R3年2021年合格判定結果。得点、減点の要因、改善点についてご説明いたします。音声ガイドコーチング付き

合格判定の年度別一覧

№31 R3年 建設部門、施工の答案について添削致しました。 2022/05/10

№30 R3年 建設部門、施工の答案について添削致しました。 2022/03/25

№29 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案を添削 2022/03/03

№28 R3年 機械部門 加工・生産システム・産業機械の答案 2022/01/19

№27 R3年 情報工学部門 ソフトウェア工学の答案について添削 2022/01/06

№26 R3年 建設部門 鉄道の答案について添削致しました。 2021/12/08

№25 R3年 情報工学部門 コンピュータ工学の答案について添削。 2021/12/06

№24 R3年 上下水道部門、上水道の答案について添削致しました。 2021/11/23

№23 R3年 環境部門 環境測定の答案について添削致しました。 2021/11/22

№22 R3年 上下水道部門 下水道の答案について添削致しました。 2021/11/22

№21 R3年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 2021/11/06

№20 R3年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 2021/11/18

№19 R3年 建設部門、施工積算の答案について添削と合格指導 2021/10/30

№18 R3年 化学部門、化学プロセスの答案について合格指導。 2021/10/31

№17 R3年 建設部門、港湾の答案について添削と合格指導  2021/11/14

№16 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの添削・合格指導 2021/10/04

№15 R3年 建設部門、都市及び地方計画の答案の添削と合格指導 2021/09/30

№14 R3年 建設部門、道路の答案について添削と合格指導。 2021/09/22

№13 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案の添削指導 2021/09/19

№12 R3年 上下水道部門 下水道の答案について添削と合格指導 2021/08/17

№11 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案の添削 2021/08/11

№10 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案の添削指導 2021/08/9

№9 R3年 建設部門、鉄道の答案について添削と合格指導 2021/08/08

№8 R3年 機械部門、機構ダイナミクス・制御の答案の添削指導 2021/08/08

№7 R3年 建設部門、都市及び地方計画の答案について添削指導 2021/08/07

№6 R3年 建設部門、道路の答案について添削と合格指導 2021/08/05

№5 R3年 建設部門、施工計画、施工設備及び積算の答案の添削 2021/08/04

№4 R3年 総合技術監理・上下水道−下水道の答案の添削指導 2021/08/3

№3 R3年 上下水道部門 上水道及び工業用水道の答案の添削指導 2021/08/3

№2 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案の添削。 2021/07/31

№1 R3年 上下水道部門、上水道及び工業用水道の答案の添削指導 2021/07/27

№31 R3年 建設部門、施工の答案について添削致しました。 2022/05/10

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この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、ⅠがA、ⅡはB、ⅢがBであり不合格でした。大変残念な結果です。建設部門施工の技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できます。指摘事項は今後の参考としてください。

 答案を全て拝見致しましたが、問題文で与えられた問題に対して、対策の必要性等は述べられていますが、肝心の主題である問題解決につながる課題が述べられていません。「いかに・・するか」という文が多く、この文形では困難な状況が分かるだけで、技術的な方針の提案がアピールできません。A評価を取れてよかったところもありますが、技術士にふさわしい事項をもっと取り上げた方が良いかと思います。答えが常識的だったり、わかりやすすぎることは、技術士答案の答えではないと気づくべきです。あとは論文の書き方について、これは文章の書き方の本が多数出ていますので、一度習得されると役立ちます。

 技術士試験では、模範答案を暗記してアレンジして書いても合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして独自に提案することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。技術士は勉強すれば必ず合格します。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。ぜひ根拠に基づいた正しい勉強法で学ばれて、悩み無しで楽勝で合格していただきたいと思っております。

  後半の音声(4:52)

 音声ガイドによるコーチング指導内容(15分38秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

Ⅰ−2  問題文 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、雨風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)全問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)全問(2)で示したすべての解決策を実行しても生じるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)全問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての論理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.多面的な課題抽出と内容

①いかに事前防災対策を実施するか

我が国は、気温上昇等の気候変動が他国に比べて大きく、近年では全国的に集中的・局所的な豪雨が頻発している状況である。また、日本は急峻で脆弱な地盤が分布し、丘陵地や斜面にまで開発が進んでいるので風水害に弱いとされている。そして、人口、資産が密集している大都市は、洪水時の水位より低い位置のため潜在的リスクが高い状況である。

 ■この↑ような問題点の記述が長く、ご自身の提案が少ないようです。前置きは簡潔に、提案を積極的に述べると良いでしょう。ご提案↓は見出しとやや趣旨が違うようです。

そこで風水害を回避するための、高規格堤防等のハード設備の整備が重要である。

②いかに「防災意識社会」へ転換するか

 ■この「如何に・・」の文は大変さを強調する一方、提案を見えなくする弱点があります。

 近年に発生した風水害を教訓にして、国、地方自治体、企業、国民の全てが「防災意識社会」へ転換することが重要である。国や地方自治体が企画する防災訓練や避難訓練を積極的にアピールし、多くの人を巻き込む必要がある。また、住民が参加する「まちごとまるごとハザードマップ」を活用するなどして、防災への意識を高めていくことが重要である。

■ 防災意識社会へ転換するため、ハザードマップ活用が課題です。そのことを単刀直入に、見出しにも書いたらいかがでしょうか。説得力増します。

③いかに内水氾濫における浸水を防除するか

 内水氾濫における浸水を防除し、都市が健全な発展を図るために、下水管渠や排水設備の整備が需要である。

■ややバランス悪いです。

2.最も重要と考える課題と複数の解決策

2−1.最も重要と考える課題

 私が最も重要と考える課題は、「いかに事前防災対策を実施するか」である。

2−2.複数の解決策

①築堤・河道掘削・遊水池等のハード対策

 風水害に対して、築堤・河道掘削・遊水池等のハード対策を実施することが解決策である。さらに、既存インフラの有効活用として、ダムの嵩上げや放流設備の増設も有効である。

②地域特性を考慮した治水対策

 風水害に対して、堤防設備の整備のほかに、輪中堤の整備と災害危険区域の指定等の地域特性を考慮した治水対策が重要である。

③総合的防災対策

 上記①、②の対策のほかに、防災講習や防災訓練、ハザードマップや避難経路の共有等のソフト対策も重要である。水防管理団体と河川管理者が洪水リスクの高い箇所の共同点検や、水防講習を行うことも効果的である。ハード対策とソフト対策をうまく組み合わせるHSBM(ハードソフトベストミクス)の考え方で、総合的に対策していくことが解決策である。

④河川等の災害時のリアルタイム災害状況の確認

 災害状況をリアルタイムに把握することが解決策である。いくつかの方法を下記する。

④−1.集中豪雨等の雨量を確認するX-RAIN

④−2.河川の流量や水位を測定するADCP流速計

    CCTV映像画像診断

④−3.浸水範囲を把握するSAR衛星

■こうした事例展開が必ずしも良いわけではありません。

文章形で提案内容を補足された方が良いでしょう。

3.新たに生じるリスクと対応策

3−1.リスク

 対策を実施する費用が大きくなる。また、様々な対策には新技術が必要なため、それを扱う人材と教育が必要となる。

■間違いではないものの、答えとしてふさわしくはないと考えられます。わかりやすいからです。わかりやすすぎて技術士でもわかっていることです。当たり前すぎて、このようなことを聞くために設問したのではないと考えるべきです。

3−2.対応策

 国からの協力金や総合評価方式での加点等のインセンティブを与えることが解決策である。また。PPP/PFIを推進して、民間企業の財源や技術力を活用することも重要である。

4.技術者として必要となる要件・留意点

 技術者は一企業や一部の部門の利益を優先するのではなく、常に社会全体の公益確保の観点から業務をしなければならない。社会状況や最先端技術の動向を常に把握しながら、業務ごとに見直しを図り、より良い社会になっていくよう努めなければならない。

■技術者としではなく、「技術者論理、社会の持続性の観点からの要件」です。確かにそのような心構えは必要ですが、ここでは具体的に問2の提案をもとに、「あなたならどう工夫して対応するか」と問われています。

Ⅱ−1−3 建設工事において使用される足場(つり足場を除く)の倒壊を防止するため、施工計画及び工事現場管理それぞれにおいて留意すべき事項を説明せよ。

足場の倒壊防止のために留意すべき事項を、施工計画時と現場管理時に分けて記述する。

■前置↑きはなくても構いません。

・施工計画

①足場本体を設置するスペース(幅、高さ、長さ)は、どれくらいか

②足場の足元の基礎地盤は強固で安定しているか

③足場施工のための施工ヤードは確保できるか

④足場設置後の作業はどんな用途か(コンクリート構造物構築や、点検作業など)

⑤作業の中で最も荷重が大きくなる時の荷重はどれくらいか

⑥直接作業でかかる荷重以外の、風荷重や地震荷重を考慮しているか

■正解はこの5,6でしょう。あとは一般的な注意であって、留意点とは違うようです。

⑦足場周辺の既存構造物等と連結することができるか

・現場管理

①設計された材料と同じ材料が現場に入ってきているか(材料検収)

②設計された図面通り、現場でも組み立てられているか

③足場の足元の基礎地盤は強固で安定しているか

 雨水により弱くならないよう排水に注意する

④1スパン当たりの荷重明示と、それが守られているか

⑤足場周辺の既存構造物等と連結しているか。もしくは一時的な杭や鋼材と連結しているか 

■チェックリストの羅列です。要因をまとめるように。分析的な視点が求められています。あまり常識的すぎるものはなくても構いません。

問題文Ⅱ−2−2   住宅が密集する市街地において鉄道新設建設(高架構造、下図参照)が行われており、このうち延長500mの工区の下部工工事(主に20m間隔で橋脚を設置、1基当たりの基礎と橋脚の合計体積は約310m3、杭の体積は約210m3)を実施することとなった。なお、この工区に接している公道は、工区の両端で交差している市道(計2本)のみである。また、鉄道用地の両側には、工事で使用可能な用地(幅員約4m、開業後道路として使用予定)が併設して確保されている。以上を踏まえて、本工事受注者の担当責任者として以下の内容について記述せよ。

(1)効率的な施工をするために検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち、本工事の特性を踏まえて重要と思われるものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2)本工事において、責任者として工程管理をどのように行うのか、留意点を含めて述べよ。

(3)関係者との調整により決定される本工事での施工条件を1つ挙げ、調整方針及び調整方策について述べよ。

1.効率的な施工のために、検討すべき事項と内容

①生コン車のルートの確保

 施工延長500mの中に、約20m間隔で橋脚(基礎と橋脚の合計体積約310m3)を施工する工事のため、生コン車の往来が非常に多くなる。また、工事エリアは住宅が密集する市街地のため、接触事故が起きないような幅員が広く、渋滞を避けることができる一般道の運行ルートを調査・選定することが重要である。さらに一般道から工事エリアに入る工事用道路との交差部をどこに設置するかの検討も重要である。

②施工ヤードの確保

 橋脚を構築していくのが主な工事で、重機による掘削、クレーン等の揚重機による鉄筋・型枠組立、コンクリートポンプ車によるコンクリート打設と、多岐の作業が発生する。作業ごとに作業のしやすい施工ヤード位置や面積が違ったり、材料の置き場等の調整が必要となってくる。本工事では、鉄道用地の両側に工事で使用可能な用地(幅員約4m、開業後道路として使用予定)があるため、この箇所をいつ引き渡す必要があるか等を関係者と調整し、施工ヤードとして活用するか判断する必要がある。あらゆる状況を把握して、総合的に効率的になる施工ヤードの確保が重要である。

③施工効率化の施工方法の検討

 当該工事では、ほぼ同じ形状のコンクリート構造物を複数構築していくと考えれるため、橋脚構築の効率化のための施工方法の検討が必要であると考える。検討する工法は下記の通りである。

③―1.プレキャスト化、プレハブ化

③−2.高流動コンクリート

■ここまでの考え方自体は間違ってはいません。ただし内容が冗長でとても読みにくいです。特に②は説明長いです。思いついたことを羅列するのではなく、要因毎にまとめて表現してください。それが論文の書き方です。

2.工程管理の方法と留意点

 当該工事では橋脚のコンクリート品質不良を発生させることが、工程遅延に一番影響すると考える。寸法、体積が大きく温度応力ひび割れが懸念される。そのため施工前に温度応力解析を実施し、目標ひび割れ指数を満足する配合や養生方法を決定することが重要である。施工時は、解析の諸条件と同じ施工ができているか、もしくは解析に比べ安全側で施工できているかの確認を行う。また、掘削、鉄筋・型枠組立等の作業進捗は、月間工程や週間工程で遅延が起きていないかの確認を行う。遅延している場合は、原因追及し必要に応じて人員増員等の対策を行うことが必要である。

■ここ↑も同じで冗長です。いろいろ問1で検討したことはどのように実行するのですか。書かれているのは温度応力ひび割れと工程遅延の管理だけです。偏りがあり過ぎます。

3.関係者との調整により決定される施工条件と、調整方法及び調整方策

 上記1.③の「コンクリート構造物の施工方法」である。現場の状況を把握し、各施工方法の品質や工程予算等を比較検討した資料を作成し、関係者と協議を行う。総合的に優れた工法を選択し、設計変更を行った後に施工を行う。

■外形的な建前だけで技術的内容が書かれていません。資料作成し比較検討するのは現場会議の常ですが、それは会議の手段であって、「調整」の中身の話ではありません。関係者協議は会議とか連絡を意味し、これ自体は技術士でなくとも出来ます。

                  以上

問題文Ⅲ−1   働き方改革関連法による改正労働基準法(平成31年4月施行)に基づき、令和6年4月から建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることとなった。また、公共工事においては週休二日対象工事の発注が拡大している。

建設業が引き続き、社会資本の整備・維持管理、災害対応、都市・地域開発、住宅建設・リフォーム等を支える役割を十分に果たしていくためには、建設業の働き方改革の取組を一層進めていく必要がある。

このような状況下において、週休二日が前提となった多工種工事を受注した。本工事の受注者(元請負人)としての立場で、以下の問いに答えよ。

(1)本工事のすべての工事従事者の週休二日を実現するため、施工計画を策定する際に検討すべき課題を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じる懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.多面的な課題抽出と内容

①いかにi-ConstructionやICT・デジタル技術を活用するか

建設業は、一品生産の業態、降雨等の自然影響が大きいため機械化が難しく、他産業と比べて生産性が悪い。また、調査・測量・設計・施工・管理・更新等の業務が多岐に渡り、関わる人材が大きく情報共有・伝達が非常に難しい。これらを解決し、生産性を向上するために、i-ConstructionやICT・デジタル技術を活用することが重要である。

■↑前半の前置きが長く、一方後半の結論が説明不足です。一番力説すべきなのに残念です。

下の2,3↓は比較的バランスは取れています。

②いかに建設業従事者の満足度を向上させるか

 建設業は3K職場と呼ばれ、社会的イメージが良くないとされている。労働負荷が大きく賃金が安い環境を改善し、魅力ある職場として担い手を確保する必要がある。そのために、建設キャリアアップシステムを施工計画の段階で導入することとし、活用することが重要である。就業履歴や保有資格を登録し、給与アップや社会保険の充実を図ることが可能となる。

③いかに適切な設計変更を推進するか

 上記②を推進し、週休2日を実現するには下請け企業の作業員の方々の給与アップが不可欠である。そのために元請け企業は、下請け企業に対して、今までの週休1日条件での見積金額でなく、週休2日条件での見積金額を提示するよう指示することが必要である。週休2日でも作業員の方々が今まで通りの生活ができるかが重要なポイントである。

■ここで段落を分けた方が良いでしょう。

そして、元請け企業にも利益が生まれるよう、設計変更の対象となる箇所があった場合には、発注者と迅速に協議をすることが重要である。適切な設計変更が行えるように、発注者は設計図書に設計条件、施工条件を明確に記載することが非常に重要である。

2.最も重要と考える課題と複数の解決策

2−1.最も重要と考える課題

 私が最も重要と考える課題は、「いかにi-ConstructionやICT・デジタル技術を活用するか」である。

2−2.複数の解決策

①    i-ConstructionやICT・デジタル技術の適用拡大

 国交省が主体となって推進しているi-Constructionでは、ICTやデジタル技術を主に土工事から進めている。測量や浚渫工へ適用は拡大してきているが、今後ほかの分野に幅広く推進していくことが重要である。

■「ほかの分野」とは何か。

②プレキャスト化、プレハブ化、高流動コンクリートの活用

 コンクリート構造物築造に対して、従来までの現位置で鉄筋・型枠組立てを行い、コンクリートを打設する方法からの転換が必要である。コンクリート二次製品工場で予め作製されたコンクリートを、現地で組立てる方法に転換し、生産性を向上させることが解決策である。また、普通コンクリートに比べて締固め作業が少なくなる高流動コンクリートを活用することで、人員の削減を図ることができ、生産性向上につながると考える。

②    遠隔地からの業務

 近年のICT・デジタル技術の発展に伴い、遠隔地からの業務が可能となってきている。例えば、スマートグラスを活用した施工指示や現場巡回である。そして5G通信がもっと身近になることで、大容量のデータ通信が可能になり、高精度な施工等も遠隔で可能になる。これらの遠隔地からの業務を活用することで生産性が向上できると考える。

生産性向上を提案したのに、なぜ高得点に評価してもらえないのか。それは、問題趣旨が生産性ではなく働き方改革を目指しているからです。

3.新たに生じる懸念事項とそれへの対策

3−1.懸念事項

 対策を実施する費用が大きくなる。また、慣れない対策を実施することに必死になり、結果的に生産性向上とならない可能性がある。

■余り難しくない話です。技術士でなくともわかる常識。もっと問題の本質を見極めた提案が欲しいところです。

3−2.対策

 国からの協力金や総合評価方式での加点等のインセンティブを与えることが解決策である。生産性向上につなげていくためには、国として新しい技術活用のための講習会を実施することや、モデル事務所等を設けて活用のためのマニュアル整備等を行っていくことが重要である。

■国の援助では主体性がありません。今はそのような時代ではありません。国家に資金もなく、半導体や量子コンピュータなど国益に直結する技術ならともかく、建設の支援はそこまで手厚くはしてくれません。社会・マーケット需要に対する正しい認識が求められます。

№30 R3年 建設部門、施工の答案について添削致しました。 2022/03/25

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この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、ⅠがB、ⅡはA、ⅢがBであり、Ⅱ・Ⅲ総合でBとなり不合格でした。大変残念な結果です。建設部門施工の技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できますし。指摘事項は今後の参考としてください。

 答案を全て拝見致しましたが、問題文で与えられた問題に対して、対策の必要性等は述べられていますが、肝心の主題である問題解決につながる課題が述べられていません。「いかに・・するか」という文が多く、この文形では困難な状況が分かるだけで、技術的な方針の提案がアピールできません。Ⅱ-2はケーススタディ問題のため、経験力が評価されたようで良かったです。

 技術士試験では、模範答案を暗記してアレンジして書いても合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして独自に提案することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。技術士は勉強すれば必ず合格します。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。ぜひ根拠に基づいた正しい勉強法で学ばれて、悩み無しで楽勝で合格していただきたいと思っております。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(25分14秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1 近年、地球温暖化がより深刻化してきており、社会の持続性を実現するために「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」の構築はずべての分野で重要な課題となっている。社会資本の整備や次世代への継承を担う建設分野においても、インフラ・設備・建築物のライフサイクルの中で、廃棄物に関する問題解決に向けた取り組みをより一層進め、「循環型社会」を構築していくことは、地球環境問題の克服と持続可能な社会基盤整備を実現するために必要不可欠なことである。このような状況を踏まえて以下の問いに答えよ。

(1)建設分野において廃棄物に関する問題に対して循環型社会を構築するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。

(2)全問(1)で抽出した課題のうち最も重要であると考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)全問(2)で示した全ての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項を示せ。

(4)全問(1)〜(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会持続可能性の観点から必要となる要件、留意点を述べよ。

( 1 ) 循環型社会の構築実現における多面的な課題

①  いかに建設廃棄物の発生を抑制するか

 ■↑ここは単刀直入に「再資源化」を言うべき。「いかに・・」の文は問題点を挙げるだけで、課題としての意味をあまり示していません。

我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備されたため、今後20年間で一斉に更新期に入り、維持管理・更新時代の到来により、インフラ構造の廃棄・廃止などによる建設廃棄物の大量発生が懸念される。  

■ここまで前置き。前提が冗長です。

再資源化に向けた取り組みを継続するとともに、社会情勢の変化を踏まえた発生抑制対策が重要となる。

■再資源化と発生抑制と2つではなく1つに絞る。再資源化に終始していて循環型社会に転換する視点がありません。

②  いかに高い再資源化率を維持するか

■2でもまた再資源化のダブリ

 建設廃棄物のリサイクル率は2018年度に97%に達するなど、過去20年間ほどで大幅に向上して高い水準で安定している。今後は、リサイクルの「質」の向上を図るため、リサイクルされた材料の用途に着目する必要がある。

■残念ながらあまり役立たない前置きです。 「リサイクルの質」ではあいまいです。 よって、建設副産物の排出者に課していた目標・指標に加え、リサイクル材の利用者に対しても目標を立てるように求め、再資源化率の維持を図ることが課題である。

■「目標を立てる」だけですか。本質的な再資源化の方法論に言及すべきです。

    3も↓1,2とダブリ

③  いかに再資源化率をさらに向上させるか

 維持管理・更新時代の到来により、大量の建設廃棄物の発生が想定されるが、それらは品質が悪い場合が多く、再資源化が難しく活用しづらい現状がある。そういった建設副産物を有効活用できる手法を確立し、再資源化率をさらに向上させることが課題である。

■「建設副産物を有効活用」できればよいが、それこそが難問です。無理な提案では課題を示したことになりません。

( 2 ) 最重要課題とその解決策

 前述の①いかに建設廃棄物の発生を抑制するかを最重要課題として以下に解決策を示す。

■2の解決策はいずれもOKです。

①インフラ構造物の長寿命化

 インフラメンテナンスにおいて、施設に不具合が生じてから対策を行う「事後保全」から、施設に不具合が生じる前に対策を行う「予防保全」へと転換する。また、点検⇒診断⇒措置⇒記録⇒(次の点検)を一連の流れとするメンテナンスサイクルを構築し、効率的・効果的に維持管理を行うアセットマネジメントを導入する。これらによりインフラ構造物の長寿命化を図ることで、その廃棄・廃止を最小化し、建設廃棄物の発生を抑制する。

②使用量の低減

 コンクリート構造物の新築工事においてプレキャスト工法を採用することで、型枠資材や仮設資材を低減し、現場から搬出される産業廃棄物量、木材資源消費量を削減する。また、高強度コンクリートを使用することで、断面のスリム化や部材の省略化を図り、コンクリートの使用量を削減する。構造・材料の選定においては、コンクリート構造と比べて完成品の重量を軽量化できる鋼構造を採用することも使用量の削減には有効な手段である。

③再利用の促進

 建設発生木材はチップにして樹脂で固め、公園の歩道などに利用する。ICT技術を活用し、建設発生土の情報を他事業と共有し、事業間でタイミングよく融通することで再利用を促す。道路工事においては、既設アスファルト舗装を現地混合することで、再生路盤材として再利用する取組などが挙げられる。

( 3 ) 波及効果及び懸念事項とその対応策

①波及効果

 アセットマネジメントの活用、プレキャス工法の導入、I C T 技術の活用により、各業務において生産性向上効果が期待できる。

②懸念事項とその対策

 I C T 技術などの新技術の活用には建設技術に加え、情報工学やロボット工学にも精通した建設技術者が必要となる。しかし、現状では該当する技術者は少なく、システムが機能しない懸念が考えられる。対応策として、講習会・勉強会を開き、建設分野の技術者に対する教育強化や、I T 業界など他分野からの人材獲得が挙げられる。

■ICTは提案のごく一部にすぎません。要求は「全問(2)で示した全ての解決策を実行して生じる懸念事項」です。

( 4 ) 業務を遂行する上で必要となる要件

 技術者倫理の観点として、社会全体の公益を確保する視点を持って業務に取り組むことが要件となる。

■これ↑は当然のこと。それが何かと問われています。

また、I C T 技術の発達により情報化・データ化が進む現代においては、情報の不正取得・不正流出を行わない高い倫理観を持つことも必要な要件となる。

 社会持続性の観点においては、維持管理・更新工事に伴い大量発生する建設廃棄物の効率的なリサイクルシステム・減量化システムの構築が必要である。

Ⅱ-1-2 「建設キャリアアップシステム」について、導入の目的とシステムの概要を説明せよ。また、技能者と事業者の各々にとってのメリットを説明せよ。

( 1 ) 導入の目的とシステムの概要

 建設キャリアアップシステムは労働者の処遇改善や育成を目的としたシステムである。システムの概要として技能労働者の就労履歴、保有資格、社会保険加入状況などをデータベースとして蓄積し、共有化することで技能の見える化を図るものである。

( 2 ) 技能者のメリット

 技能の見える化により高い技術力や豊富な実績を持つ技能者が適正に評価されることで、賃金の向上など労働条件面での改善が期待される。また、技能者を保有する専門工事会社の施工能力の見える化にもつながるため、高い施工能力を持つ専門工事会社は多くの受注機会を得ることができ、経営の安定化を図ることができる。

( 3 ) 事業者のメリット

 技能の見える化により技能者の技術力や各専門工事会社の施工能力を適正に把握することが可能になり、各工種において最適な人員配置が可能になる。また、技能者の保有資格を建設キャリアアップシステムで確認できるため、工事現場への新規入場時に資格証を確認する必要がなくなるなどの業務の省略化が期待できる。また、就労履歴を確認することで技能者に適切な休日を取らせる配慮が可能になる。社会保険加入状況を確認することで協力会社の健全度を把握できる。

■良く書けています。申し分ありません。

Ⅱ-2-1 模式図に示すように、幹線街路下において商業施設と地下街を連絡するため、プレキャスト構造の地下通路10m(開口:幅7m×高さ4m)を開削工法にて新設する工事を実施することになった。工事に当たり、路上での作業は夜間に限られ、作業時間帯以外は交通開放し、周辺への配慮も必要とされる。なお、仮設構造物を含む設計の妥当性は確認済みであり、工事範囲及びその周辺に地下支障物はないものとする。以上を踏まえて、本工事の受注担当者として、以下の内容について記述せよ。

(1)施工計画を立案するために検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち、本工事の特性を踏まえて重要なものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2)本工事において、責任者として安全管理をどのように行うのか、留意点を含めて述べよ。

(3)関係者との調整により決定される本工事での施工条件を1つ挙げ、調整方針及び調整方策について述べよ。

( 1 ) 施工計画を立案する上で検討すべき事項

■適切な施工管理の重要度判断ができています。

①  揚重機械の選定と据え付け場所の検討

 プレキャスト部材を設置する際には、揚重能力・作業半径を考慮した適切な揚重機械を選定する必要がある。路上での作業が夜間に限られ、作業時以外は交通開放しなければいけない施工条件を考慮すると、移動式クレーンの使用を検討する。

揚重機械の据え付けを地山上に行う場合は、その地耐力を確認し、必要に応じて地盤改良などの補強を行う。路面覆工上に据え付ける場合はプレキャスト部材揚重時の上載荷重を考慮して覆工桁などの仕様を決定する。

■段落分け↑した方がよいでしょう。

②地盤改良による近接構造物への影響

 地盤改良により地盤が一時的に乱されるため、近接構造物(商業施設)への影響を適正に評価し、場合によっては防護を行う必要がある。地盤改良の施工においては、近接構造物への影響が小さくなるように、近接構造物に近い箇所から遠い箇所に向かって施工を行うことを原則とする。

③土留め壁・土留め支保工の計測管理

 土留め壁に過大な変形が生じた場合に土留め背面の地盤沈下などが生じるため、土留め壁・土留め支保工の計測管理を行い、適切に管理する必要がある。土留め壁については、変位計・傾斜計を設置し、各施工ステップ、大雨・台風・地震などに適時計測を行い変状が発生していないかを確認する。土留め支保工においては、切梁にひずみゲージ・土圧計を設置し、土圧・水圧による過度な荷重が作用していないかを確認する。

( 2 ) 安全管理における留意点

 公衆災害の防止に努める。設置する路面覆工上が歩道として利用されることを考慮すると、路面覆工の段差を極力なくすことで、車椅子利用者が安心・安全に通行できる環境を整える。また、点字ブロック・誘導ブロックを適切に設置することで、視覚障害者に対する配慮を行う。

 3 大災害の1つである墜落・転落災害の防止に努める。開削工事においては、覆工板を開閉して掘削作業などを行うことになるが、その際に生じる開口部には手摺などの転落防止措置を確実に実施する。また、高所作業においては、安全帯・フルハーネス等の墜落防止用器具を使用できる安全設備を必ず設置する。

( 3 ) 関係者との調整方針・調整方策

 関係者との調整により決定される施工条件として、騒音・振動の制限を挙げる。作業が基本的に夜間作業となることを踏まえると、近隣住民に対して騒音・振動に対する配慮を行う必要がある。

■段落分けした方がよいでしょう。

対策として、騒音・振動の制限値は法令より厳しい値である55 デシベルとして、施工計画・施工管理を行う。使用機械は低振動・低騒音型を採用する。局所的に騒音が発生するエリア全体を防音シートで囲うことで、騒音の発生源における防音対策を行うことも有効である。

Ⅲ-1 働き方改革関連法による改正労働基準(平成31年4月施工)に基づき、令和6年4月から建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることになった。また、公共工事においては週休二日対象工事の発注が拡大している。

 建設業が引き続き、社会資本の整備・維持管理、災害対応、都市・地域開発、住宅建設・リフォーム等を支える役割を十分に果たしていくためには、建設業の働き方改革の取組を一層に進めて行く必要がある。

 このような状況下において、週休二日が前提となった多工種工事を受注した。本工事の受注者(元請負人)としての立場で、以下の問いに答えよ。

(1)本工事のすべての工事従事者の週休二日を実現するため、施工計画を策定する際に検討すべき課題を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。

(2)全問(1)で抽出した課題のうち最も重要であると考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)全問(2)で示した全ての解決策を実行して、新たに生じる懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた上で考えを示せ。

( 1 ) 週休二日を実現する上での多面的な課題

①    新たな生産システムの活用による生産性向上

建設工事の場所、規模及び仕様などは発注者が決定し、一品ごとに異なる。受注者はその都度、実施設計、積算、施工計画、施工管理を行う必要がある。また、工作物の完成までには多くの技術者や技能労働者を必要とする典型的な労働集約型産業であるため、生産性向上が他分野に比べて遅れており、休日の確保が困難な状況となっている。これを解消すべく、新たな生産システムを活用して生産性向上を図ることが課題である。

■新たな生産システムとは何のことか。生産性向上に寄与する建設工学の原理を述べるように。

②最適な人員配置による生産性向上

 各協力会社においては得意・不得意な工種・作業が存在し、不得意な工種を担当させた場合には作業効率が格段に落ちる場合がある。近年では建設キャリアアップシステムの導入により協力会社の施工能力の可視化が進んでおり、それらを活用することで最適な人員配置により生産性向上を図ることが課題である。

■間違いではありませんが、ごく常識的なことです。つまり人員を減らすこと、すなわち生産性向上です。

③多能工の登用による生産性向上

 労働集約型の建設業においては、1つの工種の工程遅延が発生すると他の工種の工程にも影響を与え、その都度、工種間の工程調整が発生する。そのため、安定した休日確保が困難となっている。よって複数の工種を担当できる多能工の登用により、工種間の工程調整業務の省略化や工種間の時間ロスをなくすことで、生産性向上を図ることが課題である。

■いずれも新たな生産方式の提案であり、幅広い視点とは言えません。また、こうした技法のどこが働き方改革なのですか。主題に応えていないようです。これが主な減点要因ではありませんか。

( 2 ) 最重要課題とその解決策

■2も同じです。間違いではありませんが、働き方改革の主題に応えていないようです。

 前述の①新たな生産システムの活用による生産性向上を最重要課題として以下に解決策を示す。

①三次元C A D、 C I M ・B I Mの活用

 施工計画・施工管理において、三次元C A D及びC I M ・B I Mを活用する。特にC I M ・B I Mは従来の3次元C A D に部材ごとの属性を持たせたものであり、積算における数量算出の自動化など業務の効率化に有効である。また、3 D モデルを用いて、施工ステップを可視化することで、集中的な事前検討による後工程での手戻りの抑制効果(フロントローディング)が期待できる

②無人化機械及びロボットの活用

 情報化施工に対応したI C T 建機を用いて、マシンコントロール・マシンガイダンス等の技術を活用することで、業務の自動化・機械化を推進する。測量業務においては、ドローンやL S技術を活用することで、作業員の負担軽減と作業の効率化を図る。鉄筋加工ロボットや建築仕上げロボットを活用することで、建築分野においても自動化・機械化を進める。

③プレキャスト化やユニット化の推進

 工場で製作したプレキャスト製品は、品質にばらつきが少なく、品質を担保しやすい。コンクリートの二次製品や機械式定着鉄筋、機械式継手といった製品・技術は採用実績が豊富で、作業の効率化にも効果がある。そのため、建設資材のプレキャスト化やユニット化を進めることで、品質を確保しつつ生産性向上を図る。

( 3 ) 新たな懸念事項とその対応策

①I C T 技術者の不足

 I C T 技術の活用には、建設分野の知識だけでなく

情報工学やロボット工学などに精通した技術者が必要になる。しかし、現状の建設業界では該当する技術者が不足しており、I C T 技術を効率的に活用できなかったり、故障時に対応できないなどの懸念がある。

■懸念事項としてはやや常識的です。このようなことを確認するために技術士試験をしているとは思えません。

 対応策として、勉強会や講習会を開き、建設分野の技術者に対するI C T技術の知識強化を図ることや、I T 業界などの他分野からの人材獲得が挙げられる。

②    コスト増加による工事原価の圧迫

 I C T 技術などの最新技術は初期導入コストやシステムの維持管理費が高く、その導入により工事原価を圧迫する懸念がある。

■コストも常識。見積り段階でわかりますので、対処は可能です。したがって懸念とは言えません。

 対応策として、複数の事業者間でI C T 建機やシステムを共同運営することで、その費用を分担する方法が挙げられる。また、発注者に対して生産性向上に資する技術の有用性を説明し理解してもらうことで、その費用の一部もしくは全てを負担してもう方法も考えられる。

№29 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 2022/03/03

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この答案についての講評

試験結果は、必須科目がA、選択科目がB,Aと評価され、残念ながら不合格となっています専門的知識はお持ちだと思いますが、出題者の要求に対してダイレクトに答える練習が不足しているように拝見いたします。答案をどう修正していくかについて、大まかな考え方は音声ガイドの説明で申し上げますのでお聞き願います。

 これまで2回受験されたとのことですが、応用力を高める練習はされたてこられたでしょうか。文章の直しと暗記だけでは問いに対して的確に応えられない可能性があります。これまで学ばれた「文章は起承転結で書く。原稿用紙の最後の行まで書く。模範答案を暗記してアレンジする。最後に「以上」と書く」という戦略は昔の方法です。答案の中でも、当たり前の答えが多く、技術士としての提案が少ないように感じます。技術士問題は、ヒントがなく、出題趣旨が難解です。出題者の意図が解釈できないと実力を発揮できません。

 本講座のパーフェクトコースで学ばれると、コーチング指導によって、コンピテンシーを発揮されて、楽勝で合格できます。受講されている方々の満足度を高めるように努めており、皆様から高い評価をいただいておりますので、アンケート結果をご覧ください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(24分12秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題Ⅰ-2    近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新な取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.多面的な課題の抽出と分析

①多重防御による事前防災(観点:被害の最小化)

 近年、大規模な自然災害による被害が各地で連続的に発生しており、国民の生活に大きな影響を与えている。また、長期間にわたる復旧・復興に伴い、多大な労力や資金を費やしており、財政的に厳しい状況である。

■問題文と同じ内容の繰り返しです。肝心の多重防御の課題や理由は書かれていません。

そのため、被害の最小化を目的とした、多重防御による事前防災を進めていくことが課題である。

②避難の円滑化・迅速化(観点:災害弱者の対応)

 突発的な降雨や強風による災害が多発しており、高齢者などの災害弱者が逃げ遅れによる被害が発生している状況がある。

そのため、災害状況情報や共助体制を強化し、避難を円滑化・迅速化していくことが課題である。

③インフラ構造物の集約化(観点:地域社会の維持)

厳しい財政状況の中、大都市一極集中が進み、拡散している地域社会の活力は低下している。

限られた予算や労力では、社会資本の整備を兼ねつつ、災害対策を持続的に行っていくことは限界である。

そのため、地域社会の維持を目的とした、インフラ構造物の集約化を図っていくことが課題である。

2.最も重要な課題と複数の解決策

 突発的な連続災害に対応するためには、人的・建物被害を最小限にし、復旧・復興を加速化していくこと

が最も有効であると考える。

そのため、①多重防御による事前防災を最重要課題とし、解決策を以下に列記する。

①河川の断面拡大・氾濫危険度の監視

 突発的な集中豪雨により河川の水位が急激に上昇し、住民の避難時間に影響が生じている。

そのため、河道掘削や築堤・嵩上げにより、河川断面を拡大しリードタイムを確保する。

また、河川に危機管理型水位計や無人化流量観測機を設置し、きめ細やかな状態監視を可能にし、住民の初動対応を迅速化する。

②国土交通プラットフォームの構築

 近年は水災害、風災害、土砂災害の単体ではなく、複合的な要因による災害が多発している。

そのため、国土の情報をサイバー空間で再現し、そこに自然現象によるシミュレーションを実施する。それを基にフィジカル空間で各対策を実施する。これにより、最適な防災対策を検討できる。

③道路ネットワークの確保・電気自動車の活用

 災害時には迅速な人命救助や被災地への支援物資輸送を行えるような対策が必要である。

そのため、暫定2車線の4車線化や無電柱化を進め、災害時の道路ネットワークを構築し、リダンダンシーを確保する。また、給電機能を保有する電動車を移動式電源として用いることで、電気設備の復旧が間に合わない際に応急的な対応ができる。

3.解決策に共通するリスクと対策

①リスク:防災意識の低下

整備されたハード・ソフトによる事前防災対策への信頼性が高まるほど、住民の危機管理などの防災意識は低下する恐れがあり、二次災害などによる被害が発生する可能性がある。

②対策:効果的な防災活動の実施

防災活動時には複合災害や二次災害をCGにより再現し、それを基に災害時のマイ・タイムラインを作成させ、防災意識を確実に定着させる。さらに緊急速報メールなどによるプッシュ型配信を実施し、住民の初動対応の迅速化を図る。

4.業務を遂行することに伴う要件

①技術者倫理

予算や工期の制限がある中、防災対策箇所は大量に存在するが、決して計算データの偽装や施工不良があってはならない。コンプライアンスを遵守し、地形特性や構造物の重要度に応じた優先順位を検討し、公衆の安全を第一に考えていくことが求められる。

■偽装や不良はあってはいけませんが、しかし目標として悪すぎませんか。技術者倫理とはそのようなことを防ぐためにあるのではありません。もっと厳しい倫理観が欲しいです。 

②社会持続可能性

自然環境の保護を考慮し、生物多様性の保全や地球温暖化防止を念頭に置いた、グリーンインフラ計画を策定する。具体策として、河川堤防における在来種を用いた緑化などが考えられる。

Ⅱ-1-4 既設コンクリート構造物において、浮きやエフロレッセンスを伴うひび割れが局所的にみられた。当該コンクリート構造物を長期間供用していくために詳細調査計画を策定すべく、非破壊検査を適用したい。そこで、生じている現象から推測される構造物内部の変状を想定したうえで、求める情報と適用すべき非破壊検査手法の組合せを2つ提案し、それぞれの計測原理及び実施に対する留意点を述べよ。ただし、微破壊により構造物内部を直接調査する方法を含まないものとする。

①    PCグラウトの未充填・インパクトエコー法

 コンクリート表面にPC鋼材に沿ったひび割れが生じており、PC鋼材のシース内に水分が供給と想定。

■水によってどんな変状が生じたか。だから、求める情報は何でしょう。単刀直入に言うように。

(1)インパクトエコー法の原理

 コンクリート表面から衝撃弾性波を内部に行い、その時間や波形から、コンクリート内部の空隙やPCグラウトの未充填箇所を確認する手法である。

■時間差で判定するのが原理です。

(2)実施に対する留意点

 インパクトエコー法の結果判断は、技術者によって左右されるため、資格を有した技術者を選定する。

■留意点と言うより、禁止事項かと思います

②鉄筋の腐食可能性・自然電位測定法

 コンクリート表面に鉄筋に沿ったひび割れが生じており、鉄筋が腐食している可能性がある。

(1) 自然電位測定法の原理

 腐食により変化する電位を測定することによって、鋼材の腐食可能性を確認する手法である。

■これでは言葉の説明です。 コンクリート中の鉄筋などの鋼材腐食は、電荷の移動を伴う電気化学反応で、腐食を起こしている箇所をアノード域、その周囲をカソード域という。

鉄筋が腐食しているとき、電子は鉄筋中をアノード域からカソード域へ流れ、アノード部(腐食部)の電位は卑側(マイナス側)に変化します。この電位を測定することにより、鉄筋の腐食推定を行う。http://kitanihonhihakai.co.jp/CONCRETE/entry14.html

(2)実施に対する留意点

 コンクリート表面被覆やエポキシ樹脂塗装鉄筋が施工されている場合、電気を通さないため、適用可能な構造物かを事前に調査する

■留意点と言うより、適用除外事項であり、それよりは効果的に行える方法を提案した方が良いでしょう。

Ⅱ-2-2  建設から30年以上が経過し、老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し、現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で、あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を設定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行ううえで、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.調査・検討事項

対象構造物:道路橋のRC橋脚

老朽化状況:コンクリート表面にひび割れや浮き

①構造物諸元・劣化状況の調査

 設計図書等を確認し、適用基準・荷重条件・使用材料等の基本情報を調査する。

 環境条件や劣化状況・損傷状況など、構造物の現在の状態を調査する。

②耐震補強検討

 環境条件や資機材の搬出経路、施工ヤードや周辺施設・支障物などを事前に調査する。その現地条件を基に、過去の類似事例や耐震性能・施工性・維持管理性等を考慮し、最適な耐震補強工法を検討する。

■築30年の既設構造物がどのような問題を抱えているか想定できていません。予備知識なしで解くみたいな姿勢では経験力が感じられません。

2.業務手順および工夫点・留意点

①机上調査・現場調査

 留意点:調査結果を基に、耐震性能や耐震補強工法を検討するため、手戻りやミスを防ぐこと。

工夫点:綿密な調査計画を策定し、各データを活用する前には、異常データの有無や追加調査の要否を関係者全体で照査する。

■ミス防止や問い合わせなど、特に鋼コンの技術応用とも思えません。

②耐震性能の評価・耐震補強工法の検討

留意点:劣化因子により耐震性能に支障を生じさせないこと。また、RC巻き立てなどの部材補強工法は、架橋位置の設置状況等により、仮設や施工が大規模となることや死荷重増加による基礎への影響があること。

工夫点:塩分含有量や鉄筋の腐食状態を考慮し、今後の耐久性も含めた検討をする。また、免震装置等による橋全体系の補強を視野に入れて検討を進めることで、大規模な工事を不要とする。

③周辺施設管理者との協議

 留意点:検討した耐震補強工法や施工計画を基に、周辺施設管理者と事前に協議を行い、手戻りが生じないようにすること。

工夫点:工事内容を三次元モデルにより段階ごとに説明し、周辺施設の管理者側の懸念事項等を事前に解決する。河川管理者であれば河川阻害率、鉄道・道路管理者であれば建築限界への説明を的確に行う。

■一般的に行う事項ばかりのようです。やはり築30年の既設構造物に対するねらい、焦点が欲しいです。

3.関係者との調整方策

①発注者と施工者

 CIMを用いての三者会議を適宜実施し、フロントローディングにより、安全性・品質性・施工性などを考慮した最適な計画を策定する。

■CIM、フロントローディングのキーワードはともかく、問2の業務を具体的にどう進めるかの話に集中してください。

②周辺住民

工事説明会やビラの利用により、周辺住民へ工事内容を周知し、事前に工事への理解を得ることで、円滑化を図る。また、そこで得られた情報は第三者への安全対策に活用する。

■住民に「周知、理解を得て、・・活用する」と一方的に伝え、行うだけで、私が行う「調整」が明らかではありません。「調整」の言葉の意味は何かご存じですか。調整とは新たに何かすることではなく、「スピード調整」という言葉にあるように、何かを減じて、別な何かを増す行為です。

Ⅲ-2  我が国では、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。

(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。

(2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.多面的な課題の抽出と分析

①いかに新技術を活用したシステムにしていくか

 厳しい財政状況下において、膨大な構造物を管理していくためには、適切な時期に適切な補修・補強を実施する必要がある。しかし、現在の労働集約型体制では、時間や労力を多く要する。

そのため、予防保全の促進を目的とし ←ここまで前置き

、新技術を活用したシステムにしていくかが課題である。

■予防保全に必要な新技術とは何ですか。自動化、ロボット化を挙げるように。新しければよいわけではありません。

また、問題文と同じ内容の繰り返しが冗長です。前置きは簡潔に、自身の提案を単刀直入に言うのが良いでしょう。

②いかに高規格材料により機能を向上していくか

 構造物の老朽化や連続的な災害により、膨大な構造物の機能が低下しているが、限られた予算や人員で管理していくには限界がある。

そのため、高強度や高耐久性を持ち合わせた高規格材料を用いり、構造物の機能を向上していくかが課題である。

③いかにインフラ構造物を集約化していくか

人口減少・高齢化が進む中、大都市一極集中により、拡散している地域社会の活力は低下している。

その中で災害復旧や新たな防災対策工事を兼ねつつ、今後持続的に予防保全を実施していくことは困難である。そのため、予防保全を確実に進めることを目的とし、インフラ構造物の集約化を図っていくことが課題である。

2.最も重要な課題と複数の解決策

人口減少が進む中、膨大な構造物の予防保全を促進するためには、属人性の高い従来手法を見直し、新技術を用いることが最も有効である。そのため、いかに①いかに新技術を活用したシステムにしていくかを最重要課題とし、解決策を以下に記述する。

■課題1を宣言するだけでOKです。前置き↑不要です

(1)モニタリング技術による点検の効率化

 予防保全を効率的に進めるためには、属人性の高い点検作業を効率化していくことが求められる。

そのため、遠隔でリアルタイムに構造物の変化等を検知することが可能なモニタリング技術を活用する。  

これにより、点検の効率化が図れるとともに、得た情報は設計などへフィードバックできる。

(2)AIを用いた診断技術の高度化

 予防保全を合理的に進めるためには、正確な診断が求められるが、現在主流となっている人間頼りの方法では技術者の技量に左右されるため、診断結果にばらつきが生じる。

そのため、撮影した画像や打音調査の結果から、損傷の進展状況や健全性を自動的に評価することが可能なAI技術を活用する。これにより、正確で定量的な結果を得ることができる。

(3)インフラ・データプラットフォームの構築

 予防保全を戦略的に進めるためには、得られたデータを効果的に利活用し、維持管理サイクルを確立していくことが求められる。そのため、各管理者が保有している点検診断やその後の修繕更新データを一元的に集約化・共有を図れる、インフラ・データプラットフォームを構築する。これにより、予防保全を高度・効率的に進めることができ、小規模自治体における予防保全も補助することもできる。

3.解決策に共通するリスクと対策

①リスク:技術の空洞化

近い将来、熟練技術者の大幅な離職が予想される。

その中で現場での複雑な作業が少なくなることによる技術伝承の場の喪失、ICT機器やマニュアルへの依存が生じる。これにより、技術の空洞化が発生する可能性がある。

対策:育成システムの再構築

官民学が連携しICT技術と現場技術力を兼ね備えた技術者を育成する。

熟練技術者の知識や技術をAIやloTによりナレッジマネジメント化し、それをOFF-JTにより効果的に学習させることで、技術力を向上させる。

また、地域コンソーシアム等でICT技術の研修やVRを用いた仮想ICT工事を実施する。これらにより、新たな育成システムを構築する。 

№28 R3年 機械部門 加工・生産システム・産業機械の答案について添削致しました。 2022/01/19

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この答案についての講評

 試験結果は、CAAでした。ご自身が疑問を訴えているように、必須ⅠとⅢの結果が違い過ぎて、その違いを分かりかねているとのことでした。また必須Ⅰは部門全般に関わる社会課題に対する問いだと思いますが、部門全般とは何かが確信持てないみたいです。今回の試験では何とか答案にまとめられたようでよく頑張りました。ただし、技術士の専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。次回試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。音声ガイドのコメントをお聞き願います。

 内容的には、Ⅰ-1では課題3つとも当然すぎる話で、技術検討らしい内容となっていません。なぜこうなったかというと、データとデジタル技術の活用/顧客や社会のニーズ/ビジネスモデル変革/業務変革⇒競争優位・・・というこの問題趣旨が見えていなかったようです。こうした本質的な事項、問題趣旨が見えずに減点されている人が後を絶ちません。

 Ⅱ-1では、機器の寿命向上などあまり、重要ではない事項に着目されたようです。特徴が求められましたが「使い方」と誤られたようです。Ⅱ-2では手順と工夫は非常に良い内容であり、A評価は納得致します。末尾の提案として、環境負荷低減に対して環境アセスを述べられていましたが、具体的に何をするかまで挙げればさらに良かったです。実はこうした本質を見抜く力が求められるのです。

 Ⅲでは、一方、自身の暗記答案への誘導が見られ、これはとても危険です。テーマの4材料と鉄の合体、軽量化とあまり関係もありません。一般的な機関製造の話に発散したようです。それでもA評価を得られてよかったです。

 これまで3回目受験されて、苦労されているご様子なので残念です。しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(19分15秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題   Ⅰ-1 経済産業省が2018年に12月に発表したデジタルトランスフォーメーション(DX)推進ガイドラインには、DXの定義として「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と謳われている。近年、米中貿易摩擦、英国のEU離脱、保護の高まり、さらには新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、世界の不確実性が高まっている。このようなビジネス環境の激しい変化に企業が対応し競争力を維持していくためには、既存の枠組みに捕らわれずに時代の先を読んで企業を変革していく能力が求められており、そのためのDXへの取組をどのように加速させていくかが我が国製造業の直近の課題となっている。 

()このような時代の変革期の中でDXを推進していくに当たり、技術者の立場で機械技  術全般に関する多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。  

()抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する機械技術者としての複数の解決策を示せ。 

()提案した解決策をすべて実行した結果、得られる成果とその波及効果を分析し、新たに生じる懸念事項への機械技術者としての対応策について述べよ。   

()前問()()の業務遂行に当たり、機械技術者としての倫理、社会の持続可能性の  観点から必要となる要件・留意点について述べよ。

1.DXを推進していく上での課題を3つ述べる。 

3課題とも当然すぎる話で、事務担当者でもわかります。技術検討以前の内容です。なぜこうなったか。データとデジタル技術の活用/顧客や社会のニーズ/ビジネスモデル変革/業務変革⇒競争優位・・・この問題趣旨が見えていなかったようです。正解が見えずに、かつ失点しないように、一般論を披露して点を取る作戦では限界があります。この書き方で厳しい評価を受ける方が少なくありません。 

課題1.デジタル活用人材の育成 

デジタル技術の利活用を推進するには、データ分析ができる人材の育成が必要である。データサイエンティストなどへ外部に依存すると製造に関する知見が不足することが多い。そのため、自社の生産技術者や設計者のデジタルスキルを向上させることが課題である。 

課題2.設備のデジタル技術化対応 

日本の製造業社が保有する設備はデジタル出力を備えていないものが多い。設備の稼働状況や圧力、温度などは、計器で表示されるだけでデジタル出力できない。レガシーシステム(LS)と呼ばれる古い機器へのデジタルデータ出力機能を付加することが課題である。 

課題3.デジタル技術にかかるコス

デジタル技術の導入に必要な3DCADCAECAMなど設備導入、データ利活用のための人材育成などに関るイニシャルコスト、ランニングコストが課題である

.最も重要と考える課題

■これだとほとんど前提と同じ。課題を考えたことになりません。内容的にも総花的なデジタル化論。正解が見えないとこのような状態に陥ります。

課題2LSのデジタル技術への対応と考える。設備のデジタル化により、稼働状況把握による予防保全、予兆保全が可能でAIと組み合わせれば、熟練技能者の経験に基づく保全点検方法からの脱却を図ることができる。設備の稼働状態をデジタルデータとして出力できれば、現実の設備とシミュレーション上で同一の状態を再現するデジタルツイン技術も実現できる。製造情報のデジタル化により、製品の開発期間、品質向上など競争力向上に貢献できると考えるためである。

2.1解決策1インターフェイス(IF)機能の付加

 射出成形設備を例にすると、成形機とチラーシステム、材料リサイクル機など複数の機器を組み合わせて使用する。それらの機器はデジタル出力IFがないものや、規格が異なる。これらの機器からデジタルデータを取り出すため、ラズベリーパイなど簡易なPCの役割を果たす機器を用い、アナログ信号からデジタル信号に変換する。またPythonなど、汎用プログラムを用いてデータの収集を行えるようにする。

■情報工学的な話となってしまって、データとデジタル技術の活用/顧客や社会のニーズによって、ビジネスモデル変革し業務変革する趣旨が見えません。

2.2解決策2:アナログ情報の利活用

 LSと呼ばれる古い機器には設備の状態を示すカラーランプや指針を有するアナログメータを備えたものが多い。指針を画像データと認識し文字のOCR化を行う。またランプの色情報も画像認識することで状態をデジタル情報として活用できるようにする。

2.3解決策3:デジタル化システムの最小化

 IFの整備、画像認識により収集したデジタルデータを収集、分析する場合、すべてをクラウドに挙げると大きなコストがかかる。現地で処理すべきデジタル情報は機器の近くのEdgeに処理機能を有し、複数の機器から多くのデータ、いわゆるビッグデータはクラウドに保管するなどの棲み分けを行う。これにより、設備の導入コストの最小化を図ることができる。

.成果と波及効果及び新たに生じる懸念事項に対する対策

3.1成果と波及効果

 成果として既存設備の情報をいわゆる暗黙知であるアナログデータから形式知であるデジタルデータへと変換することが出来る。波及効果として既存設備を使用するため、導入コストを抑制できる。低コストで導入できると日本の製造業の約9割を占める中小企業への浸透が進み、資金不足、自前主義、情報連携不足による受注機会の遺失を抑制できる。これにより、ものづくりの競争力を向上させることができる。

3.2新たに生じうる懸念事項に対する対策

 デジタルデータ化により、情報のコピーが容易になり、ノウハウの流出が懸念される。対策として、情報へのアクセス権の設定、VPN通信網の使用を行い、セキュリティの強化を図る。

.技術者倫理、持続可能な社会実現のための留意点

 情報技術、運用にあたっては法令の制定、施行が追い付いていない場合が多い。 そのような法令未整備の分野においては自社、業界にとって都合の良い解釈をするのではなく、社会の公益性を第一とした社内ルールづくり、業界標準づくりを行う。

また、機器のデジタル化により機器の暴走などが行らないよう安全性を第一に業務を遂行する。 以上 

■法整備レベルでは最低限の倫理です。暴走も最低限。あってはならないに決まっています。もう少し高次な目標はありませんか。

問題文 -1-2 近年、代表的な機械式プレスの1つであるクランクプレスについては、駆動源をサーボモータとするサーボプレスが普及している。従来タイプのクランクプレスに対するこのサーボプレスの特徴を記述せよ。

機械式クランクプレス、サーボプレス(SP)の構造は金型の下型を取り付けるためのボルスタと金型の上型を取り付けるためのスライドから構成される。 機械式クランクプレスはACモーターの回転力をフライホイール(FW)にエネルギーを蓄積することより加工力を得る。一方

■ここまで↑は前置きです。従来式については書かなくても構いません。以下番号を振って段落を分けるように。

1.  サーボプレスはFWを用いず、DCサーボモータ(DC SM)の回転エネルギーから加工力を得る。DC SMの進化により駆動トルク向上のためのギヤをなくした構造のものもある。

機構の違いだけでなくその効果の違いは何か。

SPの代表的な特徴は、1工程内で加工速度の任意制御、回転方向の切り替え(正回転、反回転)、正回転と反回転を短い区間で繰り返す動き(振り子モーション)を行えることにある

「振り子」の効果は何か。次の記述とダブリ。

2.  また、正回転と反回転を高速かつ短ストロークで行うことにより振動動作を行うこともできる。これにより、抜き加工(せん断加工)において、被加工材を工具(抜きパンチ)が通過し終わる際に発生するブレイクスルー現象抑制によるせん断面精度の向上、プレス機械のフレーム、ボルスタにかかる衝撃荷重の減少による機器の寿命向上を図ることができる。

ここでは主要な↑事項ではありません

これ↓はサーボPの特徴ではなく、使い方でしょう。

3. また絞り加工では、振動動作により、絞りパンチと被加工材の接触箇所をわずかにずらすことで、加工硬化した箇所を避けながら被加工材を延ばすことができ、絞り時の破れを防止することができる。またSPの動作はプログラムとして記録できるため、IoT化にも繋げることができる。以上

IoTはここでのテーマではないでしょう。

問題文   Ⅱ-2-1 加工プロセスは環境に負荷を与えている。切削を例に挙げると電力消費に加えて切削液や洗浄液等を含めた廃棄物の処理による環境負荷も考える必要がある。あなたが携わっているプロセスについて環境負荷の要因分析、定量化、及び軽減計画を策定することになり、この業務の担当責任者に選ばれたとして、下記の内容を記述せよ。

() 調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

() 業務を進める手順を列挙し、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

()業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。

プラスチック成形金型設計部門の責任者として、プラスチック射出成形加工プロセスについて述べる。

.調査、検討すべき事項

(1)工程内の材料ロス、廃棄方法

 射出成形加工では成形品以外に成形品が安定した寸法となるまで捨てショットと呼ばれる成形作業を行う。また成形開始前に成形機のシリンダ内に蓄積した溶融樹脂をパージと呼ばれる作業により排出する。捨てショットとパージの廃棄樹脂量を調査する。

(2)使用樹脂材料、成形品形状

 環境負荷の低い樹脂の適用率を調査する。また、成形品の過剰強度設計により成形品の厚肉化、重量の増大が発生していないか調査する。さらに、射出成形工法の考慮不足、具体的には成形品の抜き勾配不足による離型不良、成形品肉厚の不均等肉厚によるひけ、反り等の成形不具合による成形品の廃棄量の調査を行う。

12でダブリを無くして、電力、化学物質、水、資源について広い視点で調べた方がよいでしょう。

(3)インフラの使用量

 樹脂を溶かすために使用するヒータ電力、金型冷却用チラーに使用するの使用量の調査を行う。

(4)製造条件のロバスト性の確認 

ここではロバスト性は不要かと思います

成形条件の良否は技能者の技量に依存している。同じ成形条件でも樹脂材料のロット毎の特性ばらつき、機差、外気温などの外乱、内乱により成形品の品質が変わる。内乱、外乱に強い裕度の高いロバスト性のある成形条件となっているか調査する。

.業務遂行手順とそれぞれの留意点、工夫点

■手順と工夫は非常に良い内容です。

(1)廃棄される樹脂の測定

 廃棄樹脂量は季節、樹脂ロットにより異なる可能性があるので、季節を通じてデータ取りを行う。樹脂ロット、機差による廃棄樹脂量の差異発生要因を分析し、廃棄が少ない条件の特定を行う。

(2)使用樹脂材料、成形品形状の確認

 製品設計寿命を確認し、過剰品質になっている場合は強度解析により、最適化を行う。最適化の際は強度のみでなく、生産性が考慮されているか留意する。

(3)インフラの使用量

 電力、冷却水使用量を把握する。電力、冷却水使用量把握はセンシング技術を活用し、データの分析を行いやすいようにする。チラーなど複数の成形機に共通使用されるものは個別に把握できるようなデータ取りに留意する。

(4)製造条件のロバスト性の確保

 金型へのセンサ導入、IoT化により製造条件と製造品質の関係を定量化することで属人性からの脱却を図る。

.業務を効率的に進めるための関係者との調整方法

 加工プロセスの環境負荷は製造部門だけでなく、製品の企画、開発段階、つまり製品の仕様決めの影響を受ける。営業、資材、設計、製造、品質管理部門と連携し、企画段階で環境アセスメント活動を行う。以上 

環境負荷だから環境アセスですか。アセスで何をするかまであればさらに良かったです。

問題文  Ⅲ-1 自社で設計・製造を行っている1つの工業製品に対し、設計部門から以下の検討依頼が来た。「鉄系材料を用いている今までのフレーム構造体に対し、軽量化を図るため、従来材と次の候補材料どれか1つとの組み合わせによるマルチマテリアル化を進めたい。候補材料は高張力鋼、アルミニウム、マグネシウム、CFRPである。」あなたが生産技術者としてこの検討を行う場合、以下の問いに答えよ。

() これらの候補材料を比較しマルチマテリアル化を検討するに当たり、生産技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

() 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、候補材料を1つ提示したうえでその課題に対する複数の解決策を示せ。

()すべての解決策を実行しても生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

.マルチマテリアル化にあたり、QCDSE及び4Mの観点から3つの課題を抽出する。

 マルチマテリアルの対象材料は高張力鋼とし、従来材料は板金加工に一般に使用されるSPCC鋼板とする。

この↑ような前提、絞り込みはされない方がよいでしょう。無くてもほぼ同じでは。

この問題の焦点が見えていないようです。

「高張力鋼、アルミニウム、マグネシウム、CFRP」の4つを比較し、鉄フレーム構造にマルチマテリアル化して、軽量化するときの課題です。例 バイクのフレーム、家電(洗濯機など)のフレーム

(1)加工方法の確立

 従来材と高張力鋼ではいくつかの特性の違いがあるが、代表的な特性の違いとして引っ張り強度がある。

引っ張り強度が異なると、プレス加工時の曲げ角度に変化が発生する。SPCC鋼板と比較して高張力鋼板はおおよそ500MPa以上の引っ張り強度がある。引っ張り強度は曲げ、絞りなどのプレス加工性に影響し、スプリングバック(曲げ工具より角度が開く)、スプリングゴー(曲げ工具より角度が狭くなる)といった事象が発生しやすい。例えば従来材と高張力鋼板を溶接し、一体化して曲げ加工する場合、スプリングバックあるいはスプリングゴーの度合いの差による角度の違いから製品として要求される角度が出せない、または溶接部に応力がかかることによる破壊が課題となる。

(2)検査方法の確

検査の何をどうするかまで書かれた方がよいでしょう。

 新たな材料の使用、また加工を行う場合には加工の確からしさ、加工精度を検証するため、検査方法を確立する必要がある。高張力鋼板は引っ張り強度が高く伸び量が少ないため、特に絞り加工時に割れが発生する可能性がある。表面上に見える割れであれば良いが内部の割れや微小割れを発見するため、CTスキャン、磁気探探方法を使用し、その合否基準(しきい値)を確立しておく必要がある。また従来材と高張力鋼板の接合面、界面には単一材料での加工では発生し難い不良が発生する可能性が高いので検査方法の確立が課題である。

(3)ロバスト性の確保 

ここでの主課題ではありません

 材料には製造に起因する特性のばらつきがある。従来材でも特性のばらつきはあるが、引っ張り強度が高い高張力鋼板は、引っ張り強度の違いが曲げ角度、絞り性に与える影響が大きく、ばらつきを吸収できる製品形状、設計思想の確立が課題である。

.抽出課題のうち、最も重要と考える課題

 マルチマテリアル化には、テーラドブランク法など、必要な部位のみの強度を高め、製品機能の向上、コスト低減を目的とすることが多い。その実現のため、加工方法を確立することが最も重要な課題と考える。

このような自身の答案への誘導は危険です。テーマの4材料と鉄の合体、軽量化と何の関係もありません。一般的な機関製造の話↓に発散しています。

(1)解決策1サーボプレスとロボット技術の活用

従来材と高張力鋼板を組み合わされた鋼板は、特に高張力鋼板の引っ張り強度の高さから絞り加工、曲げ加工において、一度に曲げ加工、絞り加工を行うのでなく、複数回に分けて行うことが多い。それは加工部が加工硬化し、延性が低下することによる破れを防止するためである。そのため、加工速度を任意に制御することができ、また振り子のように加工部位を往復運動することのできるサーボプレスを使用し、低速度、高エネルギーで加工硬化を抑制しながら、絞りを行う。

また、複数の金型を用意し、加工方向を逆転しながら

加工を行うことで、バウシンガー効果を利用し、低いエネルギーでの加工を行う。複数の金型間の被加工材の移動はロボットを使用する。

(2)析技術(CAE)の活用

 曲げ及び絞り加工には金型と呼ばれる専用の工具を用いる。金型の構造、特に加工に関わる曲げパンチとダイ、絞りパンチとダイの形状設計はベテラン設計者の知識に依存した属人性の高いものである。またベテラン設計者がいない場合は複数のパラメータのパンチ、ダイ形状を設計し、トライ&エラーを繰り返す。これを防止するため、板金加工の伸び、スプリングバック率を机上シミュレーションできるCAEを活用する。

(3)生産設計によるフロントローディングの実施

 高張力鋼板は、これまで述べた通り曲げ加工時にスプリングバック、スプリングゴーといった要求形状の実現を阻害する事象が発生する。また、絞り加工においては割れなどの機能実現を阻害する事象が発生する。

これらを防止するため、製品設計の上流、例えば詳細設計の前の構想設計の段階で製品設計部門と生産技術部門が連携し、コンカレントエンジニアリングを行う事で、加工工程のネックとなる形状の変更、従来材と高張力鋼板の接合部のクリアランスを確保できる形状設計などを行う。           

3. リスクと対策  ←これがありません。ほんとうにこの通りに書かれたのですか。

アジャイル  

1ウォーターフォールの反意語なので、ここはプロトタイピングがよいでしょう 

№27 R3年 情報工学部門 ソフトウェア工学の答案について添削致しました。 2022/01/06

答案の一覧>

この答案についての講評

 試験結果は、BCAでした。今回の試験ではきっちり答案を作成されてよく頑張りました。ただし、技術士の専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。次回試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。音声ガイドのコメントをお聞き願います。

 内容的には、Ⅰ-1では前置きが長く、本質的な事項があまり述べられていなかったようです。ご自身ではB判定となっていることが、採点理由が不明で、自身の足りない観点が釈然としないとのことでした。こうした点についてコーチングであればしっかり指導を受けられます。Ⅱ-1の手法はウォーターフォールの反意語なので、アジャイルではなくここはプロトタイピングがよいでしょう。Ⅱ-2では時期開発に向けて何をすべきかという本質が見えていなかったようです。実はこうした本質を見抜く力が求められるのです。当たり前の一般論で解答されていましたが、情報工学での対策法が提案できなかったようです。ご自身では誤字をCの判定の原因とお考えのようですが、それは違います。そのような細かいことではCにはなりません。このようなケースワーク問題では、経験がないと普通は解答が書けません。本講座ではより良い対応をお教えしておりますのでコーチングで学べは合格点が取れるようになります。

 Ⅲでは、前置きはやはり長かったものの、実務的な視点、実力を発揮されて、それが評価されたものと考えます。解決策の①②③ともに実務で有用性の高い手法です。そのようなプロの力、経験力が正しく評価されてよかったです。リスク自体はやや常識的でしたが、しかし、解決策がプロの内容で◎と言えます。

 これまで2回目受験されて、苦労されているご様子なので残念です。しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(25分45秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題     Ⅰ―2 近年、日本の行政サービスのデジタル化が推進されている。その一環で、スマートフォンを活用した「事務手続」や「住民への情報提供」が可能となっている。今後、住民が広く継続的に行政サービスを利用すること念頭に置いた場合に、スマートフォンで動作するアプリケーションソフトウェアを開発することがされに増えてくると考えられる。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)技術者としての立場で、多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

―2.行政サービスに関するアプリケーション開発の進め方

 行政サービスのアプリケーション開発がさらに増えてくる状況を踏まえ、開発の進め方を以下に示す。

■この↑ような前置き不要です

(1)課題抽出

 必要性、安全性、経済性の観点で課題を抽出する。

1)必要性の観点(要件定義) 

 住民が広く継続的に行政サービスを利用するための業務要件や機能要件/非機能要件の整理を進める課題がある。また同種のアプリケーション開発の増加が予想されるため、コア処理を中心としたソフトウェアの再利用検討が必要である。

■これは前提事項であり、当然必要性ありに決まっています。

2)安全性の観点(ソフトウェア品質)

 行政サービスという公共性の高いシステム開発であり、ソフトウェア品質(機能適合性、性能効率性、有効性、使用性、信頼性、保守性)確保が課題となる。

■あいまいです。特に主要因は↑どれか。

3)経済性の観点(対立する利害調整)

 行政サービスシステムの関係者は、一般的に行政、システム開発ベンダー、エンドユーザーである。関係者間で利害が対立した場合、品質、コスト、納期、生産性、リスクを考慮し、調整する課題がある。

■公共サービスとしては当然。公的システムでどう安くできるかの課題はないのですか。

(2)最重要課題と対策

 必要性を最重要課題とした。なぜなら同種開発が増える傾向であり、近々の対策が必要のためである。課題に対する解決策を以下に示す。

■「必要性」の課題とあまり関係のない対策です。やはり課題を誤ったため正しく解けていません。

解決策①:モジュール結合度の最適化

ソフトウェアの再利用化を進めるため、モジュール結合度を低める。例えば、他モジュール内データの直接参照を止め(内容結合)、必要なデータのみモジュール間連携するよう改善する(データ結合)。

解決策②:モジュール強度の最適化

 次にモジュール強度を高め、モジュール構造のシンプル化を進める。例えば、全く整理されていないモジュール集合から(暗号的強度)、単一機能のモジュールへ改善を進める(機能的強度)。

解決策③:フレームワーク利用

 共通機能が少なく、ソフトウェアの再利用化が困難な場合、より上位概念であるアーキテクチャ(フレームワーク)の再利用を進める。

(3)リスクと対策

 セキュリティと技術者不足がリスクと考える。

リスク①:セキュリティ(機密性・完全性)

 外部への情報漏洩(機密性)、データ改ざん(完全性)のリスクがある。対策を以下に示す。

(対策)

・データへのアクセス権設定(機密性)

・データベース暗号化(機密性)

・ハッシュ値による改ざん検知(完全性)

リスク②:セキュリティ(可用性)

 Dos攻撃等、サイバー攻撃によるシステム停止のリスクがある。対策を以下に示す。

(対策)

・システム二重化(レプリケーション等)

・RPO(目標復旧時点)を考慮したバックアップ

・システム復旧手順書の整備

リスク③:技術者不足

 技術の属人化により、技術の喪失や、ソフトの再利用が停滞するリスクがある。

(対策)

・計画的な開発チーム間のローディング

・コア技術資産を管理する組織の設置

・技術情報に関するドキュメント化及び定期的な教育

(4)業務遂行に必要な要件

 技術者倫理、社会持続可能性の観点で以下に示す。

1)技術者倫理の観点

 公益の確保を進める。具体的には、行政、住民といった関係者が利用し易いシステム開発に取り組む。 

■最低限、当然のことです。(技術士に聞くまでもない)

その他、個人情報保護法やサイバーセキュリティ基本法等、関連法規を遵守する。

2)社会持続可能性の観点

 誰一人取り残さないというSDGsの理念を進めるため、高齢者や子供にも利用し易いGUI化を進める(ユニバーサルデザイン)。また技術者として、技術革新の拡大に寄与する。

〇です

問題文  Ⅱ―1―4    ソフトウェア開発を安定的かつ臨機応変に進めるためにはプロジェクト管理が必要不可欠である。プロジェクト管理において、工程管理に関する代表的な手法を3つ挙げ、それぞれの概要、及び特徴を述べよ。

1.ウォーターフォール

ウォーターフォールは、要件定義、設計、製造、試験、運用と、工程毎に品質を確保しながら、逐次的に開発を進める工程管理手法である。

(特徴)

ウォーターフォールは、工程管理がしやすいという特徴がある。反面、仕様変更が発生した場合、大幅な開発の後戻り作業が起こる傾向がある。

2.スパイラルモデル

スパイラルモデルは、要件の確度が高い機能、またはサブシステムから開発に着手する逐次的+反復的な工程管理手法である。

(特徴)

スパイラルモデルは、要件の確度が高い機能から開発着手するため、後戻り作業の発生が少ないという特徴がある。反面、仕様追加が多くなりがちであり、全体工程の把握が難しい。

.アジャイル 

■1ウォーターフォールの反意語なので、ここはプロトタイピングがよいでしょう

ユーザーストーリーに従い、スプリントと呼ばれる2週間〜1カ月の周期で、反復的に開発を進める工程管理手法である。

(特徴)

反復的に開発を進めるため、仕様変更に強いという特徴がある。反面、関係者間の利害対立調整は困難であり、大規模開発には不向きである。 

問題文    Ⅱ−2−1 顧客の業務を支援するWebアプリケーション開発のプロジェクトリーダを担当している。業務では、経験年数の浅い複数の技術者が参画している。また、上流工程では、ユーザインタフェース設計に対してレビューを実施していた。一方、顧客が実施する受入テストにおいて、機能に関するバグに比べてユーザビリティに関するバグが多く報告される事態となった。そこで、同一顧客向けの次期開発に対してプロセス改善を遂行するに当たり、以下の問いに答えよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)プロセス改善を進める手順と、その際に留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)プロセス改善を効率的かつ効率的に進めるための関係者(ステークホルダ)との調整方策について述べよ。

Ⅱ―2―1.次期開発に対するプロセス改善の進め方

 次期開発プロジェクトリーダ(以下、PJL)の立場で、プロセス改善の進め方を以下に示

■このような前置き↑は不要です

(1)     調査・検討すべき事項とのその内容

 機能性、安全性、経済性の観点で、調査・検討すべき事項を以下に示す

■前置き↑不要です

1)機能性(要件定義)

 上流工程でユーザインタフェース等の設計不足の可能性がある。PJLは、機能要件や非機能要件(可用性、性能、拡張性、移行性、セキュリティ、システム環境)を調査・検討すべきである。

■根拠がわかりません。ユーザインタフェース設計のレビューはあったが、設計不足まではありません。ユーザビリティのバグは、顧客が実施した受入テストです。

2)安全性(ソフトウェア品質)

 ユーザビリティ不具合が多い。PJLは、ソフトウェア品質(機能適合性、性能効率性、有効性、使用性、信頼性、保守性)を調査・検討すべきである。

3)経済性(作業タスク)

 経験年数の浅い複数の技術者が参画している。PJLは、当該技術者の担当している作業タスク難易度/コスト/期間の妥当性を調査・検討すべきである

■経験→コストでは短絡。本質的なことが分析できていません。

(2)プロセス改善を進める手順と留意・工夫点

 以下手順でPDCAを回す

■PDCAをわざわざ求めているわけではありません。問いが求める複雑な前提条件に対して何も答えられていないようです。これではクライアントは怒りだします。

・Plan(計画:品質、コスト、納期、生産性、リ

スク管理)

・Do(開発:設計、製造、試験)

・Check(測定・評価)

・Act(是正・改善・対策:人的リソース、設備、

コスト、情報共有の最適化)

加えて、留意点、工夫を要する点を以下に示す。

(留意点)

・特に非機能要件の明確化に留意する

・有効性・使用性の確保に留意する

・労働基準法の遵守に留意する

(工夫を要する点)

・非機能要件グレードを用いインタビューを実施する

・プロトタイプを作成しユーザ視点で確認頂く

・作業タスクと担当者の状況を定点観測する

(3)ステークスホルダとの調整方策

 先行開発ではバグを多数出している。PJLは関係者との信頼関係を一刻も早く回復する必要がある。

■信頼関係は大事だが、失った信頼を回復するのが業務の目的ではありません。ここは解決策をスピード化、効果的に行うための調整です。また調整とは頑張りではありません。意味が正しくとらえられていないのでは。過剰・不足の2つの間で何かを移して、均衡を図ることです。 例 スピード〇〇、年末〇〇、役員のの党内〇〇

1)状況説明

 PJLは先行開発の問題点・課題を明確にし、施策提示や今後の進め方について誠意を尽くし説明する。

2)要件定義の協力要請

 PJLは、要件定義の確定のために関係者へ積極的なプロジェクト関与を要請する。具体的には、要件定義書やプロトタイプシステムのレビュー/フィードバックを依頼する。

3)定期的なプロジェクト状況確認

 帳票等を作成し、プロジェクト状況の可視化し、関係者とPDCAサイクルを回す。

問題文  Ⅲ−1 近年、企業では、美辞ネル環境の激しい変化に対応するために、デジタル技術を活用して製品やサービスだけではなくビジネスモデルを変革することにより、競争上の優位性を確立しようとしている。これは、デジタルトランスフォーメーション(DX)とよばれている。DXは、経営をはじめ、事業、サービス、システム等の様々な側面における活動、体制、及び資源を統合して実現されているものである。そこで、DXの実現において、システムがすべてを支える重要な役割を担っているいることを踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)          情報システム部門の技術者としての立場で、企業のシステム及びシステム開発状況について想定する前提を明確にしたうえで、多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえ考えを示せ。

Ⅲ―1.情報システム部門におけるDX実現の進め方

 DX実現のため、システムが重要な役割を担っていることを踏まえ、以下に進め方を示す。

■このような前置き↑は不要です

(1)想定する前提条件と課題抽出

(想定する前提条件)

 企業システム、開発状況の前提を以下に示す。

・ビジネス環境の激しい変化(仕様変更が多い)

・DXは資源を統合し実現(現行システムの利用)

・システムがすべてを支える(高い品質要求)

・DXは活動/体制を統合し実現(関係者が多い)

(課題抽出)

 必要性、安全性、経済性の観点で課題抽出する。

■見出しには、観点ではなく、課題そのものを挙げるようにしてください。

1)必要性(仕様変更が多い、現行システムの利用)

 仕様変更に対応するため、業務要件の整理、および開発に必要な機能要件/非機能要件の整理を進める必要がある。特に現行システム等、資源の統合を見据え、非機能要件の拡張性を確保する課題がある。

■必要性ありきで考えているせいか、課題の意味がよくわかりません。

2)安全性(高い品質要求)

 システムがすべてを支える前提条件がある。このためソフトウェア品質(機能適合性、性能効率性、有効性、使用性、信頼性、保守性)確保の課題がある。

3)経済性(関係者が多い)

 経営、事業、サービス、システムと各部門が利用するシステムとなる。発生する利害関係を調整しつつ、開発を進めなければならない課題がある。

(2)最重要課題と解決策

 必要性を最重要課題と選定した。なぜならばDX推進にシステム統合準備(部品化、現行システム再利用)が直ちに必要なためである。以下解決策を示す。

・解決策①:モジュール結合度/強度の最適化

■M結合とM強度の2つの面からの説明で説明が回りくどいです。目的、ねらいを1回で説明できませんか。

 モジュール結合度(データ結合、スタンプ結合、制御結合、外部結合、共通結合、内容結合)を低め、モジュール強度(機能的強度、情報的強度、連絡的強度、手順的強度、時間的強度、論理的強度、暗号的強度)

を高める。具体的には、モジュール間通信を可能な限り必須データの連携のみとし、モジュール内機能の単一化を進めることで、再利用性、拡張性を担保する。

・解決策②:フレームワーク適応

 各機能の要件が固有のため、モジュール部品化が進まない場合、上位概念であるアーキテクチャ(フレームワーク)の再利用を検討する。具体的には、リファクタリングを繰り返することにより設計が洗練され、再利用性の高いフレームワークが整理できる。

・解決策③:ラッパー処理の活用

 現行システムをDXシステムに取り込むため、ラッパー処理の活用を検討する。具体的には、現行システムの入出力をラッパー処理に全て担当させ、新規に開発したDXシステムと連携する。これにより現行システムを変更することなく、DXシステムに必要な機能を統合することが可能となる。

■解決策の①②③ともに実務で有用性の高い手法です。そのようなプロの力、経験力が評価されたようです。

(3)リスクと対策

 DX推進で生じうるリスクとして、セキュリティと技術士者不足について、以下に示す。

■リスク自体はやや常識的です。要件「すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスク」とはやや異なります。しかし、解決策がプロの内容で◎です。

リスク①:セキュリティ(完全性、機密性)

 データの改ざん(完全性)、なりすまし等による情報漏えい(機密性)がリスクとなる。

(対策)

・DBのハッシュ値による改ざん検知(完全性)

・定期的なデータバックアップ(完全性)

・関係者の役割に応じたアクセス権の設定(機密性)

・DBやネットワークの暗号化(機密性)

リスク②:セキュリティ(可用性)

 Dos攻撃等によりシステムが停止し、RTO(目標復旧時間)を守れないリスクがある。

(対策)

・システム2重化を進める。もしRPO(目標復旧時点)=0の場合、レプリケーション構成を検討する

・システム復旧手順書の整理および定期訓練実施

リスク③:技術者不足

 全ての資源統合を進めるため、現行システムやフレームワーク等を熟知する技術者離任がリスクとなる。

(対策)

・RPA(ソフトウェアロボット)の利用

・設計ドキュメントの最新化および補足資料作成

・計画的なチーム間ローディングの策定 

アジャイル  

1ウォーターフォールの反意語なので、ここはプロトタイピングがよいでしょう 

№26 R3年 建設部門 鉄道の答案について添削致しました。 2021/12/08

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この答案についての講評

 試験結果は、ABBと非常に残念な結果でした。今回の試験ではきっちり答案を作成されてよく頑張りました。これまでキーワード学習が中心で、技術士の専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。次回試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。音声ガイドのコメントをお聞き願います。

 これまで過去に4回も受験されて、苦労されているご様子なので残念です。しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(20分19秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.風水害の被害を防止・軽減するための課題と内容

(1)想定を超える災害への対応

 わが国での集中豪雨の約6割で、バックビルディング現象などによる線状降水帯が発生していた。地球温暖化の影響で、数十年に1度の大雨が毎年のように発生しており、甚大な被害が発生している。防災の観点から、人命や暮らしを守るため、想定を超える災害に対応することが課題である。

■1〜3の課題は一応〇ですが、いずれも課題ではなく問題点です。現況から言えることにすぎず、建設・鉄道の視点はありません。

(2)複合災害への対応

2つ以上の災害が発生すると、さらに被害が深刻となり、復旧が長期化する。地震、台風、豪雨、土砂崩壊、洪水、浸水、避難所での感染症拡大などの同時または連鎖しての発生が懸念される。二次災害の観点から、被害を深刻化させないため、複合災害に対応することが課題である。

(3)省力化の推進

わが国の総人口は2065年には約8800万人にまで減少する。生産年齢人口は約4500万人まで減少すると予測されている。高度経済成長期以降に整備したインフラが今後一斉に老朽化する。災害の防災・減災・復旧活動にはマンパワーが必要である。人材の観点から、限られた技術者での対応が求められるため、省力化を推進することが課題である。

2.最も重要と考える課題とそれへの解決策

年、自然災害が大型化し、甚大な被害をもたらしているため、私は「想定を超える災害への対応」が最も重要な課題と考える。以下にその解決策を述べる

■上記は不要です

(1)ハード対策の実施

①事前防災ハード対策:法面の防護や堤防の嵩上げなどインフラを整備・強化し、防災対策をすることで被害を未然に防止する。

②避難確保ハード対策:避難場所の整備やインフラを粘り強い構造にし、減災対策をすることで人的・社会経済被害を軽減する。

■やや視点があいまいです。建設・鉄道の視点がありません。

(2)ソフト対策の実施

国土強靭化を推進し、ハード対策とソフト対策を組み合わせた多重防御により被害を最小にする。

①ハザードマップの整備:各種ハザードマップを検索・閲覧できるハザードマップポータルサイトを拡充し、迅速な避難をすることで被害を軽減する。

②マイタイムラインの作成:マイタイムラインを周知し、作成を促進させ、国、企業などと連携して対応することで、被害を軽減する。

(3)効率的なインフラ整備

①DXの推進:モニタリング技術やロボットなどICT技術の活用を推進し、インフラの防災・減災対策を効率的に行う。

②NETISの活用:民間などの技術を一般に共有することで、新技術の活用を推進する。

■新しい提案の視点がここで示されたようで〇です。

3.共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策

(1)被害発生のリスク

 防災機能は充実するが、災害を完全に防ぐことは困難なため、被害が発生するリスクが生じる。

■これでは真のリスクが何かわかりません。問いの趣旨はこういうことではありません。

整備前または対策済み箇所での対策以上の災害の発生が懸念される。被害が生じると迅速にインフラの機能を復旧し、輸送手段を確保する必要がある。

(2)被害発生への対応策

①リダンダンシーの確保

ミッシングリンクを解消するため、暫定2車線の4車線化や鉄道とバス事業者などの協力体制の構築などをすることで、輸送手段が途絶えないようにする。

②「選択と集中」の徹底

 インフラの役割や目的を踏まえて、優先度と時間軸を考慮して、思い切った選択と集中を実施し、ストック効果を最大化させる。

■対策の視点の広さは〇です。

4.業務上必要となる要件

(1)技術者倫理の観点

 風水害対策にあたり、公益の確保を最優先に考慮するよう留意する。常に専門技術の力量や知識を高めるとともに、将来世代を担う人材の育成に努める。

(2)社会の持続可能性の観点

 データプラットフォームを構築し、インフラのストック効果の最大化と持続性を保つ技術開発方策を選定・採用するよう留意する。SDGsを達成することが持続可能な社会インフラの整備につながる。以上 

■技術者倫理、社会持続可能性は〇です。

問題文 

Ⅱ-1-1   ロングレール化のための「レール溶接法」を3つ挙げ、それぞれの溶接方法と特徴について説明せよ。

■ ここはOKです。

1.ロングレール化のためのレール溶接方法と特徴

(1)フラッシュバット溶接の溶接方法

レールを突き合わせ、大電流による電気抵抗を利用してレール端部を溶かし、圧力を掛けて接合させる。溶接時間は3分程度である。

(2)フラッシュバット溶接の特徴

特徴として、長所は①生産性が高いため、一次溶接に適する。②熟練技能が不要。短所は①初期投資が高い。②レールが短くなる。  

(3)テルミット溶接の溶接方法

レールを突き合わせ、酸化鉄とアルミニウムの間に起こるテルミット反応による溶鋼をレールの間に流し込み、接合する。溶接時間は30 分程度である。

(4)テルミット溶接の特徴

特徴として、長所は①機動性があり、レールを動かす必要がないため、三次溶接に適する。②レールが短くならない。短所は一口あたりの材料費が高い。

(5)ガス圧接溶接の溶接方法

 レールを突き合わせ、ガス炎により加熱して圧接する。溶接時間は6分程度である。

(6)ガス圧接溶接の溶接方法

特徴として、長所は①機動性と生産性のバランスがいいため、二次溶接に適する。②一口あたりの材料費が安い。短所は①レールが短くなる。②機動性は有るが、優れているとは言い難い。

Ⅱ-2-2 

道路と交差する踏切を改良するための単独立体交差化を計画することとなった。この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

1.単独立体交差化の調査、検討事項とその内容

(1)調査事項

①地盤状況(地質、N値、地下水位)

②踏切状況(交通量、単線・複線、交差角、迂回路の有無)

③周辺環境(架空線、地下埋設物、民家)

④作業スペースや搬入路、置き場所(作業員、資機材、重機械)

■何のために、何を調べるのかという技術管理者の視点がありません。とりあえず調べる項目の列挙・・これでは資質能力を測る試験になりません。問題、課題、解決策のシナリオを作成して掛かってください。

(2)検討事項

①設計(仮設計画、本体計画、施工順序、踏切移設計画)

②施工計画(開削・非開削工法、仮設工法、騒音・振動対策)

③立体交差構造(アンダーパス・オーバーパス、材質、形式、寸法)

④軌道構造(材質、省力性、低ばね性、道床の有無)

■やはりこちらも一般的事項です。「道路と交差する踏切を改良するための単独立体交差化」でなくとも行うことです。

2.手順について留意点と工夫点

(1)調査

地盤調査を実施し、周辺地盤を沈下・陥没させないよう留意する。軟弱地盤等で施工する場合は、地盤改良を行うよう工夫する。

(2)分析・検討

 踏切交通量を考慮し、立体交差方法の検討に留意する。歩行者専用や歩道の有無、車線数などにより寸法を検討し、アンダーパスまたはオーバーパスを選定するよう工夫する。

(3)計画

 初期費用だけでなく維持管理まで考慮した時にコストが増大とならないよう留意する。ライフサイクルコストを最小化または平準化するよう工夫する。メンテナンスの容易な構造や耐久性の高い部材の使用について費用対効果を考慮して採用する。

■これも一般的事項です。「単独立体交差化」に必要な手順とは何か、それに特化した議論が必要です。

3.関係者との調整方策

(1)沿線住民

立体交差化により音や振動の発生が変化するため、事前に住民などに説明会などで積極的にPRすることで理解と協力を得る。工事前に家屋調査を行うことで、家屋の破損と工事の影響の関連性が証明できる。工事に対する安心を生み、損傷が発生しても冷静な判断ができる。

(2)道路管理者、鉄道事業者、都市計画事業者

 計画書を作成し、架設式または跨線式を検討し、土被りや空頭、取り付け道路、交通規制方法、踏切除却時期などを協議する。費用負担や範囲について取り決めを行い、合意形成を図る。

(3)道路利用者

 取り付け道路の交通量を考慮し、道路切替の時間帯を調整する。

■業務の留意点ではありますが、しかし「調整」ではありません。こうした個々の作業を上手に進める以外に、プロマネとしての取りまとめ判断が必要なのです。

Ⅲ-1  我が国においては、少子高齢化の進行により労働力人口の減少傾向が続いている中で、「働き方改革」への対応が求められている状況である。建設業界では施工の効率化だけでなく現場休業の取組など、様々な取組が行われているが、鉄道工事に関しては終電から始発の間や活線下での列車間合いで施工されることが多く、各鉄道事業者において運行形態や保守体制に応じて、さまざまな検討が行われている。このような状況を考慮して、以下の問いに答えよ。

1.鉄道工事の作業時間を確保するための課題と内容

(1)生産性の向上

 少子高齢化やベテラン技術者の退職、不規則な勤務、就職先の多様化により人材の確保が困難となっている。高度経済成長期以降に整備したインフラが今後一斉に老朽化することが見込まれる。老朽化が進むインフラを適切に維持管理・更新する必要がある。人材の観点から、限られた技術者での対応が求められるため、省力化を推進することが課題である。

■建設一般の視点であり、求められている鉄道としての視点が見えません。

(2)インフラの安全の確保

昨年では令和2年7月豪雨により、くまがわ鉄道の河川橋梁が流失した。現在も運休が続き、復旧には4、5年程度かかるとみられる。今後も地球温暖化の影響による自然災害の激甚化や巨大地震の発生などが懸念される。鉄道構造物の損傷・機能低下は地域の足を止めることにつながる。安全の観点から、人命や暮らしを守るため、災害に強いストック効果を確保することが課題である。

■災害、ストックはテーマではありません。

(3)効率的な資金運用

 モータリゼーションの進展、コロナ禍の外出自粛に伴い、鉄道事業者によっては、工事に必要な予算の確保に苦慮している。少ない予算ではメンテナンス不足、旧型設備の使用などにより、事故や輸送障害の発生が懸念される。メンテナンスコストを考慮した対応が重要である。資金の観点から、限りある資金で生産性を向上させるため、上手に資金を運用することが課題である。

■経済性、資金効率はテーマではありません。

2.最も重要と考える課題とそれへの解決策

子高齢化が進み、今後も技術者が減少することが予測されるので、私は「生産性の向上」が最も重要な課題と考える。以下にその解決策を示す。

(1)省力化の推進

①保守労力の減少:TC型省力化軌道や次世代分岐器、ロングレールなどメンテナンスの容易な構造や耐久性の高い部材にする。新設・更新時に維持管理を踏まえ、メンテナスコストの縮減可能な材料・工法を採用する。

②設備統廃合によるスリム化:設備の更新時に適切なサイズや数量への変更や不要な設備を廃止し、維持管理対象物を減少させることで、省力化する。

省力化は間違いではありませんが、いわば前提です。

(2)予防保全への転換推進

①メンテナンスサイクルの構築:アセットマネジメントを導入し、ライフサイクルコストを最小化または平準化する適切な維持管理を継続的に行うことで、構造物を長寿命化させる。

②定期的なレール削正:レールにき裂が発生し、進展すると、レールが破断し、列車の運転規制につながる。累積通過トン数5000万トン程度で定期的にレール削正し、接触疲労層を除去することで、傷の発生が抑制され、レールが長寿命化する。

■やはり一般論です。主題である「働き方改革」への対応とは何か。鉄道工事の活線、列車間合い施工への対応。鉄道事業者の運行形態や保守体制とは意識しましたか。

(3)新技術の活用

①DXの推進:線路設備モニタリング装置や構造ヘルスモニタリングシステム、GMACなどのICT技術の導入・活用を推進し、効率的に行う。

②オープンイノベーションの推進:建設用機材の高度化や5G技術の導入に向けて、情報関連産業など、他産業との技術連携強化を推進する。

■間違いではありませんが、どこでも言えることであり、このテーマの必須事項ではありません。

3.共通して生じうる新たなリスクとそれへの対策

(1)技術力低下のリスク

 解決策を実施し、作業が省力化されることで、個々の技術力が低下するリスクが生じる。システムの操作法は習得するが、技術の理解と理論などが身につかないことが懸念される。現場で作業する機会が減少するため、技術を継承する必要がある

■一般論に発散して、何のリスクなのかわかりません。問いは問2の解決策の見直しを求めています。「省力化推進、予防保全への転換推進、新技術の活用」をやればやるほど発生するリスクは何かです。

(2)技術力低下への対策

①OJTとOFF−JTの組み合わせによる技術継承

 従来のOJTに加え、eラーニングなどのOFF−JTとの組み合わせにより技術を継承する。両方の特徴を考慮し、効果的に人材育成をする。

②ナレッジマネジメントの構築

 ベテラン技術者が持ち合わせている経験や知識などの暗黙知を形式知化し、データベース化して連携・共有することで、組織全体で能力を向上する。

③研修施設の共有・研修の合同

鉄道事業者によっては研修設備や人材が不足しているため、研修施設の共有や合同での研修を行う。以上

■対策はさらに一般論です。

№25 R3年 情報工学部門 コンピュータ工学の答案について添削致しました。 2021/12/06

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この答案についての講評

 試験結果は、ABBでした。今回の試験ではきっちり答案を作成されてよく頑張りました。ただし、技術士の専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。次回試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。音声ガイドのコメントをお聞き願います。

 内容的には、Ⅰ-1ではマルウエア問題に対してしっかり技術を訴えられていました。問1,2は正解ですが、問3,4は弱点も見られます。Ⅱ-2ではロボットに対して何をすべきかという本質が見えていなかったようです。実はこうした本質を見抜く力が求められるのです。当たり前の一般論で解答されていましたが、情報工学での対策法が提案できなかったようです。このようなケースワーク問題では、経験がないと普通は解答が書けません。本講座ではより良い対応をお教えしておりますのでコーチングで学べは合格点が取れるようになります。

 Ⅲでは、課題の着目点がいけなかったようです。小学生のプログラミング教育が必修化されることにつながるような実務的な答え集中すべきであったかと思います。問2以降に有効なつながりを示すことができず、とても残念です。

 これまで2回目受験されて、苦労されているご様子なので残念です。しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(23分25秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1  

  これまでインターネット等のネットワークに接続していなかった機器が通信機能を持ち、ネットワークに接続して動作するIoT(Internet of Things)が急速に普及している。ネットワークに接続されたIoT機器がマルウェアに感染したり、乗っ取られることにより、社会の安全に影響を及ぼしたり、重要な情報が漏えいした事例が報告されている。このような状況を踏まえて、下記の問いに答えよ。

(1)IoT機器特有の性質を踏まえて、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

(4)前問(1)〜(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

1.  IoT機器のセキュリティ対策

(1)IoT機器特有の性質を踏まえた課題

課題1)乗っ取られるイメージを持つ:IoT機器はPCのような形ではなく、環境に溶け込む筐体で覆われていることが多い。これより、乗っ取られるイメージがわかない。この観点より、IoT機器も乗っ取りの対象であることを周囲へ説明し、対応を促すことが課題である。

(課題2)コスト低減:IoT機器は数が多いため、個々にセキュリティ対策をするとコストがかかる。この観点から、コストを低減することが課題である。

(課題3)セキュリティ対策するIoT機器の絞り込み:IoT機器は数が多いため、対策漏れが発生する恐れがある。この観点より、セキュリティ対策するIoT機器を絞り込み、その機器に対して重点的にセキュリティ対策することが課題である。

2.最重要課題と複数の解決策

2.1最重要課題

 (課題3) を最重要課題とする。理由は、すべてのIoT機器にセキュリティ対策をすることはお金や時間の観点から難しい一方で、セキュリティ対策漏れがあるとIoT機器が乗っ取られ社会の安全に影響を及ぼすという、トレードオフが発生するからである

■このような理由は特段求められていません。なぜかというと、あまりコンピテンシーの判定に役立たないからです。(重要か否かは内容を見れば、理由のいかんにかかわらず、試験官にはすぐ判別できるからです。)

2.2 複数の解決策

(解決策1)インターネットに接続するIoT機器の絞り込み:IoTゲートウェイとIoTセンサを接続し、これらとの通信はインターネット(WAN)を使用しない通信、例えばBluetoothなどを適用する。インターネットに接続するのはIoTゲートウェイのみになるため、IoTゲートウェイのみにセキュリティ対策を集中できる。IoTゲートウェイにウィルス対策ソフトをインストールする。

(解決策2)IoTサーバへ送信する情報の取捨選択:抜き取られる対象の情報を減らすため、緊急性の高くないセンサ情報 をIoTゲートウェイが区間で平均を取って送信する。さらに、データ解析に不要な情報はIoTサーバへ送信しない。

(解決策3)オンプレミスサーバの採用:セキュリティ対策の自由度が共有クラウドサーバより増すオンプレミスサーバをIoTサーバに採用する。さらに、IoTゲートウェイとIoTとでVPN通信し、セキュリティレベルを高める。

3.波及効果と懸念事項への対応策

3.1すべての解決策を実行して生ずる波及効果

 セキュリティ対策すべきIoT機器を絞ることができるため、セキュリティ対策の手間が減る。また、通信量が減るので、通信量に上限があるIoTシステムにも本解決策を適用できる。

■波及効果とはもっと因果関係の先にある広い範囲での間接影響まで含めて推論してください。

例 コロナ感染 → クッキング、ジュエリー

3.2 懸念事項への対応策

ィルス対策ソフトが未対応のウィルスに感染する懸念がある。対応策として、ウィルスに感染したIoT機器を外部割込み信号で強制OFFする策がある。さらに、IoTシステムが万が一停止した場合の損害賠償に備え、損害保険に加入しておく。

 運用中に追加されたIoT機器にセキュリティ対策がなされない懸念がある。対応策として、定期保全時に新しいIoT機器が追加されたかチェックし、セキュリティ対策を実施する。

4.業務遂行における技術者倫理、社会の持続可能性

4.1 技術者倫理

公共の利益を第一に考える。単に価格が安かったり、以前使用したハードやソフトを安易に使用しない。また、実装しやすいという自分の都合を優先しない。

■「安易」や「自己都合」がいけないとのことですが、それは技術者倫理と意味が違います。技術者倫理綱領に照らして考えるようにしてください。IoT機器のマルウェア対策、情報漏えい対策が主題であることを忘れないように。

公共が求めるIoTシステムを開発するために、予算や時間の許せる範囲で、自分の都合を抜きにしてユーザのニーズを満たす解決策を考える。

4.2 社会の持続可能性

 SDGs「つくる責任、つかう責任」を意識する。具体的には、IoTシステム廃棄の際に排出する有害物質の量を抑えることを意識する。これより、設計時に、J-Mossが規定する量以下またはゼロの有害物質を含むIoT機器を採用する。

■IoTシステムがどれだけ有害物質を廃棄するというのでしょう。化学工業や金属鋳造など他の産業と比較して、環境負荷の大きいふさわしいものを挙げるようにしてください。主題の情報漏えい問題と関係ない方向に発散していますので好ましくありません。

問題文  Ⅱ−1−3 深層学習(Deep Learning)で使われる多層ニューラルネットワークの仕組みを簡潔に述べよ。

深層学習で使われる多層ネットワークの仕組み

 図に多層ネットワークの構造を示す。図では画像からりんごかバナナを識別する例を示す。

多層ネットワークは、入力層、隠れ層、出力層からなる。入力層は画像情報を入力する層で、例ではR(赤)、G(緑)、B(青)情報を入力する。

隠れ層は画像の特徴量を抽出する層である。隠れ層の層数が多い(深い)ほど、多様な特徴量を表現できる。特徴量とは、例ではりんごやバナナを特徴づける情報の量で、図では、人工ニューロン間の重みwijを指す 。

出力層は推論結果を出力する層で、この例ではりんごの確率とバナナの確率を出力する。確率が高い方を識別結果とする。

学習とは、wijを学習することである。画像を入力し、確率を出力する。出力された確率と正解(教師データ)との差(ロス)を取り、ロスが小さくなるようにwijを調整 する。

■リンゴ、バナナは例えであって、答えではありません。言葉の説明では汎用性を失わないように。ここでは「深層学習」「多層ニューラルネットワーク」ですから、

  •  深層
  •  多層
  •  ニューラルネットワーク

などのキーワードから解くようにするとわかりやすいです。

※「多層ネットワーク」ではありません。

参考ページ5分で分かるディープラーニング(DL)をご覧↓ください。

https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2104/26/news031.html

問題文  Ⅱ−2−1 近年、癒しロボットと呼ばれる製品が次々と販売されている。新たに癒しロボットを設計・開発する技術者の立場で下記のないようについて記述せよ。

(1)新たに開発する癒しロボットの概要を示し、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

癒しロボットの開発

1.癒しロボットの概要、調査・検討事項とその内容

1.1癒しロボットの概要

 家族を見つけると反応する。癒し効果を高めるため、CGではなく実体がある。  

■これ↑だけですか

注意点:大事なことを書き、当たり前のことは省略することです。これだけでかなり合格できます。

1.2 調査・検討すべき事項

①ターゲットユーザの調査・検討:癒しロボットに興味を持つ年齢層や性別を調査し、どの層をターゲットとするか検討する。

■あいまいな取り組み、漠然と調査・・という感じです

②部品の価格の調査:部品の価格を調査する。多くの個数を購入すると割引されるかも確認する。

②センシング方法の検討:用いるセンサ、センシング間隔、センサ配置などを検討する。

■否定はしませんが、メインではない。

2.業務を進める手順と留意点・工夫点

2.1 検討段階

癒しの表現方法を検討する。可動部の動き、色、音声対話などから検討する。対話の処理が重くなる場合、クラウドの活用を工夫する。

■これこそ本質。1で宣言すべきことです。

・価格を抑えるため、オープンソースのソフトやハードの活用を検討する。商用利用に対応している、マニュアルが豊富に整備されているか留意する。

■ここは癒しロボットの本質ではないので不要。

2.2 設計段階

・部品を選定する。ノイズが家庭内の機器に悪影響を及ぼす恐れがあるため、VCCI規定をクリアした部品を選定することに留意する。また、ロボットのデザインを損なわないような大きさや形のセンサを選定することを留意する。

・部品が組み合わさることで想定外のエラーが発生する可能性があるため、シミュレーションや簡易的なハードを作成し、予備テストする。テストをクリアしたことを確認し、詳細設計へ移行する。

■いずれも本質ではないので不要です。これらがいくらできても「癒し」に寄与しません。

2.3 テスト段階

・所望の動作をするかテストする。開発者の想定から外れた操作をされる可能性があるので、複数のユーザにテストしてもらうことを工夫する。

・マニュアルを整備する。PL法に沿った記述がなされているか留意する。

■この↑ような手続きは当然することです。

3.業務を効果的,効率的に進めるための関係者との調整方策

・ユーザとの対話にデザイン思考を取り入れる。具体的には、潜在ニーズを引き出すためにじっくり対話する。一方、ニーズのずれを早期に気づくために、開発の初期段階でプロトタイプを作成し、ユーザにテストしてもらう。

■一般的、普通にすべきこと、していることでは・・。

・海外の業者に実装を依頼する場合、提供予定の技術について外為法の該否判定を実施しておく。さらに、実装手順や専門用語が日本と異なるかもしれないので、仕様書を日本の業者より詳細に記載する。

■問題の領域外。このようなことはあるかもしれませんが、わざわざここで議論する事項ではありません。

問題文   Ⅲ―1 2030年までの達成をめざす「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が2015年9月国連サミットで採択された。目標の1つに「4.すべての人々へ包括的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」がある。一方、日本では教育の情報化に関する取組として、プログラミング教育(プログラミング的思考の育成)の必修化や初等中等学校を対象にGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想が進められている。このため、教育向けのICT環境整備がこれまで以上に重要となっている。そこで、SDGsの達成にも寄与する特徴を有する新たな学習者用端末を小学校で使用(小学生が使用)する想定で新規開発する担当技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)新規開発する学習者用端末の特徴を示し、担当技術者の立場で多面的な観点から複数の課題を抽出し分析せよ。

(2)抽出した課題のうち重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を説明せよ。

(3)(2)で説明した解決策について、業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を述べよ。

SDGsの達成にも寄与する特徴を有する新たな学習用端末(小学生が使用)の開発

■見出しは簡潔に1行以内、下線は要りません

1.学習用端末の特徴と複数の課題

1.1 学習用端末の特徴

・小学生の同学年は同じ授業を受けるので、学習用端末はカスタマイズが不要である

・大規模シミュレーションや深層学習の授業はないので、マシンスペックが高くなくてよい。

■着目点が△。不要なことは無視すればよいだけ。課題になりません。逆に必要/必須なことは何かです。

・生物の観察など屋外でも使用される。

1.2 学習用端末の課題

(課題1)価格を下げること:収入にかかわらず学習用端末を使用できることが、すべての人への教育実施につながる。これより、収入が低くても購入できるように、学習用端末の価格を下げることが課題である。

(課題2)Wi-Fi環境なしで使用できる:屋外での観察などWi-Fi環境がない場所での使用が想定される。これより、Wi-Fi環境がなくてもアプリを使用できたりデータにアクセスできることが課題となる。

(課題3)軽量化:小学生は大人より力が弱いこと、様々な場所へ持ち出すこと、ランドセルが教科書ですでに重いことから、学習用端末の軽量化が課題となる。

■いずれも否定はしませんが、運用で何とでもなること。重要ではありません。小学生が使用し、プログラミング教育、そして必修化し、ゆくゆくはGIGAスクール構想するのに必須なことは何かです。担当技術者の立場とは父兄ではなくコンピュータ工学の視点からです。以下↓は好ましくない方向に発散してしまいました。

2.最も重要な課題とそれに対する解決策

2.1 最も重要な課題

 (課題3)軽量化を最も重要な課題とする。理由は、重いと持ち運ばなくなり学習の機会が減るからである。持ち運ばない小学生と持ち運ぶ小学生とで学習機会に差が生じ、SDGs4の「すべての人々へ」が守れなくなってしまうからである。

2.2 課題に対する解決策

解決策として、①必要なスペックに絞る、②学習用端末のサイズを小さくする、③バッテリを小さくする、が考えられる。②は画面が小さくなって見にくくなったりキーボードを打ちにくくなるデメリットがある。③は遠足時や充電し忘れ時に電池切れするデメリットがある。①は授業で必要とされないスペックならば削っても学習に支障がでない。これより、①必要なスペックに絞るを採用する。

具体的には、授業に不要なGPUやDVDを搭載しない。一方Wi-Fiがない環境も想定し有線LANポートやLTE通信対応を付加する。

3.業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果や波及効果

3.1 業務遂行上の各段階における結果

計画段階:授業内容を調査する。学習用端末を使用するシーンに、プログラミング、生物の観察、文書の作成を想定する。また、教室で用いる表示機器を調査する。大きなディスプレイにHDMIで接続していることを確認する。

設計段階:プログラミングや文書作成に事足りるコアが数個以下のCPUを選択する。また、生物の観察にはカメラで撮影し 高精細画像の表示は不要なのでGPUは採用しない。一方、価格は高くなるが屋外使用のため防水機能は搭載する。プロトタイプ機を小学生に試してもらい、スペックを修正する。

テスト段階:スペックに不足がないか、複数の小学校でテストする。加えて、小学生はキーを連打する恐れがあるので耐久テスト(ファジング)する。

3.2最終的に得られる成果や波及効果

 最終的に得られる成果として、軽い端末が得られ、小学生が使いやすくなる。持ち運びやすいので学習の機会が増える。

波及効果として、軽いので、林業などアクティブに動く仕事や、力の弱い人もその学習用端末を使用しやすくなる。様々な仕事や人が使いやすい端末の提供に貢献できる 。

№24 R3年 上下水道部門、上水道の答案について添削致しました。 2021/11/23

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この答案についての講評

 試験結果は、必須科目がB、選択科目がB,A(総合A)で残念なことに不合格と評価されました。答案の表現力は十分で、見識問題では正しく解答ができていましたので、合格の期待が持てました。しかし、上下水道部門技術士としてのプロの提案が足りなかったようです。これらを表現すれば合格しやすくなります。今回の試験ではそうした専門的な練習がやや不足していたのではないかと想像されるところが見受けられます。

これまで1回目受験されて、これまで有料の講座をお受けになったことがないとのことでした。このため戦略的な論文表現がやや弱かったようです。ご自身の努力だけでは、出題者の真意が読み取れず、解答のストライクゾーンに答えるのが難しかと思います。まずは記述内容の矛盾や無駄をなくしていけば次第に正解に近づきます。

 答案の必須Ⅰでは、専門家らしいコメントが述べられていなかったようです。Ⅱは、Ⅱ-2で的確な解答が提案できていなかったことが敗因のようです。比較的話題となっていることですので、普段から問題意識を持つことで解けたかと思います。Ⅲは予良い内容で評価もAで良かったです。無駄な記述に発散するのをなくして簡潔な書き方ができると、本題に迫る得点力の高い答案が書けて、合格しやすかったのではと思います。

 しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば必ず合格できます。再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(19分55秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1  日本の将来人口は、減少していくと予測されている。この人口減少により上下水道事業では、将来水需要の減少に伴う料金収入の減収や職員数の減少が見込まれている。一方、多くの施設は、老朽化が進行しており、更新時期を迎えつつある。このため、今後も安定して事業を継続していくためには、厳しい財政状況の下で執行体制の省力化を図りながら事業が進められるように上下水道事業の基盤強化を着実に進めていくことが求められている。

(1 上下水道事業に共通する事業基盤強化に関して、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。

(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える上下水道に共通する課題を1つ挙げその課題に対する複数の解決策を示せ。

(3) 解決策に共通して生じる新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)  業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続性の観点から述べよ。

1.      上下水道共通の課題

 近年、上水道事業を取り巻く環境は大きく変化しており、様々な問題を抱えている。特に事業を運営する基盤が脆弱である。このため、基盤の強化を図ることが急務となっており、以下の課題に取り組む必要がある

■ここは不要↑

(1)          職員不足への対応(ヒトの観点)

 団塊世代の大量退職、人員適正化により職員数が減少している。職員不足は、日常業務の繁忙化を招き、老朽化対策事業等の停滞、更新計画の未策定、対症療法的な事務処理に繋がる。このため、職員不足への対応が課題となっている。

■「職員数の減少」は題意なの、職員不足対応ではダブリです。

(2)          財源不足への対応(カネの観点)

 人口減少、節水機器の普及により、水需要が低下しており、料金収入が低下している。方、老朽化対策、自然災害対策、地球温暖化対策等の事業は増加しており、必要な財源が確保できていない。このため、財源不足への対応が課題となっている。

■すべて前提事項でダブリです。課題を考えたことになりません。その先を提案するように。

(3)          老朽化対策の推進(ものの観点)

 高度経済成長期に一斉に整備された多くの施設の老朽化が進行しており、更新需要のピークを迎えている。老朽化した施設は、突発事故の発生、災害時の被害の深刻化を招く。このため、老朽化対策の推進が課題となっている。

■これは問題文と同じことです。解決方策を提案するように。

2.      最重要と考える課題と解決策

 前述のうち、職員不足への対応ができないと上下水道事業の継続に支障をきたし、安全、安心なライフラインを国民に提供することができなくなるため、最重要課題と位置付けた。また、職員の大幅な増員は人口減少の中、見込めないため、ICT/IoTを活用した業務の省力化に着目した解決策を以下に述べる。

■この前置きはなくても同じです。

(1)          上下水道台帳web閲覧システムの導入

 他占用者工事、新築計画の事前調査のため、上下水道台帳の取得に需要者が来庁し、職員が窓口で対応している。このことに多くの時間と手間を要している。この解決策として、上下水道台帳web閲覧システムの導入を提案する。このことにより、需要者はネットワーク環境があれば、どこでも台帳を取得できるようになり、職員の窓口業務を削減することができる。

■対策としてはOKです。リストラ策ではありません。

(2)          リモート方式の導入

 会議参加、工事立ち合い等の移動に多くの時間を要している。この解決策として、リモート方式の導入を提案する。ネットワークカメラ、ウェアラブルカメラを用いて、会議の参加、工事の材料検査、臨場確認を机上で行うことが可能となり、移動及び待機時間の削減を行うことができる。

(3)          スマートメーターの導入

 料金を算定する検針業務は、委託化が普及しているが、小規模の事業体では職員が行っている場合がある。

検針業務は多くの人と時間を要している。この解決策として、スマートメーターの導入を提案する。このことにより、検針業務が不要となり、人員の削減と委託費の削減を行うことができる。

■2、3共にOKです。

3、新たなリスクと解決策

(1)新たなリスク

 解決策は通信手段を活用うる技術のため、サイバーテロ、ウィルスにより、情報の流出、消失、システムダウンが生じる可能性がある。

■今日↑常識的なので、水道に由来するものお考え下さい。

(2)対策

 セキュリティ対策を強固にするとともに、定期的なバックアップを確保する。また、システムダウンが生じた場合、職員による業務継続、復旧手順のマニュアルを整備する。

3.      技術者倫理

 技術者は、業務を遂行する全段階において、国民の安全、健康及び福利を最優先する必要がある

 また、職員不足への対応を図ることで、上下水道事業の継続をはかることができ、将来にわたって安全、安心なライフラインを確保できるよう努める必要がある。

■要件とは、問2の仕事を遂行する上で、私は何に留意して行うか、というものです。

問題文 Ⅱ−1−1

活性炭処理の種類とそれぞれの特徴と処理上の留意点について述べよ。

1.      活性炭の種類

 活性炭は2MIBやジェオスミン等の異臭味物質を吸着作用により除去できる処理方法であり、粉末活性炭と粒状活性炭に分類できる。 

■前置きは不要です

2.      特徴と留意点

(1)粉末活性炭

粉末活性炭処理は原水中に直接注入する方法であり、施設整備が容易なことから、季節的な異臭味物資の発生や油事故等に用いられる。恒常的な異臭味には大量の活性炭が必要なことから費用対効果を検討した上で使用する。また、冬季で気温が低下すると、粉末活性炭が漏洩することに留意する。

■末尾文はどういうことか意味不明です。そしてどう、何に留意したら改善するのですか。

(2)粒状活性炭

 粒状活性炭は、活性炭を敷き詰めて、原水を通過させる方法であり、施設整備が大規模になる。このため、空きスペースの確保が必要になる。また、時間の経過とともに、吸着作用が低下するため、活性炭の再生や交換が必要になる。

■粒状活性炭の特徴は何なのか述べられていません。

Ⅱ-2-2   河川表流水を原水とし、急速ろ過方式を採用している浄水場において、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨により、年に数回の頻度で原水が極めて高濁度となる事象が発生しており、対策の検討が求められている。あなたが、この検討業務を担当責任者として進めるに当たり、以下の内容について記述せよ。

(1)   調査・検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)   業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)   業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

私は高濁度原水が発生した場合における対策検討業務担当者として以下に記述する。

1.      調査・検討すべき事項

(1)          水道施設の諸元調査

 沈殿池、ろ過池、排水処理施設、配水池容量、薬品貯蔵量、濁度計の測定可能範囲、浄水場が複数ある場合のバックアップ水量等を調査して、改善が必要な項目を検討する。

■漠然と広く調査ではなく、必要とするねらい、目的を示して、そのために必要なことを調査します。

(2)          類似事例の調査

 類似浄水場を所有する事業体での対策事例や文献、及び過去事例を調査して、高濁度原水対策の知見を収集する。

■これだと、原因が見えていない、経験不足とみられます

(3)          ピークカット可能時間の検討

 ピークカットを行うことを想定して、配水池容量等を考慮して取水制限、取水停止可能時間を検討する。

■ピークカットは1のバックアップとダブリ。

(4)          常時人員体制の検討 

 参集可能な職員、対応に要する人員数の検討を行う。また、取水停止による広域の断水が生じることを想定し、応急給水活動を行うため、隣接事業体や民間企業等の応援協定の締結・強化を検討する。

■人員のことは、特に必要事項ではないでしょう。

2.      業務手順

 業務は以下の(1)〜(3)の順で実施する。

(1)          対策検討チームの編

 高濁度原水への対策には様々な部門(水質、維持管理、運転管理等)が関わるため、各部門から担当者を選出してチームを編成することに留意し、ソフト面及びハード面での検討を分けて実施するよう工夫する。

■組織論を求めているわけではないので、そのチームが何をすべきかを言う

(2)          各段階での対策検討

 各段階(下記①〜③)での対策検討を行うことに留意する。検討の結果、施設の改築等が必要な場合、実施スケジュールを明確にして、確実に実施する計画を立案するよう工夫する。

①    濁度が上昇までの対策検討

②    濁度が上昇を始めてから

③    濁度が浄水処理能力を超過したときの対応

(3)          対策についての評価

 検討によって得られた改善点等の有効性・実現性を評価することに留意する。また、必要に応じて専門家へ依頼し、対策の妥当性について助言を貰うよう工夫する。

■問題の焦点が読み取れていないようです。これを見てください。

高濁度原水への対応の手引き

http://www.jwrc-net.or.jp/chousa-kenkyuu/keinenka/koudakudo/0_all.pdf

3.      関係者との調整方策

 対策を検討する際、様々な関係者との調整が必要になるため、書面・メール・ICTを活用して明確な意思疎通を図る。また、定期的な会議を開催してコミュニケーションを密にとり、議事録を作成して情報共有を行うことが重要である。

 さらに、高濁度原水発生時の甚大な被害についての事例を関係者に周知し、リスクの共有を図ることで、対策検討業務の円滑化が図れると考える。

■残念ながら問題の焦点が見えていないようです。

Ⅲ-2   我が国の水道事業を取り巻く事業環境は、人口減少に伴う給水収益の減少、施設・管路の老朽化に伴い、急速に厳しさを増している。このため、市町村の区域を超えた広域的な水道事業者間の多様な連携(広域連携)などによって今後の事業基盤を確立することも効果的である。一方で、料金格差の問題があるため、短期的には経営統合の実現が困難な地域も多くみられる。このような地域における広域連携方策を検討する技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)       技術者としての立場で多面的な観点から広域連携により解決できる課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記した上で、課題の内容を示せ。

(2)       抽出した課題のうちあなたが最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)       提案した解決策を実行したとしても新たに生じうるリスクとそれへの対応について中長期的な視点も含めて考えを示せ。

1.      上水道の課題

 近年、水道事業を取り巻く環境は大きく変化しており、様々な問題を抱えている。特に事業運営を行う基盤が脆弱になっている、このため、基盤強化を図ることが急務となっており、広域化が提唱されている。広域かを図ることで解決できる課題を以下に述べる。

■この記述は↑はなくても構いません。

(1)          人材不足への対応(ヒトの観点)

 人口減少、人員適正化により、職員が減少している。

職員数の不足は、維持管理の放置、技術力の低下、災害時の応急体制の未確保に繋がる。このため、人材不足への対応が課題となっている。

(2)          財源不足への対応(カネの観点)

■1,2,3ともいずれも正解です。◎

 人口減少、水需要の低下により料金収入が低下し、財政状況が悪化している。一方、地球温暖化対策、自然災害対策、老朽化対策等、実施すべき事業は増加しており、必要な財源が確保できていない。このため、財源不足への対応が課題となっている。

(3)          施設予備能力の確保(モノの観点)

 小規模の事業体では、施設数に限りがあるため、施設の予備力を有していない場合がある。このため、災害時のバックアップが確保されず、被害の長期化を招く。このため、施設予備能力の確保が課題となっている。

2.      最重要と考える課題

 前述のうち、人材の不足への対応ができないと、上水道事業の継続が困難になること、また、小規模な事業体では、維持管理にすでに支障をきたしていることから、最重要課題と位置付けた。以下に解決策を述べる。

■ここも正解です。ただし、もっと力を入れて、文字数を割いて書いてもよかったのではないかと思います。

(1)          遠隔制御による人員集中

 小規模な浄水場の遠隔制御を行い、集中監視所で制御することで人員の集中化を図ることができ、人員の削減を行える。

(2)          施設の統廃合

 広域化を図ることで、施設数の余剰を適正化する施設の統廃合を行うことで、維持管理に伴う人員の削減を行うことができる。

(3)          官民連携

 民間の経営ノウハウや技術力を活用した官民連携を行う。具体的には設計、施工、維持管理まで一括して行うDBO方式等を導入して、人員の削減を行う。

3、新たなリスクと解決策

(1)新たなリスク

 解決策を実施するためには、職員の一定以上の専門能力を必要とする。地方自治体では、短期での異動が定例で行われるため、水道未経験の職員が新規に事業に従事すると、事業が停滞する恐れがある。

(2)対策

 水道専門職員の育成制度の導入を行う。地方自治体の水道職員は一般採用土木の採用であるため、様々な部署異動が生じる。このため採用職種「土木」での総合的な採用ではなく、より専門性を高めた採用職種「水道」を導入することにより、採用から退職までを一貫して水道に携わる職員を確保することができる。また、現職の職員に対しても、異動を水道部門内のみで固定するキャリアプラン制度を導入することで専門能力の高い職員の育成と安定した確保を行うことができる。

 さらに、研修制度の充実、OBによるOJT、先進事業体への派遣制度を導入して、専門性を高められる組織体制を構築することが必要である。

№23 R3年 環境部門 環境測定の答案について添削致しました。 2021/11/22

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この答案についての講評

 この方の試験結果は、BBCでした。まだ本格的な有料講座は受講されたことはないとのことでした。そして独自の合格戦略として、図表を入れるとか最後に「以上」と書くなどされていましたが、自身の弱点については、出題のねらいがわからず、文章が書けないと分析されていました。

 拝見したところ、全体的に厳しい評価であり、特にⅢ問題はCということで正解に関することが書かれていなかったようです。今回、Ⅲでは、予算削減のため「複数調査機関に委託する」という、環境測定特有の課題が与えられ、その中で品質確保が求められました。しかし、残念ながらこの条件が繁栄されておらず、答案としては無視する形となり、コミニケーション力不足と判断されたのだと想像致します。

 これまで4回受験されて、苦労されているご様子なので残念です。しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。技術士試験では、講師の言われた通り書き直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(31分01秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題   Ⅰ-2 今日、私たちは地球規模での環境の危機に直面しており、迅速な対応を迫られている。地球環境の危機はグローバルな社会・経済システムと深く関わっており、私たちは、経済社会活動に必要不可欠である環境の基盤を維持しながら、環境と成長の好循環を実現することが求められている。以上の基本的な考えに関して以下の問いに答えよ。

(1)  地球環境に危機をもたらしている地球規模での課題について、環境部門の技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)  全問(1)で抽出した課題のうち最も重要と課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を3つ示せ。

(3)  上記すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)  前問(1)〜(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.地球環境に危機をもたらしている課題

1)温室効果ガス排出量の削減

地球温暖化により、気象災害が増加し、生態系に悪影響を与えている。地球温暖化を緩和するためには、温室効果ガスの排出量を削減する必要がある。

経済活動を維持しながら、温室効果ガスの排出量を削減することがもとめられる。

■単に削減ではなく「環境と成長の好循環」ですから・・。また、地球環境の危機とは何か

2)海洋プラスチック削減

海洋に流出したプラスチックが海洋生物に悪影響を与えている。また、海洋プラスチックが自然分解され、マイクロプラスチックとなり、人体への影響が懸念されている。

今後は、海洋に流出したプラスチックのモニタリング方法の確立や、海洋に流出したプラスチックを回収するための技術開発が課題となる。

■プラゴミありきで考えていませんか。

(3)コンパクトな地域での資源の循環

廃棄物を有効利用することで新たな資源の投入量を低減し、廃棄物の最終処分量を削減できる。また、よりコンパクトな地域で資源を循環する事で資源を運搬する労力やエネルギーを削減できる。

今後は、よりコンパクトな地域で資源を循環させるシステム作りが要求される。

■対策提案ありきで考えていませんか。課題としては、地球環境の危機をまず言うことです。そし「環境と成長の好循環」です

2.最も重要と考える課題とその解決策

地球温暖化が地球環境に与える影響が最も大きく、早急に対応する必要があるため、(1)温室効果ガス排出量の削減を最も重要と考える課題として挙げ、以下にその解決策を示す。

(1)再生可能エネルギーのさらなる拡大

FIT制度導入以降、自然エネルギーによる発電量が増大した。しかし、設置用地や環境上の制約があるため、これ以上の拡大が困難となっている。

今後は、太陽光発電の設置面積当たりの発電量の多いシステムの開発や、洋上風力発電の開発を行い、再生可能エネルギーのさらなる拡大を目指す。〇

(2)バイオマス発電

バイオマス発電は植物が成長するときに吸収するCO2と燃焼される時に排出するCO2の量が同等となる、カーボンニュートラルな発電方法である。

し尿や食品廃棄物、下水道汚泥を回収して、メタンを製造する。廃材を利用して木材チップを製造する。

製造したメタンや木材チップを燃焼させ発電する。

バイオマス発電を行うことにより、化石燃料の消費量を削減し、廃棄物を削減できる。

(3)水素エネルギーの活用

電力は大量に貯蔵できないため、過剰に発電した電力が無駄となる場合がある。

過剰となった電力を活用して水素を製造する。水素は液化、メタン化、アンモニア化、有機ハイドライド等様々な貯蔵方法が開発されており、大量に貯蔵することができる。

過剰となった電力を利用して、製造した水素を有効利用する事で、化石燃料の使用量を削減できる。

3.新たに生じるリスクとそれへの対策

(1)新たに生じるリスク

自然エネルギーによる発電量が増大することにより、電力の調整が困難となる。水素の製造は、小規模な施設には、コストや安全面から不向きである。

水素製造に代る、電力調整の方法が必要である。

(2)リスクへの対策

地域や小規模発電施設の周辺にNAS等の大規模蓄電システムを建設し、電力を貯蔵する。

それにより、電力の調整能力の向上だけでなく、送電ロスの削減、送電網の負荷の低減、地域のエネルギーの安全保障の向上につながる。

4.業務遂行に当たっての要件・留意点

(1)技術者としての倫理

業務を進める際には、地域の環境や安全を優先し、個人や企業の利益のために情報の隠蔽や捏造を行わない。

■「犯罪行為をしない」では例えが悪すぎます。

(2)社会の持続可能性の観点

地球環境を長期的に維持するためには、何世代に渡って、環境を維持する事が求められる。

そのためには、ESD等の環境教育を行い、環境に対する知識を浸透させる必要がある。

■ESD→ESG

ここはSDGsです

 II-1 省略

問題文 

Ⅱ-2-1 環境測定に係る環境省のマニュアルや告示等が近々改定・改正されることに伴い、A社では新しい分析方法(騒音分野は測定装置)を導入することとなった。この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。なお、回答に当たっては、「大気、水質、土壌、騒音」の中から1つの分野を選び、最初に明記する事。また、過去に実施した特定の項目で事例を示すのではなく、汎用的に説明をすること。

(1)  あらかじめ調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)  留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。。

(3)  業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

「騒音」の分野を選択し、以下に記述する。 

1.あらかじめ調査、検討すべき事項

1)測定器の導入数の検討

改正されるマニュアルや社会情勢を勘案し、導入する測定装置の数を決定する。

■数より質では?

2)管理方法の検討

導入する測定装置の管理場所、管理責任者、管理方法を検討する。

(3)測定方法、使用方法の検討

導入する測定装置を使用するための技術の習得方法や、習得した技術の共有方法を検討する。

■今、騒音のマニュアル、告示が改定されるとしたら、どんなことが変わりそうですか。騒音測定の視点での考察をすると答えがわかります。

2.業務を進める手順 事務的な話ではないでしょう↓

業務を進める手順を図−1業務プロセスに示す。

業務遂行手順は①〜⑦の7つの工程から形成される。

①見積もり依頼では、代理人に見積もり依頼し測定装置の価格を把握する。

②測定システムの購入では、測定器の必要性、

測定器の価格を勘案して、導入する測定器の数を決定する。導入する測定器が社会情勢や、顧客のニーズの変化で不要となる可能性がある場合にはリース契約の導入も検討する。

■目的、ねらいが見えず、とりあえず「導入」だけを優先したように感じます。これだと環境測定の専門家の答えになりません。「騒音測定」の新計画が読み取れません。

③管理方法の決定では、測定器の管理を担当する人員、保管場所、管理方法、管理簿の様式を決定する。

④操作方法の習得では、メーカーの技術者を招き、測定器の操作方法を習得する。

⑤操作方法の共有では、習得した技術を調査員で共有する。手順書等のマニュアルを各自で作成し、操作技術の向上を目指す。

⑥導入開始では、測定器の管理責任者、管理や調査に係る人員を決定する。調査時や校正時に気が付いた点を記録する

⑦測定管理システムの改正では、導入後変更すべき点があった場合に測定器の操作方法や測定器の校正方法を変更する。

■方法論はシステマティックで◎です。しかし、他の受験者の類似答案から類推すると、一般論に発散した場合、Cの危険性もありますのでご注意下さい。

3.関係者との調整方法

以下記録していない、記憶が曖昧なため記述できません。

Ⅲ-1 内湾に面するある県では、その内湾の埋め立て地に飛行機が立地し、内湾の都市部には高速道路と新幹線があり、また山地丘陵もある。この県では、環境基準項目等の調査項目が増加する一方で、監視業務に係る予算や人員が削減されるなど厳しい状況にある。そこで新たな方策として、測定計画に基づく環境調査のすべてについて複数の外部調査機関に委託して実施することにした。なお、調査項目と調査地点の見直しは行わないこととする。この委託調査を県の地域的特徴を踏まえて立案・実施する担当責任者として、以下の問いに答えよ。回答に当たっては、「大気、水質、土壌、騒音」の中から1つの分野を選び、最初に明記する事。

(1)  環境調査を外部委託するに当たって、環境測定の技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)  抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)  前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術踏まえた考えを示せ。

「騒音」の分野を選択し、以下に記述する。

1.環境調査を外部委託するに当たっての課題

■内湾、埋め立て地、飛行場、都市、高速道路、新幹線、山地丘陵・・・が現場の条件です。この与条件に応えることです。条件無視ではコミニケーション力不足とみられます。

予算削減のため「複数調査機関に委託する」のですから、その中で品質確保です。

1)AIやIOTを用いた省力化

騒音調査のすべてを外部機関に委託するためには、多額の予算が必要となる。しかし、監視業務に係る予算は削減され、厳しい状況にある。

そのため、騒音測定を自動化・省力化し、監視業務に掛かる予算や労力を削減する必要がある。AIやIOT技術を利用した騒音測定システムを開発し、騒音測定業務を省力化する事が課題となる。

このようなハイテクは焦点ではないでしょう。

2)業務内容の明確化

外部委託する騒音調査は、航空機騒音、新幹線鉄道騒音、在来線鉄道騒音、道路交通騒音、工場騒音等であると想定される。

■だとするとどんな内容となりますか。

これらの測定地点、測定方法、使用機器、業務内容、測定時期を集約・解析し、業務内容を明確化し、受注業者と情報を共有できるようにすることが求められている。

■なぜ情報共有ですか。

(3)業務の分配

監視業務を効率よく実施するためには、業務を適切に分配する必要がある。測定資材や労力を円滑に運用するための測定計画を立案し、外部機関に委託する業務を受注機関が実施しやすいように分割する必要がある。  

■環境測定の主題から離れています

2.最も重要と考える課題とその解決策

広域な地域で監視業務を実施するためには、労力やコストを削減する必要があると考え、(1)AIやIOTを用いた省力化を最も重要な課題として挙げ、以下にその解決策を示す。

(1)IOTを用いた自動測定

騒音測定では、測定中に正常に稼働しているか、バッテリーの残量が十分であるかを確認するため、定期的に巡回する必要がある。

その作業を、クラウドロガーを用いて自動化することにより省力化する。

測定値やバッテリーの残量のデータをクラウドロガーに送信する。送信されたデータをパソコン上で管理する事により、巡回に要する労力を削減する。

■環境測定、騒音の専門分野での解決策を示すように。

(2)AIを用いた騒音解析

騒音測定において測定対象外の騒音の影響を低減する事は重要な作業である。誤って測定対象外の騒音が測定結果に混入した場合には異常値を示す場合がある。

騒音は騒音源(航空機、新幹線、在来線、工場、自動車)により変動状況が異なり、変動状況と音声を確認することで発生源を判別する。その作業を、AIを用いて自動化する。

AIを用いた画像解析や音声解析を行うことで騒音発生源を特定し、測定対象以外の騒音を自動的に除外するシステムを開発する。AIを用いた騒音解析を行う事により、騒音解析かかる労力を削減する。

■AI(情報工学)に頼るばかりでなく、騒音測定の本質的技術はどこで示しますか。

3.新たに生じるリスクとそれへの対策

(1)調査員の技術者不足

AIやIOTを活用するシステムを開発するためには、高度なプログラミング技術を必要とする。システム開発を外部に委託したとしても、システムを活用するための技術が必要となる。

技術を習得するために、定期的に技術者を招いて講習会を行う。また、社内で勉強会を行い、習得した技術を共有する。

(2)入札システムの多様化

AIやIOTを活用するシステムを開発するためには、多額のコストがかかる。開発するシステムが地域的特徴を踏まえたシステムの場合、他の地域で使用できない可能性がある。

そのため、業務が単年契約であった場合にコストを回収できない懸念があるため、委託業者が減少する事が考えられる。委託業者の減少は入札不調を招き、市場競争の妨げとなる。

そういった事を回避するため、業務を委託する際には測定システムを発注者が買い取る仕組みや、複数年契約を導入し入札システムを多様化する。

様々な入札システムを導入する事が委託業者の減少を防ぎ、市場の適正な競争につながる。

■AIに偏った内容になってしまって、騒音測定の本来の議論から離れたようです。

№22 R3年 上下水道部門 下水道の答案について添削致しました。 2021/11/22

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この答案についての講評

 試験結果は、ABBでした。今回の試験ではきっちり答案を作成されてよく頑張りました。ただし、技術士の専門性をアウトプットするような練習が不足していたのではないかと想像致します。マンツーマンコーチングでコンピテンシーを高めていけば楽勝で合格できます。次回試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。音声ガイドのコメントをお聞き願います。

 これまで1回目受験されて、苦労されているご様子なので残念です。しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(22分56秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-1  日本の将来人口は減少していくと予測されている。この人口減少により上下水道事業では、将来水需要の減少に伴う料金収入の減収や職員数の減少が見込まれている。一方、多くの施設は、老朽化が進行しており、更新時期を迎えつつある。このため、今後も安定して事業を継続していくためには、厳しい財政状況の下で執行体制の省力化を図ながら事業が進められるように上下水道事業の基盤強化を着実に進めていくことが求められている。

(1)上下水道事業に共通する事業基盤強化に関して、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。

(2 )抽出した課題のうち最も重要と考える上下水道に共通する課題を1つ挙げ、その課題 に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して生じうる新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

(1)     上下水道事業に共通する課題

職員の減少

 全国市町村の職員は、ベテラン職員の大量退職や人員削減により、ピーク時の平成9年より約3割減少している。全国1716市町村の内、7割は5万人以下であり、担当職員は5人以下である。日々の維持管理業務や老朽化施設の更新業務を行うにあたり、人員不足により支障をきたしている。そのため、職員の減少が課題である。                                      確保↑

②上下水道老朽化施設の更新増

 上下水道施設は、高度経済成長期に建設され、今後急速に劣化による更新が必要となる。全国の上水道管延長72万㎞、下水道管48万㎞、下水処理場は2200箇所と大量の施設がある。管渠の経年劣化により、上下水道管の破損による道路陥没や汚水の流失が発生し、国民生活や社会経済活動に影響をおよぼしている。効率的な上下水道の老朽化施設の更新が必要である。そのため、上下水道老朽化施設の更新増が課題である。

③上下水道施設更新費用の財源確保

 全国の市町村では、本格的な人口減少による水需要の低下や節水器具の普及に伴い上下水道使用量減により、使用料金の収入が減少している。全国の市町村の上下水道予算についても、事業の縮小や予算の削減が行われている。今後の施設更新費用と併せて施設の維持管理費を、どのように確保するかが重要である。そのため、施設更新費用の財源確保が課題である。

■技術士試験は行政の立場ではないので、省力化や低コスト化とするのが良いでしょう。

(2)     最も重要と考える課題及び解決策

 最も重要と考える課題は、「職員の減少」である。

その理由は、維持管理や上下水道老朽化施設の更新は今後増加していくため、人員が必要となるからである。

 課題に対する解決策について、以下に述べる。

広域化・共同化

 近隣の市町村と広域化・共同化により、職員の不足を補うようにする。1市町村だけでは対応できないことに、近隣市町村の人的及び技術力の助けを受ける。

広域化・共同化により、施設更新や維持管理業務に効率的に取り込むことができる。

②官民連携(PPP/PFI)

 職員の減少については、民間企業の資金や技術ノウハウを導入し、業務の効率化を図る。民間活力(PPP/PF I) による上下水道施設の更新を行うことにより、職員不足への対応が可能となる。また、維持管理業務についても、民間事業者への委託を行う。

(3)     解決策により生じるリスクとその対策

 上記の解決策に共通して生じる新たなリスクとしては、職員の技術の空洞化がある。広域化と官民連携することで、中小の市町村では技術的確認の能力不足により技術的なチェックができないおそれがある。その対策としては、官民で勉強会や研修会を実施して、技術の向上を図る。市町村の上下水道事業の職員については、基幹となる技術者は最小限確保しておく。必要な事業は、官側で行うようにする。

(4)     業務遂行において必要な要件

 上下水道事業の業務遂行にあたり、公共の安全である公衆の安全、健康及び福利を最優先に考えて行うことが必要である。

 社会の持続可能性の観点から、環境の保全に配慮し、上下水道施設を更新していく。

■ここは意味が違います。問2に書いた広域化、官民連携を遂行するのに、ただ最低限の仕事をするのではなく、技術士なら技術者倫理も高めてするはず。ついてはあなたは、仕事のやり方として、何をどう留意しますか・・という意味です。

例 地域のまとまりを考慮して、親近性の高いグループを作り広域化する。水道業務の差が生じないように平等性が保つため質的平準化を目指す。

問題文 II-1-2 分流式下水道における雨天時侵入水に起因する事象について、その発生原因を2つ挙げるとともに、管路施設での対策を述べよ。

(1)雨天時浸入水に起因する事象の発生原因

■「雨天時侵入水に起因する事象」とは何のことですか。「雨天時にマンホール蓋のかぎ穴から水が浸入する」のは水の侵入そのものです。題意の「雨天時侵入水に起因する事象」とは違うのでは?出題者の意図を読み違えていませんか。答えはこのリンクの2ページにあります。事象1〜3が宣言されています。

https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001342751.pdf

(事象1)処理場外にある汚水管のマンホール等からの溢水や宅内への逆流

(事象2)処理場外にある汚水管等から雨天時に増水した下水が公共用水域に流出

(事象3)処理場に流入する下水の一部を二次処理せず放流または流出

マンホール蓋のかぎ穴からの浸入

 雨天時に下水道マンホール蓋のかぎ穴から浸入することが原因である。

 対策としては、マンホール蓋のかぎ穴にゴムパッキンを設置して、雨水が入らないようにする。

■「鍵穴に蓋」ではシンプルすぎませんか。冷静に考えて正解とは信じにくいです。

②下水道管布設の施工不良による浸入

 下水道管路の埋設時に管の継手箇所について、施工不良によるすきまから雨水が浸入することが原因である。

 対策としちぇは、TⅤカメラ調査により浸入箇所を、特定し修繕・補修を行う。補修については、布設替えか更生工法により行う。平常時と雨天時との下水量の差を事前に調査しておく。

問題文 II-2-1 大規模な地震時においても下水道が有すべき機能を維持するため、既存の下水道施設への地震対策が必要である。そこで、重要な下水道施設の耐震化を図る「防災」と被災を想定して被害の最小化を図る「減災」を組合せた下水道総合地震対策を計画することになった。あなたが業務責任者として選任された場合、下記の内容について記述 せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する 点を述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)     調査、検討すべき事項とその内容

 下水道施設の耐震化を図る「防災」と被災を想定して被害の最小化を図る「減災」を併せた下水道総合地震対策を計画するにあたり、調査、検討する事項について述べる。

■「調査、検討すべき事項」とありますので「・・を調査し、・・を検討する」という文でまとめると良いでしょう。

計画地区の地形・土質・地下水位を確認する。

②下水道全体計画、下水道ストックマネジメント計画、下水道耐震計画の内容を確認する。

③地域防災計画や地区防災計画を確認する。

④過去に発生した計画地区における地震のデータを確認する。

⑤過去の地震による下水道施設への被害の確認を行う。

■重要な下水道施設の耐震化、被害の最小化について何が重要かが見えていないようです。喩えていうと「知識0から始める」では専門家の答えとは言えません。

⑥作成済であるBCP(業務継続計画)の見直しを行い、水害対策や津波対策を新たに計画に取り入れる。

⑦重要な管渠ルートとその他の管渠ルートを調査する。

⑧今後、予想される地震の発生箇所を調査する。

⑧緊急避難路に指定されている道路に埋設されている管路や下水処理場の耐津波化について調査する。

具体的には、官の耐震化を計画する。管の布設替やマンホールの管接続部に可とう管を設置する。また、マンホールの浮上防止対策を計画する。下水処理場については、施設の耐震化・耐水化・耐津波化を実施する計画とする。BCPについては、作成済の計画を見直しする。津波対策や水害対策、そして停電時の自家発電設置の計画を行う。

■問1は対策を書くところではありません。

(2)     業務を進める手順と留意すべき点、工夫を要する点

 耐震化を図る「防災」と被害の最小化を図る「減災」を併せた地震対策とする。災害時において、避難所や医療施設への道路下に埋設されている管きょについては、優先的に耐震化を図る。下水処理場については、耐震化・耐津波化・耐水化を図る。

 BCP見直しについては、地域防災計画の内容に合う計画とする。

■手順ですから、時系列の4〜5の作業項目ごとにまとめると良いでしょう。

(3)     関係者との調整方策

 国や県、市町村内部の担当部局と十分に打合せ協議を行い、計画を作成する。

 地区住民との打合せについては、計画を広く周知するため、資料やホームページを用いて、「見える化」を図る。

■協議、見える化とは確かに必要ですが、それだけで専門家の取りまとめと言えるでしようか。

問題文 III-2 下水道事業は、人口減少による使用料収入の減少、老朽化施設の増加などの背景からより効率的な事業実施が求められており、また、降雨の局地化・集中化・激甚化に対する新たな防災・減災のあり方を検討する必要がある。さらに、人口減少社会における汚水処理の最適化、エネルギー・地球温暖化問題への対応なども求められている。

これら様々な課題に対して、持続的かつ質の高い下水道事業の展開を実現するためにICTの活用が推進されており、下水道事業の質・効率性の向上や情報の見える化を進める 責任者の立場として、以下の問いに答えよ。

(1)ICTの活用を推進して対応すべき課題について、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、その内容を観点とともに示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)   ICTの活用を推進して対応すべき課題

■アンダーラインは不要です。

下水道職員の確保

 ベテラン職員の大量退職や人員削減により、全国の市町村の職員は減少している。全国1716市町村の内、約7割は職員が5人以下である。日々の維持管理や老朽化施設の更新において、職員の人員不足により支障をきたしている。いかに少数の下水道職員で効率的に事業を行うかである。そのため、下水道職員の確保が課題である。

■これは題意では求められていません

②下水道使用料の減

 人口減少と節水器具の普及により、上下水道の使用量は減少している。下水道の使用量も減少しており、下水道使用料金も減となっている。いかに人口減少時において、使用料収入を減少させないかである。そのため、下水道使用料の減が課題である。

■「I CTの活用、下水道事業の質・効率性の向上や情報の見える化・・」とありますのでこちらに集中するように。

③ICT設備導入の財源確保

 ICT技術を活用したデジタルトランスフォーメーションを行うには、ICT設備を導入する必要がある。ICT/IOTの設備については、初期投資の費用が高い。全国市町村は、人口減少による下水道使用料の減と併せて、事業予算の削減や事業の見直しにより、事業予算の確保が困難となっている。維持管理と老朽化施設の更新費用も必要となる。いかにI CT/IOT設備導入費用を最小限とするかである。そのため、ICT設備導入の財源確保が課題である。

■間接問題であって、本題ではありません。

(2)   最も重要と考える課題とその解決策

1)  最も重要と考える課題

 上記の課題のうち、最も重要と考える課題は「下水道職員の確保」である。

 理由:理由は下水道事業の維持管理や老朽化施設の更新には必要最小限の人員が必要であるためである。

今後、ICT技術を活用し業務の効率化を図るため担当職員が必要となるからである。

 以下に課題に対する解決策を述べる。

■ここは特に理由の求めがないので不要です

ICT/IOTによる下水道施設の効率化・省力化の管理

 職員不足に対応するため、下水道施設の管理にICT/IOT技術を活用する。下水処理場をどこからでも施設の運転を監視や操作を可能とする広域運転監視システムを導入する。処理場の日々の運転データや流入する汚水の量や水位を調節する。システム導入により、業務の効率化・省力化やコスト縮減が可能となる。また、施設の維持管理のデータについて、民間技術者が手入力していた作業を、自動化することで、業務の効率化・省力化を図る。

②官民連携(PPP/PFI)

 下水道事業の広域化・共同化と併せて、民間企業の技術・ノウハウ・人員を活用することで、維持管理業務の効率化・省力化を図る。維持管理にICT技術を導入し、官民双方の業務効率化・高度化を図る。

■こちらは手段的な事項であって、IOTからやや発散しています。

(3)   解決策に新たに生じるリスクとその対策

1)   ICT/IOTによる下水道施設の効率化・省力化の管理のリスク

サイバーセキュリティのリスクがある。

■コンピューターシステムに対してサイバーセキュリティではやや安直です。今日常識では。

技術士のⅢ試験とは下水道工学の応用力をチェックする試験です。

またIC

T/IOTシステム故障やシステム異常も考えられる。対策としては、システムへの第三者による侵入に対してはウイルス対策、設備に接続する認証システムを整備する。またデータのバックアップにより、別の箇所に保存する。

2)   官民連携(PPP/PFI)のリスク

官民連携において、官側に業務実施にあたり技術

力不足により、技術的チェックができない可能性がある。対策としては、国・県や第三者機関である日本下水道事業団に技術的チェックをお願いする。また、全国の先進地の市町村から技術的指導を受ける。

№21 R3年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 2021/11/06

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この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、オールBと残念な結果でした。指摘事項は今後の参考としてください。

 技術士試験では、答案を暗記してアレンジして書くだけでは合格出来ません。技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

問題  Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.風水害を防止軽減するための課題

1)ハード対策とソフト対策の併用

 地球温暖化による気候変動の影響で、想定外の外力が発生している。災害対策はハード対策が中心であるが限界がある。ハードだけでは被害を防ぐことができない。

 そのためハードとソフト対策の併用による防災・減災の推進が課題である。ハード対策で被害軽減、住民が主体的な避難行動を起こせるように住民目線のソフト対策を実施する。

■風水害だとどうして「ハードとソフト」となるのですか。一般論ではなく風水害の要因を考えるように。風水害の考察、課題がありません。

2)予防保全型維持管理への転換

 インフラの老朽化が急速に進行している。損傷が深刻化して補修する事後保全型維持管理となっており、防災機能が低下するとともに過剰にコストがかかっている。

 機能が軽微なうちに補修を行う予防保全型維持管理へと点検し、防災機能を維持して被害軽減を図る。

■ここでは特に予防保全は求められていません。やはり水害の考察、課題がないようですので、そちらを書くように。

3)防災・減災のためのまちづくり

 適切な災害リスク評価に基づいた都市計画になっておらず、全人口の7割が災害リスクのあるエリアに居住している。近年の災害では都市部においても浸水被害が発生した。

 そのため土地利用規制などにより、防災減災のためのすまい方や土地利用の推進が課題

■減災は基本、前提にすぎません。風水害だとどうすべきなのか。規制しかないというのではやや提案不足と感じます。

2.最重要課題と解決策

 最重要課題は、ハード対策とソフト対策の併用

 人命を守るための緊急の課題

1)流域治水対策

 これまでは管理者が個々に対策を実施してきた。今後は、流域の治水対策を実施

 例えば、上流域の治水ダムの活用、中流域の堤防整備、下流域の雨水浸透施設、海岸堤防整備である。

2)粘り強い構造の施設整備

 施設能力を上回る外力の発生により、施設は直ちに破損する。 

■ここまでほぼ〇です

 堤防天端の保護や裏法尻の補強など粘り強い構造とすることで、破損までの時間を確保し、住民が避難する時間を確保する。■↑これは3の内容ではありませんか?

3)わかりやすいハザードマップ

 ハザードマップが整備され、配布されているが、活用されていない。ほぼ〇です

 避難場所、避難経路などの住民のとるべき行動をわかりやすく示したハザードマップに改良する。

4)ブッシュ型の情報配信

 災害時には、住民が自ら周囲の災害情報を探す時間がない。 プッシュでは?

 ブッシュ型情報発信により、住民にスマホなどに避難情報、水位情報をリアルタイムで提供することで、避難行動にうつせる。 あり得ますが、どうして風水害でプッシュ型か?

3.リスクと対策

1)防災意識の向上

 過去の災害の経験から、水害が発生しても避難しない正常性バイアスが働き、被災する事例があった。

 防災教育、避難訓練などを実施することで、住民の防災意識を向上し、災害時に住民が主体的な避難行動がとれる

■これは過去の施策のリスクであり、この問いの要求とは意味が違います。問2の解決策に由来するリスクを考えるようにしてください。

2)地域防災力の向上

 大規模災害時には、公助の限界がある。

 地域防災組織などの設置、地域での防災教育、避難訓練などを通じて、災害時の住民同士の共助による避難行動を促す。

3)マイタイムラインの作成

 災害発生時に住民がどのように行動をとるべきか不明瞭な部分がある。災害発生時の住民のとるべき行動を想定したマイタイムライン(防災行動計画)を事前に作成し、災害時の避難行動を促す。

4.要件

1)技術者倫理

 災害復旧において、費用と工期を優先させる場合があるが、公共の安全確保を第一として、品質を最優先させることとする。

2)社会持続性

 災害復旧工事において、グリーンインフラを採用する。例えば、河川では多自然川づくりとする。

問題文 

Ⅱ-1-2

ダムの治水機能を増強するダム再生の技術的な方策を2つ挙げ、それぞれについて説明せよ。また、各方策を実施するうえでの技術的な留意点を説明せよ。

■ ここはOKです。

1.ダム嵩上げ

 既存ダムの堤体を嵩上げし、ダム湖水面を上昇させ、湛水面積を増す。その結果ダムの貯水容量が増加する。

留意点:新堤体を既設ダムに、安定に一体化させるため、温度応力対策を実施する必要がある。マスコン対策やクラック防止のためFEM温度解析により、新旧堤体接合面の箇所に補強鉄筋やアンカー工対策を実施する。

2.事前放流による治水機能強化

 降雨予測などにより、洪水の発生前に利水容量の一部を事前放流し、洪水調整容量を常に最大限に確保しておく。

留意点:治水機能を上げるため、事前放流によって、ダムの貯留容量を確保し、洪水時の調整容量を最大限に確保する必要がある。また事前放流でも十分な利水容量を確保するため、貯水位を維持することが必要である。

 解決法は、貯留関数法や分布型流出モデル等によって流出計算をし、ダムへの流入量を予測して、利水ダムの場合は確保容量を算出する。

Ⅱ-2-2 

近年発生している大規模な水害・土砂災害を踏まえると、そのリスクを関係機関や住民と共有し、生命・財産を守る取組につなげることが重要である。このため、洪水、高潮、土砂災害の被害を受ける区域をあらかじめ想定しておくことが不可欠である。あなたが、気象を要因とする洪水、高潮、土砂災害の被害想定区域の設定に関する調査・検討の業務を担当することとなった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、以下の問いに答えよ。

(1)業務着手に当たって収集・整理すべき資料や情報について述べよ。併せて、それらの目的や内容を説明せよ。

(2)業務を進める手順について述べよ。併せて、それらに関し、留意すべき点や工夫を要する点について説明せよ。

(3)業務の成果が効率的・効果的に活用されるための関係者との調整内容について述べよ。

河川における想定被害区域の設定

1.書類資料

1)過去の被災履歴

目的:過去の災害履歴から被害状況を把握するため

内容:過去の災害による被害状況

■何を調査してどう検討するかを明確に書くようにしてください。このようなあいまいではわかりません

2)ハザードマップ

目的:既往のHMからの危険度を把握すること

内容:高潮、土砂災害、洪水のリスク

■形式にとらわれず、調査・検討の本質を述べるように

3)防災インフラの諸元、河川整備計画

目的:既往の防災インフラの状況から破堤点などを想定するため

内容:既往の防災インフラの諸元、今後の河川整備の計画

■解決のシナリオを考えて、方向性を示すと良いでしょう。経験力がみられています。

2.手順

1)基本条件の設定

降雨量などの条件設定

留意点、想定最大外力で設定

2)被害想定区域の設定

①洪水

留意点:洪水流により家屋倒壊箇所など人命に係る区域の設定を漏らさず記載

■区域の設定の判定根拠はどうしますか

②高潮

留意点、防波堤など古い施設は、データに誤りがある怖れがあるため、必ず現地確認

■これは問題外でしょう。行政批判ともなります。

③土砂災害

留意点は、土砂洪水氾濫など複合災害における被害層的区域も

3.関係者調整

1)河川管理者

 ハード対策は設置まで時間かかる。効果がでるまではソフト対策との併用が必要であることを共通認識とする。

2)地域住民

説明会を実施して、リスクの周知をさせる。

■項目は1つで構いません。「調整」の意味はバランスとるとか取りまとめの意味です。

ソフトとハード、説明会、避難訓練、防災教育・・いずれも従来の施策の域を出ないものですから、これでは提案となりにくいです。 

Ⅲ-1 

 コロナ化の影響もあって急速に進む社会変容により、社会の様々な分野で解決策としてSociety5.0の取り組みが進んでいる。水防災分野でも、危険性、狭溢性、あるいは立地の辺すう性によるアクセス困難な特性を有する施設が多数あることから、施設の調査・計画から設計、施工、供用、点検、維持管理に至る建設生産プロセス全体にわたり、作業の遠隔化の取り組みを推進することが求められている。

※「危険性、狭溢性、あるいは立地の辺すう性によるアクセス困難な特性」とは何か。その解釈が正解のカギとなりました。

(1)水防災分野での遠隔化の取り組みを推進していくうえでの課題を、水防災対策施設の有する特性を踏まえて、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ上げ、その課題の解決策を3津示せ。

(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行したうえで生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

1.作業の遠隔化の取組推進の課題 

1)ICTの全面的な活用

 ダム砂防施設山間地アクセス困難

 河川堤防延長長く点検大変

 ICTを活用した画像処理、AIによる診断を行い、

 遠隔地で取り組む

■問題の要求を読み解いていないみたいです。いきなり解決策では△です。まずは危険性、狭溢性、立地辺すうアクセス困難特性、のそれぞれに対応可能な、作業の遠隔化を考えてみればいかがでしょう。

2)データ化

 防災施設は設置年度が古いものもあり、その書類が紙でしかないものもある。体系的な管理がされていない。

 データ化を進め、そのデータをインフラデータプラットフォームで連携させ、体系的な管理を行うことで、

 遠隔地も管理を行う。

3)技術継承

 建設業は就労環境が良くないため、若手就労者が他産業と比較して少ない。29歳以下の若手就労者の割合は他産業と比較して低い。今後高齢者が退職することで、技術継承の必要があるが、教育方法がOJT主体であることから、継承が進んでいない。

 建設団体が研修体制を構築し、OJTとOFFJTによる教育体制を確立させる。

テーマと無関係では?

2.最重要課題と解決策 

1)全天候型ドローンによる被害状況の確認

 土砂災害発生し、被害状況の確認を行う必要があるが、人の確認では二次災害発生の怖れがある。

 全天候型ドローンにより被害状況の確認を行う。

ドローンで取得した画像データを遠隔地で確認し、今後の対応をとる。

■ご提案はそれぞれ役に立つかもしれませんが、課題に沿ったものでは無いようです。水防災対策施設の有する特性のとらえ方が甘いです。

2)危機管理型水位計による水位

 中小河川の浸水被害が各地で発生している。中小河川は水位周知河川に指定されていないことが多いため、水位の状況がわからず、避難指示が遅れ、被害が発生する。

 安価で設置も簡単な危機管理型水位計により、水位データをクラウドに保存し、ネット回線で、リアルタイムで把握ができる。遠隔地で避難情報の発出が可能。

3)ICT土工

 土工時は丁張が必要、整形に熟練オペレーターが必要など非効率であった。

 ドローンで得た3次元データを、3DCADで設計座標を入力し、AI搭載したICT重機にデータ入力することで、自動制御で土工時を行う。

 災害復旧現場などで対応可能である。 

3.波及効果と懸念事項 

3.1 波及効果

 安全確保

 機械化により省力化、省人化が図れ、担い手不足の解消となる。

3.2 懸念事項

1)ICTの基準未整備

ドローンなどの安全、品質の基準が不十分である。

産学官で連携して、基準整備を行う。

■まことに申し訳ありませんが、これでは分析が甘いです。何が、どこが「不十分」なのか明確にしましょう。

2)ICT技術者不足

 ICT技術者が不足している。

 建設業界で研修体制を構築し、ICT技術斜の育成を図る。 

■厳しいことを申し上げますが、人出不足は当然のことです。これでは常識的すぎて技術士の考察らしくありません。

3)ICT普及

 ICT機器は高額で、中小建設業が購入することは経営状況から難しい。 

■これも前提事項にすぎません。考えなくても分かることです。技術士に対する問いとして、このような常識的なことを期待しているわけではありません。

 経費計上、レンタル品を活用し普及を図る。

№20 R3年 建設部門、河川砂防の答案について添削致しました。 2021/11/18

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この答案についての講評

 答案の表現力は概ね良くかけていらっしゃいます。見識は十分かと思います。しかし、試験結果は、Ⅰ:A、Ⅱ:B、Ⅲ:A(総合:B)と残念な結果でした。ご自身からはⅡ-2およびⅢの改善点を知りたいと伺っておりました。
 拝見したところ、やはり原因はⅡ-2にありそうです。それはご自身が訴えていらっしゃる「題意の読み取り方が弱い」ということではなく、ケーススタディ形式の問題に対して、出題者が求める事項がしっかりと書かれていないことが原因のようです。こうした出題者、あるいは、発注者や事業主の意向に応えることはビジネスマンとして最も大事なことでして、技術士試験ではよく問われます。Ⅱ-2は特にそうです。この能力は、自身の考えを答案に表して、添削を受けて、確認、修正することでのみ上達します。暗記では学ぶことはできません。本研究所の講座を受講されますとこうしたプロの知見がコーチングでしっかりと学べます。
 ご自身は、いわゆるキーワード学習に力を入れて、とにかく書くことを主眼に考えていらっしゃいました。しかし、キーワード知識を暗記するだけでは合格はできません。試験の問題は毎年変化しており、応用力が問われますので、臨機応変にベストの対応を示すことが必要なのです。

 技術士試験では、昔のように答案を暗記してアレンジして書いていては合格出来ません。技術士コンピテンシーを身につけて、ご自身の力を引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(27分57秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.激甚化・頻発化する風水害を防止・軽減するための課題

■タイトルは答案用紙では2行となっていますが、短くても構いません

(1)事前整備の観点より、横断的な連携した取り組みの課題

 我が国は全国土の約7割が山地・丘陵地を占めており、災害が起こりやすい国土条件であり、地球温暖化の影響の気候変動により降水量が増加し、風水害が激甚化している。現状は多様な分野でシステムの構築を個別最適化して進めているが、個別最適化では拡張性に乏しいため、横断的な取り組みを行う必要がある。よって、防災・減災の共通目的で、各分野で整備を進めるべき。

■「個別最適、横断的、防災・減災の共通目的」では風水害に対する課題が見えません。白書の暗記、転記では△

(2)国民意識の観点より、防災意識社会への転換の課題

 災害発生時の支援は、プッシュ型やプル型などの公助だけでは限界があることから、普段からの自助・互助・共助の意識を高めることが重要である。また、高齢単身世帯の増加によりコミュニティ機能が低下しているため、防災意識社会への転換が課題である。よって、国民の視点に立った対策により継続的に防災警戒体制を構築すべき。

■国民意識は行政の課題であって、コンサルタントの技術的課題ではありません。それより水害の課題はなにですか?

(3)情報提供の観点より、わかりやすい情報発信の課題

 リスクエリア面積に対し、全人口の約7割が災害リスクの高いエリアに居住しており、ハザードマップの公表や大雨特別警報を発信しているが、具体的な非難に繋がっていないのが現状である。よって、危機管理型水位計や監視カメラなど、可視化された情報を積極的に提供し、具体的な避難に繋げるべき。

■具体的で◎です。

2.最も重要と考える課題に対する解決策

 激甚化・頻発化する災害に対応するため、全体最適化した横断的な連携による整備を進めることが最も重要な課題と考え、以下に解決策を述べる。

(1)流域治水の転換

 砂防、河川、下水道、海岸の管理者がそれぞれ整備を個別最適化していることから、集水域、河川区域、氾濫区域を一元化し一つの流域として連携して取り組む流域治水への転換が解決策である。具体的には、集水域では自然環境の特性を利用したグリーンインフラを活用し、雨水の貯留、浸透を促進する。河川区域では、利水ダムの事前放流による貯留量の確保である。氾濫区域では、ため池や田んぼの高度利用や宅地のかさ上げ、災害リスクの高いエリアから低いエリアへの住居の誘導、土地利用制限である。

■ここ↑の内容は◎です。これがA評価となった要因です。

(2)ストック効果の最大化

 高度経済成長期に中注して整備されたインフラが加速度的に老朽化していることから、インフラ長寿命化計画によるインフラメンテナンスを行い、ストック効果の最大化を図ることが解決策である。メンテナンスに当たっては、ライフサイクルコスト縮減を意識することが重要であり、事後保全から予防保全への転換や、BIM/CIMを活用した生産性向上を図る必要がある。

■風水害対策の話がありません。

(3)道路インフラの強化

 道路インフラは、災害時の救命救急や早期の復旧、支援物資の輸送に重要であることから、道路交通のネットワークの強化やミッシングリンクの解消が解決策である。また、暫定2車線の高速道路区間の4車線化や踏切道の立体交差化を進めることで強靭化が図れる。

■ネットワーク、強靭化は〇ですが、ミッシングリンク、暫定2車線、踏切立体化はここで挙げる必要ないのでは。

3.新たに生じうるリスクと対応策

 上記の解決策を実行しても新たに生じうるリスクは、継続的な予算の確保の問題である。対応策は、3次元データをデータベース化し、システムをプラットフォーム化することで、AI・IoTを活用した評価により高度予測が可能となることから、予算配分の選択と集中を行うことである。

■リスクの意味が違うようです。「前問(2)の解決策を実行しても新たに生じうるリスク」です。「予算確保」は前からある問題ですから相当しません。

システムプラットフォーム化、AI・IoTは情報工学分野ですから専門技術になりません。予算配分選択は行政課題。

4.業務として遂行するに当たり必要となる要件・留意点

 技術者は一企業の利益のみを追求するのではなく、社会全体の公益確保を第一に考え、エンドユーザーの安心・安全を守る。また、インフラ整備に当たっては、地形改変等の環境負荷が発生する懸念があることから、自然環境、地域環境、生活環境にも配慮する必要がある。

■残念ながら意味が違います。問2に書いた業務を遂行するために「必要となる要件・留意点」です。提案に対する自己評価です。技術者倫理、社会持続性の2つの観点から述べることが求められています。

論文で心構えが問われることはありません。

問題文 

Ⅱ-1-3

土石流を捕捉するための砂防堰堤について、水通し部の型式から透過型及び不透過型に分類し、それぞれの特徴と採用に当たっての留意点を述べよ。また、2つのうち1つの型式を選択し、高さ15m未満の砂防堰堤における越流部の安定計算に用いる設計外力の考え方及び留意点を述べよ。

1.透過型および不透過型の特徴と留意点

(1)透過型

 鋼製部などで水通しにスリットが設けられており、常時流水に混入されている土砂が貯まらないことから、常に捕捉域を確保でき、土砂と流木を効率よく捕捉可能である。また、不透過型に比べて規模が小さくなる傾向にある。

 採用に当たっての留意点は、土石流によって鋼製部が破壊された事例があることから、流体力や礫径が大きい場所では、注意が必要である。 具体的提案は?

(2)不透過型

 常時流水に含まれる土砂によって堆砂域が貯まり、満砂となる。平常時の堆砂勾配で緩勾配化したところに、土石流が衝突し減速することで土石流を捕捉する。

 採用に当たっての留意点は、流木を効率よく捕捉することができないことから、下流に流木捕捉が必要となる。河床材料が細粒土主体となる場所では、不透過型が有利である。

■弱点を探して、品質改善する提案を言うように。これでは特に何も留意しなくてもよいという意味となります

2.不透過型における越流部の安定計算に用いる設計外力の考え方及び留意点

 洪水時と土石流時において、自重、静水圧、土砂堆砂圧を、転倒、滑動、内部応力、地盤支持力について検討する。土石流時には土石流流体力、土石流の重さを考慮する。土石流水深分堆砂高を下げることに留意する。参考図

■計算原理は〇です。留意点はこのような維持管理のことではなく、構造計算の注意です。砂防施設の設計に答えがあります。

Ⅱ-2-1 

  インフラの維持管理・更新を計画的に進めていくために、施設の老朽化(長寿命化)対策に関する計画策定の業務を担当事となった場合、河川、砂防及び海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、以下の問いに答えよ。

(1)業務着手に当たって収集・整理すべき資料や情報について述べよ。併せて、それらの目的な内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について述べよ。併せて、それらに関し、留意すべき点や工夫を要する点について説明せよ。

(3)業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 以下、砂防分野について述べる。

1.業務着手に当たって収集・整理すべき資料や情報

(1)資料収集

 砂防関係施設が整備された当時は、土石流の外力を考慮していない可能性があることから、既往の砂防計画を確認し、求められている機能や性能を整理する。

■このようなことはないでしょう

(2)自然特性・社会特性の整理

 既往の文献を確認し、地形や過去の土砂災害履歴を整理する。また、要配慮者利用施設、避難場所、避難路などを把握する。

■調査対象が漠然としていて、老朽化の支配因子が見えません。ここはもっと絞ると良いでしょう。

(3)業務計画の整理

 業務内容のスケジュールを確認しタイムマネジメントを行った上で、業務内容を分担し短工期を図る。また、ヒューマンエラーを回避するために社内照査体制を構築し、手戻りを無くす。

■残念ながら一般論としての「姿勢」が多く、建設・河川としての長寿命化対策の焦点が見えません。

2.業務を進める手順

(1)現地調査

現地調査では、災害リスクを考慮した事前準備による安全管理を行う。

外観調査を行い、構造物の劣化状況・損傷状況を調査し、損傷や劣化が確認された際は詳細点検を実施する。詳細点検では、コア抜きによる地質調査、圧縮強度試験、中性化試験を実施する。

(2)施設計画

 費用対効果を算出し、ライフサイクルコスト縮減を意識した修繕・改築・更新の検討を行。工夫点としては、数値シミュレーションを行い、最適となる施設計画を策定する。

(3)施設設計

 現地調査によって明らかとなった巨礫や流木などの外力を用いて、砂防関係施設の性能を評価する。工夫点としては、現地発生材の有効活用や残存型枠による工期短縮を図ることである。

■問題が見えていませんから、手順が発散しています。

3.業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策

■調整とは「何かを減らして、何かを増やす」プロマネの取りまとめ、最適化です。連絡やコミニケーション、話し合いとは違います。

(1)社内担当者

 短工期が要求されるため、業務を分担し、レビュー・チェック体制を整備し情報共有を行う。

(2)発注者

 方針や設計外力の諸元などについて綿密に協議を行い、協議簿を作成する。

(3)河川管理者および道路管理者

 工事における道路利用や下流域での河川改修などの影響が想定されるため、横断的な連携を行う。

(4)地域住民

 現地調査では、私有地に立ち入ることが想定されるため、事前にわかりやすく業務目的を説明する。

Ⅲ-1 

Society5.0の取り組みが進んでいる。水防災分野でも、危険性、狭溢性、あるいは立地の辺すう性によるアクセス困難な特性・・

(1)水防災分野での遠隔化の取組を推進していくうえでの課題を、水防災対策施設の有する特性を踏まえて、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行したうえで生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

1.水防災分野での遠隔化の取組を推進していくうえでの課題

(1)人材確保の観点から、いかに新技術を活用するかの課題

 少子高齢化により、1995年をピークに生産年齢人口は継続的に減少しており、65歳以上のベテラン技術者の大量離職が想定されることから、2023年までに21万人の人材不足を解消する必要がある。よって、人材不足解消のためにいかに新技術を活用するかが課題であり、生産性を向上させるべき。

■新技術はOKですが、人材難は課題ではありません。危険性、狭溢性、立地の辺すう性によるアクセス困難な特性を踏まえて」となっています。

(2)働き方の観点から、遠隔化の生活への浸透・定着の課題

 我が国の新技術の生活への定着率は諸外国に比べ低いことから、新技術の生活への定着の遅れが課題である。中でも、ICTを利用した遠隔操作による働き方であるテレワークは、場所や時間を有効に活用できる柔軟な働き方であることから、ソフトなどのシステムの平準化やデジタル化を推進すべきである。

(3)サイバー攻撃のリスクの観点より、セキュリティ対策の課題

 新技術の活用では、共通プラットフォーム上にセンサーや危機管理水位計、監視カメラなどのビックデータが点在するため、常にサイバー攻撃のリスクがあるため、セキュリティ対策の強化が課題である。よって、データの真正性の確保やデータ管理のシステム構築を行うべきである。

2.最も重要と考える課題に対する解決策

 人材不足は今後も継続的に進む問題であることから、生産性向上に向けた新技術の活用を最も重要と考え、以下に解決策を述べる。

(1)BIM/CIMの活用

 調査、計画、設計、施工、維持管理における建設生産プロセス全体で3次元モデルを連携することが解決策である。施工分野においては、GNSSを利用したICT機器を搭載した重機によるICT施工が行われているが、建設生産プロセス全体で共通化されていない。調査、計画、設計段階において3次元データを活用するためには、地形モデルと設計モデルの高精度化が重要であり、LPデータやSAR衛星データの活用により制度の高い地形モデルを構築することが生産性向上を図るうえで重要である。

■これでは河川より、鋼コン分野の対応に近いです。

(2)AI・IoTによる高度予測

 維持管理において重要となる点検・調査におけるドローンなどのUAVの利活用による3次元データをデータベース化し、インフラデータプラットフォームを構築することで生産性向上が図られることから解決策である。また、蓄積したデータにより、AI・IoTを活用した劣化予測が可能となり、維持管理の選択と集中が可能となる。

■河川についての対策がかかれていません。

(3)気候変動への対応

 我が国の国土の約7割が山地・丘陵地を占めており、災害が発生しやすい国土条件である。地球温暖化の影響である気候変動による降雨量増加に伴い、災害の頻発・激甚化が問題となっていることから、XRAINの配信エリア拡大やスネークラインのCL超過指標による災害予想の高精度化を進めることが解決策である。

3.波及効果と懸念事項への対応策

(1)波及効果

 上記の解決策を実行した上で生じる波及効果は、国土が強靭化されることによって、持続可能で暮らしやすい社会の実現に繋がることである。

(2)懸念事項への対応策

 懸念事項としては、新技術の進歩に伴い機械や機器を操作する能力は高まるが、自らが計算や計測をする機会が減少するため、若手技術者の技術力が低下することである。解決策として、新技術に対応した資格制度の導入や、OFF−JTやナレッジマネジメントなど、若手技術者の教育制度を構築することである。

№19 R3年 建設部門、施工積算の答案について添削致しました。 2021/10/30

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この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、ⅠがAではあるものの、ⅡはCのため、ⅢがAなのにⅡ・Ⅲ総合でBとなり不合格でした。大変残念な結果です。建設部門施工の技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できますし。指摘事項は今後の参考としてください。

 答案を全て拝見致しましたが、Ⅱ-2だけ が 弱点を抱えているようです。他答案はいずれも よく点を取れており 問題ないと思います。Ⅱ-2が なぜこんなに厳しい評価を受けたのか については、 ケースワーク問題の 特殊性があるかと思います。試験官が示した 特定の 条件の現場について、 ちゃんと 要求事項を聞き入れて 計画しているかどうかが 問われています。

 問1では 安全性に留意されたみたいですが、 出題者の要求は効率性でした。また問2では、 どこでも使える一般的な現場の手順を 示されたようですが、 求められているのは 現場の特性に応じた固有の手順でした。これらの点が 出題者の要求と 違っていたために、 期待に応えることができなかったのだと思います。 技術士試験では、模範答案を暗記してアレンジして書いても合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして独自に提案することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。技術士は勉強すれば必ず合格します。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。ぜひ根拠に基づいた正しい勉強法で学ばれて、悩み無しで楽勝で合格していただきたいと思っております。

問題  Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1、多面的な課題

(1)いかに想定を上回る風水害に対応するか

 我が国は災害大国であり、毎年のように台風、津波、豪雨、洪水など、風水害に被災している。また、近年は気候変動による風水害など想定を上回る外力による災害も頻発しており、最近では線状降水帯による土砂災害、河川氾濫などの被災も多い。技術面の観点から、いかに想定を上回る風水害に対応するかが課題である。

(2)いかに被災しない住み方をするか

 土砂災害の際に生命に危険が生じる可能性の高いレッドゾーン、河川反乱の際に浸水、家ごと流されるなどの被害を受けやすい地盤の低い密集地で暮らす住民も多い。制度面の観点から、いかに被災しない住み方をするかが課題である。

(3)いかに少ない人材で対応するか

 我が国は少子高齢化が進んでおり、将来的な技術者不足が顕著である。建設業は多くの人が関わる典型的な労働集約型産業である。河川改修、堤防強化など、修繕工事の需要があっても、技術者不足により施工できない現場が発生している。人材面の観点から、いかに少ない人員で対応するかが課題である。

2、最も重要な課題、解決策

(1)最も重要な課題

(1)いかに想定を上回る風水害に対応するかが最も重要な課題と考え、以下に解決策を示す。

2、解決策

(1)甚大化する風水害への対策

①流域治水対策

 河川管理者だけでなく、流域全体のあらゆる関係者と協力して幅広い治水対策を行う。砂防施設の整備、貯留、堤防の強化などを推進する。

②構造物の補修補強、津波対策

 道路橋示方書に沿った橋梁補修工事を実施する。また、根固めブロック設置、堤防背面の補強、バックウォーター対策など、粘り強い堤防の構築を推進する。

③ネットワーク強化

 災害時の輸送ルート確保のため、高規格道路の四車線化、ミッシングリンクの解消を推進する。また、直轄国道と高規格道路のダブルネットワーク化を図る。

(2)老朽化するインフラ対策

①インフラメンテナンスの集中的実施

 現段階で維持修繕が遅れている河川やダム、定期点検でメンテナンスの必要があると判断された橋梁、トンネルなど、集中的にメンテナンス工事を実施する。

②戦略的な予防保全の実施

 集中的なメンテナンスにより、ライフサイクルコストを考慮した費用対効果の高い工事を優先的に実施し、多くの維持管理、修繕工事を実施する。

③構造物の長寿命化

構造物の長寿命化計画を立案し、安心安全なインフラの構築を図る。

(3)デジタル化

①国土強靭化に関する施策のデジタル化

 ICT基準を策定し、導入環境を整備する。防災・減災、国土強靭化などに関する建設生産システム全体をデジタル化する。インフラDX技術を活用する。

②災害情報のデジタル化

 港湾において、ドローン、カメラ、衛星などを活用した被災情報の把握を行う。また、気象情報、防災情報、被災情報などを高度化し、災害時の迅速な復旧体制を構築する。

3、共通して生じうるリスク、解決策

(1)共通して生じうるリスク

 ハードを整備するとハザードが移り変わる可能性がある。これまで使用したハザードマップ、タイムライン、避難路などが使用できなくなるリスクが生じる。

(2)解決策

 ハードの整備に合わせて、ソフトも都度見直しできる体制の構築が解決策として考えられる。

4、業務を遂行するに当たり必要となる要件

 技術者として、常に公益を最優先にして取組み、構築して終わりではなく、維持管理し続けなければならない。常に安全な状態を維持するように考えることが重要である。                以上

■Ⅰについてはよくお考えになりました。A評価ですので特にコメントありません。

問題文 

Ⅱ-1-4

高流動コンクリートの特徴を説明せよ。また、高流動コンクリートを採用する目的と施工上の留意点をそれぞれ説明せよ。

1、高流動コンクリートの特徴

 高流動コンクリートは高い流動性を有しているコンクリートである。流動化剤を使用しており、製造に手間を要することから、高価なコンクリートとして扱われている。また、骨材寸法が小さく、水分量が多い。

2、高流動コンクリートを採用する目的

 高流動コンクリートの自己充填性、高流動性を目的に採用される。近年は、高層化、耐震化、複雑化した構造物が多く、使用される鉄筋径、配筋量が多く、過密鉄筋となることが多い。高流動コンクリートを使用することで、間隙なく充填することができる。

3、高流動コンクリートの施工上の留意点

(1)運搬時

 高流動コンクリートは材料分離がしやすい性質がある。運搬時には留意が必要である。

(2)打設時

 自己充填作用があり、材料分離しやすいことから、バイブレーターは不要であるが、補助的に使用する際は留意が必要である。ポンプ車を使用する際は、閉塞を生じやすいため、配管長、配管径などに留意しなければならない。

(3)養生時

 高流動コンクリートは、側圧が高くなることから、型枠の補強、木製型枠ではなく、強度の強い鋼製型枠を使用するなど、留意しなければならない。  以上

■言うは易しく行うのが↑困難なこと。こうした難題がどのようにしたらできるか、技術ノウハウを示すとコンピテンシーになります。

Ⅱ-2-2 住宅が密集する市街地において鉄道新線建設(高架構造、下図参照)が行われており、このうち延長500mの工区の下部工工事(主に20m間隔で橋脚を設置、1基当たりの基礎と橋脚の合計体積は約310m3、杭の体積は約210m3)を実施することとなった。なお、この工区に接している公道は、工区の両端で交差している市道(計2本)のみである。また、鉄道用地の両側には、工事で使用可能な用地(幅員約4m、開業後道路として使用予定)が併設して確保されている。以上を踏まえて、本工事受注者の担当責任者として以下の内容について記述せよ。

(1)効率的な施工をするために検討すべき事項(関係者との調整事項は除く)のうち、本工事の特性を踏まえて重要と思われるものを3つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2)本工事において、責任者として工程管理をどのように行うのか、留意点を含めて述べよ。

(3)関係者との調整により決定される本工事での施工条件を1つ挙げ、調整方針及び調整方策について述べよ。

1、効率的な施工をするための検討すべき事項

(1)土留め

 現場は市街地内であり、周辺環境を考慮して施工しなければならない。特に、隣接道路からフーチング計画位置まで密接しており、土留めの設置位置、根入れ深さに制約が生じるため、安全な設置方法を検討する。

■求めているのは「安全」ではなく「効率的な施工」です。方向性が違ってしまった感じがいたします。

(2)型枠支保工

 コンクリート打設時の型枠支保工の沈下を防止するため、適切な支保工の材料、設計荷重などを検討する。また、道路境界付近の施工であるため、型枠支保工の設置位置、安全対策などについても検討する。市街地での施工となるため、資材の搬入出路、保管場所についても検討する。また、20m感覚で橋脚を設置することから、型枠、支保工の転用についても検討する。

(3)マスコン対策

 マスコンに該当するため、温度ひび割れ、沈下ひび割れ対策について検討する。また、基礎と橋脚、場所打ち杭の生コンを運搬するのに100台以上の生コン車の運搬計画、複数のポンプ車の配置などについても検討する。

2.工程管理(業務を進める手順と留意点)

(1)業務を進める手順

①現地調査、設計図書の確認

 現地調査を行い、当初設計と差異の確認を行う。

②施工計画書の立案、作成

現地調査を基に施工計画書の立案、作成を行う。

③工事説明会の実施

 近隣住民への工事説明会を実施する。

④施工

 施工計画書に沿って施工する。変更が生じた場合には、早急に協議、修正を行い、関係者に周知する。

■ここがどこの現場でも使える一般論となっています。求めているのはこの現場の手順ですから、現場の特性をとらえて、かつ時系列の4〜5の作業項目ごとにまとめると良いでしょう。

(2)留意すべき点

 交通誘導員を配置、標示板等を活用し、通行車両の安全確保に留意する。コンクリートの品質を確保するために、型枠支保工の沈下に留意する。土留めの倒壊・崩壊を防止するため、土留めの変位に留意する。

3、関係者との調整事項、調整方針・調整方策

(1)調整事項(施工条件)

 「土留め変位」についての対応を調整事項とする。

(2)調整方策

(1)発注者および道路管理者

 打合せを行い、施工方法について承認を得る。土留めの動態観測を常時行い、変位が確認された場合に備え、常に連絡を取れる体制を築く。

(2)近隣住民、通行車両

 標示板を使用しての事前案内、工事車両の出入口、作業時間、時期などを告知する。

(3)鉄道管理者

 事前打合せ、現地立会を行い、施工方法について承認を得る。緊急時の連絡体制、対応策を築く。 

■現場管理者としてどうふるまうかではなく、プロマネとしての取りまとめを表現したいです。

Ⅲ-1 働き方改革関連法による改正労働基準法(平成31年4月施行)に基づき、令和6年4月から建設業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることとなった。また、公共工事においては週休二日対象工事の発注が拡大されている。

 建設業が引き続き、社会資本の整備・維持管理、災害対策、都市・地域開発、住宅建設・リフォーム等を支える役割を十分に果たしていくためには、建設業の働き方改革の取組を一層進めていく必要がある。

 このような状況下において、週休二日が前提となった多工種工事を受注した。本工事の受注者(元請負人)としての立場で、以下の問いに答えよ。

(1)本工事のすべての工事従事者の週休二日を実現するため、施工計画を策定する際に検討すべき課題を、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じる懸念事項とそれへの対応について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1、多面的な課題

(1)いかに働き方改革をするか

 建設業は3K(きつい、きたない、危険)の印象があり、就業先として魅力が低く、担い手が少ない。週休二日を実現するには施工の省力化、環境改善などが必要であり、発注者、受注者共に働き方改革を推進する必要がある。技術面の観点から、いかに働き方改革するかが課題である。

(2)いかに品質低下を防止するか

 週休二日により稼働日が減少することで、結果的に工期がひっ迫し、品質低下につながる可能性がある。工期ひっ迫による焦りから、判断ミス、チェックミスが生じ、品質低下を招く危険性がある。品質面の観点から、いかに品質低下を防ぐかが課題である。

(3)いかに賃金を確保するか

 東日本大震災以降、公共事業労務費単価は上昇傾向にあるが、元請企業と下請企業の賃金格差は拡大している。給与体系が日払いの労働者も多く存在し、週休二日にすることで、労働日数が少なくなり、賃金が減少する。建設業は人手不足であり、労働者は少しでも賃金の高い現場を優先する。賃金が確保できなければ、現場に働き手が集まらなくなり、施工計画自体の見通しが立たなくなる可能性がある。賃金面の観点から、いかに賃金を確保するかが課題である。

2、最も重要な課題、解決策

(1)最も重要な課題

 上記の課題の中で、(1)いかに働き方改革をするか、が最も需要な課題と考え、以下に解決策を示す。

(2)解決策

1)ICT(i-construction)の導入

①ICT工事の導入

 ICT基準を整備し、将来的に地方自治体まで展開する。また、進行が遅れている橋梁、地盤改良など、多方面の分野での導入を推進する。

②BIM/CIMの活用

 設計から施工、維持管理まで、3Dデータ化を推進し、建設生産管理システム全体で利活用する。また、CIMガイドラインの整備を推進する。

③プレキャスト化の推進

 大型コンクリート構造物(ボックスカルバート、L型擁壁など)において、現場打ちよりも費用対効果が高く、品質が安定しているプレキャスト化を推進する。

2)新・担い手3法

①適正な工期設定

 発注時の休日、準備期間を考慮した適正な工期設定、施工時期の平準化など、長時間労働を是正し、労働環境の改善を図る。

②適正な契約

 受注者に対して、適正な工期、金額での下請契約の締結を図る。下請け企業の適正な利益の確保を図る。

③現場の処遇改善

 建設業の許可要件に社会保険加入を追加、下請企業の労務費相当額は現金払いとするなど処遇改善を図る。

3)新3Kに向けた取組み

①「労務費見積尊重宣言」促進モデル工事の実施

 下請けの労務費見積を尊重する企業に対して、総合評価、成績評点などを有利にする体制を構築する。

②CCUS義務化モデル工事

 WTO工事を含む一般土木工事において、CCUS活用の目標と達成状況に応じて評点を加減点するモデル工事を発注する。

③誇り、やりがい、魅力の醸成

 建設業は社会資本の担い手、地域の守り手として役目を果たしている。建設業に対してのリブランディングの提言を推進する。

3、懸念事項と対策

(1)懸念事項

 施工プロセスの省力化により、これまで当たり前だった施工工程がブラックボックス化され、若手技術者の技術力が低下するといった懸念事項が生じる。

(2)リスク対策

 研修会、資格制度、CCUSの活用、OJTだけでなく、OFF−JTも実施するなど、技術力の維持・向上に向けた取り組みが対策として考えられる。以上

■Ⅲについてはよくお考えになりました。A評価ですので特にコメントありません。

№18 R3年 化学部門、化学プロセスの答案について添削致しました。 2021/10/31

答案の一覧>

この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。試験結果は、Ⅰ、Ⅱは共にAなのに、一方、ⅢがCと理解できない評価となり不合格でした。大変残念な結果です。ご本人も答案の合否結果について納得いかないご様子でした。化学部門の技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できます。指摘事項は今後の参考としてください。

 答案を全て拝見致しましたが、Ⅲだけ が 弱点を抱えているようです。他答案はいずれも よく点を取れており 問題ないと思います。

 Ⅲでは、問1の意味を誤解されたようで、これが決定的でした。「「再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス発電等)」の普及が求められている。「再生可能エネルギー」は、多くの種類があり、それぞれに・・」とあるのですから、まずは太陽光、風力、バイオマス発電から1つ選択するのが自然です。そうしないと普及するための課題を抽出できませんし、解決策につながりません。そして課題、解決策の選定が正しくないみたいです。設置場所、用地の問題では化学部門、化学プロセスで解けません。技術士試験は、部門・科目の能力を判別するものなので、化学部門としての前提で考える必要があります。

 技術士は勉強すれば必ず合格します。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。ぜひ根拠に基づいた正しい勉強法で学ばれて、悩み無しで楽勝で合格していただきたいと思っております。

問題    Ⅰ-2 我が国は、地球温暖化の対策として、温室効果ガスの排出量を2030年度に2013年度比実施46%減の水準に、さらに、2050年までに実質ゼロにする目標を明らかにした。「エネルギー源を化石燃料に頼らない脱炭素社会」の実現は持続可能な社会の構築に不可欠であり、これまで石油・石炭などを原料として様々な化学製品を提供してきた化学産業は、技術革新・産業変革を推し進めることが求められている。「脱炭素社会化」を推進するには、「エネルギー源の安定確保」と「脱炭素社会化に伴うシーズ・ニーズの変化」など多様な観点から考える必要がある。化学技術者の観点から「化石燃料に頼らない脱炭素社会」への転換について以下の問いに答えよ。

(1)化学技術者の観点から、「脱炭素社会化」を推進するに当たり「エネルギー源の安定的確保」と「脱炭素社会化に伴うシーズ・ニーズの変化」などを多角的に分析して、3つの課題を抽出し、各々の課題を説明せよ。

(2)抽出した課題に関して要求事項と影響の重要度を考慮したうえで課題を1つ挙げ、選んだ理由とその課題に対する解決策を3つ示せ。

(3)解決策を実行した際に新たに生じうるリスクを示し、それへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から留意点を述べよ。

 (1)脱炭素化を推進するための課題

 化学産業は化石資源を原料、エネルギー源として化学製品を提供し、発展してきた。今後、化石燃料に頼らない脱炭素社会への転換が不可欠である。脱炭素化社会を推進するための課題を3つ取り上げる。

1-1)環境負荷の少ないエネルギーの確保

産業部門のCO2排出量の約20%は化学産業からの排出であり、資源枯渇リスクやCO2排出量増加による地球温暖化といった環境に大きな影響を及ぼしている。よって、環境負荷の少ないエネルギーの確保が課題である。

1-2) 省エネルギーの推進

 産業設備のライフサイクルは長く、設備の入替のタイミングが限定的である。また、大型設備は初期投資が大きく、省エネ化が進んでいない。したがって、高効率機器の導入、排熱利用等を検討し、省エネルギー化の推進が課題である。

1-3)バイオマスを原料とした化学製品の開発

 化石資源を原料としたプラスチック等の汎用樹脂もその製造・廃棄過程において多量のCO2を排出している。環境負荷の少ない資源への転換が課題である。

(2)重要度を考慮した課題と解決策

 化学産業を含む産業部門はエネルギー消費量が非常に膨大であり、エネルギー消費量の削減には限界がある。低炭素化社会の推進のためには課題1-1)「環境負荷の少ないエネルギー確保」が最重要である。具体策は再生可能エネルギーを用いた電力供給である。全国に約19万か所以上ため池・調整池が点在している。また、我が国が経済的排他水域世界第6 位であり利用できる海面が多い。内陸、海洋の水上、洋上を利用した電力供給システムの開発が有望な解決策である。

2-1)内陸部の水上を利用した発電

 陸上太陽光発電は山林の活用が多く伐採、抜根が必要であり、環境負荷への影響が大きい。一方、ため池、調整池等の水上を利用した太陽光発電は、水の蒸発抑制、水草・藻の発生抑制が可能である。さらに、水上では冷却効果により夏場の発電効率が向上できる。

2-2)洋上を利用した発電

 現在、日本では、陸上風力発電が主であるが、発電に適した場所が限定的であり、いずれ限界に達する。また、騒音が大きい、景観を害する等問題がある。洋上を利用した大型の高効率の風力発電を開発して、コスト削減を図るとともに大容量電力を安定的に得る。

2-3)電力供給システムの開発

 電力は需給バランスが重要である。再生可能エネルギーに過度に依存すると、電力の需給バランスが崩れるリスクがある。解決策は、電力貯蔵システムとして蓄電池の性能向上、大型化である。さらに、水素に変換した燃料電池システムも開発中である。

■広い視点は必須ⅠではOKです。

(3)新たに生じうるリスクと対策

3-1)生態系の破壊リスク

 ため池や調整池、海洋を利用する場合は漁業や生態系への悪影響がリスクである。発電施設を浮漁礁や養殖場としての活用、閉鎖循環式陸上養殖の実施等による生態系への配慮が対策である。

3-2)燃料電池使用時の水素漏洩リスク

 鋼材中に吸収された水素原子により、強度(延性・靭性)が低下するのが水素脆性である。対策は水素感受性の小さな材料を使用するか、脱水素(ベーキング)処理を施し、水素脆性の防止が対策である。

■解決策のどれに由来するリスクですか。水素の記述はありません。

(4)業務遂行のための留意点

4-1)技術者倫理の観点

 脱炭素化社会を推進するにあたり、社会や環境に与える影響を十分考慮し、人々の安全、健康などの公益を損なうことのないよう業務に取り組むことが留意点である。具体的には課題1-1)を実行するとともに、安全、能力面も評価して、トレードオフが発生する場合には安全を最優先に業務に取り組んでいく。

4-2)社会持続性の観点

 技術開発が進み、社会の仕組みが変革することが必要である。つまり、再生可能エネルギーを利用した大規模発電および大容量の電力供給システムが構築し、これらのシステムが適正な価格で運用できる社会が実現されていることである。これはSDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」に相当する。    以上

■素晴らしいです。◎です

問題文 

Ⅱ-1-2 90[℃]、1,000[kg/h]の温水を50[℃]まで冷やしたい。20[℃]、2,000[kg/h]の冷媒(冷媒も水を使用)を用いる。向流式二重管熱交換器を使用する場合における次の設問に答えよ。なお、(1)〜(3)の計算値を導き出した計算過程も記せ。

(1)冷却に必要な除熱量

 温水の流量をm[kg/h]、入出口温度をそれぞれt1[℃]、t2[℃]、比熱をcp[kJ/kg・℃]とすると、

 除熱量Q=m・cp・(t1-t2)

=1,000×4.19×(90-50)=167,600kJ/h

(2)冷媒側の出口温度

 冷媒の流量をM[kg/h]、入出口温度をそれぞれT1[℃]、T2[℃]、比熱をcp[kJ/kg・℃]とすると、

 Q=M・cp・(T2-T1)より

 T2=Q/(M・cp)+T1

  =167,600/(2,000×4.19)+20=40

(3)必要となる伝熱面積

 総括伝熱係数をU、対数平均温度差をΔTとする。

 ΔT=((t1-T2)-(t2-T1))/ln((t1-T2)/(t2-T1))

   =((90-40)-(50-20))/ln((90-40)/(50-20))

     =39.1℃

 Q=U・A・ΔTより

 伝熱面積A=Q/(U・ΔT)

      =167,600/(500/1000×3,600×39.1)

      =2.38m2

(4)並流式熱交換器が用いられる理由

 ■このような計算問題形式は少なくなっています。今後は他部門と同じ分析、考察問題に変化する可能性があります。 

Ⅱ-2-1 あなたは、ある化学製品生産プラントの責任者である。マーケット需要が急増し、生産プラントの能力を至急20%増強して欲しいという依頼が販売部からあった。

(1)計画段階において、調査、検討すべき事項とその内容を説明せよ。

(2)実施段階において、あなたの行う業務を説明し、留意すべき点、工夫を要する点について述べよ。

(3)関係者との調整を含め、業務を効率的かつ効果的に進めるために責任者としてあなたが実施すべき事項を3項目挙げよ。

(1)計画段階において調査・検討すべき事項

1-1)各機器の能力評価

 まず、能増ベースでの物質収支、熱収支を作成し、各機器の能力評価を行う。また、反応器や蒸留塔、晶析槽などは運転・組成分析データ用いて評価を実施する。反応器や晶析槽の能力が不足する場合にはどの因子にてスケールアップするか設計部門に確認しておく。

1-2)改造機器の洗い出し

1-1)の能力評価より、ボトルネックとなる機器の洗い出しを行い、改造する機器の仕様を決定する。この時単純なサイズアップだけでなく、高効率機器の導入、省エネ機器の導入可否も併せて検討しておく。

1-3)法対応

高圧ガスや消防法等の改造に関わる必要な対応について事前に確認しておく。

1-4)スケジュールの作成

 検討から工事、試運転、営業運転までの全体スケジュールを作成する。至急の対応が必要であるため、販売部を含めた関連部門と幾度か検討、調整を行い完成させる。

(2)実施段階での自身の業務と留意点・工夫点

2-1)改造箇所の決定

 1-1)、1-2)の結果を基に能増に必要な改造箇所を決定する。また、粉体を取り扱うプラントの場合は、装置のみだけではなく配管やバルブ等の材料の強度・耐摩耗性に留意が必要である。既設プラントで不具合が発生している場合には、類似の装置の材質と寿命を調査し、材質や配管サイズを決定する。

2-2)リスク評価の実施

 能増に伴う製品品質の維持、反応器や蒸留塔の能増に伴う安全性、操作性への影響に留意してリスク評価を実施する。リスクの発生が予測される場合はリスク低減策を検討する。

2-3)改造費用の算出

 機器購入費及び工事費の見積を行い、更新に伴う既設機器や配管の撤去費と合わせて改造費用を算出する。マーケット需要が急増しているので、至急の能増が必要である。よって、特に工事スケジュールの費用対効果を検証し、改造費用を算出する。

■実務的で提案力に富んでいて◎です。

(3)       関係者との調整事項

3-1)各部門の責任者(リーダー)の決定

 設計、調達、販売、保全、調達等の各部門の責任者(リーダー)を決め、各部門の役割を明確にしておく。

3-2)全体会議・個別会議の開催

 関係者との意識統一と作業の進捗を確認する定例会議を実施し、プロジェクト全体の動きを把握する。

3-3)支援体制を作る

 スケジュールが遅延している部門があれば、問題点・懸念事項を明確にし、遅延を解消する。 

■化学部門特有の配慮、提案があればなおよかったです。

Ⅲ-2 政府による「カーボンニュートラル戦略」において、実質的に二酸化炭素を排出しない電力源として、幅広く自然と調和した社会の持続性発展を可能にする観点から、「再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス発電等)」の普及が求められている。「再生可能エネルギー」は、多くの種類があり、それぞれにいろいろな側面がある。

①      二酸化炭素の排出が少ない

②      エネルギー資源を自給できる

③      発電量のコントロールが難しい

(1)化学プロセスの技術者としての立場で、上記①、②、③のそれぞれの側面を有する「再生可能エネルギー」をその側面から分析し、普及するための課題を抽出せよ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考えるものを1つ挙げ、その問題点について複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示した解決策の実際に関して、生じるリスクとその対策について専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)再生可能エネルギーを普及するための課題

 二酸化炭素を排出しない電力源として、自然と調和した社会の持続的発展を可能にする観点から、「再生可能エネルギー」の普及が求められている。化学プロセスの技術者として普及のための課題を3つ取り上げる。

■この上記の前置きはなくても構いません

問1の意味を誤解されているようです。「「再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス発電等)」の普及が求められている。「再生可能エネルギー」は、多くの種類があり、それぞれに・・」とあるのですから、まずは太陽光、風力、バイオマス発電から1つ選択するのが自然です。そうしないと普及するための課題を抽出できませんし、解決策につながりません。

1-1)再生可能エネルギー発電用用地の獲得

 我が国では陸上太陽光および陸上風力発電が主である。しかし、陸上太陽光発電は山林の活用が多く、環境への影響が大きい。また、陸上風力発電は、発電に適した場所が限定的であり、いずれ限界に達する。したがって、課題は再生可能エネルギー発電用用地の獲得である。

1-2)電力貯蔵システムの開発

 電力は需給バランスおよび安定供給が重要である。再生可能エネルギーに過度に依存すると、電力の需給バランスが崩れるリスクがある。電力を貯蔵して電力供給すれば安定供給が可能となる。したがって、電力貯蔵システムの開発が課題である。

1-3)水素エネルギーの大規模普及の推進

 再生可能エネルギーの普及のみではカーボンニュートラルの達成はできない。水素エネルギーは今後の環境負荷の少ないエネルギー源として重要である。再生可能エネルギーを利用して安価に水の電解にて水素の大量製造・輸送・貯蔵技術を確立し、水素エネルギーの大規模普及の推進が課題である。

(2)最重要課題と解決策

■課題、解決策の選定が正しくないみたいです。設置場所、用地の問題では化学部門、化学プロセスで解けません。技術士試験は、部門・科目の能力を判別するものなので、そのような前提で考える必要があります。

 再生可能エネルギーを利用した発電設備の設置場所は限定的であり、いずれ限界に達する。したがって、再生可能エネルギーの普及のためには課題1-1)「再生可能エネルギー発電用用地の獲得」が最重要課題であると考える。解決策は内陸部の水上および洋上を利用した電力供給である。全国に1 9 万か所以上ため池・調整池が点在している。また、我が国が経済的排他水域世界第6 位であり利用できる海面が多い。内陸、海洋の水上、洋上を利用した電力供給システムの開発が具体策である。 ■地盤改良→建設

2-1)内陸部の水上を利用した発電

陸上太陽光発電は山林の活用が多く伐採、抜根が必要であり、環境負荷への影響が大きい。ため池、調整池等の水上を利用した太陽光発電は、まとまった面積を利用でき設備コストを低減できる。また、水の蒸発抑制、水草・藻の発生抑制が可能であり、さらに、水上では冷却効果により発電量の低下が起きにくく、夏場の発電効率が向上でき、安価で大容量に電力を得る。

■水力→電気電子・発電

2-2)洋上を利用した発電

 現在、日本では、陸上風力発電が主である。発電に適した場所が限定的であり、いずれ限界に達する。騒音が大きい、景観を害する等環境問題がある。洋上を利用した大型の高効率の風力発電を開発して、コスト削減を図るとともに大容量電力を安定的に得る

■風力→電気または機械

2-3)電力供給システムの開発

 電力は需給バランスが重要である。再生可能エネルギーに過度に依存すると、電力の需給バランスが崩れるリスクがある。解決策は、電力供給システムとして蓄電池の性能向上および大型化である。さらに、水素に変換した燃料電池システムも開発中である。

■水素化はOK、しかし旧来の方法は電気電子です。

(3) 解決策の実施に際して生じるリスクと対策

3-1)生態系の破壊リスク

 ため池や調整池、海洋を利用する場合は漁業や生態系への悪影響がリスクである。発電施設を浮漁礁や養殖場としての活用、閉鎖循環式陸上養殖の実施等による生態系への配慮が対策である。

■分析はOKです。しかし、課題に無理がありました。

3-2)燃料電池使用時の水素漏洩リスク

 鋼材中に吸収された水素原子により、強度(延性・靭性)が低下するのが水素脆性である。対策は水素感受性の小さな材料を使用するか、脱水素(ベーキング) 処理を施し、水素脆性を防止することである。

また、有機ハイドライド(OH)法の利用も有効である。OHはトルエン等の水素化反応によりメチルシクロヘキサン(MCH)生成する。需要地で脱水素化反応によりH2とトルエンを取り出し、トルエンは再利用する。MCHは常温・常圧で安定な液体であり、火災・爆発の危険が少ない。また化学ローリー等ガソリンインフラが転用でき、利用しやすい。        以上

■問2の解決策のどれに由来していますか。燃料電池システムですか

№17 R3年 建設部門、港湾の答案について添削致しました。 2021/11/14

答案の一覧>

この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、ⅠがB、ⅡはA、ⅢがBであり、Ⅱ・Ⅲ総合でBとなり不合格でした。大変残念な結果です。建設部門港湾の技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できますし。指摘事項は今後の参考としてください。

 答案を全て拝見致しましたが、問題文で与えられた問題に対して、対策の必要性等は述べられていますが、肝心の主題である問題解決につながる課題が述べられていません。「いかに・・するか」という文が多く、この文形では困難な状況が分かるだけで、技術的な方針の提案がアピールできません。Ⅱ-2はケーススタディ問題のため、経験力が評価されたようで良かったです。

 しかし、Ⅲ問題では、出題者が求めている主題「新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換」、「予防保全型メンテナンス」にたいして、技術の高度化や担い手の確保、コストダウンといった一般論を主張されるだけでした。本質的に予防保全を新しい技術でどのように改善するか、そして鋼コンの視点から予防保全型メンテについて述べるべきでした。

 このほか、見出しやタイトルの下線などの表現はなくても構いません。試験の答案ですのでこのような表現方法で得点が変わることは考えにくいです。内容に集中されるようにお願いします。

 技術士試験では、模範答案を暗記してアレンジして書いても合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして独自に提案することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。技術士は勉強すれば必ず合格します。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座では技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしております。ぜひ根拠に基づいた正しい勉強法で学ばれて、悩み無しで楽勝で合格していただきたいと思っております。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(33分44秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

(1)課題:課題を3点挙げる。

ハード面の観点では、強靭なインフラをいかに整備していくかが課題となる。強靭なインフラが整備されていないと、直接人命を守ることや、避難までの時間を稼ぐことができず、人的被害が拡大する。また、建設物が倒壊することで経済損失も拡大してしまう。

■インフラの必要性は述べられていますが、肝心の主題である風水害に対する課題が述べられていません。「いかに・・するか」という文では困難な状況が分かるだけで、技術的な方針の提案が見えてきません。

ソフト面の観点では、情報や訓練による防災・減災をいかに進めていくかが課題となる。ハード面の対策は、時間的・費用的なコストがかかる。また想定外の荷重に対しては防災機能に限界がある。従って、ソフト面の対策も重要である。過去の災害からの教訓として、切迫性等の情報伝達が上手くいかなかったことや住民の防災意識が低いことで被害が拡大したことが分かっており、ソフト対策にも改善の余地がある。

■ハード対策に対してソフトの必要性に言及しているだけで、一般的原則の域をでません。風水害に対する課題、例えば異常気象の予測いや河川の洪水対策などを考えるようにしてもらえますか。

費用面の観点では、限られた予算の中で防災・減災をいかに進めていくかが課題となる。現状は老朽化している施設も増えており、インフラ強靭化を進めるためには費用がかかる。特に民間企業は予算が限られているため、費用面の理由からインフラ整備が進まず、被害を拡大させてしまうおそれがある。

■工事の予算の件は行政の課題であって、コンサルタントが解決できる問題ではありません。課題としてはコストダウンや、民間委託などのコスト低減策を挙げてみてはいかがでしょうか。

(2)最も重要な課題とその解決策 

本では、土砂災害が発生しやすい山沿いや洪水・高潮が発生しやすい河川流域などの地域にも人が暮らしている。人々が安心して暮らせるためには、災害から物理的に守る必要ある。従って、課題①が最も重要である。以下に解決策を2点挙げる。

■理由として描かれている黄色マーカー部分は、問題文の前置き文とほぼ同じです。課題の1では単なるハード対策ではなく、風水害に対処するためハードの何をどうするかを問1で方針として挙げておいてください。

インフラの冗長性や多重性を確保することで、防災・減災につなげる。えば港湾鋼構造物である防波堤を粘り強い構造にする。想定外の規模の台風時には、防波堤は数時間に渡り越波に耐えなければならない。重力式の防波堤は、背後の地盤が洗堀されることで倒壊する可能性がある。

■解決策の本題を書く手前に描かれている黄色マーカーの前置き文が長いです。単刀直入に解決策を述べましょう。

そこで、背後に被覆ブロックを設置するなどし、すぐに倒壊しない粘り強い構造にすることで、減災につなげる。また、道路のネットワークを強化して多重性を確保する。土砂災害などの災害で道路が遮断されると、一部の地域が孤立することで、食料など緊急物資の輸送などができなくなる。道路や、またヘリポートの整備等により空路を確保することで二次災害を防ぐ。

■提案のとでは別物ですので段落を分けた方がよいでしょう。

老朽化した構造物を補修・補強することで防災・減災につなげる。例えば、港湾鋼構造物である鋼製防波堤は、鋼管杭が腐食により減肉することで、次第に耐力が低下してきている。補強方法として、杭間の拘束や荷重伝達を行うストラットという鋼管部材を取付ける。これにより防波堤の水平剛性を向上させ、杭の腐食による体力低下分を補うことができる。このように老朽化した構造物を補強することで、撤去・新設するよりも低コストでインフラ整備を進めることができる。

■インフラの補修などと言うことは維持管理の基本に過ぎないように感じます。ここではもっと風水害にマッチングした解決法を挙げるようにしてください。黄色マーカーの「例えば・・」で始まる分は、具体性に富んでいる内容ではありますが、ここで求められる回答は1つの個別の事例ではなく汎用性のある対処方法です。

(3)新たに生じうるリスクとその対応策 

インフラの強靭化により災害による被害が軽減されることで、住民の防災意識が低下するおそれがある。対応策を2点挙げる。

■こうした意識の変化は、想像に難くない話でやや安直な回答ととられかねません。本来はこの問3では問2の解決策である施設の多重化やインフラのメンテナンスを行うことによって発生するリスクを問いかけています。

①実践的な防災訓練を定期的に行う。また、被災者の講演会や追悼行事を行い、災害の記憶を風化させない。

②信頼性設計に基づいて施設を設計し、災害に対する施設の倒壊確率やその時の被害規模等を示す。災害の発生する可能性があることを数値的に示すことで、災害に対する心の準備や防災用品の準備を促すことができる。

(4)技術者倫理の観点から必要な要件として、安全で安心できるインフラを整備するために、公益を確保する、託された業務を誠実に履行するという倫理観を持って業務に取り組む。

■こうした一般的な心構えを問いかけているのではなく、問2に書いた解決策を行う上で、「あなたは技術士として技術者倫理を高めて業務遂行するために、仕事のやり方として何に留意して行ないますか」という意味です。

社会の持続性確保の観点から必要な要件として、資源・材料・エネルギーを有効活用する、環境への悪影響を最小限にするという意識をもち、防災・減災により復興時の大規模改修を減らすようにする。

■こちらも同じです。社会持続性とはいわゆるSDGsを意味しています。こうした意識を持って解決策を執行するにあたり、例えば労働需給問題解決に貢献するため女性や外国人を採用して行うとかいった具体的にどんなことに注意して行うかという具体的な留意点が求められています。

問題文 

Ⅱ-1-1

鋼部材の破壊現象の代表例として、脆性破壊、疲労破壊、遅れ破壊が挙げられる。この中から2つの破壊現象を挙げ、その特徴と破壊防止のための留意点を述べよ。

①疲労破壊 

1)特徴:繰り返し作用する荷重によって部材に亀裂が発生し破断に至ること。弾性範囲内の応力が1万回程度以上作用して破断する高サイクル疲労、塑性域に達する応力が1万回程度以下作用して破断する低サイクル疲労に大別される。

■は特徴というよりは用語の定義に相当するのではありませんか。または2分類しているだけで、疲労破壊の本質的な特徴述べているわけではないようです。こうした特徴の問題では、特性を形容詞で表し、そうした特性が得られる技術的要因を根拠としてのべるとよいでしょう。

2)破壊を防ぐための留意点 

高サイクル疲労は、溶接止端部の形状が急変することで応力集中が原因で起こる場合がある。応力集中を緩和するために、止端部をグランインダーで処理し、形状を滑らかにする。ディスクグラインダーにより処理すると傷が残り、その傷を起点として亀裂が発生することがあるので、追加でバーグラインダーで処理し、傷を残さないようにする。

■「〜の場合がある」という表現は、一般的には「そうでない逆のことが多い」という意味も含んでいますので要注意です。答案では明快な分を用いるように努めてください。また「応力集中を・・・」の記述はグラインダーによる個別の加工法に由来する問題点となっており、疲労破壊についての本質的な対策法とはやや違うようです。

②遅れ破壊 

1)特徴:高力ボルトのように導入軸力が大きいボルトは、締め付けたあとに、時間が経過してから、ボルトが破断することがある。これを遅れ破壊と呼ぶ。

■こちらの文も遅れ破壊の言葉の定義であって特徴の説明文とは違うようです。

2)破壊を防ぐための留意点:留意点を2点挙げる。

・超高力ボルトのように導入軸力が大きいボルトには、耐遅れ破壊特性の高い材質、応力集中が起こりにくい形状のボルト・ネジを使用する。

・ボルトが腐食することで遅れ破壊が起こる場合もあるので、超高力ボルトは降雨にさらされる環境で使用しないなど、使用環境に配慮する。

■遅れ破壊の防止対策として「耐遅れ破壊特性の高い材質」では当然のことなので、どのような材質なのか特性を表すようにしてください。また「ボルトが腐食する・・場合もある」という表現は前述のとうり誤解を招くので別な表現がよろしいかと思います。

Ⅱ-2-2

建設から30年以上が経過し、老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し、現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で、あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を想定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行ううえで、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況 

港湾鋼構造物である直杭式桟橋を対象とする。本構造は、海底に等間隔に鋼管杭を打設し、海水面上に出た杭頭部をRC床版により結合することで施工される。鋼管杭は、気中・飛沫干満帯・水中・土中という腐食環境にさらされることで、次第に腐食し、減肉する。減肉により断面が小さくなると、杭の耐力が低下し、構造全体の耐力も低下する。補強方法として、杭間の拘束や荷重伝達を担うストラットという鋼管部材を取り付ける方法がある。以下では、この方法について述べる。

■問1の要求はこのような対策を宣言することではなく、直杭式桟橋のによる腐食の分析とその耐震性能の評価です。

以下の調査、検討すべき事項及び、問2の手順で具体的に経験力に富んだ説明が展開できていることから高い技術者コンピテンシーとして評価されたものと考えられます。

調査、検討すべき事項:4点挙げる。 

①水深測量:既設桟橋直下の水深を調査する。船舶の往来による海底土砂の洗堀や常時訪れる波による洗堀により水深は建設時と大きく変わっている場合がある。現状の水深を測定して、耐震設計に反映させる。

②外力の整理:外力として、波浪や地震等の自然の外力、上載クレーンや着岸・係留する船舶により作用する外力を整理し、耐震設計に使用する。

③杭の腐食量調査:現状の杭の断面、海域の腐食環境を調査するために、杭の板厚を測定する。複数の杭に対し複数の水深で計測する。

④既設杭の位置測量:杭の打設精度には誤差があるため、設計図面通りの位置に打設されているとは限らない。ストラット材の寸法を決めるために、杭の位置を測量する。

(2)業務を進める手順 

業務を進める手順は、①設計条件の整理、②ストラット材の配置決め、③構造解析モデルの作成、④安定性照査及びストラット材のサイズ決定、⑤防食工の選定である。

工夫を要する点:手順の①・③を効率的に進める上での工夫点を述べる。既設構造を設計した際の計算書や解析モデル図(もしあれば解析モデル自体)が入手できれば、それを参考にする。計算書から構造の決定ケースが分かれば、荷重ケース設定時に、検討ケースを省略することができる。

留意すべき点:ストラット材を取り付けることで、構造物が海水に接する面積が増え、それにより潮流力・波力・地震時の動水圧が増大する。ストラット材に必要な剛性を確保する際は。部材の投影面積、すなわち径を上げるのではなく、板厚を上げる。

(3)業務を効率的に進めるための方策:2点挙げる。 

①発注者と要求性能や設計条件について密に連絡する。条件が不足している場合や原設計時の資料が必要な場合は早急に確認して設計が滞りなく進むようにする。

②設計時に施工に関するリスクが見つかった場合は、発注者経由で施工業者に情報を引き継ぎ、事故やミスを未然に防ぐ。

■大変申し訳ありませんが、こうしたてきぱきと仕事をするとか、リスクを包み隠さず伝えるとか言うことは技術者としての基本的な素養です。これが技術士にふさわしいと評価されたわけではないと考えます。ここでは本来は、問2の手順を遂行するにあたり、調査業者や施工業者に対して、業者間の業務内容の無理を緩和して、耐震補強の効果が最大化するような提案をすることが求められています。いわゆるプロマネとしての取りまとめを求めています。

Ⅲ-2

我が国では、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。

(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だにその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。

(2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の対応策を示せ。

(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)課題:課題を3点挙げる。

技術的な観点から、点検や補修を高度化、効率化できる技術をいかに確立していくかが課題となる。

■見出しやタイトルの下線はなくても構いません。試験の答案ですのでこのような表現方法で得点が変わることは考えにくいです。内容に集中されるようにお願いします。この問題では、問題の前置き文で「新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換」と求められていました。問1では「予防保全型メンテナンス」が求められています。

したがって単なる技術の高度化や担い手の確保コストダウンではなく、本質的に予防保全を新しい技術でどのように改善するかという提案をすべきであったのではと思います。

またⅢですので、建設一般ではなく、鋼コンの視点から予防保全型メンテについて述べるべきでした。

予防保全を進めるためには、構造物が倒壊する前に異常を知ること、また撤去・新設せずに効率的に補修する技術が求められる。現状はこのような技術が十分に普及しているとは言い難く、技術の確立が求められる。

担い手確保の観点から、予防保全を担う建設業の技術者をいかに確保するかが課題となる。維持管理が必要な施設は増えているものの、建設業の技術者は減少している。市区町村等の中小規模の自治体では、専門性のない職員が維持管理を行っていることもある。このような場合、維持管理に関する正しい判断ができず、施設の安全性が低下してしまうおそれがある。

費用面の観点から、限られた予算の中でいかに予防保全を進めていくかが課題となる。特に民間企業においては、予算の確保が難しく、それが維持管理を進める上での障壁となる。

(2)最も重要と考える課題とその解決策。 

課題①を解決すること、すなわち点検や補修を効率化する技術を確立することは課題②・③の解決にもつながる。従って課題①が最重要な課題である。解決策を3点挙げる。

■解決策とは予防保全をどのように新しい技術で行うかの内容であって、ロボットによる効率化とか遠隔モニタリングの単独技術の提案ではありません。あくまでも予防保全との関連付けが必要であったかと思います。

ロボットを活用し、点検を効率化する。橋梁の上部工など高所の点検箇所はドローン、海洋構造物の部材など水中の点検はROVでアクセスし、点検箇所を撮影する。撮影した大量の画像データを基に、異常検知が可能な画像認識AIを構築しておくことで、撮影した画像からすぐに異常の有無を確認することができる。効率化だけでなく、高所や水中などに人がアクセスする必要がなくなり、点検作業の安全性が向上する効果もある。

遠隔モニタリング技術を活用することで、点検の効率化、予防保全の推進をする。遠隔モニタリング技術としては、構造物にセンサーを取り付け常時計測する方法、センサーを搭載した車両で走行することによる方法がある。例えば前者は、加速度センサーやひび割れセンサーを施設に取り付けて、常時計測し、計測結果を遠隔地で確認する。異常を検知したら警告を出すアルゴリズムを組んでおくことで、構造物が倒壊する前に異常を知ることができる。これにより、近接目視点検の頻度を減らすことでの点検効率化、早期発見による補修による補修規模の縮小が可能となる。

■下記のは予防保全の提案に関する解決策というよりは、ご自身の得意な港湾鋼構造物での解決策の一例に終始しているように読み取れます。答えの汎用性が低いと減点される危険性がありますので、特定の構造や技術に限定せず、広い新技術応用に言及するようにしてください。

例えば本講座ではこのような技術提案についてご自身の経験の中から提案できるベストの内容コーチングによって導くという方法を取っております。このため安心して正解にたどり着くことができます。

補修・補強技術を活用することで、予防保全を進める例えば、港湾鋼構造物である直杭式桟橋の補修がある。本構造は、海底に等間隔に鋼管杭を打設し、海水面上に出た杭頭部をRC床版で結合することで施工される。経年劣化によって、鋼管杭が腐食し減肉する。普通は防食により腐食を防ぐが、アルミ陽極自体も劣化して効果が薄れて完全に防食できるわけではない。補修方法として、杭間の拘束、荷重伝達を担うストラット材を取り付けることで、腐食による耐力低下を補うことができる。またペトロラタム製の被覆防食を取り付けることで、防食の補修も可能である。いずれにしても、構造物を撤去・新設することなく、適度に補修することで、予防保全をすることができる。

(3)新たに生じうるリスクとその対策 

これまで述べた点検や補修に関する新しい技術は必ずしも実績が多い訳ではない。専門性の低い自治体の職員や民間の施設管理者は採用しにくく、技術が普及しない可能性がある。対策として。ガイドラインや事例集等の図書を整備する。図書を整備する上での留意点としては、劣化状況と適切な補強方法の関係性を示すこと、適用事例のある工法はその詳細を記載すること、工法にリスクがあればそれを明記することが挙げられる。

■自治体の職員の専門性が低いことは現在も見られる状況であってそのこと自体はリスクではありません。問3で求めているリストは、問2であげた解決策、すなわちロボット施工、遠隔モニタリング、新技術活用についての将来のリスクを求めています。エンジニアとして一般的な人にはわからない、(今は問題はなくとも)遠い将来に問題となることまで責任を持つべきと言う、技術者倫理に由来する出題です。問2提案と無関係な一般的なリスクに発散するべきではなく、自己の提案に対する反省と捉えてご検討ください。

№16 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 2021/10/04

答案の一覧>

この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、オールBで不合格でした。大変残念な結果です。建設部門鋼コン技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できますし。音声ガイドでもご指摘致しますので、指摘事項は今後の参考としてください。

 これまで3回受験されているということですが、試験のコツがつかめていないようなので残念です。丁寧な記述で前置き文が長くなる傾向がみられます。「攻めの」論文表現がやや弱かったようです。ご自身の努力だけでは、短期間で解答のストライクゾーンに答えるのが難しかと思います。まずは、簡潔な表現で記述内容の矛盾や無駄をなくし、有効な対策を示していけば必ず合格答案に近づけられます。

 必須Ⅰではやや一般論に発散したようです。水害へ対処する視点が欲しかったです。自身でも対応可能な汎用的対応です。また建設部門鋼コン技術コンサルタントとしての提案があればよかったです。選択科目Ⅱ-1は正解ですが、前置きが長いようです。むしろ後半のメインの部分へ重点を置いた論述が欲しかったです。Ⅱ-2は前半の前提事項では、調査や検討に終始して注意力を吸い取られたみたいです。しかし、本題は後半の「どう対処するか」の答えにあります。「調整」も役所の届出となっていました。形式的内容の色合いが強く出題者が求めている「経験豊富な技術士像」が打ち出せていなかったようです。具体的にこの現場でどう品質管理するかを1つ1つを解答できればよかったです。Ⅲは、鋼構造の分野でメンテナンスをどう進めるかの提案が求められました。「人手不足」などの問題を実現可能な形で解決策を示す必要があります。解決策では鋼コンの技術応用主体に考えると良いでしょう。女性の起用は必須ⅠならOKです。しかし、ここではCAD,BIMなどのIT技術を女性オペレーターが担うとすればよかったでしょう。

 しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格は可能です。再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(21分39秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.近年災害は激甚化の一途をたどっている。直近でも九州に発生した線状降水帯により豪雨が発生し、河川の氾濫が起きている。その中で災害の被害の防止または軽減するための課題を以下に示す。

■このような前置きは出題者意図の追認なので、なくても構いません。また、見出しの下線もなくてもよいでしょう。見栄えではなく中身で勝負しましょう。

1.1インフラストック効果の最大化

 豪雨等の災害が発生した際に国民命や生活基盤を守ることができるのはインフラである。しかし、老朽化の進行や、想定外の外力により効果を発揮できない事例も見られる。ストック効果の最大化が課題である。

■ストック効果はもちろん大事ですが、ここでの主題はそこではありません。水害に焦点を当てることです。

1.2災害危険エリアからの移転

 現在、災害危険エリアに居住している人も多くいる。

住民が広範囲に居住していると効果的な対策を構築することが難しい。被災リスクの少ないエリアに移転してもらうことで効果的に災害の被害にあうリスクを軽減することができる。災害危険エリアからの住民の移転が課題である。

■移転は確かに有効ですが、水害の視点を示すことです。居住地移転は困難なことです。推進するには土地政策が不可欠です。

1.3国民の避難意識の向上

 現在、多くの自治体でハザードマップの整備が進んでいる。しかし、住民の認知度はあまり高くない。実際に災害が起きた際にも逃げ遅れ等につながってしまっている事案もある。災害が起きてしまった際に自分の命を守るために国民の避難意識を向上させることが課題となっている。

■国民の意識は政策の課題です。一方、技術士はコンサルタントとして技術提案の課題が求められています。

試験答案なのでいわゆる論文のような言い回しは不要です

上記3点が災害の軽減のための課題である。 

2.前述した課題の中で、現状の暮らしをそのまま守ることができるのはインフラのストック効果の最大化が第一である。この課題についての解決策を述べる。

■まとめや選定理由はなくとも構いません。

2.1インフラの予防保全の徹底

 現在、高度経済成長期に建設されたインフラは老朽化が加速しており、供用50年を超えるものが増加している。いざというときにインフラの機能が発揮できなければ、国民を守ることができない。予防保全を徹底することで必要な機能を果たすことができる。

■やや一般論です。水害対策の視点があると良いでしょう。

2.2小改造によるインフラの効果増進

 近年の技術の進歩により、経済的な小改造でインフラの効果を増大が可能となっている。ダム再生では堤体の少しのかさ上げにより、貯水量を大幅に増加させることや、放水路を移設することで有効容量を増加させるなど、投資に対して効果の高い工事が可能となっている。このような小改造を行うことでストック効果の最大化につなげる。

■2.1と2.2は同じようなことのダブリです。1の結果、その対策として2があるのではありませんか。診断、対策の関係です。

2.3ビッグデータを用いた選択と集中

 現在、河川の氾濫に対しては危機管理型水位計が全国に配置されてきており大量の水位観測データが得られる。また。ドローンにグリーンレーザーを用いて河床測量を面的に行うことで流域の河床形状を把握することができる。このようなビッグデータを用いて、水位上昇の頻度が高いか所や浚渫が必要な個所に選択して集中的に対策を講じることで賢く効果的に社会資本を運用できるようになる。

■この提案は○です

3.1上記の解決策を実行しても新たに生じうるリスク担い手不足である。建設業の就業者は今後大きく減少すると見込まれている。しかし、保全や改造、対策が必要となるインフラは今後増加すると考えられる。その際にメンテナンスサイクルを実行する担い手が不足してしまうことがリスクとして挙げられる。

■ここは問2に書いた「予防保全、小改造、ビッグデータ」を実行したら、この3つが原因となって何が起こるかという、自身の提案に対する見直しです。担い手不足は、既に現状がそうですからリスクになりません。

3.2生じうるリスクへの対応策は最新技術を導入することで担い手不足を解消するということである。点検をドローンやロボットを用いて行う。得られた結果をエキスパートシステムと共に診断を行う。診断結果をもとに措置を行う。記録はドローンやロボットを用い、データベース化を行う。最新技術にも担い手となってもらうことでメンテナンスサイクルを実行する。また、今後は人口の減少も進むため、都市のコンパクト化を進め、低未利用のインフラについては転用や廃棄も視野に入れて必要な個所を集中的に守る。

■具体的に「予防保全、小改造、ビッグデータ」のどこでリスク検証するか示すとさらに良いでしょう。

4.1技術者倫理として必要な要件は公衆の安全と健康を守るということである。新技術を活用した効率化等は必須であるが、問題が発生すれば国民に被害を与えることになりかねない。慎重にリスク等を検証したうえで技術導入を進めることが必要である。

■「予防保全、小改造、ビッグデータ」でどんな新技術がありますか。

4.2社会の持続性について必要な要件はメンテナンスサイクルを実行する際に工費だけを優先するのではなく環境への影響も評価したうえで工法等の選定を行うことが重要である。

■問4はよくお考えになりました。4.1,4.2ともOKです。

問題文 Ⅱ−1−4

 既設コンクリート構造物において、浮きやエフロレッセンスを伴うひび割れが局所的に見られた。当該コンクリート構造物を長期間共用していくために詳細調査計画を策定すべく、非破壊検査を適用したい。そこで、生じている現象から推測される構造物の内部の変状を想定したうえで、求める情報と適用すべき非破壊検査手法の組合せを2つ提案し、それぞれの計測原理および実施に対する留意点を述べよ。ただし、微破壊により構造物内部を直接調査する方法を含まないものとする。

1.構造物に生じている現象より推測する変状を述べる

■問題の指示事項なので不要です

1.1.鉄筋腐食  ←「外観に生じている現象」、例えばエフロレッセンスを伴うひび割れとかを見出しに書くように。そして推測される構造物の内部の変状を想定します。

そして、大事なことは、これらは導入部であって本題ではありませんので簡潔に。1.1、1.2で1/3か1/4ページ程度でよいでしょう。

 浮きを生じるひび割れがみられるため鉄筋腐食が発生していると思われる。腐食により内部に膨張圧が発生し浮き、ひび割れに至ったと考えられる。

1.2.貫通ひび割れ 

 エフロレッセンスを伴うひび割れが発生していることから、部材を貫通するようなひび割れが発生していると考えられる。ひび割れを水が通過することにより表面にエフロレッセンスがみられるようになっている。

2.求める情報と適用すべき検査手法をいかに述べる

試験答案なので簡潔に。このようなところでは減点されません。

2.1.自然電位法による鉄筋腐食の測定

 自然電位法を用いて鉄筋の腐食の範囲及び程度を確認する必要がある。計測原理は鉄筋に電極を設置し、電流を流し、照合電極で電位を測定することで腐食の度合いを測定する。迷走電流があると計測不可能であることに留意が必要。

■ではどうすればよいのか。「○○できない」という制約事項ではなく、「こうすれば○○できる」という品質改善の提案となるようにするとコンピテンシーが高まります。計測原理および実施に対する留意点に絞って答えるように。

2.2.弾性衝撃探査法によるひび割れ深さの測定

 弾性衝撃探査法によってひび割れの深さ、貫通の有無の計測を行う。計測原理は発震器により弾性派を発生させ受信機で受信、複数回測定する。ひび割れを回折した際の到達遅れにより、ひび割れ深さの計測を行う。測定個所にひび割れ以外の変状がないか確認したうえで計測を行う。(内部空洞等)

■言うは易しく行うのが↑困難なこと。こうした難題がどのようにしたらできるか、技術ノウハウを示すとコンピテンシーになります。

Ⅱ-2-2 建設から30年以上が経過し、老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し、現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で、あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を設定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行ううえで、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.対象とする既設構造物と老朽化状況

1.1.対象とする構造物

 対象とする構造物は沿岸の桟橋構造であり、RC造である。建設より40年経過している。

1.2.老朽化の状況 「状況設定」はメインではありませんので簡潔に。 

 沿岸構造物で建設後40年が経過しているためいたるところでかぶりコンクリートが剥落し、鉄筋が露出した状態となっている。鉄筋の腐食も進行しており、断面現象も発生し劣化期に到達してしまっている。

■上記の前提は、これ以降で調査項目、検討を具体的に掘り下げるために設定するものです。上でせっかく前提されたのに、下記でほとんど活用されていません。1.3、1.4は、1.1、1.2の前提があってもなくてもだいたい行われていることです。試験のねらいが見えていなかったのが残念です。

1.3.調査すべき項目

・建設当時の設計図書 形式的な項目が多いです

・準拠している基準及び指針これらすべて要りますか

・コンクリートの浮き、剥離の発生している範囲

・コンクリート内の塩化物イオン濃度

・改造、使用状況の変化の有無

1.4検討すべき事項

補強工法 劣化の進行状況に合わせ補強工法の検討を行う。要求性能を満たすことができる候補を複数挙げておく。

・構造検討 選定した補強工法を用いて耐震補強について構造検討を行い、工法の絞り込み、補強の程度を決定する。

2.業務を進める手順

①資料調査 

建設当時の設計図書、工事記録等の調査を行う。図面、計算書だけでなく施工状況や使用材料等も資料が残存していれば確認を行う。

②現地調査

 劣化の範囲・程度を確認するため現地調査を行う。現地の使用法が前提に即しているかの確認も必要

③工法検討・構造検討

 劣化状況を反映し、補強工法の選定、構造検討を行う。複数ケーススタディを行うことが重要。工法の選定時には再劣化にも注意が必要となる。

④現地施工

 現地で施工を行う。劣化状況を確認しながら施工する。異常が確認された場合には工事を止め協議を行う。

⑤工事記録の作成・保存

 補修・補強工事の記録を作成し保存を行う。施工状況だけでなく既存の状態、使用材料、物性、メーカー等情報を確実に記録しておく。

■一般的な補修工事の計画手順です。この内容から鋼構造コンクリートの技術士にふさわしいコンピテンシーを見いだしてもらえるかやや心配です。

3.関係者との調整方策

・海上保安庁に対し海洋構造物であるため施工方法等を説明し、必要な申請等の確認を行っておく。初期段階で相談しておくことで事前に制約条件(施工可能時期)等を把握し、着工不可等の手戻りを防止する。

役所の届出であって、工事の本質的内容とは別。

・構造物使用者に対し、施工方法によって使用制限が必要になること、資材置場等の条件設定の確認を行う。閑散期等を確認し、スムーズな施工を実現する。

■出題者が求める「関係者との調整」の趣旨が明確に見えていなかったのではないかと拝見いたします。現場管理の力、施工管理のノウハウや、管理者としての対外交渉やマネジメント力は感じられます。

それらは必要ですが、プロマネとしての取りまとめや指導力を発揮されるとさらに良いでしょう。そのほか、専門の技術応用、独創性、汎用性が加わると技術者コンピテンシーが高まり、楽勝で合格できます。

Ⅲ-2 我が国は、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。

(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。  (2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。  (3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.予防保全型メンテナンスが実現できていないことについての課題を下記に3つ挙げる。

■答案なのでこのような前置きは不要です。

1.1診断の担い手不足の解消

 現在、我が国は人口減少の局面にあり、建設業も今後10年で60代以上の多くの就業者が退職する見込みである。メンテナンスサイクルの核である診断には多くの知識・経験が必要である。それを担える人材が不足しており、今後されに不足すると考えられる。そのため診断の担い手不足を解消することが課題である。

■「人材不足」に対して「人材不足解消」だと課題になりません。ほとんどイコール。ここは人材育成または省力化です。また選択Ⅲなので鋼構造コンクリートの技術提案とするのが良いでしょう。

1.2.最新の技術の活用

 近年ICT技術の発展は目覚ましく、建設業の中でもICTを活用した効率的な新技術は次々と実用化されてきている。しかし、性能の評価方法や適用範囲がわからない、初期投資がかかるなど種々の問題で採用ができていない事例も散見される。そのため最新技術を積極的に活用していくということが課題である。

■新技術は使えばよいというものではなく、目的を示すことです。予防保全型メンテのICT技術の原理やシステムは何ですか。

1.3.発注者の人材不足

 社会資本の保全を行うには発注者から注文を受ける必要がある。しかし、補修工事の発注を行うには点検を行ったうえで結果を確認し、補修・補強工法を決定、見積もりを行ったうえで発注しなければならず、非常に業務が煩雑となっている。特に地方自治体などではこのような発注業務を行える人材が不足している。これを解消することが課題となっている。

■人材育成、発注者支援、インフラの削減が課題です。

2.予防保全型メンテナンス移行への課題は担い手不足の解消と考える。

2.1メンテナンスエキスパートシステムの活用

 診断は、点検結果から劣化の原因、程度を判断し、補修・補強方法を検討しなければならない。ベテラン技術者の暗黙知を教師データとしたメンテナンスエキスパートシステムとともに診断を行うことで若手の技術者でも熟練技術者と同等の診断を行うことができるようになり、担い手不足の解消につながる。

■マネジメントとしてはOKです。しかし、鋼コンの技術提案は何でしょうか。一般論ではなく鋼コンの診断、補強、暗黙知に関する提案があればさらに良くなります。コンクリートのAI診断システム、カメラ・物理探査などはいかがですか。

2.2.女性の活躍の促進

 現在、建設業界においても女性就業者数が増加してきている。ICT技術の発展に伴い実際の現場に行かなくてもよりリアルに状況を把握することができるようになっている。診断データの作りこみ等において女性に活躍してもらうことで人材不足の解消の一助とする。

■これも一般的な人手不足対策のように見えます。役には立ちますが、これだけでは鋼コンの技術提案にはなりません。必須ⅠならOKです。ここは鋼コンの視点から、鉄鋼CAD技術やBIM,CIMに触れると良いでしょう。

2.3.ベテラン層の延長雇用

 前出のエキスパートシステムにおいても若手人材の教育においても熟練技術者の暗黙知を継承するということが必須である。そのため熟練技術者に延長雇用で残っていただき、リモートで事務所や自宅などから若手技術者に指示・指導等を行ってもらうことで育成や教師データの作成につなげる。それにより、エキスパートシステムの本格始動までの空白期間の担い手不足を解消する。

■ベテラン起用は役立ちますが、今日では常識となりつつあり、やや安易な気も致します。実際、ベテラン社員の中には「体で覚える」というタイプもいて必ずしも効果的に指導できません。技術士の提案としては、さらに進んだナレッジマネジメントの仕組みなどがほしいです。

3.すべての解決策を実行したうえでも新たに生じうるリスクと解決策を下記に述べる。

3.1.新たに生じうるリスク

 高度経済成長期に建設した多くの社会資本が共用50年を超過していき、インフラ老朽化が今後加速をしていくことは明らかである。老朽化し変状が発生する構造物の数が圧倒的に多くなり、

■これら↑は前提事項であって、問3の趣旨は問2の提案がもたらすリスクについて自己評価を求めています。エキスパートシステム、女性・ベテラン層の雇用が進むとどんなリスクがありますか。現状よりは維持管理は良くなるはずですが・・・、しかし・・。このように一見リスクが見えないところに発生する問題を推論するから、技術士試験問題として意義があるわけです。

診断を行っても他の工程がボトルネックとなり、前出の解決策を実行してもメンテナンスサイクルが回せず破綻する恐れがある。

3.2.メンテナンスサイクル各工程で最新技術の活用

 メンテナンスサイクルは点検→診断→措置→記録が一連の流れとなってくる。点検ではロボット、ドローン、ICT危機を駆使し効率的に点検を行い、点検結果をビックデータとしてまとめる。診断はエキスパートシステムとともに点検結果のビッグデータをもとに行い、補修等の措置を決定する。措置については先端技術、素材等を用い、効率的に補修等の措置を進めていく。また診断の際に再劣化にも配慮し工法等の選定を行うことで再処置の必要になる期間を延ばす。措置を行った施工記録等については記録を作成しデータプラットフォームにもデータの保存を行う。劣化状況、症状、診断結果、措置、措置の効果等を記録しておくことによりその後の他工事等に有効に使えるデータベースの構築に役立てる。最新の技術をメンテナンスサイクルの各工程に活用していくことで効率を飛躍的に向上させ、予防保全行うための対策とする。

■16行の段落を改行なしに1つにまとめたら大変読みにくいです。一連の作業に関する流れの説明となっていますので、大まかな手順ごとに分けて見出しを付けて3〜4の段落とするのが良いでしょう。かなり見やすくなり、提案趣旨が試験官に届きます。

№15 R3年 建設部門、都市及び地方計画の答案について添削致しました。 2021/09/30

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この答案についての講評

 答案を拝見して専門的知識が豊富だと感じました。これまで3回も受験されて勉強されています。試験結果は、予想通りオールAで合格されました。素晴らしい結果です。論文の書き方は丁寧で読みやすいです。ただし出題者が求めている事項の中心にまっすぐ答えられていないところも拝見いたします。出題趣旨が正確にわかれば正解率は上がります。さらにレベルアップするための、大まかな考え方は音声ガイドの説明で申し上げますのでお聞き願います。

 これまで有料講座もお請けになったようですが、解答の作戦というか論述の焦点が定まらずお困りになっているようです。特にⅡ-2の問いのように答えの無い問題では、一般論や対処法に終始して建設・都市計画の具体的解答に到達できませんでした。やはり白書の暗記だけでは問いに対して的確に応えるのは困難なようです。技術士問題は、実現性の高いプロの答えでないと点が取れません。そのためには経験知+プロのマネジメント力を発揮する必要があります。

 本講座のパーフェクトコースで学ばれると、コーチング指導によって、コンピテンシーを発揮されて、楽勝で合格できます。受講されている方々の満足度を高めるように努めており、皆様から高い評価をいただいておりますので、アンケート結果をご覧ください。

 口頭試験に備えて、見識を整えて確実に突破されるよう祈っております。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(24分04秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

Ⅰ−2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮、波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取り組みを加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取り組みを加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.風水害の被害にかかる防止・軽減対策の課題

1.1 都市型水害の被害の観点

近年、気候変動により風水害が頻発化・激甚化する中、堤防等治水ハード施設のみでは防ぎきれないため、ハードソフトベストミックスが推進されるが、市街地が拡散すると、それを守る堤防等が膨大となり整備が長期化し、避難距離が長くなり逃げ遅れる。このため、コンパクトシティと連携した防災・減災より、守るべきエリアを集約し、高密度な生活のもと、避難場所への道程を短くし避難も迅速にできるようにする。

1.2 土砂災害の被害の観点

中山間地域等では、農林産業の衰退や過疎化等に伴い里地里山が荒廃すると、森林等の保水機能が低下し、土砂災害や風倒木災害が甚大化していく。このため、暮らしと農林業の維持により、荒廃する里地里山の再生が必要である。砂防や道路等の整備では、グリーンツーリズム・グランピングの推進や大区画化・汎用化整備と六次化を含む農村活性化、混交林化・長伐期施業への転換、スマート林業化等に配慮して進める。

1.3 インフラ施設の被害の観点

インフラ施設が被災した場合、国民生活や社会経済活動への影響が大きい。道路・交通施設は通行不能になると、避難や移動・輸送の遮断や迂回路を強いる。また、電力施設はブラックアウトなど大規模停電が生じるリスクがある。このため、冗長性が高く被災後も早期復旧が可能な災害に強いインフラ施設が必要である。道路は耐災害性や代替輸送・路線など冗長性を強化する。電力施設は、都市コンパクト化で再生可能エネルギー電力源を多数確保し、スマートグリッドで需要側と最適接続して仮想発電所を形成し、独立分散型電源を確保して冗長性を高めて停電を防止・抑制する。

■内容はとても結構ですが、記述が冗長です。課題はいずれも問題点+課題の構成となっており問題点を簡潔にすると良いでしょう。

2.最重要課題と解決策

1.1は、被災エリアが広範囲で人的・経済的な被害が甚大となるため最重要である。以下解決策を述べる。

2.1 コンパクトシティと連携した防災・減災

(1) 災害リスクが低い地域への立地誘導

コンパクトシティとの連携にあたり、災害リスクが高いエリアを含めると被災リスクが低減しない。そこで、災害リスクが低い地域への立地誘導を行う。具体的には、立地適正化計画を踏まえ、災害ハザードエリアを区分・指定する。災害レッドゾーンは、立地適正化計画の居住誘導区域から原則除外とし、開発の原則禁止、開発等に対する勧告や公表、移転の促進を図る。イエローゾーンは開発許可を厳格化する。

(2) 災害時要援護者への避難誘導対策

高齢者等災害時要援護者は、自足歩行等が難しく、避難距離が短くても迅速な避難が難しいなど自助に限界がある。そこで、共助と公助を組み合わせた避難誘導を行う。具体的には、共助は、地域で自主防災組織を編成し、早期避難体制をつくる。公助は、行政で各地域の自主防災組織を束ねて、講習や情報交換、訓練の場などを提供して組織維持を支援する。

■解決策は他にはありませんか。都市型水害対策を目指したものとすべきですが、コンパクトシティ+避難だけでは積極的な「水害」対策がなく、題意に応えられてたかやや心配です。

3.解決策に共通した新たなリスクと対策

3.1 防災情報高度化・避難誘導の最適化

様々な分野の各データが分野限定で横断的に活用できないと、災害リスクに適合しない災害エリア指定や施設配置となったり、空振りが多くてピンポイントにもならない避難誘導情報になるリスクがある。

■「データを横断的に活用しない」という不手際に由来する問題であって、問2の解決策にはそのような想定はありません。ここは新規のリスク想定ではなく、提案に由来して発生するものを吟味するところです。

対策は、IoT、AI等の新技術とビッグデータを活用して、データプラットホームを構築し、スマートシティを実現させる。例えば、医療・介護施設等について、インフラデータプラットフォームに人や車の流れ、気象災害情報等の情報を重ねて AI等でビッグデータ解析(国土交通データプラットフォーム)し、最適な施設の規模・配置、避難ルート選定等を計画する。

4.業務遂行上の必要要件(技術者倫理、社会持続性)

・技術者の倫理は、防災インフラの河川堤防等が膨大にあり予算制限や工期厳守等でも、公衆安全を第一に、コスト追求のあまりデータ偽造の不正、手抜き工事などの反倫理行為を行わないよう、倫理教育の一層の充実や反倫理的行為を許さない仕組みづくりを進める。

■「手抜き工事」は論外です。悪すぎて技術者倫理以前のことです。ここはもう少し微妙な問題を挙げるべきです。

そして要件とは「私が工夫して、技術者倫理を高めるため○○する」という行為です。

社会の持続可能性は、可能な限り、環境負荷を最小化する必要がある。防潮林などのグリーンインフラを積極的に活用する等、景観や生物多様性に配慮して計画する。

■これは業務そのものであって、特定業務に限定することはできません。要件とは「私が工夫して、SDGsを高めるため○○する」という行為です。

問題文 Ⅱ−1−2

小さな敷地単位で低未利用地が散発的に発生する都市のスポンジ化によって、特にまちなかの都市機能の誘導・集約をはかるべき地域において、生活サービスの喪失、治安・景観の悪化等が引き起こされ、地域の魅力・価値が低下することが懸念されている。都市のスポンジ化に関わる土地利用上の課題を解決するために、土地の集約・再編の手法及び、土地の所有権と利用券を分離して低未利用地を利活用する手法について、異なるものをそれぞれ1つ示し、その概要、活用するメリット、活用するための留意点を説明せよ。

都市スポンジ化に係る土地利用上の課題解決の手法

1.土地の集約・再編の手法

空間再編賑わい創出事業がある。ここは手法名です。「誘導施設整備区」など

・概要は、本事業は土地区画整理事業であり、事業計画に誘導施設区域を定め、同区域内に空地等所有者の申出換地にて誘導施設整備区を定め、同整備区に医療・福祉施設等の誘導施設を整備する事業となる。

・活用メリットは、同申出換地は、集約換地の特例制度により、従前宅地の位置関係、関係権利者の合意等の条件はなく、本区域内の所有者の申し出にて換地を定めることができ、早期の合意形成が得やすい等がある。 制約事項であり、留意点とは違います

活用上の留意点は、申出希望しない継続居住希望者等は、区外の空地等と入替した生活再建等がある。

2.土地所有権と利用権分離の低未利用地利活用手法

・低未利用土地権利設定等促進計画がある。

・概要は、本計画では低未利用地の地権者等と利用希望者を行政がコーディネートし、複数の土地等に一括して利用権等を設定する計画を市町村が作成する。

・活用メリットは、行政の能動的な働きかけのもと、所有権にこだわらず、低未利用地を利活用できるため、民間投資意欲を高めやすくなる等がある。

・活用上の留意点は、コーディネートでは、都市再生推進法人や都市計画協力団体等の専門家と連携して、その技術・ノウハウを活用・運用する等がある。

II−2−1 地方都市の地方公共団体において、市街地の駅前の自ら管理する市道について、周辺の道路整備による自動車交通量の減少により、車線数を4車線から2車線に減ずることとなり、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の実現のため、当該道路空間の再構築を検討することとなった。

 あなたが本業務の担当責任者として、当該道路空間(沿道含む)の再構築の計画案(ソフト・ハード含む)の作成を担うとして、下記の内容について記述せよ。

 なお、沿道の買収による道路幅員拡幅や公園等の整備、土地区画整理事業や市街地再開発事業は前提としないこと、車線数減少の検討は終わっているものとする。

(1)調査、検討すべき事項を挙げその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3)業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

〇道路空間再構築の計画案作成業  ■←簡潔に 

1.調査・検討すべき事項

・幅員構成や構造、自動車・歩行者の交通量、駅前や沿道等の土地利用、道路占用物件などの状況や影響等を調査する。

・道路空間の再構築について、沿道民有地の意向調査や官民連携の手法、ハード・ソフトの活用、専門家との連携などを検討する。

「沿道民有地の意向」から歩きたくなるまちなかの計画を引き出すの無理があるのではありませんか。

・居心地が良く歩きたくなるまちなか(以下本まちなか)の実現のため、明確な目標やビジョンを定め、その共有・合意等を図るための取組みを検討する。

■歩きたくなるまちなかとはビジョンを定めて合意すればよいというものではないでしょう。「歩きたくなる」要因を、景観、文化、歴史、健康、楽しみ・・など明らかにして提示することです。

2.業務の手順(留意点・工夫点)

2.1現地調査・シミュレーション

・周辺道路・交通状況、沿道・駅前土地建物の空地・空家や利用状況、駅前のフリンジ・P&R駐車等の利用状況、道路埋設占用物件の移設等を調査する。

・車線数を2車線減らすこと、道路空間を再構築することにより、人や車の動きの変動等を、データプラットホーム等を活用しシミュレーションする。

2.2上位計画・関連計画・事業

・立地適正化計画、市都市計画マスタープラン、市総合計画、地域公共交通網形成計画、周辺の市街地開発事業など、上位計画・関連計画・事業の位置づけや整合性を確認・整理する。

■何を作るか、道路・街の方向性が見えていません。

2.3将来都市像・目標、課題

・本まちなか実現のため、道路空間の再構築について、明確な将来像を定め、数値目標等の見える化、アンケート調査等で課題抽出・整理等を図り、ヒアリングやWS等で関係者と合意・共有できるようにする。

■2.3,2.4は同じ。形式的な作業であって題意とは異なります。

2.4計画の作成(沿道含む、ハード・ソフト含む)

・計画の作成では、計画区域・期間、数値目標、事業種別、事業評価方法等を記載する。

・前述までの検討結果等を踏まえ、沿道やハード・ソフトを含むことについては、対象車道の広場化、沿道民有地のオープンスペース化を計画する。計画には、都市再生特別措置法の改正を踏まえ、滞在快適性等向上区域を設定し、一体型滞在快適性等向上事業、ウォーカブル推進税制軽減を活用した、官民一体で取組む賑わい空間の創出を記載する。

3.関係者との調整方策

・沿道の買収による道路幅員拡幅や公園等の整備、土地区画整理事業や市街地再開発事業は前提とせずに、今の道路機能が無くなることを、道路利用者や沿道民有地、地域住民、通学路の学校関係者、交通管理者等に分かり易い資料で十分に説明し、協働・合意できるよう、準備・構想段階からWS等を活用する。

■結局「わかりやすい資料」だけで説得するしかないのでしょうか。都市計画の技術が問われています。

下記は意見交換の手法です。内容や方針はありませんか。

・市庁内では、各部署との関連計画等を考慮し、全庁的・横断的な会議体を設置し、意見調整を行う。

・多様な主体でコンソーシアムを設置し、多様な意見を集約・反映し、計画を整理・とりまとめる。

Ⅲ−1  新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、3つの密(密閉、密集、密接)の回避、不要不急の外出自粛、テレワークの推奨等の「新しい生活様式」の実践が求められている。

この「新しい生活様式」の実践は、都市における過密という課題を改めて顕在化させるとともに、日常生活のみならず、経済・社会全体のあり方や人々の行動様式・意識の変化、デジタル化の進展等多方面に影響を与え、都市に様々な変化をもたらしたと考えられる。

こうした状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)今後の都市政策を検討するときに考慮すべき、コロナ危機を契機として生じた変化や改めて顕在化した課題を、技術者としての立場で3つの異なる観点から抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その生じた変化や顕在化した課題の具体的な内容を示せ。

(2)抽出した変化や課題のうち最も重要と考えるものを1つ挙げ、それに対する都市政策上の対応策を複数示せ。

(3)すべての対応策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対策を示せ。

1.コロナ禍を契機とした都市政策の変化や課題

1.1都心部の都市構造の観点

口減少の中、都市拡散で中心市街地空洞化や郊外過疎化が進むと居住性が低下し、特に、高齢者等は、移動困難な交通弱者となり生活が困窮する。そこで、中心市街地に質の高いインフラを集約し、周縁部や隣接都市を公共交通等で結び移動利便性を確保したコンパクト+ ネットワークの形成が推進されている。しかし、単に都市機能を集約して都市が過密化すると、感染が拡大するリスクが高まる等の変化が生じている。 

このため、ゆとりあるオフィスやオープンスペース、緑を活用したウォーカブルなまちづくりが必要である。

■上記ではコロナ以前の状況説明の前置きが長いです。ここはメインではないので簡潔に仕上げましょう。

1.2都心部の交通の観点

前述のコンパクト+ネットワーク形成のため、公共交通の利用が推進されている。しかし、感染を拡大させる3つの密(密閉、密集、密接)を避けるため、公共交通の利用者が減少していく等の変化が生じている。

このため、3つの密を回避・緩和し、安心して利用できる公共交通が必要である。駅周辺の混雑状況のリアルタイム発信、ICTを活用したMassの導入、非接触型の運賃支払いシステムの整備などがある。

1.3郊外部の都市構造の観点

都市郊外・周縁部は、市町村合併に伴う旧町村支所等を小さな拠点とし、地域の暮らしの維持・向上が推進されてきた。しかし、3つの密を回避するため都市部離れの変化が生じているため、その受入れ先として、住む・働く・憩い等の様々な機能を備えた地元生活圏への拡充が必要である。複数の用途が融合した職住近接やリモートワークが出来る田舎暮らしなどがある。

2.変化や課題の最重要事項と都市政策上の対応策

1.1の過密化を避けたウォーカブルなまちづくりは都市政策の根幹であり、1.2、1.3への影響も大きいため、最重要であると考える。以下対応策を述べる

■選定理由はなくても構いません。それよりも解決策に力点を置いてください。

2.1 一体型滞在快適性等向上事業

本事業により、過密化を避けるため開放的な空間をつくり居心地が良く歩きたくなるまちの形成を目的に、民間事業者等が市町村とともに、滞在快適性等向上区域(以下本区域)を設定し交流・滞在空間を創出する。

・官民一体で取り組むにぎわい空間の創出

・まちなかエリアにおける駐車場出入口規制等の導入

・車道の一部広場化、都市公園の芝生広場の整備

なお、広場等では、テレワーカーの作業場所、フィットネスの場所等利用形態の多様化にも対応していく。

■2の提案はこれで結構です。

2.2 ウォーカブル推進税制

民間事業者等は、本区域で、民地のオープンスペース化や建物低層部のオープン化を行う場合、不特定多数の者が無償で交流・滞在できるスペースを確保することになり、その分の利益が出なくなることを考慮し、固定資産税・都市計画税の軽減措置を講じる。

2.3 都市公園の占用許可の緩和

都市公園は広いスペース等があり、官民連携の交流・滞在を創出し易いが、その占用許可が厳格すぎると活用ができなくなる。このため、占用許可の緩和を図る。具体的には、イベント情報の看板・広告塔設置やカフェ・休憩所等の設置・管理を、都市再生整備計画に基づき、公園管理者が特例的に占用許可する。

3.解決策にかかる波及効果と懸念事項への対策

3.1波及効果

 テレワークの普及により、オフィス需要低下で生じた余剰施設が増える中、居心地が良いまちとして、ゆとりある良質なオフィスの「リアルな場」が増えることで、その余剰施設が活用され、都市の活力を維持・増進させる効果が期待できる。

■3の分析は◎です。

3.2懸念事項への対策

(1) 懸念事項

新たな生活様式に対し、まだ十分な知見やノウハウがない中、意見も多種多様となり、意見がまとまらなかったり、利害が衝突するなどして、居心地が良く歩きたくなるまちの維持ができなくなる懸念がある。

(2) 対策

対策は都市再生推進法人制度を活用し、マネジメントと組織を強化する。まちづくり会社やN P O 等の組織を行政が都市再生推進法人に指定し、専門スキルを有する官民連携まちづくりの担い手を確保し、多様な主体の意見を調整し、事業実効性・持続性を高める。

№14 R3年 建設部門、道路の答案について添削致しました。 2021/09/22

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この答案についての講評

 答案の内容について表現力は素晴らしいです。見識問題は正しく解答ができています。試験結果は、予想通りオールAで合格されました。素晴らしい結果です。建設部門道路技術士としてのプロの答えを表現すればさらに楽勝で合格されたでしょう。ご指摘致します事項は、今後の参考としてください。なお、音声では合否発表前に合格するにはどうするかという視点で申し上げますので若干厳しい語調となることもあり得ます。どうかご了承願います。

 初受験でここまで書けるとは実力がおありです。一方、試験のコツがつかめていないようなのでそこが残念です。一般的に初回受験者が陥りがちな、前置き論や本題とは別な議論、技術士ではなく一般的見解などが多くなる傾向がみられます。戦略的な論文表現がやや弱かったようです。ご自身の努力だけでは、出題者の真意が読み取れず、解答のストライクゾーンに答えるのが難しいためかと思います。まずは記述内容の矛盾や無駄をなくしていけば必ず合格答案に近づけられます。

 必須Ⅰでは、建設部門技術士の技術的視点からの議論が少なくて、一般的な業務マネジメントとなっているように感じます。建設の技術での貢献があればよかったです。選択科目Ⅱ-1は、いずれも正解で、得点できています。Ⅱ-2は、出題者が求めている「経験豊富な技術士像」が十分には打ち出せていなかったようです。問2の手順は問1とダブりがあり、「計画」だけでは手順がよく見えませんでした。ご自身の方針が見えませんので専門家らしさを打ち出すことに苦労されました。Ⅲは、技術コンサルタントとしてどうするか具体的な建設技術の説明があればよかったと思います。この問題の降雪対策ですが、既存の対応ではなく、ご自身のアイデアでその具体的改善策について述べるようにすべきです。そうすればより本題に迫る得点力の高い答案が書けたと思います。

 しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーが十分高いため合格されています。口頭試験に備えて、再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(23分20秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

Ⅰ−2 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮、波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取り組みを加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取り組みを加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

1.激甚化する風水害の被害を防止するための課題

(1)国民の防災意識を高める

気候変動の影響により、1時間に50mm以上の短時間強雨の発生回数は、30年前と比べて1.4倍増加しており、土砂災害や洪水等の被害が毎年のように全国各地で発生している。このため、様々な関係機関が連携、協働して、防災・減災対策を講じていく必要がある。

したがって、危機意識共有の観点から、国民の防災意識を高めていくことが課題である。

■建設部門エンジニアとしての課題が求められていますので、具体的に建設技術を応用してどのように防災対策を講じていくかという提案がほしいです。

(2)AIやロボット技術等の活用

人口が減少している中で、建設業を担う技術系職員も減少しているが、それに反比例して災害は激甚化・頻発化している。限られた人員で効率的に作業を行うためには、デジタル化を推進する必要がある。災害時AI技術による浸水範囲の自動解析や身体的負担を軽減できるパワーアシストスーツの着用、ドローンの活用で被災状況を把握できるようになる。

したがって、技術者不足の観点から、AIやロボット技術等を活用することが課題である。

■AI技術は将来性はともかく実現している分野はごくわずかです。実際問題として建設部門でどのように活用するおつもりですか。建設部門でaiを行うとしても機械学習が非常に困難で、まだ実現しているケースは聞いたことがありません。そのような現時点で実現不可能な技術を提案するということは、技術者倫理にも抵触しますのであまりお勧めできません。

(3)想定を上回る災害への対応

我が国の国土は山地や丘陵地が多く、また河川も急勾配なため、近年の気候変動の影響もあり、土砂災害や洪水等の災害が発生しやすい状況である。また、今後もこれらの自然災害が頻繁に発生することが予測されているため、早期に対策を実施する必要がある。

したがって、制度面や技術面の観点から、想定を上回る災害に対応することが課題である。

■「想定を超える災害」とは問題文の前提にも含まれています。「これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている」という部分がそうです。出題者が求める前提事項ですから課題には相当しません。こうした被害者が求める問題の背景を深く捉えて、「技術者の視点」で具体的に改善の方針を提案することが正解を確実にするためには欠かせません

2.解決策

上記課題のうち最も重要と考える課題は、「(3)想定を上回る災害への対応」である。なぜなら、災害から人々の生命・財産を守り、安全な生活環境を整備する必要があるからである。以下にその解決策を示す。

(1)流域治水対策の実施

想定を上回る災害へ対応するためには、流域治水対策を実施することが解決策の一つである。なぜなら、多様な主体と連携し、ハード・ソフトの両面から対策することで、効果を発揮するからである。

具体的には、雨水貯留施設の設置、利水ダムの事前放流、ダム・遊水地の整備、堤防補強等である。

■いずれも従来から行われている対策そのもののように思われます。「これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策」とはいわゆるresilience対応ということになるかと思います。新たな防災対応の取り組みから提案すべき技術を読み取ってください。

https://www.nied-sip2.bosai.go.jp/

(2)強靭な道路ネットワークの構築

想定を上回る災害へ対応するためには、強靭な道路ネットワークを構築することが解決策の一つである。なぜなら、災害時に救助活動や物資の輸送等を途切れさせてはいけないからである。

具体的には、高規格道路のミッシングリンクの解消や4車線化の整備、高規格道と主要国道とのダブルネットワークによる機能強化対策等である。

(3)ライフラインとなるインフラの強化

想定を上回る災害へ対応するためには、ライフラインとなるインフラを強化することが解決策の一つである。なぜなら、防災拠点となる道の駅等の施設が、被災者等を受け入れる必要があるからである。

具体的には、下水道管路、下水処理場の耐震補強や地下鉄駅の電源施設の浸水対策等である。

3.解決策を実行しても新たに生じうるリスクと対策

上記解決策を実行しても新たに生じうるリスクは、ノウハウ不足である。なぜなら、多様な主体が多く、新技術の活用等、情報を一元的に集約する必要があるからである。

■ノウハウ不足とは問題となる要因の1つに過ぎず、これ自体がリスクとは思えません。リスクとは経済的なマイナス効果を含むような発生頻度の小さい現象です。予測困難な事象なので、技術士問題として問われてます。したがってあまり想像に難くない話はリスクとは言いにくいです。

上記リスクの対策として、インフラメンテナンス国民会議を活用することである。なぜなら、多様な主体と連携でき、産学官民が持つAI技術による画像診断や衛星データを活用した自動運転技術等の新技術を利用でき、効果的に事業の進捗が図れるからである。

4.業務として遂行するに当たり必要な要件・留意点

①技術者倫理の観点

人々が安全・安心して生活するためにも、強靭な国土を作り、適切な施工、維持管理に努めていくことが重要であり、公益を最優先として取り組み、公共の安全を確保していく必要がある。

■これは技術者倫理の原則の心構えを描いたものだと思います。ここで求められる要件とは、問2で提案した流域治水や強靭なネットワークを作るにあたって、「ただ普通に行うのではなく、技術士にふさわしく技術者倫理も高めて行うためには、あなたは何を行ないますか」という意味です。

②社会の持続可能性の観点

人々の暮らしを支えるためには、道路等のインフラの管理が欠かせない。新技術を活用する等効率的に管理し、将来世代へ適切に引き継ぎ、環境保全を図りつつ、持続可能な社会を構築していく必要がある

■こちらも心構えを表した内容となっています。技術士にSDGsが求められています。

Ⅱ−1−4 土工工事において施工プロセスの各段階でICTを全面的に活用する工事をICT施工というが、ICT土工の効果を2つ説明せよ。またICT土工における出来形管理の手法を具体的に2つ挙げ、それぞれ概要を説明せよ。

1.Ⅰ T土工の効果につい

(1)生産性の向上(正確な土量計算、時間短縮)

■アンダーラインはなくても構いません

 レーザースキャナー等を用いて、現場の状況を3次元点群データとして取り扱うため、従来の管理測点からの平均断面法で算出していた土量計算よりも正確に測定することができる。

 また、従来の測量に比べて、人員や測量時間が大幅に削減できる効果がある。

■ 内容的には非常に結構です。 充分得点が期待できます。

(2)安全性の向上

 従来は、施工時に丁張を設置していたが、ⅠT土工となることで、丁張の設置作業や計測業務をする必要がなくなる。

 このため、作業員がローラーやバックホウ等の重機との輻輳作業がなくなり、挟まれ等の接触事故が減少し、安全性が向上する。

2.ⅠT土工における出来形管理の手法

(1)面管理

 3次元点群データにより面管理での合否判定を可能とした。このことで、盛土の締固め度の管理をローラーの転圧回数とする等、施工のスピードアップ、管理の省力化につながっている。

(2)法面管理

 3次元設計データから、法面勾配を判断し、バックホウをマシンコントロールすることで、バケットが自動で動き、必要以上に削らない等、効果を発揮する。

↓末尾の「以上」は不要です。

 以上

Ⅱ−2−1 近年、未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路等の安全確保に関心が高まっており、ある市街地においても生活道路を含めた緊急的交通安全対策が検討されている。この対策の担当責任者として、下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

1.調査・検討すべき事項

(1)道路幅員の調査

 道路内の空間で再配分が可能か検討するため、道路幅員、歩道の有無、路肩幅員等を調査する。

(2)交通量の調査

 自動車(大型車・普通車)、自転車、歩行者の交通

量を調査する。

(3)過去の事故を調査・検討

 自動車対歩行者、自転車対歩行者等、原因者がわかるように調査し、対策内容を検討する。

(4)通学路の調査・検討

 通学路の有無について調査する。通学路でない場合は、路肩のカラー舗装が可能か検討する。

(5)電柱の調査・検討

 道路内の電柱の有無について調査する。幅員が狭い場合は、民地への移設等も含めた検討する。

(6)用地の調査

 道路に隣接する用地について、拡幅する場合の実現可能性について調査する。

2.業務を進める手順

(1)調査・検討を行う 

 上記1の(1)〜(6)について、現地調査や既存資料、交通管理者、電線等の占用者、法務局等に問い合わせ、詳細に現状を把握する。他市等で参考となる事例があるか、問い合わせる等工夫する。

■調査検討では問1と同じで、ダブリの内容は不要です。それより作業はどう進めるのですか。時系列に4〜5の手順を示すのが良いでしょう。

(2)計画を作成する

 調査・検討結果をもとに、道路幅員構成、歩道の設置有無等を計画する。生活道路であり、抜け道として利用する通過車両も多く、スピードも出て危険であれば、ガードレール等の防護柵を設置し、物理的に分離する。通過交通の速度を抑制できるよう、ゾーン30の整備について交通管理者と協議を行うなど、より実効性の高い計画となるよう努める。また、ビッグデータを活用する等して、急発信、急ブレーキ、抜け道としている等、潜在的なリスクを把握して計画を作成すること等に留意する

■作業の手順が「計画」だけではよく見えません。〜の留意点にふさわしい手順の項目を挙げてください。

3.関係者との調整方策について

 業務を効率的、効果的に進めるためには、道路管理者、警察、学校、地元住民、占用者等の関係者と早期から協議等を実施することである。そうすることで、ピンポイントの要望箇所を把握でき、対策内容について警察も含めて合意でき、早期に事業着手できるからである。また、ハンプや狭さく等の通過交通の速度を抑制する物理的デバイスは、有効であるが、地元の理解や協力が不可欠なため、協議会を通じて合意できることは大きなメリットである。また、関係機関と誤った認識とならないよう書面でのやりとりとすることやウエブ会議等でリアルタイムに協議することで事業の円滑化につながる。さらに、地元にはフォトモンタージュ等を活用して完成形を明示すれば理解も深まる。

■協議会、ウエブ会議といった会議形式の工夫などではなく、2で述べた提案を効率化するための中身の議論をするようにしてください。具体的には下記項目について技術士、プロマネにふさわしい取りまとめ案を示すことです。

道路幅員構成

ガードレール防護柵

ゾーン30の整備

ビッグデータ活用

Ⅲ−1 

令和2年度の冬は、大雪や短期間の集中的な降雪が発生し、関越自動車道や北陸自動車道において大規模な車両滞留が発生した。このように、ひとたび大規模な車両滞留が発生するとその解消までに長時間を要し、結果として社会経済活動に多大な影響を及ぼすとともに、ドライバーや同乗者の生命が脅かされる事態にもなりうることから、大規模な車両滞留を徹底的に防止することが求められている。

 このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)降雪に伴う大規模な車両滞留を徹底的に防止するため、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

1.大雪時の大規模な車両滞留を防止するための課題

(1)ドライバーへの呼びかけ・協力の要

短期間の集中的な大雪時に大規模な車両の停滞が繰り返し発生し、解消までに数日間を要するケースもあった。このため、国民一人一人が降雪状況に応じて道路の利用を控える等、国民が通行止めの必要性を理解し、道路の抑制にと努める必要がある。

したがって、道路の利用抑制の観点から、ドライバーへの呼びかけ・協力を要請することが課題である。

■必須科目の問1「国民の防災意識を高める」と同じです。ドライバー協力の必要性を否定はしませんが、しかし建設道路の技術者としての提案が見えません。逆に国民に依存するという意味からは消極的な印象を与えかねませんのであまり好ましくありません。

(2)関係機関の連携の強化

大雪時の対応について、国、地方公共団体、道路管理者、警察、消防、自衛隊等の関係機関が果たす役割を明確にし、連携を強化する必要がある。特に短期間の集中的な大雪時の対応について、通行止めや滞留者の救出活動等の実効性を高めるため、合同での訓練や情報収集を連携して行い、道路利用者に適切に周知できるよう情報の発信方法等を工夫する必要がある。

したがって、危機意識共有の観点から、関係機関の連携を強化することが課題である。

■連携強化するのは何のためですか。よく産官学の連携とか言われますかそれは各主体が独自の考えに基づいてコラボレーションするその結果ベストの提案を築き上げるための取り組みです。連携する前に何を提案するかといった目的を示す必要があります

(3)道路管理者等の取組の強化

気候変動の影響により、積雪深さが過去最高を更新するなど、短期間の集中的な大雪が局所的に発生している。道路は物流を安定的に輸送し、人々が生活を送る上で欠かせない重要なインフラであり、常に機能する必要がある。しかし、交通の確保を優先し、通行止めをちゅう躇した結果、大規模な車両滞留を引き起こした事例もある。

したがって、安全・安心な通行を確保する観点から、道路管理者等の取組を強化することが課題である。

■当事者である道路管理者の取り組みは重要かと思います。しかしこの問題ではその道路管理者がどうあるべきかが技術士に問われているわけです。自身がコンサルタントとして道路管理者にどうあるべきか、課題を示すとしたら何を提案しますか。それが答えです。

2.解決策

上記課題のうち最も重要と考える課題は、「(3)道路管理者等の取組の強化」である。なぜなら、人命を最優先し、大規模な車両滞留を徹底的に回避する必要が重要だからである。以下にその解決策を示す。

(1)ソフト対策の実施

道路管理者等の取組を強化するためには、ソフト対策を実施することが解決策の一つである。なぜなら、多様な主体と早期に連携することで、効果の高い対策を実施できるからである。

具体的には、段階的な行動計画を示すタイムラインの作成や地域における除雪体制の強化、除雪作業を担う建設会社の確保、タイヤチェーン装着の徹底、出控え等の要請等大雪時の行動変容等である。

■ソフト対応とはこのようなモノによる対応ではなく、アイディアやプログラム仕組み改善によって行うことを指します。タイムラインの作成は意義が高いと考えます。除雪会社の確保やタイヤチェーンに発散せずに、根幹となる考え方を中心に提案すれば専門的内容に近づけたと思います。

(2)ハード対策の実施

道路管理者等の取組を強化するためには、ハード対策を実施することが解決策の一つである。なぜなら、災害時の救急活動や物資の輸送等を途切れさせてはいけないからである。

具体的には、高速道路や主要国道の4車線化や渋滞の起点となりやすい交差点へのカメラの増設、ロードヒーティング等の消融雪設備の整備、Uターン路の整備、路外への救助場所の整備等である。

■ハード対応は確かに重要です。ただしこれまでやってきたことと同じことをしていては効果が期待できません。現状の対策の何処に問題があるか、それを分析して改善するような提案が必要かと思います。

(3)新技術の活用

路管理者等の取組を強化するためには、新技術を活用することが解決策の一つである。なぜなら、限られた人員で効率的に作業を行う必要があるからである。

具体的には、AIを活用した交通障害の自動検知システムの開発、タイヤチェックの導入、気象予測技術の向上、衛星データ活用の除雪車の自動運転化等である。

■前置きの三行を無くして、新技術の中身をもう少し具体的に提案できれば良かったのではないでしょうか。新技術が必要とされていることは間違いないことですし、一方どのような技術の実効性が高いかということは技術士の提案にふさわしいかと思います。

3.解決策を実行しても新たに生じうるリスクと対策

上記解決策を実行しても新たに生じうるリスクは、ノウハウ不足である。なぜなら、大雪の定義は地域によって異なるため、大規模な車両滞留を引き起こす大雪は、全国のどの雪国でも発生する可能性があるからである。

■「ノウハウ不足」ではリスクとは言いにくいです。理由は必須科目1と同じです。このような自身の提案に対する見直し、すなわちセルフチェックの練習を積むことが大事かと思います。当面の問題ではなく、提案が完成した時点で予想外の問題が生じるからです。総監の5つの管理、経済性管理、人的資源管理、情報管理、社会環境管理、安全管理などの視点で考えると何かしらリスクが浮かび上がると思います。

上記リスクの対策として、地域の特性に応じた対策を実施することである。なぜなら、雪の降り方や道路状況は地域毎に異なるため、具体的かつ効果的な実行計画を策定できるからである。

具体的には、多様な専門分野の有識者で構成された検討会の実施や道路利用者からの意見聴取等である。この地域特性を踏まえた取組は、他の地域へも水平展開し、情報共有することが重要である。

■専門家、有識者から意見をこうという方法は現実に問題解決の手法としてよく執られる方法ではありますが、しかしこうした第3者に依存すればするほど自らの貢献が小さくなってしまいます。そもそもこの試験が技術士の課題解決能力を図ることが目的ですから、他者に依存した提案は減点される危険性がありますのでお勧めできません。

№13 R3年 建設部門、鋼構造及びコンクリートの答案について添削致しました。 2021/09/19

答案の一覧>

この答案についての講評

 答案の表現力は良く、見識問題では正しく解答ができています。しかし、試験結果は、オールBで不合格でした。大変残念な結果です。建設部門鋼コン技術士としてのプロの答えを表現すれば合格できますし。音声ガイドでもご指摘致しますので、指摘事項は今後の参考としてください。

 今回、初めての受験でここまで書けるとはさすがでした。ただし、試験の戦略がつかめていないようなので残念です。一般的に初回受験者が陥りがちな、前置き文が長くなる傾向がみられます。戦略的な論文表現がやや弱かったようです。ご自身の努力だけでは、出題者の真意が読み取れず、解答のストライクゾーンに答えるのが難しかと思います。まずは記述内容の矛盾や無駄をなくしていけば必ず合格答案に近づけられます。

 必須Ⅰでは、建設部門鋼コン技術士の課題の議論が少なくて、一般的な業務マネジメントとなっているように感じます。建設の技術での貢献があればよかったです。選択科目Ⅱ-1は、いずれも正解で、得点できています。Ⅱ-2は、出題者が求めている「経験豊富な技術士像」が打ち出せていなかったようです。調査や検討に終始して、結局ダンパー設置だけに小さくまとまってしまいました。ご自身のアイデアがまとまらないままでは専門家らしい提案は難しかったと思います。Ⅲは、ICT、BIMはともかくとしてそれらを具体的に建設技術としてどう活用するかの説明があればよかったと思います。この問題の主題はICTですが、ご自身のアイデアでその具体的展開について述べるようにすべきです。そうすれば本題に迫る得点力の高い答案が書けたのではと思います。

 しかしこうした弱点があったとしても、コンピテンシーを高めていけば誰でも合格できます。再現答案を修正して、まずは真の正解を確認されるようにしてください。

 技術士試験では、講師の言うとおりに語句を直しているだけでは合格出来ません。大事なのはご自身で正解を感じ取る、そして行動(提案)することです。この感覚を早く習得されて、合格を勝ち取ってください。ただし1回で合格するには正しく学ぶ必要があります。本講座ではマンツーマンコーチングで技術士コンピテンシーを引き出して一発合格するための指導をしておりますのでご参考にしてください。

 音声ガイドによるコーチング指導内容(21分39秒)がダウンロードされますのでお聞きください>

問題  Ⅰ-2 

 近年、災害が激甚化・頻発化し、特に、梅雨や台風時期の風水害(降雨、強風、高潮・波浪による災害)が毎年のように発生しており、全国各地の陸海域で、土木施設、交通施設や住民の生活基盤に甚大な被害をもたらしている。こうした状況の下、国民の命と暮らし、経済活動を守るためには、これまで以上に、新たな取組を加えた幅広い対策を行うことが急務となっている。

(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4)前問(1)〜(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

(1)風水害による被害を幅広い対策により防止又は軽減するための課題  

■見出しは簡潔に1行とするのが良いでしょう

国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進

 我が国の建設インフラは、高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、今後一斉に老朽化を迎えることが懸念されている。また、人口減少による人手不足及び技術者不足により、計画的なメンテナンスが実施できず災害時においてインフラ施設の機能が適切に発揮できないことも懸念されている。そのような労働力が不足する中で老朽化の進むインフラ施設を効率的にメンテナンスするために、建設現場においてもICT技術を活用したデジタル化等の推進が課題となっている。 

■課題の背景、理由が7行と冗長で本質が2行では説得力が弱いです。背景の説明に終始すると自身の提案がないため消極的な印象を与えます。

②予防保全型インフラメンテナンスへの転換

 全橋梁のうち約1割が早急に修繕等の対応が必要な状況であり、また、今後の維持管理・更新を「予防保全」により行った場合、「事後保全」と比較して1年あたりの費用は約5割縮減される。そのため、我が国の財政状況が厳しい中で災害に強いインフラ施設の構築のために予防保全型インフラメンテナンスへの転換が課題となっている。 

■ここも課題の前置きが長く、本質は1〜2行となっています。

③警戒避難体制及び災害関連情報の強化

 各地域において、ハザードマップの整備がされているにもかかわらず、避難の遅れにより多くの被災者が発生している。国民一人一人が自分に影響する災害リスクを認識するとともに、行政側は切迫感を感じる防災情報を提供することや線状降水帯の予測精度向上など災害関連情報を強化することが課題となっている。

■国民の課題は不要です。技術士としてどう改善するかが問われています。

(2)最も重要と考える課題と複数の解決策

 最も重要な課題を(1)①の国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進と考え、以下にその解決策について述べる。

①  ドローンの活用によるインフラメンテナンス

 災害時においてもインフラ施設が適切に機能を発揮できるようにICT技術を活用した効率的なメンテナンスが必要であると考えられる。その中にドローンを活用したメンテナンスが考えられる。ドローンを活用してインフラ施設を画像撮影し自動で解析することで、ひび割れの検出や塗膜損傷の有無などを判断しデータ化することで効率的なメンテナンスが可能となり、災害時においてもインフラ施設の機能が適切に発揮されるものと考えられる。

■「ICT技術活用」では広すぎて何のことかわかりません。具体的に要素技術を展開するように

②  センサーやAIなど新技術を活用したメンテナンス

 これからの我が国の労働力が不足する中で効率的なメンテナンスを行うには、新技術やロボットを活用したメンテナンスが必要であると考えられる。センサーを劣化の著しい箇所や構造体の重要な部分に取り付け損傷度をデータ化することやドローンやセンサーによりデータ化された情報をもとにこれまでの維持管理に関するあらゆるデータをインプットしたAIにより劣化診断や余寿命予測を行うことで効率的なメンテナンスが可能となり、災害に強いインフラ施設の構築が図れると考えられる。

■センサーやAIというパーツ、単発のソフトではなく建設技術提案としての「柱」を1〜3にまとめて挙げるように

(3)新たに生じうるリスクとそれへの対応策

 ドローンやセンサー、AIの活用においては、設備を導入するコストが必要となり企業の経営を圧迫するリスクや/AIなどの判断により、検討途中の過程がブラックボックス化され効果の立証が不透明になることや内容を理解できる技術者が減るリスクもある。

■コストはすぐわかることですし、AIのブラックボックスは前提です。リスクになりません。

 その対応策としては、設備のレンタルや共同利用など設備を利用しやすい環境を作ることやIT企業や研究機関など産学官が一体となって技術開発に取り組み効果を立証する制度を構築することやIT分野の企業と連携して技術者を育成することなどが考えられる。

(4)業務遂行に当たり必要となる要件・留意点

①技術者としての倫理の観点

 ドローンやセンサー、AIの活用においては、データ化された情報をあらゆる担当者に引き継ぐことが必要不可欠であるため、個人や組織が高い倫理観を持ってデータを扱う必要がある。   

■高い倫理観でデータを扱うとは「技術者倫理」そのものであって目的みたいなものです。そうではなく要件とは技術士として、他者がするより「私は○○という巧みな方法で技術者倫理を高める」という提案です。

③  社会の持続可能性の観点  

■後世に引き継ぐための答えを求めているわけではありません。「社会の持続可能性」とはSDGsのことです。単に知識やスローガンではなく、具体的な実践においてこうした考えを取り入れていくことが求められています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

 ICT技術により適切にインフラ施設をメンテナンスし後世に引き継ぐことは、社会の持続性を高めるため、デジタル人材の育成の構築が必要な要件となる。

■「社会の持続可能性の観点からの要件」とは、ご自身が技術士として、問2の解決策「ドローンやセンサー、AI」を効率的に活用するため、手で普通に行うのではなく、社会の持続可能性も高めて行うため、如何に巧みな対応をする考えがあるかが問われています。

■末尾の「以上」はなくても構いません。

以 上

問題文 Ⅱ−1−2

 鋼部材を高力ボルトにより連結する方法において、応力伝達機構から分類される接合方法を2つ挙げ、接合方法ごとに特徴と設計及び施工上の留意点について述べよ。ただし、高力ボルトと溶接を併用する接合方法は含めないものとする。

(1)摩擦接合

①特徴

 摩擦接合は、鋼材片を締め付けた材片間の摩擦力によって応力を伝達する接合法である。

 摩擦抵抗を超えた力が加わりすべりが生じるまでは、ズレが発生しないので高い剛性が確保され、桁同士の接合などあらゆる箇所の接合に適用される。

■いずれも正解です。得点できています。

②設計及び施工上の留意点

 必要な摩擦抵抗が得られるように粗面処理やショットブラストなど適切な接合面処理が必要である。

 また、締め付け時においては、締付トルクや軸力などの管理が必要である。

 また、接合面処理以外にも防錆・防食として、溶融亜鉛メッキや金属溶射を施すことにも留意する。

(2)支圧接合

①特徴

 支圧接合は、材片間の摩擦力とボルト軸部とボルト孔壁の支圧力によって応力を伝達する接合法である。高力ボルトを支圧接合として採用する場合には、建築基準法による国土交通大臣の認定を受けなければならない。

②設計及び施工上の留意点

ボルト軸部とボルト孔にクリアランスがあれば初期変形が発生するため、すき間が生じないように施工することに留意する必要がある。

Ⅱ-2-2 建設から30年以上が経過し、老朽化が進んだ構造物に対する耐震補強を実施することとなった。既設構造物の性能を評価し、現行の基準類を満たすように耐震性能を向上させる目的で、あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況を設定し、老朽化の状況を踏まえた耐震補強を行ううえで、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

(1)対象とする既設構造物と老朽化の状況及び耐震補強を行ううえで調査、検討すべき事項 

■見出しは1行以内に短くされるのが良いでしょう。試験答案ですので問題の項目は明白です。ムダな記述は省きましょう。

 対象とする既設構造物としては、鋼橋設備上部工の鋼桁部を対象とし、長年の使用により自動車や風などによる繰り返し荷重を受け、疲労き裂が多数発生しているとともに、設備の利用頻度も多くなり設備の重要度が高まったことや最新基準で設計を見直す必要が生じたため耐震補強を行うこととなった設定とする。

■だけ述べれば十分です。はある意味、問題文の前提なので当然です。何が更新されたか具体的に取り上げると良いでしょう。

 その耐震補強を行う設計担当者として、以下に調査、検討すべき事項について述べる

 耐震設計では、設備の重要度や要求性能を設定し、耐震レベルや耐震方法を選定する必要があるため、設計条件については関係者との協議や調査が十分必要である。    

■関係者との協議は問3で求められているのでここでは不要です

また、地震動レベルに応じて塑性変形が許容されるのか弾性限度内に収めるのか検討する必要がある。なお、地震動レベルは、レベル2地震動の耐震補強を行うものとする。 

■簡潔にまとめるため、「○○を調査し、○○を検討する」という文で書かれると良いでしょう。

(2)設計業務を進める手順

 耐震補強として、既設構造物に制震ダンパーを設置する際の設計手順について、以下に述べる。

■業務範囲を題意に反して、故意に限定したため、耐震改修の業務がダンパーの設置にすり替わっています。別な見方をしますと、問題を狭めて簡単にしていると受け取られ、消極的な印象を与えます。業務の全体形を示してマネジメント力を示すべきかと思います。

①設計条件の確認

 発注者や施設管理者に設備の重要度を確認し、重要度に応じた耐震レベル及び損傷度を確認し、設計条件を整理する。

②耐震解析法及び耐震方法の検討

 鋼構造物の要求性能である構造安全性や復旧性を設定し、耐震解析法や耐震方法について検討する。

③既設構造物の資料収集

 既設鋼構造物の図面や構造計算書を入手し、制震ダンパーの種類や設置箇所について候補を選定する。

■方法論の記述に終始しているようで、留意点がかかれていません。また、①②③は問1ともダブる前準備にすぎません。

④現地調査による設置箇所の検討

 現地調査を行い、制震ダンパーを取り付け可能な箇所について検討し、設置箇所を選定する。設置箇所の選定に際しては、河川断面を阻害しない場所を選定することに留意する。

⑤耐震解析及び制震ダンパーの選定

 耐震解析を行い、制震ダンパーの規格や仕様について検討する。レベル2地震動においては制震ダンパーの塑性変形が許容されるが、レベル1地震動に対しては弾性限度内に収まる設計となることに留意する。また、制震ダンパーの維持管理を考慮して選定するなどの工夫を行う。

■制震ダンパー取り付けの留意点としては「河川断面を阻害しない」というような定性的ではなく、耐震的に有利な設置技法を提案してください。またダンパー形式の特定やエネルギー吸収に言及すると良いでしょう。「レベル2で塑性、レベル1は弾性・・」とは耐震設計の基本みたいなことです。

(3)関係者との調整方策

 制震ダンパーの設置場所によっては河川管理者との協議が必要になるため、発注者を通して河川管理者との協議や調整が必要である。

 また、粘性ダンパーや鋼製ダンパーなど制震ダンパーの種類によっては、維持管理や点検方法が異なるため、施設管理者と将来の維持管理方法について事前に調整することが効率的に進めるために必要である。

■調整の必要性が述べられているだけで、「私が技術士にふさわしくどのように巧みに」調整するかといった、技術士に求められるプロマネの取りまとめのテクニックがかかれていません。

Ⅲ-2 我が国は、大量の鋼構造物やコンクリート構造物の維持管理が社会問題となっている。特に、従来からの事後保全型メンテナンスには限界が叫ばれ、持続可能なメンテナンスサイクルの実現に向けて、新しいメンテナンス手法の導入やシナリオの転換が求められている。このような状況を考慮して以下の問いに答えよ。

(1)近年、予防保全型メンテナンスが期待されているものの、未だその推進は十分とは言い難いのが現状である。このような現状に対し、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、その内容を示せ。  (2)抽出した課題のうち、あなたが最も重要と考える課題を1つ選択し、その課題に対する複数の解決策を示せ。  (3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

(1)予防保全型メンテナンスの推進に対する課題

①ICT技術を活用した現場施工の自動化・デジタル化

 我が国の人口減少による人手不足に加え、建設業界においては、熟練技術者の引退による担い手不足が深刻な問題となっている。そのため、予防保全型メンテナンスに必要な定期的なインフラメンテナンスが実施出来ない状況になっている。これを解消するために、これまでの人力に変わり、ICT技術を活用した効率的なインフラメンテナンスを実施することで現場施工の自動化・デジタル化を行い、予防保全型メンテナンスを図ることが課題となっている。

問題点・理由()より課題そのもの()の説明を増した方がよいでしょう。コンピテンシーを高める方法としてその方が有効です。わかりやすい現状の問題点の説明に終始していると、自身の提案がないので消極的印象を与えます。試験官としては、そこは求めていないので退屈します。

②インフラストックの適正化

 我が国の建設インフラは、高度経済成長期に建設されたものが多く、今後一斉に老朽化が進み、修繕等が必要なインフラ施設の急増が懸念されている。また、老朽化が進み修繕もされず使用されていないインフラ施設や利用頻度の少ないインフラ施設も数多くあり、将来にわたる維持管理の負担が懸念されている。地域の利用状況を踏まえつつ、利用していない若しくは利用頻度の少ないインフラ施設の廃止・集約化を行い、インフラストックの適正化を図ることが課題となっている。  

■合格点をとれる良い内容です。ただし、内容、説明がやや冗長です

③点検記録のデータ化

 現在の点検記録は紙への記録のため、資料の散逸により、不具合発生時の原因追及やメンテナンス作業に多くの人員や時間を要している。予防保全型メンテナンスに必要となる計画的なメンテナンスを行うためには、点検記録をデータ化させ、効率的なインフラメンテナンスを図ることが課題となっている。

(2)最も重要と考える課題と複数の解決策

 最も重要と考える課題を上記(1)①のICT技術の活用した現場施工の自動化・デジタル化と考え、以下にその解決策について述べる。

①  BIM/CIMの活用による自動化・デジタル化

 これからの人手不足・担い手不足の中で老朽化の進むインフラ施設を効率的にメンテナンスするには、ICT技術の活用が必要であり、その中にBIM/CIMの活用がある。BIM/CIMの3次元モデルのデータを調査・設計、施工、維持管理の各段階に取り入れ各工程に引き継ぐことでデータの一元管理が可能となる。維持管理の段階においても3次元データを発注者や点検者に引き継ぐことができ効率的なメンテナンスが可能となり、計画的なメンテナンスが図れることで、予防保全型メンテナンスへの転換に繋がるものと考えられる。

■見識、提案内容は十分です。合格点に達しています。ただしやや冗長です。

②  ICT建機の活用による自動化・デジタル化

 BIM/CIMの3次元モデルのデータをICT建機に引き継ぎICT建機を自動制御することで効率的なメンテナンスが可能となり、施工の自動化・ロボット化が図れる。また、無人機械化することで、オペレータが不要となり、熟練技術者の引退による担い手不足の解消にも繋がる。

■BIM/CIMは①と②でダブリです。②は無人機械化に集中した方がよいでしょう。

(3)新たに生じうるリスクとそれへの対策

 BIM/CIMやICT建機などICT技術の活用においては、新たなデジタル機器を扱う必要があり、技術者のスキルとして、建設技術に加え、情報通信やロボット工学に精通した技術者が必要になるリスクがある。 

■新たな技術者が必要となることは、自明の必然的事項です。このようなことはリスクとは呼びません。リスクとは、事前に予測困難で、問2の提案の完成後に経済的損失を伴うようなことが相当します。

 その対策としては、マニュアルの整備や講習会の開催による専門技術者の育成やIT関連の企業から技術者を建設業界に活用することも有効であると考えられる。

 また、ICT技術の活用においては、3次元データを各プロセスの担当者に引き継ぐことが必要不可欠であり、自社や他社のデータを扱い、かつ、扱うデータ量も膨大であることから、高度な情報セキュリティを構築しなければならないリスクやデータを一元的に管理するためのデータ共有システムを構築しなければならないリスクもある。 

■あまり現実的ではない提案のようです。それに「○○を構築する」ではリスクではなく、対策そのそものです。

 その対策としては、IT関連の企業や研究機関、大学など産学官が一体となって技術開発に取り組み、高度な情報セキュリティやデータ共有のシステムを構築することなどが考えられる。

■「産学官一体となって技術開発」とはやや安直です。他者異存ともとられかねません。ご自身が行う提案はありませんか。また、情報セキュリティの開発は情報工学の分野であって建設部門の領域ではありません。建設技術士が情報工学提案では技術士倫理綱領3に抵触しかねません。

(有能性の重視)  3.技術士は、自分の力量が及ぶ範囲の業務を行い、確信のない業務には携わらない。

https://www.engineer.or.jp/c_topics/000/000025.html

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