R2年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 20210114

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この答案についての講評

 試験の敗因について「専門知識の不足」を挙げる方がたくさんいらっしゃいます。しかし、技術士試験の答案の通りの知識をあらかじめ暗記しておくなどということは無理です。技術士としては、課題を分析して、解決策を提案し、そのチェック・反省をするだけのことです。この答案を書かれた方は、6年連続2次試験不合格されたとのことで、その原因を究明するため答案を拝見いたしました。何がいけないか一言で申し上げますと、技術士としての「技術応用」、その提案が不足しています。これは練習を重ねていけば、能力を高めていけますので、楽勝で合格することが可能です。本研究所ではコーチング形式で応用力を高める練習をしておりますので是非お勧めいたします。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(21分17秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され、建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり、急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また、高度経済成長期と比べて、我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。

 こうした状況下で、社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには、戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)社会・経済情勢が変化する中、老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

(4)(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.メンテナンスを推進する上での課題

1-1.老朽化する施設が多いこと

 2033年度に建設後50年以上経過する施設は、道路橋では約63%、河川管理施設では約62%と見込まれている。

■老朽化施設が多いこと自体は自明なことであるので、ここで求められている課題を提案しましょう。

日本の骨格をなす首都高速道路や東海道新幹線も建設後50年以上が経過している。高度経済成長期に建設された施設では川砂が不足し海砂を用いている施設もあり、塩害で施設の老朽化も著しい。

■課題とは、ではどうやって解決するか、技術士の視点での提案です。

例 維持管理の省力化、予防保全による長寿命化・コストダウンなど

1-2.予算が不足すること

 国土交通省所管のインフラ施設の維持更新費は2018年度には約5.2兆円であるが、事後保全を続けた場合30年後の2048年には約12.3兆円に達すると試算されている。少子高齢化が進行する日本では、維持更新費の予算確保が難しい。

■1-2,1-3も同じ制約事項になっています。技術者としての視点、考察を提案しましょう。

行政のお仕事での苦労が表れてしまったようです。

1-3.技術者・労働者の不足

 少子高齢化により、技術者・労働者の確保が難しくなってきている。2020年からの20年後には全産業平均で1〜2割の労働者の減とされているが、建設産業においては約4割減と試算されている。また建設産業の就労者は全産業平均と比べ55歳以上が約35%と約5%高く、29歳以下が約11%と約5%低い。

2.技術者・労働者不足の課題に対する解決策

2-1.週休二日の推進

 建設業は休みが少ないことが離職率の多さにも繋がっており、建設業全体として労働者確保を行う必要がある。そのために業界全体として週休2日を推進する必要がある。(働き方改革)

■労者を増やすことは可能ですが、ただし維持管理に直結したものではありません。答えは必要十分なものにしましょう。

維持管理と週休は直接は関係性がありません。2-3も同じ。

解決策の減点が結果に響いています。

2-2.生産性の向上

 測量から調査、設計、施工、維持管理全般にわたりICTを全面的に使用するI−Constructionを推進し、人手不足を上回る生産性向上へと繋げる。

○  ただし、新築のICTと維持管理のICTでは何が違いますか。

2-3.建設キャリアアップシステムの活用

 労働者の処遇改善につなげるために、建設キャリアアップシステムを導入し、労働者が経験や能力に応じた処遇を受けられるよう、対応する。

3.解決策に共通して生じるリスクとその解決策

 週休2日やI−Constructionの推進は技術力の低下が懸念され、また建設キャリアアップシステムの推進についても不正登録により技術力の低下が懸念されるため、技術力の伝承や不正対策を行う必要がある。

4.(1)〜(3)の業務を遂行する要件

4-1.技術者倫理

法令順守は技術士資格とは関係ない前提事項です。 技術士のあるなしにかかわらず 必ず遵守しなければならない事項であって、 問題の答えとして 技術士が 技術者が倫理を高めるために 選択的に行うことではありません。ですので答えとしてふさわしくにありません。

 (1)〜(3)の業務を遂行する上での技術者倫理の観点では、技術者として法律や基準に対して公正に業務を行う必要がある。

4-2.社会の持続可能性

 (1)〜(3)の業務を遂行する上での社会の持続可能性の観点では、無理のない範囲で行う必要がある。

■「無理のない範囲で行う」は、社会の持続可能性について、社業遂行の障害となる社外奉仕活動だと考えていると誤解され、社会の持続性などに会社が協力すると、経済的負担となって企業収益が損なわれるから制限すべきだと読み取れてしまいます。

本講座ではこのような細かい意味、対照法について具体的に添削指導しています。

Ⅱ−1−1

河川改修により確保された流下能力を維持するための河道流下断面の維持管理について、その手順を説明するとともに、河川改修後に低下した流下能力を回復させる対策を検討する際の技術的留意点を2つ以上述べよ。

1.河道流下断面の維持管理の手順

 日常的な河川巡視や出水後の測量により、土砂堆積や洗堀による河道の変化、堤防の劣化などについてRimadisの河川カルテに継続的に登録することでモニタリングを行い、河道の流下能力が低下した箇所を把握し、必要に応じ維持掘削などを行う。

2.流下能力回復対策の検討

2-1.再堆積しにくい掘削方法

 維持掘削実施箇所のみならず、その上下流の河道状況、線形を確認し、再堆積しにくい維持掘削方法を検討する。

■上下流の河道状況、線形確認とは、一般的な手続きです。

そのことをやったとして、どうやって再堆積させないか具体的な提案が求められいます。

2-2.環境に配慮した掘削方法

 魚類の生息場所となる瀬・淵を極力残す掘削方法とし、河岸部においては植物や水生生物に配慮した掘削方法となるよう、検討する。

■魚類、植物、水生生物への配慮は一般的に必要な手続きです。

しかし、再堆積とつながるような答えにしましょう。

Ⅱ−2−1

 近年、毎年のように発生する大規模な水害・土砂災害において、逃げ遅れによる犠牲者が数多く発生している状況を踏まえると、住民の適切な行動を促し避難の実効性を高めることが極めて重要となる。あなたが台風襲来時の水害・土砂災害に対する市町村における警戒避難体制の整備にかかる業務を担当することとなった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、下記の内容について記述せよ。

(1)調査・検討すべき事項とその内容について、説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.河川分野において調査・検討すべき事項・内容

 近年、気候変動の影響により平成30年7月西日本豪雨や令和元年東日本台風など、大規模な水害が毎年のように発生している。そのような中、水害時における適切な警戒避難体制を整備するにあたり、市町村職員として調査・検討すべき事項としては洪水ハザードマップの作成により、適切な避難経路や避難場所の設定である。

l  災害で逃げ遅れによる犠牲者が多い。

l  住民に警戒してもらい、避難の実効性を高める。

l  市町村の警戒避難体制を私が整備する。

この3つを命ぜられたとしたら技術士としての提案はありませんか。

洪水ハザードマップは既に作成されているし、避難経路や避難場所は一応策定されていますので、もっと具体的に踏み込んだ提案が必要です。

■調査、検討事項としては甘いです。技術者としての提案、視点が見えるようにしましょう。

2.留意すべき点、工夫を要する点

 堤防破堤による氾濫形態としては、流下型、拡散型、貯留型に分けられるため、どのような氾濫型であるのかを洪水ハザードマップに記載する。貯留型氾濫であれば浸水深が3m以下で垂直避難が可能であっても長時間の浸水となることから、平面避難を行うこととする。また、一人一人の居住形態や避難方法が違うため、個人毎のマイハザードマップを作成し、個人毎の避難経路を作成することも重要である。

このような氾濫形態ごとの対策がわかればよいという話ではありません。

あくまでも、住民が警戒するように導き、災害で早期に避難し、犠牲者がなくなる。そのような警戒避難体制を整備するための留意点、工夫点です。

3.関係者との調整方策

 マイハザードマップの作成にあたっては市町村職員だけで行わずに、河川管理者である国や都道府県の職員と調整し、一緒に勉強会や避難訓練を実施する。また河川事務所長が行うホットラインは首長だけでなく、市町村の実務者レベルにも伝わるような対応をお願いする。またダムの放流通知については、放流量の増加だけではなく、ダムの放流量に応じた市町村毎の水位上昇の一覧表を提供してもらうことも必要である。

■「勉強会、お願いする、一覧表を提供してもらう・・・」関係者との調整方策とは、こういうことではなく、

問2に書いた業務を効率的に進める。そのための関係者との調整方策です。

次の3要件を同時に満たすようにしましょう。

1.「調整」の言葉の意味は、過剰と不足を移して均して最適化すること 例:スピード調整、年末調整、与党の党内調整

既にあるものを移すだけで、新たに資金投入はしません。

2. 私は河川砂防のプロマネなので、関係者を指導して対して納得しやすい理想的プランを申し入れる。すなわち、指導力によって、関係者の行動変容を促し、結果として全体プロジェクト取りまとめる。(お願いや自身の頑張りにならないように注意しましょう。)

3. 建設・河川砂防の技術応用による技術士らしい解決策の提案がある。(連絡係やスケジュール管理など、建設の事務担当でもできることにならないように注意しましょう。)

Ⅲ−2

 気候変動の進展に伴い、海面水位の上昇などによる海岸浸食の更なる進行や山間部からの土砂流出の変化が懸念される中、流砂系全体として持続可能な土砂管理の目標について検討し、総合的な土砂管理の取組を推進することが求められている。

(1)国土を保全するため、流砂系全体として持続可能な土砂管理を実現するに当たって、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.持続可能な土砂管理を実施するための課題

 山間部から海域に至るまでの土砂移動を流砂系というが、砂防ダムやダムにより土砂が堰止められ、海域まで土砂が至らずに下流河川では河床のアーマリング化による魚類の生息環境の減少や、河床低下による河川構造物の基礎への影響、また海域では砂浜の後退などの減少がみられる。流砂系全体として持続可能な土砂管理を推進するうえでの課題を下記に示す。

問題の追認、解釈。しかし、課題については述べられていません。

求められているのは、下記になります。

  •   気候変動による海面上昇によって海岸浸食が進行。山間部からの土砂流出している。
  •   流砂系全体で持続可能な土砂管理とする
  •   国土を保全する。
  •   技術者として多面的に課題を抽出する。
  •   課題抽出だけでなく、その観点(理由、根拠)を示す。 

1-1.山地部における土砂の捕捉

 山地部においては土砂災害を防ぐために砂防堰堤が造られてきたが、従来の不透過型砂防堰堤は土砂をためることにより沢が安定し、土石流の発生を防いできた。またダムにおいても土砂を補足しており、不透過型砂防堰堤やダムにより下流河川への土砂供給が低下する要因となっている。

■従来の砂防堰堤、ダムの問題点を挙げるにとどまっています。

1-2.海岸部における土砂の補足

 海岸部においては漁港などの整備により、海流の上流側で土砂を補足し、その下流側へは土砂が供給されず、砂浜の後退現象などがみられる。

■従来の漁港の問題点を挙げるにとどまっています。

2.山地部土砂捕捉の解決策

2-1.透過型砂防堰堤への改良・改築

 従来の不透過型砂防堰堤は土砂及び巨礫を補足するため、砂防堰堤を新設する場合は鋼管格子による透過型砂防堰堤とし、また既設不透過型砂防堰堤の中央部を鋼管格子に改良し、巨礫は補足するが土砂は下流へ流下させるようにする。

■個別の施設方式の提案では網羅性に欠けるので弱いです。

2-2.ダムにおける土砂対策

 ダムの堆砂対策としては、ダム末端の流入部に貯砂ダムを整備し土砂を捕捉し、バックホウ及びダンプトラックにより下流河川へ土砂を還元する。またダム堤体を改良し土砂吐きを設置したり、水位差を利用したサイフォンの原理を応用し、ダム下部の堆積土砂を下流へ流すなどの対応も考えられる。

3.新たに生じうるリスクと、それへの対策

 砂防堰堤を透過型にすることで、その下流にあるダムへの流入土砂が多くなることが予想される。またダムから下流河川への土砂供給を増やすことで、下流での土砂堆積が増えたり、現状の河川環境が変化し魚類等の生態系に悪影響を及ぼすことも懸念される。今後の気象変動により河川での浮遊砂が増加することも懸念されており、

ダム下流への土砂供給については、急激な河川環境による生態系への影響を極力低減させるために、しっかりとモニタリングを行いながら実施する必要がある。

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