2017/10/03 (火) 8:05に提出されました。これに対して添削結果は2017/10/05 (木) 11:57にお返ししています。
H29年、 経営工学部門、生産マネジメント科目のV−1問題です。
設計寸法27.75mmの直径の軸をNC旋盤で加工している。工程の管理状態を確認するために、1日5個、20日間のデータを収集した。1日を群として、平均値、範囲を計算したものが表1でありXbar=28.05、Rbar=0.65であった。このデータを元に工程の管理状態を検討するためにXbar−R管理図を作成したい。この軸の上限規格はSu=28.5(mm)、下限規格はSL=27.0(mm)である。
(1) Xbar−R管理図を作成せよ。管理限界線は以下の計算式で求める。
(2) Xbar−R管理図使用することにより、どのようなことが明らかになるかをそれぞれの管理図について説明せよ。また、管理図を用いて工程の管理状態を判定するルールを2つ示し、その説明をせよ。
(3) 収集した100個のデータから分布の検討をするためにヒストグラムを作成したところ、図1のようになった。
管理図及びヒストグラムより、このNC旋盤による軸の加工工程をどのように評価するか。また、もし改善が必要な場合、上限規格、下限規格を考慮して、その方法について記入せよ。
この受講生様は次のように解かれていました。
1. Xbar−R管理図とその作成方法と結果
管理図は、偶然原因によるばらつきを基準として、異常原因によるばらつきを検出することで、工程の管理状態を把握するためにツールである。
まず、R管理図を作成し、各群の値がR管理図の管理限界内であるかを確認する。
R管理図の平均値Rbarを用いて、UCL,LCLを求め、Xbar管理図を作成する。
n=5のとき、A2=0.577、D4=2.114、D3=0.000から、
Xbar管理図:CL=28.05、UCL=28.42、LCL=27.68
R管理図 :CL=0.65、UCL=1.374、LCL=0.00
2.Xbar−R管理図の使用方法と工程の管理状態を判定するツール
1)Xbar−R管理図の使用により明らかになること
Xbar−R管理図は、Xbar管理図で分布の平均値の変化、R管理図で分布のばらつきと変化を見ることにより、分布の変化を確認することができる。
今回のXbar−R管理図は、点が管理限界内にあり、連、傾向、周期の並びのクセがない。従って、当該工程は一応の管理状態にあるとみなすことができる。
2)工程の管理状態を判定するルール
ひとつは、連続6点して増加または減少する場合で、確率的にも明らかに異常である。
もうひとつは、連続する15点が管理限界内で1σの範囲内にあるパターンである。一見良い管理状態と思われるが、群分け・層別の検討やデータ再確認を必要とする。
3.管理図及びヒストグラムからの評価
1)管理図からの評価
各点は管理限界内にあり、連、傾向、周期の並びのクセがないが、R管理図のいくつかの群番号で上側管理限界に近い場合があり、ばらつきが大きいことが懸念される。
2)ヒストグラムからの評価
正規分布であるが、全体的に裾が広がった形で、ばらつきが大きいと見られる。上下限規格の中心値とデータ分布の中心を比較した場合、約0.3oのずれがある。
9個のデータで上限規格越えのデータもあるため、工程能力としては低いと考えられる。
3)NC旋盤の加工工程の評価と改善策
ヒストグラムの分析結果から、加工後の軸寸法のばらつきが大きく、工程能力が低いと考えられるため工程が安定状態にあるとはいえない。
まず、今回収集した100個寸法データから、上限の規格外れとなっているデータの要因を4Mから分析する。その後、4Mの条件と寸法データの相関関係が取得できるように検証評価を行う。ある条件と寸法データとの相関係数が0.8以上となる製造条件に見直した後、軸の寸法データを取得し、ヒストグラムを作成して評価をする必要がある。
見直し後のデータから工程能力を求めて、一定の値(Cpk:1.33)以上であることを確認して、Xbar−R管理図による工程管理を実施していくことを提案する。
上記の答案はほとんど合格圏内に入っている模範解答だと考えております。ただし問題文の要求が、
具体的なNC旋盤による加工工程の改善に関わる提案
であったことを考えると、やや疑問が残ります。なぜなら、提案されている内容がXbar−R管理図による工程管理と、つまり一般的事項であり改善に有効な技術提案とはなっていないからです。
最初からチェックしていきましょう。まず初めに、Xbar−R管理図の説明が書かれていますが、このことは前提事項であって答案に書く必要はありません。いきなり答えを書いていってよいと思います。
次に、「Xbar−R管理図の使用方法と工程の管理状態を判定するツール」では、工程の管理状態を判定するルールが求められていますが、これにはJISの判定ルールがありました。
それに対して提案されている答えは、JISの判定基準の3と4に相当しますので正解といえます。
一方、「3.管理図及びヒストグラムからの評価」では、すでに管理図については記述が終わっているため、ここではヒストグラムからの評価に集中して述べるべきです。重複した内容はあるものの、誤りはないみたいです。
そして最後の「3)NC旋盤の加工工程の評価と改善策」では、データについて分析と評価に終始しているようですが、それだけではなく「NC旋盤の加工工程の評価と改善策」 についてどうすべきか答えなければなりません。Xbar−R管理図やヒストグラムは分析のためのツールはあるものの、その使い方に精通するだけでなく、経営工学部門技術マネージャとしては改善策をどう提案するか、すなわちNC旋盤の加工工程をどう改善するかについて提案しなければなりません。
このような部門ごとの出題者の要求を推論しながら解答することはとても理解しにくいものです。しかしもしそれができれば、解答の前提条件が明らかとなって答えに悩むことがずっと少なくなります。実際解答者の減点の多くが、こうしたよくわからない問題文の設定から生まれているという事実があります。このため、添削のPDFだけでなく音声ガイドによるコーチングによって指導を行っています。そうすることで出題者の意図が明解に伝わって、答え方に誤ることなく合格が早まるということです。
音声ガイドによるコーチング指導内容(9分20秒)がダウンロードされますのでお聞きください>