R2年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 20210121

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この答案についての講評

 この試験答案ⅠⅡⅢの評価はAABで、Ⅱ+ⅢはBととても惜しい評価でした。その理由としてⅢでBIM/CIMについて具体的な提案ができていなかったことがあげられます。敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。この問題のテーマBIM/CIMはスパーゼネコンや大手設計などが手掛けていますが、そのほかではまだ実施されていません。先進的な問題でした。技術士としての「技術応用」するには経験業務から選ぶ必要があります。おそらくこの方もⅢ-1ではなくⅢ-2(性能規定)を選択されたら具体的に提案が可能だったかと思います。このような対応力は練習を重ねていけば、身につけられます。実際、講座の受講生様でそのように問題を変えられて正解されている方もいらっしゃいます。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので、どこがいけないかわからない、どう書いたら正解できるかわからない方に是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(10分27秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての論理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

■Ⅰ問題はA評価のため特にコメントいたしません。

(1)老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり課題

①事後保全型の維持管理

 現在の維持管理は、事故や損傷が起きてから補修・

修繕を行う事後保全型の維持管理である。損傷個所が深刻化してから補修や修繕を行う事後保全型の維持管理では、施工時間を費やしコストがかかることが課題である。

また、事後保全型維持管理では災害時に施設が機能しない、活用できない可能性がある。

②担い手不足、技術者不足

 少子高齢化により若手入職者の減少、建設現場の籠城条件・労働環境の低さによる新規入職者の早期退職等により人材確保ができない。また、熟練の技術者・技能者が高齢であり、今後多くの退職を予定しており、

技術継承ができず、担い手不足、技術者不足が課題である。

③社会インフラ整備費の増加

 高度経済成長期に整備した膨大な社会インフラが、老朽化を向かえ維持管理費が増加すること、少子高齢化により社会保障費、社会福祉費に財政が回される。

そのため維持管理費に予算を多く回せない現状がある。

(2)(1)の課題のうち最も重要な課題は、事後保全型の維持管理である。以下にこの課題の対策を述べる。

①事後保全型から予防保全型の維持管理への転換

 損傷個所が軽微なうちに補修、修繕を行う予防保全型の維持管理により、施工時間の短縮、ライフサイクルコストの低減が可能となる。又、老朽化した施設では災害時に機能しない恐れがある。予防保全型の維持管理により、防災施設が災害時有効に活用できる効果が上げられる。

②ドローンによる3次元測量

 従来の測量では、多くの人員を費やし場合によっては足場等を組んで測量を行っていたため、費用や時間がかかっていた。ドローンによる3次元測量では、少人数による作業で足場等が不要となるため、省人化、省力化となる。又、危険個所への人の侵入が減るため、事故等が減り、それによる工期の遅れ等が出さず工期短縮につながる。

③アセットマネジメント

 アセットマネジメントを行い、構造物の維持管理に対し選択と集中、優先順位等を検討していくことが重要である。アセットマネジメントの活用として、調査、診断、修繕等の措置、記録を継続的に繰り返すメンテナンスサイクルの構築も重要となる。

(3)(2)び共通して新たに生じるリスクとその対策

①データベース化と共有化

 維持管理の膨大なデータが整理できていないため、データが活用できていないリスクがある。データ整理

の基準やデータベース項目が設定されていないため、収集したデータが統一されていない。対策としては、基準やデータベース項目を定めて、データベースの構築を行い共有化することが有効である。

②技術者不足・技術力不足

 ドローンによる3次元等の新技術を活用できる技術者不足、経験不足で作業の低下等により効率が悪いことが上げられる。対策としては、新技術導入に教育を受けられるシステムや外部講習、キャリアアップシステムを活用することが有効である。

③初期費用の負担

 ドローンや3次元データに対応できるコンピューターの導入等初期費用の負担が大きいことが課題である。対策としては、発注時に新技術導入費用を予算に含むこと、国・自治体の支援や援助を行うこと、銀行融資が受けられる体制を作る等が上げられる。

(4)業務遂行するに当たり必要な要件

人々の安全・安心・健康を最優先に考え、社会・文化・環境を守ることが重要である。膨大な数の社会インフラの維持管理は、常に使用者の目線で検討を行うこと、公平性を持つこと、国の永久的な財産であることを認識することが重要である。技術者として持続敵に業務を遂行していくために日々研鑽するとともに、技術継承に務めることが重要である。

Ⅱ−1−1

 次に示す高性能公より2つ選択し、特徴、利点、適用する際の留意点を述べよ。

①    耐候性鋼    ② 耐火鋼

②    クラット鋼   ④ 低温用ニッケル鋼

⑤ ステンレス鋼  ⑥ 低降伏点鋼

⑦ 高HAZじん性鋼  ⑦ 予熱低減鋼

■Ⅱ-1問題はA評価のため特にコメントいたしません。

①   耐候性鋼

特徴適度な湿潤の繰返しにより、鋼材表面にち密な錆を形成する

利点防食・防錆に優れている。

  塗装塗替が不要なため、ライフサイクルコストの低減ができる。

  外観が美しい。

適用する際の留意点

  飛散塩分の影響や凍結防止剤を使用する箇所には使用できない。

  適度な湿潤が必要なため、設置環境に注意する。

②   耐火鋼

特徴火災を受けた後も強度低下がない

  常温時の施工性、加工性、強度は一般的な鋼材と同じである。

利点耐火被膜等が不要である。

適用する際の留意点

  鋼材製作には大臣認定が必要であるが、取得が難しい。

  材料等が高価であるため、耐火被膜等の設置費等の比較によりトータルコストの検討が必要である。

Ⅱ−2−2

 既設構造物を使用しながら、改築・増築、又は補修・補強に関する業務を行うこととなった。この業務を鋼構造あるいはコンクリートの技術に関わる担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)    対象とする構造物を1つ挙げ、工事中の既設構造物の使用条件を設定し、業務の内容を明確にした上で、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)    業務を進める手順とその際に留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)    業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

■Ⅱ-2問題はA評価のため特にコメントいたしません。

鋼構造

(1)使用条件:橋梁上の道路は供用路線で車両の交通している状況である。

業務内容:橋梁の溶接部き裂の補修・補強

調査:高所作業車や橋梁点検車両にて現地近接目視を行い、き裂状況、き裂の進行状況、必要であれば非破壊試験を行う。また、添接板の設置が可能かを確認する。

施工機械等の設置が可能か、足場の設置が必要かを確認する。

橋梁設計時の設計書、しゅん功図等の資料の収集を行う。

(2)業務手順と留意すべき点、工夫点

①調査

(1)に示した調査等を行う。現地調査前にしゅん功図等を収集し施工箇所の確認、調査項目等をあらかじめ検討しておく。現地との相違点を確認する。

②  設計・図面作成

①の調査結果をもとに設計計算等を行い添接板寸法、

ボルトサイズ等を決定し、図面を作成する。図面作成後、設計計算や現場との相違点がないか、不具合等は生じていないか照査を充分に行う。

③足場等の設置

足場等の施工環境を整える。足場の設置が河川上である場合水位に、既供用路線上である場合建築限界に注意が必要である。

現場施工

 添接板の設置は密着が重要である。通常取付ボルトには摩擦接合高力ボルトを使用し、その際下処理は入念に行う。摩擦接合では、塗装をブラストやケレンにより入念に除去し摩擦面を確保する。塗装の除去では、薬剤や鉛による中毒をおこす恐れがあるので取扱等には充分注意を払う。

設置後の観察

 設置後は定期的に点検等により、き裂の進行状況や添接部の不具合等がないか観察する。

(3)関係者への説明

地域住民への説明

 近隣住民への説明は、工事が始まる前できるだけ早い段階で安全性や必要性について理解してもらうことが重要である。

橋梁管理者との打合せ

 橋梁管理者の要望と設計条件、施工現場の制約による工事関係者の要望等を早い段階ですり合わせ等を行う。緊急時に電話で決定した事項については、後日文書化し、担当者で相異がないか確認した後、関係者全員に周知する。

Ⅲ−1

 Ⅲ−1 国土交通省は,調査・測量から設計,施工,検査,維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICT等を活用する「i ―Construction」を推進し,建設現場の生産性を,2025年度までに2割向上させることを目指している。建設業で生産性を低下させている要因の1つとして,2次元の紙の図面で各種作業を進めていることが挙げられることから,建設生産・管理システムでも3次元モデルを利活用することで,全体の効率化・高度化を図る,いわゆるIM/CIMが生産性革命のエンジンとして推進されている。このような 状況を踏まえ,鋼構造あるいはコンクリートに関わる技術者の立場から以下の問いに答えよ。

(1)BIM/CIMの活用により生産性の向上が期待できる業務を1つ挙げよ。また,BIM/CIMを導入してその業務の生産性を向上させるために解決すべき課題を多面的な観点から抽出し,その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前間(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

鋼構造

(1)生産性の向上が期待できる業務

 ドローンによる3次元測量である。3次元測量を行うことにより、その後の設計・施工・調査・維持管理においてデータ活用が」可能である。

解決すべき課題を以下に述べる。

■BIM/CIM とは、建設生産全体3次元モデルですることで、2次元図面での作業をなくして生産を効率化・高度化することです。このことに関する課題を提起するようにしましょう。

ICT建機の導入

 ICT建機を導入すれば、現地丁張りが不要のため人員削減、時間短縮となる。また、3次元測量データをICT建機に入力することで専門のオペレータが不要である。以上のように3次元データの活用ができ、省人化、省力化、施工時間短縮となるICT建機の導入が進んでいないことが課題である。

3次元データに対応できるコンピューターの導入と教育

 ドローンによる3次元測量が膨大でビックデータとなるため、それに対応できるコンピューター等の設備が必要である。また、コンピューターの活用、3次元データの活用ができる人材も不足しているため導入とともに教育システムを構築すること等が課題である。

施工の標準化

 建設工事は、単年度契約が一般的で年度後半の繁忙期には人材や機材等が不足するほどだが、年度初めの閑散期には、人材や機材が活用されない。そのため、年間を通した生産性が低い。施工の標準化が課題である。

■建設生産全体の3次元モデル化に関する、本質的解決法ではなく、マシン(PC)やAI(手法)、データベース利用による改善、といった手段的な話にとどまっています。3次元の情報化に由来する対応問題や、その情報を活用する提案をしましょう。

(2)(1)の中で最も重要と考える課題は、3次元データに対応できるコンピューターの導入である。

以下にこの課題に対する解決策を示す。

■情報工学、PCの能力の話にすり替わっています。建設の技術応用をアピールできるようにしましょう。

 AIのことに発散せず、3次元データを活用した鋼構造生産について言及すべきです。このような難問に対して、本講座では下のようにスライドを用意して解説しています。BIM/CIMを導入して、業務の生産性を向上させるための課題としては、属性データの整備、組み立て・輸送法の検討、3Dモデルの多用途への活用などがあります。

kensetsuR2_3-1.jpg (500×377)

対応設備の整備

 3次元データ、ビックデータに対応できるコンピューター等を導入し活用することが重要である。従来の設備で3次元データを取り込んでも容量等が大きすぎて効果が上がらない。設備を整えることにより、効率的に作業を行うことが可能となる。

AIの導入

 3次元データ等が膨大であるため、そこから必要なデータを取出し活用することが困難となる。そのためにIA技術を導入し、スピーディにデータ抽出等ができること、技術情報や経験等を入力し収集したデータを効率的に活用する。

データベース化、共有化

 、を行い、3次元データ等を整理し活用するためにデータベース化の構築を図る。データベース項目等も設定し効率的にデータベース化して情報を共有化することにより多くのデータが活用され作業効率化を図る。

■↓下は正しいリスク分析とは言えず、業務を行う上での障害に留まっています。基準とは手段的な事項であり、それが整備されていなければ、そもそもBIMが進まないわけで、リスクも発生しないと考えられます。

(3)(2)で示した解決策に共通した新たに生じるリスクとそれへの対策

基準の整備

 データベースの基準や規格が決まっていないため、統一が図れていないこと、誤った運用により不具合や安全が確保されていない恐れがある。

 対策としては、基準の整備、JIS規格等の設定、マニュアルの作成等を行う。作成に当たり、官民学の連帯により、漏れ等のない基準とする。

初期費用の負担

 ドローンや3次元データ対応のコンピューター等の導入や各設備導入時の設備費や教育費等、初期費用の負担が大きいことが上げられる。

対策としては、国や自治体の支援や援助、工事発注時に新技術導入を予算に含むこと、銀行の融資が受けられる制度を整える等の対応を行う。

 (もう少し詳しく書いていたかと思います)

技術力の低下

 AI等の新技術を導入、データベース化等により、それに依存して、技術者自身の技術力が低下してしまう恐れがある。不測の事態が発生したときに、技術者が対応できない可能性がある。

 対策としては、新技術導入時に教育を受けられるシステムの構築、外部講習会や研修、キャリアアップシステムの活用がある。又、小規模構造物や狭あい部では自身で設計・施工等を行い、技術継承の場として活用することが重要である。

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