R2年 環境部門、環境保全計画の答案について添削致しました。 20210123

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この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はBAB、Ⅱ+Ⅲの評価はBとのことで大変惜しい結果でした。この理由としてⅠは主題に対する答えがぼやけるなどして提案ができていなかったことがあげられます。一方Ⅱは良い内容です。Ⅲではこたえを一方的に、ご自身の得意分野に誘導しているように拝見いたします。主題が見えないため答えが発散してしまったのかもしれません。また随所に具体例を示して知見経験をアピールするかような記述がみられます。特別関連性の薄い事項逆効果となりますのでご注意ください。

 敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。技術士としての「技術応用」の提案が必要です。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、どこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(15分46秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1 

 第五次環境基本計画では,「環境・経済・社会の統合的向上」の実現のために特定の施策が複数の異なる課題を統合的に解決するような,相互に連関しあう分野横断的な6つの重点戦略が示されている。それぞれの戦略は,

 ① グリーンな経済システム

 ② ストックとしての国土の価値

 ③ 持続可能な地域

 ④ 健康で心豊かな暮らし

 ⑤ 持続可能性を支える技術

 ⑥ 国際貢献

 の施策群である。これら重点戦略について,以下の間いに答えよ。

(1)重点戦略のうち3つについて,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

(4)業務遂行に当たり,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.第五次環境基本計画の重点戦略の課題

 以下の重点戦略について記す。

■出来れば問題点ばかりでなく、技術者の視点で解決方針も示した方がよいでしょう

①グリーンな経済システム

炭素税、省エネルギー車体の促進、水素燃料充填設備の促進の税制改正が為されている。炭素税は諸外国に比して安価であり、水素燃料車の普及促進等への動機付けが難しいことが課題である。

②ストックとしての国土の価値

 近年の災害多発化に対応するために、災害リスクを回避したストック整備の促進が課題である。また、税制改正により省エネルギーに関わる研究投資の促進が図られ、省エネルギー建築物の主流化を目指している。

③持続可能な区域

 9割の地域でエネルギー収支が赤字であり、持続可能な区域となっていないことが課題である。6割の区域が、エコロジカルフットポイントはバイオキャパシティの範囲内であるが、エコロジカルフットポイントがバイオキャパシティの100倍に達する区域が4%あり、そのうちの6割が東京都、神奈川県、大阪府に集中している。エネルギー消費の多い企業等を地方に誘致することで、上記の偏在を正すことが課題である。

2.最も重要な課題及び、その解決策

 比較検討の結果、②のうちでも、災害リスクを回避したストック整備の促進が最も重要な課題と考える。安心して住めるまちづくりが、首都圏等への一極集中を回避して③の持続可能な区域づくりに資する。

解決策1:災害ハザードエリアでの新規開発の抑制

上記エリアのうち特に危険性の高い災害レッドゾーンでは、都市計画法改正により、事務所ビル等の開発も原則禁止とされた。滋賀県条例では災害リスクが高い地点での建て替えに、建築物のかさあげや2階建て以上の建築が求められている。

■禁止事項や制限ではなく、新たな開発による公益性を高める提案をしましょう。

解決策2:災害ハザードエリアからの円滑な移転

災害が発生した区域又は災害危険区域内にある住居について、防災集団移転促進事業が行なわれている。同事業は、住宅団地の整備等に対し一部補助等をしている。上記エリアについては戸数要件の緩和(10戸→5戸)など移転支援の強化が図られた。

解決策3:防災を考慮したまちづくり

居住誘導を図る区域内で防災指針の作成を行なう。

・避難路、防災公園等の避難地、避難施設等の整備

・警戒避難体制の確保

3.解決策の結果の波及効果、懸念事項への対応策

 上記解決策により、害リスクのある区域の地価下落等の資産価値の毀損が波及効果として考えられる。懸念事項のみになっていますので、プラスの影響を表す波及効果も提案しましょう。

地価下落を回避するために土地購入者等に災害リスクが正しく伝えられない可能性がある。これに対応するため、宅地建物取引法改正により取引説明時の重要事項に水害リスクに係る説明が追加された。

■特定の事例に基づく説明が冗長すぎて、主題がぼやけています。大事な答えが失われています。

但し、古い橋があるため堤防に必要な高さが確保できない地点、川幅が急激に狭くなっている地点、河道が屈曲して他の川が合流している地点等、古くからの住民等に既知の情報としてある災害リスクがハザードマップに反映されていない可能性が懸念される。

また、防災集団移転促進事業の戸数要件の緩和により、住宅団地の整備が進んだが、後続する移住が進まない事例が生じている。要件最小戸数の住宅団地がゴーストタウン化する可能性が懸念される。

 災害リスクを最小限にする防災指針や、移住地が孤立化しないための交通手段を含めたインフラ等の整備が重要である。そのためには、各地域の技術者が交流をはかり、有益な知見を発信することが対応となる。

4.業務遂行に技術者として必要となる要件・留意点

 公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した提案が技術者には求められる。自らの業務でいえば、土壌汚染への対策について、健康被害のおそれをなくして環境負荷を最小にした提案等、社会的な不安や環境負荷を軽減するコミュニケーションに努めている

■自身の体験談に留まっています。2の業務に対する要件を述べましょう。

東日本大震災の被災地でも、被曝地の処理土を道路や耕作地等の造成地盤に利用する試みがみられ、健全な覆土等により安全性が実証されている。球環境の保全等、次世代に渡る持続性の確保に資するよう業務を行ないたい。災害等の有事においても技術者としての使命、職責を自覚し、場合によっては土壌汚染対策への公的支援を喚起するよう、倫理的にマネジメントしたい

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−3

 福島第一原子力発電所の事故によって環境中に放出された放射性物質による環境汚染への対処について,除染に伴う土壌等,10万ベクレル/kg超の指定廃棄物,その他の指定廃棄物に着目した復旧状況及び課題を述べよ。

事故後、放射性物質汚染対処特別措置法が制定され、以下の環境再生の取組みが実施されている。同法により私有地においての汚染工作物等撤去同意の簡略化や、措置実施地における保管要請が規定されている。

1.福島県内の状況

①除染に伴う土壌(以下「除染土壌」)の措置

除去土壌は各所の仮置場で一時保管された後、中間貯蔵施設に搬入される。県内約1400万tのうち615万tの当該搬入を完了した。

②指定廃棄物の処理

8000ベクレル超を指定廃棄物として法定し、10万ベクレル超のものは仮設焼却施設での減容化処理後、上記中間貯蔵施設に搬入する。その他の指定廃棄物は既存管理型処分場を国有化した施設に搬入されている。

①、②ともに被災後30年以内に福島県外で最終処分の予定だが、選定が難航し、中間貯蔵施設の収容量逼迫が予想される。健全土覆土により安全を確保した道路路盤への再生利用等の推進に、市町村、地域住民等の理解を得ることが課題である。また、中間貯蔵施設設置について地権者全員の合意が得られていない。所在不明の方もおられ、本格整備の障壁となっている。

2.福島県外の状況

私有地保管の早期解消のための長期管理施設新設がすすんでいない。保管後に8000ベクレル以下に減衰した廃棄物の簡易な処理方法確立が課題である。

Ⅱ−2−2

    近年,気候変動の影響もあって豪雨,洪水といった災害が多発し,その際に大量に発生する災害廃棄物を適正に処理することが非常に重要になっている。

■災害発生は既に起こっていることから推論して正解を考えるようにしましょう。

発生した災害廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するための市町村の災害廃棄物処理計画の策定をあなたが担当することになった。この業務を担当責任者として進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。

(1)調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順とその際に留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容

①災害廃棄物の仮置場設置可否

災害の規模によって発生量を推定し、廃棄物の種類によって異なる仮置場の確保方法の調査、検討。

■仮置場について何を調査、検討するのかを提案しましょう。

道路被災を予測した運搬経路

ハザードマップ等により建築物倒壊・地崩れ・水没等を予測した運搬経路確保の調査、検討。

■「運搬経路確保」では対策ありきになります。

③作業重機・収集手順等

地域内外の廃棄物処理関連事業者の対応可能数量を把握し、作業重機・収集手順等を調査、検討。地域外の業者に委託する場合は、当該自治体被災時の取り決めについても調査、検討をしておく必要がある。

■重機ダンプの手配は建設。環境としてはどうなのか?自治体被災時の取り決めとは何かを考えましょう。

応部署、人員

被災時の部署設置、人員異動、人員の出勤可否についての調査、検討。平常時から部署、人員を拡充する場合も予想される。事前の調査、検討が必要である

■事務的な事項に留まっています。主題に関する内容を提案しましょう。

(2)業務手順とその際の留意点、工夫を要する点

業務手順として

①住民等への周知、②道路の確保、③職員の配置、④廃棄物処理業者の手配等を進める。

業務手順を被災後の事後対応に限定しないことが留意点として挙げられる。

■行政や建設業者が行う手配に留まっています。技術士としての具体的な業務の「手順・留意点」を提案しましょう。

2012年のハリケーン・サンディ(アメリカ東部)で適用されたタイムラインの策定の活用が進んでいる。上記は災害発生時刻「ゼロアワー」を設定し、同時刻から遡り、自治体対応開始・住民周知・防災施設点検・避難の呼びかけ等の対応開始時間「リードタイム」定め、円滑な対応開始に資する。

■思いや伝聞情報に留まっています。設問の解答になるようにしましょう。

発災後の事務を軽減する工夫として、南伊勢町では災害廃棄物処理の初動マニュアルを策定し、稼働できる重機や収集運搬車両の台数等を明記している。

■南伊勢町ではそうなのかもしれませんが、その伝聞情報は一般論として、あまり意味がありません。試験の解答として、真意を推論させるのは△になります。ご自身が正しいと考える正解を明確に述べましょう。

また、避難の遅れにより自動車等の災害廃棄物が増大している。災害の警戒レベル(5段階)のレベル4には避難勧告と避難指示が混在しており、前者に従わない事例や、さらにレベル5の災害発生情報まで避難しない事例がみられる。レベル4を統合して最上位とし、レベル5は別名称とする工夫が検討されている。

■「避難」の話はテーマが違うと受け取られます。災害廃棄物の保管に関する本質的な事項に取り組んだ提案をしましょう。

(3)業務の効率・効果に資する関係者との調整方策

初動マニュアルの実施には地域住民の協力が必要であり、事前にリスクコミュニケーションを進めてお調整が求められる。必要に応じて条例化等の法的整備をしておくことも対策の円滑化に資する。

また、グリーンサービサイジングによる耐久消費財の削減の推進や、災害発生の可能性が高いレッドゾーンの土地利用制限も災害廃棄物の削減に資する。環境負荷を最小にする調整方策として有効である。

■災害廃棄物と関係ない一般論に留まっています。(2)の作業をどう効率化するかを提案しましょう。

公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した提案が技術者には求められる。災害廃棄物の処理についても平常時から社会的な不安や環境負荷を軽減するコミュニケーションの提起に努めたい。また、技術者としての使命、職責を自覚し、場合によっては必要な公的支援を喚起するよう、倫理的にマネジメントしたい

■「思い」は解答としては不要になってしまいます。

Ⅲ−2

 地方公共団体において防災基本計画に基づく地域計画の見直しが図られることとなり,自然災害に起因する有害物質の漏えいへの対応を考慮することとなったことを想定して,以下の問いに答えよ。

(1)地方公共団体の担当技術者(又は業務受託者)としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)課題及び内容

自然災害に起因する有害物質の漏えいによる健康被害のおそれを公的に開示し対策する方法として、土壌汚染対策法(以下「法」)による区域指定がある。区域指定は土地所有者等が自ら申請する指定と、法が調査を求めて汚染があった場合に受ける指定に分かれる。

課題1:自ら区域指定を申請するインセンティブ

自らの事業活動による土壌汚染を開示して区域指定を申請し、社会的責任を果たす企業の事例がみられる。自然災害による場合、企業活動による責任が希薄で、同様のインセンティブが働かないおそれがある。

課題2:法が調査を求める契機

津波等による有害物質の漏えいが明らかな健康被害のおそれを生じさせている場合以外は、有害物質使用特定施設の変更や廃止、一定規模以上(3000㎡以上、有害物質使用特定施設がある場合は900㎡以上)の土地の形質の変更(掘削又は盛土)がない限り、法により調査を求めることができる契機とはならない。

有害物質の漏えいがあっても上記のような新たな企業活動がなければ、放置される可能性がある。

課題3:土地所有者等の負担

調査の結果、区域指定を受けた土地のうち、周辺住民の地下水飲用利用等による健康被害のおそれをなくす必要がある場合は公的な資金援助制度がある。しかし、調査費用については公的な資金援助の制度はない。

適正な試料採取調査を実施するためには事業所の土地の利用等の履歴の調査(地歴調査)による調査密度の決定等が必要であり、調査を実施する土地所有者等の負担が大きい。調査の省略も認められているが、法的に土地の汚染状況が最も重い状態にみなされる。

課題4:土壌汚染の対策方法

区域指定を受けた場合でも健康被害のおそれがない場合は、土壌汚染の拡散がないように管理すれば特段の対策は求められない。健康被害のおそれがある場合でも、地下水汚染がない場合は当該状態のモニタリング継続で足りる。地下水汚染がある場合でも、拡散防止の遮水封じ込め等により管理する対策方法がある。

上記にかかわらず、対策を行なう場合は、土壌汚染を全量掘削して場外処分する掘削除去の対策が一般的である。掘削工事や運搬等による環境負荷が大きく、高額な工事費から土地所有者等の負担が大きい。

(2)最も重要と考える課題及び解決策

比較検討の結果、課題4が最も重要と考える。砂場等で幼児が汚染土壌を摂食するおそれがあるような例外を除き、健康被害のおそれがあっても行政は掘削除去を求めない。土壌汚染を根絶するのではなく、適正な管理により健康リスクをなくす上記の例のような対策(指示措置)を、行政は求めている。

しかし、事業者や近隣住民等のステークホルダーが土壌汚染に不安感を抱き、指示措置と同等以上の掘削除去を行なう場合が多い。健康リスクを合理的になくす措置の選択の正当性を技術者が説明するべきだ。過大な環境負荷、経済的損失の抑制は、社会、経済、制度、生活、価値観等の要素を鑑みた持続可能性の高い最適解を求めるSDGsの実践につながる。

(3)解決策に新たに生じうるリスクと、その対策

区域指定により、風評被害が生じうるリスクが共通して発生する。土壌汚染を明らかにして適正に管理し、健康被害の回避に資することがESG投資等の社会的評価につながる気風を醸成していく必要がある。

また、区域指定部の対策等の工事には行政への事前届出が必要であるが、周辺住民健康への影響がない区域(臨海部特例区域)においては、当該届出を年1回の事後届出に軽減する法改正も行なわれている。

公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した提案が技術者に求められる。土壌汚染への誤解が社会、文化及び環境に与える影響は否定できない。当該影響を予見し、健康被害のおそれをなくして環境負荷を最小にした対策の提案をし、社会的な不安や環境負荷を軽減するコミュニケーションに努めたい。当該対策は地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に資するものである。有事においても技術者としての使命、職責を自覚し、場合によっては調査等の土壌汚染対策への公的支援を喚起するよう倫理的にマネジメントしたい。以上。

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