案件が多く、効率的に業務を進めることが困難である。業務の個別性が高いことから、発注者の仕様書作成が難しく、技術者の能力を評価することが困難である。

維持管理更新の高度な技術的判断が必要な場合でも、

適切な評価が行われないことがある。

そのためには、上位機関の情報を地方地域でも共有できる情報システムの構築、技術者派遣、地方講習会の開催等、技術支援を推進し技術力の向上を図る。

中小企業にも適切な利益が確保されるような発注方式を提案し、例えばPPP/PFIを活用した包括的な維持管理プロジェクトの契約方式ガイドラインの作成を行う。

 (4)業務として遂行するに当り必要となる要件

①コンプライアンス

技術者としては、コンプライアンスを重視した行動に留意する。社会持続性の観点では、将来的な担い手確保が課題となっているため、長時間労働の是正、適切な賃金水準の確保、キャリアアップシステムの構築等、働き方改革の推進が重要である。

■①コンプライアンスはOKです。

②は目的方策が逆

②適切な更新

インフラ施設は日々劣化していく。計画的に適切な時期に適切な更新を行うことで、維持管理費を最小限に抑えることが可能であり、技術者として日々研鑽する。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−3

 市街地における橋梁下部工の施工計画に当たり、施工の安全性に必要な検討事項を3つ挙げ、それぞれについて技術上の留意点及び施工上必要な措置等を具体的に述べよ。

(1)検討事項と技術上の留意点

①施工ヤード

 市街地に施工する下部工施工は、施工ヤードが限られる。また近接構造物への影響、近接道路との離隔、工事用車両の進入出路計画、仮設足場計画、必要機材の配置、資材置場の確保、施工ステップ等を検討した上で、安全に施工できるヤードを選定する。

②仮設工法の選定

仮設工法は、掘削深さ、土質状況、地下水位、周辺施設、近接構造物との離隔等を検討し選定する。

施工前に地質状況、施工基面以下の土質を確認し、ボイリング、ヒビーング、盤ぶくれ等の可能性を検討し掘削時における締切内の安全性、近接施工による周辺地盤の影響を検討し、地盤改良工法などの対策を講じる準備をする。

③周辺状態

下部工工事の周辺に、小・中学校、病院、精密機械工場等に、工事の振動、騒音の影響がないか検討し、必要に応じて防音壁、施工機械の選定に留意する。

工事用車両進入口と地元車両の重なる箇所は、工事用車両出口と入口を分けるなど、地元車両との安全性を優先する。

■一応の課題は網羅されていますが、もう一歩踏み込んだ工夫を述べるようにしてみましょう。下のリンクに答えがありますので是非ご参照ください。

https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/jg/gijyutu/splaat000001t52c-att/splaat000001t571.pdf

https://www.ejcm.or.jp/jcm/ronbun/16/pdf/16r-023.pdf

http://www.qsr.mlit.go.jp/n-shiryo/kenkyu/program/04/04_07.pdf

http://sizu-dobokugisi.or.jp/report/thesis/report20082001_91.pdf

Ⅱ−2−1

 図のような地形を横断する2車線道路橋の橋脚1基(直接基礎、高さ18m)を河川区域内に建設する工事を責任者として実施することとなった。この業務には仮設の方法・内容を確定することも含まれている。なお、堤内地には耕作利用されており、現場へのアクセス可能な道路は無いものとする。以上を踏まえて、以下の内容について記述せよ。

(1)検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち工事の特性を踏まえて重要なものを2つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2)業務の手順を述べた上で、業務の工程を管理する際に留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。

(3)業務において必要な関係者との調整事項を1つ挙げ、業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)検討すべき事項

①工事用道路、施工ヤードの確保

 橋脚を施工するために、農道からの工事用車両の進入路の確保が必要である。耕作地に作業用車両、資材置き場等を確保すること、施工箇所までは耕作地を横断することになるので、工事用車両の荷重に対し敷鉄板で養生する。

②仮設工法

橋脚は直接基礎であるため、支持地盤が固く、鋼矢板等による締切は仮設材の根入れ確保に苦慮することが予想される。地盤の状況、施工時期、流水部の状況、周辺状況等を検討し、開削工法を視野も入れ仮設工法を選定する。

(2)業務の手順

①施工時期

河床掘削は、梅雨時、台風時にあたる出水期を避け、渇水期に行う。天候には常に気を配り、近年見られる時期外れの大雨など、特異な状況が想定される場合は、工事をストップすることも視野に入れ、安全に配慮した無理のない計画とする。

②流水部の確保

河床部掘削時に、流水部を大型土のうで背替えを行い、掘削影響範囲からずらし、施工ヤードを確保する。

当該地区の渇水期の過去の河川流量より、流下能力を算定し、施工時における流下断面を確保する。

③仮設計画

 河川内の施工となるため、仮設工法によって工程が大きく左右される。地盤の状況、施工規模、施工ステップを検討し、工程を設定する。

④ブロック積の影響

 施工ヤード(耕作地)から橋脚までのアプローチは

途中にあるブロック積護岸への影響を考慮し、荷重をかけない方が良い点、異常は出水にも対応するため、橋脚位置までは、工事用桟橋の設置検討を行う。

⑤工事用道路

元々耕作地であった箇所は、工事用道路および工事用ヤードの撤去後を考慮し、耕作土上部をシートで被覆養生後、上部に土のう、敷鉄板を設置しておくことで復旧がしやすくなる。

(4)調整事項

 施工前に3者協議(発注者、施工者、設計者)を行うこと、施工中も工程調整を行い、工事を効率的に進めることが必要である。

■この調整は一般的な工事上の注意点と読み取られてしまいます。経験の中から、プロマネとして複数工/業者を調整して、問題解決した例を挙げてみましょう。是非このリンクを参照ください。

調整力とは?人を動かす仕事の調整力を身につけよう

https://big-mac.jp/column/adjustment-power-of-work/

【現場監督】必要とされる能力や求められていることとは?

https://www.oreyume.com/column/p-cat-03/714/

「調整力を発揮して、『理想の形』に整えよう!」

https://jbmhrd.co.jp/blog/tama/tama21.html

建設プロジェクトマネジャ―の資質と能力に関する基礎的研究

https://www.jstage.jst.go.jp/article/procm1993/12/0/12_0_207/_pdf

Ⅲ−1

 我が国は人口減少局面にあることに加え、総人口に占める割合は増加しており、他国も経験したことのない超高齢化社会を迎えようとしている。こうしたなか、全国平均に比べて早い時期から高齢化が進行している過疎地域では、今後の地域社会の維持・継続が困難になる事態が多数発生すると危惧されている。このような状況を踏まえ、施工計画・施工設備及び積算分野の技術者として、以下の問いに答えよ。

 (1)過疎化が進行しつつある地域におけるインフラの維持管理・更新を実施するに当って、多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

 (2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策の実施に際して生じうるリスクとそれへの対策について専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)インフラの維持管理・更新を実施するに当って、多面的な観点から課題

①地方財源の不足

■一般論になっているので、技術士の視点から社会問題の解決方針を示しましょう。

 我が国は人口減少・高齢化、莫大な財政赤字(国・地方合わせて1000兆円の借金)を抱える中、税収の増加は期待できない。また、毎年の様に多発する水害・土砂災害の頻発・激甚化による複合災害、新型コロナウィルス対策費などに政府の予算を割り当てることになり、維持管理に充てられる予算は限られている。特に地方自治体では、逼迫する財政状況の中、維持管理を賄うことに課題がある。

②専門技術者の不足

インフラの適切な維持管理・更新は、定期的な点検と点検結果を正確に診断できる技術者が必要である。都市部に比べ地方地域には仕事量も少なく、そのような技術者が不足しているが課題である。

③若年層の不足

■「担い手不足」は問題文のテーマと重複しています。解決方針を示すと良いでしょう。

過疎地域では、大学生から都市部に住み、大学を卒業しても地元に仕事がないため、帰ってこない。また、建設関係は、IT産業、製造業にくらべ、残業の多さ、休暇取得の難しさ、室外の作業が多いなど若年層に不人気である。

④中小企業の技術

 ICT等の活用などは、都市部の工事で活用されている実態があり、地方部までは浸透していないため、中小企業の技術が追い付いていない。技術力の向上には、中小企業への普及のための指導や説明会を増やすことが課題である。

⑤ICTの購入費

 ICT等で使用する建機は、一般的な機械よりも高額である。地方の企業では、地方が生産性向上のためにはICT普及は必要不可欠であるため、導入のためのコストが課題となっている。

⑥技術力不足

 地方部では、都市部に比べ仕事量も少なく、技術力を付けるような仕事も少なく、現状の技術力で仕事務を進められてしまう状況にある。高度技術力を必要とする仕事は、国等から、大手企業が受注してしまうため、技術力が不足しがちとなることが課題である。

(2)重要な課題と複数の解決策

■解決策は◎です。

重要な課題として財源不足を挙げ、解決策を述べる。

①PFI

限られた維持管理費の捻出のために、民間の資金調達や事業運営のノウハウを取り入れ、維持・更新事業を進める。

②アセットマネジメント

 これまでの事後保全型管理から予防保全型管理への移行が有効と考える。具体的にはアセットマネジメントを適用し、社会インフラを資産ととらえ長寿命化を目指す為、更新時期をコントロールしコストの平準化を図る。また、ライフサイクルコストの低減のため、点検・診断・劣化予測、保全履歴をデータベース化し共有を図り、必要な時に誰でも検索、利用できる仕組みを構築することにより、的確かつ効率的に維持管理・更新工事に取り組むことができる。

③住民参加

地方の人材は限られているので、地元の人が、自分たちの地域を自分たちで診る。常日頃みているインフラの劣化状況を情報として共有し、集約することで無駄のない整備が可能である。

(3)リスクと対策

■リスクはよく考えています

新規整備事業に比較して維持管理の工事は、小規模、複雑な案件が多く、受注企業が効率的に業務を実施することが困難で、また、業務の個別性が高いことから、発注者の仕様書が難しく技術者の能力を評価することも困難である。これにより維持管理・更新の高度な技術的判断が必要とされる場合でも適切な評価が行われない場合がある。

その為には、現場に適した適切な工期設定による労働環境改善、適切な単価で発注するようにし、

■↓どういう形態か具体的に述べるようにしましょう。

適切な利益が確保できる発注形態を進める必要があると考える。

R1年 機械部門、機構ダイナミクス・制御の答案について添削致しました。 20210125

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この答案についての講評

 この過去問答案の答案ⅠⅡⅢの評価はBBBという残念な結果でした。他のⅡ、Ⅲ答案は時間切れでCとなっています。一番の理由は、課題が他領域に発散しているということと、解決策が機械や機構ダイナミクスの技術領域ではなく、改善の一般論になってしまっているということです。ここではB、CをAにするにはどうするか。AをAのまま維持するにはどうすべきかを申し上げます。

 また、波及効果、懸念事項、調整事項など、プロの技術士としての対応も本講座ではテキスト、テンプレートを用意して指導しております。このため誰でも短時間で正解できます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、この指導によって誰でも改善可能です。このような惜しい答案の方には、是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(40分44秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

2018年7月に発表されたエネルギー基本計画の中では,2030年に向けた政策対応の1っとして,「徹底した省エネルギー社会の実現」が取り上げられており1業務・家庭部門における省エネルギーの強化,運輸部門における多様な省エネルキー対策の推進.産業部門等における省エネルギーの加速,について記述されている。我が国のエネルギー消費効率は1970年代の石油危機以降,官民の努力により4割改善し,世界的にも最高水準にある。石油危機を契機として1979年に制定された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」では,各部門においてエネルギーの使用が多い事業者に対し毎年度,省エネルギー対策の取組状況やエネルギー消費効率の改善状況を政府に報告することを義務付けるなど,省エネルギーの取組を促す枠組みを構築してきた。また,2013年に省エネ法が改正され,2(月4年4月から需要サイドにおける電力需要の平準化に資する取組を省エネルギーの評価において勘案する措置が講じられるようになった。このような社会の状況を考慮して,以下の問いに答えよ。

(1)徹底した省エネルギー社会の実現に向けて,あなたの専門分野だけでなく機械技術全体にわたる多面的な観点から,業務・家庭,運輸,産業のうち,2つの部門を選んで今後取組むべき技術課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)上記すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

■エネルギー基本計画ではエネルギーの使用が多い事業者は省エネルギー対策の取組状況やエネルギー消費効率の改善状況を政府に報告する、電力需要の平準化に資する取組を省エネルギーの評価において勘案するとあります。これらをもとに課題を考えてみましょう。

「徹底した省エネルギー社会実現に向けた課題」

(1)技術課題と内容・観点

 3つの部門の内、「業務・家庭」「産業」について記述する。業務はオフィス勤務を想定して記述する。

課題①:省エネルギー装置開発と推進

 業務・家庭でのエネルギー消費の内大部分は、家電・照明・PC・複合機によるものである。そのため、各装置の省エネルギー化技術の開発と導入推進を行う必要がある。例えば、省エネルギー家電の積極導入や複合機の省電力化などである。

課題②:環境配慮技術の導入推進

 業務・家庭での省エネルギー化を最大化するためには、上記の課題以外に環境配慮型技術を導入し、火力・原子力発電から供給される電力に依存しないことが必要であると考える。例えば、太陽電池・蓄電池による自己発電システム導入、また、通勤時に使用する移動手段を水素水素自動車に変えるなどが挙げられる。

課題:工場消費エネルギー低減化

 工場などの産業部門のエネルギー消費量は高出力機器を使用するため、業務・家庭よりも多い。そのため、徹底した省エネルギー社会を実現するためには、早急に対策を打つことが必要である。

(2)最重要課題と解決策

2−1.最重要課題:課題

 上記にも記載したが、工場などの機器・システムによる電量消費量が非常に高いため、課題を最重要改題とする。

2−2.解決策

■間違いではありませんが、あまり主題とは関係ない一般的な省エネ提案です。エネルギー削減のプロセスとして、技術士に相応しい独創的な提案をしましょう。

解決策①:装置の消費エネルギー低減化

 工場でのエネルギー消費の内、高出力・消費エネルギー大である装置の省エネルギー化が重要であると考える。そこで、IT・IOT活用のエネルギー供給制御方式を導入する。例えば、IOT技術により装置の稼働状態をモニターし消費エネルギーを最適化する等である。

解決策②:工場内の消費エネルギー低減化

 工場内での消費量低減を最大化するためには、上記の装置以外に工場内の照明などの省エネルギー化が必要であると考える。そのため、工場内エネルギー消費制御システムを導入する。例えば、不必要な照明は自動的に消灯される制御、ガス等は供給量制御システム導入が挙げられる。

解決策:生産効率化

 工場でのエネルギー消費量は生産量によって大きく左右される。部品等の歩留まりにより作り直しが発生すること、また、工程が多いとエネルギー消費が増大する。そこで、工程高品質化・工程改善により作り直し等削減しエネルギー消費を削減できると考える。

(3)波及効果と懸念事項

波及効果とは、一見関係ない現象が別の物事に影響を及ぼす現象です。例えば、臭気を発する施設の近隣には負の波及効果が発生し、イベントを行えば周囲も盛り上がる正の波及効果が発生します。省エネ対策をしているので、対策に由来して周辺で発生する事項を取り上げてください。例えばもう少し広い経済、社会影響などが良いでしょう。

「他部門にも・・」は応用した場合の仮想であり、波及はしていません。すなわち他部門の省エネは何も実現してはいません。 

3−1.波及効果

 上記解決策を実施することで、産業部門での省エネルギー化が促進される。また、解決策①②は他部門にも適応することができるため徹底した省エネルギー社会の実現に近づくことができる。

3−2.懸念事項

■故障するのは、提案のシステムでもそうではないシステムでも同じ一般的事項なので、問2の解決策に由来した直接的な事項を提案しましょう。

懸念事項①と対策:制御システム故障により生産が停止してしまう懸念が挙げられる。そこで、故障の予兆診断システムを導入する。これにより故障を未然に防止することができると考える。

■団塊世代大量退職は2の提案と無関係です。

懸念事項②と対策:団塊世代大量退職により、技術者が不足する懸念がある。そこで、技術継承を積極的に行うことを提案する。例えば、OJT(ベテラン若手ペア)、WEBを用いた教育・研修などが挙げられる。

(1)        業務遂行においての必要要件

4−1.技術者としての倫理

■具体的に何をするかという「要件」を示しましょう。

技術応用により公益性を高めて問題点を解決する姿勢を示しましょう。

①         人材育成:グローバルな視野、技術部門を超えた広い視野で活躍できる人材を育成する。

②         公益の確保:業務遂行に際しては、公衆の安全、健康と福利を第一優先で推進する。

4−2.社会の持続可能性

①   環境への影響低減:環境保全などの社会の持続可能性の確保に努める。

②   ICT・IOTの積極的活用:ICT・Iot技術の積極的活用により、オープンイノベーションを推進する。①②により、SDGsの7番目と9番目に貢献できると考える。以上。

本講座ではこのような細かい対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−2−2

 鉄道車両.自動車などの車内の静粛性は利用者の快適性に直接関わる重要な開発項目である。あなたが新製品の車内騒音低減プロジェクトのリーーダーとして業務を進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。

(1)車内騒音の主な原因を2つ以上挙げ,それそれに対してその内容と低減対策方針について説明せよ。

(2)(1)に基づいて原因ごとに担当を決めて開発を進めたが,車内騒音の全体目標に対して大幅に性能未達となることが判明した。対策を進める手順とその際に留意すへき点ーエ夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的に,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)騒音の原因と低減対策方針

1−1.原因

■原因を2つ以上挙げ・・ですが、この①②は類似しているので1つと同じになります。

原因①:エンジンモーターから発生する音

 エンジンモーターが駆動するとき、ギア同士の接触により音が発生、また、エンジン自体の振動により音が発生し、車内に音が伝達されることが原因である。

原因②:エンジンモーターからの振動による共振

 エンジンモーターから発生する振動がその周りの部材の固有振動数と一致し共振することで音が発生し、車内に音が伝達されることが原因である。

1−2.対策方針

原因①の対策方針:対策方針は、エンジンから発生する振動を抑制すること、また、発生した音を遮断することである。例えば、機構に振動を抑制する制振材を設置する、また、エンジン回りに吸音材を設置し、車内へ音が伝達しないようにする等である。

原因②の対策方針:対策方針は、共振引き起こす振動を抑制することである。例えば、共振振動数をずらすために剛性を変更するなどである。

■問題文には「原因ごとに担当を決めて開発を進めたが,車内騒音の全体目標に対して大幅に性能未達となることが判明した。」とあります。原因ごとの対処ではなく、騒音目標を総括的にとらえる視点が必要になります。

(2)手順と留意点・工夫点

2−1.手順

■問題解決の一般的手順であり、この問題が求める騒音解析の答えになっていません。

技術士試験の答えは、必要十分な内容にしましょう。

効果的な対策とするための工夫が必要です。この論理性の深い意味を理解する力が求められます。

①         計画リプラン・体制を整える、②現状把握:騒音発生個所の特定と発生メカニズム究明、対策立案・高確認、④設計レビュー・仕様決定、メーカー選定(見積もり込)・発注、⑥確認試験、⑦導入

2−2.留意点

 原因究明時は、抜け漏れがあると確認試験時にトラブルによる後戻りが発生し、さらに計画が遅延するため、メカニズムを基に確実に原因究明して進める必要がある。

2−3.工夫点

 メカニズム究明時、過去の知見者や関連部門のメンバーと議論し抽出することが必要であるが、議論が進まない(条件が思いつかない)、発散してしまう可能性がるため、ロジックツリーなどのツールを用いて行うと良い

(3)業務を効率的・効果的に進めるための調整方策

方策①:目的の明確化と説明

開発には様々な人が関わり、時に各開発者独自の判断が下されることが多々ある。導入の目的・目指す目標を責任者が自ら各開発者に説明・整合することで、意思の統一が図られ、効果的に開発が進めることができる。 

■これも効率的解決の事務的な手順になってしまうため、この問題が求める騒音解析技術の具体的内容を効率化する答えを提案しましょう。

方策②:工程フォロー会の実施

 業務を効率的、効果的に進めるため、隔週で工程フォロー会議を実施し、計画に基づいて進んでいるか確認する。遅延等の問題が発生したときは、要因を分析し原因特定と対策を講じる、計画リプラン、予算管理、また、場合によっては人員配置変更が必要である。以上

Ⅲ−2

 制御系を備えた機械システムでは,システムの異常動作時あるいは作業者の誤操作時に.安全性を確保するために自律的に緊急停止させる機能,あるいは作業者が容易に緊急停止させる機能を実装していることが必須である。機構ダイナミクス・制御の技術分野に係る機械システムを想定し,このような機能を機槭系及び制御系で実現するための手段について,以下の鬮いに答えよ。

(1)想定した機械システムの概要を示せ。また,その機械システムを緊急停止させる必要があると判断される危険事象を,機構ダイナミクス・制御分野の技術者としての立場で多面的な観点から複数抽出しその内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した危険事象のうち最も重要と考える事象を1っ挙げ,その事象を回避するために要求される機能とその技術的な実現手段を複数示せ。

(3)前間(2)で提示した複数の実現手段に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について,機構ダイナミクス・制御分野の専門技術を踏まえた考えを示せ。

「自動車で実現するための手段」

(1)緊急停止が必要な危険事象

危険事象①:操作者の誤操作、不注意 

 最近発生している自動車事故の内、操作者の誤操作・不注意によるものが多い。例えば、高齢者による誤操作

(アクセルとブレーキを間違えて急発進

■↑これが正解。上記以外は誤動作に相当しません。

して事故に至る等)、スマホのながら運転による不注意よるものが多い。

危険事象②:自動車の故障

■ブレーキペダルの故障とは具体的に何が壊れ、どんな事故になるか述べましょう。

 操作者による危険事象の他に、操作対象物である自動車の故障によるものがある。例えば、ブレーキペダル故障による事故などが挙げられる。

危険事象:自然災害

 操作者と操作対象物(自動車)以外に、自然災害による危険事象がある。例えば、

■これは誤動作の対象外です。

地震発生により、ハンドルがとられてしまう、また、

■これも対象外になります。

急停止により後続車両との衝突事故などがある。

危険事象④:人・動物の飛び出し

 自動車事故の内、操作者の意図しないタイミングで人・動物が飛び出してくる危険事象がある。例えば、子供・動物の飛び出し、OK事故等がある。

(2)重要事象、要求事象と実現手段

2−1.重要事象

■「操作者の誤操作」とは何かその原因を突き止めましょう。そして事象を分類して定義しましょう。精密機器の技術応用で対処すれば問題は解決します。

自動車システムは、人が操作する協働するシステムである。この操作者である人は、人である以上、誤操作・不注意を完全に防ぐことは不可能である。そのため、危険事象①が重要事象であると考える。

2−2.要求される機能

 上記危険事象を回避するために要求される機能は、危険行為を事前に防止し、させない機能であと考える。 

2−3.技術的な実現手段

■汎用的に取り扱っているとの考えかもしれませんが、誤操作に対してフールプルーフは一般論で終わっており、具体的な答えになりません。誤動作の真の原因を究明して信頼性工学の技術で対処することが必要です

 上記要求機能を実現するために、フールプルーフ設計が必要であると考える。下記に具体的な手段を記述する。

手段①:AI案内技術による誤操作防止

■誤操作を具体的に定義しましょう。

 操作者による誤操作は、焦っている時や疲れている時など、思考能力が低下している時に発生することが多い。そこで操作を案内する技術を導入することを提案する。例えば、AIによる案内技術を導入し、案内通りに操作しないと駆動しないようにする等である。

手段②:画像センサ・AIによる不注意防止

■不注意は誤操作とは別物で、必ずしも事故には繋がらないので、本質的な誤動作に集中しましょう。

 不注意は、スマホを見ながら運転している、また、居眠りにより注意散漫することで発生する。そこで、注意散漫していることを診断、もしくは予兆するシステムを提案する。例えば、画像センサによりスマホを見ていることを判断、もしくは、居眠りしそうなことを画像センサ・AIにより予兆し事前に操作者に知らせるなどである。

手段:GPS・AIによる逆走防止

■「逆走」だけを単一で回避するのではなく、もっと広い認識で対処しましょう。

 最近、高齢者の不注意、もしくは知能障害により判断が低下し、逆走してしまう事故が多発しており問題になっている。そこで、IT/IOT技術による逆走防止システムを提案する。例えば、GPS・AIにより位置情報を把握し逆走している時はAIにより判断・制御するようにする等である。

(3)リスクと対策

3−1.リスクと対策

リスク①:コスト増

 ■コストは分かり易いので、技術士の試験はコンピテンシーを高めるため、もう少し因果関係の先まで予測して予想外のリスクを探しましょう。

画像センサー・AI等のシステムを導入することでコストが増加してしまうリスクがある。

リスク①の対策:部品の共通化

 構成する部品を共通化することでコストを抑えることができると考える。例えば、使用されているセンサを一括購入することでコストを抑えることが可能となる。

リスク②:技術者不足

■少子高齢化も団塊世代の大量退職も問2の提案とは異なる要因です。ここでの趣旨は提案に対する自己評価、すなわち技術者倫理からの反省のために問いかけています。改善によって公益性を高めるような提案にしていきましょう。

 今後、少子高齢化、団塊世代の大量退職によりAI技術を開発、扱う技術者が不足するリスクが考えられる。

リスク②の対策:技術継承と外国人労働者積極活用

 上記リスクを回避させるためには、OJT(ベテラン若手ペア)・教育により積極的に技術継承を行うこと、また、外国人労働者を積極的に採用・教育することで回避することができると考える。以上

R2年 情報工学部門、情報基盤の答案について添削致しました。 20210123

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この答案についての講評

 この過去問答案の評価はⅠⅡⅢすべて、Aということで実力派の答案と言えます。合格点ですので何も言うことはないのですが、次の口頭試験で楽勝でパスされるには、弱点を押さえておく必要があります。口頭試験で筆記関連連問題が聞かれるからです。それぞれコメントいたします。ここではBをAにするにはどうするか。AをAのままさらに高得点にするにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(21分16秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 小売業の会社において、キャッシュレス決済のシステム導入を検討している。利用者提示型のコード決済であり(顧客がスマホでQRコードやバーコードを提示し、それをスキャンすることで決済する)、自社が独自に顧客に提供するシステムである(他社のコード決済事業者を利用しない)。システム構成としては、顧客が所有する市販のスマートフォン、小売業の店舗に設置するキャッシュレス端末、キャッシュレス端末の決済データに基づき決済処理を行う決済システムとする。この会社の情報システム部門の立場から、このシステムの非機能要件(NFR : Non Functional Requirements)に関して、次の問いに応えよ。

(1) 技術者としての立場で、多面的な観点から重要と考えられる非機能要件を抽出し、その内容を示せ。

(2) 抽出した要件のうち最も重要と考えられる要件を1つ挙げ、その要件に対する複数の解決策を示せ。

(3) 上記(2)で挙げた解決策が要件を十分に満たしているか否かを評価する方法を示せ。

(4) 業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

( 1 )重要と考えられる非機能要件

1)セキュリティ

 他人によるなりすましを防ぐ為、スマホを使ってキャッシュレス決済を行う顧客の本人性を認証する必要がある。また、個人情報やプライバシーその他機密データを保護する為、店舗の端末−決済システム間の通信経路および決済システムのバックエンドに保持する決済データの暗号化が必要である。更に、サーバとデータのアクセス権の設定と制御を厳密に行う必要がる。

2)可用性

 決済インフラとしての本サービスの位置づけ踏まえ、サービス停止を起こすことのないようソフト、ハード、通信経路を多重化し、可用性の向上を図る必要がある。

3)パフォーマンス(性能)

 店舗のレジ業務を円滑にし、顧客の利便性を高める為、決済アプリ、店舗端末、通信回線、決済システムの性能に配慮する必要がある。

4)スケーラビリティ(拡張性)

 キャンペーンの実施や年末の繁忙期等、特別な時期の急激な利用の増減に耐えられるようにスケールの調整を可能とする必要がある。

5)保守性

 決済インフラとして長期期間利用され、継続して保守と運用を行っていく為、プログラムの理解やテスト実施を容易にする等、保守性を高める必要がある。

( 2 )最重要の非機能要件と解決策

1)最重要の非機能要件

 最重要の非機能要件は「セキュリティ」であると考える。理由は、セキュリティ面の脆弱性が存在することにより、悪意ある攻撃者に顧客の財産が奪われたり個人情報等が盗まれたりする恐れがあるからである。

2)解決策

①利用者認証:パスワード認証とショートメッセージサービス( SMS )認証を組み合わせた多要素認証により本人を確認する。パスワードのみの認証に比べて認証強度を高め、攻撃者によるなりすましを防ぐ。また、顔や指紋等の生体情報を組み合わせたFIDO (Fast Identity Online)____認証の今後の導入も検討する。

②通信の暗号化:店舗の端末と決済システムを結ぶ通信経路をTLS 1.3_で暗号化し保護する。共通かぎ暗号方式として認証付き暗号アルゴリズムを利用することで、通信の安全性を確保する。

③バックエンドのデータ暗号化:バックエンドに保持する決済データを機密性レベルで分類し、レベル高のデータを暗号化した上で特定の権限を持つものしかアクセスできないようするにする。

④アクセス制御:サーバとデータそれぞれにロールベースのアクセス権を設定する。予めユーザに紐づけたパスワードとデバイスで多要素認証し、ユーザのロールに応じてサーバ・データへのアクセスを制御する。

( 3 )要件を満たしているかを評価する方法

1)開発チームによるテスト

 スマホアプリ、店舗の端末、決済システムを開発した設計者と実装者が、設計のとおりにセキュリティが担保されているかを内部からの視点で試験する。

2)外部セキュリティベンダによるテスト

外部のセキュリティベンダに委託し、セキュリティを専門とするコンサルタントがシステムに脆弱性がないかを外部からの視点で試験する。

3 ) パイロットテスト

 一般へのサービス開始前に、地域および人を限定した小さな範囲で、一定期間先行してサービスを開始する。限られた期間と範囲の中で、不正利用が可能でないか、意図しない使われ方がされてないかを確認する。

( 4 )業務遂行において求められる観点

1)技術者倫理の観点

①秘密保持:キャッシュレス決済の設計情報、技術情報に含まれる機密情報を外部に漏えい、転用しない。

②公益確保:一般消費顧客の個人情報、プライバシー、財産の保護を最優先に考えた設計・運用を徹底する。

2 )社会持続可能性の観点

①社会還元:この業務で身に付けた知見を、機密情報を除いた上で、論文発表や技術者育成に活用する。

②環境保護:地球温暖化防止やCO2排出量低減への期待が持てるパブリッククラウドの採用を検討する。

■Ⅰ問題はA評価のため特にコメントいたしません。

Ⅱ−1−2

 パブリック・クラウドのエラスティックな特徴を活用したクラウドネイティブ・アーキテクチャによるアプリケーション基盤の機能・構造とその活用方法について述べよ。

( 1 )クラウドネイティブ・アーキテクチャ

 パブリッククラウドのモダンでダイナミックな環境において、スケーラブルなアプリケーションを構築、実行する為のアーキテクチャである。回復性、管理性、可観測性のある疎結合システムを実現できる

■ここでは「アプリケーション基盤の機能・構造とその活用方法」がいきなり求められていますので、↑上記ような前置きは不要です。

( 2 )アプリケーション基盤の機能・構造

①コンテナ:アプリケーションコードと、Linux OS_を含む全ての依存関係をパッケージ化したソフトウェア一式である。OSレベルで仮想化した環境上で動作する。

②イミュータブルインフラストラクチャ:インフラを不変にする。環境を変更する際は古い環境を廃棄して作り直し、一度作られた環境そのものを変更しない。

③マイクロサービス:小さなアプリケーション同士を、疎結合のAPIで連携させ、システム全体として構成するアーキテクチャ的、組織的手法である。

④サービスメッシュ:マイクロサービス間のトラフィックを中継し、分散トレーシング等の様々な横断的関心事の処理を実装するネットワークレイヤである。

⑤宣言型API:どのようにするかを逐一命令して指示するのではなく、どうありたいかや何が欲しいかを宣言して指示する。インフラ構成やAPI合成等に使う。

( 3 )活用方法

 大規模なインターネット通販サイトや動画配信サイトのようなSoEで活用されている。一方、企業の基幹システムのようなSoRでも採用されてきている。

Ⅱ−2−1

 テレワークは、従来の企業の働き方改革を推進するだけでなく、新型コロナウイルス感染拡大を契機に、導入を加速させる企業が増えている。従業員300名の一般消費者向け電子機器製造業の企業において、以前から10名弱の営業職を中心にモバイルワークに対応していたが、感染対策のため、急遽、本社の100名の正社員事務職を中心に在宅勤務制度を導入することになった。あなたは社内の情報システム基盤、及び、情報セキュリティ対策の責任者としてテレワーク推進プロジェクトを支援するに当たり、下記の内容について記述せよ。対象者が利用するシステムには、本社内サーバ室に設置された業務システムと労務管理システム、及び、クラウドサービスを利用している電子メールやファイルサーバ等の情報共有ツールを含むものとする。なお、経営幹部からは、固定を圧縮し、柔軟な経営施策が打てるよう貢献して欲しい旨の指示が出ている。

(1) 調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2) 業務を進める手順とその際に留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

( 1 )調査、検討すべき事項とその内容

1 )現状の業務分析と現行システムの調査

 テレワーク対象の業務について、業務フロー、業務内容等を表や図にして把握する。業務/労務管理システムの構成、データの機密レベルを調査する。業務用PCで利用しているソフトウェア資産の棚卸を行う。

■ 目的ねらいを明らかにして絞って調べるようにしましょう。どこにチェックポイントがあるか、経験的知見が問われています。

2 )在宅勤務者の作業環境

 在宅勤務に必要なネットワーク環境を検討する。在宅勤務のPCを会社で貸与するか私物のPCを利用可とするか得失を評価し、検討する。

 ■↑BYOD 専門用語で言いましょう。検討事項を絞り込むようにしましょう。答えが出ない問は、仮設で進めるしかありません。

固定費を変動費化する為、Desktop as a Service (DaaS) ____を導入できないか、在宅勤務だけでなく全社的に導入できないか検討する。

3 )新システム・ネットワーク・セキュリティの検討

 在宅勤務用PCと業務/労務管理システムのネットワーク接続方法、認証方法を検討する。また、固定費を変動費化する為、業務/労務管理システムをパブリッククラウドへ移行できないか検討する。

( 2 )業務を進める手順

1 )テレワーク導入に向けた調査・検討と計画

 ( 1 )の結果を踏まえ、導入を計画し体制を整備す

■何が留意点かをわかるようにしましょう。

2 )新システムの設計・実装

 業務/労務管理システムをパブリッククラウドへ移行する為の設計と実装を行う。工夫点は、仮想PC−サーバ間の通信プロトコルをHTTP over TLS__とし、相互認証及び全通信を暗号化して安全性を確保すること。

3 ) DaaSへの移行準備

■基本的な処置で留まっています。DaaSに対応した効率的な留意点となるようにしましょう。

 貸与するPCにDaaSソフトウェアをインストールする。留意点・工夫点は、①事前に貸与PC内部のデータ・ソフトウェアを消去して情報漏洩を防ぐこと。②全社的にDaaSへ移行し、統一する事で運用不可を抑えること。③在宅勤務者を多要素認証で本人確認すること。④自動化ツールを作成して移行時のエラーを抑えること。

4 )接続試験と移行

 社屋外の在宅勤務用PC及び社屋内のPCから、DaaSのデスクトップにログインし、クラウド上の業務/労務管理システムに接続できるかテストする。留意点は、段階的に移行し、新システムにトラブルが生じた場合は旧システムで業務を継続できるようにしておくこと

■一般的な作業提案になっていますので、効率的な提案を目指しましょう。

5 )セキュリティポリシー

 現在のポリシーを見直し、規定類を追加・修正する

■一般的なので、情報工学技術による提案をしましょう。

( 3 )関係者との調整方策

■それぞれ個別に要請するのではプロマネの調整になりません。

営幹部に、業務/労務管理システムのパブリッククラウドへの移行、DaaSの全社的な採用、セキュリティポリシーの見直しについて説明し、承認を依頼する。

・システム担当者、セキュリティ担当者、テレワーク対象部門の管理者・代表担当者を導入推進チームとして集めて調査・検討段階から迅速な合意形成を図る。

・テレワーク対象者に、テレワークへの移行スケジュール、業務の方法、セキュリティに関するルール等を説明し、混乱なく円滑な移行を図る

■プロマネの取りまとめ力を測る問題です。ぜひ下記をご参照ください。ビジネス上の「調整」を探してみましょう。

調整力とは?人を動かす仕事の調整力を身につけよう

https://big-mac.jp/column/adjustment-power-of-work/

【現場監督】必要とされる能力や求められていることとは?

https://www.oreyume.com/column/p-cat-03/714/

「調整力を発揮して、『理想の形』に整えよう!」

https://jbmhrd.co.jp/blog/tama/tama21.html

建設プロジェクトマネジャ―の資質と能力に関する基礎的研究

https://www.jstage.jst.go.jp/article/procm1993/12/0/12_0_207/_pdf

■ご経験の中から、プロマネとして複数工/業者を調整して、問題解決した例を挙げてください。このリンクを参照してください。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅲ−1

 クラウド移行や設備更新に伴う情報機器の廃棄を契機とした情報漏えいが問題になっている。機密情報を含む社内情報システムのデータを保存するために、オンプレミスのストレージシステムを利用している。このストレージシステムは、現行のリース契約が満了する3年後に廃棄を予定している。ストレージシステムの記録装置として利用しているハードディスク(磁気ディスクタイプ)の廃棄に関して、社内情報システム基盤の責任者として以下の問いに応えよ。ただし、リース契約には、返却に関して、その期日と返却後の委託先の産業廃棄物処理事業者による記録装置の破壊実施のみ記載されており、作業方法の詳細については別途調整を行うこととなっている。

(1) 磁気ディスクタイプの記録データ消去方法について述べよ。また、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点と共に示せ。

(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

( 1 )記録データの消去方法と課題

1 )記録データの消去方法

①  ハードディスク(以下HDD)を物理的に破壊する

 筐体からHDDを取り出して物理的に破壊する。ハンマー等で強く叩き、内部に損傷を与えて読み取りをできなくする。但し、確実にダメージを与えないと読み取りできてしまう可能性がある。HDDに穴をあけたり破砕したりする専用装置を使う方法もある。

■方法論の説明を簡潔にするようにしましょう。

②専用ソフトでデータ消去する

 HDDを筐体内部に取り付けた状態のまま、専用ソフトを使ってオールゼロや乱数など意味のないデータで上書きすることでHDD内部のデータを消去する。但し、電源を入れて動作する機器にしか適用できない。専用ソフトは、フリーまたは有償で入手できる

③強磁気を当ててデータ消去する

 筐体からHDDを取り出して専用装置に入れて非常に強い磁気を照射することでデータを完全に消去する。一般的には専門の業者が使用する方法である。

2 )課題と観点

①  機密データの確実な消去(技術面の観点)

 リース契約の満了時に機密データを確実に消去する必要がある。ハンマーなどを使って人手で破壊する方法や、電源が入らない機器への専用ソフトの使用には、人による判断が介入し、ミスを犯す可能性が伴う。従って、どのような状態であっても確実にHDDのデータを消去する方法と手順を確立する必要がある。

■情報工学の視点から、課題を意識して明確に述べるようにしましょう。

②  リース契約の見直しと内容の明確化(契約面の観点)

 2019年にHDD転売による情報漏洩の事件が起こった。今回のリース契約も契約内容があいまいであり、記録データが残ったままHDDが転売され、情報漏洩に繋がる恐れがある従って、契約内容を明確にし、確実な記録装置の破壊と転売の禁止を義務付ける必要がある。

■リース契約の問題、転売問題は明らかに犯罪で技術士としての留意点以前の事項です。情報工学的に解決する方法を考えてみましょう。

③  クラウドへ移行する

 オンプレミスでの運用を徐々に減らしてパブリッククラウドへ移行する。それにより将来的にリース機器の使用を止め、クラウドベンダとのセキュリティ責任共有モデルに基づき、クラウドベンダの徹底したセキュリティ管理に委ねることができる。

■確かにクラウドにすれば問題は切り離せますが、上記は記録データ消去方法についての課題なっていますので、焦点がぶれないようにしましょう。

( 2 )最重要課題と解決策

1 )最重要の課題

 最重要の課題は、リース契約の見直しと内容の明確化であると考える。理由は、今の契約内容では自社からリース会社、更にはその先の再委託先業者への統制が働かず、機器を返却した後の機密情報漏えいリスクをコントロールできないからである。

2 )解決策 

■下記内容で解決はできるかもしれませんが、情報工学技術の応用とは考えにくい内容です。

 リース契約で以下の内容を記載し、明確化する。

①消去方法の明確化:専用装置による物理的破壊か強磁気によるデータ消去を行うこと。

②記録装置の個別(ID)管理の義務付け:返却機器との紐づけをした上でHDDに個別のIDを付与し、消去作業及びその前後を通して個別管理すること。

③データ消去作業への立ち合いを義務付け:リース会社は、再委託先のデータ消去作業に立ち会うこと。

④データ消去作業の記録・撮影・録画の義務付け:データ消去の作業者、日時、場所、HDDのID、消去方法等を記録し、撮影又は録画して作業することを再委託先に義務付けること。

⑤破壊証明書の提出を義務付け:データ消去の証明書を再委託先に提出させ、それを当社に提出すること。

⑥転売禁止を義務付け:機器の転売をしないこと。

( 3 )解決策の波及効果と懸念事項への対応策

1 )解決策の波及効果

①プラスの効果:自社のセキュリティ水準が向上する。

②マイナスの効果:a)再委託先に統制圧力が過剰にかかる可能性がある。b)  HDDを再利用できない。c)機密情報を窃取する方法がより巧妙化する可能性がある。

2 )懸念事項への対応策

 ここではc)情報窃取の巧妙化への対応策を取り上げる。対応策は、自社の業務で機密情報を扱う際、データを暗号化してHDDに保存することをルール化する。暗号鍵は暗号化したHDDとは別の安全な場所に保存するようにする。リース返却時は当該暗号鍵を消去することで内容の読み取りを不可能にする。結果、HDDが万一外部に流出しても情報漏洩を防ぐことができる。

これが本来、問1,2で述べるべき課題、解決策だと思います。

R2年 環境部門、環境保全計画の答案について添削致しました。 20210123

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この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はBAB、Ⅱ+Ⅲの評価はBとのことで大変惜しい結果でした。この理由としてⅠは主題に対する答えがぼやけるなどして提案ができていなかったことがあげられます。一方Ⅱは良い内容です。Ⅲではこたえを一方的に、ご自身の得意分野に誘導しているように拝見いたします。主題が見えないため答えが発散してしまったのかもしれません。また随所に具体例を示して知見経験をアピールするかような記述がみられます。特別関連性の薄い事項逆効果となりますのでご注意ください。

 敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、どこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(15分46秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1 

 第五次環境基本計画では,「環境・経済・社会の統合的向上」の実現のために特定の施策が複数の異なる課題を統合的に解決するような,相互に連関しあう分野横断的な6つの重点戦略が示されている。それぞれの戦略は,

 ① グリーンな経済システム

 ② ストックとしての国土の価値

 ③ 持続可能な地域

 ④ 健康で心豊かな暮らし

 ⑤ 持続可能性を支える技術

 ⑥ 国際貢献

 の施策群である。これら重点戦略について,以下の間いに答えよ。

(1)重点戦略のうち3つについて,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

(4)業務遂行に当たり,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.第五次環境基本計画の重点戦略の課題

 以下の重点戦略について記す。

■出来れば問題点ばかりでなく、技術者の視点で解決方針も示した方がよいでしょう

①グリーンな経済システム

炭素税、省エネルギー車体の促進、水素燃料充填設備の促進の税制改正が為されている。炭素税は諸外国に比して安価であり、水素燃料車の普及促進等への動機付けが難しいことが課題である。

②ストックとしての国土の価値

 近年の災害多発化に対応するために、災害リスクを回避したストック整備の促進が課題である。また、税制改正により省エネルギーに関わる研究投資の促進が図られ、省エネルギー建築物の主流化を目指している。

③持続可能な区域

 9割の地域でエネルギー収支が赤字であり、持続可能な区域となっていないことが課題である。6割の区域が、エコロジカルフットポイントはバイオキャパシティの範囲内であるが、エコロジカルフットポイントがバイオキャパシティの100倍に達する区域が4%あり、そのうちの6割が東京都、神奈川県、大阪府に集中している。エネルギー消費の多い企業等を地方に誘致することで、上記の偏在を正すことが課題である。

2.最も重要な課題及び、その解決策

 比較検討の結果、②のうちでも、災害リスクを回避したストック整備の促進が最も重要な課題と考える。安心して住めるまちづくりが、首都圏等への一極集中を回避して③の持続可能な区域づくりに資する。

解決策1:災害ハザードエリアでの新規開発の抑制

上記エリアのうち特に危険性の高い災害レッドゾーンでは、都市計画法改正により、事務所ビル等の開発も原則禁止とされた。滋賀県条例では災害リスクが高い地点での建て替えに、建築物のかさあげや2階建て以上の建築が求められている。

■禁止事項や制限ではなく、新たな開発による公益性を高める提案をしましょう。

解決策2:災害ハザードエリアからの円滑な移転

災害が発生した区域又は災害危険区域内にある住居について、防災集団移転促進事業が行なわれている。同事業は、住宅団地の整備等に対し一部補助等をしている。上記エリアについては戸数要件の緩和(10戸→5戸)など移転支援の強化が図られた。

解決策3:防災を考慮したまちづくり

居住誘導を図る区域内で防災指針の作成を行なう。

・避難路、防災公園等の避難地、避難施設等の整備

・警戒避難体制の確保

3.解決策の結果の波及効果、懸念事項への対応策

 上記解決策により、害リスクのある区域の地価下落等の資産価値の毀損が波及効果として考えられる。懸念事項のみになっていますので、プラスの影響を表す波及効果も提案しましょう。

地価下落を回避するために土地購入者等に災害リスクが正しく伝えられない可能性がある。これに対応するため、宅地建物取引法改正により取引説明時の重要事項に水害リスクに係る説明が追加された。

■特定の事例に基づく説明が冗長すぎて、主題がぼやけています。大事な答えが失われています。

但し、古い橋があるため堤防に必要な高さが確保できない地点、川幅が急激に狭くなっている地点、河道が屈曲して他の川が合流している地点等、古くからの住民等に既知の情報としてある災害リスクがハザードマップに反映されていない可能性が懸念される。

また、防災集団移転促進事業の戸数要件の緩和により、住宅団地の整備が進んだが、後続する移住が進まない事例が生じている。要件最小戸数の住宅団地がゴーストタウン化する可能性が懸念される。

 災害リスクを最小限にする防災指針や、移住地が孤立化しないための交通手段を含めたインフラ等の整備が重要である。そのためには、各地域の技術者が交流をはかり、有益な知見を発信することが対応となる。

4.業務遂行に技術者として必要となる要件・留意点

 公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した提案が技術者には求められる。自らの業務でいえば、土壌汚染への対策について、健康被害のおそれをなくして環境負荷を最小にした提案等、社会的な不安や環境負荷を軽減するコミュニケーションに努めている

■自身の体験談に留まっています。2の業務に対する要件を述べましょう。

東日本大震災の被災地でも、被曝地の処理土を道路や耕作地等の造成地盤に利用する試みがみられ、健全な覆土等により安全性が実証されている。球環境の保全等、次世代に渡る持続性の確保に資するよう業務を行ないたい。災害等の有事においても技術者としての使命、職責を自覚し、場合によっては土壌汚染対策への公的支援を喚起するよう、倫理的にマネジメントしたい

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−3

 福島第一原子力発電所の事故によって環境中に放出された放射性物質による環境汚染への対処について,除染に伴う土壌等,10万ベクレル/kg超の指定廃棄物,その他の指定廃棄物に着目した復旧状況及び課題を述べよ。

事故後、放射性物質汚染対処特別措置法が制定され、以下の環境再生の取組みが実施されている。同法により私有地においての汚染工作物等撤去同意の簡略化や、措置実施地における保管要請が規定されている。

1.福島県内の状況

①除染に伴う土壌(以下「除染土壌」)の措置

除去土壌は各所の仮置場で一時保管された後、中間貯蔵施設に搬入される。県内約1400万tのうち615万tの当該搬入を完了した。

②指定廃棄物の処理

8000ベクレル超を指定廃棄物として法定し、10万ベクレル超のものは仮設焼却施設での減容化処理後、上記中間貯蔵施設に搬入する。その他の指定廃棄物は既存管理型処分場を国有化した施設に搬入されている。

①、②ともに被災後30年以内に福島県外で最終処分の予定だが、選定が難航し、中間貯蔵施設の収容量逼迫が予想される。健全土覆土により安全を確保した道路路盤への再生利用等の推進に、市町村、地域住民等の理解を得ることが課題である。また、中間貯蔵施設設置について地権者全員の合意が得られていない。所在不明の方もおられ、本格整備の障壁となっている。

2.福島県外の状況

私有地保管の早期解消のための長期管理施設新設がすすんでいない。保管後に8000ベクレル以下に減衰した廃棄物の簡易な処理方法確立が課題である。

Ⅱ−2−2

    近年,気候変動の影響もあって豪雨,洪水といった災害が多発し,その際に大量に発生する災害廃棄物を適正に処理することが非常に重要になっている。

■災害発生は既に起こっていることから推論して正解を考えるようにしましょう。

発生した災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するための市町村の災害廃棄物処理計画の策定をあなたが担当することになった。この業務を担当責任者として進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。

(1)調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順とその際に留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容

①災害廃棄物の仮置場設置可否

災害の規模によって発生量を推定し、廃棄物の種類によって異なる仮置場の確保方法の調査、検討。

■仮置場について何を調査、検討するのかを提案しましょう。

道路被災を予測した運搬経路

ハザードマップ等により建築物倒壊・地崩れ・水没等を予測した運搬経路確保の調査、検討。

■「運搬経路確保」では対策ありきになります。

③作業重機・収集手順等

地域内外の廃棄物処理関連事業者の対応可能数量を把握し、作業重機・収集手順等を調査、検討。地域外の業者に委託する場合は、当該自治体被災時の取り決めについても調査、検討をしておく必要がある。

■重機ダンプの手配は建設。環境としてはどうなのか?自治体被災時の取り決めとは何かを考えましょう。

応部署、人員

被災時の部署設置、人員異動、人員の出勤可否についての調査、検討。平常時から部署、人員を拡充する場合も予想される。事前の調査、検討が必要である

■事務的な事項に留まっています。主題に関する内容を提案しましょう。

(2)業務手順とその際の留意点、工夫を要する点

業務手順として

①住民等への周知、②道路の確保、③職員の配置、④廃棄物処理業者の手配等を進める。

業務手順を被災後の事後対応に限定しないことが留意点として挙げられる。

■行政や建設業者が行う手配に留まっています。技術士としての具体的な業務の「手順・留意点」を提案しましょう。

2012年のハリケーン・サンディ(アメリカ東部)で適用されたタイムラインの策定の活用が進んでいる。上記は災害発生時刻「ゼロアワー」を設定し、同時刻から遡り、自治体対応開始・住民周知・防災施設点検・避難の呼びかけ等の対応開始時間「リードタイム」定め、円滑な対応開始に資する。

■思いや伝聞情報に留まっています。設問の解答になるようにしましょう。

発災後の事務を軽減する工夫として、南伊勢町では災害廃棄物処理の初動マニュアルを策定し、稼働できる重機や収集運搬車両の台数等を明記している。

■南伊勢町ではそうなのかもしれませんが、その伝聞情報は一般論として、あまり意味がありません。試験の解答として、真意を推論させるのは△になります。ご自身が正しいと考える正解を明確に述べましょう。

また、避難の遅れにより自動車等の災害廃棄物が増大している。災害の警戒レベル(5段階)のレベル4には避難勧告と避難指示が混在しており、前者に従わない事例や、さらにレベル5の災害発生情報まで避難しない事例がみられる。レベル4を統合して最上位とし、レベル5は別名称とする工夫が検討されている。

■「避難」の話はテーマが違うと受け取られます。災害廃棄物の保管に関する本質的な事項に取り組んだ提案をしましょう。

(3)業務の効率・効果に資する関係者との調整方策

初動マニュアルの実施には地域住民の協力が必要であり、事前にリスクコミュニケーションを進めてお調整が求められる。必要に応じて条例化等の法的整備をしておくことも対策の円滑化に資する。

また、グリーンサービサイジングによる耐久消費財の削減の推進や、災害発生の可能性が高いレッドゾーンの土地利用制限も災害廃棄物の削減に資する。環境負荷を最小にする調整方策として有効である。

■災害廃棄物と関係ない一般論に留まっています。(2)の作業をどう効率化するかを提案しましょう。

公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した提案が技術者には求められる。災害廃棄物の処理についても平常時から社会的な不安や環境負荷を軽減するコミュニケーションの提起に努めたい。また、技術者としての使命、職責を自覚し、場合によっては必要な公的支援を喚起するよう、倫理的にマネジメントしたい

■「思い」は解答としては不要になってしまいます。

Ⅲ−2

 地方公共団体において防災基本計画に基づく地域計画の見直しが図られることとなり,自然災害に起因する有害物質の漏えいへの対応を考慮することとなったことを想定して,以下の問いに答えよ。

(1)地方公共団体の担当技術者(又は業務受託者)としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)課題及び内容

自然災害に起因する有害物質の漏えいによる健康被害のおそれを公的に開示し対策する方法として、土壌汚染対策法(以下「法」)による区域指定がある。区域指定は土地所有者等が自ら申請する指定と、法が調査を求めて汚染があった場合に受ける指定に分かれる。

課題1:自ら区域指定を申請するインセンティブ

自らの事業活動による土壌汚染を開示して区域指定を申請し、社会的責任を果たす企業の事例がみられる。自然災害による場合、企業活動による責任が希薄で、同様のインセンティブが働かないおそれがある。

課題2:法が調査を求める契機

津波等による有害物質の漏えいが明らかな健康被害のおそれを生じさせている場合以外は、有害物質使用特定施設の変更や廃止、一定規模以上(3000㎡以上、有害物質使用特定施設がある場合は900㎡以上)の土地の形質の変更(掘削又は盛土)がない限り、法により調査を求めることができる契機とはならない。

有害物質の漏えいがあっても上記のような新たな企業活動がなければ、放置される可能性がある。

課題3:土地所有者等の負担

調査の結果、区域指定を受けた土地のうち、周辺住民の地下水飲用利用等による健康被害のおそれをなくす必要がある場合は公的な資金援助制度がある。しかし、調査費用については公的な資金援助の制度はない。

適正な試料採取調査を実施するためには事業所の土地の利用等の履歴の調査(地歴調査)による調査密度の決定等が必要であり、調査を実施する土地所有者等の負担が大きい。調査の省略も認められているが、法的に土地の汚染状況が最も重い状態にみなされる。

課題4:土壌汚染の対策方法

区域指定を受けた場合でも健康被害のおそれがない場合は、土壌汚染の拡散がないように管理すれば特段の対策は求められない。健康被害のおそれがある場合でも、地下水汚染がない場合は当該状態のモニタリング継続で足りる。地下水汚染がある場合でも、拡散防止の遮水封じ込め等により管理する対策方法がある。

上記にかかわらず、対策を行なう場合は、土壌汚染を全量掘削して場外処分する掘削除去の対策が一般的である。掘削工事や運搬等による環境負荷が大きく、高額な工事費から土地所有者等の負担が大きい。

(2)最も重要と考える課題及び解決策

比較検討の結果、課題4が最も重要と考える。砂場等で幼児が汚染土壌を摂食するおそれがあるような例外を除き、健康被害のおそれがあっても行政は掘削除去を求めない。土壌汚染を根絶するのではなく、適正な管理により健康リスクをなくす上記の例のような対策(指示措置)を、行政は求めている。

しかし、事業者や近隣住民等のステークホルダーが土壌汚染に不安感を抱き、指示措置と同等以上の掘削除去を行なう場合が多い。健康リスクを合理的になくす措置の選択の正当性を技術者が説明するべきだ。過大な環境負荷、経済的損失の抑制は、社会、経済、制度、生活、価値観等の要素を鑑みた持続可能性の高い最適解を求めるSDGsの実践につながる。

(3)解決策に新たに生じうるリスクと、その対策

区域指定により、風評被害が生じうるリスクが共通して発生する。土壌汚染を明らかにして適正に管理し、健康被害の回避に資することがESG投資等の社会的評価につながる気風を醸成していく必要がある。

また、区域指定部の対策等の工事には行政への事前届出が必要であるが、周辺住民健康への影響がない区域(臨海部特例区域)においては、当該届出を年1回の事後届出に軽減する法改正も行なわれている。

公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した提案が技術者に求められる。土壌汚染への誤解が社会、文化及び環境に与える影響は否定できない。当該影響を予見し、健康被害のおそれをなくして環境負荷を最小にした対策の提案をし、社会的な不安や環境負荷を軽減するコミュニケーションに努めたい。当該対策は地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に資するものである。有事においても技術者としての使命、職責を自覚し、場合によっては調査等の土壌汚染対策への公的支援を喚起するよう倫理的にマネジメントしたい。以上。

R2年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 20210121

答案の一覧>

この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はAABで、Ⅱ+ⅢはBととても惜しい評価でした。その理由としてⅢでBIM/CIMについて具体的な提案ができていなかったことがあげられます。敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。この問題のテーマBIM/CIMはスパーゼネコンや大手設計などが手掛けていますが、そのほかではまだ実施されていません。先進的な問題でした。技術士としての「技術応用」するには経験業務から選ぶ必要があります。おそらくこの方もⅢ-1ではなくⅢ-2(性能規定)を選択されたら具体的に提案が可能だったかと思います。このような対応力は練習を重ねていけば、身につけられます。実際、講座の受講生様でそのように問題を変えられて正解されている方もいらっしゃいます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、どこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(10分27秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

■Ⅰ問題はA評価のため特にコメントいたしません。

(1)老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり課題

①事後保全型の維持管理

 現在の維持管理は、事故や損傷が起きてから補修・

修繕を行う事後保全型の維持管理である。損傷個所が深刻化してから補修や修繕を行う事後保全型の維持管理では、施工時間を費やしコストがかかることが課題である。

また、事後保全型維持管理では災害時に施設が機能しない、活用できない可能性がある。

②担い手不足、技術者不足

 少子高齢化により若手入職者の減少、建設現場の籠城条件・労働環境の低さによる新規入職者の早期退職等により人材確保ができない。また、熟練の技術者・技能者が高齢であり、今後多くの退職を予定しており、

技術継承ができず、担い手不足、技術者不足が課題である。

③社会インフラ整備費の増加

 高度経済成長期に整備した膨大な社会インフラが、老朽化を向かえ維持管理費が増加すること、少子高齢化により社会保障費、社会福祉費に財政が回される。

そのため維持管理費に予算を多く回せない現状がある。

(2)(1)の課題のうち最も重要な課題は、事後保全型の維持管理である。以下にこの課題の対策を述べる。

①事後保全型から予防保全型の維持管理への転換

 損傷個所が軽微なうちに補修、修繕を行う予防保全型の維持管理により、施工時間の短縮、ライフサイクルコストの低減が可能となる。又、老朽化した施設では災害時に機能しない恐れがある。予防保全型の維持管理により、防災施設が災害時有効に活用できる効果が上げられる。

②ドローンによる3次元測量

 従来の測量では、多くの人員を費やし場合によっては足場等を組んで測量を行っていたため、費用や時間がかかっていた。ドローンによる3次元測量では、少人数による作業で足場等が不要となるため、省人化、省力化となる。又、危険個所への人の侵入が減るため、事故等が減り、それによる工期の遅れ等が出さず工期短縮につながる。

③アセットマネジメント

 アセットマネジメントを行い、構造物の維持管理に対し選択と集中、優先順位等を検討していくことが重要である。アセットマネジメントの活用として、調査、診断、修繕等の措置、記録を継続的に繰り返すメンテナンスサイクルの構築も重要となる。

(3)(2)び共通して新たに生じるリスクとその対策

①データベース化と共有化

 維持管理の膨大なデータが整理できていないため、データが活用できていないリスクがある。データ整理

の基準やデータベース項目が設定されていないため、収集したデータが統一されていない。対策としては、基準やデータベース項目を定めて、データベースの構築を行い共有化することが有効である。

②技術者不足・技術力不足

 ドローンによる3次元等の新技術を活用できる技術者不足、経験不足で作業の低下等により効率が悪いことが上げられる。対策としては、新技術導入に教育を受けられるシステムや外部講習、キャリアアップシステムを活用することが有効である。

③初期費用の負担

 ドローンや3次元データに対応できるコンピューターの導入等初期費用の負担が大きいことが課題である。対策としては、発注時に新技術導入費用を予算に含むこと、国・自治体の支援や援助を行うこと、銀行融資が受けられる体制を作る等が上げられる。

(4)業務遂行するに当たり必要な要件

人々の安全・安心・健康を最優先に考え、社会・文化・環境を守ることが重要である。膨大な数の社会インフラの維持管理は、常に使用者の目線で検討を行うこと、公平性を持つこと、国の永久的な財産であることを認識することが重要である。技術者として持続敵に業務を遂行していくために日々研鑽するとともに、技術継承に務めることが重要である。

Ⅱ−1−1

 次に示す高性能公より2つ選択し、特徴、利点、適用する際の留意点を述べよ。

①    耐候性鋼    ② 耐火鋼

②    クラット鋼   ④ 低温用ニッケル鋼

⑤ ステンレス鋼  ⑥ 低降伏点鋼

⑦ 高HAZじん性鋼  ⑦ 予熱低減鋼

■Ⅱ-1問題はA評価のため特にコメントいたしません。

①   耐候性鋼

特徴適度な湿潤の繰返しにより、鋼材表面にち密な錆を形成する

利点防食・防錆に優れている。

  塗装塗替が不要なため、ライフサイクルコストの低減ができる。

  外観が美しい。

適用する際の留意点

  飛散塩分の影響や凍結防止剤を使用する箇所には使用できない。

  適度な湿潤が必要なため、設置環境に注意する。

②   耐火鋼

特徴火災を受けた後も強度低下がない

  常温時の施工性、加工性、強度は一般的な鋼材と同じである。

利点耐火被膜等が不要である。

適用する際の留意点

  鋼材製作には大臣認定が必要であるが、取得が難しい。

  材料等が高価であるため、耐火被膜等の設置費等の比較によりトータルコストの検討が必要である。

Ⅱ−2−2

 既設構造物を使用しながら、改築・増築、又は補修・補強に関する業務を行うこととなった。この業務を鋼構造あるいはコンクリートの技術に関わる担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)    対象とする構造物を1つ挙げ、工事中の既設構造物の使用条件を設定し、業務の内容を明確にした上で、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)    業務を進める手順とその際に留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)    業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

■Ⅱ-2問題はA評価のため特にコメントいたしません。

鋼構造

(1)使用条件:橋梁上の道路は供用路線で車両の交通している状況である。

業務内容:橋梁の溶接部き裂の補修・補強

調査:高所作業車や橋梁点検車両にて現地近接目視を行い、き裂状況、き裂の進行状況、必要であれば非破壊試験を行う。また、添接板の設置が可能かを確認する。

施工機械等の設置が可能か、足場の設置が必要かを確認する。

橋梁設計時の設計書、しゅん功図等の資料の収集を行う。

(2)業務手順と留意すべき点、工夫点

①調査

(1)に示した調査等を行う。現地調査前にしゅん功図等を収集し施工箇所の確認、調査項目等をあらかじめ検討しておく。現地との相違点を確認する。

②  設計・図面作成

①の調査結果をもとに設計計算等を行い添接板寸法、

ボルトサイズ等を決定し、図面を作成する。図面作成後、設計計算や現場との相違点がないか、不具合等は生じていないか照査を充分に行う。

③足場等の設置

足場等の施工環境を整える。足場の設置が河川上である場合水位に、既供用路線上である場合建築限界に注意が必要である。

現場施工

 添接板の設置は密着が重要である。通常取付ボルトには摩擦接合高力ボルトを使用し、その際下処理は入念に行う。摩擦接合では、塗装をブラストやケレンにより入念に除去し摩擦面を確保する。塗装の除去では、薬剤や鉛による中毒をおこす恐れがあるので取扱等には充分注意を払う。

設置後の観察

 設置後は定期的に点検等により、き裂の進行状況や添接部の不具合等がないか観察する。

(3)関係者への説明

地域住民への説明

 近隣住民への説明は、工事が始まる前できるだけ早い段階で安全性や必要性について理解してもらうことが重要である。

橋梁管理者との打合せ

 橋梁管理者の要望と設計条件、施工現場の制約による工事関係者の要望等を早い段階ですり合わせ等を行う。緊急時に電話で決定した事項については、後日文書化し、担当者で相異がないか確認した後、関係者全員に周知する。

Ⅲ−1

 Ⅲ−1 国土交通省は,調査・測量から設計,施工,検査,維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICT等を活用する「i ―Construction」を推進し,建設現場の生産性を,2025年度までに2割向上させることを目指している。建設業で生産性を低下させている要因の1つとして,2次元の紙の図面で各種作業を進めていることが挙げられることから,建設生産・管理システムでも3次元モデルを利活用することで,全体の効率化・高度化を図る,いわゆるIM/CIMが生産性革命のエンジンとして推進されている。このような 状況を踏まえ,鋼構造あるいはコンクリートに関わる技術者の立場から以下の問いに答えよ。

(1)BIM/CIMの活用により生産性の向上が期待できる業務を1つ挙げよ。また,BIM/CIMを導入してその業務の生産性を向上させるために解決すべき課題を多面的な観点から抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前間(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

鋼構造

(1)生産性の向上が期待できる業務

 ドローンによる3次元測量である。3次元測量を行うことにより、その後の設計・施工・調査・維持管理においてデータ活用が」可能である。

解決すべき課題を以下に述べる。

■BIM/CIM とは、建設生産全体3次元モデルですることで、2次元図面での作業をなくして生産を効率化・高度化することです。このことに関する課題を提起するようにしましょう。

ICT建機の導入

 ICT建機を導入すれば、現地丁張りが不要のため人員削減、時間短縮となる。また、3次元測量データをICT建機に入力することで専門のオペレータが不要である。以上のように3次元データの活用ができ、省人化、省力化、施工時間短縮となるICT建機の導入が進んでいないことが課題である。

3次元データに対応できるコンピューターの導入と教育

 ドローンによる3次元測量が膨大でビックデータとなるため、それに対応できるコンピューター等の設備が必要である。また、コンピューターの活用、3次元データの活用ができる人材も不足しているため導入とともに教育システムを構築すること等が課題である。

施工の標準化

 建設工事は、単年度契約が一般的で年度後半の繁忙期には人材や機材等が不足するほどだが、年度初めの閑散期には、人材や機材が活用されない。そのため、年間を通した生産性が低い。施工の標準化が課題である。

■建設生産全体の3次元モデル化に関する、本質的解決法ではなく、マシン(PC)やAI(手法)、データベース利用による改善、といった手段的な話にとどまっています。3次元の情報化に由来する対応問題や、その情報を活用する提案をしましょう。

(2)(1)の中で最も重要と考える課題は、3次元データに対応できるコンピューターの導入である。

以下にこの課題に対する解決策を示す。

■情報工学、PCの能力の話にすり替わっています。建設の技術応用をアピールできるようにしましょう。

 AIのことに発散せず、3次元データを活用した鋼構造生産について言及すべきです。このような難問に対して、本講座では下のようにスライドを用意して解説しています。BIM/CIMを導入して、業務の生産性を向上させるための課題としては、属性データの整備、組み立て・輸送法の検討、3Dモデルの多用途への活用などがあります。

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対応設備の整備

 3次元データ、ビックデータに対応できるコンピューター等を導入し活用することが重要である。従来の設備で3次元データを取り込んでも容量等が大きすぎて効果が上がらない。設備を整えることにより、効率的に作業を行うことが可能となる。

AIの導入

 3次元データ等が膨大であるため、そこから必要なデータを取出し活用することが困難となる。そのためにIA技術を導入し、スピーディにデータ抽出等ができること、技術情報や経験等を入力し収集したデータを効率的に活用する。

データベース化、共有化

 、を行い、3次元データ等を整理し活用するためにデータベース化の構築を図る。データベース項目等も設定し効率的にデータベース化して情報を共有化することにより多くのデータが活用され作業効率化を図る。

■↓下は正しいリスク分析とは言えず、業務を行う上での障害に留まっています。基準とは手段的な事項であり、それが整備されていなければ、そもそもBIMが進まないわけで、リスクも発生しないと考えられます。

(3)(2)で示した解決策に共通した新たに生じるリスクとそれへの対策

基準の整備

 データベースの基準や規格が決まっていないため、統一が図れていないこと、誤った運用により不具合や安全が確保されていない恐れがある。

 対策としては、基準の整備、JIS規格等の設定、マニュアルの作成等を行う。作成に当たり、官民学の連帯により、漏れ等のない基準とする。

初期費用の負担

 ドローンや3次元データ対応のコンピューター等の導入や各設備導入時の設備費や教育費等、初期費用の負担が大きいことが上げられる。

対策としては、国や自治体の支援や援助、工事発注時に新技術導入を予算に含むこと、銀行の融資が受けられる制度を整える等の対応を行う。

 (もう少し詳しく書いていたかと思います)

技術力の低下

 AI等の新技術を導入、データベース化等により、それに依存して、技術者自身の技術力が低下してしまう恐れがある。不測の事態が発生したときに、技術者が対応できない可能性がある。

 対策としては、新技術導入時に教育を受けられるシステムの構築、外部講習会や研修、キャリアアップシステムの活用がある。又、小規模構造物や狭あい部では自身で設計・施工等を行い、技術継承の場として活用することが重要である。

R2年 機械部門、流体機器の答案について添削致しました。 20210119

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この答案についての講評

 この試験答案Ⅰの評価はC、Ⅱは試験場で回答できなかったとのことです。ⅢはR1年の練習問題です。Cの理由としてⅠは具体的な提案ができていなかったことがあげられます。またⅡ、Ⅲでは主題が見えないため答えが発散してしいるように拝見いたします。敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(21分20秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1

 我が国において,短期的には労働力人口は著しく低下しないと考えられているものの,女性や高齢者の労働参加率の向上もいずれ頭打ちになり,長期的には少子高齢化によって労働力人口が大幅に減少すると考えられる。一方で,「ものづくり」から「コトづくり」への変革に合わせた雇用の柔軟化・流動化の促進,一億総活躍社会の実現といった働き方の見直しが進められている。このような社会状況の中で,実際の設計・開発,製造・生産,保守・メンテナンス現場におけるものづくりの技術伝承については,現場で実務を通して実施されている研修と座学研修・集合研修をいかに組み合わせるか等の,単なる方法論の議論だけでなく,より広い視点に立った大きな変革が求められている。このような社会状況を考慮して,機械技術者の立場から次の各問に答えよ。

(1)今後のものづくりにおける技術伝承に関して,機械技術全般にわたる技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)上記すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と新たに生じる懸念事項への対応策を示せ。 

(4)業務遂行において必要な要件・留意点を機械技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1) 技術継承に関する課題

 人材の確保および定着

 ものづくり企業におけるキーパーソンは熟練技能者である。生産年齢人口減少による人手不足のために技能継承する側および継承される側の双方の確保が困難となるおそれがあり、人材の確保および定着が課題である。

いずれも現状の制約事項の再確認であり、だからどうするという機械技術者としての視点がありません。

② 継承時間の確保

 技能は、実際の体験等を通じて人から人へと継承される。このため伝承には時間を要するが、生産年齢人口減少による人手不足のために伝承のための十分な指導時間が確保できないという課題がある。

③ 品質の確保

 2018年の国内製造業の認識では品質トラブルが生じる原因の6割が「従業員教育の不足」という報告があり、技能継承の段階から信頼性の高い品質保証体制の構築が課題となる。

(2) 製造業各分野の持続的発展のために技術継承と人材育成に関する最重要課題と解決策

人的資源管理の一般的(事務的)手続きを書かれています。

技術士試験としての要件が読み取れていないようです。

次のページの要望に応えないと、答案になりません。

 最重要課題の抽出

 分析した課題の中で「人材の確保および定着」が最重要であると判断した。特に技能は実際の体験等を通じて人から人へと継承されるため、人材の確保および定着は継承活動に不可欠であると考えた。

  • 短期的には労働力人口は著しくは低下しない。
  • 女性や高齢者の労働参加率は今は向上してきたが、いずれ頭打ちになる。
  • 長期的に見ると少子高齢化によって労働力人口が大幅に減少する。
  •  
  • 「ものづくり」から「コトづくり」への変革に合わせた雇用の柔軟化・流動化の促進がされている。https://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/jyoho/oshirase/200611_1_2.pdf
  • 一億総活躍社会の実現といった働き方の見直しが進められている。
  •  
  • 技術伝承とは、ОJTと座学の組み合わせ法など、単なる方法論の議論だけでは効果がない。
  • より広い視点に立った大きな変革が求められている。

■このような社会状況を考慮して,機械技術者の立場から答えよということです。

② 最重要課題に対する解決策

a) 多様な人材の活用

 産業全体の労働人口不足が製造業における人材不足の原因である。このため労働人口の底上げを目的としてシニア、女性、外国人労働者など、多様な人材を活用する。これにより、製造業の人材確保も改善できると考える。

b) デジタル技術を活用した人材教育

 確保した人材については、人材の多様性を考慮した教育を実施し人材の定着を図る必要がある。教育は熟練技能者の動作をセンシングしデジタルデータにすることで作業に含まれる暗黙知を形式化するなどデジタル技術の活用が有効である。形式化された作業は、IT技術により多言語化、動画化等することで働き方の多様化に対応した教育が可能になると考える。

c) 標準化と定期的確認による人材育成

 一定の教育を受けた人材は、スムーズな育成を経験することで職場への定着が促進されると考える。社内規格などにより作業を標準化することで、技能の達成基準が明確となり人材のスムーズな育成ができる。また、技能継承の訓練道場などを設けて定期的に作業者の育成度合いを確認し、アドバイス等をすることで人材の定着が期待できる。

(3) 波及効果、新たに生じる懸念と対策

① 波及効果

 本解決策は「ものづくり」に対する技術伝承だけでなく産業全体に応用できるものである。

② 新たに生じる懸念

 従来の技能は師弟関係的に長い時間をかけて継承され、その継承過程で改善や付加価値が生まれ、企業の強みとなったと考えられる。しかしながら解決策では、背景の異なる多様な人材に対し形式化した教育と作業の標準化により育成するため、技能改善や付加価値創造の機会を失う可能施がある。

③ 新たに生じる懸念への対応

 形式化した教育と作業の標準化による育成を原因とする付加価値創造機会の喪失の対策としては、作業者の気付きを標準化された作業に反映し改善する仕組みつくりが必要である。例えば、作業者、熟練技能者、設計者、開発者が参加する定期的なミーティングにより作業者からの改善提案や提案から生まれる付加価値の可能性などについて議論することが有効である。

(4) 業務遂行における必要要件

 今後さらにシニア、女性、外国人労働者など人材の多様化が進むものと考えられる。技術継承と人材育成のために、多様な人材の製造業分野への定着が重要であり、労働者の国籍、宗教、生活環境などを考慮した働き方を労働者とともに構築していくことが必要である。

■この問題については本講座では、スライドを作成して解説しています。

Ⅱ−2−1

  社会インフラの老朽化が深刻な問題となる中で,流体機器の更新時には既存の設備に合わせた提案を要求される場合が多い。あなたは1980年以前に作られた流体機器更新の担当責任者として,既存の設備を有効利用することによりコストを抑えて作業を進めることになった。対象とする流体機器を挙げ,下記の内容について説明せよ。 ただし,原動機,電動機については考えなくてよい。

(1)対象とする機器について簡潔に説明するとともに,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について,留意するべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

残念ながら一般的な設備改修手続きを書かれています。

この問題の前提があってもなくてもこのようなことは言えます。

逆に言うと出題者が示した試験問題としての要件が読み取れていないということです。

下の要望に応えないと、答案になりません。

  • 社会インフラの老朽化が深刻な問題となっている。
  • 流体機器の更新時には既存の設備に合わせた提案を要求される場合が多い。
  • 1980年以前に作られた流体機器更新。
  • 既存の設備を有効利用することによりコストを抑えること。
  • 原動機,電動機については考えない。
  • 事前に調査する事項は何か。それをもとに検討する事項は何か。

(1)対象とする流体機器と調査、検討すべき事項

①対象とする流体機器

 対象は発電所の補機(ポンプ、冷凍機、熱交換器)に冷却水として水を供給するための補器冷却水給水系の更新とする。給水系は2系統あり、それぞれポンプ、配管、弁、流量計、圧力計で構成されている。

②調査、検討すべき事項

a)既存設備・機器の現状の調査

構成機器のうち更新すべき機器の選定を目的として機器の仕様、運転データ、劣化程度を調査する。

b)更新の費用と効果の検討

顧客への設備更新費用の妥当性の提示を目的として、更新の費用および効果の定量化(効果は貨幣価値への変換)を検討する。

c)他系統への影響検討

補機冷却水系の更新作業によって他系統に冷却水が供給されない場合の影響と対策を検討する。

(2) 業務を進める手順と留意点、工夫を要する点

①業務を進める手順

 業務を進める手順は以下のようになる。

手順:1. 既存設備・機器の仕様、運転データの調査→2.既存設備の劣化診断→3.更新機器の選定→4.更新の費用と効果の検討→5. 他系統への影響検討→6.施工→7.試運転→8.検収

②留意点と工夫を要する点

a)手順2.の既存設備の劣化診断について

 ポンプの羽根車、流量調節弁、にはキャビテーションによる壊食が発生する場合があるため分解点検する。必要に応じて浸透探傷検査などの非破壊検査により損傷範囲を確認し交換・補修を判断する。

b)手順3.の更新機器の選定について

更新機器は機器の重要度を考慮して選定する。一般的に給水系ではポンプ、流量調節弁、配管の重要度が高く更新が優先されると考える。2系統有する場合はコスト低減のための工夫として、劣化状況も考慮し1系統運転でもう一方の系統の更新時期を延期すことなども検討する。

c)手順5.他系統への影響検討について

更新作業によって他系統の作業に支障がでる場合は、仮設設備を準備するなどの工夫をする。

(3) 関係者との調整方策

①顧客との調整:劣化診断により壊食等が確認された場合には、系統の圧力や振動の監視強化を提案する。このことが、更新後の機器の保証や安定運転に資する。

②機器メーカーとの調整:ポンプ、バルブ等の更新機器について、交換と補修の場合のコスト比較を依頼し、コスト抑制を図る。

③施工部門との調整:施工部門への作業進捗確認により、工程遅延可能性の早期把握と回避を図る。

Ⅲ−2

 人工知能(AI)の技術の応用が多方面で実用化されっつある。流体を扱う様々な機器システムに対しても,「設計」や「計測」,「制御」,「運転監視」の目的に,機械学習を使った人工知能(AI)を応用することで,従来の限界を超えるブレイクスルーになることが期待される。この応用方法を考案する技術者として,以下の問いに答えよ。

(1)具体的な流体機器若しくは流体機器を主機としたシステムを1つ挙げ,その目的を上記の4つの中から1つ選び,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうちあなたが最も重要と考える課題を1つ選択し,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(1) 流体機器に対するAI利用の目的

流体機器はスプレードライ装置とし、スプレードライの設計にAIを活用することとする。流体機器はスプレードライ装置とし、スプレードライの設計にAIを活用することとする。

■スプレードライのどこが「流体」なのか、肝心の要件を定義するようにしましょう。

機器の設計は一般的に、仕様策定、概念設計、基本設計、詳細設計、試作・試験の工程からなる。流体機器の基本設計の段階では最適化や検証のためにCFDを活用することが多い一般的にCFDは以下のような手順で実施される。

解析仕様の確認→形状の作成または設計部門から入手→格子作成、解析条件入力→境界条件入力→解析の実行→結果の確認

ここでは、人による解析仕様および形状の入力後の手順がAIで実施され、最終的に顧客仕様に基づく結果の表示が得られるようなCFDシステムを構築する場合の課題の抽出および分析をする。

■解答で取り上げていることは、「流体」の本質的問題ではなく、解析手段であるCFDの手法が主題となっています。

求められているのは、人工知能(AI)技術を、流体機器に応用し、従来の限界を超える応用方法を考案することです。

しかも、「機械学習を使った人工知能(AI)」です。

AI技術が多方面で実用化されているのでその経験が問われています。

(2) 多面的な観点からの課題抽出と分析

 教師データの確保

 格子作成を例とした場合、熟練者なみの精度よいメッシュをAIで作成するには教師データとして多量の熟練者の作成したメッシュが必要である。しかしながら、高齢化などで熟練者が不足すると教師データが収集できないことが想定される、そのため教師データの確保が課題となる。

② 計算品質の確保

 AIの開発過程における誤った学習や教師データの不足等からAIが不適切な解析条件、境界条件を入力し不適切な解析結果を表示してしまうことが想定される。そのため、AIを用いたCFDの計算品質の確保が課題となる。

③ 開発コストの低減

AIに膨大な学習計算をさせる必要があるため開発期間の長期化、開発費用の高コスト化することが想定される。そのため、開発コストの低減が課題となる。

(3) 抽出した重要課題と複数の解決策

 抽出した重要課題

 分析した課題の中で「計算品質の確保」が最重要であると判断した。AIを用いることで、必ずしも高度の力学および計算科学などに通じているわけではない一般の設計者がCFDを活用できるようになることが期待されるため、計算品質の確保が重要であると考えた。

② 重要課題に対する解決策

a)人を介在させることを明記した解析手順の作成

 解析部門で解析手順を作成し、解析手順の中に人による解析の検証と妥当性確認を実施と時期を明記することで、AIを用いたCFDの計算品質の確保につながると考える。

b) 解析の検証の実施

 解析の検証において人により以下の事前検証と解析結果の検証を行うことで、AIを用いたCFDの計算品質の確保につながると考える。

事前検証:入力データの整合性確認を行うとともに、予備計算を行って、正しく入力データが作成されていることを確認する

解析結果の検証:各種収束指標の傾向や質量保存性などを確認し計画した解析が正しく行われたことを確認する

c)解析の妥当性確認

 解析の妥当性確認において人により、理論解などによる手計算結果との比較、代替解析との比較、実験あるいは実機の挙動との比較などを行うことで、AIを用いたCFDの計算品質の確保につながると考える。

(3) 解決策の共通リスクと対策

 解決策の共通リスク

 上記3つの解決策はAIによる解析作業の確認、解析モデルの検証、解析結果の妥当性確認が人によって行われるため人の力量不足により解決策が機能しないというリスクが考えられる。

② 共通リスクへの対応

対策としてはシミュレーション作業に携わる要員の力量の管理が有効である。具体的な力量管理の方法としては日本機械学会で実施されているような計算力学技術者資格認定などを活用し、AIおよび人の技量認定をすることなどが考えられる。

R1年 建設部門、都市及び地方計画の答案について添削致しました。 20210117

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この答案についての講評

 この過去問答案の答案ⅠⅡⅢの評価はBBBという残念な結果でした。他のⅡ、Ⅲ答案は時間切れでCとなっています。一番の理由は、課題が他領域に発散しているということと、解決策が機械や機構ダイナミクスの技術領域ではなく、改善の一般論になってしまっているということです。ここではB、CをAにするにはどうするか。AをAのまま維持するにはどうすべきかを申し上げます。

 また、波及効果、懸念事項、調整事項など、プロの技術士としての対応も本講座ではテキスト、テンプレートを用意して指導しております。このため誰でも短時間で正解できます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、この指導によって誰でも改善可能です。このような惜しい答案の方には、是非お勧めいたします。

■この答案に対していただいたご質問、ご意見にコメントいたします。

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復元論文は、自己評価でもS社の講評でも、ⅠとⅢがA判定で、ⅡがB判定でしたので、合格ラインのギリギリかなと思っていました。

しかし、合否通知はオールBだったので、次回に向けてどのように改善したら良いのか方向性が見えなくなり、困っています。

復元論文を第三者に講評してほしいと思って、検索していたら御社のホームページにたどり着きました。ぜひご指導をよろしくお願いします。

■復元論文の採点制度はどこの機関で行ってもそれほど良い精度は得られません。そのぐらい文部科学省の採点基準はよくわからないものなのです。一方、筆記試験後は答案の採点結果によって口頭試験の準備をするか、翌年の筆記試験に備えるか判断しなければなりません。その意味から、多少評価が甘くなることは仕方ないことかと思います。合格の可能性があるならそれを信じて口頭試験に備えた方が筆記が合格していた場合に有利だからです。

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 知識のインプットより論文のアウトプットを訓練した方が合格に繋がりやすいとは、よく言われることですが、有能なコーチに見てもらって軌道修正し続けなければ効率的ではないと思っていました。御社のプログラムは、添削個別指導に特化されているので、それがかなうのではないかと思い始めています。

■「知識のインプットより論文のアウトプットの方が合格に繋がりやすい」には同感いたします。

試験に関する知識は無数にあって、覚えきれるものではありません。実際、合格答案はたくさん拝見しておりますが、それほど高度な知識が書かれているわけではありません。

 一方、答案の解答の方向性や提案内容は、その場で考えて提案できることですが、こちらの内容は合格答案と不合格答案ではかなり異なります。合格と相関が高いのは、出題者が問題で述べている要求(主題)に対して、本質的に応えられているかどうかです。この本質的内容の判断は、広い見識が必要なため経験豊富な講師でなければできません。

 さらに、その添削結果の受講者への指導は、有能なコーチでなければ、考え方の軌道修正ができません。かつ、指導を効果的に行うには、「腹に落ちる」説明法やクイックレスポンス、添削回数が十分ある、質問がしやすい環境、予想問題練習まで行うなどの具体的な指導プログラムが必要です。当社の指導は、単なる添削・個別指導だけでなく、合格につながるあらゆる視点から受講者様のためになるようにと長年にわたって作り上げてきたものです。こうした多面的な講座の工夫があるため合格に寄与しているのです。

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 なぜ、御社は、合格につながる指導ができるのでしょうか。合否判定の詳細がブラックボックスである限り、多くの合格論文、または不合格論文に接し、それらを分析して、合格論文につながる要素を見出すしかないように思いますが、そういう理由なのでしょうか。そうした次の指導につなげるための情報収集の一環で行われているのでしょうか。

■こちらもご推察の通りです 。当社では 無料添削や 受講生様の 再現答案添削を行うことによって 多くの 論文の評価点と実際の合否判定の評価結果との相関を取るようにしています。無料合格判定サービスとは、一般の方への奉仕活動であると共に、当社の合格につながる指導の情報収集の一環として行っております。これによって、採点の際の評点の精度を校正して合否判定の信頼性を高めています。

 それと共に、答案の添削をするためには独自の模範解答のプロトタイプが必要であり、添削ごとに「有能な技術士ならこのような答案を書くはず」、という定性的な基準を用意しています。これは技術士分科会の方針や試験要綱、試験の出題傾向をもとに独自に推論してイメージを作り上げています。その内容は大まかには次のようなものです。

・問題の前置き文が意味する真の要求に答えている

・提案内容は部門科目の技術応用が見られる。

・課題、解決策は社会ニーズから推論して実効性が感じられる。

・モレダブリがなく、説明文が論理的に整然としている。

・課題遂行のための独創的な提案がされている。

・技術管理者としての組織の取りまとめ、調整力が感じられる。

こうした、模範解答基準をもとにして、添削、採点を行っておりますので、一貫して完成形に向かうスピーディーな添削が可能なのです。

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され,建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり,急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また,高度経済成長期と比べて,わが国の社会・経済情勢も大きく変化している。

 こうした状況下で,社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには,戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ,以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中,老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点と共に示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1) 社会インフラの戦略的メンテナンスを推進する上での課題

 公共施設マネジメントの技術者としての立場で、地方自治体の社会インフラ・メンテナンスの観点で以下に述べる。

1)財政の観点

 地方財政を分析すると、人口減少・高齢化に伴い、税収減・扶助費増となり、社会インフラに係る財政制約は厳しい。一方で、老朽化するインフラの安全確保と機能改善に多額の費用が必要である。全てのインフラを維持管理・更新することができないことが問題である。よって、既存施設の総量削減が課題である。

2)インフラ機能と社会的ニーズの観点

 インフラの提供する機能と社会的ニーズを分析すると、両者にかい離があることが問題である。例えば、築40年の学校施設は、現在のICT教育や少人数学習に対して、スペースや設備が不十分である。よって、変化に応じた機能の見直しが課題である。

3)メンテナンスの実施体制の観点

 メンテナンスの実施体制を分析すると、地方自治体の3割で建築・土木の技術者が居ない。特に、小規模自治体で深刻な問題である。事務職向けのメンテナンスマニュアルの整備や、民間の人材活用などによる、実施体制の強化が課題である。

(2) 最も重要と考える課題とその解決策

1)変化に応じた機能の見直し(最重要課題)

 なぜなら、社会インフラを長期に使用することが、ストック効果を最大化するが、社会的ニーズに応じた変化に対応できなければ、長期に使用することができない。本課題は、公共施設長寿命化・再編計画と立地適正化計画を合わせて推進することで遂行可能であり、かつ、高い相乗効果を期待できる。

2)まちづくりと連携した機能の見直し(解決策1)

 拠点エリアへの都市機能の誘導とインフラ機能の見直しを合わせて実施する。例えば、老朽化した学校施設の更新に合わせて、拠点エリア外の図書館や子育て施設を移転、複合化する。まちの魅力創出、住民の利便性向上のほか、公共施設の総量削減の効果も期待できる。

3)継続的なモニタリング(解決策2)

 利用状況等を継続的にモニタリングし、施設評価を行い見直しにつなげる。例えば、利用1件あたりフルコスト等の評価指標を設定し、改善の余地のある施設を抽出する。また、実態データの見える化を工夫することで、民間からのスペース有効活用策の提案を誘発する効果を期待できる。

(3) 新たに生じうるリスクとそれへの対策

1)住民不満が高まるリスク

 国土交通白書2020によると、施設の廃止や利用料金増に、住民の半数が反対している。上述の解決策は、社会インフラの戦略的なメンテナンスに効果がある反面、住民理解がないまま遂行すると、住民不満が高まるリスクを生じうる。

2)住民との合意形成・協働(対策)

 これには、住民説明会やワークショップを開催し、住民と合意形成・協働する対策を講じる。特に、施設評価では、早期の段階より実態・課題を共有し、一緒に解決策を検討する。地域コミュニティの強化と、住民主体のまちづくりを誘発する効果がある。

(4) 業務として遂行するに当たり必要となる要件

 (1)(3)を業務として遂行するに当たっては、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、次世代にわたる社会の持続性を確保しなければならない。

1)安全確保

 施設の長期使用が事故の原因となってはならない。長寿命化の判断・根拠を明確化し、メンテナンス・サイクルを着実に実行することが最優先の要件である。

2)質の向上と財政の持続性の確保

 財政の持続性を確保しなければ、諸課題を解決できない。インフラの維持管理・更新費を削減し、新規整備や機能改善の財源を確保する必要がある。このため、民間投資や官民連携を進め、コスト削減とサービスレベル向上をめざす。

3)継続的研さん

 現在、新型コロナで、人々の働き方・暮らし方が変わりつつある。私は、新しい変化へ対応した多様な活動を支える基盤としての都市づくりに貢献するため、今後も技術の研さんに励む所存である。

Ⅱ−1−1

 第二次国土形成計画(全国計画)が国土の基本構想として示す「対流促進型国土の形成」について,「対流」の概念にふれて説明せよ。また,国土の基本構想の実現に,リニア中央新幹線によるスーパー・メガリージョンの形成が,どのように資することが期待されるかを述べよ。

(1)「対流促進型国土の形成」の概要

1)「対流」の概念

 対流は、水や空気等の流体が、温度差によって動き熱が拡散し流れることである。

2)国土の基本構想

 我が国は、高度成長期及びその後の安定的な成長によって、人口増加に伴い社会インフラを整備してきた。成熟した都市とインフラを活用し、人々の働き方・暮らし方が多様化している。対流促進型国土の形成は、多様な価値観での働き方・暮らし方に対応し、多様な人々が交流することで、新たな価値の創出をめざすものである。

(2) リニア中央新幹線によるスーパー・メガリージョンの形成

1)リニア中央新幹線の効果

 リニア中央新幹線は、東京・名古屋・大阪を高速に結び、短時間での移動を実現する。さらに、地方と地方をつなげ、日帰りでの移動可能な範囲が拡大する効果がある。

2)国土形成への役割

 スーパー・メガリージョンの形成は、大都市・郊外・地方都市・田園を結び、人々の交流を促進する。さらに、Society5.0によって、リアルとバーチュアルの交流を合わせることでより高い相乗効果が期待できる。

Ⅱ−2−1

 豪雨により大規模な浸水や土砂災害の被害を受けた地方公共団体において,防災の強化のために,過去に策定した立地適正化計画における居住誘導区域を見直すこととなった。本業務の担当責任者として,下記の内容について記述せよ。

(1)居住誘導区域の見直し案(都市計画審議会から意見聴取する段階の案をいう)を作成するために,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点,工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1) 調査、検討すべき事項とその内容

 立地適正化計画は、都市の将来像を示し、防災はもとより、持続可能な都市づくりを行うため、マクロ・ミクロの多面的な観点で調査、検討すべきである。

1)マクロ(全市)的な観点

 マクロ(全市)的な観点からの調査事項を示す。

・人口、財政、産業、土地利用等

・災害の種類ごとの範囲、被害想定

・公共交通ネットワーク

・公共施設、避難場所の配置等

これらの調査に基づき、防災指針を検討する。

2)ミクロ(各地域)的な観点

 ミクロ(各地域)的な観点として、人口、被害想定、避難場所の能力(収容人員、防災設備等)を調査する。また、財政負担と改善効果を検討するため、被害額、公共施設の改修費、又は災害危険エリアの住民の移転補助金を算定する。

(2) 業務を進める手順、留意点、工夫点

1)上位・関連計画との整合

 まず、居住誘導区域の見直しは、まちづくりに大きな影響を及ぼすため、総合計画等の上位・関連計画との整合に留意すべきである。上位・関連計画と整合が取れなければ、それらの見直しも検討すべきである。

2)実態・課題・見直しの方向性の明確化

 上述した調査、検討内容をGIS地図に重ね合わせ、見える化の工夫を施す。例えば、スプロール化し人口が増加するエリアと、土砂災害の危険エリアが重複している課題を明らかにする。関係者との認識の共有と、改善効果の見える化に有効である。

3)継続的なモニタリング

 計画を見直す効果を計測するため、評価指標の設定に留意する。例えば、災害エリアの人口減少等の指標を設定する。計画を運用し、効果がなければ見直すといった改善につなげることができる。

(3) 関係者との調整方策

1)行政庁内の横断的実施体制の構築

 居住誘導区域の見直しは大きな影響を及ぼすため、都市計画部門が主体となり、道路、公園、財政等、行政庁内横断の実施体制を構築する。特に、公共施設再編と合わせて実施することに留意する。財政負担の軽減効果が期待できる。

2)住民との合意形成・協働

 住民説明会やワークショップを開催し、住民との合意形成・協働を推進する。特に、居住誘導区域外の住民の理解が不可欠である。災害リスク情報とともに、経済的インセンティブを見える化する。

 私は、業務の担当責任者として、関係者との調整にリーダーシップを発揮し、業務をマネジメントする。さらに、地域コミュニティの強化と地域経済への波及効果をめざす。

Ⅲ−2

 近年、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取組である「グリーンインフラ」が求められている。

 グリーンインフラは、様々な状況に応じた統合的解決にアプローチする手法として有効であり、まちづくりの様々な場面で活用することが想定される。

(1)上記のグリーンインフラを活用しうる場面を挙げて、まちづくりを行う際の課題を技術者としての立場で多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対するグリーンインフラによる解決策を複数示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への解決策を示せ。

(1) グリーンインフラを活用したまちづくりの課題

 都市計画の技術者としての立場で、グリーンインフラとしての公園・緑地等を活用する観点で以下に述べる。

1)自然的環境保全の観点

 公園・緑地等を自然的環境の観点で分析すると、生物の生息・生育地としての役割がある。緑と水面は、その蒸発散作用によりヒートアイランド現象を緩和し、都市環境の改善に活用できる。都市化の進展により、緑の減少、孤立化が問題である。省エネ、低炭素化、及び生物多様性確保のために緑の充実が必要である。よって、エコロジカル・ネットワークの形成が課題である。

2)防災機能の観点

 公園・緑地等を防災機能の観点で分析すると、都市の大規模火災の延焼防止、防災備蓄、避難場所、及び復旧の拠点として活用できる。ひん発・激甚化する自然災害へ対応した防災機能の強化が問題である。よって、緑の防災機能の充実が課題である。

3)市民活動の場の観点

 公園・緑地等を市民活動の場の観点で分析すると、憩い、レクリエーション等の多様な活動の場として活用できる。しかし、既存の緑地等の機能と社会的ニーズがかい離している問題がある。よって、ニーズの変化に対応した機能の見直しが課題である。

(2) 最も重要と考える課題とその解決策

1)エコロジカル・ネットワークの形成(最重要課題)

 なぜなら、エコロジカル・ネットワークは、グリーンインフラの多様な機能を最大化できるため高い効果が期待できる。コンパクト・プラス・ネットワークの推進と合わせて遂行可能である。

2)都市のコンパクト化による郊外の緑地等の充実(解決策1)

 人口減少に伴い、生活に必要な都市機能を維持する目的で都市のコンパクト化を推進している。これにより、居住誘導区域外で、緑地等が確保できる余地が生まれている。例えば、田園住居地域を導入し、都市化を抑制し営農環境を確保しつつ、自然的環境を創出・保全する。

 里山等の周囲に農地等の緑地を緩しょう帯として設け、エコロジカル・ネットワークの核とする。

3)道路・鉄道・河川等によるネットワーク化(解決策2)

 都市の内部では、空閑地や空き家が発生している。まちの魅力創出と都市環境の改善のため、公園・緑地等の整備を進める。これらを、道路・鉄道・河川等によるネットワークで結び、緑の回廊とする。例えば、LRTの鉄軌道を芝生化する。

緑の回廊は、風の通り道ともなり都市気象の改善効果も期待できる。

(3) 波及効果と懸念事項への対応策

1)良好な都市景観の形成(波及効果)

 上述の解決策を実行することで、良好な都市景観の形成への波及効果が期待できる。景観は、都市及びその周辺環境と、そこで営まれる人々の活動によって形成される。良好な景観は、定住促進、産業振興、観光客の増加をもたらし、住民の景観意識のさらなる向上、まちの魅力向上という好循環を生む。SDGsの11番、「持続可能な都市づくり」につながる。

2)区域内外の行政サービス格差(懸念事項1)

 都市のコンパクト化によって、居住誘導区域の内外で行政サービスの格差が生じ、住民不満が高まる懸念がある。これには、区域外の住民へのきめ細かな対策を講じる。例えば、公共交通空白エリアにデマンド交通を導入し、ニーズに応じて運行する。

3)自然災害の発生リスク(懸念事項2)

 ひとたび大規模な自然災害が発生すると、都市特有の被害が拡大するリスクが懸念される。これには、市街地再整備により対策を講じる。建築物の不燃化・耐震化、道路の拡幅等を行い、防災・減災性を高める。省エネ、バリアフリーの面でも有効である。

 私は、都市計画の技術者として、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考え、地球環境保全等、社会の持続性の確保に貢献するため、今後も技術の研さんに励む所存である。

R1年 機械部門、熱・動力エネルギー機器の答案について添削致しました。 20210114

答案の一覧>

この答案
についての講評

 この過去問答案の答案Ⅰの評価はBという残念な結果だったということです。しかも7年挑戦されているにもかかわらず克服できないでいらっしゃったそうです。大事なことは機械部門、熱・動力エネルギー機器の技術応用で解決策を示すことでが、しかし、機械部門以外の技術に発散しているようです。しかし、それぞれ改善点は見えていますのでコメントいたします。ここではB、CをAにするにはどうするか。AをAのまま維持するにはどうすべきかを申し上げます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、この指導によって誰でも改善可能です。このような惜しい答案の方には、是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(31分41秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 2018年7月に発表されたエネルギー基本計画の中では, 2030年に向けた政策対応の1つとして,「徹底した省エネルギー社会の実現」が取り上げられており,業務・家庭部門における省エネルギーの強化,運輸部門における多様な省エネルギー対策の推進,産業部門等における省エネルギーの加速,について記述されている。我が国のエネルギー消費効率は1970年代の石油危機以降,官民の努力により4割改善し,世界的にも最高水準にある。石油危機を契機として1979年に制定された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」では,各部門においてエネルギーの使用が多い事業者に対し,毎年度,省エネルギー対策の取組状況やエネルギー消費効率の改善状況を政府に報告することを義務付けるなど,省エネルギーの取組を促す枠組みを構築してきた。また, 2013年に省エネ法が改正され, 2014年4月から需要サイドにおける電力需要の平準化に資する取組を省エネルギーの評価において勘案する措置が講じられるようになった。このような社会の状況を考慮して,以下の問いに答えよ。

(1)徹底した省エネルギー社会の実現に向けて,あなたの専門分野だけでなく機械技術全体にわたる多面的な観点から,業務・家庭,運輸,産業のうち,2つの部門を選んで今後取組むべき技術課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)上記すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

(4)業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

徹底した省エネルギー社会の実現

「業務・家庭」と「産業」ですから課題は同じになりません。

(1)業務・産業部門における徹底した省エネルギー社会実現に向けた課題

業務・産業部門において、徹底した省エネルギー社会を実現するためには、生産性向上が必須であり、以下にその課題を示す

■大雑把な話にならないようにしましょう。

(1-1)団塊の世代のベテラン社員引退による生産能力の低下

 団塊の世代が引退する時代となっている。一方、バブル崩壊後の雇用規制による中間層が極端に少ない社員構成のなか、会社の生産能力は低下している。

■省エネ社会の実現に向けて、機械・動力エネ技術士にふさわしい課題になるようにしましょう。

(1-2)若手社員の育成

 ゆとり教育のなかで育った若手社員を、いかに効率的に教育するかが課題である。

(1-3)総労働時間の抑制

 これまでは長時間労働により製品・成果品の納期を遵守していた感は否めないが、働き方改革による総労働時間が抑制されている昨今は、長時間労働による納期遵守が難しくなっていきている。

(1-4)デジタル技術の活用

 AI、IoT、データサイエンス等のIT技術をはじめとした専門家が必要となる。また、既存業務や既存作業を単独の技術を用いて改善することは難しく、異分野との橋渡しとなる工学人材が必要である。

(2)最も重要な課題と解決策

最も重要な課題に「(1-4)デジタル技術の活用」を挙げ、その解決策を以下に示す。

(2-1)デジタル人材の確保

 AI、IoT、データサイエンスなどIT技術を含む専門家を中途採用などにより迎えたり、専門の派けん会社を通じて紹介してもらうことによりデジタル人材を確保する。

■一般の見識の解答に留まっています。機械部門・動力エネ科目と関係がある内容を提案しましょう。

(2-2)デジタル人材の育成

 特定の社員を抜てきし、専門の講習等を受講させることでデジタル人材を育成する。

(2-3)ハードウエアソフトウエアの環境の整備

 (2-1)、(2-2)の他、デジタル技術活用のためには、高性能なコンピュータやソフトウエアの開発が必要であるため、ハードウエア、ソフトウエアの環境を整備する。

(3)波及効果と懸案事項への対応策

 解決策を実行した上で生じる波及効果と懸案事項への対応策を以下に示す。

(3-1)波及効果

(3-1-1)暗黙知から形式知への転換による標準化

 デジタル技術を用いて既存業務や既存作業を改善する際、これまで注目されなかった業務・作業が見える化される。これにより、暗黙知から形式知への転換が図られ、標準化が易容になる。

(3-1-2)全体最適化

 これまでは部所ごとの個別最適が主だったが、デジタル技術の活用は全社大で対応する必要があり、会社全体の全体最適化が可能となる。

(3-2)懸案事項への対応策

(3-2-1)デジタル人材の流出

 デジタル人材は引く手あまたであり、人材の流出が懸案である。この対応策として、しょぐうや人事制度の抜本的な見直しが挙げられる。

(3-2-2)データの持ち出し

 引き抜かれたデジタル人材が、機密情報を持ち逃げすることも懸案である。この対応策として、簡単に持ち出せないように社内システムを構築する必要がある。

(4)業務遂行において必要な要件

 機密情報を含む情報漏洩をしないため、情報管理の徹底を行う。

また、SDGs(持続可能な開発目標)では温室効果ガス排出量削減を目指しており、デジタル技術の活用によりCO2排出量が増加しないことを確認する必要がある

本講座ではこのような細かい対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−1

 蒸気圧縮式冷凍サイクルの単段冷凍サイクルの各機器の構成と作動原理を説明するとともに,理論冷凍成績係数を比エンタルピーhを用いて示せ。

冷凍サイクルの機器構成・作動原理・成績係数

<冷凍サイクルの機器構成・作動原理>

蒸気圧縮式冷凍サイクルの単段冷凍サイクルの各機器の構成と作動原理を、図1、図2とともに以下に示す。

図1 機器構成

図2 P-h線図

①→②:フロン等の冷媒が圧縮機により圧縮され、高温高圧となる。

②→③:高温高圧の冷媒が凝縮器により凝縮し、高温側に熱Q出を排出する。

③→④:膨張弁により冷媒が膨張し、低温低圧になる。

④→①:低温低圧の冷媒が蒸発器により蒸発する際、低温側から熱Q入を奪う。以上①〜④を繰り返すことで、低温側から高温側へ熱をくみ上げている。

<理論冷凍成績係数>

 図2の①〜④での比エンタルピーをh1〜h4とすると、理論冷凍成績係数(COP)は以下で示される。

COP=(h1-h4)/(h2-h1)

■説明がやや冗長になっています。

それぞれ見識が十分かどうかを確かめるための要求であって、詳しい解説は不要になります。

ここは、主戦場ではないので楽に考えて力を温存すると宜しいでしょう。

蒸気圧縮式冷凍サイクルの単段冷凍サイクルの各機器の構成

作動原理の説明

理論冷凍成績係数を比エンタルピーhを用いて示す。

これら3つに端的に応えれば良い解答になります。

Ⅱ−2−1

  近年,非常時のエネルギー供給の確保やエネルギーの効率的利用の観点から,分散型エネルギーの導入が求められている。あなたが,地域に賦存する再生可能エネルギー及びコージェネレーションシステムを活用した,分散型エネルギーシステムによる地域向け熱電供給事業を検討する技術責任者に任命されたと想定し,下記の内容について記述せよ。

(1)分散型エネルギーの概念及び代表的機器構成を述べた上で,導入に当たって検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順とその際に留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

分散型エネルギーシステムの熱電併給

(1)分散型エネルギーシステムの概念・代表的機器構成・検討事項

 現在の日本は、100万kWの原子力発電所や50万kWの火力発電所等により一括して発電し、電力系統により配電する集中型である。これに対し、分散型エネルギーシステムは、比較的小規模なコジェネ等を地域内に複数台設置し、地産地消を促す概念である。

 機器構成を以下に示す。

・機器名:都市ガス焚ガスエンジンコジェネシステム

・機器構成:ガスエンジン、排熱回収ボイ

■任意に概念を設定して、提案するという性格の問題になってしまっています。

客観的に現状はどうかということを前提に考えてみましょう。

この問題の解説をご覧ください。

 検討すべき事項を以下に示す。

①熱電併給設備導入施設の設備構成を把握・検討する。

②熱電併給設備導入施設の電気・熱需要を検討する。

③熱電併給設備の設置スペースを検討する。

④熱電併給設備の新設に必要な各種法令を検討する。

この答案では1の課題はともかく、2の検討、3の調整が評価されたのだと思います。

今一度、冷静に解答を考えてみると良いでしょう。

(2)業務を進める手順

 業務を進める手順を以下に示す。

(2-1)コジェネの設備容量の検討

 施設の電気・熱需要から、時間負荷、日負荷、月負荷、年負荷を把握するほか、負荷の時間変動や季節変動をふまえたうえで、コジェネ設備の容量を検討する。

(2-2)電気設備の設計

 電気設備の設計基準にもとづき、保護システムを含む電気設備の設計を行う。

(2-3)排熱の設計

 コジェネからは電気のほか、高温の温水が排熱として発生する。この排熱を利用する設備の選定および排熱利用の優先順位を検討する。熱は、空調設備に利用した後給湯設備に利用する等、熱のカスケード利用を行うことでコジェネの総合効率を向上させることができる。

(2-4)料金体系の整備

 コジェネで都市ガスを使用する場合、コジェネを導入していない一般の契約と比べて安価な料金体系であることが多いため、ガス契約の見直しを行う。

(3)調整方策

 業務を効率的、効果的に進めるための調整方策を以下に示す。

(3-1)コジェネの運用方法の調整

 一般に、夜間は電気・ガス需要が少ないため、夜間のコジェネ停止を含む運用方法の調整を行う。

(3-2)ネルギー安定供給についての調整

 コジェネが停止した際にエネルギー供給が途絶えないよう、コジェネの複数台設置、外部電力の購入等を調整する。

また、メンテナンスは、コジェネの突発故障を含めたメンテナンス契約とするよう調整する。

■この解説資料です。

近年、非常時のエネルギー供給の確保やエネルギーの効率的利用の観点から、分散型エネルギーの導入が求められている。つまりこんな具合にです。

地域に賦存する再生可能エネルギー及びコージェネレーションシステムの図

練馬区基本目標より

あなたは、これらを活用した、地域向け熱電供給事業の技術責任者に任命された。

  • 分散型エネルギーの概念
  • 代表的機器構成                          を述べよ。
kikaiR2_2-1.jpg

導入に当たって検討すべき事項は。

・分散型エネルギーの概念及び代表的機器構成

 公共施設や大規模建築に付属して、市内に分散して建設され、電気と熱または電気のみを供給している。機器構成はエンジン発電機かボイラー(発電)、または太陽光発電が多い。

・導入に当たって検討すべき事項

電気も熱も検討事項は、供給路と蓄電・蓄熱、需給バランス制御など。

Ⅲ−2

 情報化社会の進展に伴い,日本をはじめ世界ではIoT, AI, 5G通信やスマートフォンに代表されるデジタル技術,高速データ通信技術やデジタル利用機器による新しいサービスが次々と生まれ,自動運転技術を用いたモビリディサービスなど,更なる拡大が期待されている。これらの技術やサービスを支える社会インフラの1つがデータセンタであり,温度管理を必要とするデバイスが大量の電力を消費することから,その冷却技術とシステム全体の省エネ技術も重要な技術要素となっている。また,扱うデータ量の増加とともにサーバー1台当たりのデータ処理量も増加している。このような社会状況と背景を踏まえ,技術者として以下の問いに答えよ。

(1)今後のデータセンタ設計に当たって留意すべき技術的事項について,熱・動カエネルギ一分野の技術者の立場で,多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

データセンタの設計

(1)データセンタ設計における課題

 データセンタ設計における課題を以下に示す。

(1-1)信頼性の向上

 データセンタは、大地震、津波、落雷、ゲリラ豪雨を含む降雨、降雪などの自然災害に加え、テロなどの人為的災害においてもサーバ等を停止してはならない。

■施設、事業者の課題になっています。技術士としてこの答案の主題を提案しましょう。

 (1-2)省エネルギーの推進

 データセンタではサーバの冷却により大量のエネルギーを消費しており、省エネルギーの推進が課題である。

■間違いではありませんが、常識的に留まっています。答えに相当するには、もっと突っ込んだ専門家の議論にしましょう。

 (1-3)再生可能エネルギーの活用

 (1-2)に加え、資源がこかつしない再生可能エネルギーの活用も課題となる

■有効ではありますが、手段の一つに留まっています。ここで議論する話を提案しましょう。

(1-4)デジタル技術活用によるデータ需要増によるデータセンタ設備寸法の長大化

 サーバ1台あたりのデータ処理量は増加しているものの、デジタル技術活用によるデータ需要増により、データセンタの設備寸法長大化が発生している。

■必要ではありますが、この答案の主題ではありません。

(1-5)各種法令への対応

 データセンタの設計には、消防法など各種法令を遵守する必要がある。

■一般的な内容に留まっています。技術士としてここで議論すべきテーマを挙げましょう。

(2) 最も重要と考える課題と解決策

 最も重要と考える課題に「(1-2)省エネルギーの推進」を挙げ、以下にその解決策を示す。

■2はいずれも専門的内容で結構です。細かいことは全然気にすることはありません。大勢に影響しません。

(2-1)サーバ排気排出先とサーバ冷気吸気口の区分け(アイルキャッピング)

サーバの排気と空調冷気がサーバ冷気吸気口の前に混ざると、空調冷気の温度が上昇し、サーバの効率的な冷却ができないことに加え、空調搬送動力が増加してしまう。このため、アイルキャッピングによりサーバ排気排出先と空調冷気が混ざらないようにする。

アイルキャッピングもHP、FCも経験や知識からの単発的な提案となっています。

■単にアイルキャッピングという1つの形式を挙げるのではなく、熱効率を上げるための気流方式の形式として、体系的に提案すると良いでしょう。

 (2-2)ヒートパープ(HP)の設置

 サーバの熱は主に半導体から発生している。ここに、作動媒体により効果的な徐冷が可能となるHPを設置する。なお、HPの冷熱側にヒートシンクを設け、既設空調で冷却することで、追加費用なしでさらなる効果的な冷却が行える。

(2-3)フリークーリングの導入

 外気温の低い中間期や冬季に、空調機器熱源の圧縮機を使用せず、既設冷却塔を用いて冷却するフリークーリングが有効である。なお、類似技術で外気冷房があるが、これは外気を直接データセンタ室内に取り込むものである。室内は静電気、結露が起こらないよう湿度管理をしているほか、粉じんをサーバが吸いこむことによる故障を防ぐため粉塵管理がされており、外気冷房は不向きである。の点、フリークーリングは空調の給排気を循還させているため、温湿度管理および粉じん管理が容易である

「粉塵がない」ことはフリークーリングの常識であり、言及する必要のないことです。

■留意点としては、もっと必須なことについて提案しましょう。

(3)波及効果と懸案事項への対応策

(3-1)波及効果

 省エネルギーの推進により、SDGs(持続可能な開発目標)で目指す温室効果ガス排出抑制に寄与する。また、COP21パリ協定採択により世界的な温室効果ガス排出量削減の需要があるなか、元来化石燃料等の資源に乏しい日本における省エネルギー技術は、世界的に優れている。このため、省エネルギーを推進したデータセンタは世界的な需要があると考えられ、世界的な展開が可能であると私は考える

■間違いではありませんが、やや話が飛んでいるようです。2の提案について地に足の着いた評価をしましょう。

思いは不要なので、専門家としての提案を述べるようにしましょう。

CO2排出をしたくない海外への展開

(3-2)懸案事項への対応策

 計当初は最適だったものが、後の調査、法改正、技術革新などでちんぷ化するおそれがある。この対応策として、改善策を複数案出したうえで比較・検討・評価し、最適な案を選択する。また、比較検討の検討事項は社内ノウハウとして蓄積し、PDCAを回すことでより良い設計を行っていきたい。 以上

■2の提案とは直接は関係のない一般論に留まっています。

「間違いではない」と考えるかもしれませんが、「この答案の解答ではない」ととらえられますので要注意です。

R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210114

答案の一覧>

この答案についての講評

 試験の敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。この答案を書かれた方は、6年連続2次試験不合格されたとのことで、その原因を究明するため答案を拝見いたしました。何がいけないか一言で申し上げますと、技術士としての「技術応用」、その提案が不足しています。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(21分17秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。

 こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.メンテナンスを推進する上での課題

1-1.老朽化する施設が多いこと

 2033年度に建設後50年以上経過する施設は、道路橋では約63%、河川管理施設では約62%と見込まれている。

■老朽化施設が多いこと自体は自明なことであるので、ここで求められている課題を提案しましょう。

日本の骨格をなす首都高速道路や東海道新幹線も建設後50年以上が経過している。高度経済成長期に建設された施設では川砂が不足し海砂を用いている施設もあり、塩害で施設の老朽化も著しい。

■課題とは、ではどうやって解決するか、技術士の視点での提案です。

例 維持管理の省力化、予防保全による長寿命化・コストダウンなど

1-2.予算が不足すること

 国土交通省所管のインフラ施設の維持更新費は2018年度には約5.2兆円であるが、事後保全を続けた場合30年後の2048年には約12.3兆円に達すると試算されている。少子高齢化が進行する日本では、維持更新費の予算確保が難しい。

■1-2,1-3も同じ制約事項になっています。技術者としての視点、考察を提案しましょう。

行政のお仕事での苦労が表れてしまったようです。

1-3.技術者・労働者の不足

 少子高齢化により、技術者・労働者の確保が難しくなってきている。2020年からの20年後には全産業平均で1〜2割の労働者の減とされているが、建設産業においては約4割減と試算されている。また建設産業の就労者は全産業平均と比べ55歳以上が約35%と約5%高く、29歳以下が約11%と約5%低い。

2.技術者・労働者不足の課題に対する解決策

2-1.週休二日の推進

 建設業は休みが少ないことが離職率の多さにも繋がっており、建設業全体として労働者確保を行う必要がある。そのために業界全体として週休2日を推進する必要がある。(働き方改革)

■労者を増やすことは可能ですが、ただし維持管理に直結したものではありません。答えは必要十分なものにしましょう。

維持管理と週休は直接は関係性がありません。2-3も同じ。

解決策の減点が結果に響いています。

2-2.生産性の向上

 測量から調査、設計、施工、維持管理全般にわたりICTを全面的に使用するI−Constructionを推進し、人手不足を上回る生産性向上へと繋げる。

○  ただし、新築のICTと維持管理のICTでは何が違いますか。

2-3.建設キャリアアップシステムの活用

 労働者の処遇改善につなげるために、建設キャリアアップシステムを導入し、労働者が経験や能力に応じた処遇を受けられるよう、対応する。

3.解決策に共通して生じるリスクとその解決策

 週休2日やI−Constructionの推進は技術力の低下が懸念され、また建設キャリアアップシステムの推進についても不正登録により技術力の低下が懸念されるため、技術力の伝承や不正対策を行う必要がある。

4.(1)〜(3)の業務を遂行する要件

4-1.技術者倫理

法令順守は技術士資格とは関係ない前提事項です。 技術士のあるなしにかかわらず 必ず遵守しなければならない事項であって、 問題の答えとして 技術士が 技術者が倫理を高めるために 選択的に行うことではありません。ですので答えとしてふさわしくにありません。

 (1)〜(3)の業務を遂行する上での技術者倫理の観点では、技術者として法律や基準に対して公正に業務を行う必要がある。

4-2.社会の持続可能性

 (1)〜(3)の業務を遂行する上での社会の持続可能性の観点では、無理のない範囲で行う必要がある。

■「無理のない範囲で行う」は、社会の持続可能性について、社業遂行の障害となる社外奉仕活動だと考えていると誤解され、社会の持続性などに会社が協力すると、経済的負担となって企業収益が損なわれるから制限すべきだと読み取れてしまいます。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−1

河川改修により確保された流下能力を維持するための河道流下断面の維持管理について、その手順を説明するとともに、河川改修後に低下した流下能力を回復させる対策を検討する際の技術的留意点を2つ以上述べよ。

1.河道流下断面の維持管理の手順

 日常的な河川巡視や出水後の測量により、土砂堆積や洗堀による河道の変化、堤防の劣化などについてRimadisの河川カルテに継続的に登録することでモニタリングを行い、河道の流下能力が低下した箇所を把握し、必要に応じ維持掘削などを行う。

2.流下能力回復対策の検討

2-1.再堆積しにくい掘削方法

 維持掘削実施箇所のみならず、その上下流の河道状況、線形を確認し、再堆積しにくい維持掘削方法を検討する。

■上下流の河道状況、線形確認とは、一般的な手続きです。

そのことをやったとして、どうやって再堆積させないか具体的な提案が求められいます。

2-2.環境に配慮した掘削方法

 魚類の生息場所となる瀬・淵を極力残す掘削方法とし、河岸部においては植物や水生生物に配慮した掘削方法となるよう、検討する。

■魚類、植物、水生生物への配慮は一般的に必要な手続きです。

しかし、再堆積とつながるような答えにしましょう。

Ⅱ−2−1

 近年、毎年のように発生する大規模な水害・土砂災害において、逃げ遅れによる犠牲者が数多く発生している状況を踏まえると、住民の適切な行動を促し避難の実効性を高めることが極めて重要となる。あなたが台風襲来時の水害・土砂災害に対する市町村における警戒避難体制の整備にかかる業務を担当することとなった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、下記の内容について記述せよ。

(1)調査・検討すべき事項とその内容について、説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.河川分野において調査・検討すべき事項・内容

 近年、気候変動の影響により平成30年7月西日本豪雨や令和元年東日本台風など、大規模な水害が毎年のように発生している。そのような中、水害時における適切な警戒避難体制を整備するにあたり、市町村職員として調査・検討すべき事項としては洪水ハザードマップの作成により、適切な避難経路や避難場所の設定である。

l  災害で逃げ遅れによる犠牲者が多い。

l  住民に警戒してもらい、避難の実効性を高める。

l  市町村の警戒避難体制を私が整備する。

この3つを命ぜられたとしたら技術士としての提案はありませんか。

洪水ハザードマップは既に作成されているし、避難経路や避難場所は一応策定されていますので、もっと具体的に踏み込んだ提案が必要です。

■調査、検討事項としては甘いです。技術者としての提案、視点が見えるようにしましょう。

2.留意すべき点、工夫を要する点

 堤防破堤による氾濫形態としては、流下型、拡散型、貯留型に分けられるため、どのような氾濫型であるのかを洪水ハザードマップに記載する。貯留型氾濫であれば浸水深が3m以下で垂直避難が可能であっても長時間の浸水となることから、平面避難を行うこととする。また、一人一人の居住形態や避難方法が違うため、個人毎のマイハザードマップを作成し、個人毎の避難経路を作成することも重要である。

このような氾濫形態ごとの対策がわかればよいという話ではありません。

あくまでも、住民が警戒するように導き、災害で早期に避難し、犠牲者がなくなる。そのような警戒避難体制を整備するための留意点、工夫点です。

3.関係者との調整方策

 マイハザードマップの作成にあたっては市町村職員だけで行わずに、河川管理者である国や都道府県の職員と調整し、一緒に勉強会や避難訓練を実施する。また河川事務所長が行うホットラインは首長だけでなく、市町村の実務者レベルにも伝わるような対応をお願いする。またダムの放流通知については、放流量の増加だけではなく、ダムの放流量に応じた市町村毎の水位上昇の一覧表を提供してもらうことも必要である。

■「勉強会、お願いする、一覧表を提供してもらう・・・」関係者との調整方策とは、こういうことではなく、

問2に書いた業務を効率的に進める。そのための関係者との調整方策です。

次の3要件を同時に満たすようにしましょう。

1.「調整」の言葉の意味は、過剰と不足を移して均して最適化すること 例:スピード調整、年末調整、与党の党内調整

既にあるものを移すだけで、新たに資金投入はしません。

2. 私は河川砂防のプロマネなので、関係者を指導して対して納得しやすい理想的プランを申し入れる。すなわち、指導力によって、関係者の行動変容を促し、結果として全体プロジェクト取りまとめる。(お願いや自身の頑張りにならないように注意しましょう。)

3. 建設・河川砂防の技術応用による技術士らしい解決策の提案がある。(連絡係やスケジュール管理など、建設の事務担当でもできることにならないように注意しましょう。)

Ⅲ−2

 気候変動の進展に伴い、海面水位の上昇などによる海岸浸食の更なる進行や山間部からの土砂流出の変化が懸念される中、流砂系全体として持続可能な土砂管理の目標について検討し、総合的な土砂管理の取組を推進することが求められている。

(1)国土を保全するため、流砂系全体として持続可能な土砂管理を実現するに当たって、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.持続可能な土砂管理を実施するための課題

 山間部から海域に至るまでの土砂移動を流砂系というが、砂防ダムやダムにより土砂が堰止められ、海域まで土砂が至らずに下流河川では河床のアーマリング化による魚類の生息環境の減少や、河床低下による河川構造物の基礎への影響、また海域では砂浜の後退などの減少がみられる。流砂系全体として持続可能な土砂管理を推進するうえでの課題を下記に示す。

問題の追認、解釈。しかし、課題については述べられていません。

求められているのは、下記になります。

  •   気候変動による海面上昇によって海岸浸食が進行。山間部からの土砂流出している。
  •   流砂系全体で持続可能な土砂管理とする
  •   国土を保全する。
  •   技術者として多面的に課題を抽出する。
  •   課題抽出だけでなく、その観点(理由、根拠)を示す。 

1-1.山地部における土砂の捕捉

 山地部においては土砂災害を防ぐために砂防堰堤が造られてきたが、従来の不透過型砂防堰堤は土砂をためることにより沢が安定し、土石流の発生を防いできた。またダムにおいても土砂を補足しており、不透過型砂防堰堤やダムにより下流河川への土砂供給が低下する要因となっている。

■従来の砂防堰堤、ダムの問題点を挙げるにとどまっています。

1-2.海岸部における土砂の補足

 海岸部においては漁港などの整備により、海流の上流側で土砂を補足し、その下流側へは土砂が供給されず、砂浜の後退現象などがみられる。

■従来の漁港の問題点を挙げるにとどまっています。

2.山地部土砂捕捉の解決策

2-1.透過型砂防堰堤への改良・改築

 従来の不透過型砂防堰堤は土砂及び巨礫を補足するため、砂防堰堤を新設する場合は鋼管格子による透過型砂防堰堤とし、また既設不透過型砂防堰堤の中央部を鋼管格子に改良し、巨礫は補足するが土砂は下流へ流下させるようにする。

■個別の施設方式の提案では網羅性に欠けるので弱いです。

2-2.ダムにおける土砂対策

 ダムの堆砂対策としては、ダム末端の流入部に貯砂ダムを整備し土砂を捕捉し、バックホウ及びダンプトラックにより下流河川へ土砂を還元する。またダム堤体を改良し土砂吐きを設置したり、水位差を利用したサイフォンの原理を応用し、ダム下部の堆積土砂を下流へ流すなどの対応も考えられる。

3.新たに生じうるリスクと、それへの対策

 砂防堰堤を透過型にすることで、その下流にあるダムへの流入土砂が多くなることが予想される。またダムから下流河川への土砂供給を増やすことで、下流での土砂堆積が増えたり、現状の河川環境が変化し魚類等の生態系に悪影響を及ぼすことも懸念される。今後の気象変動により河川での浮遊砂が増加することも懸念されており、

ダム下流への土砂供給については、急激な河川環境による生態系への影響を極力低減させるために、しっかりとモニタリングを行いながら実施する必要がある。

R2年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案について添削致しました。 20210114

答案の一覧>

この答案
についての講評

この試験答案ⅠⅡⅢの評価はABCで、Ⅱ+ⅢはBと惜しい評価でした。その理由としてⅢで「受注者の責務として適正な額の請負金額を定める下請契約の締結、技術者・技能者の労働条件の改善等」という品確法の基本について具体的な提案ができていなかったことがあげられます。これがC評価の原因と思われます。ご経験から判断しますと、本来Ⅲ-1を選択すべきところをⅢ-2選択されて、問題の選択を誤った可能性もあります。

 敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。この問題のテーマ品確法は建設の法務にかかわる難解な問題でした。技術士としての「技術応用」するには経験業務から選ぶ必要があります。おそらくこの方もⅢ-2ではなくⅢ-1(担い手確保)を選択されたら具体的に提案が可能だったかと思います。このような対応力は練習を重ねていけば、身につけられます。実際、講座の受講生様でそのように問題を変えられて正解されている方もいらっしゃいます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(12分54秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)  社会・経済情勢が変化する中で、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2) (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通した新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

 ■この分野は見識が十分なご様子であり、申し分ありません。

(1)予防保全による長寿命化

 高度経済成長期に整備した社会インフラは、一斉に更新の時期を向かえている。一方、財政状況の厳しい地方自治体は、全てに事後保全を実施する余裕も時間がない。よって、適切なメンテナンスサイクルの構築によってライフサイクルコスト(LCC)を低減し、予防保全によって長寿命化を図ることが課題である。

(2)維持管理の担い手確保と育成

 建設産業の就業者数は、55歳以下が35.3%であり、10年後には大半が引退する。29歳以下は11.6%であって、厳しい雇用・労働環境の影響で、新規入職者は増加しておらず、離職者の数も多い。建設産業は、地方の守り手であって、維持管理の担い手を確保し育成するかが課題である。

■担い手問題はメンテナンスと直接の関係がないので要注意です。

企業化や民間活力利用ならOKです。

(3)ICT化の推進

 補修工事は、高所作業も多く、足場が必要であり、また、図面が無い場合や、過去の補修記録がない場合もある。ドローンによる点検結果を、データベース化し、これらがビックデータ化する事で、AIによる診断が可能になり、技術者の判断のサポート資料として利用できる。よって、維持管理のICT技術の推進が課題である。

2.最も重要な課題とその解決策

 最適なインフラメンテナンスを構築することで、維持管理の平準化もでき、予防保全による長寿命化を図ることが最も重要な課題である。以下に解決を記載。

(1)アセットマネジメントの適用

 以下のマネジメントを実施することで、社会インフラの資産化を図る。

①日常マネジメント:ボランティアによる道路清掃や簡易な道路補修を実施。

②管理マネジメント:予防保全の計画を立案。

③経営的マネジメント:社会インフラのストック効果を数値化して評価し、効果の高いものを選択し、予算を集中させる。(選択と集中)

(2)インフラメンテナンス2.0の活用

 点検、診断、補修補強、記録の各データを、国土データプラットフォームに登録し、ビックデータ化させ、AIによる診断を可能にする環境を整備する。そして、AIが判定したデータを、技術者の判断のサポート資料として利用する。

(3)維持管理技術の促進

①CIMの活用:調査、設計、施工、維持管理の各段階で、3Dデータを発展させ、関係者が連携する。

②設計時の配慮:設計時に維持管理時のメンテナンス性を考慮した部材や、耐久性のある部材を仕様化することで、長寿命化を図る。

3.新たなリスクとそれへの対策

(1)新たなリスク

 厳しい財政状況の地方自治体や民間企業では、これら事項を実施する初期導入費が不十分である。また、事業の開始から維持管理までの全体最適を図れる地方自治体職員の数も限られている。

■リスクとして正しくありません。初期費用、職員数も分かり易い懸念事項に留まっています。(そのようなことを技術士に聞いても試験にならないので、技術士としての提案を考えてみましょう)

(2)それへの対策

 維持管理に関わる初期導入費に関しては、一定の条件化で、補助金を支給する支援体制を整備する。また、地方自治体職員をサポートする体制で、CM契約を締結し、CMRが全体最適化を立案し、各工事関係者との調整を図る。

4.必要な要件

(1)技術者としての倫理

 維持管理の業務に際し、公共性を留意し、安全安心を最優先とする。また、業務上知り得た秘密に対しては、正当な理由がない限り、非公開とする。更に、新技術に対して、自己研鑽に励み、多分野の時術省と協業する場合は、互いを尊敬しあう。

■ここはこのような 一般的な心構えとしての 技術者倫理を述べる 場所ではなく、 問2 で挙げた解決策に対して、自らが他者に比べていかに技術者倫理を高めて行うか のための要件です。 具体的にアセットマネジメントや インフラメンテナンス、維持管理技術の促進に対してどのように取り組んでいくか、 その要件を述べるようにしましょう。

(2)社会の持続性

 維持管理による長寿命化は、SDG’sの持続可能な開発目標である。また、維持管理業務開始に際しては、自然環境と生活環境への影響を予測評価し、必要に応じて環境保全を実施しなければならない。更に、富の再配分化、地域間格差の是正を考慮して、事業を計画しなければならない。以上

■ここは一見 良さそうに見えますが しかしSDG’sについての理解が足りないようです。SDG’sとは自らの活動の保全を目指したものではなく、他者に対する貢献を意味しています。

Ⅱ−1−4

 鉄筋コンクリート構造物の劣化機構について次のうちから2つ選び、それぞれについて、劣化現象を概説せよ。また、選んだ劣化機構について、劣化を生じさせないように事前に取るべき対策を各2つ以上述べよ。

①     中性化、②塩害、③凍害、④化学的浸食、⑤アルカリシリカ反応

1.1塩害の概説

■見識としては十分です。

しかし概説が冗長です。

対策はもう少し内容がわかる説明が良いでしょう。

コンクリート中の塩化物イオンが0.3kg/m3を超えるとコンクリート中の鉄筋の不働態被膜が破損し、錆が発生する。また、発生した錆が膨張することで、コンクリートにひび割れが発生し、そのひび割れに雨水等が侵入し、さらに発錆が進行し、鉄筋の断面欠損やかぶりの剥離が発生する。

1.2事前に取るべき対策

 以下に事前に取るべき対策を記載する。①川砂利を使用、塩分の含まれた骨材は洗浄を徹底、②鉄筋にエポキシを塗布、③エコセメントを使用する場合は塩化物イオン濃度を考慮した配合、④高炉スラグやフライアッシュ等の混和材を使用、⑤表面含浸。

2.1アルカリシリカ反応の概説

 コンクリート中の水酸化アルカリと、シリカ性分を含んだ骨材とが反応し、シリカゲルが骨材の周辺に形成される。また、このシリカゲルがコンクリート中の水分を吸収することで膨張し、コンクリートにひび割れが発生する。発生したひび割れには、雨水等が侵入し、上述と同様に発錆する。

2.2事前に取るべき対策

以下に事前に取るべき対策を記載する。①シリカ反応が無の骨材を使用、④高炉スラグやフライアッシュ等の混和材を使用、⑤水分侵入の防止を図る表面被覆を実施。  

Ⅱ−2−2

    図のような地形を横断する2車線道路橋の橋脚1基(直接基礎、高さ18m)を河川区域内に建設する工事を責任者として実施することとなった。この業務には仮設の方法・内容を確定することも含まれている。なお、提内地は耕作利用されており、現場へのアクセス可能な道路は無いものとする。以上を踏まえて、以下の内容について記述せよ。

(1) 検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち工事の特性を踏まえて重要なものを2つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2) 業務の手順を述べた上で、業務の工程を管理する際に留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。

(3)業務において必要な関係者との調整事項を1つ挙げ、業務を効率的、効果的に進めるための関係との調整方策について述べよ。

1.検討すべき重要な2項目

(1)基礎下の地盤状況

 基礎を施工するに際に、河川区域内であって、堤内地は耕作利用されていたことを考慮し、地下水位の高い、粘土地盤での工事と想定し、以下ついて検討する。①地盤のデータから直接基礎とはいえ、支持層までの深さを考慮して、シートパイルを打設し、シートパイルのヒービング、盤膨れ防止対策として、薬液注入を実施して掘削を実施する。②掘削後の底盤は、盤膨れ対策として地盤改良を検討する。③電源、排水、吸水先について、調査する。

■河川区域内で行う場合に優先して検討すべきことがあるはずです。

例 河川の増水対策、仮設道路など

基礎下の地盤状況は土質基礎の設計そのものであって、施工とは別です。

(2)マスコンクリートの温度対策

 2車線道路の橋脚工事なので、マスコンクリート工事の温度対策について以下を検討する。①配合:低発熱型のセメントを採用し、高性能AE減水剤を利用することで、単位水量の低減を図(図添付)る。②製造:骨材、セメント、水を冷やし、製造後のコンクリート温度上昇の低減を図る。③運搬:直射日光がアジテータ車に直接あたらないように停車する。なお、コンクリートの打設は冬季以外を想定しているので、寒中コンクリート対策については考慮しない。④打設:打込み高さ、打設温度、打設間隔を考慮する。④養生:温度ひび割れ対策として、パイプクーリングを検討する。また、ブルーシートをかぶせることで、表面の乾燥による乾燥収縮ひび割れ防止、打設後の沈下による沈降ひび割れに対してはタンピングを検討する。

■マスコンの温度対策も、建設・鋼コンの設計の領域であって、施工とは別です。施工として優先して検討すべきことが他にあるはずです。

コンクリートの打設ならわかります。

2.業務の手順(留意、工夫)

 施工は前述の業務手順に沿って実施する。

(1)施工計画

 打設時の作業員のシフトや残業時間を調整する。また、工事用のアクセス道路のトラフィカビリティ、地下水及びポンプアップによる流水の排水先を確認する。

(2)施工

①シートパイル/薬液注入/掘削/底盤の地盤改良を実施し、シートパイル・地下水・地盤沈下の状況について、動態観測を実施する。

②フーチングの鉄筋/型枠/コンクリート打設においては、コールドジョイン及びジャンカ防止策として、打設間隔及び締固め方法を調整する。また、フーチンコンクリート打設後の埋め戻し土は、掘削土を使用。

③柱、ウエブの鉄筋/型枠/コンクリート打設

3.関係者との調整

工事業者との安全対策について以下を調整する。

①高所対策:2m以上の作業時には足場を設置し、作業板の設置、開口部の安全網の設置し、安全確認が確認されたカラーTAGが付与された足場のみを使用する。

②公衆災害:埋設物の保護対策、段丘崖に工事用のアクセスや歩道を設置しない事を調整する。 

■作業上の注意点であって、プロマネが課題遂行するための取りまとめになっていません。

Ⅲ−2

 「公共工事の品質確保の促進に関する法律」には、品質確保のために、発注者の責務として公共工事の品質確保の担い手が育成・確保されるための適正な利潤を確保することができるように予定価格を適正に定めることが、また、受注者の責務として適正な額の請負金額を定める下請契約の締結、技術者・技能者の労働条件の改善等が明記されている。また、一般社団法人日本建設業連合会からは、下請取引の適正化を図るため受注者である元請企業(元請負人)自らが発注者と適菜請負契約を締結することが不可欠であるとの方針が示されている。このような状況を踏まえて、施工計画、施工設備及び積算の技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)       担い手の育成・確保のため、元請負人(受注者)が下請負人(協力会社)と契約を締結する場合、適正な利潤を確保することができる下請契約を締結する上での改題(留意点)を、多面的な観点から抽出し、その他に内容を観点ともに示せ。

(2)       前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)       前問(2)で示した解決策に共通した新たに生じうるリスクとそれへの対応について、専門技術を踏まえて考えを示せ。

1.課題の抽出と内容の観点

(1)働き方改革による処遇改善

 建設産業の生産性は、労働集約型で屋外での単品受注生産であるため、製造業の生産性と比べて著しく低い。よって、建設技能者の労務費は増加する。一方で、案件を受注するためには、技能者の給与の削減が実施されるので、下請け契約時に、いかに働き方改革による処遇改善を評価するかが課題である。

■いずれも「受注者の責務として適正な額の請負金額を定める下請契約の締結、技術者・技能者の労働条件の改善等」とは関係が薄いです。これがC費用化の原因と思われます。

(2)外国人の採用

 少子高齢化による人口減少と厳しい雇用・労働環境の影響で建設産業の就業者は高齢化が進んでいる。一方、出入国管理法が改正され、「技能労働」による単純作業が可能になった。一方、十分な受け入れ体制が整っていない協力会社で、外国人を採用した場合に、労働災害も発生する場合もあるので、外個人の採用状況について、いかに評価するかが課題である。

■担い手不足を解消する方法は、ここでは問題外です。外国人を採用したとしても下請け契約は必要です。

(3)中小の協力会社のICT導入

 持続可能な建設産業を維持するためにも、ICT導入による生産性向上は必要である。一方、中小の協力会社は資本金が少なく、ICTの導入が遅れており、技術力が低い。よって、下請け契約時に、いかにICT建機の導入状況を評価するかが課題である。

■ICTは経営改善には寄与しますが、ここでの主題ではありません

2.最も重要な課題とその解決策

 建設産業は、地方の守り手であり、持続可能な建設産業を維持するためにも、いかに働き方改革による処遇改善を評価するかが最も重要な課題である。以下に解決策を記載する。

(1)長期労働時間の是正

①最適な工事期間の設定:人員の導入計画で、週休2日、天候、作業の準備等を含まれているかを評価する。

②施工時期の平準化:年度末に工事が集中している場合は、適正な人材が確保されているか確認する。

■主題とは無関係なテーマに発散しています。これがCの理由です。

(2)建設キャリアアップシステムの導入

 建設キャリアップシステムを導入することで、以下の事項が明確になる。①社会保険の加入状況、②保有資格、③業務経歴、④給与、⑤入退管理状況、⑥各種書類の手配状況。

(3)女性活躍の機会

以下を整備することで、出産後の復職状況を整備されているか評価する。

①女性用トイレ、更衣室、託児所手配状況。

②事務所勤務での、フレックスタイム、テレワーク、時短勤務の採用状況を評価する。

(4)ICT導入状況

 ICT建機としてマシンガイダンスやマンコントロール付きバックホウの導入状況や、3D測量による出来形管理の実施状況を評価する。

(5)

内容を忘れました。

3.新たなリスクとそれへの対策

(1)新たなリスク

 厳しい財政状況の中小の協力会社では、これらを実施する初期導入費用を捻出する余裕がない。また、これら全体最適化を図れる人材が不足している。

■リスクとして正しくありません。初期費用、職員数も分かり易い懸念事項に留まっています。(そのようなことを技術士に聞いても試験にならないことを理解し、技術士としての提案をしましょう。)

(2)それへの対策

 働き方改革に関わる初期導入費用については、一定の条件で補助金を支援する支援体制を紹介する。協力会社の社員を一定期間元請へ出向させることも、人材育成に有効である。

また、監理技術者となりうる一級土木施工技師、一級建築士、一級管理施工技術者等の資格取得を通じて時術確保も有効である。また、資格習得後は、昇給昇格をさせ、資格取得によるインセンティブを設定することも有効である。

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