№30 R3年 建設部門、施工の答案について添削致しました。 2022/03/25

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この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、ⅠがB、ⅡはA、ⅢがBであり、Ⅱ・Ⅲ総合でBとなり不合格でした。大変残念な結果です。建設部門施工の技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できますし。指摘事項は今後の参考としてください。

 答案を全て拝見致しましたが、問題文で与えられた問題に対して、対策の必要性等は述べられていますが、肝心の主題である問題解決につながる課題が述べられていません。「いかに・・するか」という文が多く、この文形では困難な状況が分かるだけで、技術的な方針の提案がアピールできません。Ⅱ-2はケーススタディ問題のため、経験力が評価されたようで良かったです。

 技術士試験では、模範答案を暗記してアレンジして書いても合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして独自に提案することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。技術士は勉強すれば必ず合格します。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。ぜひ根拠に基づいた正しい勉強法で学ばれて、悩み無しで楽勝で合格していただきたいと思っております。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(25分14秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1 近年、地球温暖化がより深刻化してきており、社会の持続性を実現するために「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」の構築はずべての分野で重要な課題となっている。社会資本の整備や次世代への継承を担う建設分野においても、インフラ・設備・建築物のライフサイクルの中で、廃棄物に関する問題解決に向けた取り組みをより一層進め、「循環型社会」を構築していくことは、地球環境問題の克服と持続可能な社会基盤整備を実現するために必要不可欠なことである。このような状況を踏まえて以下の問いに答えよ。

(1)建設分野において廃棄物に関する問題に対して循環型社会を構築するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。

(2)全問(1)で抽出した課題のうち最も重要であると考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)全問(2)で示した全ての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項を示せ。

(4)全問(1)〜(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会持続可能性の観点から必要となる要件、留意点を述べよ。

( 1 ) 循環型社会の構築実現における多面的な課題

①  いかに建設廃棄物の発生を抑制するか

 ■↑ここは単刀直入に「再資源化」を言うべき。「いかに・・」の文は問題点を挙げるだけで、課題としての意味をあまり示していません。

我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備されたため、今後20年間で一斉に更新期に入り、維持管理・更新時代の到来により、インフラ構造の廃棄・廃止などによる建設廃棄物の大量発生が懸念される。  

■ここまで前置き。前提が冗長です。

再資源化に向けた取り組みを継続するとともに、社会情勢の変化を踏まえた発生抑制対策が重要となる。

■再資源化と発生抑制と2つではなく1つに絞る。再資源化に終始していて循環型社会に転換する視点がありません。

②  いかに高い再資源化率を維持するか

■2でもまた再資源化のダブリ

 建設廃棄物のリサイクル率は2018年度に97%に達するなど、過去20年間ほどで大幅に向上して高い水準で安定している。今後は、リサイクルの「質」の向上を図るため、リサイクルされた材料の用途に着目する必要がある。

■残念ながらあまり役立たない前置きです。 「リサイクルの質」ではあいまいです。 よって、建設副産物の排出者に課していた目標・指標に加え、リサイクル材の利用者に対しても目標を立てるように求め、再資源化率の維持を図ることが課題である。

■「目標を立てる」だけですか。本質的な再資源化の方法論に言及すべきです。

    3も↓1,2とダブリ

③  いかに再資源化率をさらに向上させるか

 維持管理・更新時代の到来により、大量の建設廃棄物の発生が想定されるが、それらは品質が悪い場合が多く、再資源化が難しく活用しづらい現状がある。そういった建設副産物を有効活用できる手法を確立し、再資源化率をさらに向上させることが課題である。

■「建設副産物を有効活用」できればよいが、それこそが難問です。無理な提案では課題を示したことになりません。

( 2 ) 最重要課題とその解決策

 前述の①いかに建設廃棄物の発生を抑制するかを最重要課題として以下に解決策を示す。

■2の解決策はいずれもOKです。

①インフラ構造物の長寿命化

 インフラメンテナンスにおいて、施設に不具合が生じてから対策を行う「事後保全」から、施設に不具合が生じる前に対策を行う「予防保全」へと転換する。また、点検⇒診断⇒措置⇒記録⇒(次の点検)を一連の流れとするメンテナンスサイクルを構築し、効率的・効果的に維持管理を行うアセットマネジメントを導入する。これらによりインフラ構造物の長寿命化を図ることで、その廃棄・廃止を最小化し、建設廃棄物の発生を抑制する。

②使用量の低減

 コンクリート構造物の新築工事においてプレキャスト工法を採用することで、型枠資材や仮設資材を低減し、現場から搬出される産業廃棄物量、木材資源消費量を削減する。また、高強度コンクリートを使用することで、断面のスリム化や部材の省略化を図り、コンクリートの使用量を削減する。構造・材料の選定においては、コンクリート構造と比べて完成品の重量を軽量化できる鋼構造を採用することも使用量の削減には有効な手段である。

③再利用の促進

 建設発生木材はチップにして樹脂で固め、公園の歩道などに利用する。ICT技術を活用し、建設発生土の情報を他事業と共有し、事業間でタイミングよく融通することで再利用を促す。道路工事においては、既設アスファルト舗装を現地混合することで、再生路盤材として再利用する取組などが挙げられる。

( 3 ) 波及効果及び懸念事項とその対応策

①波及効果

 アセットマネジメントの活用、プレキャス工法の導入、I C T 技術の活用により、各業務において生産性向上効果が期待できる。

②懸念事項とその対策

 I C T 技術などの新技術の活用には建設技術に加え、情報工学やロボット工学にも精通した建設技術者が必要となる。しかし、現状では該当する技術者は少なく、システムが機能しない懸念が考えられる。対応策として、講習会・勉強会を開き、建設分野の技術者に対する教育強化や、I T 業界など他分野からの人材獲得が挙げられる。

■ICTは提案のごく一部にすぎません。要求は「全問(2)で示した全ての解決策を実行して生じる懸念事項」です。

( 4 ) 業務を遂行する上で必要となる要件

 技術者倫理の観点として、社会全体の公益を確保する視点を持って業務に取り組むことが要件となる。

■これ↑は当然のこと。それが何かと問われています。

また、I C T 技術の発達により情報化・データ化が進む現代においては、情報の不正取得・不正流出を行わない高い倫理観を持つことも必要な要件となる。

 社会持続性の観点においては、維持管理・更新工事に伴い大量発生する建設廃棄物の効率的なリサイクルシステム・減量化システムの構築が必要である。

Ⅱ-1-2 「建設キャリアアップシステム」について、導入の目的とシステムの概要を説明せよ。また、技能者と事業者の各々にとってのメリットを説明せよ。

( 1 ) 導入の目的とシステムの概要

 建設キャリアアップシステムは労働者の処遇改善や育成を目的としたシステムである。システムの概要として技能労働者の就労履歴、保有資格、社会保険加入状況などをデータベースとして蓄積し、共有化することで技能の見える化を図るものである。

( 2 ) 技能者のメリット

 技能の見える化により高い技術力や豊富な実績を持つ技能者が適正に評価されることで、賃金の向上など労働条件面での改善が期待される。また、技能者を保有する専門工事会社の施工能力の見える化にもつながるため、高い施工能力を持つ専門工事会社は多くの受注機会を得ることができ、経営の安定化を図ることができる。

( 3 ) 事業者のメリット

 技能の見える化により技能者の技術力や各専門工事会社の施工能力を適正に把握することが可能になり、各工種において最適な人員配置が可能になる。また、技能者の保有資格を建設キャリアアップシステムで確認できるため、工事現場への新規入場時に資格証を確認する必要がなくなるなどの業務の省略化が期待できる。また、就労履歴を確認することで技能者に適切な休日を取らせる配慮が可能になる。社会保険加入状況を確認することで協力会社の健全度を把握できる。

■良く書けています。申し分ありません。

Ⅱ-2-1 模式図に示すように、幹線街路下において商業施設と地下街を連絡するため、プレキャスト構造の地下通路10m(開口:幅7m×高さ4m)を開削工法にて新設する工事を実施することになった。工事に当たり、路上での作業は夜間に限られ、作業時間帯以外は交通開放し、周辺への配慮も必要とされる。なお、仮設構造物を含む設計の妥当性は確認済みであり、工事範囲及びその周辺に地下支障物はないものとする。以上を踏まえて、本工事の受注担当者として、以下の内容について記述せよ。

(1)施工計画を立案するために検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち、本工事の特性を踏まえて重要なものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2)本工事において、責任者として安全管理をどのように行うのか、留意点を含めて述べよ。

(3)関係者との調整により決定される本工事での施工条件を1つ挙げ、調整方針及び調整方策について述べよ。

( 1 ) 施工計画を立案する上で検討すべき事項

■適切な施工管理の重要度判断ができています。

①  揚重機械の選定と据え付け場所の検討

 プレキャスト部材を設置する際には、揚重能力・作業半径を考慮した適切な揚重機械を選定する必要がある。路上での作業が夜間に限られ、作業時以外は交通開放しなければいけない施工条件を考慮すると、移動式クレーンの使用を検討する。

揚重機械の据え付けを地山上に行う場合は、その地耐力を確認し、必要に応じて地盤改良などの補強を行う。路面覆工上に据え付ける場合はプレキャスト部材揚重時の上載荷重を考慮して覆工桁などの仕様を決定する。

■段落分け↑した方がよいでしょう。

②地盤改良による近接構造物への影響

 地盤改良により地盤が一時的に乱されるため、近接構造物(商業施設)への影響を適正に評価し、場合によっては防護を行う必要がある。地盤改良の施工においては、近接構造物への影響が小さくなるように、近接構造物に近い箇所から遠い箇所に向かって施工を行うことを原則とする。

③土留め壁・土留め支保工の計測管理

 土留め壁に過大な変形が生じた場合に土留め背面の地盤沈下などが生じるため、土留め壁・土留め支保工の計測管理を行い、適切に管理する必要がある。土留め壁については、変位計・傾斜計を設置し、各施工ステップ、大雨・台風・地震などに適時計測を行い変状が発生していないかを確認する。土留め支保工においては、切梁にひずみゲージ・土圧計を設置し、土圧・水圧による過度な荷重が作用していないかを確認する。

( 2 ) 安全管理における留意点

 公衆災害の防止に努める。設置する路面覆工上が歩道として利用されることを考慮すると、路面覆工の段差を極力なくすことで、車椅子利用者が安心・安全に通行できる環境を整える。また、点字ブロック・誘導ブロックを適切に設置することで、視覚障害者に対する配慮を行う。

 3 大災害の1つである墜落・転落災害の防止に努める。開削工事においては、覆工板を開閉して掘削作業などを行うことになるが、その際に生じる開口部には手摺などの転落防止措置を確実に実施する。また、高所作業においては、安全帯・フルハーネス等の墜落防止用器具を使用できる安全設備を必ず設置する。

( 3 ) 関係者との調整方針・調整方策

 関係者との調整により決定される施工条件として、騒音・振動の制限を挙げる。作業が基本的に夜間作業となることを踏まえると、近隣住民に対して騒音・振動に対する配慮を行う必要がある。

■段落分けした方がよいでしょう。

対策として、騒音・振動の制限値は法令より厳しい値である55 デシベルとして、施工計画・施工管理を行う。使用機械は低振動・低騒音型を採用する。局所的に騒音が発生するエリア全体を防音シートで囲うことで、騒音の発生源における防音対策を行うことも有効である。

Ⅲ-1 働き方改革関連法による改正労働基準(平成31年4月施工)に基づき、令和6年4月から建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることになった。また、公共工事においては週休二日対象工事の発注が拡大している。

 建設業が引き続き、社会資本の整備・維持管理、災害対応、都市・地域開発、住宅建設・リフォーム等を支える役割を十分に果たしていくためには、建設業の働き方改革の取組を一層に進めて行く必要がある。

 このような状況下において、週休二日が前提となった多工種工事を受注した。本工事の受注者(元請負人)としての立場で、以下の問いに答えよ。

(1)本工事のすべての工事従事者の週休二日を実現するため、施工計画を策定する際に検討すべき課題を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。

(2)全問(1)で抽出した課題のうち最も重要であると考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)全問(2)で示した全ての解決策を実行して、新たに生じる懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた上で考えを示せ。

( 1 ) 週休二日を実現する上での多面的な課題

①    新たな生産システムの活用による生産性向上

建設工事の場所、規模及び仕様などは発注者が決定し、一品ごとに異なる。受注者はその都度、実施設計、積算、施工計画、施工管理を行う必要がある。また、工作物の完成までには多くの技術者や技能労働者を必要とする典型的な労働集約型産業であるため、生産性向上が他分野に比べて遅れており、休日の確保が困難な状況となっている。これを解消すべく、新たな生産システムを活用して生産性向上を図ることが課題である。

■新たな生産システムとは何のことか。生産性向上に寄与する建設工学の原理を述べるように。

②最適な人員配置による生産性向上

 各協力会社においては得意・不得意な工種・作業が存在し、不得意な工種を担当させた場合には作業効率が格段に落ちる場合がある。近年では建設キャリアアップシステムの導入により協力会社の施工能力の可視化が進んでおり、それらを活用することで最適な人員配置により生産性向上を図ることが課題である。

■間違いではありませんが、ごく常識的なことです。つまり人員を減らすこと、すなわち生産性向上です。

③多能工の登用による生産性向上

 労働集約型の建設業においては、1つの工種の工程遅延が発生すると他の工種の工程にも影響を与え、その都度、工種間の工程調整が発生する。そのため、安定した休日確保が困難となっている。よって複数の工種を担当できる多能工の登用により、工種間の工程調整業務の省略化や工種間の時間ロスをなくすことで、生産性向上を図ることが課題である。

■いずれも新たな生産方式の提案であり、幅広い視点とは言えません。また、こうした技法のどこが働き方改革なのですか。主題に応えていないようです。これが主な減点要因ではありませんか。

( 2 ) 最重要課題とその解決策

■2も同じです。間違いではありませんが、働き方改革の主題に応えていないようです。

 前述の①新たな生産システムの活用による生産性向上を最重要課題として以下に解決策を示す。

①三次元C A D、 C I M ・B I Mの活用

 施工計画・施工管理において、三次元C A D及びC I M ・B I Mを活用する。特にC I M ・B I Mは従来の3次元C A D に部材ごとの属性を持たせたものであり、積算における数量算出の自動化など業務の効率化に有効である。また、3 D モデルを用いて、施工ステップを可視化することで、集中的な事前検討による後工程での手戻りの抑制効果(フロントローディング)が期待できる

②無人化機械及びロボットの活用

 情報化施工に対応したI C T 建機を用いて、マシンコントロール・マシンガイダンス等の技術を活用することで、業務の自動化・機械化を推進する。測量業務においては、ドローンやL S技術を活用することで、作業員の負担軽減と作業の効率化を図る。鉄筋加工ロボットや建築仕上げロボットを活用することで、建築分野においても自動化・機械化を進める。

③プレキャスト化やユニット化の推進

 工場で製作したプレキャスト製品は、品質にばらつきが少なく、品質を担保しやすい。コンクリートの二次製品や機械式定着鉄筋、機械式継手といった製品・技術は採用実績が豊富で、作業の効率化にも効果がある。そのため、建設資材のプレキャスト化やユニット化を進めることで、品質を確保しつつ生産性向上を図る。

( 3 ) 新たな懸念事項とその対応策

①I C T 技術者の不足

 I C T 技術の活用には、建設分野の知識だけでなく

情報工学やロボット工学などに精通した技術者が必要になる。しかし、現状の建設業界では該当する技術者が不足しており、I C T 技術を効率的に活用できなかったり、故障時に対応できないなどの懸念がある。

■懸念事項としてはやや常識的です。このようなことを確認するために技術士試験をしているとは思えません。

 対応策として、勉強会や講習会を開き、建設分野の技術者に対するI C T技術の知識強化を図ることや、I T 業界などの他分野からの人材獲得が挙げられる。

②    コスト増加による工事原価の圧迫

 I C T 技術などの最新技術は初期導入コストやシステムの維持管理費が高く、その導入により工事原価を圧迫する懸念がある。

■コストも常識。見積り段階でわかりますので、対処は可能です。したがって懸念とは言えません。

 対応策として、複数の事業者間でI C T 建機やシステムを共同運営することで、その費用を分担する方法が挙げられる。また、発注者に対して生産性向上に資する技術の有用性を説明し理解してもらうことで、その費用の一部もしくは全てを負担してもう方法も考えられる。

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