H30年 建設部門、港湾及び空港(港湾)の答案について添削致しました。20210218

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この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はBBBとのことでした。その理由としてやはり問題の問2解決策の記述が不足していたように感じます。Ⅲではリスクの考え方やや違うようです。敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、このようにどこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(29分03秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.戦略的なメンテナンスを推進するための課題

1.1 予防保全への転換

 老朽化した社会資本の急増に伴い、近年、コンクリート片が落下し電車が停止する事故や岸壁エプロンが陥没し荷役中のクレーンが転倒するなどの災害も発生している、このため、従来行ってきた事後保全型の維持管理から、アセットマネジメントの考え方を取り入れた予防保全に転換し、ストック効果の維持と費用の縮減を実現す津頃が課題である。

■この1.1は良く書けています。

1.2 データベース化と情報共有

 これまでの社会資本の点検診断は、熟練技術者各々の判断基準で行い、紙資料に取りまとめ施設管理者が保管していた。しかし、従来の方法では、膨大な社会資本の維持管理の優先順位が分からず、的確なメンテナンスが不可能と考える。このため、維持管理データのデータベース化と情報共有が課題である。

1.3 社会資本の集約と改変

 我が国では超高齢化社会が進展しており、人口減少は今後も継続する。このため、社会資本が更新期を迎えた場合、同じ施設に更新するのではなく、今後の計画や地域の要請に応えた施設に集約・改変することが改題である。なぜなら、社会資本が時代の要請に応えることができなければ、国民生活の質や安全・安心が低下してしまうからである。

2.最も重要な課題と解決策

 口構造の変化に伴う税収減少で、地方自治体では技術系職員も減少している。このような状況では、地方自治体間、国や県などの上部組織と密接に連携した社会資本の維持管理が必要と考える。このため、維持管理情報のデータベース化と情報共有を最も重要と考え、以下に解決策を示

2.1 データベース化・情報共有

 維持管理計画に従い施設を定期的に点検しマニュアルの基準を用いて診断する。これを共通の様式に記入しデータベース化し、情報共有する。

■課題の内容と同じで、解決策の中身が少ないので、建設のDX技術の提案をしましょう。

2.2 CIM モデルの活用

 近年、調査・設計段階で作成したCIM モデルを施設の建設でも活用する技術が進展している。今後は、この3次元データに維持管理データも付加し、維持管理の効率化と修繕や更新期の合意形成の迅速化を図ることが有効と考える。

3.新たに生じるリスクと対策

 建設業では他の産業より高齢化が進展しており、今後10年間に1/3 の技術者が離職する。一方、老朽化した社会資本は急増するため、社会資本を維持管理する技術者が不足するリスクが生じる。

■ここは「解決策に共通して新たに生じうるリスク」です。課題と無関係なことは△です。リスクに由来した内容を提案しましょう。

3.1 生産性の向上

■細かい対策内容の説明が冗長となっています。簡潔に説明するようにしましょう。

 これまで社会資本の点検診断は、熟練技術者の目視や打音検査で行われてきたが、今後はICTやAIなどの新技術を活用し施設の点検診断の効率化を図る。具体的には、橋梁の点検にドローンで撮影した画像をAIで分析する改善や桟橋建設時に鉄筋腐食センサーを組込み、IoT技術を活用した遠隔モニタリングで省力化の改善である。この改善で、点検診断作業の安全性も向上できると考える。

3.2 女性や高齢者の活躍

建設業界は労働時間が長く高所など危険も多いため、女性の入職や高齢者の雇用延長が抑制されてきた。このため、今後は労働環境の改善と業務の適材適所で、女性や高齢者が生き々と活躍できる産業へと変革する。

4.必要となる要件

4.1 技術者としての倫理の観点

■この4.1は良く書けています。 

 予防保全での施設の維持管理では、定期的に点検を行い、劣化や損傷が軽微なうちに補修を行う。施設の点検で利用者の危険が判明したら、利用者の安全を最優先に考え、利用制限や禁止措置を行うことが要件である。

4.2 持続可能性の観点

■この4.2は良く書けています 

 老朽化社会資本の維持管理は世界共通の課題である。現在、官民学が連携して維持管理技術を開発しているが、他産業の技術も応用し技術革新し、国内の社会資本を確実に維持管理する。これを海外でも通用する技術に高度化を図り、海外の防災社会資本の維持管理も行い、現地の経済発展や防災・減災にも貢献することが要件である。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−3

 港湾におけるコンテナ取扱能力又は空港における離着陸処理能力のいずれかを選択し,その拡大方策についてハード,  ソフトの両面から合わせて3つ提案し,それぞれの方策により実現する内容と計画に当たっての複数の配慮事項を説明せよ。 ただし, 埠頭及び滑走路の新設は除く 。

1.港湾におけるコンテナ取扱能力拡大方策

 コンテナ取扱能力の拡大方策を以下に3つ提案し、実現する内容と配慮事項を説明する。

1.1 RTG の自動化・遠隔操作化

(1) 実現する内容:労働人口が減少する状況下での高効率な荷役作業の継続・作業環境の改

■大まかなので、具体的に書きましょう。

(2) 配慮事項:自動化されたRTG は正確に動作するが、外来トレーラーは人が運転するのでヒューマンエラーを起こす。このため、フェンスを設けるなどの物理的な隔離やセンサーを設置してのフェールセーフ設計などの安全面に配慮する。

1.2 外来トレーラーの事前予約化

(1) 実現する内容:トレーラー到着時間の平準化による渋滞解消・到着前の事前荷繰り

(2) 配慮事項:事前予約情報をターミナルへの入退管理にも活用する更なる効率化に配慮する

■対象が他用途になっています。港湾の技術出来ることを提案しましょう。

1.3 AIの画像認証技術を応用したダメージチェック

(1) 実現する内容:短時間化

(2) 配慮事項:開発過程の技術であるので、抜き取り調査等を実施し、正確性の確認に配慮する。

■開発途上では△なので、ある程度確立した技術を提案しましょう。

1.4 全体的な効率化  

 コンテナターミナル全体の効率化は、ガントリークレーン、構内トレーラー、RTG 、外来トレーラー各々の稼働状況を把握に配慮し、改善していくことで全体的な効率化が図れると考える。

Ⅱ−2−2

   A港 (又はA空港) において, 供用中のケーソン式係船岸又は供用中の滑走路を対象に新たに地震対策が求められ, 耐震性向上のための改良設計を行うこととなった。 あなたがこの業務を担当責任者として進めるに当たり, 港湾又は空港のいずれかを選び、下記の内容について記述せよ。              (1)調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。  (2) 業務を進める手順について, その際に留意すべき点, 工夫を要する点を含めて述べよ。  (3) 業務を効率的, 効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

■前置きの作業でなく、技術士が判断した「調査、検討すべき事項」を書きましょう。

技術士として経験的知見からコメントするのが良いでしょう。

1.調査、検討すべき事項

1.1 既存施設の点検診断

 改良設計でも新たに設定した供用期間渡って、要求性能を満足しなければならない。このため、既存施設を調査し、劣化や損傷の程度を検討する。

1.2 設計書の確認

 施設の増増や使用材料を確認するため、設計書を調査する。設計基準には1979年に液状化対策が規定された。このため築造年がこれ以降の場合、液状化対策済みである可能性が高い。

1.3 岸壁の稼働状況・背後の設備や前面の航路

 岸壁の稼働状況を調査し、荷役作業と並行しての改良工事が可能か検討する。また背後の荷役設備や前面の航路までの距離を調査し、輻輳の程度などを検討する

2.業務を進める手順

2.1 現有耐力の把握

 まず、点検診断結果から、現有耐力を把握する。近年の海上輸送の効率化のため船舶が大型化しているため、岸壁前面水深を確認し、洗堀の有無の確認も留意する

■手順と留意点を対にして述べると良いでしょう。

液状化対策のことばかりで、これがケーソン式係船岸の地震対策なのでしょうか。具体的にケーソン式係船岸に特化した手順、留意点が求められています。

2.2 工法の選定

 次に、施設利用者と荷役作業と並行して改良工事を行うか否かを決定する。工事の制約条件や土質条件などを鑑み、最適な工法を選定する。耐震性を向上させる液状化対策工法は、締固め工法、間隙水圧消散工法、地盤改良工法など多数あるが、必要とする施工スペースや適用地盤が大きく異なる。荷役作業と並行して液状化対策を行う場合、地盤改良工法のなかの薬液注入工法が省スペース工法ではあるが、事後ボーリング等を実施し施工後の品質確認に留意する。

2.3 改良設計

構造物のコンクリート強度は設計より高いことが多く、背後地盤が粘性土であれば圧密のよる強度増加が期待できる。このため、改良設計では実測値を採用する工夫で既存施設を有効活用できる。 

3.関係者との調整方策

3.1 近隣事業者との調整

■基本的な港湾工事の留意点であって、問いの「調整」答えるようにしましょう。

「2の手順を効率化するためには、業者や設計者、発注者にどう働きかけて改善しますか」という問です。

こうした難解な答えの対処法について本講座では各受講者様の経験に基づいて最適な提案が出来るようにコーチング指導しております。

 改良工事は、工事用車両の出入りや振動の発生など、近隣事業者に少なからず影響を与える。このため、計画段階で工事内容を周知し、効率的に施工時期などを調整する。

3.2 港湾管理者や海上本部との調整

 港湾工事の許認可申請は複雑である。このため、港湾管理者や海上保安部にも計画時点で、工事内容を説明し、必要な許認可申請の内容と申請時期などを確認する。この工夫で、港湾管理者や海上保安部と効果的に調整ができると考える。

Ⅲ−1

  我が国は, 平成28年に 「明日の日本を支える観光ビジョン  一世界が訪れたくなる日本へ一」 を定め, 外国人の訪日旅行の振興に精力的に取り組んでいるところである。              その中で, 国際ゲートウェイである港湾及び空港は,  ビジョンの実現に向けて大きな役割を果たしていくことが期待されている。

  (1) 訪日旅行の振興によって国民経済的便益を増大させていく上での課題を, 港湾及び空港分野の技術者として多面的な観点から抽出し, その内容を観点とともに示せ。

  (2) (1)で抽出した課題のうち最も重要であると考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3) (2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策にっいて,専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.訪日旅行の振興の港湾の課題

1.1 クルーズ船の寄港増加への対応

 近年、アジアの経済発展や海外旅行ブームに伴い、我が国へのクルーズ船の寄港がこの10年間で3 倍と急増している。我が国の港湾施設の多くは高度成長期に整備され、クルーズ船に対応した岸壁の整備は限定的である。このため、クルーズ船の寄港増加への対応が課題である。

■「対応」のみでは曖昧になるので、港湾の技術士として技術応用の提案をするようにしましょう。

1.2 魅力ある街づくり

 我が国には歴史があり、寺社仏閣や日本食など魅力的な文化がある。しかし、居住環境や物流効率などが低く、保有する魅力を活かしきれていない。このため、魅力ある街づくりが課題である。

一応、国、自治体が努めていることです。港湾の技術士としての専門的な見地から提案をするようにしましょう。

1.3 利便性の向上

■利便性はわかります。しかし、フィンテック(金融)やWIFI(情報工学)は建設・港湾の課題になりません。 

 我が国ではキャッシュレス化が普及しておらず、キャッシュレス決済が習慣となった外国人旅行客にとっては不便である。加えて、英語を始めとする外国語を理解する日本人の割合は低く、スマートフォンで観光情報を探そうとしても、無料でWIFI を利用できる環境も少ない。このため、訪日旅客のための利便性の向上が課題である。

2.最も重要な課題

■問題の前提に留まっています。一部を切り取ったら、汎用性を失うので答えとしてはマイナスになります。幅広い視点で課題を捉えるようにしましょう。 

 今後もアジアの経済発展は継続すると予想する。従って、今後も我が国へのクルーズ船の寄港も増加すると考える。このため、クルーズ船寄港増加への対応を最も重要な課題と考え、以下に解決策を示す。

2.1 クルーズ船専用岸壁の整備

 クルーズ船は、喫水が同程度の貨物運搬船と比較し、長さが長く、風圧面積も広いため、貨物専用岸壁では安全に離着船できないと懸念する。このため、クルーズ船専用岸壁を整備する。クルーズ旅客の増加に伴い、クルーズ船の大型化が進展している。クルーズ船専用岸壁を橋梁より内陸側に整備する場合は、橋梁の桁高の確認に留意する。

2.2 旅客ターミナルの整備

 これまでの貨物荷役岸壁での対応では、旅客ターミナルが無く、CIQ (税関など)に2時間程度かかり、公共交通を利用できる場所まで徒歩移動を強いられていたことも問題であった。このため、クルーズ船専用埠頭には、公共交通の交通結節点も設けた旅客ターミナルを整備する。

2.3 陸上旅客輸送の改善

 我が国の港湾周辺や都心部は慢性的に渋滞が発生し、陸上旅客輸送の効率が悪い。このため高速道路のICから港湾までの幹線道路の整備や環状道路のミッシングリンクを解消する改善で、陸上旅客輸送を効率化する。ETC2.0プローブ情報をAIで解析・抽出した渋滞原因にピンポイントで対策し、渋滞を解消させることも費用対効果が高いと考える。また、無電柱化を推進し、歩道を拡幅するなどの改善も旅行客の快適性を向上させると考える。

3.新たに生じるリスクとそれへの対策

■下記内容は前提の否定となり、本来のリスクではなくなります。問題の趣旨は「クルーズ船ターミナルをやればやるほどリスクとなることは何か」です。

なぜ、リスクが問われているか考えてみましょう。 

 人口構造変化に伴い、我が国は厳しい財政状況下にあると分析する。このため、クルーズ専用埠頭の整備を計画しても、財源不足で整備ができないリスクが生じる。以下に対策を示す

3.1 民間企業の技術・資金力を活用

 クルーズ船専用埠頭の整備には、コンセッション方式を導入する。なぜなら、民間企業の技術や資金力を活用し、賑わいを創出できるからである。この際、発注者は事業期間と要求性能を定め、要求通りに運営しているかのモニタリングおよび改善指導に留意する。

3.2 既存施設の最大活用

 クルーズ専用埠頭は、既存施設を改良して整備する。なぜなら、新たに建設するよりも費用を抑制することができるからである。具体的には、背後地盤を改良し前面海域の増深や前面海域に桟橋を構築する改良が考えられる。既存施設の有効活用を図るため、土質やコンクリート強度等は実測値を用いて設計することに留意する。

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