〒103-0008 東京都中央区日本橋中洲2-3
サンヴェール日本橋水天宮605
営業時間:10:00~17:00
定休日:不定期
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2. 解答者の専門科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造 答案形式
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1.巨大地震対策の課題
1) 耐震設計と建材の革新
過去地震の解明とフィードバックの観点から、耐震設計の高度化と建築材料の強度改良が求められる。建築物や構造物の基礎から構造体、外壁に至るまで、地震エネルギーを効果的に吸収し、分散させる設計原理の適用と、新しい高性能建材の開発である。例えば、免震・制震技術のさらなる進化や、軽量で高い耐震性を持つ複合材料の研究が有効である。こうした技術は汎用的に、構造物自体の耐久性を高め、地震時の損害を最小限に抑える。
2) スマートセンサーと監視システムの導入
近年発達が著しいDX技術導入の観点から、スマートセンサーと監視システムによる健全性確保が挙げられる。建築物やインフラに取り付けられたセンサーを通じて、リアルタイムで構造特性をモニタリングし、異常が検出された場合には早期に対処するシステムである。地震の前兆現象や、地震発生直後の建築物の状態を詳細、広域で把握することで、緊急避難の指示や迅速な補修の決定に役立てる。
3) インフラの多層的保護戦略
レジリエンス強化の観点から、道路、橋梁、水道などのライフラインに対し、粘り強さを増し、冗長性・多様性確保、回復力向上を向上させる。緊急対応計画、代替システム設計、機能回復力の充実がカギとなる。迅速な復旧、代替手段の有効活用、被災者支援と経済援助を組み合わせることで、被害最小化と早期復旧を目指す。地震だけでなく、津波や土砂災害など包括的な災害対応も策定する。
2.最重要課題1)「耐震設計革新」の解決策
1) 高性能免震ダンパーの導入
建築物の基礎と構造フレームに免震ダンパーを導入することで、地震エネルギーを吸収して、大改造することなく耐震強度を向上させる。旧来の液体粘性ダンパー以外に、最新の技術の粘弾性ダンパー、摩擦ダンパー、負剛性ダンパーなど合理的な形式も適用する。
2) 自己修復コンクリートの活用
カルシウムカーボネート(石灰石)生成微生物や化学物質カプセルをコンクリートに混入し、被災時に封活性化し、亀裂を修復する。微小な亀裂も修復し、構造物の耐久性を向上する。コストが高いので、大きな損傷は別途処置し、主に微細な亀裂が予想される用途に使用してメンテナンスコスト削減と長寿命化する。
3) デジタルツインを活用した都市計画
都市モデルをデジタル空間で再現し、災害シナリオ下での挙動を事前に評価し、避難路やインフラの配置を検討し、災害リスクに対する都市のレジリエンスを向上させる。3Dモデリングとリアルタイムデータ分析で、災害時のリスク評価の精度が向上し、迅速かつ効果的な意思決定で、将来の災害に対する備えを大幅に強化する
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
高性能免震ダンパーの導入では、過去にない長周期地震や予想を超えるマグニチュードの地震での倒壊がリスクとして生じうる。免震ダンパーは特定の振動数やエネルギーレベルに最適化されているため、予想外の地震特性に直面した際、その保護機能が十分に発揮されない。
遠方や直下、海溝型など幅広い地震シナリオを想定すると共に、システムの冗長性や多様性を高める。また、地震の予測不能性を考慮して、建築物や構造物の安全性を確保するための追加的な対策も講じる
4.業務遂行に必要な要件・留意点
技術者倫理の観点から免震設計において、設計者として実用的な安全係数を設定し、建築物やインフラの安全性と機能性を確保しつつ、過剰なコスト増加を避け、正確な設計と、長期的安全性を両立する。
一方、SDGsの観点からは、デジタルツイン技術を活用して、リスクが低くかつエネルギー効率や環境への影響も改善できる建材を選定する。グリーンスペースの配置など、環境に配慮した都市開発の方針も立案する。このプロセスを通じて、災害リスクの低減と持続可能性の両方に貢献する。
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答案の評価
答案の性格:実践的で現実的な対策に焦点を当てた内容です。
解答者の性格:現実的な問題解決に重きを置く、実務重視の技術者です。
答案の良いところ:技術的な課題を具体的に挙げ、その解決策を現実的かつ詳細に説明している点が優れています。特に、耐震設計の高度化とスマートセンサーの導入、デジタルツインを用いた都市計画など、最新技術を取り入れた対策が具体的かつ効果的に提案されています。また、リスクとその対応策についても考慮し、現実的なマネジメントプランが示されている点も評価できます。
改善余地のある点:各課題の優先順位について、より具体的なデータや根拠を提示することで、説得力を高めることができます。また、具体的な事例や過去の成功例を引用することで、提案の信頼性と実現可能性が向上します。さらに、解決策のコストや経済的効果についても言及することで、より現実的で実行可能な提案となるでしょう。
我が国は、国土の約75%が山地や丘陵地であるため、鉄道や道路等のインフラでは数多くのトンネルが構築されてきたが、完成後に地山の劣化や地下水の影響によって外力が作用し、盤ぶくれや覆工にひびわれ等が見られるようになってきた。近年、これらを改修する大規模な工事が各種の条件下で長期に亘り行われている。このような変状を発生させない、若しくは変状を改修する工事を効率的に行うため、調査、設計、建設、維持管理及び改修工事の各段階において十分に配慮して業務を遂行することが重要である。これらのことを踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1) 山岳部のトンネルにおいて、完成後に作用する外力の影響に伴い発生する変状の抑制や変状を改修するうえで考慮すべき課題を、技術者としての立場で多面的な観点から3つ以上抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。ただし、地震、地すべり及び近接施工に伴う影響は、対象から除くものとする。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行しでも新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 トンネル 専門事項 トンネル設計 答案形式
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1.山岳トンネルにおける完成後に作用する外力影響
(1)覆工背面の空洞抑制における覆工内圧の確保
矢板工法で施工されトンネルは、経年劣化から矢板腐食を起こし、覆工背面に空洞が生じる。旧来構造の現在技術改修の観点から、覆工背面の空洞化に対し、現在機能の回復から空洞部の充填を行い、地山を復元することにより、覆工と地山を密着させ均一な応力伝達を図る。
(2)偏土圧の作用における構造安定の確保
トンネル軸線と地山との関係により、左右非対称な地山においては、側方からの偏った土圧作用を受ける。トンネル躯体の力学的バランス確保の観点から、トンネル躯体への偏圧荷重を相殺するように、抵抗側に荷重増加(反力)を確保することで、長期的な地山安定を図る。
(3)地下水位をコントロールして付加外力の排除
トンネル完成後の地下水の上昇(回復)にともない、覆工への水圧作用が生じる。地下水圧力回避の観点から、地下水が低下するように、坑内に地下水の誘導(排水)を促すことで、地下水の上昇影響を回避させ、付加外力の発生の排除を図る。
2.「偏土圧による構造安定の確保」の解決策
(1)側方荷重に対する押え盛土
偏土圧は常時側方からの荷重作用を受け、トンネル躯体に変状をもたらす。そこで、トンネル掘削地山の安定に対し、作用荷重と同等の荷重を、押え盛土や人口地山の構築により、抵抗側に作用させ土圧のバランスを図る。
(2)坑内内圧の付与増加
偏土圧作用側の覆工内面から、ロックボルトを打設(増しボルト)することによって、打設ボルトが地山に定着し、発生する軸力により内圧効果を覆工に付与させる。それだけでなく、地山定着したロックボルトの地山改良効果により、地山のせん断抵抗が向上し、見かけの物性改良効果が得られ、抵抗力を増加させて地山安定を図る。
(3)薬液注入による改良
薬液注入により地山の改良を図り、地山の持つアーチアクション(グランドアーチ)効果を発揮させる。それに加えて、地山を改良することで、地山のブロック化を図り、地山全体で側圧に抵抗させて地山安定を図る。
(4)坑内覆工巻立て
内空余裕を利用した内巻補強工にて、覆工の耐力を向上させる。それには、覆工全周にコンクリートを増厚する工法や、内空余裕の制限から、高強度繊維シートを用いた補強ならびに軽量パネルによる巻立て工法を使用する。それにより、覆工耐力が向上し、外力荷重の分散を図ることができる。
3.新たなリスクと対策
(1)新たなリスク
偏土圧対策として、トンネル側方部に新たに構築(現況斜面に腹付け)された盛土に対し、盛土荷重の加算(起動側荷重の増加)から、構築斜面下方の現況安全率が低下し、地すべりが発生する。
(2)リスク対策
① 盛土材料の軽量化
盛土材料の軽量化や改良範囲の制限により、斜面崩壊の安定度を向上させる。
構築物については、人口地山の形成に軽量材(エアモルタル)を用いて、単位体積重量の軽減を図ることで斜面安定度を向上させる。
また、薬液注入における地山改良では、抵抗側領域の改良より、斜面崩壊のすべり円弧の安全率を向上(ずべり不動層を構築)させ地すべりを抑止する。
② 斜面安定対策
新たな荷重増加(盛土等)に対する地すべり発生に対して、斜面の抑止対策により盛土安定を図る。
斜面対策については、抑止工(グランドアンカー工もしくは鉄筋挿入工等)により、抑止力を抵抗側斜面に付加させ、計画安全率Fs=1.20以上を確保できるように抑止する。
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答案の評価
答案の性格:技術的で実践的な解決策を重視し、革新的な技術を積極的に取り入れる内容です。解答者は効率的な解決策を追求する技術者です。
答案の良いところ:「具体的提案で実行力を強化」
非破壊検査技術や耐久性向上のための改修技術を具体的に提案し、実行可能性を高めています。技術の詳細な説明と適用方法が明確で、実践的な解決策を提供しています。これにより、老朽化したインフラの早期発見と効率的な補修が可能となり、インフラの寿命を延ばし、維持管理費用を抑えることができます。
改善余地のある点:「経済性と実例で信頼性向上」
具体的なデータや事例の引用が少ない。各提案の信頼性を高めるために、実際の成功事例や統計データを用いて具体的な根拠を示すことが必要です。また、提案のコストや経済的効果についても詳細に言及することで、より現実的で実行可能なプランとなるでしょう。
問題 建設部門 河川砂防 Ⅱ-1-1
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我が国の河川堤防は、これまで土堤を原則として築造されてきた。土堤とすることの利点および欠点をそれぞれ2つ以上挙げよ。また、土堤の高さ設定に当たっては、計画高水位を加算する必要があるが、現行の技術基準類に示された考えた方に沿って、余裕高に見込まれるべき事象または機能を1つ以上上げ、その内容を説明せよ。
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解答者の選択科目 河川砂防 専門事項 河川計画 答案形式
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1. 土堤の利点
1) 施工の容易性: 土堤は主に土材料を用いるため、材料の調達が容易であり、施工も比較的簡単である。これにより、施工の効率が向上し、工期の短縮とコストの削減が実現できる。
2) 経済的: コンクリートなどの他の防災構造物と比較して、土堤は材料費や施工費が低い。そのため、予算の制約のあるプロジェクトに適している。
2. 土堤の欠点
1) 越水による堤防崩壊: 土堤は越水に対して脆弱であり、越水が発生すると裏法尻に最もせん断力がかかり、堤防崩壊の危険性が高まる。これにより、局部的な崩壊が全体の堤防崩壊につながる可能性がある。
2) 浸透による堤防崩壊: 長時間の水浸しや高い水位の状態が持続すると、土堤の湿潤面が上昇し、すべり破壊や堤体の浸透による崩壊が生じる可能性がある。これに対処するために、堤防の保全と適切な排水施設の設置が必要である。
3. 余裕高に見込まれるべき事象および機能
軟弱地盤が分布する箇所では、堤防の自重による沈下が発生する可能性がある。したがって、沈下分を考慮した余裕高の設定が重要である。具体的には、沈下解析を通じて沈下量を評価し、その分の余裕高を確保する必要がある。これにより、長期的な安定性が確保され、堤防の持続的な機能が維持される。
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問題 建設部門 河川砂防 Ⅱ-2-1
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解答者の選択科目 河川砂防 専門事項 河川計画 答案形式
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1.総合的な土砂管理計画策定に関する拡張提案
1) 調査・検討すべき事項 流域の供給量、貯留量、搬送量 流域全体の土砂の移動量を正確に把握するため、上流側の砂防域からの供給量、ダムや砂防堰堤による貯留量、さらには河川による搬送量を詳細に調査する。これにより、土砂の全体的な流れとその影響を理解し、効果的な管理計画の策定に役立てることが可能となる。また、これらのデータは、流域内での土砂の動きと堆積状況の変化を詳細に把握するためにも重要である。
2) 流砂系全体の土砂構成 土砂の移動に影響を及ぼす要因として、植物の繁茂や土粒子の粒系が重要である。崩壊地の粒度分析やボーリング調査等を通じて、流砂系全体の土砂粒度を把握する。これにより、特定の地域での土砂の動きや、環境への影響を詳細に評価することができる。これらの情報は、土砂移動の予測や対策策定に不可欠であり、特に環境への影響を最小限に抑えるためにも重要である。
3) 災害による土砂排出量の試算 過去の災害履歴を基に、土砂崩壊による供給量を把握し、災害による土砂供給量の試算を行う。この試算により、将来の災害リスクに対応した計画を立てることが可能となる。また、災害リスクの高い地域を特定し、そこに焦点を当てた予防措置や対策計画を立てることができる。
4) 環境データ 土砂管理計画の策定には、生態系や環境への影響を総合的に評価することが重要である。特に重要な種の確認や生態系への影響評価を行い、土砂管理計画が生物多様性や環境保全に負の影響を及ぼさないようにする。
2. 業務遂行手順と留意点・工夫点
1) 必要な対策土砂量の検討 流砂系全体の土砂収支を分析し、洗堀傾向や堆積傾向の箇所を特定し、それに基づいて対策を検討する。この検討には、地域の特性や環境への影響を考慮することが重要である。
2) 土砂移動シミュレーションの実施 2次元河床変動解析による土砂移動のシミュレーションを行い、対策実施後の影響も予測する。このシミュレーションは、対策の効果を評価し、必要な調整を行うために重要である。
3) シミュレーション結果に基づく対策検討 シミュレーションの結果を基に、排砂バイパストンネルの検討や既設不透過型砂防堰堤の透過型への改良など、具体的な対策を検討する。これには、既存の施設の機能向上や新たな施設の建設などが含まれる。
3. 関係者との調整方策
ダムの濁水が漁業へ与える影響に関して、漁業関係者の懸念を考慮し、ダム管理者に対して、漁業期間中の排砂量を減少させるよう提案する。濁度調査を実施し、漁業への影響が少ないことを確認する。通常期には排砂量を増加させ、全体の土砂収支を適切に保つ。このような関係者との協調は、計画の実施における社会的受容性を高めるために重要である。
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問題 建設部門 河川砂防 Ⅱ-2-2
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我が国では、毎年のように、水害や土砂災害等が発生し、甚大な人的被害や経済損失をもたらしている。こうした災害が発生した場合には、地域の1日も早い復興のために災害復旧を迅速に進めることが重要である。また、災害復旧を行う際は自然環境に配慮することが求められている。
そこで、洪水や土砂災害、高潮によって、自治体が管理する施設が被災した際にあなたが災害復旧事業の申請から実施までに携わることになった場合、河川、砂防、海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、以下の問いに答えよ。なお、被災施設は、河川分野は堤防又は護岸、砂防分野は護岸工又は渓流保全工、海岸・海洋分野は堤防又は護岸とし、自然環境に配慮した設計を検討するものとする。
(1)災害復旧の申請に当たって、収集・整理すべき資料や情報について述べよ。併せて、それらの目的や内容について説明せよ。
(2)被災した直後から災害復旧事業の実施までの手順について述べよ。また、被災した直後から災害復旧事業の実施までの作業において、留意すべき点や工夫を要する点について説明せよ。
(3)被災した施設を迅速に復旧するための支援を得るための関係者との調整内容について述べよ
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解答者の選択科目 河川砂防 専門事項 河川構造物 答案形式
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1.収集・整理すべき資料や情報(砂防分野の護岸)
1)被災河道調査:コンクリート護岸の使用を極力抑えた護岸設計を復旧工法に反映させるため、現地調査による被災河道部の詳細な損傷報告や洪水水衝部写真、ビデオ記録等を収集する。河道形状と流体力による水衝部損傷への影響を理解し、洪水水衝部の蛇行河道の安定化による効果的な護岸配置計画を策定する。
2)生物利用の護岸性状調査:生物の移動経路に適した護岸法面性状を把握するため、現地の生態系調査報告書や環境影響評価結果等を収集する。生物の移動経路や生息、生育に適した護岸法面の湿潤性や凹凸形状、空隙等を設計に反映させる。
3)過去の被災要因の調査:過去の災害から被災要因把握するため、土砂災害記録や地質調査、水文データを収集、整理する。掃流力の増加に伴う河床洗堀や土砂流出による被災要因を分析し、河道粗度や護岸配置計画に反映させる。
2.災害復旧事業に実施するまでの手順
1)緊急対応と現地調査設計:被災直後に緊急避難や応急措置を実施する。水衝部による河岸の浸食や護岸の損壊を記録し、洪水水衝部の蛇行河道を復元した復旧工法を検討する。砂礫堆の移動を抑止する蛇行形状の採用により、河床洗堀の進行抑制型の河道形状や護岸配置とする。
2) 自然環境調査と護岸設計:河岸の環境機能を保全するため、河岸表面における湿潤度、緑被率、表面温度、及び開空率などを調査記録し、生物の生息場所・移動経路に適した河岸の物理環境条件を把握する。特に川裏部における非飛翔性生物を想定した寄せ石、植生基盤の保水により湿潤性や温度変動抑制機能を確保する。
3) 災害履歴の収集と流水調整:洪水時の流速増加による洗堀被害防止を図るため、被災護岸の災害記録や水文データ等を収集する。掃流力による河床変動解析を行い、河床に自然石等を配置した粗度上昇による主流速の低減調整を行う。また、土砂流出箇所を想定した緩衝帯を設定する。
4) 復旧計画の策定と持続可能性:災害廃棄物の再生利用や林地残材チップ化による木質バイオマス発電等の資源循環型処理を盛り込んだ復旧計画を立案する。
3.効率的・効果的に進める関係者調整方策
1)測量設計会社:河床変動解析結果から水制護岸工による主流流速を調整する箇所を特定し、復旧護岸設計に反映するよう指導する。また地域在来種の食物網を想定したビオトープ設計にあたり、モニタリング調査等を事前調整する。
2)工事会社:災害廃棄物で発生する流木や木屑等を建築資材等への利用可能な高品位廃棄物及び燃料とする低品位廃棄物に分類するよう指導する。廃棄物焼却熱の製造工場利用に向けた需給マッチングによる廃棄物組成一致や収集運搬ルートの最適化の調整を行う。
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問題 建設部門 河川砂防 Ⅲ-1
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気候変動の影響により頻発か、激甚化する水害(洪水、内水、高潮)、土砂災害による被害を軽減するため、様々な取り組みを総合的かつ横断的に進めている。中でもハード対策の取り組みの1つとして既存ストックを有効活用した対策を計画的に実施する櫃よがある。このような譲許を踏まえ、以下の問に答えよ。
(1)気候変動が、山地域、河川域、沿岸域の水害、土砂災害に及ぼす影響について、各域毎にそれぞれ説明せよ。
(2) 前問(1)で挙げた影響を1つ挙げ、その影響による被害の軽減を図ることができる既存ストックを有効活用した対策を複数示し、それぞれの内容を説明よせ。ただし、対策は、施設の新たな整備や維持管理を除き、既存ストックが有する防災機能の増大、強化を図る対策とする。
(3) 前問(2)で示した対策に関連して新たに浮かびあがってくる課題やリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 河川砂防 専門事項 河川計画 答案形式
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1. 気候変動が山地域他に及ぼす影響
1) 山地域 気候変動による線状降水帯や長時間の豪雨により、山地の地盤が緩み、土砂災害のリスクが高まる。これにより、発生した土砂が住宅地域まで流出し、大規模な被害をもたらす可能性がある。さらに、少子高齢化により山地での間伐が進まず、流木や土砂が河川を塞ぎ、土砂洪水氾濫を引き起こすことがある。
2) 河川域 気候変動による降雨量の増加により、計画降雨強度を超える豪雨が頻発。これにより外水氾濫やバックウォーター現象、湛水型の内水氾濫が発生するリスクが高まる。
3) 沿岸域 気候変動に伴う台風の大型化や強度増加により、高潮災害のリスクが増大。特に満潮時に高潮が発生すると、被害が拡大する傾向にある。
2. 外水氾濫に対する対策
1) 利水ダムの洪水調整容量の増加 VVP法を利用したレーダー等による短時間降雨予測により、降雨量やダム流入量の予測精度を向上。分布型流出モデルを用いてダムへの流入量を予測し、豪雨発生前の事前放流を実施する。
2) 堤防のかさ上げ 地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベースから将来予測降雨を導き、流量を算定。不等流計算から水位を算出し、堤防の計画高を決定して堤防のかさ上げを行う。
3) ダムかさ上げ 湛水水面積の上昇に対応するため、FEM解析による腹付け部の温度解析を行い、補強鉄筋や差筋による補強を実施。これによりダムの洪水調整容量の増加を図る。
4) 浚渫 ダム湖内の土砂を浚渫し、洪水調整容量を増加させる。これにより、ダムの洪水調整能力の向上を図る。
3. 対策に関連するリスクとその対策
高水敷の樹林化 洪水流の流下能力の増加により、土砂の掃流力が落ち、高水敷の樹林化が進む。これが洪水流の妨げとなり水位上昇を招くため、定期的な伐採が必要。
1) 土砂供給バランスの変化 流下能力の変化により河川の土砂堆積機構が変化。河床洗堀や河口部の土砂堆積などの問題が発生する。2次元流況解析により、整備後の土砂堆積や洗堀を予測し、洗堀予想箇所への土砂還元や床固整備を実施する。
2) 河川生態系への影響 瀬や淵の変化により、河川に生息する魚類や植物への影響が生じる可能性がある。多自然型河川工法を用いて自然に近い河道形態を作り、縦断的な瀬と淵、横断的な寄州と淵を設けることで、多様な生物が生息可能な環境を提供する。
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個別の港湾や空港に対し, 施設を中心に中期的に目指す港湾や空港の姿をとりまとめる港湾計画や空港マスタープランについて, 港湾・空港の別を明らかにしたうえで, とりまとめることが必要と考えられる主な事柄を3つ挙げ, その内容を述べよ。そのうえで, 港湾計画あるいは空港マスタープランを作成する主な意義を3つ挙げ, その内容を述べよ。
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解答者の選択科目 港湾及び空港 専門事項 港湾計画 答案形式
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1.港湾計画のまとめ事柄
1)需要推計
位置特性や地域産業の観点から、将来の旅客船入港数や取扱貨物量の需要推計と費用対効果算定を実施することで港湾計画の合理性を評価する。
2)環境保全計画
船舶の燃料補給時に有毒物質が漏洩した場合など、人や水生生物への影響が懸念される項目の対策案を作成することで周辺環境を保全する。
3)航行安全評価
港湾工事及び新規構造物により、船舶の航行に混乱が生じて衝突事故等が発生しないよう、航行ルールを作成し、運航管理を行う。
2.港湾計画を作成する主な意義
1)経済活動の活性化
港湾整備により旅客船や貨物船の入港が可能となることで人や貨物の交流が活発になり、農商工の産業生産が向上し地域経済が活性化できる。
2)維持管理
予防保全が可能となり計画的に施設改修等を行うことで、港湾管理者は港湾の永続的な維持管理ができる。
3)安全性の確保
港湾施設の水深・航路幅の確保などのハード面の対策と航行ルール遵守などのソフト面の対策により、船舶の衝突事故等が減少し港湾の安全性に寄与できる。
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寒中コンクリートとして施工する気象条件に付いて概説し、コンクリート構造物の品質を確保するうえで留意すべき事項を施工計画、品質、材料、配(調)合、練混ぜ、運搬および打込み、養生、型枠及び支保工、品質管理から2項目を選んで示し、それぞれに対する対策を述べよ。
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解答者の選択科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造物の維持管理 答案形式
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1.気象条件
日平均気温が4℃程度となる時期であって、最低気温がマイナスとなる気象条件とする。ただし、日平均気温が4℃以上であっても日中と夜間、早朝の気温差が大きく、最低気温が5℃に低下する場合も含む。目標のコンクリート温度は5-20℃とする。
2.1 留意点1 材料
AEコンクリートの使用を標準とし、かつ早強ポルトランドセメントまたは普通ポルトランドセメントを用い、打ち込み時温度は5~20℃とする。
対策 AE減水剤の空気連行性で耐凍害性を向上させると共に、コンクリート製造箇所が0℃以下の期間は水、骨材を加熱する。
2.2留意点2 養生
熱伝導率の小さい断熱材で表面を覆い保温養生する。外気温が低いときは給熱養生を行う。
対策:断熱ポリエチレンやウレタンの発泡シートでコンクリートを覆う。給熱は、電気温床線などでコンクリート面を加熱し、サーモスタット制御する。コンクリート温度を常時計測して、積算温度式から強度を推定する。
積算温度M=Σ(θ+A)△t
θ :コンクリート温度℃
A :定数10℃
△t :時間
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問題 建設部門 鋼構造及びコンクリート Ⅱ-2-1
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近年,想定を超える自然災害により,インフラ構造物に被害が生じる事例が増加している。今後,新設構造物の設計,既設構造物の補強設計,施工計画等を行う際に,設計荷重を超える自然現象の外カ(超過外カ)が作用したとしても,損傷を制御し, 構造物として必要な性能を確保するために,冗長性の確保や災害後の復旧性に配慮することが求められる。あなたが鋼構造物及びコンクリート構造物を担当する技術者として業務を行うに当たり,下記の内容について記述せよ。
( 1 )対象とする構造物と自然災害を設定し,超過外力に対する冗長性の確保や災害後の復旧性を考慮した調査,構造検討すべき事項とその技術的内容について説明せよ。
( 2 )業務を進める手順を列挙して,それぞれの項目ごとに留意すべき点,工夫を要する点を述べよ。
( 3 )業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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粘性土で構成される軟弱地盤上の道路盛土工事で、特に対策を講ずることなく道路下を横断するカルバートボックスを設ける場合に想定される変状について説明せよ。また、想定される変状への対策方法について2つ挙げて説明せよ。
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解答者の選択科目 施工計画、施工設備及び積算 専門事項 施工計画立案 答案形式
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1.想定される変状
カルバートボックスの接続部の段違いによる変形や、盛土荷重載荷による盛土端部の盛り上がりなどが考えられる。
2.変状への対策工法
(1)支持杭打設
H型鋼による支持杭を構築し、カルバートボックスの基礎とする。支持杭の施工は、クローラクレーンを使用し、バイブロハンマー等で打設する。
支持杭には、先端支持杭と摩擦杭が存在する。先端支持杭は、杭先端部で支持する構造であるため、支持層に到達していることを確認する。摩擦杭は、杭長と杭径で決定されるため、掘削深度を確認する。
(2)置き換え工法
軟弱地盤を良質土へ置き換え、カルバートボックスを支持する。置換え土には、砂や砕石などの良質土を用い、盛土施工と同様にまき出し厚や締固め回数を決定し、締固める。
置換え土に残土が多く含まれて取り除くことが困難な場合には、セメント系の固化剤を撹拌混合して対応する。なお、セメント原料に含まれる自然由来のクロムと、土に含まれる粘土鉱物や有機物によって、水和物の生成が阻害され、土壌環境基準を超える六価クロムが溶出されることがある。事前に溶出試験を行って溶出量を確認する。
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問題 建設部門 施工計画、施工設備及び積算 Ⅱ-2-1
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本護岸整備工事は、大都市郊外の住宅密集地を流れる二級河川に対して必要な計画高水流量を安全に流下させるための河川整備計画の一部である。模式図のように、非出水期に延長70m分の既設護岸設備を撤去し、新たに護岸設備(直径900㎜の鋼管矢板、高さ7mの場所打ちもたれ式擁壁)を新設し、可道を拡幅し河床を設計河床高まで掘下げる工事である。一般道から河川区域へのアクセスは確保されているものとして、本工事の担当責任者の立場で下記の内容について記述せよ。ただし、この河川には水利権・漁業権は設定されておらず、船交通もなく、河川水の活用は防災面での消防水利のみである。(問題文の図は省略します)
(1) 本工事の特性を踏まえて、仮設計画を立案するうえで検討すべき事項を2つ挙げ、技術的側面からその内容を説明せよ。
(2) 本工事の工程遅延リスクを1つ挙げ、PDCAサイクルにおける計画段階で考慮すべき事項、検証段階での具体的方策、及び是正事項での具体的方策についてそれぞれ述べよ。
(3) 本工事の施工中に重機の油圧シリンダーが破損し、漏れた油が河川に流出した。この対応に当たり、本工事の担当責任者として発揮すべきリーダーシップについて、複数の利害関係を列記し、それぞれの具体的調整内容について述べよ。
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解答者の選択科目 施工計画、施工設備及び積算 専門事項 施工計画立案 答案形式
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1.仮設計画を立案するうえで検討すべき事項
(1)鋼管矢板打設方法の検討
打設箇所付近は、民家が近くに存在している。鋼管矢板を打込み工法で打設する場合、矢板の変形や沈下を発生させる可能性があり、それに伴う周辺民家の傾きや沈下の恐れが考えられる。そのため、矢板の打設方法は、振動・騒音を発生させにくいサイレント式の圧入工法をベースに検討する。
(2)場所打ちもたれ式擁壁の施工方法の検討
もたれ式擁壁のコンクリート打設は、河川内で型枠の組立やコンクリート打込み作業を行わなければならず、仮締切り工が必要となる。現河床高のHWLは、鋼管矢板天端付近にあり、非常に高い位置である。そのため、仮締切り工を検討する場合、河積阻害率を確認し、土のうや鋼矢板等から最適な止水方法を選定する。
2.工程遅延のリスクとPDCAサイクル
2-1.工程遅延のリスク
河川内掘削時では、掘削側への鋼管矢板の変形が懸念され、それに伴う民家の傾きが考えられる。
2-2. PDCAサイクル
(1)P 各段階における計測計画
鋼管矢板の頭部変位管理値を設定し、打設、掘削中、掘削完了の各段階での、測定値を計測して管理する。変位が安全限界とする70%値を越えた段階で、切梁を設置するなど計画する。
(2) D 軟弱地盤の掘削
軟弱エリアでの掘削を実施し、掘削速度を調整し段階的に土を取り除いて、鋼管矢板への圧力を均等に分散させる。鋼管矢板に異常が見られた場合、掘削を一時停止し、土砂を埋戻す等の措置を講じる。
(3) C 変形や傾きの原因究明
掘削中は変形や傾き、頭部変位量を計測によりチェックし、地盤の不均一性や水圧・土圧、施工方法の不適切さ等の原因を究明する。急な変位発生の解決過程も記録し、トラブル解決のナレッジとして整理する。
(4) A 土質強度に即した掘削進度指標
本現場で安定的に矢板を打設できる、変位量限界とN値他パラメーターを確認し、今後の施工基準とする。変形や傾きが当初予測とは異なる傾向を示した場合は、現場の想定地盤モデルを修正し今後の掘削に対処する。
3.発揮すべきリーダーシップと具体的調整方策
(1)工事チームとサブコンストラクター
油圧シリンダーに異常が発生した場合に備えて、バックアップシリンダーを設置する。定期的な検査と保守により、損傷を早期に発見し、交換等を行う。このような問題解決と改善策の実行によりチームを率いる。
(2) 発注者と関連ステークホルダー
圧力負荷が検出された場合に自動的にシステムをシャットダウンする機能や、圧力を監視するセンサーを整備し、異常な検出に対応する。
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問題 建設部門 施工計画、施工設備及び積算 Ⅲ-2
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建設業では、令和6年4月から改正労働基準法による時間外労働の上限規制が適用される。建設業をより魅力的なものにしていくためには、建設業に携わるすべての人が、月単位で週休2日を実現できるようにする等、週休2日の質の向上に取り組むことが重要である。このような状況を踏まえ、建設業就業者数に限りがあることや対策に費やすことのできる資金の制約があることを念頭に置いて、施工計画、施工設備及び積算の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)建設現場での週休2日を確保するために、多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。(※)
(※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。
(2)全問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)全問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 施工計画、施工設備及び積算 専門事項 施工計画立案 答案形式
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1.週休2日を確保するための課題
(1)品質管理システムの最適化と柔軟性
管理基準向上の観点から、工程管理を行う上での精度向上の取り組みや、管理基準値を満たすための品質管理、安全管理を実施する。その取り組みとして、2次元図面を3次元図面に変換して、ボルトジョイントの接続手順の検討や確認に活用する。また、バラバラで作成された配筋図面を重ね合わせて、配筋手順の確認に用いる。
(2)先端技術導入による施工効率化
技術革新導入の観点から、ドローンや点検ロボット、ICT建機等の建設DXを活用し、施工効率化を実現させる。効率化させるためには、取得したデータの抽出方法についても検討する必要があり、取得したデータの変換が重要となる。データ変換ソフトを活用し、ワードやエクセルなど汎用性のあるソフトへの変換を素早く行う。
(3)人材配置とコスト管理
積算に基づくコスト管理の観点から、現場業務における工事量の非効率化を防ぐ。非効率化を防ぐため、掘削土留工事では、設計数量よりもロス率が少なくなるように測量機器等を活用して余堀り量を少なくする。また、最適な人材配置を行うため、各工種の作業を実施する前に、過去に経験した作業実績の日報等を参考にする。
2.「先端技術導入による施工効率化」の解決策
(1)ドローンの活用
ドローンを用いて、空中写真により点群データを作成する。作成した点群は、データが膨大となるため、重要度を検討する。重要な箇所は、より詳細な図面が必要となるため、多くの点群データで作成する。一方、重要度の低い箇所は、少ない点群データで作成する。このようにメリハリをつけながら、作成した三次元データを有効活用し、施工効率化を実現させる。
(2)ロボット等によるインフラの点検
コンクリート橋梁などのひび割れ幅等の損傷程度の点検は、ドローンを活用して、点検写真を大量に撮影する。撮影後の橋梁等の診断の実施では、点検画像を基にして、AIを活用し損傷・変状等を自動的に検出する。上記のためには、ドローンの重量と往復飛行経路や距離を計算し、充電計画についても検討しなければならない。
(3)ICT建機の活用
盛土作業等の土工事では、三次元図面データをICT建機に読み込ませることで、自動制御を行うことができる。自動制御には、盛土を構築するための丁張りに必要な法肩ラインを自動検出させる必要があり、事前に法肩データ入力しておく。上記のためには、自動制御による施工誤差等についても、あらかじめ検討しておく。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
(1)新たに生じうるリスク
測量結果や点検結果は、施工する直前の結果ではなく、測量や点検を実施した時期での結果である。そのため、作業直前での測量結果や点検結果を把握することはできない。近年の異常気象による測量後の土砂崩れや、点検後のひび割れ幅の増加等は、把握できずに作業してしまう可能性が生じる。結果的に、最適な補修や補強を行わずに、工事を終了してしまう可能性が考えられる。
(2)それへの対策
①目視による確認や変位計の設置
測量作業や点検作業の実施直後、目視による確認を行い、写真等を撮影し記録する。また、補修対象箇所周辺に、変位計を設置する。点検直後の結果と作業開始前の状況を、目視により確認する。また、変位計を活用して、作業開始までの法面形状やひび割れ幅等の経時変化を把握する。
②シュミレーションによる予測
ドローン等を使用して得られた点検データに、これまでの天候や気温等を入力して、土砂崩れ等が発生した場合における損傷状況をシュミレーションにより予測する。この予測と、目視や変位計等の実測値を確認しながら、現状を理解し事故に対するリスクを軽減し作業を行う。
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大規模災害時における,災害対策基本法に基づく道路管理者による車両移動の措置の概要について説明せよ。また,道路管理者が車両移動を行ううえでの留意点について述べよ。
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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路情報 答案形式
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1. 車両移動措置の概要
近年の水災害の激甚化や巨大地震の発生時、道路被災等により車両の移動が困難となる状況が増加している。豪雨や地震で通行が不可能となるケースも見受けられる。これにより、緊急車両の通行や復旧作業が円滑に行えず、救命救急・復旧活動に支障が生じる可能性がある。
その背景から、大規模災害の発生時、道路管理者が車両移動を行うことを可能とする制度が設けられている。
2. 車両移動を行う上での留意点
(1) 緊急車両の通行
緊急車両の通行を確保するため、道路管理者は車間を詰めることで、空いたスペースに緊急車両を移動させ、通行スペースを確保し、中央帯開口部や路肩に車両を一時的に移動させる。
また、道路の駅やサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)などの防災拠点自動車駐車場の有効活用も含め、通行の妨げとなる要因を最小限に抑える。
(2) 車両の状態記録
道路管理者は車両の現状を詳細に記録し、写真やビデオなどの証拠を残す。車両の損傷や移動に関する責任を明確にするのに役立ち、復旧後に速やかに所有者が迅速に車両移動し、緊急車両の通行を確保できる。
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問題 建設部門 道路 Ⅱ-1-3
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新設道路の設計において、車道における舗装種別を適切に選定するに当たり必要な情報を説明せよ。また、その情報をもとにした舗装種別選定の流れを述べよ。
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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路設計 答案形式
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1.舗装種別を適切に選定する必要な情報
(1)地盤情報
N値やC、φ等の強度パラメータを収集し、軟弱地盤箇所に対して地盤改良を行い、不等沈下等を防止する。
(2)交通条件に関する情報
交通量や大型車混入率等の情報を収集し、疲労破壊輪数を算出して、舗装構成を決定する事で舗装の早期ひび割れ等を防止する。
(3)施工と維持管理に関する情報
供給可能なプラント施設が近傍にあり、十分な品質と施工性が確保される。また、占用物件等将来の掘返の可能性、都市計画など沿線の土地利用に係る情報等を収集し、舗装の選定を行う。
2.舗装種別選定の流れ
(1)舗装種別選定実施区間の設定
視認性や耐久性が求められ区間はCO舗装、施工性や維持管理等に配慮する場合はAS舗装を採用する。
(2)実現可能な舗装種別の抽出(スクリーニング)
施工条件や維持管理、舗装のニーズ舗装(耐久性や路面の透水機能、騒音抑制等)の条件を設定し、舗装種別ごとに総合評価を行い、2~4種程度に絞り込む。
(3)舗装種別のLCC評価の実施
解析期間(一般的に40年)を定め、施工性、維持管理、不等沈下への対応等の12項目を基に舗装を選定し、MCIにより舗装の劣化を把握し、LCCを算定する。
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問題 建設部門 道路 Ⅱ-2-1
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A市における中心駅の駅前において、鉄道とバス・タクシー等の乗り換え利便性向上や各交通機関の待合環境の改善等を目的として、新たな交通拠点(特定車両停留施設)を計画することとなった。この計画を担当する責任者として、下記の内容について記述せよ。
(1)計画を具体化するに当たり,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路情報 答案形式
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1.調査・検討すべき事項
(1)まちづくり等将来計画の把握
交通拠点が備えるべき機能を検討する前提として、まちづくり等の将来計画を把握し、地域の課題やニーズを調査する。
(2)公共交通の利用者数及び施設の状況
交通拠点の整備に係る課題や配慮事項を検討する。
具体的には、乗り継ぎ利便性や待合環境の現状を把握するため、公共交通の利用者数の推移や運行サービス水準、停留所数等の施設の状況を調査する。
(3)道路構造及び交通特性
周辺道路の幅員、車線数等の道路構造や平日休日別、時間帯別の現況交通量等の交通特性を調査する。
調査を踏まえ、交通拠点の整備による周辺交通や広域的な道路ネットワークへの影響を検討する。
2.業務を進める手順と留意点・工夫点
(1) 事業コンセプトの整理
地域の課題やニーズを踏まえ、交通拠点と一体的な範囲を含めた事業コンセプトを整理する。コンセプトは人の回遊、地域のシンボル、災害時の視点、新たなモビリティ等、複数の視点で検討することに留意する。
(2) 交通拠点のゾーニングや機能の検討
交通拠点を整備する際のゾーニングや備えるべき機能、空間の活用、歩行者や車両の動線等、新たな交通拠点の整備方針を設定する。
(3) 整備施設の規模、役割等の具体化
以下のとおり、整備する施設の具体化を行う。
①交通ターミナル:利用する交通モード、施設の機能や規模、配置等を整理する。車両の乗り入れ等の動線の検討に際しては、周辺道路への影響や出入口の円滑性・安全性の確保等に留意する。
②待合空間:休憩設備や情報発信設備、飲食・ロッカー等のサービス設備の配置を検討する。その際、防災拠点としての活用や官民連携による収益性に留意する。
③歩行者デッキ:歩行者デッキの活用等、交通拠点内の歩行者動線を検討する。その際、歩車分離による安全性確保の観点から、施設間を同じレベルでシームレスに接続することに留意する。
3.関係者との調整方策
業務を効率的・効果的に進めるため、道路管理者、交通管理者、公共交通事業者との調整を図ることが重要である。加えて、住民等との合意形成を得ることが重要となることから、計画段階から公開の検討会を立ち上げる。
また、地域の課題やニーズの調査にあたっては、先進的なデータ収集技術やアンケートツールの提案を行い、データの質と量を向上させる。
整備施設の検討では、BIMの積極的な活用により設計の効率化を図るとともに、3次元モデルにより合意形成の円滑化を図る。
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問題 建設部門 道路 Ⅱ-2-2
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市街地部の主要幹線道路における平面交差点では、慢性的な渋滞の解消を目的として交差点立体化事業が進められている。この交差点立体化事業における高架橋(鋼橋)仮設工事の計画を立案し実施する担当責任者として、下記の内容について記述せよ。
(1) 調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3) 業務を効率化、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路設計 答案形式
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1.調査検討すべき事項
(1)基礎工事時における交通規制計画
施工時における交通渋滞を抑制するため、周辺施設の立地状況や交通状況を調査する。その結果を基に、ミクロシミュレーション解析を実施し、昼間と夜間時における車線規制計画の検討を行う。
(2)基礎工事時における迂回路の案内
工事対象区間周辺部における側道や地方道等の整備状況や、交通管制システムにより交通状況を調査する。その結果を基に、経路の分散誘導(空間的分散)を図るハイパースムーズ作戦を検討する。
(3)渋滞抑制のための架設工法の検討
鋼主桁の架設作業は、道路上の一部を閉鎖する必要がある。そのため、架設時において施工ヤードを大幅に縮小可能な立体化工事急速施工技術等の検討を行う。
2.業務を進める手順
(1)準備工(作業帯設置)
地図データからボトルネックとなりやすい地点を避けて迂回路を提案する。交通量-交通密度関係モデルにより交通速度を算出し、渋滞を回避する最適な迂回ルートを提供する。なお、占用工事に伴う交通影響範囲は約2kmのため、その手前に案内看板を設置する。
(2)下部工(基礎工)
橋脚施工時に作業スペースを確保するため、道路用地内にて、可能な限り現況車線を両側に切回す。下部・基礎工をプレファブ化した鋼製橋脚基礎、鋼製橋脚を活用して工期の短縮と施工範囲の縮小を図る。これにより、片側2車線を確保して交通渋滞を抑制する。
(3)上部工(鋼桁架設)
夜間時に規制範囲を拡大して、450tonクレーンを活用して一括架設を行うことを勧め、ベント組立・解体を不要とし、桁架設による通行止め日数を削減する。
(4)アプローチ工
アプローチ高の高い部分には軽量プレキャストブロックを、アプローチ高が低い部分には軽量盛土を採用する。軽量材料を活用する事で大型重機の使用を抑制し、交通規制期間を短縮する。
(5)橋面工(壁高欄・舗装)
下層に防水層の機能を兼ね備えた防水性SMAを、表層に排水性を有する機能性SMAを設け、2層同時舗設型アスファルトフィニッシャにより1層で同時施工を行う。二層同時舗設により工事期間を短縮する。
3.調整方法
2層同時舗設式舗装を実施する際、建設機械のコストは高くなるが、価格の高い表層特殊混合物を薄層化することでコストを縮減、二層同時舗設による工事期間短縮と人件費抑制を図る。また、施工時に大型重機活用によりコスト増加となるが橋梁形式を3径間から1径間として、橋長を短く擁壁区間を長くすることでコストダウンと施工時の規制期間短縮を図る。
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問題 建設部門 道路 Ⅲ-1
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我国では、交通事故の無い社会を目指し、様々な取り組みが行われているが、近年においては、時代のニーズに答える交通安全の取組が一層求められている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)道路における交通安全に係る現状を踏まえ、交通安全の取組について、道路に携わる技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記した上で、その課題の内容を示せ。
(2)前門(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前門(2)で示した全ての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえて考えを示せ。
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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路設計 答案形式
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1.多面的な課題
(1)速度抑制による安全対策
通信技術向上による情報提供の観点から、AIカメラと電光掲示板による注意喚起システムを活用し、車両が規制速度を超過しているかを判別する。判別した情報を電光掲示板へ送信し、判別情報に応じて電光掲示板に注意喚起を表示させてドライバーに速度抑制を促す。また、ハンプ等の物理的デバイスと注意喚起システムを組合せることで速度抑制効果の向上を図り、交通事故発生、発生時における被害の抑制を図る。
(2)一般道路における安全対策
交通弱者保護の観点から、車両と歩行者との接触防止を図るため、速度超過により車両の暴走が生じやすい区間を対象に歩道の設置・拡充、ガードレール等の交通安全施設施設を整備する。また、高齢者や障害者が安全に歩行できるように横断歩道の設置・更新、エレベータ付き立体横断歩道、信号サイクルの更新、路側帯の設置・拡幅を図る。
(3)自転車による交通事故抑制
サイクルツーリズム推進の観点から、自転車道、自転車専用通行帯等を整備して自転車走行の専用空間を確保する。これにより、自転車専用道路のネットワークを確保し、自転車利用者の安全性向上を図る。また、自転車走行空間の整備状況や危険箇所を地図上に示してHP上で公表し、自転車利用者に注意喚起を図る。
2.課題「速度抑制による安全対策」と解決策
(1)生活道路内における交通事故抑制
ETC2.0、CCTV映像、交通監視カメラ等を用いて急ブレーキや速度超過箇所を把握する。
①物理的デバイス
走行速度が30km/h未満となるようにハンプの設置、道路構造上やむを得ない場合はライジングボラードにより道路を封鎖し、接触事故を防止する。対策箇所は、歩車分離構造等の安全対策が未実施な区間や通学路優先する。
②注意喚起システム
車両速度感知可変表示システムを活用して車両の走行速度を抑制する。その際、事前にCGによりドライバーが走行時に電光掲示板を視認でき、車両通行の妨げにならない箇所である事を確認する。
(2)速度超過による車両の暴走防止
道路構造を基に算出した限界速度と、ETC2.0等で収集した走行速度を比較し、反対車線への逸脱が生じやすい山岳ワインディング道路、見通しの良い直線区間において「スピードセーブ工法」、「速度制限舗装」を実施し、車両の速度抑制を促す。また、高速道路の暫定二車線区間においては、ワイヤローブ式防護柵を設置し、暴走時に反対車線への逸脱を防止して交通事故の規模を小さくする。
(3)交差点内における事故抑制
右折待ち車両を避けるための急制動(急ブレーキ・急ハンドル)を抑制するため右折占用レーンを設置する。また、高架下の大型交差点内では、右折レーンをシフトすることにより、右折横断距離を短くして対向直進車の見落としによる右折事故を防止する。交差点内においてインフラ協調による安全運転支援システムの活用、右折占用現示等を設けることで右折車の急ハンドルを抑制し、車両の暴走を防止する。
3.新たに生じるリスクと対応
(1)リスク
スピードセーブ工法の縦断勾配は1~2%と小さいため、センターラインや外側線があってもドライバーが存在を視認するのは困難である。そのため、走行速度を超過して通行する初めての車両に対して、より安全に走行するため、本工法の存在を明示する事が重要である。
(2)対策
通常の路面と異なることを認識できるような路面表示や本工法の進入手前に、運転者に特殊な路面である事を認識される道路標識を設置し、ドライバーに注意喚起を促す。また、警察が地元コミュニティで説明会を開くとともに、HP上で設置位置やCG等を活用して工法の説明を行い、ドライバーに速度抑制を促す。
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問題 建設部門 道路 Ⅲ-2
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建設業では、令和6年4月から改正労働基準法による時間外労働の上限規制が適用される。建設業をより魅力的なものにしていくためには、建設業に携わるすべての人が、月単位で週休2日を実現できるようにする等、週休2日の質の向上に取り組むことが重要である。このような状況を踏まえ、建設業就業者数に限りがあることや対策に費やすことのできる資金の制約があることを念頭に置いて、施工計画、施工設備及び積算の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)建設現場での週休2日を確保するために、多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。(※)
(※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。
(2)全問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)全問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路情報 答案形式
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1.週休2日を確保するための課題
(1)品質管理システムの最適化と柔軟性
管理基準向上の観点から、工程管理を行う上での精度向上の取り組みや、管理基準値を満たすための品質管理、安全管理を実施する。その取り組みとして、2次元図面を3次元図面に変換して、ボルトジョイントの接続手順の検討や確認に活用する。また、バラバラで作成された配筋図面を重ね合わせて、配筋手順の確認に用いる。
(2)先端技術導入による施工効率化
技術革新導入の観点から、ドローンや点検ロボット、ICT建機等の建設DXを活用し、施工効率化を実現させる。効率化させるためには、取得したデータの抽出方法についても検討する必要があり、取得したデータの変換が重要となる。データ変換ソフトを活用し、ワードやエクセルなど汎用性のあるソフトへの変換を素早く行う。
(3)人材配置とコスト管理
積算に基づくコスト管理の観点から、現場業務における工事量の非効率化を防ぐ。非効率化を防ぐため、掘削土留工事では、設計数量よりもロス率が少なくなるように測量機器等を活用して余堀り量を少なくする。また、最適な人材配置を行うため、各工種の作業を実施する前に、過去に経験した作業実績の日報等を参考にする。
2.「先端技術導入による施工効率化」の解決策
(1)ドローンの活用
ドローンを用いて、空中写真により点群データを作成する。作成した点群は、データが膨大となるため、重要度を検討する。重要な箇所は、より詳細な図面が必要となるため、多くの点群データで作成する。一方、重要度の低い箇所は、少ない点群データで作成する。このようにメリハリをつけながら、作成した三次元データを有効活用し、施工効率化を実現させる。
(2)ロボット等によるインフラの点検
コンクリート橋梁などのひび割れ幅等の損傷程度の点検は、ドローンを活用して、点検写真を大量に撮影する。撮影後の橋梁等の診断の実施では、点検画像を基にして、AIを活用し損傷・変状等を自動的に検出する。上記のためには、ドローンの重量と往復飛行経路や距離を計算し、充電計画についても検討しなければならない。
(3)ICT建機の活用
盛土作業等の土工事では、三次元図面データをICT建機に読み込ませることで、自動制御を行うことができる。自動制御には、盛土を構築するための丁張りに必要な法肩ラインを自動検出させる必要があり、事前に法肩データ入力しておく。上記のためには、自動制御による施工誤差等についても、あらかじめ検討しておく。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
(1)新たに生じうるリスク
測量結果や点検結果は、施工する直前の結果ではなく、測量や点検を実施した時期での結果である。そのため、作業直前での測量結果や点検結果を把握することはできない。近年の異常気象による測量後の土砂崩れや、点検後のひび割れ幅の増加等は、把握できずに作業してしまう可能性が生じる。結果的に、最適な補修や補強を行わずに、工事を終了してしまう可能性が考えられる。
(2)それへの対策
①目視による確認や変位計の設置
測量作業や点検作業の実施直後、目視による確認を行い、写真等を撮影し記録する。また、補修対象箇所周辺に、変位計を設置する。点検直後の結果と作業開始前の状況を、目視により確認する。また、変位計を活用して、作業開始までの法面形状やひび割れ幅等の経時変化を把握する。
②シュミレーションによる予測
ドローン等を使用して得られた点検データに、これまでの天候や気温等を入力して、土砂崩れ等が発生した場合における損傷状況をシュミレーションにより予測する。この予測と、目視や変位計等の実測値を確認しながら、現状を理解し事故に対するリスクを軽減し作業を行う。
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近年,上下水道事業では、人口減少に伴う収入の減少、深刻化する人材不足及び老 朽化の増加等の課題に直面している。そのような中,国において,水道では水道施設の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドインを改訂し、下水道では新下水道ビジョン加速戦路での重点項目において維持管理情報等を起点としたマネジメントサイクル (点検・調査,修繕・改築に至るサイクル)の確立の重要性を明記するなど、効率的・効果的 に計画・設計、修繕・改築を行うための維持管理情報等の重要性が一層増している。
このような状況を踏まえ、下記の問いに答えよ。
(1) 上下水道事業での点検・調査等による維持管理情報等の取得,蓄積,活用に関して、技術者としての立場で多面的な観点(ただし、費用面は除く)から3 つの重要な課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2) 前間(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題をその理由とともに1 つ挙げ、 その課題に対する複数の解決策を具体的に示せ。
(3) 前間(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4) 上記事項を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から必要となる要件、留意点を述べよ。
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解説
この問題を解く際には、まず背景理解が重要です。上下水道事業が人口減少による収入減少、人材不足、老朽化といった課題に直面している点を正確に把握しましょう。また、国のガイドライン改訂や新下水道ビジョンの重点項目により、維持管理情報の重要性が一層増していることに注意が必要です。
多面的な観点から課題を抽出する際には、技術者としての継続的な研鑽で得た知見を活用し、普段の課題解決で有効だと考える姿勢を示すことが重要です。技術的課題としては、最新のセンサー技術やAIを用いた点検システムの導入が挙げられます。社会的課題としては、住民参加型の保全活動の強化が必要です。環境的課題としては、持続可能な水資源管理のための新技術の活用が重要です。
具体的な解決策を提示する際には、現場での実務に基づいた技術を活用します。例えば、IoTやドローンを活用した遠隔点検システムの導入、高性能材料による老朽化インフラの補強、管内ロボットを用いた配管内点検・修繕技術などが考えられます。これにより、技術的、経済的、社会的な課題に対して具体的かつ現実的な対策を示すことができます。
リスク分析と対策においては、新技術導入による構造的な不確実性や耐久性の評価問題が考えられます。これに対しては、実験データに基づく耐久性評価の強化やシミュレーション技術を用いた長期的な構造安全性の予測が有効です。さらに、施工時の品質管理や工程管理を厳格に行うことで、工事の信頼性を確保することが重要です。
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解答者の選択科目 上水道及び工業用水道 専門事項 送配水 答案形式
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1.課題
1) 老朽化インフラの効果的な更新と管理
耐久性の観点から、上下水道インフラの老朽化は避けられない課題である。技術者は、劣化したインフラの状態を評価し、その寿命を延ばすための修繕または全面的な更新を計画する必要がある。老朽化した設備の特定と評価には、進んだ診断技術と工学的判断が必要であり、これらのプロセスを通じて施設の安全性と機能性の維持を図る。
2) 維持管理情報の統合的な管理と活用
データ管理の観点から、点検や調査から得られる維持管理情報の統合的な管理と活用は、効率的な運営に不可欠である。技術者は、データの正確性とアクセスの容易さを保証するために、統合データベースシステムの開発と運用に取り組む必要がある。このシステムは、施設の状態、修繕履歴、性能データなどを一元的に管理し、迅速な意思決定を支援する。
3) 持続可能な水資源管理への対応
環境保全の観点から、持続可能な水資源管理への対応は、上下水道事業における重要な課題である。水質保全、廃水処理、雨水利用などの先進的な技術を導入し、水資源の持続可能な利用と環境への影響を最小限に抑えるための戦略を策定する必要がある。これには、新しい処理技術の開発や既存のシステムの改善が含まれ、これらの取り組みは地域の水循環システムと環境保全のバランスを図る。
2.課題1の解決策
課題1老朽化インフラの効果的な更新と管理は、公衆衛生保護、サービスの連続性確保、経済的損失の防止に直結するため最も重要である。
1) 定期的な診断とモニタリングの強化
老朽化インフラの適切な管理には、音響検査や内視鏡検査、地中レーダーを用いた非破壊検査など、最新の診断技術を活用した定期的なモニタリングが必要である。これらの技術により、配水管や下水管などの損傷や漏水を早期に検出し、予期せぬインフラの故障を防ぐことができる。
2) 耐久性と修復性を考慮した材料の選定
インフラの更新や修繕に際しては、長期的な視点から耐久性と修復性を兼ね備えた材料の選定が重要である。腐食に強い素材や環境変化に適応する素材の採用により、インフラの耐用年数を延ばし、長期にわたるメンテナンスコストの削減に寄与する。
3) 総合的なインフラ管理システムの導入
GIS(地理情報システム)を基盤とした総合的なインフラ管理システムの導入により、インフラの位置情報、状態、修繕履歴などのデータを一元的に管理することができる。このシステムを活用することで、維持管理計画の策定と実施の効率化を図り、必要な修繕や更新を効率的に実施することが可能である。
3.新たなリスクとそれへの対応
非破壊検査技術の誤用による診断の誤り、新素材への過信による未知の効果、GIS管理システムのデータ問題が挙げられる。
これらに対処するため、技術研修により診断技術の適切な理解と使用を確保し、新素材使用時は厳密な評価と段階導入で長期影響を監視する。さらに、GISシステムのセキュリティとデータ整合性を強化する定期チェックを実施する。
4.業務遂行における必要な要件
技術者倫理:変更管理ログ機能は、GIS等のシステムでデータ変更(追加、更新、削除)を記録し、誰がいつ何を変更したかを追跡する手法。これにより、公平性と透明性を確保し、上下水道インフラ管理の信頼性を高める。
社会持続性の観点:「耐久性と修復性を考慮した材料の選定」では、環境負荷の低いリサイクル可能な素材や、生産過程でのCO2排出が少ない素材の使用を推進する。これにより、インフラ更新時の資源有効利用とエネルギー効率の向上を図り、長期的な環境保全に貢献する。また、「総合的なインフラ管理システムの導入」でGISを活用することにより、エネルギー消費を削減し、効率的なインフラ管理を実現する。これらの措置により、上下水道インフラの持続可能な管理と次世代への環境継承が可能となる。
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解答者の選択科目 下水道 専門事項 下水渠
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(1)上下水道施設の課題とその内容
1)耐水性の強化
河川氾濫での浸水想定の観点から、水害に対する上下水道施設の機能確保するため、耐水性の強化を挙げる。これにより、河川氾濫を想定した浸水深や河川計画にける中高頻度の降雨で想定される浸水深を設定する。電気設備の上階へ移設、防水仕様設備へ変更、建物全体の耐水化を重点区域で適切に進める。また、浄水場等の耐防水壁を設置することで、最小限に抑える。
2)内水氾濫対策
浸水地域の流入量を抑制する観点から、課題は内水氾濫対策を挙げる。東日本台風では、内水氾濫が多く発生し浸水被害を受けて上下水道施設機能停止となる。そのため、雨水を貯留や浸透させる。また、公園や学校等事業連携による雨水貯留浸透促進や保水機能の高い緑農地の確保を図る。河川と連携し、内水氾濫を防ゲートの設置や堤防かさ上げを行う。
3)浸水ハザードマップ作成
浸水被害の最小化を図る観点から、浸水ハザードマップ作成を挙げる。水害が発生する場所を事前に知ることで被害を最小限に抑える。そのため、想定最大規模降雨153㎜/hに対するハザードマップ作成し被害状況を通達する。住民にルート確認してもらう。
(2)課題「2)内水氾濫対策」の解決策
①治水施設の整備
気候変動で、台風や内水氾濫帯に対応するため、管渠の整備、調整池の新設を行う。これにより、今後の大雨に対応するため、浸水地域における流下能力向上させる。大量の降雨に対応するため、調整池を整備し管渠能力不足を補う。また、河川流下能力を判断し、排水ゲ-トの自動開閉やゲートポンプにより雨水を濃い率的に流下させる。これにより、河川水位が高い場合ゲートを自動で締めて内水被害の発生を抑える。
②雨水流出抑制
市街地外は、水田貯留に貯留し農業用水を活用する、市街地は公共施設や民間施設に貯留施設を設置する。これにより、貯留機能で流出を抑制しする。道路に浸透側溝や浸透桝を設置し雨水を地下に浸透させて環境保全を行う。
③水防体制
水位の情報収集の提供として、水防災統合情報システムの強化を図る。これにより、市内の観測している降雨量や河川水位情報や注意情報・警報・特別警戒区域をリアルタイムに提供し市民の安全を守る。水門や調整池等の画像もリアルタイムに見えることで、内水氾濫に対する危険度がわかりやすくなる。
(3)新たに生じる課題とその対策
1)新たに生じる課題
気候変動で、降雨が長期化し雨水の排水先である河川水位が高く、雨水排除されないままで時間を要する。河川の流下能力不足対策が必要となる。
2)対策
①既存水路活用
既存水路等を有効活用し、浸水被害に重要度に応じて、治水整備する。これにより、既設水路を有効活用し、雨水の流下能力向上を図り、浸水の低減を行う。
②ポンプ場の整備
水路にポンプ場を整備し、ポンプ圧送により浸水解消する。これにより、浸水箇所の湛水を効率的に解消する。また自動監視することで遠隔操作可能となる。
③ネットワーク化
管渠をネットワーク化し、流下能力不足を解消し浸水を抑制する。雨水管渠の流下能力不足を解消するため、雨水管全体で雨水を抑制し河川に流下させる。
(4)技術者倫理と社会の持続可能性
1)技術者倫理
緊急時の洪水情報等をSNS による情報発信し、住民に即座に伝達する。これは技術者倫理綱1公衆の安全健康及び福利につながる。
2)社会の持続可能性
調整池等をビオトープ型として市民と共同で鑑賞し、ワークショップや子供の環境学習にも利用し、住民の理解と参加促進する。これは、SDGs11住続けられる街づくりに相当する。
この問題を解く際には、まず背景理解が重要です。日本の一時エネルギーの約8割が化石燃料に依存している現状や、エネルギー自給率の低さがカーボンニュートラルやエネルギー安全保障に与える影響を正確に把握しましょう。また、エネルギーミックスの検討が重要な解決策として提示されていることにも注意を払います。
技術者の立場から多面的な観点で課題を抽出する際には、技術的、経済的、社会的視点をバランスよく考慮することが求められます。技術的課題としては再生可能エネルギーの技術開発と普及、経済的課題としてはエネルギーコストの削減と投資回収の確保、社会的課題としては住民の理解と協力の促進が挙げられます。
課題や解決策を提示する際には、具体的な事例やデータを活用し、抽象的な表現を避けることが効果的です。例えば、再生可能エネルギー技術の開発においては、風力発電や太陽光発電の効率向上、新しいエネルギー保存技術の開発、スマートグリッドの導入などが具体的な解決策となります。
リスク分析と対策においては、新技術導入による経済的負担や社会的抵抗が考えられます。これに対しては、コスト削減のための効率的な技術開発と運用、住民との対話を通じた理解促進、政策支援の確保が有効です。さらに、技術者としての倫理や社会の継続可能性を考慮し、環境保護と経済発展の両立を目指す姿勢が求められます。
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安全寿命設計及び損傷許容設計について、それぞれの概念、手法の概要及び適用上の技術的留意点を述べよ。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性 専門事項 生産設備の設計・保全 答案形式
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1.安全寿命設計
(1)概念
損傷発生の頻度を下げることで、故障が発生することを防止し、安全を図る設計をいう。
(2)手法の概要
損傷に至る荷重を推定し、材料強度に対する寿命予測により耐用期間を定める。使用実績に基づき、耐用期間内に定期取替を行う。
(3)適用上の留意点
寿命予測には不確実性が残る。そこで重要部位に対しては、歪ゲージ法により微小き裂発生をモニタリングする。これにより耐用期間中の故障を予防する。
2.損傷許容設計
(1)概念
機械の構造材に小さな傷があっても、微小傷が成長して破壊に至ることを防ぐ設計をいう。
(2)手法の概要
損傷の進行とその影響をモデル化し、パリス則より初期欠陥から限界き裂長さに至る期間を求める。求めた期間内に複数回の非破壊検査・修理をする。
(3)適用上の留意点
検査時期の精度向上には、損傷進行速度データを評価し次回検査時期を再設定する。機械の信頼性向上には、構造部材の小分割化や破壊を局所化する。これにより損傷の成長を抑制し全体構造への破壊を防止する。
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問題 機械部門 材料強度・信頼性 Ⅱ-2-1
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熱荷重と地震荷重が作用する容器を設計することとなった。まず、容器に作用する熱荷重と地震荷重に対して既存の設計規格を用いた健全性評価を実施したところ、それぞれの荷重に対して同時に許容値を満足する厚さを設定することができなかった。そこで、破損確率評価を用いて容器の厚さを定めることとなった。この容器の設計責任者の立場から以下の問いに答えよ。
(1) 破損確率評価を用いた容器設計に当たり、あらかじめ調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 設計業務の手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫すべき点を述べよ。
(3) 容器設計責任者として業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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交流電動機のベクトル制御の原理を説明せよ。また交流電動機の制御にベクトル制御を採用することの利点を2つ挙げよ。
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解答者の選択科目 機構ダイナミクス・制御 専門事項 動力設計 答案形式
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1. ベクトル制御の原理
ベクトル制御とは、3相モータの出力電流をベクトル分解し、トルク分電流(Iq)と磁束分電流(Id)の2相に分けて演算する電流制御手法である。ベクトル分解した直交する2相電流は、理論値と比較し差分をPI制御し最適化した上で、3相電圧に逆変換することで、同期速度との補正を行い、低損失で高精度な運転ができる。
2.交流電動機にベクトル制御を採用する利点
1)高精度な回転制御
一般的な回転制御(VF制御)は、すべりが生じ電動機の回転速度が同期速度からずれ、低回転領域ではトルクが小さい。ベクトル制御は、高精度で広範囲なトルク制御ができるため、低速域から高速域まで連続したトルクフルな加減速ができ、滑らかな無変速制御が求められるEⅤへの適用ができる。
2)高い省エネ性能
ベクトル制御は、モータ電流を直接制御し、磁束が常に回転方向に働くため、正弦波駆動より高効率な制御が可能となる。空調制御などでは、運転速度に応じて変化する必要出力に対し、電流ベクトルが最小になるよう制御し、全運転領域での銅損を減らすことで総合効率の高い運転ができる。
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問題 機械部門 機構ダイナミクス・制御 Ⅱ-2-2
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地球環境保護や温暖化防止を目指して、エネルギー消費量の抑制・削減のため、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(いわゆる省エネ法)が制定され、さらに、エネルギー消費効率の向上と普及促進を目的として、「トップランナー方式」が導入されている。あなたは「トップランナー方式」に則り、省エネモータを選定し、既存設備の三相モータを省エネモータにリプレースする業務の推進責任者として、以下の内容について記述べよ。
(1) リプレース対象となる三相モータを具備する具体的な既存設備を示し、その既存の三相モータの省エネモータへのリプレースを行うに当たって、購入する省エネモータの特性の観点で調査、検討すべき事項を3つ挙げ、その内容について説明せよ。
(2) 省エネモータへのリプレースの業務を進める手順を列挙して、その業務で留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3) この業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。
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解答者の選択科目 機構ダイナミクス・制御 専門事項 動力設計 答案形式
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1.ポンプ用モータの省エネ改修評価と対応の検討
①更新後のエネルギー消費効率評価
導入効果を実質的に比較検討するため、既設ポンプの定格使用点での効率を調査し、比較検討する。特性向上による過剰出力はポンプの性能曲線により、実使用点に換算した効率値で比較する。
②変速運転のメリットと導入検討
固定速運転との効率差異を評価するため、負荷率を時間別で調査し、ポンプの性能曲線から求めた効率値を積算し、総合効率を算定する。インバータ適用時は、変換ロスを考慮する。
③システム適合性の検討
特性変更及び変速運転によるシステムリスクを検討するため、圧力条件によるキャビテーションや運転条件によるウォーターハンマーなど、ポンプ特有のリスクを評価し対策を検討する。
2.省エネモータ更新の手順とその留意点
①モータの互換性検討と最適選定
高効率設計に伴う機械的(体格アップ)変更や電気的(特性)変更により、取合い変更や出力調整など既設モータとの互換性に留意し、省エネ効果や保守性を含めた総合コストを評価し最適選定を行う。
②特性変更とインバータ化への対策
「始電流増加に伴う保護協調の見直し」や「効率化に伴う過剰出力調整」に加え、インバータ化によって生じるノイズ、高調波などの影響を低減するため、経済性を考慮した対策機器の設置を行う。
③システム適合性への対策と留意点
既設インターフェイス、パラメータを確認し、高効率モータの特性に合わせ互換パラメータを作成する。特にインバータによる加減速設定は、ポンプ特有のシステムリスクに留意し、パラメータ調整を行う。
3.設備更新に伴う関係者との調整
①設備管理部門:過剰出力の回避
単純な高効率モータの更新は、過剰出力を生じるため、吐出側のバルブ弁により必要流量へのシステム調整を指導する。また、運用上の過剰揚程を回転制御により削減し、総合的な省エネ化を推進指導する。
②外部施工業者:互換性確保と導入支援
現場での作業工数増加を防止するため、互換アタッチメントの採用や締結方法・設置スペース確保を指導する。また、インバータ導入時はパラメータ設定やノイズ対策を指導し、施工業者の延引作業を防止する。
③製造部門:運転・保全指導
操業移行時の混乱を防止するため、運転方案における変更点の説明やインバータ化によるノイズ・高調波の影響及び対策を説明・指導し、保全周期や追加確認項目を指導する。
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問題 機械部門 機構ダイナミクス・制御 Ⅲ-1
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半導体ICを用いた電気電子機器との組み合わせた機械や製品は普及して久しい。製品を製造する工場におけるサーボモータをはじめとしたFA機器や、自動車などの輸送機器、家電製品からPCやスマートフォンなどの情報機器まで多岐にわたる。一方で、災害、戦争、セキュリティ、世界的な疫病や、市場で求められる製品の需要の急激な変化から半導体ICの供給不安が突然に発生する。このとき、入手可能な代替の半導体ICを用いて、それを用いるメカトロニクス製品の生産の継続を図るに当たり、この業務を推進する技術者として以下の問いに答えよ。
(1)メカトロニクス製品を1つ想定して、代替の半導体ICを採用する上での課題を、設計や評価や製造に関する従来からの変更点を挙げることで、技術者として多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する複数の解決策を、設計・評価・製造へ反映すべき項目として、専門技術用語を交え示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術委を踏まえた考えを示せ。
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要求獲得において要求に関する情報をステークホルダーから収集する方法を3つ挙げ、その概要と留意点を説明せよ
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解答者の選択科目 ソフトウェア工学 専門事項 システム設計 答案形式
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1. インタビュー
ステークホルダーから直接要求を引き出す方法であり、質問を事前に構造化することで一貫性が向上し、分析が容易になる。相手の知識に応じた言葉を用いることが重要であり、正確な記録と音声録音やメモの管理も求められる。
2. アンケートや調査票
多数のステークホルダーから一度にデータを収集するのに適している。質問文は明確にし、曖昧な表現を避けるべきであり、回答範囲も限定しすぎないようにする。データ分析においては、回答の偏りやサンプルサイズを考慮し、信頼性を確保する必要がある。オンラインフォームや自動集計ツールを使用することで、回答の収集・集計作業を効率化できる。
3. ワークショップ
複数のステークホルダーが意見を共有し合意形成を図る場であり、ファシリテーション技術が重要である。全員が発言しやすい環境を整え、議論が収束しない場合には客観的な助言が必要とされる。また、ホワイトボードやディスカッションツールを活用して意見を視覚化し、議論を円滑に進める工夫が求められる。さらに、リアルタイムで意見を集約・分析できるツールやリモート参加を可能にするビデオ会議システムの導入も効果的であり、地理的制約を超えてより包括的な合意形成が可能となる。
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問題 情報工学部門 ソフトウェア工学 Ⅱ-2-1
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既存の大規模なソフトウェアを流用してエンハンス開発を行うプロジェクトにリーダの立場で参画することとなった。流用対象のソフトウェアでは不具合が散見されているが、設計ドキュメントやテスト仕様書の信頼できるものは入手できず、品質の状態を容易に把握できない。そのため、ソフトウェアの設計の技術的負債の評価を行う方針とした。評価に際しては成果物に対する解析やメトリクスの活用を考えている。このような大規模な再利用開発の技術的負債の課題に対して以下の問いに答えよ
設問(1):
大規模再利用開発の技術的負債の課題について、解析やメトリクスを活用した効果的な評価を行うために、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ
設問(2):
技術的負債の評価において手順、留意すべき点、工夫を要する点を述べよ
設問(3):
プロジェクトを効率的かつ効果的に進めるために調整が必要となる関係者を列記し、それぞれの関係者との連携・調整について述べよ。
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解答者の選択科目 ソフトウェア工学 専門事項 システム設計 答案形式
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(1)技術的負債の評価に際しての調査・検討事項
①技術的負債の条件についての調査・検討事項
調査事項:技術的負債の不具合要件や影響の条件等を明確にするために、一般情報から技術的負債の不具合要件等について調査する
検討事項:技術的負債の不具合要件に対して必要となる解析手法やメトリクスについて検討する。
②解析ツール等についての調査・検討事項
調査事項:①にて得られた解析手法やメトリクスを抽出について、人的作業の品質のばらつきや・漏れなどをなくすために作業の自動化や標準化を行うための市場ツールを調査する。
検討事項:適合性・使用性・ライセンス・コストなどの観点から導入する市場ツールを検討する
(2)手順、留意点、工夫点
作業手順については、プロジェクト計画の策定、解析ツールの試行による評価、全体評価の3工程とする。
以下にそれらの留意点、工夫点を述べる。
①計画段階:プロジェクト計画を策定
留意点:評価工程において、技術面・体制面などにおいて対応が困難となり本プロジェクトが立ちいかなくなるリスクがある
工夫点:Pocにより事前に技術的実現性や実施時に想定されるリスクを洗い出し対応方針を決める。その上で本プロジェクトを実現するために必要が人・モノ・コスト等の資源の配分を行う。
②解析ツールの試行段階:解析ツールを試行し課題の抽出対策を検討
留意点:解析結果が解析者のスキルに左右され解析結果の品質にばらつきが生じるリスクがある
工夫点:動的解析や静的解析などの解析手順・チェック項目を作成し解析者間で共有する。
③全体評価段階:評価対象全体に対し解析ツールによる評価を実施
留意点:評価対象の網羅性が不十分な場合、不具合が残存し、適切な品質を確保できない。
工夫点:解析時に評価対象の網羅性を数値化・可視化し、複数人で評価の網羅性・妥当性をチェックする
(3)関係者との連携・調整
関係者は、経営者、開発・運用チーム、社内の他部門(営業、法務等)、解析ツールの販売会社等が挙げられる。これにおいてプロジェクトを効率的・効果的に進めるために特に重要と考える調整を以下に述べる
①経営方針との整合・組織全体との協調化(経営者)
経営方針と整合を図り経営者の理解を得て、組織全体の理解・協調化を図る。
②開発・運用チームの教育と学習(開発・運用チーム)
解析ツールを使いこなすために、開発・運用チームに対し、教育と学習のトレーニング計画を策定し、教育と学習を実施する。
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問題 情報工学部門 ソフトウェア工学 Ⅲ-1
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パブリッククラウドサービスの種類は大まかにIaaS/PaaS/SaaS(それぞれインフラストラクチャ/プラットフォーム/ソフトウェアを提供するクラウドサービス)がある。ソフトウェア開発においては、既存のIaaSやPaaSを利用し、新たなSaaS型のクラウドサービスを開発することが求められるようになった。このようなソフトウェアの設計を担当する立場で、次の問いに答えよ。
設問(1):パブリッククラウドサービスの技術的な特徴や特性を述べ、それらを踏まえて多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
設問(2):設問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する複数の解決策を、専門技術・手法を用いて示せ。
設問(3):設問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 ソフトウェア工学 専門事項 システム設計 答案形式
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(1) パブリッククラウドサービスの特徴と課題
パブリッククラウドサービスの技術的特徴には、オンデマンド性やスケーラビリティ、マルチテナント性、高可用性と信頼性、コスト効率がある。必要時にリソースを即座に利用でき、需要に応じたリソース調整やコスト削減が可能である。また、複数ユーザーがリソースを共有しつつ独立性を保ち、冗長性やバックアップ機能によってサービスの安定稼働が確保される。
1. 信頼性と高可用性の確保
信頼性と高可用性の確保の観点から、システム全体の安定稼働を図るためには、マルチリージョン展開と自動フェイルオーバーの導入が必要である。これにより、障害発生時に別リージョンへ即時切り替えを行い、ダウンタイムを最小限に抑えられる。
2. セキュリティとデータ保護
セキュリティとデータ保護の観点から、外部リスクにさらされるSaaSサービスのデータを保護するためには、多要素認証やデータ暗号化による厳格な認証管理が不可欠である。静的データと転送中データの暗号化により、情報漏洩リスクを低減し、ユーザーに安全性を提供する。
3. コスト最適化と運用効率の向上
コスト最適化と運用効率の向上の観点から、リソース利用の無駄を減らし、持続可能な運用体制を維持するためには、オートスケーリングによる動的なリソース最適化が求められる。利用状況に応じてリソースを調整することで、運用コストの削減が可能である。
(2)最重要課題1)と解決策
課題として「マルチリージョン展開と自動フェイルオーバーによる高可用性の実現」を選定した理由は、信頼性と高可用性がSaaS型クラウドサービスにおける基本要件だからである。サービス停止や障害は直接的にユーザーの信頼を損ない、利用の継続性が保証されなければ、他の機能も十分に発揮されない。
1) IaaSやPaaSのマルチリージョンサポートの活用
AWSやAzureの複数リージョンサポートによりデータやアプリケーションを分散させ、各リージョンにインスタンスやデータベースの複製を配置する。障害時に他リージョンが代替稼働させる。
2) 自動フェイルオーバー機能の組み込み
ロードバランサーやDNSサービス(例:Route 53など)のフェイルオーバー機能を活用し、特定リージョンで障害が発生した際には自動で別のリージョンにトラフィックを切り替えダウンタイムを最小化する。
3) データのリアルタイム同期と監視
データベースのレプリケーションでデータのリアルタイム同期とリージョン間の整合性を確保する。また、監視ツールで常時確認し、異常発生時に対応する。
(3)新たに生じうるリスクと対策
1) データの整合性と同期遅延
マルチリージョンでのリアルタイム同期は、ネットワーク遅延やレプリケーションの遅れによりデータの整合性が損なわれるリスクがある。特に更新頻度が高い場合、不整合がビジネスへ深刻な影響を与える懸念がある。対策として、一貫性モデル(強い一貫性と最終的整合性)の適切な選定と、グローバル分散データベースの活用で遅延を抑える。また、遅延が許されないケースには、ユーザーアクションごとに同期確認機能を設けることで一貫性を維持する。
2) 複雑な障害対応と運用負荷
マルチリージョン展開と自動フェイルオーバーの導入は、障害対応が複雑化し、運用負荷が増大する可能性がある。対策として、IaCツールやAIOpsを活用して構成の標準化と自動修復を行い、運用を簡略化する。また、復旧訓練とモニタリングの強化により、迅速な障害対応体制を整備する。
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3次元(3D)ディスプレイは、複数の方式が用いられている。このうち、専用の眼鏡を必要とするものと裸眼で利用するものとを1つずつ挙げ、なぜ立体的に見えるのかが分かるように、それぞれ原理について具体的に説明せよ。
受付時間 | 9:00~18:00 |
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定休日 | 不定期 |
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