技術士試験問題と模範解答と解説 2023年 令和5年

建設部門 必須科目

答案の性格:論理的かつ実践的です。
解答者の性格:分析力が高く、実務重視の姿勢です。
答案の良いところ:分析力 - 現状の課題を的確に分析し、具体的な技術的課題を提示している点です。課題解決力 - 具体的かつ多角的な解決策を提案している点です。マネジメント力 - リスクとその対応策を考慮し、実行可能なプランを提示している点です。リーダーシップ - 技術者倫理と社会持続性の観点を取り入れた包括的な視点を持っている点です。
改善余地のある点:課題の優先順位付け - 具体的なデータや根拠を提供し、説得力を高めることです。具体的な事例の引用 - 実装の信頼性と実現可能性を高めることです。経済的な観点の強化 - コストや経済効果について言及し、妥当性を増すことです。
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問題 建設部門 必須 Ⅰ-1
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 我が国の社会資本は多くが高度経済成長期以降に整備され、今後建設から50年以上経過する施設の割合は加速度的に増加する。このような状況を踏まえ2013年(平成25年)に「社会資本の維持管理・更新に関する当面講ずべき措置」が国土交通省から示され、同年が「社会資本メンテナンス元年」と位置付けられた。これ以降これまでの10年間に安心・安全のための社会資本の適正な管理に関する様々な取り組みが行われ、施設の現況把握や予防保全の重要性が明らかになるなどの成果が得られている。しかし現状はただちに措置が必要な施設yあ事後保全段階の施設が多数存在するものの、人員や予算の不足をはじめとした様々な背景から修繕に着手できていないものがあるなど、予防保全の観点も踏まえた社会資本の管理はいまだ道半ばの状態にある。、
(1)これからの社会資本を支える施設のメンテナンスを、上記のようなこれまで10年の取り組みを踏まえて「第2フェーズ:」として位置づけ取り組み、推進するにあたり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せん。
(4)上記事項を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点 から必要となる要件・留意点を述べよ。
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解説:  この問題を解く際、出題者が意図するのは、受験者が社会資本の老朽化問題に対する深い理解と具体的かつ現実的な解決策を提示できるかを評価することです。高得点を狙うためには、まず現状分析において具体的なデータや実例を挙げて深掘りすることが重要です。例えば、特定の地域や施設の老朽化状況、予防保全の取り組み事例などを具体的に示すと良いでしょう。
 
課題抽出では、技術的課題として最新の点検技術やモニタリング技術の不足、経済的課題として限られた予算の有効活用、社会的課題として住民参加型の保全活動の不足などを挙げ、それぞれを具体的に説明します。これにより、多面的な視点から課題を捉えることができます。
 
解決策を提示する際には、革新的で実行可能なアイデアを提案します。例えば、最新のセンサー技術とAIを組み合わせた構造物の予知保全システムの導入、高性能材料や補強技術を用いた老朽化インフラの耐久性向上、3Dプリンティング技術を活用した迅速かつコスト効果の高い修繕方法、さらにはドローンを用いた遠隔点検や修繕作業の実施などが考えられます。これにより、技術的な課題に対して具体的かつ現実的な対策を示すことができます。
 
リスク分析と対策においては、例えば新技術の導入に伴う構造的な不確実性や耐久性の評価問題が挙げられます。これに対しては、実験データに基づく耐久性評価の強化、シミュレーション技術を用いた長期的な構造安全性の予測、そして冗長設計の採用によるリスク分散が有効です。さらに、施工時の品質管理や工程管理を厳格に行うことで、工事の信頼性を確保することも重要です。
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1. 解答者 選択科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造物の計画と維持管理 簡易答案形式2
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1.巨大地震への技術的課題
1) 高度な地震波解析技術の導入
現実的な耐震評価の必要性の観点から、地震波解析技術を高度化し、耐震性能を精密に評価することで地域毎の詳細な被害予測、これに対する防災計画を策定。
2)老朽化インフラの診断技術の向上
予防保全の重要性の観点から、ドローンと画像解析による定期点検、非破壊検査技術やモニタリング技術を活用し、精度の高い早期発見・劣化進行予測を行う。
3)コンクリート構造物の耐震補強
材料毎の耐久性の観点から、繊維補強コンクリート(FRC)や高靱性コンクリート(HPFRCC)を用いた補強技術を開発し既存構造物の耐震性を向上。
2.最重要課題と解決策:高度な地震波解析技術の導入
理由:1)はコスト縮小に効果があり、他の課題に対しても波及効果がある。
1) リアルタイム地震波解析システム:地震波センサーを地域に設置し、地震波データをリアルタイムで収集・解析するシステムを構築する。解析データを基に地形、地盤特性、建築密度などを考慮し地域毎の特性や脆弱性を詳細に評価。
2) データ駆動型防災計画:地震波解析データを基に、地域毎の特性に応じた耐震設計ガイドラインを作成する。ガイドラインに基づき、リスクの高い地域のインフラや建築物の耐震設計・耐震補強を科学的かつ客観的に進める。
3) 被害予測シミュレーション:被害予測をシミュレーションし、予測データに基づき耐震補強や避難計画作成に反映。予測データと対策データを、デジタルプラットフォーム上で一元管理し、予測をリアルタイムに更新。
3.リスクと対応策
地震波解析技術の向上により、コンクリート構造物の耐震補強不足が判明。補強作業の遅延が大規模被害を招くリスク(対応策)リスクの高い構造物を優先的に補強。FRCやHPFRCCの新技術を活用し、短期間で効果的な補強を実施。
4.技術者倫理
 技術者倫理も高めてするには、地震波解析技術やその応用に関して技術者間で技術向上を図り業務に活用。これは技術士倫理綱領の公衆の利益の優先に相当する。
社会持続可能性を高めてするには地中レーダー(GPR)等の非破壊地盤解析技術を使用し地盤情報を収集。これはSDGsのNO.9「産業、技術革新、基盤」に相当。

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答案の評価
答案の性格:論理的かつ実践的です。
解答者の性格:分析力が高く、実務重視の姿勢です。
答案の良いところ:分析力 - 現状の課題を的確に分析し、具体的な技術的課題を提示している。課題解決力 - 具体的かつ多角的な解決策を提案している。マネジメント力 - リスクとその対応策を考慮し、実行可能なプランを提示している。リーダーシップ - 技術者倫理と社会持続性の観点を取り入れた包括的な視点。
改善余地のある点:課題の優先順位付け - 具体的なデータや根拠を提供し、説得力を高める。具体的な事例の引用 - 実装の信頼性と実現可能性を高める。経済的な観点の強化 - コストや経済効果について言及し、妥当性を増す。

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2. 解答者の専門科目  鋼構造及びコンクリート 専門事項  コンクリート構造 答案形式

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1.巨大地震対策の課題

1) 耐震設計と建材の革新

 過去地震の解明とフィードバックの観点から、耐震設計の高度化と建築材料の強度改良が求められる。建築物や構造物の基礎から構造体、外壁に至るまで、地震エネルギーを効果的に吸収し、分散させる設計原理の適用と、新しい高性能建材の開発である。例えば、免震・制震技術のさらなる進化や、軽量で高い耐震性を持つ複合材料の研究が有効である。こうした技術は汎用的に、構造物自体の耐久性を高め、地震時の損害を最小限に抑える。

2) スマートセンサーと監視システムの導入

 近年発達が著しいDX技術導入の観点から、スマートセンサーと監視システムによる健全性確保が挙げられる。建築物やインフラに取り付けられたセンサーを通じて、リアルタイムで構造特性をモニタリングし、異常が検出された場合には早期に対処するシステムである。地震の前兆現象や、地震発生直後の建築物の状態を詳細、広域で把握することで、緊急避難の指示や迅速な補修の決定に役立てる。

3) インフラの多層的保護戦略

 レジリエンス強化の観点から、道路、橋梁、水道などのライフラインに対し、粘り強さを増し、冗長性・多様性確保、回復力向上を向上させる。緊急対応計画、代替システム設計、機能回復力の充実がカギとなる。迅速な復旧、代替手段の有効活用、被災者支援と経済援助を組み合わせることで、被害最小化と早期復旧を目指す。地震だけでなく、津波や土砂災害など包括的な災害対応も策定する。

2.最重要課題1)「耐震設計革新」の解決策

1) 高性能免震ダンパーの導入

 建築物の基礎と構造フレームに免震ダンパーを導入することで、地震エネルギーを吸収して、大改造することなく耐震強度を向上させる。旧来の液体粘性ダンパー以外に、最新の技術の粘弾性ダンパー、摩擦ダンパー、負剛性ダンパーなど合理的な形式も適用する。

2) 自己修復コンクリートの活用

 カルシウムカーボネート(石灰石)生成微生物や化学物質カプセルをコンクリートに混入し、被災時に封活性化し、亀裂を修復する。微小な亀裂も修復し、構造物の耐久性を向上する。コストが高いので、大きな損傷は別途処置し、主に微細な亀裂が予想される用途に使用してメンテナンスコスト削減と長寿命化する。

3) デジタルツインを活用した都市計画

 都市モデルをデジタル空間で再現し、災害シナリオ下での挙動を事前に評価し、避難路やインフラの配置を検討し、災害リスクに対する都市のレジリエンスを向上させる。3Dモデリングとリアルタイムデータ分析で、災害時のリスク評価の精度が向上し、迅速かつ効果的な意思決定で、将来の災害に対する備えを大幅に強化する

3.新たに生じうるリスクとそれへの対策

 高性能免震ダンパーの導入では、過去にない長周期地震や予想を超えるマグニチュードの地震での倒壊がリスクとして生じうる。免震ダンパーは特定の振動数やエネルギーレベルに最適化されているため、予想外の地震特性に直面した際、その保護機能が十分に発揮されない。

 遠方や直下、海溝型など幅広い地震シナリオを想定すると共に、システムの冗長性や多様性を高める。また、地震の予測不能性を考慮して、建築物や構造物の安全性を確保するための追加的な対策も講じる

4.業務遂行に必要な要件・留意点

 技術者倫理の観点から免震設計において、設計者として実用的な安全係数を設定し、建築物やインフラの安全性と機能性を確保しつつ、過剰なコスト増加を避け、正確な設計と、長期的安全性を両立する。

一方、SDGsの観点からは、デジタルツイン技術を活用して、リスクが低くかつエネルギー効率や環境への影響も改善できる建材を選定する。グリーンスペースの配置など、環境に配慮した都市開発の方針も立案する。このプロセスを通じて、災害リスクの低減と持続可能性の両方に貢献する。

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答案の評価

答案の性格:実践的で現実的な対策に焦点を当てた内容です。

解答者の性格:現実的な問題解決に重きを置く、実務重視の技術者です。

答案の良いところ:技術的な課題を具体的に挙げ、その解決策を現実的かつ詳細に説明している点が優れています。特に、耐震設計の高度化とスマートセンサーの導入、デジタルツインを用いた都市計画など、最新技術を取り入れた対策が具体的かつ効果的に提案されています。また、リスクとその対応策についても考慮し、現実的なマネジメントプランが示されている点も評価できます。

改善余地のある点:各課題の優先順位について、より具体的なデータや根拠を提示することで、説得力を高めることができます。また、具体的な事例や過去の成功例を引用することで、提案の信頼性と実現可能性が向上します。さらに、解決策のコストや経済的効果についても言及することで、より現実的で実行可能な提案となるでしょう。

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問題 建設部門 必須 Ⅰ-2
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 我が国の社会資本は多くが高度経済成長期以降に整備され、今後建設から50年以上経過する施設の割合は加速度的に増加する。このような状況を踏まえ、2013(平成25)年に「社会資本の維持管理・更新に関する当面講ずべき措置」が国土交通省から示され、同年が「社会資本メンテナンス元年」と位置づけられた。これ以降これまでの10年間に安心・安全のための社会資本の適正な管理に関する様々な取組が行われ、施設の現況把握や予防保全の重要性が明らかになるなどの成果が得られている。しかし、現状は直ちに措置が必要な施設や事後保全段階の施設が多数存在するものの、人員や予算の不足をはじめとした様々な背景から修繕に着手できていないものがあるなど、予防保全の観点も踏まえた社会資本の管理は未だ道半ばの状態にある。
(1) これからの社会資本を支える施設のメンテナンスを、上記のようなこれまで10年の取組を踏まえて「第2フェーズとして位置づけ取組・推進するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行しでも新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4) 前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ。
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1. 解答者の選択科目 トンネル 専門事項 トンネル設計  答案形式
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1.社会資本メンテナンスのこれからの取組・推進
(1)先進的な診断技術の導入と応用
第1フェーズでの取組みにおいて、従来の施設診断に先進的な技術の導入を加え効率化が求められる。
インフラ分野にDX活用の観点から、高精度センサーやドローンを活用した遠隔診断や非破壊検査技術の更なる発展を図る。また、デジタル技術を組合せ施設の可視化より、点検の効率化・高度化に取組む。
(2)長寿命・低維持コストの建材の開発・導入
事後保全の多さと修繕対応から、維持管理コストの低減と施設の長寿命化が求められる。
膨大な施設の循環型社会形成の観点から、現在の気候変動における建設資材が受ける環境悪化に対する対応を図る。その上で、高耐久性能の資材開発を行い、施設材料の再生とリサイクル技術推進の有効利用に取組む。
(3)予防保全のためのデータベース利用と解析
蓄積された施設情報より、劣化進行を加味した適切な時期の修繕・補修への利用が求められる。
修繕時期の明確化の観点から、インフラ施設データや修繕履歴より一元管理されたデータベースを利用する。それにより、1巡目の点検データを基に2巡目における損傷拡大から、劣化進行ペースを解析し、3巡目の維持管理の効率化に取組む。
2.「先進的な診断技術の導入と応用」の解決策
(1)新技術を導入して維持管理の効率化
点検の技術者不足や損傷判定の精度向上(統一)において効率化を図る。そのためには、新技術(DX)内から、実績及び活用効果の高い技術を選定する。
点検技術においては、損傷箇所の遠隔診断、赤外線やレーザー、電磁波等を用いた非破壊検査による表面や内部の状態の点検等があり、この技術を活用し効率化を図る。
(2)デジタル技術を活用した劣化予測
予防保全に対し、デジタルツイン技術を用いて劣化進行予測を行い、維持管理の可視化を行う。
膨大な点検データから、初期点検から2巡目点検の劣化進行をベースに劣化予測を行う。そのためには、現在の気象状況や交通量などの施設に対する環境及び利用状況を加味した劣化予測の高度化を図り予測する。
(3)モニタリング技術の活用
予防保全に、ICTを活用したインフラモニタリング技術を使用する。それには、施設に取付けた変位計により、構造物の状態をリアルタイムに把握、環境や疲労劣化を早めに察知することで、早期に予防保全対策を講じることできる。
3.新たなリスクと対策
(1)新たなリスク
損傷判定において、新技術は革新的な技術となる反面、維持管理の判定は大きな損傷判定から導かれ、小規模損傷の影響が適切に評価されてない。
その一例として、笹子トンネルでは、1つの損傷は軽微なもの(吊下げボルトの劣化)であったが、連続する個々の荷重耐力の低下が全体構造に影響を及ぼすことを見落とし、適切な判定が行われていなかった。
(2)リスク対策
日常監視の強化、交通規制を伴わない走行型ロボット点検の導入などより、変状の早期発見と対応を組合わせる。また、遠隔臨場による点検状況を記録し、熟練技術者から構造に与える影響の確認・指導より、損傷の危険度を判定に反映さす。そうすることにより、連続する損傷から波及するマクロ的な視点での評価が行え、利用者被害を想定した戦略的インフラメンテナンスを予防保全に組込める。
4.業務を遂行するにあたり必要な要件
現在の社会資本は、気候変動や自然災害、利用頻度など、建設当初の想定以上の負荷を受けている。
3巡目の確実な点検の実施には、新技術の併用と伴に、点在する地域インフラ施設の集約や個別施設の管理体制の再構築により予防保全型への転換を図る。これは技術士倫理綱領の公正かつ誠実な履行に相当する。
維持管理分野への先進技術の導入は、今後の技術革新から求められるAI技術に対して、新たなイノベーション(補修サイクルの創出)が期待できる。これはSDGsの産業と技術革新の基盤をつくろうに相当する。
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答案の評価
答案の性格:具体的かつ現実的なアプローチを強調しています。
解答者の性格:問題解決志向で、実務経験に基づいた技術者です。
答案の良いところ:「技術革新で効率化と長寿命化を実現」
 
新技術の導入やDXの活用により、インフラの診断や維持管理の効率化と施設の長寿命化を図っている点が評価できます。具体的な技術提案とその実行可能性を考慮した現実的な対策が示されているのが良いところです。
 
改善余地のある点:「データと事例で信頼性向上」
 
各課題の優先順位を明確にするために、具体的なデータや根拠を提示することが求められます。また、具体的な事例や過去の成功例を引用することで、提案の信頼性と実現可能性を高める必要があります。さらに、解決策のコストや経済的効果について言及することで、より現実的で実行可能な提案となるでしょう。
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2. 解答者の選択科目 河川砂防 専門事項  河川計画および設計 答案形式 
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1.施設のメンテナンスの取組推進の課題
1) 地域インフラ群の再生 総合的なインフラ管理の観点から、地域のインフラを群として捉え、河川、道路、橋梁、上下水道などを一括で管理し、補修、更新を行うことが必要。地域ごとの特性とニーズを踏まえた総合的な計画を立案し、インフラ間の連携強化による効率的な維持管理を目指す。老朽化したインフラの更新計画では、地域経済や生活への影響を評価し、優先順位を定める。市民の意見を取り入れ、維持管理計画の透明性を高めることも重要。また、環境配慮やSDGsに沿ったアプローチの採用も求められる。
2) 予防保全への移行 コスト削減の観点から、予防保全への移行が重要。事後保全から事前対応を行う予防保全へのシフトを図る。高解像度画像取得やセンサー利用による構造物の定期的な管理が鍵。既存の保全体制の見直しと最新技術の導入が求められる。データ分析やAI技術の活用による予測保全の導入が効果的であり、長期的な視野に立ったコスト削減と市民の生活の安定に寄与する。
3) レジリエンスの確保 激甚化する災害に対応するため、レジリエンスの確保が不可欠。河川堤防の質的強化、落橋防止策、地震対策としての鉄筋挿入工などを行う。災害に強いインフラの構築には、地質や気候条件に合わせた対策が必要。最新の地質調査技術や気候モデルを活用し、リスク評価を精密化することが求められる。
2.地域インフラ群の再生の解決策
1) 管理項目の統合 橋梁、道路などの維持管理を進めるために管理項目を統合する。河川堤防のコンクリート護岸と橋梁の下部工、河川の矢板の鋼構造物と橋梁の上部工などを包括的に管理。統合により、管理の効率化と資源の有効活用が可能。異なるインフラ間の相互作用を考慮した維持管理が実施できるようになり、より包括的なリスク評価と対策の策定が可能。
2) 構造物の点検 複数のインフラを同時に点検し、効率化を図る。道路の陥没調査時に上下水道の管路調査を行い、河川点検時にはドローンやマルチビームを用いる。点検作業の時間短縮と人員削減が実現される。ドローンやマルチビームを利用することで、高所や危険な場所の点検が可能となり、安全性の向上にも寄与する。
3) デジタルデータ管理 維持管理の膨大なデータを効率的に管理するため、インフラデータプラットフォームを活用する。このプラットフォームを通じて、維持管理に関わるデータを一元管理し、アクセスしやすい形で提供する。管理者や技術者が迅速かつ正確な意思決定を行うことができ、インフラの維持管理の質を向上させる。
3.リスクと対策
品質低下 河川点検者が橋梁や道路も点検することで生じる品質低下のリスクに対し、専門家がチームで点検に当たる体制を整える。点検員の研修やスキルアップを図ることで、品質管理のレベルを維持し向上させる。
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答案の評価
答案の性格:実践的かつ総合的な視点を持った内容です。
解答者の性格:実務に根ざした現実的な解決策を追求する技術者です。
 
答案の良いところ:「具体的提案で実行力を強化」
具体的な技術と管理手法を詳細に提案し、実行可能性を高めています。インフラの生産性向上、予防保全への転換、インフラストックの適正化といった具体的な課題に対して、AIやロボット技術、データ管理の合理化など最新技術を活用した解決策が示されています。また、技術者のスキル向上や現場ニーズとのマッチングを推進し、実行力を強化する内容となっています。
 
改善余地のある点:「経済性と実例で信頼性向上」
具体的なデータや事例の引用が少ない。各解決策のコストや経済的効果についても言及することで、より現実的で実行可能な提案となるでしょう。データ管理の標準化や技術者のスキル向上のための教育プログラムの導入なども、実行力をさらに強化するための具体的な施策が求められます。
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3. 解答者の選択科目 道路 専門事項 道路情報 答案形式 
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1. 課題
1)インフラメンテナンスの生産性向上
過去10年間の取り組みを踏まえて、インフラメンテナンスにおける生産性の向上が重要な課題である。地方公共団体では人手不足や財源不足が顕著であり、限られたリソースの中で最大限の効率を求める必要がある。これに対し、技術革新を利用したデータ管理の合理化、AIやロボット技術を用いた自動化による点検・修繕作業の効率化が求められる。
2)予防保全への本格転換
個別施設計画の策定とインフラメンテナンスサイクルの構築は進んでいるが、具体的なコスト縮減や実施計画が不十分な点が散見される。これに対し、計画的かつ集中的な修繕の実施により、予防保全への本格転換を図る必要がある。
3)インフラストックの適正化
人口減少や社会状況の変化を考慮すると、インフラの選択と集中が必要となる。既存の縦割り管理では維持管理の最適化が進んでいないため、インフラを賢く使うためには、インフラストックの適正化が重要な課題となる。
2. 最重要課題とその解決策
 2.1 インフラメンテナンスの生産性向上
既存のインフラメンテナンス方法における生産性の低さを指摘し、新技術の導入や効率的な手法による生産性の向上を目指す。技術革新を活用したデータ管理の合理化や、AIやロボット技術を用いた点検・修繕作業の自動化により、人的資源の有効活用を実現する。また、現場ニーズと技術シーズのマッチングを促進し、技術者のスキル向上を支援する。
2.2 予防保全への本格転換
個別施設計画の策定とインフラメンテナンスサイクルの構築は進んでいるが、具体的なコスト縮減や実施計画が不十分な点が散見される。これに対し、計画的かつ集中的な修繕の実施により、予防保全への本格転換を図る必要がある。また、施設の健全性評価を定期的に行い、修繕の優先順位を設定する際には、公衆の利益を最優先に考慮する。
2.3 インフラストックの適正化
人口減少や社会状況の変化を考慮すると、インフラの選択と集中が必要となる。既存の縦割り管理では維持管理の最適化が進んでいないため、インフラストックの適正化が重要な課題となる。これに伴い、地域ごとのニーズに合わせたインフラ整備を推進し、地域社会の発展と調和を図る。
3. 実行に伴うリスクと対策
3.1 リスク
解決策を実行することで、データ形式の煩雑化や有効活用されないリスクが生じる。また、新技術の導入に伴い、技術者のスキル不足が浮き彫りになる可能性がある。
3.2 リスクへの対策
上記リスクへの対策として、データ管理の標準化を図り、データ形式の煩雑化を防ぐ。また、技術者のスキル向上のための継続的な教育とトレーニングプログラムを提供し、スキル不足を解消する。
4. 業務遂行にあたり必要となる要件
4.1 技術者倫理
社会に対する責任を強調し、公衆の利益や安全確保を最優先に考慮する。具体的には、経済性と安全性、工程と品質等のトレードオフが生じた場合、公衆の利益や安全確保を最優先にする。また、技術者としての職責を遵守し、透明性と誠実性を維持することが不可欠であり、建設プロジェクトにおいて、予算超過が発生した際には、安全基準を犠牲にせず、追加の予算調達や工程の見直しを検討する。
プロジェクトの進捗状況やリスクについては、透明かつ正確に報告し、ステークホルダーに誠実に対応する。これらの原則を厳守し、社会に対して最善の価値を提供する責務を全うする。
4.2 社会の持続可能性
社会の持続可能性を考慮し、環境保全、資源の有効利用、生態系の保全などを重視する。具体的には、SDGsの観点から外国人技術者の起用など、多様な取り組みを実施する。また、プロジェクトにおける環境影響評価を実施し、環境への負荷を最小限に抑える取り組みを行う。
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答案の評価
答案の性格:実践的で技術革新を重視した内容です。
解答者の性格:現実的かつ効率的な解決策を追求する技術者です。
 
答案の良いところ
キャッチフレーズ:「具体的提案で実行力を強化」
具体的な技術と管理手法を詳細に提案し、実行可能性を高めています。インフラの生産性向上、予防保全への転換、インフラストックの適正化といった具体的な課題に対して、AIやロボット技術、データ管理の合理化など最新技術を活用した解決策が示されています。また、技術者のスキル向上や現場ニーズとのマッチングを促進し、実行力を強化する内容となっています。
 
改善余地のある点
キャッチフレーズ:「経済性と実例で信頼性向上」
具体的なデータや事例の引用が少ない。各解決策のコストや経済的効果についても言及することで、より現実的で実行可能な提案となるでしょう。データ管理の標準化や技術者のスキル向上のための教育プログラムの導入なども、実行力をさらに強化するための具体的な施策が求められます。
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4. 解答者の選択科目 道路 専門事項  道路設計 答案形式 
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1.多面的な課題
(1)コンディションベースの点検
IoT機器は高品質化と低価格化、センシング技術の進化により、リアルタイムに近い遠隔モニタリングが可能となった。予知保全の観点から、点検のデジタル化による人的リソースの効率化と抑制、メンテナンス頻度の最適化・予防保全の推進、コストの削減を図る。
(2)インフラ施設を群としたマネジメント
 市町村では財源不足のみならず、技術系職員不在が全体の約25%を占めている。そのため、大規模化による利益向上の観点から、広域かつ橋梁や土工、付属物等の他分野施設との連携を図る。一括で管理する事で地域の将来像に基づき必要となるインフラ機能の確保を図る。
(3)包括的民間委託の導入促進
地域の持続可能性向上の観点から、地域の実情に精通し、現場へのアクセス性に精通した地元建設会社で組織する共同企業体に委託を図る。長期安定的な業務量の確保による地元企業の経営安定化、効率化と創意工夫による収益性向上を目指す。
2.課題「コンディションベースの点検」と解決策
(1)予兆段階からの損傷を検知
現地によるUAV調査や構造物変状部検知システムを活用した構造物の変状を検知する従来の技術のみならず、IoT技術を活用して点検情報をリアルタイムで取得する。そしてそれらのデータを分析して構造物の変状を予兆段階から検知する。また、その分析結果とBIM/CIM等の3次元モデルと連携する事で損傷箇所を視覚化する。
(2)劣化予測モデルによるLCC抑制
地方の市町村では、予算との兼ね合いから点検データを定期的に収集するのは困難である。そのため、国等の支援を受けて点検データを収集し、そのデータに気候、環境、地震の発生頻度、飛来塩分等の条件を加えて構造物を分類する。これに劣化シミュレーションを行い、損傷時期や損傷種類を予測する事でコストをスリム化する。また、類似した構造物の損傷対策にも有効となる。
(3)新素材を活用したインフラの強度・耐久性向上
耐久性向上にFRP補強筋を使用するだけでなく、FRP筋のマトリクス樹脂に熱可塑性樹脂を使用して容易に二次加工を可能とすることで、現場作業の効率化や使用範囲を広げる。これにより、腐食の防止、かぶり厚さを薄くした社会インフラの軽量化や耐久性を向上させる。
3.新たに生じるリスクと対応
リスクは、新素材や新材料を用いて劣化予測を実施した場合、損傷事例や損傷メカニズムのデータ数が少なく予測精度が低くなる。補修時期を誤る事により重大な損傷を招いたり、過大な補修を行いLCCが高くなる可能性がある。
対策は、室内試験により新素材・新材料を対象に、疲労試験や劣化試験、破壊試験を実施して、疲労や腐食、漏水・凍害・中性化等の劣化事象に関するデータを蓄積する。また、新素材・新材料を採用した現場においても応力やひずみ等のデータを収集して予測精度の信頼性向上を図る。
4.技術者倫理と社会持続性
(1)技術者倫理
技術者倫理も高めるには、インフラの損傷による第三者被害額と高耐久性部材適用によるリスク低減額を算定する。私なら安全性向上がLCC低減となることを管理者に力説して、高耐久性材料に設計変更する。これは、技術者倫理綱領の「国民の安全・健康・福利の優先」に相当する。
(2)社会持続性
社会持続性を高めるため、社会インフラのLCCを抑制するには、従来の土木技術者のみならず、データサイエンティストなどのIT技術者や新素材開発の化学系技術者が必要となる。私ならテレワークや在宅勤務のシステムを紹介して、子育て中の技術者や外国人技術者を就業支援する。これはSDGs17の目標である「ジエンダー平等」に相当する。
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答案の評価
答案の性格:具体的かつ技術革新を重視した内容です。
解答者の性格:革新的な技術を積極的に活用し、実務的な解決策を追求する技術者です。
 
答案の良いところ
キャッチフレーズ:「技術革新で効率と精度を向上」
IoTやUAVなどの最新技術を活用し、リアルタイムでの構造物のモニタリングやデータ分析を通じて、点検の効率化と精度向上を図っている点が優れています。デジタル技術と従来技術を組み合わせることで、劣化の予兆を早期に検知し、予防保全の推進に寄与しています。また、FRP補強筋など新素材の利用でインフラの耐久性を高め、長寿命化を目指している点も評価できます。
 
改善余地のある点
キャッチフレーズ:「コストと実証データの強化」
新素材や新技術の導入に伴うコストや実証データが不足しています。具体的な事例やコスト分析を加えることで、提案の信頼性を高める必要があります。また、新素材の実験データやフィールドデータの収集を強化し、予測精度を向上させることで、過剰な補修や損傷を防ぐことが求められます。
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5. 解答者の選択科目 道路 専門事項 道路設計 答案形式
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1.施設メンテナンスの課題
 1.1.自治体毎のインフラメンテナンスの転換
わが国では、メンテナンスサイクルの確立や施設の集約・再編など、さまざまな取り組みが行われてきた。しかし、小規模な自治体では予防保全への転換が不十分であり、人員や予算の不足などが補修・修繕の実施を難しくしている。  したがって、戦略的メンテナンスの観点から、自治体毎のインフラメンテナンスの転換が課題である。
1.2.国民参加のメンテナンス方法 
わが国では、住民がメンテナンスに対して関心を持っていないため、その必要性の認識が低い。そのため、「自助・公助・共助」に加え、「近助」の考え方を導入し、住民と利害関係者がパートナーシップとして協力し、全員参加のメンテナンスが求められている。  したがって、認知度向上の観点から、国民参加のメンテナンス方法が課題である。
1.3.技術の継承
メンテナンスにおいては、地域一括発注方式や民間事業者の技術・ノウハウを活用した維持管理手法の導入が行われてきた。しかし、将来の技術の継承が不足している。
したがって、メンテナンスに関わる人的資源確保の観点から、技術の継承が課題である。
2.最も重要な課題「自治体毎のインフラメンテナンスの転換」の解決策
2.1.地域におけるインフラの再編 
広域・複数・多分野の施設を「群」として捉え、地域の将来像に基づいた必要な機能(維持・追加・廃止)を検討し、戦略マネジメントを構築すべきである。また、各市区町村のマスタープランや立地適正化計画に基づき、広域地方計画や地方ブロック計画との整合性を確保し、効果的なマネジメント計画の策定を行うべきである。
2.2.市区町村における組織体制の構築
メンテナンスを進めるには、人員や予算の不足を克服し、民間活力や新技術の活用を検討する市区町村の組織体制を強化すべきである。この際、包括的な民間委託による広域的かつ分野横断的な維持管理の実現、CM方式の活用、性能方式・指標連動方式の導入などを考慮すべきである。さらに、官民連携手法の検討を進め、民間活力の最大限の活用を図るべきである。
2.3.新技術の活用とデジタル国土管理の実現
メンテナンスを進めるには、インフラを「群」として捉え、新技術の活用と国土管理の実現に注力すべきである。新技術の開発により、予兆段階からの異常検知やAI、ロボットカメラの活用による高度な定期点検を推進するべきである。国土管理では、インフラ各分野のデータベース構築と、API連携による広域的かつ分野横断的なデータベースの構築、点検・診断・補修時のデータ(BIM/CIM)の標準化に取り組むべきである。
3.新たに発生するリスクとその対応
3.1.新たに発生するリスク
小規模市町村において、課題の実施が困難である。
3.2.リスクへの対応  リスクへの対応策として、国による研修の実施や民間資格登録制度の導入、インフラメンテナンス国民会議を通じた優れた事例の共有などを検討すべきである。さらに、国が提供するインフラデータプラットフォームに点検データやその他の大量データを入力し、小規模市町村が利用できるシステムを整備するべきである。また、PRISM(官民研究開発投資拡大プログラム)の活用を通じて技術の発展を支援し、自治体間での連携を促進する必要がある。
4.業務遂行における要点と留意点
 4.1.技術者としての倫理
将来のメンテナンス計画の見直しやセキュリティ対策に留意するため、耐久性とメンテナンスの容易さを考慮し、非常時のアクセスや情報セキュリティを組み込む。
4.2.社会の持続可能性
循環型社会を築くために、SDGsへの貢献や3Rの実現に積極的に取り組む。道路設計者として、道路建設材料の選定において、リサイクル材料の使用を優先し、工事時の廃棄物削減とリサイクルを計画に組み込む。
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答案の評価
答案の性格:実践的で戦略的な視点を持った内容です。
解答者の性格:現実的な課題に対し、効率的かつ長期的な解決策を求める技術者です。
 
答案の良いところ
キャッチフレーズ:「戦略的メンテナンスで効率化」
地域ごとのインフラの再編や市区町村の組織体制の強化、新技術の活用とデジタル国土管理の実現を通じて、効率的で持続可能なインフラメンテナンスを提案しています。自治体の限られたリソースを最大限に活用し、民間活力や最新技術を取り入れることで、実行可能な戦略を示しています。
 
改善余地のある点
キャッチフレーズ:「実例とデータで信頼性向上」
具体的な事例やデータの引用が不足しています。各提案の信頼性を高めるためには、実際の成功事例や統計データを用いて具体的な根拠を示すことが必要です。また、提案のコストや経済的効果についても詳細に言及することで、より現実的で実行可能なプランとなるでしょう。
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6. 解答者の選択科目 道路 専門事項 道路設計 答案形式
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(1)社会インフラに対する老朽化対策の課題
非破壊検査技術の導入 
老朽化した社会インフラの内部の劣化や欠陥を評価するために、衝撃弾性波法、自然電位法等の先端技術を活用し、構造の内部の劣化や欠陥を表面から評価する。電気泳動やAEや弾性波波形を利用して,コンクリート内部の状況を評価するので、早期に構造物の変状の発見・劣化状況を把握する。
耐久性向上のための改修技術
老朽化した社会インフラの耐久性を向上させるために、スピーディーな改修技術としてプレストレス導入補強や亜硝酸リチウム補修技術、劣化した部材の交換方法など、老朽化に対応するための効果的な改修手法、新工法を活用する。亜硝酸リチウムや繊維材料などの新材料を活用することで、アルカリシリカゲルの膨張抑制、繊維補強材設置や部材断面外に緊張材を設置することによる耐力向上を高め、LCCを抑える。
メンテナンス計画の最適化
予防保全をベースにしたメンテナンス手法を構築する。点検要領の改訂等メンテナンスサイクルを構築し、将来の維持管理・更新費用を抑制した施設計画の策定,デジタル化・新技術導入を促進して,メンテナンスの生産性を向上する。
(2)非破壊検査技術の導入 
①AE法の活用  
AEは材料・構造物内で発生した損傷等を弾性波が生じる現象で,その弾性波を検出・解析し材料の破壊過程や信頼性評価を行う。目視観察と比較しても鉄筋腐食ひび割れ発生時期を早期に評価する。自然電位法との併用で、鋼材腐食によるコンクリート中の劣化進行過程を高精度に評価する。
②SiGMA解析の導入
SiGMA解析を行い,鋼材腐食過程の微小なAE現象による破壊メカニズムの把握に有効である。鉄筋腐食の膨張圧に伴うコンクリートのひび割れ進行過程を評価し、コンクリート表面のひび割れを目視確認よりも早期に発見し、鉄筋腐食過程の微小なAE減少による破壊メカニズムを把握する。
③超音波探傷法の活用
超音波センサー(探触子)から発信した超音波を試験物中に伝搬させたときの受信状態より、鋼材の欠損・破断箇所を判定する。数値シミュレーションをもとにアレイ探触子の設計条件を明らかにする,アレイデータ高速処理手法やアレイ探傷システムを取り入れることで、高精度に測定する。非破壊であるため、コンクリートの損傷を最小限に抑え、早期に欠陥を発見する。非破壊であるため、コンクリートの損傷を最小限に抑える。
④衝撃弾性波法の活用
鋼球やハンマー等でコンクリート表面を打撃し弾性波を発生させ、加速度センサで観測した波形の特徴からコンクリート中の欠陥,PCグラウトやアンカーボルト固着部の接着剤充填状況を確認する。
⑤反発硬度法の活用
コンクリート表面に打撃を加え、衝撃(反発度)を計ることで、破壊せずにコンクリートの強度を推定する。コンクリート表面を打撃し反発強度を測定することで効率的に強度を推定していく。
(3)新たなリスクと対策
①リスク
上記の非破壊試験や解析手法を取入れても、解析する人材・使いこなせる人材が少ないことが挙げられる。
②対策
 民間や非破壊試験協会の講習会に参加して、定期的なフィードバックを行う。
(4)技術者倫理と社会持続性
①技術者倫理
 タフアサイメントを導入し、PDCAサイクルを活用しながら指導する。これは、技術士倫理要綱「1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先する。」に該当する。
②社会持続性
LCCを安くすることを念頭に置かせ、構造物を長寿命化させるよう指導する。これは、SDGs11「住み続けられるまちづくりを」に該当する。
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答案の評価
答案の性格:技術的で実践的な解決策を重視し、革新的な技術を積極的に取り入れる内容です。解答者は効率的な解決策を追求する技術者です。
答案の良いところ:「最新技術で効率化と精度向上」
老朽化対策として、非破壊検査技術や耐久性向上のための改修技術を具体的に提案しています。これにより、早期発見と効率的な補修が可能となり、インフラの寿命を延ばし、維持管理費用を抑えることができます。デジタル技術の導入や、メンテナンス計画の最適化を図ることで、予防保全を推進し、持続可能なインフラ管理を実現しています。
 
改善余地のある点:「データと人材で信頼性向上」
具体的なデータや事例の引用が不足しています。また、新技術の導入に伴う人材の不足やスキル不足が課題です。実例やデータの引用を増やし、技術者の教育とトレーニングプログラムを強化することで、提案の信頼性を高め、実行力を向上させる必要があります。
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7.解答者の選択科目 施工 専門事項 施工計画 答案形式
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1.施設のメンテナンスを実施する上での課題
(1)予防保全型維持管理への転換 
構造物の機能確保の観点から、損傷が軽微なうちに老朽化したインフラの維持管理を行い、機能を低下させずにコストを抑えることが課題となる。建設後50年以上経過するインフラの割合は、今後10~20年で急速に増加する。予防保全型維持管理へ転換することで、インフラの機能維持を図るとともに、維持管理のトータルコストの削減と予算の平準化を図る。
(2)地域インフラ群再生戦略マネジメント
効率的な運用の観点から、市区町村を跨いだ広域的な視点により複数・多分野の施設を群として捉え、将来的に必要な機能を検討することが課題となる。地方では、人口減少が進み厳しい財政の下、技術者不足であることから、広域的な協力体制を構築し、各市区町村が連携してインフラ維持管理を行うことで、効率的な運用を実現する。
(3)維持管理技術者の確保
人材育成の観点から、熟練技術者の技術を分析し、
マニュアル・研修等を形式知化し、OFF-JTと組合せることにより技術継承を行うことが課題となる。技術継承には、若手技術者を育成する必要があり、官民一体となって研修体制を強化する。また、建設キャリアアップシステムを用いて技術者の処遇改善を図り、維持管理技術者を確保する。
2.課題1「予防保全型維持管理」の解決策
(1)メンテナンスサイクルの促進
老朽化したインフラについて、点検・診断・措置・記録のメンテナンスサイクルを推進し、健全度の把握を行う。管理水準を下回る早期に処置が必要なインフラについては、補修・補強等を実施し、機能確保を行う。また、点検結果を踏まえて、早期に修繕等が必要なインフラや予防保全の管理水準を下回るインフラを抽出し、補修・補強を行う。
(2)ロボット等によるインフラの点検
膨大な数の老朽化したインフラは、ドローン等を活用して、短時間に点検写真を大量に撮影・取得することが可能となる。技術者がインフラを診断する際、AIによって点検画像から損傷・変状を自動検出し、判断を支援する。また、作業員が入り込めない狭隘な箇所の点検においても、ドローン等の活用により効率的な点検を行う。
(3)インフラの集約・再編等
各インフラ施設の使用頻度や重要性を評価し、収集したデータを基に評価結果を解析する。その上で、市区町村を跨いだ広域的な視点で集約・再編を行う。地域に合った規模でインフラを適切に維持管理することで、地域に必要なインフラの維持管理を継続する。また、インフラの廃止・撤去については、将来計画を検討する。
3.新たに生じうるリスクとそれへの対策
(1)新たに生じうるリスク
近年の都市化によりビル密集地では、ドローンが狭隘な箇所を飛行中に撮影箇所が故障し、施設のひび割れ等の損傷を見つけることができず、損傷が深度化してしまい、インフラに必要な機能を確保できない恐れがある。
(2)それへの対策
損傷の深度化が予想される場合、カメラを設置し定期的な監視を行う。また、損傷箇所周辺には、変位計を設置し変位量の把握を行う。変位量が基準値を超えた場合、あらかじめスマホ等と連携させておき、関係者同士が早急に把握できるようにする。
4.業務を遂行するに当たり必要となる要件・留意点
(1)技術者倫理
使用頻度が高く重要な施設については、点群データや予測した気温、湿度を入力し、解析シュミレーションを行う。その後の損傷程度を予測し、維持管理することにより国民の安全を確保する。
(2)社会持続性
メンテナンスサイクルを推進し、損傷を深度化させず、管理水準を上回るよう定期監視する。また、点検・診断等の健全度の把握方法について、熟練技術者の技術を若手技術者へ継承し、安全なインフラを持続させる。
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建設部門 トンネル

Ⅲ-1

我が国は、国土の約75%が山地や丘陵地であるため、鉄道や道路等のインフラでは数多くのトンネルが構築されてきたが、完成後に地山の劣化や地下水の影響によって外力が作用し、盤ぶくれや覆工にひびわれ等が見られるようになってきた。近年、これらを改修する大規模な工事が各種の条件下で長期に亘り行われている。このような変状を発生させない、若しくは変状を改修する工事を効率的に行うため、調査、設計、建設、維持管理及び改修工事の各段階において十分に配慮して業務を遂行することが重要である。これらのことを踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1) 山岳部のトンネルにおいて、完成後に作用する外力の影響に伴い発生する変状の抑制や変状を改修するうえで考慮すべき課題を、技術者としての立場で多面的な観点から3つ以上抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。ただし、地震、地すべり及び近接施工に伴う影響は、対象から除くものとする。

(2) 前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。

(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行しでも新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

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解答者の選択科目 トンネル 専門事項 トンネル設計 答案形式

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1.山岳トンネルにおける完成後に作用する外力影響

(1)覆工背面の空洞抑制における覆工内圧の確保

矢板工法で施工されトンネルは、経年劣化から矢板腐食を起こし、覆工背面に空洞が生じる。旧来構造の現在技術改修の観点から、覆工背面の空洞化に対し、現在機能の回復から空洞部の充填を行い、地山を復元することにより、覆工と地山を密着させ均一な応力伝達を図る。

(2)偏土圧の作用における構造安定の確保

トンネル軸線と地山との関係により、左右非対称な地山においては、側方からの偏った土圧作用を受ける。トンネル躯体の力学的バランス確保の観点から、トンネル躯体への偏圧荷重を相殺するように、抵抗側に荷重増加(反力)を確保することで、長期的な地山安定を図る。

(3)地下水位をコントロールして付加外力の排除

トンネル完成後の地下水の上昇(回復)にともない、覆工への水圧作用が生じる。地下水圧力回避の観点から、地下水が低下するように、坑内に地下水の誘導(排水)を促すことで、地下水の上昇影響を回避させ、付加外力の発生の排除を図る。

2.「偏土圧による構造安定の確保」の解決策

(1)側方荷重に対する押え盛土

偏土圧は常時側方からの荷重作用を受け、トンネル躯体に変状をもたらす。そこで、トンネル掘削地山の安定に対し、作用荷重と同等の荷重を、押え盛土や人口地山の構築により、抵抗側に作用させ土圧のバランスを図る。

(2)坑内内圧の付与増加

偏土圧作用側の覆工内面から、ロックボルトを打設(増しボルト)することによって、打設ボルトが地山に定着し、発生する軸力により内圧効果を覆工に付与させる。それだけでなく、地山定着したロックボルトの地山改良効果により、地山のせん断抵抗が向上し、見かけの物性改良効果が得られ、抵抗力を増加させて地山安定を図る。

(3)薬液注入による改良

薬液注入により地山の改良を図り、地山の持つアーチアクション(グランドアーチ)効果を発揮させる。それに加えて、地山を改良することで、地山のブロック化を図り、地山全体で側圧に抵抗させて地山安定を図る。

(4)坑内覆工巻立て

内空余裕を利用した内巻補強工にて、覆工の耐力を向上させる。それには、覆工全周にコンクリートを増厚する工法や、内空余裕の制限から、高強度繊維シートを用いた補強ならびに軽量パネルによる巻立て工法を使用する。それにより、覆工耐力が向上し、外力荷重の分散を図ることができる。

3.新たなリスクと対策

(1)新たなリスク

偏土圧対策として、トンネル側方部に新たに構築(現況斜面に腹付け)された盛土に対し、盛土荷重の加算(起動側荷重の増加)から、構築斜面下方の現況安全率が低下し、地すべりが発生する。

(2)リスク対策

盛土材料の軽量化

盛土材料の軽量化や改良範囲の制限により、斜面崩壊の安定度を向上させる。

構築物については、人口地山の形成に軽量材(エアモルタル)を用いて、単位体積重量の軽減を図ることで斜面安定度を向上させる。

また、薬液注入における地山改良では、抵抗側領域の改良より、斜面崩壊のすべり円弧の安全率を向上(ずべり不動層を構築)させ地すべりを抑止する。

斜面安定対策  

新たな荷重増加(盛土等)に対する地すべり発生に対して、斜面の抑止対策により盛土安定を図る。

斜面対策については、抑止工(グランドアンカー工もしくは鉄筋挿入工等)により、抑止力を抵抗側斜面に付加させ、計画安全率Fs=1.20以上を確保できるように抑止する。

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答案の評価

答案の性格:技術的で実践的な解決策を重視し、革新的な技術を積極的に取り入れる内容です。解答者は効率的な解決策を追求する技術者です。

答案の良いところ:「具体的提案で実行力を強化」

非破壊検査技術や耐久性向上のための改修技術を具体的に提案し、実行可能性を高めています。技術の詳細な説明と適用方法が明確で、実践的な解決策を提供しています。これにより、老朽化したインフラの早期発見と効率的な補修が可能となり、インフラの寿命を延ばし、維持管理費用を抑えることができます。

改善余地のある点:「経済性と実例で信頼性向上」

具体的なデータや事例の引用が少ない。各提案の信頼性を高めるために、実際の成功事例や統計データを用いて具体的な根拠を示すことが必要です。また、提案のコストや経済的効果についても詳細に言及することで、より現実的で実行可能なプランとなるでしょう。

建設部門 河川砂防

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問題 建設部門 河川砂防 Ⅱ-1-1

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我が国の河川堤防は、これまで土堤を原則として築造されてきた。土堤とすることの利点および欠点をそれぞれ2つ以上挙げよ。また、土堤の高さ設定に当たっては、計画高水位を加算する必要があるが、現行の技術基準類に示された考えた方に沿って、余裕高に見込まれるべき事象または機能を1つ以上上げ、その内容を説明せよ。

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解答者の選択科目 河川砂防 専門事項 河川計画 答案形式

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1. 土堤の利点

1) 施工の容易性: 土堤は主に土材料を用いるため、材料の調達が容易であり、施工も比較的簡単である。これにより、施工の効率が向上し、工期の短縮とコストの削減が実現できる。

2) 経済的: コンクリートなどの他の防災構造物と比較して、土堤は材料費や施工費が低い。そのため、予算の制約のあるプロジェクトに適している。

2. 土堤の欠点

1) 越水による堤防崩壊: 土堤は越水に対して脆弱であり、越水が発生すると裏法尻に最もせん断力がかかり、堤防崩壊の危険性が高まる。これにより、局部的な崩壊が全体の堤防崩壊につながる可能性がある。

2) 浸透による堤防崩壊: 長時間の水浸しや高い水位の状態が持続すると、土堤の湿潤面が上昇し、すべり破壊や堤体の浸透による崩壊が生じる可能性がある。これに対処するために、堤防の保全と適切な排水施設の設置が必要である。

3. 余裕高に見込まれるべき事象および機能

軟弱地盤が分布する箇所では、堤防の自重による沈下が発生する可能性がある。したがって、沈下分を考慮した余裕高の設定が重要である。具体的には、沈下解析を通じて沈下量を評価し、その分の余裕高を確保する必要がある。これにより、長期的な安定性が確保され、堤防の持続的な機能が維持される。

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問題 建設部門 河川砂防 Ⅱ-2-1

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解答者の選択科目 河川砂防 専門事項 河川計画 答案形式

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1.総合的な土砂管理計画策定に関する拡張提案

1) 調査・検討すべき事項 流域の供給量、貯留量、搬送量 流域全体の土砂の移動量を正確に把握するため、上流側の砂防域からの供給量、ダムや砂防堰堤による貯留量、さらには河川による搬送量を詳細に調査する。これにより、土砂の全体的な流れとその影響を理解し、効果的な管理計画の策定に役立てることが可能となる。また、これらのデータは、流域内での土砂の動きと堆積状況の変化を詳細に把握するためにも重要である。

2) 流砂系全体の土砂構成 土砂の移動に影響を及ぼす要因として、植物の繁茂や土粒子の粒系が重要である。崩壊地の粒度分析やボーリング調査等を通じて、流砂系全体の土砂粒度を把握する。これにより、特定の地域での土砂の動きや、環境への影響を詳細に評価することができる。これらの情報は、土砂移動の予測や対策策定に不可欠であり、特に環境への影響を最小限に抑えるためにも重要である。

3) 災害による土砂排出量の試算 過去の災害履歴を基に、土砂崩壊による供給量を把握し、災害による土砂供給量の試算を行う。この試算により、将来の災害リスクに対応した計画を立てることが可能となる。また、災害リスクの高い地域を特定し、そこに焦点を当てた予防措置や対策計画を立てることができる。

4) 環境データ 土砂管理計画の策定には、生態系や環境への影響を総合的に評価することが重要である。特に重要な種の確認や生態系への影響評価を行い、土砂管理計画が生物多様性や環境保全に負の影響を及ぼさないようにする。

2. 業務遂行手順と留意点・工夫点

1) 必要な対策土砂量の検討 流砂系全体の土砂収支を分析し、洗堀傾向や堆積傾向の箇所を特定し、それに基づいて対策を検討する。この検討には、地域の特性や環境への影響を考慮することが重要である。

2) 土砂移動シミュレーションの実施 2次元河床変動解析による土砂移動のシミュレーションを行い、対策実施後の影響も予測する。このシミュレーションは、対策の効果を評価し、必要な調整を行うために重要である。

3) シミュレーション結果に基づく対策検討 シミュレーションの結果を基に、排砂バイパストンネルの検討や既設不透過型砂防堰堤の透過型への改良など、具体的な対策を検討する。これには、既存の施設の機能向上や新たな施設の建設などが含まれる。

3. 関係者との調整方策 

ダムの濁水が漁業へ与える影響に関して、漁業関係者の懸念を考慮し、ダム管理者に対して、漁業期間中の排砂量を減少させるよう提案する。濁度調査を実施し、漁業への影響が少ないことを確認する。通常期には排砂量を増加させ、全体の土砂収支を適切に保つ。このような関係者との協調は、計画の実施における社会的受容性を高めるために重要である。

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問題 建設部門 河川砂防 Ⅱ-2-2

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 我が国では、毎年のように、水害や土砂災害等が発生し、甚大な人的被害や経済損失をもたらしている。こうした災害が発生した場合には、地域の1日も早い復興のために災害復旧を迅速に進めることが重要である。また、災害復旧を行う際は自然環境に配慮することが求められている。

  そこで、洪水や土砂災害、高潮によって、自治体が管理する施設が被災した際にあなたが災害復旧事業の申請から実施までに携わることになった場合、河川、砂防、海岸・海洋のいずれかの分野を対象として、以下の問いに答えよ。なお、被災施設は、河川分野は堤防又は護岸、砂防分野は護岸工又は渓流保全工、海岸・海洋分野は堤防又は護岸とし、自然環境に配慮した設計を検討するものとする。

(1)災害復旧の申請に当たって、収集・整理すべき資料や情報について述べよ。併せて、それらの目的や内容について説明せよ。

(2)被災した直後から災害復旧事業の実施までの手順について述べよ。また、被災した直後から災害復旧事業の実施までの作業において、留意すべき点や工夫を要する点について説明せよ。

(3)被災した施設を迅速に復旧するための支援を得るための関係者との調整内容について述べよ

 

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解答者の選択科目 河川砂防 専門事項 河川構造物 答案形式

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1.収集・整理すべき資料や情報(砂防分野の護岸)

1)被災河道調査:コンクリート護岸の使用を極力抑えた護岸設計を復旧工法に反映させるため、現地調査による被災河道部の詳細な損傷報告や洪水水衝部写真、ビデオ記録等を収集する。河道形状と流体力による水衝部損傷への影響を理解し、洪水水衝部の蛇行河道の安定化による効果的な護岸配置計画を策定する。

2)生物利用の護岸性状調査:生物の移動経路に適した護岸法面性状を把握するため、現地の生態系調査報告書や環境影響評価結果等を収集する。生物の移動経路や生息、生育に適した護岸法面の湿潤性や凹凸形状、空隙等を設計に反映させる。

3)過去の被災要因の調査:過去の災害から被災要因把握するため、土砂災害記録や地質調査、水文データを収集、整理する。掃流力の増加に伴う河床洗堀や土砂流出による被災要因を分析し、河道粗度や護岸配置計画に反映させる。

2.災害復旧事業に実施するまでの手順

1)緊急対応と現地調査設計:被災直後に緊急避難や応急措置を実施する。水衝部による河岸の浸食や護岸の損壊を記録し、洪水水衝部の蛇行河道を復元した復旧工法を検討する。砂礫堆の移動を抑止する蛇行形状の採用により、河床洗堀の進行抑制型の河道形状や護岸配置とする。

2) 自然環境調査と護岸設計:河岸の環境機能を保全するため、河岸表面における湿潤度、緑被率、表面温度、及び開空率などを調査記録し、生物の生息場所・移動経路に適した河岸の物理環境条件を把握する。特に川裏部における非飛翔性生物を想定した寄せ石、植生基盤の保水により湿潤性や温度変動抑制機能を確保する。

3) 災害履歴の収集と流水調整:洪水時の流速増加による洗堀被害防止を図るため、被災護岸の災害記録や水文データ等を収集する。掃流力による河床変動解析を行い、河床に自然石等を配置した粗度上昇による主流速の低減調整を行う。また、土砂流出箇所を想定した緩衝帯を設定する。

4) 復旧計画の策定と持続可能性:災害廃棄物の再生利用や林地残材チップ化による木質バイオマス発電等の資源循環型処理を盛り込んだ復旧計画を立案する。 

3.効率的・効果的に進める関係者調整方策

1)測量設計会社:河床変動解析結果から水制護岸工による主流流速を調整する箇所を特定し、復旧護岸設計に反映するよう指導する。また地域在来種の食物網を想定したビオトープ設計にあたり、モニタリング調査等を事前調整する。

2)工事会社:災害廃棄物で発生する流木や木屑等を建築資材等への利用可能な高品位廃棄物及び燃料とする低品位廃棄物に分類するよう指導する。廃棄物焼却熱の製造工場利用に向けた需給マッチングによる廃棄物組成一致や収集運搬ルートの最適化の調整を行う。

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問題 建設部門 河川砂防 Ⅲ-1

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 気候変動の影響により頻発か、激甚化する水害(洪水、内水、高潮)、土砂災害による被害を軽減するため、様々な取り組みを総合的かつ横断的に進めている。中でもハード対策の取り組みの1つとして既存ストックを有効活用した対策を計画的に実施する櫃よがある。このような譲許を踏まえ、以下の問に答えよ。

(1)気候変動が、山地域、河川域、沿岸域の水害、土砂災害に及ぼす影響について、各域毎にそれぞれ説明せよ。

(2) 前問(1)で挙げた影響を1つ挙げ、その影響による被害の軽減を図ることができる既存ストックを有効活用した対策を複数示し、それぞれの内容を説明よせ。ただし、対策は、施設の新たな整備や維持管理を除き、既存ストックが有する防災機能の増大、強化を図る対策とする。

(3) 前問(2)で示した対策に関連して新たに浮かびあがってくる課題やリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

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解答者の選択科目 河川砂防 専門事項 河川計画 答案形式

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1. 気候変動が山地域他に及ぼす影響

1) 山地域 気候変動による線状降水帯や長時間の豪雨により、山地の地盤が緩み、土砂災害のリスクが高まる。これにより、発生した土砂が住宅地域まで流出し、大規模な被害をもたらす可能性がある。さらに、少子高齢化により山地での間伐が進まず、流木や土砂が河川を塞ぎ、土砂洪水氾濫を引き起こすことがある。

2) 河川域 気候変動による降雨量の増加により、計画降雨強度を超える豪雨が頻発。これにより外水氾濫やバックウォーター現象、湛水型の内水氾濫が発生するリスクが高まる。

3) 沿岸域 気候変動に伴う台風の大型化や強度増加により、高潮災害のリスクが増大。特に満潮時に高潮が発生すると、被害が拡大する傾向にある。

2. 外水氾濫に対する対策 

1) 利水ダムの洪水調整容量の増加 VVP法を利用したレーダー等による短時間降雨予測により、降雨量やダム流入量の予測精度を向上。分布型流出モデルを用いてダムへの流入量を予測し、豪雨発生前の事前放流を実施する。

2) 堤防のかさ上げ 地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベースから将来予測降雨を導き、流量を算定。不等流計算から水位を算出し、堤防の計画高を決定して堤防のかさ上げを行う。

3) ダムかさ上げ 湛水水面積の上昇に対応するため、FEM解析による腹付け部の温度解析を行い、補強鉄筋や差筋による補強を実施。これによりダムの洪水調整容量の増加を図る。

4) 浚渫 ダム湖内の土砂を浚渫し、洪水調整容量を増加させる。これにより、ダムの洪水調整能力の向上を図る。

3. 対策に関連するリスクとその対策 

高水敷の樹林化 洪水流の流下能力の増加により、土砂の掃流力が落ち、高水敷の樹林化が進む。これが洪水流の妨げとなり水位上昇を招くため、定期的な伐採が必要。

1) 土砂供給バランスの変化 流下能力の変化により河川の土砂堆積機構が変化。河床洗堀や河口部の土砂堆積などの問題が発生する。2次元流況解析により、整備後の土砂堆積や洗堀を予測し、洗堀予想箇所への土砂還元や床固整備を実施する。

2) 河川生態系への影響 瀬や淵の変化により、河川に生息する魚類や植物への影響が生じる可能性がある。多自然型河川工法を用いて自然に近い河道形態を作り、縦断的な瀬と淵、横断的な寄州と淵を設けることで、多様な生物が生息可能な環境を提供する。

建設部門 港湾及び空港

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問題 建設部門 港湾及び空港 Ⅱ-1-1

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個別の港湾や空港に対し, 施設を中心に中期的に目指す港湾や空港の姿をとりまとめる港湾計画や空港マスタープランについて, 港湾・空港の別を明らかにしたうえで, とりまとめることが必要と考えられる主な事柄を3つ挙げ, その内容を述べよ。そのうえで, 港湾計画あるいは空港マスタープランを作成する主な意義を3つ挙げ, その内容を述べよ。

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解答者の選択科目 港湾及び空港 専門事項 港湾計画 答案形式

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1.港湾計画のまとめ事柄

1)需要推計

位置特性や地域産業の観点から、将来の旅客船入港数や取扱貨物量の需要推計と費用対効果算定を実施することで港湾計画の合理性を評価する。 

2)環境保全計画

 船舶の燃料補給時に有毒物質が漏洩した場合など、人や水生生物への影響が懸念される項目の対策案を作成することで周辺環境を保全する。

3)航行安全評価  

港湾工事及び新規構造物により、船舶の航行に混乱が生じて衝突事故等が発生しないよう、航行ルールを作成し、運航管理を行う。

2.港湾計画を作成する主な意義

1)経済活動の活性化  

港湾整備により旅客船や貨物船の入港が可能となることで人や貨物の交流が活発になり、農商工の産業生産が向上し地域経済が活性化できる。 

2)維持管理            

 予防保全が可能となり計画的に施設改修等を行うことで、港湾管理者は港湾の永続的な維持管理ができる。

3)安全性の確保  

港湾施設の水深・航路幅の確保などのハード面の対策と航行ルール遵守などのソフト面の対策により、船舶の衝突事故等が減少し港湾の安全性に寄与できる。

建設部門 鋼構造及びコンクリート

 

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問題 建設部門 鋼構造及びコンクリート Ⅱ-1-4

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 寒中コンクリートとして施工する気象条件に付いて概説し、コンクリート構造物の品質を確保するうえで留意すべき事項を施工計画、品質、材料、配(調)合、練混ぜ、運搬および打込み、養生、型枠及び支保工、品質管理から2項目を選んで示し、それぞれに対する対策を述べよ。

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解答者の選択科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造物の維持管理 答案形式

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1.気象条件

 日平均気温が4℃程度となる時期であって、最低気温がマイナスとなる気象条件とする。ただし、日平均気温が4℃以上であっても日中と夜間、早朝の気温差が大きく、最低気温が5℃に低下する場合も含む。目標のコンクリート温度は5-20℃とする。

2.1 留意点1 材料

AEコンクリートの使用を標準とし、かつ早強ポルトランドセメントまたは普通ポルトランドセメントを用い、打ち込み時温度は5~20℃とする。
 
対策  AE減水剤の空気連行性で耐凍害性を向上させると共に、コンクリート製造箇所が0℃以下の期間は水、骨材を加熱する。

2.2留意点2 養生

熱伝導率の小さい断熱材で表面を覆い保温養生する。外気温が低いときは給熱養生を行う。
対策:断熱ポリエチレンやウレタンの発泡シートでコンクリートを覆う。給熱は、電気温床線などでコンクリート面を加熱し、サーモスタット制御する。コンクリート温度を常時計測して、積算温度式から強度を推定する。

積算温度M=Σ(θ+A)△t 
 θ :コンクリート温度℃
A :定数10℃
△t :時間

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問題 建設部門 鋼構造及びコンクリート Ⅱ-2-1

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 近年,想定を超える自然災害により,インフラ構造物に被害が生じる事例が増加している。今後,新設構造物の設計,既設構造物の補強設計,施工計画等を行う際に,設計荷重を超える自然現象の外カ(超過外カ)が作用したとしても,損傷を制御し, 構造物として必要な性能を確保するために,冗長性の確保や災害後の復旧性に配慮することが求められる。あなたが鋼構造物及びコンクリート構造物を担当する技術者として業務を行うに当たり,下記の内容について記述せよ。

( 1 )対象とする構造物と自然災害を設定し,超過外力に対する冗長性の確保や災害後の復旧性を考慮した調査,構造検討すべき事項とその技術的内容について説明せよ。

( 2 )業務を進める手順を列挙して,それぞれの項目ごとに留意すべき点,工夫を要する点を述べよ。

( 3 )業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 
 
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解答者の選択科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造 答案形式
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 多径間連続橋(新設)と巨大地震を想定する。
1.調査、構造検討すべき事項
1) 地震リスクと地盤条件を調査し、橋梁の基礎設計と免震・制震システムの適用を検討する。
2) 構造物への負荷分布を調査し、冗長性を高めるための部材配置と接合部の設計を検討する。
3) 災害時の復旧プロセスとコストを調査し、損傷が発生しやすい部分の修復・交換が容易な構造設計を検討する。
4) 地震動特性と構造物応答の相互作用を調査し、多径間連続橋に対する適切な免震基礎システムの設計を検討する。
2.業務手順と留意点、工夫点
1) 地震リスクと地盤条件の詳細調査
 最新の地震データと地質調査技術を活用し、地盤調査の精度を高める。GISを利用して、地質や地震リスクの情報を視覚化し、分析の効率化と正確性を図る。
2) 橋梁の基礎設計と免震・制震システムの適用
 最新の研究成果と実績に基づいた選択を行い、シミュレーションによってその効果を事前に検証する。多様な地震シナリオを考慮した設計を行うことで、システムの適用範囲と限界を正確に把握する。
3) 構造物への負荷分布調査と冗長性設計
 構造解析ソフトウェアを用いて、負荷分布の正確な評価を行う。設計段階での多次元的な解析を通じて、冗長性の最適化を図り、設計の信頼性を高める。また、構造物のモニタリングシステムを計画に組み込むことで、長期的な構造物の性能評価を可能にする。
4) 災害時復旧プロセスとコストの調査
 復旧計画に基づくシミュレーションを行うことで、最もコスト効率の高い復旧計画を策定する。解析により、災害発生時に迅速かつ効果的な体制を整える。
5) 地震動特性と構造物応答の相互作用調査
 広範囲な地震データベースと高性能なシミュレーションツールを使用する。構造物の動的応答に関する正確なモデリングを行い、異なる地震シナリオに対する構造物の挙動を詳細に分析し、信頼性を高める。
3.関係者との調整方策
 免震・制震システムのコストと効果のバランスを測るため、構造設計に対して、免震と制振の両面から検討し、ライフサイクルコスト分析(LCC)にてコスト効率の高い免震・制震システムを選定するよう指導する。
 災害時復旧プロセスの実現可能性を高めるため、施工管理者に対して、モジュラー設計や簡易交換可能な部材の使用を推奨する。PCコンクリート構造で橋梁の各部分をモジュールし、損傷部だけを交換し、復旧作業をスピード化する。また構造設計者には、耐震装置を推奨し耐震性を付与すると共に対策を軽減する。
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問題 建設部門 鋼構造及びコンクリート Ⅱ-2-2
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 老朽化した地上構造物の健全性を評価するにあたり、点検困難部の損傷程度を推定することになった。ここで、点検困難部とは、接近し肉眼で点検できない狭隘部(足場を設置すれば損傷を直接目視できるなど容易に点検できる箇所や部材を除く)や直説目視では損傷を点検できない密閉部、表面被覆された部材などの不可視部をいう。この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1) 点検困難部の具体事例と想定される損傷を挙げ、その損傷程度を推定し、地上構造物の健全性を評価する調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3) 業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者の選択科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造の補修・補強 答案形式
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(1)健全性を評価する調査、検討すべき事項
橋梁の下部工で、幅0.2mm以上の格子状のひび割れが部分的に生じている場合を想定する。 
 ①目視点検
 外観変状からひび割れや白色析出物の有無を目視確認する。周辺のコンクリート構造物にASRがある場合は、コアを採取して、反応性骨材や反応リムの有無を確認する。
 ②モニタリング/非破壊検査
弾性波法を行い,コンクリートの伝搬速度を測定し,損傷箇所を特定する。
③残存膨張量・塩化物イオン・中性化深さ
コアによる残存膨張量や塩化物イオン量や中性化深さを測定し,損傷要因を検討する。
(2)手順と留意点 
①目視点検
クラックスケールでひび割れ幅の測定やひび割れの形状(軸方向・格子状等)を確認する。ひび割れ形状の判定が困難で時間を要するので、クラック針ゲージペンや超音波法,デジタルカメラ画像処理システム等の非破壊試験や解析技術の非破壊試験や解析技術を指導する。
②モニタリング/非破壊検査
弾性波法を行い、4000m/s を下回っている箇所を特定し,ASRの進行範囲を特定する。見えない躯体内部の劣化進行範囲の推定が困難で時間を要するので、反射した波の周期を分析し、i-TECS技術を活用し、内部欠陥の把握をするよう指導する。
③コアの性能試験
試験材齢3ヶ月の膨張量が0.05%を超える箇所を特定し、今後の膨張可能性を予測する。
塩化物イオン量や中性化深さも測定し、塩害や中性化等の劣化要因を特定する。
④将来予測
コア試験体を採取し、圧縮強度や静弾性係数を測定し、劣化程度を数値化する。
(3)関係者との調整方策  
 構造設計者には試験データをベースに効率的な診断方法を標準化することで、工期短縮させ、一方コアボーリング業者や非破壊試験専門業者には一度に複数のポイントを調査し、試験箇所を減らすことで試験時間と人件費を少なくする。また、社内ポータルサイトやビジネスチャット、ファイル共有をリアルタイムで情報を共クラウドベースのツールを用いて、関係者間の情報共有・フィードバックを促進する。
このようにして、私はプロマネとして構造設計者の貢献をもとに現場作業全体をDXの視点から見直す。その結果、現地での施工業者の負担を軽減し、工期短縮や人件費削減によって関係者らをとりまとめる。
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解答者の選択科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造物の計画と維持管理 簡易答案形式2
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1.調査検討事項
  塩害損傷補修のため表面塗装された築20年のRC床版橋で鉄筋腐食が進行している。
(1) 打音法と衝撃弾性波法を用いた損傷範囲の特定
打音法で音、衝撃弾性波法で弾性波速度を調査し、健全部と損傷部の特性の差異から損傷範囲を検討する。
(2) 材料の化学的・物理的評価
採取コアを用いて塩化物イオン濃度、残存膨張量、中性化深さを調査し、原因と評価される閾値と対比して損傷原因を検討する。
(3) 腐食度と鉄筋の位置の確認
電磁波探査で鉄筋位置と配置を確認後、はつり調査で実際に露出させて鋼材の腐食度を検討する。
2.手順と留意点
(1) 箇所抽出
打音法で初期スクリーニング後に衝撃弾性波法で損傷範囲をより詳細に絞り込む。高周波と低周波の探触子を用いて伝播速度変化や振幅変化を明確に探査する。
(2) 材料の化学的・物理的評価
 塩化物イオン濃度は低濃度での分析に優れる電位差滴定法を用いる。残存膨張量は13週間を要するが膨張率予測に優れるJCI—S-011法で評価する。中性化深さは鮮明なピンク色の位置を確認する。
(3) 微細構造の分析
アルカリシリカ反応(ASR)の評価としてSEM(走査電子顕微鏡)分析を行い、骨材周辺のゲルの形成に着目し重点的に観察する。
(4) 鉄筋の腐食度判定
 表面の錆の状態、断面減少の程度から腐食度を判定する。その際、腐食の色変化(湿度が高い場合の赤褐色、塩害環境下で白っぽい色)を観察し腐食原因の手がかりとする。
(5) 劣化予測
 内部の塩分拡散式は表面からの供給が遮断されている場合での拡散モデル式を参考に、損傷の進行予測を行う。
3.調整方策
(1) 事前テストの実施 
非破壊試験者に対し事前テストの実施を指導し、診断基準の共通理解、材料の不均一性による誤解釈の解消、手法の改善を行い診断効率の低下を防止する。
(2) モデル検証の実施
 劣化予測者に対しモデルの検証の実施を指導し、予測式のパラメータの調整、特定環境条件に基づく係数導入、新しい知見の組み込みを行い、信頼性の高い予測により意思決定が迅速化し、プロジェクトの進行をスムーズにさせる。
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問題 建設部門 鋼構造及びコンクリート Ⅲ-1
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 我が国の生産年齢人口は1995年をピークに減少局面に突入しており、建設業就業者数も減少の一途をたどっている。今後10年間には、熟練技術者の大量退職込まれていることから、継続的な技術・技能の伝承を図るとともに、次世代を担う技術者の育成を行っていく必要がある。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)今後、減少していく熟練技術者の技術・技能、建設業界として培ってきた技術を伝承するとともに、次世代の技術者の育成をはかっていくうえでの課題を、鋼構造及びコンクリートの技術者としての立場で多目的な観点から3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要な課題と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について専門技術を踏まえた対応策を示せ。
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解答者の選択科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造物の計画と維持管理 答案形式
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(1)培ってきた技術を伝承するための課題
①社内講習の活用  
持続可能な技術伝承体制を構築する観点から、社内講習会を開催する。鋼・コンクリート構造物の施工方技術・設計手法・耐久性等の持続的な技術伝承体制を構築する。それにより、育成した1人前の技術者が次世代の技術者に技術を伝える伝承体制を構築する。
自社社員が社内の技術講習会を年に数回開催する。
①他社依存しない安定活動,②診断・補修技術等自社業務にマッチした学び,③継続的な技術研鑽で高みを目指し、その社員が次の講師となる態勢を整える。
②社内発表会の活用  
アウトプットする経験を積む観点から、社内の技術発表会に企画する。社内発表等で自分の携わった技術を発表することで,なにを伝えるべきか、どのように伝えるべきことが明確となる。鋼・コンクリート構造における施工技術における設計条件等の知識の集約化と、伝える方法の効率化が図れ、会社の技術力や理解度向上にもつながる。
③現場見学会の開催 
橋梁やビル等の鋼・コンクリート構造物の実物を見て実感しながら学ぶ観点から、施工状況の現場見学会を企画する。自身が担うべきモノ作りが現れている現場を見ることで具体的イメージを形成しながら学べる。また、出来上がり(結果)だけでなくヒトモノカネなど生産設備(手段、プロセス)も共に学べる。
(2)「①持続可能な技術伝承体制を構築する観点から、社内講習会を開催する」について解決策を述べる。
①伝承体制の構築。 
育成した1人前の技術者が次世代の技術者への技術伝承体制を構築するため、コンクリート標準示方書等で最新のコンクリートの強度クラス、耐震性等の定期的な技術アップデートセッションの実施を整える体制を構築する。
②実践ベースのトレーニングの導入
早い段階で実務に慣れるため、配合や施工技術等の各単元が終わったら習熟度の確認テストを行う等の復習する機会を設ける。コンクリートの打設、仕上げ、補修技術などの手法を、実際の現場や模擬現場でのトレーニングを徹底的に勉強させる。
③外部講師の委託
自己治癒コンクリート、高性能コンクリート、環境適応設計等のコンクリート技術の第一人者や業界の専門家を招き、最先端の知識や技術、研究結果等を学ぶ。
④対話ベースの勉強会の実施
 小グループでのディスカッションを中心とした勉強会を実施する。コンクリートの性質、耐久性、浸透性、圧縮強度など実際の問題や疑問を共有し、解決策を共同で考える。
⑤定期的な技術アップデートセッションの実施
 強度クラス、耐震性、炭酸カルシウムシリケートハ
イドレート(C-S-H)、アドミクスチャーなど最新のコンクリート技術や建築基準、規格の変更点などを取り上げ、社内の全技術者に情報を提供する。
⑥ケーススタディベース形式の勉強会
 強度不足、アルカリシリカ反応、クラック、腐食、補修材の検討などプロジェクトや外部の事例を取り上げ、成功例や失敗例から学びを得るセッションを行う。
(3)①リスク
高性能コンクリートは、配合、打設に細心の注意が必要で、専門的な技術やノウハウが必要であり、社内教育だけでは限界があり、情報アップデートができず誤った施工で、フレッシュ時の施工性低下による品質低下を招く。
②対策 
生コン情報を電子化し、材料・品質・施工のデータをクラウド化し、関係者で一元管理する。
経験豊富なエンジニア技術者が若手に対しメンタリングし、メンターシップで実践的なノウハウを伝える。
超高強度繊維コンクリートなどの新技術やγ-C2Sなどの材料を初めて導入する際には、小規模なパイロットプロジェクトにより実際の注意や問題点を認識する。
これらにより、新しい技術や材料に関する正確で実践的な知識とスキルを企業内で共有する。
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問題 建設部門 鋼構造及びコンクリート Ⅲ-2
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 建設業では建設技術者の不足や高齢化が深刻な課題であり,業務の効率化が進められている。また,長時間労働是正に向けた働き方改革を進めるうえでも業務の効率化が求められている。このような状況を踏まえ,以下の問いに答えよ。
( 1 )省力化や働き方改革等に向けた鋼構造物又はコンクリート構造物の調査,設計,製作, 施工,維持管理の業務効率化の取組における技術的課題を,技術者として多面的な観点から3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題の内容を示せ。
( 2 )前問( 1 )で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1っ挙げ,これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する複数の解決策を,専門技術用語を交えて示せ。
( 3 )前問( 2 )で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造 答案形式
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1.業務効率化の取組における技術的課題
1) 構造物の長寿命化とメンテナンス効率の向上
 持続可能性とコスト効率の観点から、構造物の長寿命化を目指して耐久性が高く環境に優しい材料の開発に取り組む。メンテナンスの頻度を減らし資源を効率的に活用することで、技術者不足を緩和し経済的負担を軽減する。リアルタイム監視システムの導入による予防保全は、メンテナンス作業を最適化し、鋼構造・コンクリート構造物建設の労働力問題に対処する。
2) 施工プロセスの効率化と自動化技術の導入 
 技術革新と作業安全の観点から、プレキャストコンクリートの利用拡大やロボット技術の導入を進め、コンクリート施工期間の短縮と安全性の向上をもたらし、高齢化する労働力の負担を軽減する。鉄筋やコンクリート自動化技術は、建設現場の安全と効率を同時に向上する。
3) リモート技術の活用による労働環境の改善
 ワークライフバランスと作業効率の観点から、ドローン調査やBIMを用いた遠隔プロジェクト管理を勧め、建設業の労働環境を改善する。技術者が遠隔地からでも効率的に作業を行えるようになることで、柔軟な働き方が可能となり、労働環境の質が向上する。これらの技術の実装には、通信や画像データなどデータ共有の仕組みが必要である。
2.最重要課題と解決策
 課題1「構造物の長寿命化とメンテナンス効率の向上」は、限られた人的資源を最適に活用し、経済的な維持管理コストを削減するために最も重要である。
1) 耐久性向上と環境配慮型材料の開発
 高性能コンクリートや耐腐食性鋼材などの使用は、構造物の耐久性を高め、定期的なメンテナンスの必要性を減らし、技術者の作業負荷を軽減する。自己修復コンクリートや防錆技術の応用は、メンテナンス回数を減らして業務効率化を促進する。人材不足と高齢化問題を改善し、柔軟な勤務体制やワークライフバランスを支援する。
2) リアルタイム監視システムによる予防保全
 鋼構造物やコンクリート構造物の健全性を継続的に監視し、予防保全により初期段階での損傷を特定することで、大規模な修復作業の必要性を低減する。センサー技術やIoTの応用により、劣化の進行や損傷の発生をリアルタイムで検知し、メンテナンス時期を判断する。このアプローチにより、鋼構造やコンクリート構造物のライフサイクルコストを削減し、作業軽減すると同時に、構造物の安全性と信頼性を高める。
3) デジタルツイン技術の活用
 実際の構造物とそのデジタルレプリカの間でデータをリアルタイムに同期させ、構造物挙動の正確なシミュレーションする。鋼構造やコンクリート構造において、鉄骨建て方シミュレーションや構造物環境影響分析、構造物のエネルギー効率の最適化やライフサイクルコスト分析を行う。
3.将来的な懸念事項とそれへの対策
1) 性能の不確実性による倒壊リスク
 建設分野の新材料は、環境条件や負荷条件の変化に対する反応が特定用途向けであり、長期間にわたるデータの不足により、性能の不確実性リスクをはらんでいる。温暖化気候などにより、劣化が加速し、構造物崩壊を招く恐れがある。
 対策:導入前に徹底した品質管理と長期にわたるパフォーマンス試験を行い、材料の耐久性と信頼性を確保する。加速劣化試験を含む長期にわたるパフォーマンス試験を行い、材料が温暖化気候を含む様々な環境条件下でも安定した性能を維持することを確認する。気候変動に即して鋼材の耐腐食性試験やコンクリートのクリープおよび収縮性能も評価する。
2)誤検知による経済損失
 リアルタイム監視では、新システムの誤検知のリスクを内包しており、不必要なメンテナンス作業の実施や、経済的リソースの浪費、さらには誤った意思決定に発展する危険性がある。
 このため、システムの冗長性を確保すると共に、建設の鋼構造物に特有な海塩環境や亜熱帯気候条件下での試験を増して、信頼性向上に努めることで、誤検知リスクを抑える。
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解答者の選択科目 鋼構造及びコンクリート 専門事項 コンクリート構造物の計画と維持管理 答案形式
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1. 技術的課題
1)建設現場での自動化技術の導入
建設現場の標準化の観点から、ロボットを用いた自動化技術、AR/MRによる作業効率化の技術、IoTセンサーやAIによる現場状態の監視技術を導入する。
2)働き方の柔軟性による生産性の向上
労働環境の改善の観点から、在宅や遠隔地からのリモートで品質管理、構造物モニタリング、データ分析、CADオペ、技術サポートが可能な技術を導入する。ワークライフバランスの向上とともに、生産性を高め、時間と人を有効活用する。
3)メンテナンスの効率化
維持管理の観点から、自己治癒コンクリート等の耐久性の高いコンクリートを開発し用いることでメンテナンス頻度を減少させる。また、モニタリング技術を活用し構造物の状態をリアルタイムで監視し、劣化予測技術で最小限の修繕を実現する。
2.最重要課題と解決策
上記の中で「建設現場での自動化技術の導入」を最重要と考える。理由として、この技術は現場での人手不足や高齢化問題に対する即効性が高く、他の課題の解決にも間接的に波及効果が期待できるためである。
1)ロボットを用いた自動化技術
①ロボットアームの使用
ロボットアームを用いて鉄筋の配置や結束、コンクリート打設を自動化する。熟練工の技術を必要とする作業や、高所や狭い場所での作業、長時間の打設作業で使用することで作業効率と安全性の効果がある。
②遠隔操作や自動配送ロボット
屋内から現場作業の遠隔操作が可能な重機やロボットを導入する。これにより地理的に離れた人員の使用が可能となり効率的な人材配置が可能となる。また、現場内の資材運搬を自動配送するロボットを導入し、単純作業を削減し専門的な技術作業の効率を高める。
③3Dプリントや3Dスキャナの技術
3Dプリンティング技術を用い、構造物を直接成形することで従来の型枠工を省略し、施工スピードを向上させる。また、3Dスキャナを使用して、現場状況を毎日スキャンし、作業進捗を効率的に管理する。
2)作業支援技術
①AR/MR技術による作業支援
コンクリートの打設、鉄筋組立、型枠設置などを作業支援する拡張現実(AR)・複合現実(MR)技術を活用する。作業員に対して打設時の締固め程度や時間の施工情報等を視覚的に提供し作業手順を指示する。
②ドローンによる現場監視
ドローンを用いて現場全体を監視し、上空からの視点で作業の進捗状況を確認する。これにより、関係者間でのデータの情報共有、次工程における準備、地上からでは見えにくい問題点の早期発見を支援する。
3)状態監視と予測技術
①施工プロセスの可視化
IoTセンサーを使用してコンクリートの出荷・運搬・待機・荷下ろし状況を可視化し、情報を収集・監視する。AIを用いてこれらのデータを分析し、各工程の進捗予測、必要な人と資材の補充予測を行い、施工の各段階における効率を向上させる。
②AIによる予測分析と品質管理
ミキサ内の練混ぜ状態をIoTセンサーで監視し、AIを用いて原料添加の自動化を行う。また、練混ぜ状態のデータからコンクリートの流動性を推定し、スランプ値を予測することでスランプ検査の省略を実現する。
3.懸念事項と対応策
1)導入効果の遅延リスク
自動化技術の広範な普及には、技術実証や予期しない技術課題への対応に多くの時間とコストがかかることから、導入効果が遅延するリスクがある。
2)対応策
①AIを活用した施工シミュレーション
技術実証の前にAIを用いて施工プロセスをシミュレーションし、最適な工程や資材の使用量を算出する。
②プレキャスト化と自動化の組合せ
即効性のあるプレキャスト化と自動化を組み合わせて徐々に自動化施工に移行する。これにより技術の導入リスクを低減しつつ、効率的な施工を実現する。

建設部門 施工計画、施工設備及び積算

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問題 建設部門 施工計画、施工設備及び積算 Ⅱ-1-1

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粘性土で構成される軟弱地盤上の道路盛土工事で、特に対策を講ずることなく道路下を横断するカルバートボックスを設ける場合に想定される変状について説明せよ。また、想定される変状への対策方法について2つ挙げて説明せよ。

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解答者の選択科目 施工計画、施工設備及び積算 専門事項 施工計画立案 答案形式

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1.想定される変状

 カルバートボックスの接続部の段違いによる変形や、盛土荷重載荷による盛土端部の盛り上がりなどが考えられる。 

2.変状への対策工法

(1)支持杭打設

 H型鋼による支持杭を構築し、カルバートボックスの基礎とする。支持杭の施工は、クローラクレーンを使用し、バイブロハンマー等で打設する。

 支持杭には、先端支持杭と摩擦杭が存在する。先端支持杭は、杭先端部で支持する構造であるため、支持層に到達していることを確認する。摩擦杭は、杭長と杭径で決定されるため、掘削深度を確認する。

(2)置き換え工法

 軟弱地盤を良質土へ置き換え、カルバートボックスを支持する。置換え土には、砂や砕石などの良質土を用い、盛土施工と同様にまき出し厚や締固め回数を決定し、締固める。

置換え土に残土が多く含まれて取り除くことが困難な場合には、セメント系の固化剤を撹拌混合して対応する。なお、セメント原料に含まれる自然由来のクロムと、土に含まれる粘土鉱物や有機物によって、水和物の生成が阻害され、土壌環境基準を超える六価クロムが溶出されることがある。事前に溶出試験を行って溶出量を確認する。

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問題 建設部門 施工計画、施工設備及び積算 Ⅱ-2-1

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本護岸整備工事は、大都市郊外の住宅密集地を流れる二級河川に対して必要な計画高水流量を安全に流下させるための河川整備計画の一部である。模式図のように、非出水期に延長70m分の既設護岸設備を撤去し、新たに護岸設備(直径900㎜の鋼管矢板、高さ7mの場所打ちもたれ式擁壁)を新設し、可道を拡幅し河床を設計河床高まで掘下げる工事である。一般道から河川区域へのアクセスは確保されているものとして、本工事の担当責任者の立場で下記の内容について記述せよ。ただし、この河川には水利権・漁業権は設定されておらず、船交通もなく、河川水の活用は防災面での消防水利のみである。(問題文の図は省略します)

(1) 本工事の特性を踏まえて、仮設計画を立案するうえで検討すべき事項を2つ挙げ、技術的側面からその内容を説明せよ。

(2) 本工事の工程遅延リスクを1つ挙げ、PDCAサイクルにおける計画段階で考慮すべき事項、検証段階での具体的方策、及び是正事項での具体的方策についてそれぞれ述べよ。

(3) 本工事の施工中に重機の油圧シリンダーが破損し、漏れた油が河川に流出した。この対応に当たり、本工事の担当責任者として発揮すべきリーダーシップについて、複数の利害関係を列記し、それぞれの具体的調整内容について述べよ。

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解答者の選択科目 施工計画、施工設備及び積算 専門事項 施工計画立案 答案形式

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1.仮設計画を立案するうえで検討すべき事項

(1)鋼管矢板打設方法の検討

打設箇所付近は、民家が近くに存在している。鋼管矢板を打込み工法で打設する場合、矢板の変形や沈下を発生させる可能性があり、それに伴う周辺民家の傾きや沈下の恐れが考えられる。そのため、矢板の打設方法は、振動・騒音を発生させにくいサイレント式の圧入工法をベースに検討する。

(2)場所打ちもたれ式擁壁の施工方法の検討

もたれ式擁壁のコンクリート打設は、河川内で型枠の組立やコンクリート打込み作業を行わなければならず、仮締切り工が必要となる。現河床高のHWLは、鋼管矢板天端付近にあり、非常に高い位置である。そのため、仮締切り工を検討する場合、河積阻害率を確認し、土のうや鋼矢板等から最適な止水方法を選定する。

2.工程遅延のリスクとPDCAサイクル

2-1.工程遅延のリスク

河川内掘削時では、掘削側への鋼管矢板の変形が懸念され、それに伴う民家の傾きが考えられる。

2-2. PDCAサイクル

(1)P 各段階における計測計画

鋼管矢板の頭部変位管理値を設定し、打設、掘削中、掘削完了の各段階での、測定値を計測して管理する。変位が安全限界とする70%値を越えた段階で、切梁を設置するなど計画する。

(2) D 軟弱地盤の掘削

軟弱エリアでの掘削を実施し、掘削速度を調整し段階的に土を取り除いて、鋼管矢板への圧力を均等に分散させる。鋼管矢板に異常が見られた場合、掘削を一時停止し、土砂を埋戻す等の措置を講じる。

(3) C 変形や傾きの原因究明

掘削中は変形や傾き、頭部変位量を計測によりチェックし、地盤の不均一性や水圧・土圧、施工方法の不適切さ等の原因を究明する。急な変位発生の解決過程も記録し、トラブル解決のナレッジとして整理する。

(4) A 土質強度に即した掘削進度指標

本現場で安定的に矢板を打設できる、変位量限界とN値他パラメーターを確認し、今後の施工基準とする。変形や傾きが当初予測とは異なる傾向を示した場合は、現場の想定地盤モデルを修正し今後の掘削に対処する。

3.発揮すべきリーダーシップと具体的調整方策

(1)工事チームとサブコンストラクター

油圧シリンダーに異常が発生した場合に備えて、バックアップシリンダーを設置する。定期的な検査と保守により、損傷を早期に発見し、交換等を行う。このような問題解決と改善策の実行によりチームを率いる。

(2) 発注者と関連ステークホルダー

 圧力負荷が検出された場合に自動的にシステムをシャットダウンする機能や、圧力を監視するセンサーを整備し、異常な検出に対応する。

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問題 建設部門 施工計画、施工設備及び積算 Ⅲ-2

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 建設業では、令和6年4月から改正労働基準法による時間外労働の上限規制が適用される。建設業をより魅力的なものにしていくためには、建設業に携わるすべての人が、月単位で週休2日を実現できるようにする等、週休2日の質の向上に取り組むことが重要である。このような状況を踏まえ、建設業就業者数に限りがあることや対策に費やすことのできる資金の制約があることを念頭に置いて、施工計画、施工設備及び積算の技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)建設現場での週休2日を確保するために、多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。(※)

(※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。

(2)全問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。

(3)全問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

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解答者の選択科目 施工計画、施工設備及び積算 専門事項 施工計画立案 答案形式

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1.週休2日を確保するための課題

(1)品質管理システムの最適化と柔軟性

管理基準向上の観点から、工程管理を行う上での精度向上の取り組みや、管理基準値を満たすための品質管理、安全管理を実施する。その取り組みとして、2次元図面を3次元図面に変換して、ボルトジョイントの接続手順の検討や確認に活用する。また、バラバラで作成された配筋図面を重ね合わせて、配筋手順の確認に用いる。

(2)先端技術導入による施工効率化

技術革新導入の観点から、ドローンや点検ロボット、ICT建機等の建設DXを活用し、施工効率化を実現させる。効率化させるためには、取得したデータの抽出方法についても検討する必要があり、取得したデータの変換が重要となる。データ変換ソフトを活用し、ワードやエクセルなど汎用性のあるソフトへの変換を素早く行う。

(3)人材配置とコスト管理

積算に基づくコスト管理の観点から、現場業務における工事量の非効率化を防ぐ。非効率化を防ぐため、掘削土留工事では、設計数量よりもロス率が少なくなるように測量機器等を活用して余堀り量を少なくする。また、最適な人材配置を行うため、各工種の作業を実施する前に、過去に経験した作業実績の日報等を参考にする。

2.「先端技術導入による施工効率化」の解決策

(1)ドローンの活用

ドローンを用いて、空中写真により点群データを作成する。作成した点群は、データが膨大となるため、重要度を検討する。重要な箇所は、より詳細な図面が必要となるため、多くの点群データで作成する。一方、重要度の低い箇所は、少ない点群データで作成する。このようにメリハリをつけながら、作成した三次元データを有効活用し、施工効率化を実現させる。

(2)ロボット等によるインフラの点検

コンクリート橋梁などのひび割れ幅等の損傷程度の点検は、ドローンを活用して、点検写真を大量に撮影する。撮影後の橋梁等の診断の実施では、点検画像を基にして、AIを活用し損傷・変状等を自動的に検出する。上記のためには、ドローンの重量と往復飛行経路や距離を計算し、充電計画についても検討しなければならない。

(3)ICT建機の活用

盛土作業等の土工事では、三次元図面データをICT建機に読み込ませることで、自動制御を行うことができる。自動制御には、盛土を構築するための丁張りに必要な法肩ラインを自動検出させる必要があり、事前に法肩データ入力しておく。上記のためには、自動制御による施工誤差等についても、あらかじめ検討しておく。

3.新たに生じうるリスクとそれへの対策

(1)新たに生じうるリスク

測量結果や点検結果は、施工する直前の結果ではなく、測量や点検を実施した時期での結果である。そのため、作業直前での測量結果や点検結果を把握することはできない。近年の異常気象による測量後の土砂崩れや、点検後のひび割れ幅の増加等は、把握できずに作業してしまう可能性が生じる。結果的に、最適な補修や補強を行わずに、工事を終了してしまう可能性が考えられる。

(2)それへの対策

①目視による確認や変位計の設置

測量作業や点検作業の実施直後、目視による確認を行い、写真等を撮影し記録する。また、補修対象箇所周辺に、変位計を設置する。点検直後の結果と作業開始前の状況を、目視により確認する。また、変位計を活用して、作業開始までの法面形状やひび割れ幅等の経時変化を把握する。

②シュミレーションによる予測

ドローン等を使用して得られた点検データに、これまでの天候や気温等を入力して、土砂崩れ等が発生した場合における損傷状況をシュミレーションにより予測する。この予測と、目視や変位計等の実測値を確認しながら、現状を理解し事故に対するリスクを軽減し作業を行う。

建設部門 道路

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問題 建設部門 道路 Ⅱ-1-2

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大規模災害時における,災害対策基本法に基づく道路管理者による車両移動の措置の概要について説明せよ。また,道路管理者が車両移動を行ううえでの留意点について述べよ。

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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路情報 答案形式

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1. 車両移動措置の概要

近年の水災害の激甚化や巨大地震の発生時、道路被災等により車両の移動が困難となる状況が増加している。豪雨や地震で通行が不可能となるケースも見受けられる。これにより、緊急車両の通行や復旧作業が円滑に行えず、救命救急・復旧活動に支障が生じる可能性がある。

その背景から、大規模災害の発生時、道路管理者が車両移動を行うことを可能とする制度が設けられている。

2. 車両移動を行う上での留意点

(1) 緊急車両の通行

緊急車両の通行を確保するため、道路管理者は車間を詰めることで、空いたスペースに緊急車両を移動させ、通行スペースを確保し、中央帯開口部や路肩に車両を一時的に移動させる。

また、道路の駅やサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)などの防災拠点自動車駐車場の有効活用も含め、通行の妨げとなる要因を最小限に抑える。

(2) 車両の状態記録

道路管理者は車両の現状を詳細に記録し、写真やビデオなどの証拠を残す。車両の損傷や移動に関する責任を明確にするのに役立ち、復旧後に速やかに所有者が迅速に車両移動し、緊急車両の通行を確保できる。

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問題 建設部門 道路 Ⅱ-1-3

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新設道路の設計において、車道における舗装種別を適切に選定するに当たり必要な情報を説明せよ。また、その情報をもとにした舗装種別選定の流れを述べよ。

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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路設計 答案形式

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1.舗装種別を適切に選定する必要な情報

(1)地盤情報

N値やC、φ等の強度パラメータを収集し、軟弱地盤箇所に対して地盤改良を行い、不等沈下等を防止する。

(2)交通条件に関する情報

交通量や大型車混入率等の情報を収集し、疲労破壊輪数を算出して、舗装構成を決定する事で舗装の早期ひび割れ等を防止する。

(3)施工と維持管理に関する情報

供給可能なプラント施設が近傍にあり、十分な品質と施工性が確保される。また、占用物件等将来の掘返の可能性、都市計画など沿線の土地利用に係る情報等を収集し、舗装の選定を行う。

2.舗装種別選定の流れ 

(1)舗装種別選定実施区間の設定

視認性や耐久性が求められ区間はCO舗装、施工性や維持管理等に配慮する場合はAS舗装を採用する。

(2)実現可能な舗装種別の抽出(スクリーニング)

施工条件や維持管理、舗装のニーズ舗装(耐久性や路面の透水機能、騒音抑制等)の条件を設定し、舗装種別ごとに総合評価を行い、2~4種程度に絞り込む。

(3)舗装種別のLCC評価の実施

解析期間(一般的に40年)を定め、施工性、維持管理、不等沈下への対応等の12項目を基に舗装を選定し、MCIにより舗装の劣化を把握し、LCCを算定する。

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問題 建設部門 道路 Ⅱ-2-1

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 A市における中心駅の駅前において、鉄道とバス・タクシー等の乗り換え利便性向上や各交通機関の待合環境の改善等を目的として、新たな交通拠点(特定車両停留施設)を計画することとなった。この計画を担当する責任者として、下記の内容について記述せよ。

(1)計画を具体化するに当たり,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路情報 答案形式

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1.調査・検討すべき事項 

(1)まちづくり等将来計画の把握

 交通拠点が備えるべき機能を検討する前提として、まちづくり等の将来計画を把握し、地域の課題やニーズを調査する。

(2)公共交通の利用者数及び施設の状況

交通拠点の整備に係る課題や配慮事項を検討する。

具体的には、乗り継ぎ利便性や待合環境の現状を把握するため、公共交通の利用者数の推移や運行サービス水準、停留所数等の施設の状況を調査する。

(3)道路構造及び交通特性

周辺道路の幅員、車線数等の道路構造や平日休日別、時間帯別の現況交通量等の交通特性を調査する。

調査を踏まえ、交通拠点の整備による周辺交通や広域的な道路ネットワークへの影響を検討する。

2.業務を進める手順と留意点・工夫点

(1) 事業コンセプトの整理

 地域の課題やニーズを踏まえ、交通拠点と一体的な範囲を含めた事業コンセプトを整理する。コンセプトは人の回遊、地域のシンボル、災害時の視点、新たなモビリティ等、複数の視点で検討することに留意する。

(2) 交通拠点のゾーニングや機能の検討

交通拠点を整備する際のゾーニングや備えるべき機能、空間の活用、歩行者や車両の動線等、新たな交通拠点の整備方針を設定する。

(3) 整備施設の規模、役割等の具体化

 以下のとおり、整備する施設の具体化を行う。

①交通ターミナル:利用する交通モード、施設の機能や規模、配置等を整理する。車両の乗り入れ等の動線の検討に際しては、周辺道路への影響や出入口の円滑性・安全性の確保等に留意する。

②待合空間:休憩設備や情報発信設備、飲食・ロッカー等のサービス設備の配置を検討する。その際、防災拠点としての活用や官民連携による収益性に留意する。

③歩行者デッキ:歩行者デッキの活用等、交通拠点内の歩行者動線を検討する。その際、歩車分離による安全性確保の観点から、施設間を同じレベルでシームレスに接続することに留意する。

3.関係者との調整方策

 業務を効率的・効果的に進めるため、道路管理者、交通管理者、公共交通事業者との調整を図ることが重要である。加えて、住民等との合意形成を得ることが重要となることから、計画段階から公開の検討会を立ち上げる。

 また、地域の課題やニーズの調査にあたっては、先進的なデータ収集技術やアンケートツールの提案を行い、データの質と量を向上させる。

 整備施設の検討では、BIMの積極的な活用により設計の効率化を図るとともに、3次元モデルにより合意形成の円滑化を図る。

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問題 建設部門 道路 Ⅱ-2-2

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 市街地部の主要幹線道路における平面交差点では、慢性的な渋滞の解消を目的として交差点立体化事業が進められている。この交差点立体化事業における高架橋(鋼橋)仮設工事の計画を立案し実施する担当責任者として、下記の内容について記述せよ。

(1) 調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2) 業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。

(3) 業務を効率化、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路設計 答案形式

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1.調査検討すべき事項

(1)基礎工事時における交通規制計画

施工時における交通渋滞を抑制するため、周辺施設の立地状況や交通状況を調査する。その結果を基に、ミクロシミュレーション解析を実施し、昼間と夜間時における車線規制計画の検討を行う。

(2)基礎工事時における迂回路の案内

工事対象区間周辺部における側道や地方道等の整備状況や、交通管制システムにより交通状況を調査する。その結果を基に、経路の分散誘導(空間的分散)を図るハイパースムーズ作戦を検討する。

(3)渋滞抑制のための架設工法の検討

鋼主桁の架設作業は、道路上の一部を閉鎖する必要がある。そのため、架設時において施工ヤードを大幅に縮小可能な立体化工事急速施工技術等の検討を行う。

2.業務を進める手順

(1)準備工(作業帯設置) 

地図データからボトルネックとなりやすい地点を避けて迂回路を提案する。交通量-交通密度関係モデルにより交通速度を算出し、渋滞を回避する最適な迂回ルートを提供する。なお、占用工事に伴う交通影響範囲は約2kmのため、その手前に案内看板を設置する。

(2)下部工(基礎工)

橋脚施工時に作業スペースを確保するため、道路用地内にて、可能な限り現況車線を両側に切回す。下部・基礎工をプレファブ化した鋼製橋脚基礎、鋼製橋脚を活用して工期の短縮と施工範囲の縮小を図る。これにより、片側2車線を確保して交通渋滞を抑制する。

(3)上部工(鋼桁架設) 

夜間時に規制範囲を拡大して、450tonクレーンを活用して一括架設を行うことを勧め、ベント組立・解体を不要とし、桁架設による通行止め日数を削減する。

(4)アプローチ工

アプローチ高の高い部分には軽量プレキャストブロックを、アプローチ高が低い部分には軽量盛土を採用する。軽量材料を活用する事で大型重機の使用を抑制し、交通規制期間を短縮する。

(5)橋面工(壁高欄・舗装) 

下層に防水層の機能を兼ね備えた防水性SMAを、表層に排水性を有する機能性SMAを設け、2層同時舗設型アスファルトフィニッシャにより1層で同時施工を行う。二層同時舗設により工事期間を短縮する。

3.調整方法 

2層同時舗設式舗装を実施する際、建設機械のコストは高くなるが、価格の高い表層特殊混合物を薄層化することでコストを縮減、二層同時舗設による工事期間短縮と人件費抑制を図る。また、施工時に大型重機活用によりコスト増加となるが橋梁形式を3径間から1径間として、橋長を短く擁壁区間を長くすることでコストダウンと施工時の規制期間短縮を図る。

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問題 建設部門 道路 Ⅲ-1

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我国では、交通事故の無い社会を目指し、様々な取り組みが行われているが、近年においては、時代のニーズに答える交通安全の取組が一層求められている。このような状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。

(1)道路における交通安全に係る現状を踏まえ、交通安全の取組について、道路に携わる技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記した上で、その課題の内容を示せ。

(2)前門(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)前門(2)で示した全ての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえて考えを示せ。

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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路設計 答案形式

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1.多面的な課題

(1)速度抑制による安全対策

通信技術向上による情報提供の観点から、AIカメラと電光掲示板による注意喚起システムを活用し、車両が規制速度を超過しているかを判別する。判別した情報を電光掲示板へ送信し、判別情報に応じて電光掲示板に注意喚起を表示させてドライバーに速度抑制を促す。また、ハンプ等の物理的デバイスと注意喚起システムを組合せることで速度抑制効果の向上を図り、交通事故発生、発生時における被害の抑制を図る。

(2)一般道路における安全対策

交通弱者保護の観点から、車両と歩行者との接触防止を図るため、速度超過により車両の暴走が生じやすい区間を対象に歩道の設置・拡充、ガードレール等の交通安全施設施設を整備する。また、高齢者や障害者が安全に歩行できるように横断歩道の設置・更新、エレベータ付き立体横断歩道、信号サイクルの更新、路側帯の設置・拡幅を図る。

(3)自転車による交通事故抑制

サイクルツーリズム推進の観点から、自転車道、自転車専用通行帯等を整備して自転車走行の専用空間を確保する。これにより、自転車専用道路のネットワークを確保し、自転車利用者の安全性向上を図る。また、自転車走行空間の整備状況や危険箇所を地図上に示してHP上で公表し、自転車利用者に注意喚起を図る。

2.課題「速度抑制による安全対策」と解決策

(1)生活道路内における交通事故抑制

ETC2.0、CCTV映像、交通監視カメラ等を用いて急ブレーキや速度超過箇所を把握する。

①物理的デバイス

走行速度が30km/h未満となるようにハンプの設置、道路構造上やむを得ない場合はライジングボラードにより道路を封鎖し、接触事故を防止する。対策箇所は、歩車分離構造等の安全対策が未実施な区間や通学路優先する。

②注意喚起システム

車両速度感知可変表示システムを活用して車両の走行速度を抑制する。その際、事前にCGによりドライバーが走行時に電光掲示板を視認でき、車両通行の妨げにならない箇所である事を確認する。

(2)速度超過による車両の暴走防止

道路構造を基に算出した限界速度と、ETC2.0等で収集した走行速度を比較し、反対車線への逸脱が生じやすい山岳ワインディング道路、見通しの良い直線区間において「スピードセーブ工法」、「速度制限舗装」を実施し、車両の速度抑制を促す。また、高速道路の暫定二車線区間においては、ワイヤローブ式防護柵を設置し、暴走時に反対車線への逸脱を防止して交通事故の規模を小さくする。

(3)交差点内における事故抑制

右折待ち車両を避けるための急制動(急ブレーキ・急ハンドル)を抑制するため右折占用レーンを設置する。また、高架下の大型交差点内では、右折レーンをシフトすることにより、右折横断距離を短くして対向直進車の見落としによる右折事故を防止する。交差点内においてインフラ協調による安全運転支援システムの活用、右折占用現示等を設けることで右折車の急ハンドルを抑制し、車両の暴走を防止する。

3.新たに生じるリスクと対応

(1)リスク

スピードセーブ工法の縦断勾配は1~2%と小さいため、センターラインや外側線があってもドライバーが存在を視認するのは困難である。そのため、走行速度を超過して通行する初めての車両に対して、より安全に走行するため、本工法の存在を明示する事が重要である。

(2)対策

通常の路面と異なることを認識できるような路面表示や本工法の進入手前に、運転者に特殊な路面である事を認識される道路標識を設置し、ドライバーに注意喚起を促す。また、警察が地元コミュニティで説明会を開くとともに、HP上で設置位置やCG等を活用して工法の説明を行い、ドライバーに速度抑制を促す。

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問題 建設部門 道路 Ⅲ-2

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 建設業では、令和6年4月から改正労働基準法による時間外労働の上限規制が適用される。建設業をより魅力的なものにしていくためには、建設業に携わるすべての人が、月単位で週休2日を実現できるようにする等、週休2日の質の向上に取り組むことが重要である。このような状況を踏まえ、建設業就業者数に限りがあることや対策に費やすことのできる資金の制約があることを念頭に置いて、施工計画、施工設備及び積算の技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)建設現場での週休2日を確保するために、多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。(※)

(※)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。

(2)全問(1)で抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。

(3)全問(2)で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

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解答者の選択科目 道路 専門事項 道路情報 答案形式

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1.週休2日を確保するための課題

(1)品質管理システムの最適化と柔軟性

管理基準向上の観点から、工程管理を行う上での精度向上の取り組みや、管理基準値を満たすための品質管理、安全管理を実施する。その取り組みとして、2次元図面を3次元図面に変換して、ボルトジョイントの接続手順の検討や確認に活用する。また、バラバラで作成された配筋図面を重ね合わせて、配筋手順の確認に用いる。

(2)先端技術導入による施工効率化

技術革新導入の観点から、ドローンや点検ロボット、ICT建機等の建設DXを活用し、施工効率化を実現させる。効率化させるためには、取得したデータの抽出方法についても検討する必要があり、取得したデータの変換が重要となる。データ変換ソフトを活用し、ワードやエクセルなど汎用性のあるソフトへの変換を素早く行う。

(3)人材配置とコスト管理

積算に基づくコスト管理の観点から、現場業務における工事量の非効率化を防ぐ。非効率化を防ぐため、掘削土留工事では、設計数量よりもロス率が少なくなるように測量機器等を活用して余堀り量を少なくする。また、最適な人材配置を行うため、各工種の作業を実施する前に、過去に経験した作業実績の日報等を参考にする。

2.「先端技術導入による施工効率化」の解決策

(1)ドローンの活用

ドローンを用いて、空中写真により点群データを作成する。作成した点群は、データが膨大となるため、重要度を検討する。重要な箇所は、より詳細な図面が必要となるため、多くの点群データで作成する。一方、重要度の低い箇所は、少ない点群データで作成する。このようにメリハリをつけながら、作成した三次元データを有効活用し、施工効率化を実現させる。

(2)ロボット等によるインフラの点検

コンクリート橋梁などのひび割れ幅等の損傷程度の点検は、ドローンを活用して、点検写真を大量に撮影する。撮影後の橋梁等の診断の実施では、点検画像を基にして、AIを活用し損傷・変状等を自動的に検出する。上記のためには、ドローンの重量と往復飛行経路や距離を計算し、充電計画についても検討しなければならない。

(3)ICT建機の活用

盛土作業等の土工事では、三次元図面データをICT建機に読み込ませることで、自動制御を行うことができる。自動制御には、盛土を構築するための丁張りに必要な法肩ラインを自動検出させる必要があり、事前に法肩データ入力しておく。上記のためには、自動制御による施工誤差等についても、あらかじめ検討しておく。

3.新たに生じうるリスクとそれへの対策

(1)新たに生じうるリスク

測量結果や点検結果は、施工する直前の結果ではなく、測量や点検を実施した時期での結果である。そのため、作業直前での測量結果や点検結果を把握することはできない。近年の異常気象による測量後の土砂崩れや、点検後のひび割れ幅の増加等は、把握できずに作業してしまう可能性が生じる。結果的に、最適な補修や補強を行わずに、工事を終了してしまう可能性が考えられる。

(2)それへの対策

①目視による確認や変位計の設置

測量作業や点検作業の実施直後、目視による確認を行い、写真等を撮影し記録する。また、補修対象箇所周辺に、変位計を設置する。点検直後の結果と作業開始前の状況を、目視により確認する。また、変位計を活用して、作業開始までの法面形状やひび割れ幅等の経時変化を把握する。

②シュミレーションによる予測

ドローン等を使用して得られた点検データに、これまでの天候や気温等を入力して、土砂崩れ等が発生した場合における損傷状況をシュミレーションにより予測する。この予測と、目視や変位計等の実測値を確認しながら、現状を理解し事故に対するリスクを軽減し作業を行う。

上下水道部門 必須科目

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問題 上下水道部門 必須科目 Ⅰ-1

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 近年,上下水道事業では、人口減少に伴う収入の減少、深刻化する人材不足及び老 朽化の増加等の課題に直面している。そのような中,国において,水道では水道施設の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドインを改訂し、下水道では新下水道ビジョン加速戦路での重点項目において維持管理情報等を起点としたマネジメントサイクル (点検・調査,修繕・改築に至るサイクル)の確立の重要性を明記するなど、効率的・効果的 に計画・設計、修繕・改築を行うための維持管理情報等の重要性が一層増している。

このような状況を踏まえ、下記の問いに答えよ。

(1) 上下水道事業での点検・調査等による維持管理情報等の取得,蓄積,活用に関して、技術者としての立場で多面的な観点(ただし、費用面は除く)から3 つの重要な課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

(2) 前間(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題をその理由とともに1 つ挙げ、 その課題に対する複数の解決策を具体的に示せ。

(3) 前間(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

(4) 上記事項を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から必要となる要件、留意点を述べよ。

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解説

 この問題を解く際には、まず背景理解が重要です。上下水道事業が人口減少による収入減少、人材不足、老朽化といった課題に直面している点を正確に把握しましょう。また、国のガイドライン改訂や新下水道ビジョンの重点項目により、維持管理情報の重要性が一層増していることに注意が必要です。

 多面的な観点から課題を抽出する際には、技術者としての継続的な研鑽で得た知見を活用し、普段の課題解決で有効だと考える姿勢を示すことが重要です。技術的課題としては、最新のセンサー技術やAIを用いた点検システムの導入が挙げられます。社会的課題としては、住民参加型の保全活動の強化が必要です。環境的課題としては、持続可能な水資源管理のための新技術の活用が重要です。

 具体的な解決策を提示する際には、現場での実務に基づいた技術を活用します。例えば、IoTやドローンを活用した遠隔点検システムの導入、高性能材料による老朽化インフラの補強、管内ロボットを用いた配管内点検・修繕技術などが考えられます。これにより、技術的、経済的、社会的な課題に対して具体的かつ現実的な対策を示すことができます。

 リスク分析と対策においては、新技術導入による構造的な不確実性や耐久性の評価問題が考えられます。これに対しては、実験データに基づく耐久性評価の強化やシミュレーション技術を用いた長期的な構造安全性の予測が有効です。さらに、施工時の品質管理や工程管理を厳格に行うことで、工事の信頼性を確保することが重要です。

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解答者の選択科目 上水道及び工業用水道 専門事項  送配水 答案形式

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1.課題

1) 老朽化インフラの効果的な更新と管理 

耐久性の観点から、上下水道インフラの老朽化は避けられない課題である。技術者は、劣化したインフラの状態を評価し、その寿命を延ばすための修繕または全面的な更新を計画する必要がある。老朽化した設備の特定と評価には、進んだ診断技術と工学的判断が必要であり、これらのプロセスを通じて施設の安全性と機能性の維持を図る。

2) 維持管理情報の統合的な管理と活用

データ管理の観点から、点検や調査から得られる維持管理情報の統合的な管理と活用は、効率的な運営に不可欠である。技術者は、データの正確性とアクセスの容易さを保証するために、統合データベースシステムの開発と運用に取り組む必要がある。このシステムは、施設の状態、修繕履歴、性能データなどを一元的に管理し、迅速な意思決定を支援する。

3) 持続可能な水資源管理への対応

環境保全の観点から、持続可能な水資源管理への対応は、上下水道事業における重要な課題である。水質保全、廃水処理、雨水利用などの先進的な技術を導入し、水資源の持続可能な利用と環境への影響を最小限に抑えるための戦略を策定する必要がある。これには、新しい処理技術の開発や既存のシステムの改善が含まれ、これらの取り組みは地域の水循環システムと環境保全のバランスを図る。

2.課題1の解決策

 課題1老朽化インフラの効果的な更新と管理は、公衆衛生保護、サービスの連続性確保、経済的損失の防止に直結するため最も重要である。

1) 定期的な診断とモニタリングの強化

老朽化インフラの適切な管理には、音響検査や内視鏡検査、地中レーダーを用いた非破壊検査など、最新の診断技術を活用した定期的なモニタリングが必要である。これらの技術により、配水管や下水管などの損傷や漏水を早期に検出し、予期せぬインフラの故障を防ぐことができる。

2) 耐久性と修復性を考慮した材料の選定

インフラの更新や修繕に際しては、長期的な視点から耐久性と修復性を兼ね備えた材料の選定が重要である。腐食に強い素材や環境変化に適応する素材の採用により、インフラの耐用年数を延ばし、長期にわたるメンテナンスコストの削減に寄与する。

3) 総合的なインフラ管理システムの導入

GIS(地理情報システム)を基盤とした総合的なインフラ管理システムの導入により、インフラの位置情報、状態、修繕履歴などのデータを一元的に管理することができる。このシステムを活用することで、維持管理計画の策定と実施の効率化を図り、必要な修繕や更新を効率的に実施することが可能である。

3.新たなリスクとそれへの対応

 非破壊検査技術の誤用による診断の誤り、新素材への過信による未知の効果、GIS管理システムのデータ問題が挙げられる。

 これらに対処するため、技術研修により診断技術の適切な理解と使用を確保し、新素材使用時は厳密な評価と段階導入で長期影響を監視する。さらに、GISシステムのセキュリティとデータ整合性を強化する定期チェックを実施する。

4.業務遂行における必要な要件

技術者倫理:変更管理ログ機能は、GIS等のシステムでデータ変更(追加、更新、削除)を記録し、誰がいつ何を変更したかを追跡する手法。これにより、公平性と透明性を確保し、上下水道インフラ管理の信頼性を高める。

社会持続性の観点:「耐久性と修復性を考慮した材料の選定」では、環境負荷の低いリサイクル可能な素材や、生産過程でのCO2排出が少ない素材の使用を推進する。これにより、インフラ更新時の資源有効利用とエネルギー効率の向上を図り、長期的な環境保全に貢献する。また、「総合的なインフラ管理システムの導入」でGISを活用することにより、エネルギー消費を削減し、効率的なインフラ管理を実現する。これらの措置により、上下水道インフラの持続可能な管理と次世代への環境継承が可能となる。

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解答者の選択科目 下水道 専門事項  下水渠

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(1)上下水道施設の課題とその内容

1)耐水性の強化

河川氾濫での浸水想定の観点から、水害に対する上下水道施設の機能確保するため、耐水性の強化を挙げる。これにより、河川氾濫を想定した浸水深や河川計画にける中高頻度の降雨で想定される浸水深を設定する。電気設備の上階へ移設、防水仕様設備へ変更、建物全体の耐水化を重点区域で適切に進める。また、浄水場等の耐防水壁を設置することで、最小限に抑える。

2)内水氾濫対策

浸水地域の流入量を抑制する観点から、課題は内水氾濫対策を挙げる。東日本台風では、内水氾濫が多く発生し浸水被害を受けて上下水道施設機能停止となる。そのため、雨水を貯留や浸透させる。また、公園や学校等事業連携による雨水貯留浸透促進や保水機能の高い緑農地の確保を図る。河川と連携し、内水氾濫を防ゲートの設置や堤防かさ上げを行う。

3)浸水ハザードマップ作成  

浸水被害の最小化を図る観点から、浸水ハザードマップ作成を挙げる。水害が発生する場所を事前に知ることで被害を最小限に抑える。そのため、想定最大規模降雨153㎜/hに対するハザードマップ作成し被害状況を通達する。住民にルート確認してもらう。

(2)課題「2)内水氾濫対策」の解決策

①治水施設の整備

 気候変動で、台風や内水氾濫帯に対応するため、管渠の整備、調整池の新設を行う。これにより、今後の大雨に対応するため、浸水地域における流下能力向上させる。大量の降雨に対応するため、調整池を整備し管渠能力不足を補う。また、河川流下能力を判断し、排水ゲ-トの自動開閉やゲートポンプにより雨水を濃い率的に流下させる。これにより、河川水位が高い場合ゲートを自動で締めて内水被害の発生を抑える。

②雨水流出抑制

市街地外は、水田貯留に貯留し農業用水を活用する、市街地は公共施設や民間施設に貯留施設を設置する。これにより、貯留機能で流出を抑制しする。道路に浸透側溝や浸透桝を設置し雨水を地下に浸透させて環境保全を行う。

③水防体制

水位の情報収集の提供として、水防災統合情報システムの強化を図る。これにより、市内の観測している降雨量や河川水位情報や注意情報・警報・特別警戒区域をリアルタイムに提供し市民の安全を守る。水門や調整池等の画像もリアルタイムに見えることで、内水氾濫に対する危険度がわかりやすくなる。

(3)新たに生じる課題とその対策

1)新たに生じる課題

 気候変動で、降雨が長期化し雨水の排水先である河川水位が高く、雨水排除されないままで時間を要する。河川の流下能力不足対策が必要となる。

2)対策

①既存水路活用

 既存水路等を有効活用し、浸水被害に重要度に応じて、治水整備する。これにより、既設水路を有効活用し、雨水の流下能力向上を図り、浸水の低減を行う。

②ポンプ場の整備

水路にポンプ場を整備し、ポンプ圧送により浸水解消する。これにより、浸水箇所の湛水を効率的に解消する。また自動監視することで遠隔操作可能となる。

③ネットワーク化

管渠をネットワーク化し、流下能力不足を解消し浸水を抑制する。雨水管渠の流下能力不足を解消するため、雨水管全体で雨水を抑制し河川に流下させる。

(4)技術者倫理と社会の持続可能性

1)技術者倫理

緊急時の洪水情報等をSNS による情報発信し、住民に即座に伝達する。これは技術者倫理綱1公衆の安全健康及び福利につながる。

2)社会の持続可能性

調整池等をビオトープ型として市民と共同で鑑賞し、ワークショップや子供の環境学習にも利用し、住民の理解と参加促進する。これは、SDGs11住続けられる街づくりに相当する。

上下水道部門 上水道及び工業用水道

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問題 上下水道部門 上水道及び工業用水道  Ⅱ-1-1
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スマート水道メーターの3つの利活用方法とそれぞれの効果を説明し、導入における留意点を述べよ。
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解答者の選択科目 上水道及び工業用水道 専門事項  送配水 答案形式
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1.  高齢者見守りサービス
スマートメーターによる遠隔検針を利用して、一人暮らしの高齢者の使用水量を監視し、親族が遠隔地から生存確認を行える。これにより、高齢者の安全を確保しつつ、家族の不安を軽減することが可能となる。
2. 宅地内漏水の早期発見システム
スマートメーターに異常流量警報装置を設置することで、漏水を迅速に検出し、建物内浸水や断水のリスクを回避できる。この対策は、水資源の無駄遣いを防ぎ、経済的損失を最小限に抑える効果がある。さらに、配水量分析の効率化では、スマートメーターと配水流量計を組み合わせることで、無収水量の把握や漏水の早期発見が可能となり、二次災害の防止に寄与する。また、時間毎の配水量の把握により、水運用の最適化や施設更新時の能力調整に役立つ。
3. 導入時の留意点
スマートメーターの高価格を考慮し、導入区域の選定が重要である。特に、検針に労力を要する離島や山間部などの地域では、コスト効果が高い。また、通信機能を使用するため、他のライフライン事業者との共同導入が効果的であり、計画の初期段階から協議を進めることが望ましい。これにより、導入コストの削減や運用の効率化が図れる。
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問題 上下水道部門 上水 Ⅱ-2-1
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大規模地震などの非常時における他ルートによるバックアップ体制、特に河川幅の広い 一級河川を横断する送配水管の複線化を行う建設工事を計画することとなった。あなたがこの業務の担当責任者として業務を進めるに当たり,以下の内容について 記述せよ。
(1) 河川幅の広い一級河川を横断する送配水管の複線化を行うに当たり、2つ以上のエ法を選び、調査・検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 上記のうち1つの工法を選び、選んだ理由を示すとともに,その業務を進める手順を列挙して,主な検討項目の留意すべき点、工夫すべき点を述べよ。
(3) 上記の業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者の選択科目 上水道及び工業用水道 専門事項  送配水 答案形式
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河川を横断する送配水管の複線化を計画するにあたり、水管橋工法と非開削工法(シールドまたは推進)が主な選択肢となる。
1. 調査・検討すべき事項
1) 基礎資料調査
河川の幅、計画河床高、河床形状、堤防の形式、計画水位、周辺の都市計画の有無等を調査。河川管理者からの情報提供を受けることが多い。
2) 口径の検討
バックアップ機能を果たすために必要な配水量(日最大配水量や日平均配水量等)に基づき、送配水管の口径を決定。
3) 用地の検討
水管橋工法では、水管橋の両端に占用用地と作業用地が必要。非開削工法では、発進立坑と到達立坑の用地が必要。現地調査や公図等の確認を通じて用地を検討。
2. 選定した工法と業務遂行手順
非開削工法を選定する。その理由は、集中豪雨や津波による河川水位の急激な上昇が、水管橋の安定性にリスクをもたらす可能性があるからである。
1) 河川管理者との計画協議
概略図を用いてイメージを共有し、計画・設計・施工協議を効率的に進める。
2) 地質調査
立坑の構造計算や掘削機選定のため、線形上のピンポイントでボーリング調査を実施。河川管理者から地質資料の提供を受けることで効率化を図る。
3) 実施計画立案
協議期間、設計期間、施工期間を考慮した実施計画を立案。DB方式(設計・施工一括発注)を活用し、事業の効率的推進を図る。
3. 関係者との調整方策
1)土工事の精度改善
地質調査の精度向上と効率化に関わる技術応用による支援が挙げられる。この分野での豊富な経験を活かし、特定の地質条件下での掘削経験や地盤改良技術を提案することで、プロジェクトのリスクを最小限に抑え、施工の正確性を高める。
2)非開削工法技術指導
人材の育成と配置に関する支援が重要である。非開削工法に特化した研修プログラムの開発や、経験豊富な技術者をプロジェクトにアドバイザーとして参加させることで、技術力の向上と効率的なプロジェクト遂行が可能となる。これらの調整方策を通じて、プロジェクトの成功確率を高め、期間とコストの削減に貢献することができる。
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問題 上下水道部門 上水道及び工業用水道 Ⅲ-2
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 日本の水道は、人口減少に伴う給水収益の減少や水道事業者の技術者不足に加え、 高度経済成長期において集中的に整備してきた水道施設の老朽化の増大が顕著となっている。また,耐震化の遅れや多数の水道事業者が小規模であり経営基盤が脆弱である。これらの課題を解決し、将来にわたり,安全な水の安定供給を維持していくためには,水道事業の基盤強化を図ることが急務となっている。
上記の状況と改正水道法による国の基盤強化の基本的な方針を踏まえ,水道分野の技術者として ,以下の問いに答えよ。
(1) 水道事業の持続性を確保するために,技術者としての立場で多面的な観点から検討すべき課題3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。
(2) 前間(1)で抽出した課題から最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する 複数の解決策を示せ。
(3) 前問 (2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクと解決策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 上水道及び工業用水道 専門事項  送配水 答案形式
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1.課題
1) 雨水貯留と再生水利用の推進
持続可能な水資源管理の観点から、雨水貯留システムの設計と実装が必要であり、これにより集められた雨水は農業用水、公共緑地の灌漑、または非飲用水としての都市利用に供される。同時に、再生水利用技術の発展と普及を図ることで、家庭や産業からの排水を処理し、安全な水資源として再び利用できる。これらの措置は、限られた水資源を効率的に活用し、水不足の問題を緩和するために不可欠である。
2) 専門技術者の教育プログラムとキャリア支援
水道事業での労働力の確保と育成の観点から、専門技術者のための教育プログラムの充実が求められる。大学や専門学校と連携し、水道工学に関する最新の知識と技術を提供するカリキュラムを開発することが重要である。また、若手技術者や女性技術者のキャリア支援を強化し、多様なバックグラウンドを持つ人材が水道事業で活躍できるような環境を整備することが、技術者不足の解決に繋がる。
3) スマート技術による水道事業の効率化
デジタル化による事業効率化の観点から、スマートメーターの導入、リモートセンシング技術の活用、そしてビッグデータ分析を駆使した水道施設の運用と維持管理が中心となる。これらの技術を活用することで、リアルタイムでの漏水検知や水質管理が可能となり、事業運営の効率化が図れる。また、精度の高い需要予測により、水資源の最適な配分と利用が可能となり、経営効率の向上に貢献する。
2。最重要課題と解決策
1) 都市部での雨水貯留システムの拡大
雨水貯留システムの設計と実装を都市部で拡大することは、雨水を効果的に利用し、水資源を増やす有効な手段である。建物の屋根や公共空間を活用して雨水を収集し、貯蔵することで、農業用水や公共緑地の灌漑、さらには非飲用水としての都市利用に供することが可能となる。この取り組みにより、限られた水資源の有効活用が促進され、特に乾燥期における水不足の問題を緩和する。
2) 再生水利用技術の発展と普及
家庭や産業からの排水を処理し、安全な水資源として再利用するための再生水利用技術の発展と普及も、水資源の持続可能な管理において重要な解決策である。最新の水処理技術を活用して再生水の品質を確保し、これを農業用水や工業用水、さらには市民の生活用水として再利用することで、新たな水資源を創出することができる。この技術の普及には、技術的な安全性と経済性の両方を社会に広く認知させることが不可欠であり、再生水利用の社会的受容性を高めるための啓発活動も重要である。
3) 法的枠組みとインセンティブの整備
雨水貯留と再生水利用を推進するためには、これらの取り組みを支援し、促進する法的枠組みの整備が必要である。政府や地方自治体は、雨水貯留システムの設置や再生水利用施設の構築を奨励するための政策を策定し、技術的なガイドラインを提供することが求められる。また、税制優遇措置や補助金の提供など、経済的なインセンティブを設けることで、民間企業や個人がこれらのシステムを導入しやすくなる。このような法的・経済的支援が、雨水貯留と再生水利用の拡大に向けた重要な推進力となる。
3。新たなリスクと解決策
1) 再生水の品質管理と処理技術の向上
再生水の利用拡大に伴う公衆衛生へのリスクを最小化するために、膜処理技術やUV消毒などの先進的な水処理技術を活用し、厳格な品質管理体制を構築することが必要である。これらの技術は、病原体や有害物質を効果的に除去し、再生水の安全性を確保する。さらに、再生水の利用基準を定め、定期的な水質検査を実施することで、公衆衛生保護を強化する。
2) 雨水貯留システムの適切な設計と洪水対策
雨水貯留システムにおける洪水リスクを軽減するためには、地形や地域の降水量を考慮した設計が必須である。緑の屋根や浸透性舗装などの低影響開発技術(LID)を組み合わせることで、雨水を自然に地下へ浸透させ、オーバーフローを防ぐ。また、貯留施設には過剰な雨水を一時的に保持し、徐々に放水する機能を設けることで、周辺地域の洪水リスクを低減させる。

 上下水道部門 下水道

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問題 上下水道部門 下水道 Ⅱ-1-2
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 下水道管路施設について、硫化水素による腐食のメカニズムを踏まえた腐食防止対策を2つ挙げるとともに、それぞれの概要を述べよ。
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解答者の選択科目 下水道  専門事項 下水収集・排除 答案形式
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1.硫化水素腐食による腐食防止対策
1)発生源対策(硫化水素生成の根本的防止)
①空気と酸素の注入:嫌気性プロセスを改善するために、圧送管路内に直接空気や酸素を注入し、硫化水素の生成を防止する。
②薬品の注入:嫌気化の抑制や生成された硫化物を固定化するために、薬剤(過酸化水素、硝酸塩等)を注入し、硫化水素の気相中への放散を防止する。
③管路の定期的な清掃:管路の定期的な清掃により、管内堆積物を除去し、硫化水素の発生源を物理的に排除する。
2)腐食抑制対策(硫化水素による影響の最小化)
①換気システムの最適化:硫化水素濃度が低い場合、硫黄酸化細菌の増殖を抑制するために、換気を増強して管内の硫化水素を希釈する。
②酸化剤の添加:硫化物を酸化剤(過酸化水素、塩素)で酸化させ、硫化水素の気相中への拡散を防止する。
③抗菌剤の注入:硫黄酸化細菌の活動を抑制するために、抗菌剤(ニッケル-タングステン系防菌剤、銀-銅系抗菌剤)を注入する。
④抗菌コンクリートの使用:細菌に対する銀イオン、銅イオンを混入した抗菌コンクリートを使用し、コンクリートの腐食を防止する。
⑤構造の改善:管路施設の段差や落差を解消して、硫化水素の気相中への放散を防止する。
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解答者の選択科目 下水道  専門事項 管きょ計画・設計 答案形式
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(1) 下水道管路施設の硫化水素腐食のメカニズム
嫌気性状態の下水中では、硫酸塩還元細菌が硫酸塩を利用して溶存硫化物を生成する。  
下水道管内で硫化水素が気相に放散し、これが管路やコンクリート構造物の上部に集まる。  
管路やコンクリート構造物の内部の結露水において、硫黄酸化細菌が硫化水素を酸化して硫酸を生成する。  
生成された硫酸がコンクリートのカルシウム成分と反応し、コンクリートの硬化成分である水酸化カルシウムを溶解させることにより、コンクリートが劣化する。
(2)硫化水素による腐食対策  
① ポンプの最適運用:   下水道管内の滞留時間を短縮するため、圧送ポンプの最適な運用を図る。低水位での連続運転や運転間隔の短縮により、管内の下水滞留を最小限に抑える。定期的な高圧洗浄により、硫化水素の発生源となる汚泥の蓄積を防ぐ。  
➁ 施設防食:   硫化水素腐食に対して高い耐性を持つ材料を使用し、管路やマンホールの内面を保護する。エポキシ樹脂やセラミック系コーティング材の適用、または硫化水素に強い特殊なコンクリートやプラスチック製の管材の使用が有効である。また、腐食の進行を抑制するために、定期的な点検と必要に応じたメンテナンスを行う。
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問題 上下水道部門 下水道 Ⅱ-2-1
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 A市は、下水道の整備を開始してから45年が経過する。下水道管の老朽化や腐食の進行が想定される下水道整備区域において、修繕や改築を計画的かつ効率的に行うための実施計画の策定が求められている。
あなたが、この業務の担当責任者に選ばれた場合、以下の内容について記述せよ。 
(1)点検・調査手法と、その結果を踏まえて検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)修繕か改築かの選択に際して、業務を進める手順とその際の留意点、工夫を要する点を含めて述べよ。 
(3)業務を効率的、効果的に進めるため、関係者と調整する内容とその方策について述べよ。
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解答者の選択科目 下水道  専門事項 下水収集・排除 答案形式
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(1)点検・調査手法と検討すべき事項
1)点検、視覚調査
管口カメラを使用し、マンホールから目視できる範囲の管きょの内面や堆積物、流下状況を点検する。潜行目視調査(中大口径管:口径φ800mm以上)およびCCTV調査(小口径管:口径φ800mm未満)を使用し、既設管内の損傷や腐食、堆積物状況を調査する。
既設管内の腐食状況や上下方向のたるみ、管のクラックや継手ズレ、浸入水・堆積物の有無などの判定結果をもとに、修繕か改築を検討する。
2)測量調査
既設管きょの管底高やマンホール間距離を測量し、下水道台帳と照合する。その結果をもとに縦断図を作成し、流下能力の確保を検討する。ただし、逆勾配スパンは流下能力が確保できないため、布設替工法を検討する。
3)腐食・劣化調査
コンクリート圧縮強度試験や中性化試験、鉄筋調査を実施し、既設管きょの耐荷性能や耐震性能を診断し、改築が必要かを検討する。
(2)業務を進める手順と留意点、工夫を要する点
①データ分析と評価
健全率予測式および劣化データベースを活用して、点検・調査の優先箇所や改築需要予測を検討する。
②修繕・改築の適用性評価
軽微な損傷は、ライニング工法やスリップライニング工法で対処する。老朽化・劣化が著しく流下能力が確保できない管きょは布設替え工法とし、それ以外は更生工法を検討する。
③経済性と実施可能性の検討
建設技術審査証明された更生工法の中から、ライフサイクルコストを分析し、現場条件に適合した経済性に優れた更生工法を採用する。
具体的な更生工法としては、小口径管はEX工法、中大口径管はSPR工法である。
④優先順位の最終決定と実施計画の策定
リスク評価モデルを活用して、リスクの程度および修繕・改築事業見込み額のバランスを考慮し、優先順位を決定する。対策実施時期については、健全度評価指標にもとづく。 一般論ばかりのようです
実施計画の策定は、対策範囲(修繕か改築)、改築方法(更新か長寿命化対策)、対策実施時期、概算費用をとりまとめる。 留意点は何か。優先順位の決定や、実施計画の策定で注意すべきことは。過去にどんな失敗体験があったか。その回避手段を示す。そして
命題の「修繕or改築」の最終決定はどう結論付ければよいのか。その留意点は。
 
(3)関係者との調整方策
調査会社には、下水道管きょの異常判定を支援するAI画像認識システムの活用を指導し、異常判定作業の効率化を図った。
このAIシステムだと作業はどう変わるのか。そこに留意点や指導内容があるはず。技術士として何をどう指導するのかわかりません。
道路管理者には、クリティカル・パス法を用いて、スケジュールを視覚化し、工事遅延がないことを説得した。
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解答者の選択科目 下水道  専門事項 管きょ計画・設計 答案形式
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(1) 点検・調査手法と検討すべき事項
1)地下探査レーダーによる点検・調査
 下水道管の埋設位置及び深度、埋設されている道路の交通荷重や地質状況、他企業の埋設物との離隔を調査し、修繕・改築実施時のリスクを検討する。
2)CCTVカメラ内視による点検・調査
 カメラ映像から管内の損傷及び腐食状況、土砂の堆積や障害物の存在、マンホール内への流量計設置場所を調査し、修繕・改築の必要性や範囲を検討する。
3)調査用ドローンによる管きょ内点検・調査
 ドローンによる調査データから管内劣化状況であるひび割れの幅及び破損範囲、浸入水の発生箇所や量を
調査し、画像を点群データ化して3Ⅾ化することで、
管きょの劣化原因や修繕方法を検討する。
(2) 業務を進める手順と留意点、工夫を要する点
➀管きょの状態調査
 定期的な点検・調査の実施により、下水道管の老朽化や腐食の進行状況を把握する。膨大な管きょの点検
・調査については、調査箇所を絞り込むスクリーニング技術により、迅速かつ安価に行う。
➁データベースの整備
 点検・調査結果から下水道管の状態を、維持管理情報としてデータベースに記録し、分析する。点検・調査情報の収集及び整理・分析については、電子化やICTツールの使用により効率化を図る
➂優先順位の設定  
 点検・調査結果の健全度評価から、管きょの老朽化や腐食の進行が激しい箇所、道路陥没による社会経済活動への影響が大きい箇所を優先的に修繕・改築する。
➃効果的な技術の選択
 管布設年度・材質や周辺の土質状態、地下水の影響、埋設位置・深度データから、管きょの状態を物理的・機能的に判定し、修繕か改築かの選択を行う。流下能力確保困難な管きょは布設替え工法、それ以外は更生工法を選択し、経済的かつ効果的な工法を選択する。
➄長期計画の策定
 リスク評価に基づき、10年から20年の長期的な修繕・改築の事業計画を立案し、予算及び人材を確保する。老朽管による道路陥没解消の為、リスクに応じて定期的な管渠の点検・調査計画も、併せて策定する。
(3)関係者との調整方策
 道路管理者は、道路状況のデータを保有する。一方、事業者はそれらの情報が不足している。私は、道路管理者に事業者への道路状況の詳細データを依頼した。
 事業者は、事業の技術側面である専門的な情報を保有する。一方、財政部局はそれらの情報が不足している。私は、事業者に財政部局への説明のため、事業の技術詳細と具体的な作業計画の資料を依頼した。
 私は、3者に事業計画を専門技術情報により説明し、予算配分を効率化して必要なリソースを取りまとめる。
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問題 上下水道部門 下水道 Ⅱ-2-2
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 近年、全国で発生している災害を受け、国では「防災・減災・国土強靭化のため5か年加速化対策」を実施している。このような状況において、B市では古くから下水道整備が進み、多くのストックを保有する中、豪雨による洪水や内水氾濫の被害が想定されている。また、大規模地震による被害も想定されていることから、下水道事業において災害を未然に軽減・防止する対策計画の策定が急務となっている。あなたは、この災害軽減・防止対策計画を策定する業務担当者として選ばれた場合、以下の内容について記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)災害軽減・防止対策の項目を業務遂行準に列挙して、その項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるため、関係書との調整する内容とその方策について述べよ。
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解答者の選択科目 下水道  専門事項 下水渠 答案形式
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(1) 調査検討すべき事項とその内容
1)構造強度調査: 処理場の構造を調査し、耐震診断して耐震化の検討を行う。また、処理場の地盤の液状化が発生しないか検討を行う。既設管渠については、施工年度と布設状況や管深さや地盤を調査し、耐震診断を行い検討する。また、人孔についても同様に構造調査し、耐震診断して検討を行う。
2)流域内浸水調査: 内水氾濫や河川堤防決壊箇所や堤防からの越流箇所を調査し、浸水発生個所の原因を検討する。また、床上浸水・床下浸水・地下鉄や低地部で発生した場所を調査し、浸水原因を検討する。
3)各データ調査: 降雨デ-タや水位情報データを調査し、データから防災情報として利活用できるように検討を行う。また、ドロ-ンやカメラを活用し災害情報を集積できるように検討する。
(2)業務を進める手順と留意すべき点
①既設管と人孔部可とう化:管とマンホ-ル部を既設耐震化工法で耐震化する。
②重要幹線の更生:重要幹線(河川横断・鉄道横断・幹線道路)を更生工法で耐震化する。
③処理場耐震化:処理場をコンクリ-トと鉄筋で増し打ちし強度を上げる。また、エキスパンションジョイントで耐震化する。
④排水機場、水門、樋門自動化: 河川の水位監視し、ゲ-トの開閉の自動化して内水氾濫軽減を図る。
⑤水位情報システム:河川水位情報を防災課や住民に知らせて、避難情報を可能にするシステムを構築する。
(3)関係者との調整方針
 防災課は,地震に対応するため、施設の耐震化を進めたい。下水道課は、老朽化施設の更新を進めたいが中大口径の耐震が施工に水量が多く対応ができない。私は、中大口径の管内水量や分水個所や水替えルートの切替えるルートを選定し各関係者と調整し提案する。
 また、処理場の耐震化は、使用していない代替施設を提案し切替する。さらに、河川自動化は、仮設の設置人員を入れることを提案する。ここで、更生の耐震化耐震化で不足し工法選定技術者を、余剰人員を補填し、処理場耐震化の資材不足を仮設資材から補充し、排水自動化のシステムの開発は前記処理場の代替え施設を補充することを提案する。
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問題 上下水道部門 下水道 Ⅲ-1
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 A市のB処理場は、供用開始から100年が経過している。躯体の劣化に対して補修工事などにより老朽化対策を実施してきたが、水処理施設の大半が建設から50年以上が経過しており、根本的な施設再構築が必要となっている。現況の躯体は耐力が不足しているが、Ⓐ常時下水が流入する中、複数施設で耐震化が不可能となっている。また、Ⓑ流入水質は全窒素が高いが、反応タンクのHRTが短く、放流水質の管理が難しくなっている。近年、Ⓒ大規模水害に対して、水処理機能の維持、早期回復のため耐水化も求められている。B処理場の計画処理能力は50万m3/日となっているが、晴天時の日最大汚水量の実績値とほぼ同等の値となっており、Ⓓ用地も余裕がない状況である。そこで、近隣の処理場への一部編入の可能性を含め、B処理場を再構築検討することとした。こうした状況を踏まえ、B処理場を再構築する技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)B処理区の再構築を検討するに当り、技術者としての立場で多面的な観点(ただし費用面は除く)から重要な課題を3つ抽出し、その内容を観点とともに述べよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通する新たなリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考え方を示せ。
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解答者の選択科目 下水道  専門事項 下水渠 答案形式
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(1)重要課題とその内容
 1)耐震の強化
公共安全の観点から、耐震診断を行い、耐震性が不足する部分は補強する。池構造物の機能確保のため、エキスパンションジョイントの耐震化、耐震壁やブレースの増設し重要な処理タンクを重視する。施設老朽化であることから、浸水の対応が必要となるため、下水処理場の外周に耐水壁を設置する手法等を進める。
 2)膜分離活性汚泥法へ施設移行
環境保護の観点から、全窒素濃度が高い流入水に対するため、高度な膜処理技術を導入する。また、HRTが短いので反応タンク容量と流入量を確認し膜分離活性汚泥法等変更し遠隔管理へ移行する。放流水の品質監視システム強化し、リアルタイム水質管理機能を導入する。
3)施設のコンパクト化  
施設拡大用地がないことの観点から、段階的に既存の処理場施設反応タンクを深層タイプに変更し処理能力を向上させコンパクト化を図る。また、既存ユニットを改良し、高効率のエアレーションシステムやエネルギー回収技術を導入する。さらに、施設系統の一部を専用パイプラインでネットワーク化し処理能力向上させる。
(2)重要と考えられる課題と解決策
1)重要と考えられる課題
膜分離活性汚泥法へ施設移行が重要である。
2)解決策
①膜分離活性汚泥法による高度処理(窒素除去)
 既存の標準活性汚泥の反応タンクを膜分離活性汚泥法による窒素除去に変更して高度処理を行う。膜ユニットで固液分離を行い生物的消化脱室反応により窒素除去が可能となる。最終沈殿池が不要となるため水質処理を省面積化して高度処理を行う。
②膜分離活性汚泥法の複数列導入
 膜分離活性汚泥法を複数列同時に設置する。これにより、再構築期間の日数を短縮させため、複数列のエアレーションシステム反応タンクの暫定整備を行う。HRTは標準活性汚泥の反応タンクと同程度であり、処理能力アップできる。
③季節別運転管理化
 季節別運転管理を適正に実現するため、二軸管理(処理中の栄養塩濃度と消費エネルギー)を取り入れながら適正な監視システムを実施する。これにより、設備や配列・運転方式・季節条件・時系列等について評価を行うことで、水質管理の安定化を図る。
(3)新たに生じるリスクと対策
1)リスク
 膜分離活性汚泥法を行う場合、MLSSが高く洗浄として曝気が必要となり、1系列あたりの必要送風量は、従来に比べ大きくなり、電力消費が拡大する。また、並列する従来法系列と散気方式が異なる場合には適切な圧力が異なるので不具合が発生する。再構築中に、維持管理コスト大きくかかる。さらに、膜の不具合により交換費用が莫大となる。
2)対策
①膜改良
 膜に特殊表面コーティングすることで、有機物や微生物の付着を抑制します。これにより、膜の汚染が減少し、定期的なメンテナンスやクリーニングの頻度が低減できる。
②高度な膜洗浄プロセスの採用
高度な膜洗浄プロセス(例:オゾン水膜洗浄)を導入することで、膜の汚染やファイリングを効果的に除去します。これにより、膜のファイリングリスクが維持され、運転の安全性が向上します。
③RO膜への微生物付着抑制
RO膜は、微生物が付着しにくくなります。膜の性能が向上し、運転条件やパラメータの最適化が容易になります。これにより、水処理コストの低減が図れる。
④運転管理制御
 ピークフラックス運転による流量変動対応を適用することで、運転機能の平準化を図る。処理水として排出可能な」流量が膜処理により規定されるため、流入水量の時間的変動対応で膜維持管理の安定を図る。
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問題 上下水道部門 下水道 Ⅲ-2
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 輸入依存度の高い肥料原料の価格が高騰する中、下水汚泥資源の肥料活用が注目されている。A市は、下水汚泥全量を焼却処理してきたが、焼却炉の更新計画において下水汚泥の肥料化について検討を行うこととなった。A市では、畑作を中心に平均的な耕地面積を有しているが、下水由来の肥料が流通した実績はない。こうした状況を踏まえ、下水道の技術者として下水汚泥の肥料利用を計画するに当たり、以下の問いに答えよ。
(1)肥料利用を計画するに当たり、技術者としての立場で技術面、利用面等の多面的な観点(ただし、費用面を除く)から重要な課題を3つ抽出し、その内容を観点とともに述べよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 下水道  専門事項 下水収集・排除 答案形式
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(1)肥料利用を計画するための課題
1)安全性と品質の確保
 下水汚泥由来の肥料は、含有される重金属や病原菌などの安全性が懸念される。
 技術面の観点から、肥料としての安全性を確保するためには、病原菌や有害物質を確実に除去する。さらに、分析技術や処理技術を駆使し、安全基準を満たすよう管理する。
2)農家への教育と啓発
 農家は従来の肥料に慣れており、下水汚泥由来の肥料に対する認知度や信頼度が低い。
 利用面の観点から、肥料の使用方法やメリット、環境への影響などの情報提供を行い、農家の理解と信頼を得る。さらに、ブランド化を図ることで信頼性を高め、農家や消費者に受け入れやすくする。
3)法規制や基準の整備、流通インフラの構築
 法的整備や品質基準が明確でない場合や流通網が未整備である場合、実用化が難しくなる。
 法規制面の観点から、肥料利用に関する法規制を遵守し、適用の透明化を図ることで、農家や消費者の安心感を高める。
また、下水汚泥由来の肥料の品質基準を確立し、全国的な統一を設けることで、地域間でのバラツキをなくし、安定した供給を実現する。
(2)課題1「安全性と品質の確保」の解決策
①高速コンポスト化システム
 下水汚泥などの有機系廃棄物を短期間でコンポスト化する「高速コンポスト化システム」を活用する。
 このシステムは、コンポスト中におがくずなどの品質の低下を避ける。汚泥とコンポストの混合時に、団粒構造を形成させることで、極めて好気的な条件で発酵を行う。
 これらにより、コンポスト化の期間を短縮するとともに、最高90℃程度の高温発酵により、病原菌や寄生虫、雑草種子を死滅させる。
②ペレット化と高温乾燥
 ペレット化肥料は、含水率が15%と低く、非常に軽量であるため、運搬や保管が容易である。また、ペレット化により成分が均一化され、品質が安定する。
さらに、粒度が均一であるため、さまざまな散布機器での施肥が可能である。とくに、ブロードキャスターやライムソワーなどの自走式の肥料散布機での散布が容易である。
また、下水汚泥を自己熱再生型のヒートポンプを利用して、高効率で乾燥させる。
③キレート剤の使用
 下水汚泥を焼却処理した後、焼却灰に含まれる重金属の溶出を防ぐために、キレート剤(活性炭)を使用する。キレート剤は、重金属イオンと結合して安定化させ、溶出を防止する。
これにより、重金属が植物に吸収されにくくなり、安全性が向上する。
④HACCP(ハサップ)の使用
 食品安全管理手法である「HACCP」を応用する。肥料製造過程における生物的危害要因を特定し、重要管理点での管理を徹底する。
これにより、安全で高品質な肥料の供給を実現する。
(3)新たに生じうるリスクとその対策
1)新たに生じうるリスク
 農業従事者の高齢化が進行し、労働力不足が深刻化する。新規参入者も少なく、農業人口が急減することで肥料の需要が減少する。
これにより、肥料製造業者は設備投資の回収が困難となり、大規模な経済損失を被るリスクが高まる。
2)リスクへの対策
①スマート農業の導入
 AIやIoTを活用して、農作業を効率化する「スマート農業」を導入する。
 農作業ロボットが農地を自動的に走行し、種まきや草取り、収穫などの作業を行う。
②地域間の人材リレー
 産地間での労働力の需要に応じて人材の移動を行うことで、効果的に人手不足を解消する。
 人材リレーを活用することで、需要の高い地域から低い地域へ労働力を移動させる。

機械部門 必須科目

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問題 機械部門 必須科目 Ⅰ-1
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 2019年度の日本の一時エネルギーの約8割は化石燃料に依存しており、エネルギー自給率は12%程度である。化石燃料への依存を低くすることでカーボンニュートラルの実現にも貢献することができ、更にはエネルギー安全保証の観点においても、エネルギー自給率を高めることは最重要課題の1つと考えられる。そしてエネルギーの自給率を今後高めていくためには、輸入化石燃料への依存率を現在よりも低くし、下図の資源エネルギー庁から提案されているようなエネルギーミックスを検討することも1つの案と考えられる。そこで、地球環境を考えつつ日本の経済活動を今後も持続していくためには、エネルギーの入手・確保・輸送・備蓄・転換・利用について検討していくことが必要と考えられる。このような日本を取り巻くエネルギー環境を踏まえたうえで、以下の問に答えよ。
(1) 今後日本におけるエネルギー自給率を上げるため、技術者の立場から考えた場合どのような課題が考えられるか、多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明確にしたうえで、それぞれの課題内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を機械技術者として3つ示せ。
(3) 前問(2)で示したすべての解決策を実行した結果、得られる成果とその波及効果を分析し、更に新たに生じる懸念事項への機械技術者としての対応策について述べよ。
(4) 前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の継続可能性の観点から必要となる要件・留意点について題意に即して述べよ。
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解説

 この問題を解く際には、まず背景理解が重要です。日本の一時エネルギーの約8割が化石燃料に依存している現状や、エネルギー自給率の低さがカーボンニュートラルやエネルギー安全保障に与える影響を正確に把握しましょう。また、エネルギーミックスの検討が重要な解決策として提示されていることにも注意を払います。

 技術者の立場から多面的な観点で課題を抽出する際には、技術的、経済的、社会的視点をバランスよく考慮することが求められます。技術的課題としては再生可能エネルギーの技術開発と普及、経済的課題としてはエネルギーコストの削減と投資回収の確保、社会的課題としては住民の理解と協力の促進が挙げられます。

 課題や解決策を提示する際には、具体的な事例やデータを活用し、抽象的な表現を避けることが効果的です。例えば、再生可能エネルギー技術の開発においては、風力発電や太陽光発電の効率向上、新しいエネルギー保存技術の開発、スマートグリッドの導入などが具体的な解決策となります。

 リスク分析と対策においては、新技術導入による経済的負担や社会的抵抗が考えられます。これに対しては、コスト削減のための効率的な技術開発と運用、住民との対話を通じた理解促進、政策支援の確保が有効です。さらに、技術者としての倫理や社会の継続可能性を考慮し、環境保護と経済発展の両立を目指す姿勢が求められます。

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解答者の選択科目 機構ダイナミクス・制御  専門事項 動力制御 答案形式
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1.エネルギー自給率向上の課題
1)経済的な未利用エネルギーの開発
 新たなエネルギー源確保の観点から、日本国内に多く存在する未利用の風力、地熱、波力エネルギー開発が挙げられるが、経済性向上や安定性確保が課題となる。技術的には、沖合洋上への適地拡大に向けた大型浮揚式風力発電の安定稼働や深深度の熱エネルギーの効率的な掘削工法開発、波動力変換効率の高い波力発電システムの開発が挙げられる。
2)エネルギーロスの少ない貯蔵手段の確立
エネルギー変換ロス削減の観点から、熱や圧縮空気エネルギーなど直接的なエネルギー蓄積技術の開発が課題となる。技術的には、高い蓄熱性と容易な入手性のある砂を活用した蓄熱技術の実用化や静水圧を利用した圧縮空気保存技術による利用エリア制約の緩和、効率的な空気の液化技術によるエネルギー貯蔵手段の多様化が挙げられる。     
3)水素燃料の利用拡大
 水素利用普及による産業発展の観点から、経済的な水電解精製技術の開発や効率的な水素貯蔵技術の開発、直接燃焼技術の向上が課題となる。また、既存内燃機関での利用を目的として、CО2排出量の少ない合成燃料精製や混焼による燃焼技術向上、発生するCО2を回収し再利用するメタネーション技術の開発が挙げられる。
2.水素燃料の利用拡大
1)経済的な水素量産技術の確立
燃料価値の低い褐炭を原料としたガス化改質により、経済的な水素精製を実現し、量産供給体制を確立する。改質時に発生するCО2はCCUS技術により回収、地下埋蔵や合成燃料への再利用により経済性と実質的なCО2排出量を削減する。またニオブ系の光触媒を活用した水電解技術の開発により、エネルギー変換効率の高い水素精製技術を確立する。
2)効率的な水素貯蔵・輸送手段の開発
液体水素はマイナス253℃の極冷温環境下で輸送することで水素圧縮に比べ12倍の輸送効率が確保できるが、ボイルオフガスへの対応のため、高密度な真空断熱技術を開発する。また、トルエンを水素キャリアとした有機ハイドライド法は常温・常圧で水素の貯蔵・輸送で実現可能で、利用時には水素還元の他、個体酸化型燃料電池により直接発電が可能となる。
3)水素及び合成燃料への転換技術普及
水素の特徴として不安定な異常燃焼があるが、水素ボイラーなど直接専焼技術の安定性向上や既存設備での燃焼効率向上及び設備安全の確立により、利用率拡大を図る。また、CО2と水素を触媒合成したメタンをエネルギー循環するメタネーション技術の生産効率化及び量産技術確立により、化石燃料からの段階的な置き換えを実現する。
3.成果と波及効果及び懸念事項への対応
1)成果と波及効果
化石燃料の使用量削減と非化石燃料への転換に伴う輸入燃料削減により、エネルギー自給率向上が図れる。また、水素は電気分解の他、燃料改質やバイオマス生成など多様な原料から調達が可能であり、水素関連産業の発展や設備投資拡大、地域依存脱却によるエネルギー安全保障の強化と言った波及効果も期待できる。
2)懸念事項への対応
一般消費者への水素利用拡大は利用者安全の確保が懸念される。ガス漏洩の早期検知や安全な消火システム、蓄圧器の強度設計や緊急時の離脱カプラー設置、貯蔵時の耐震設計など安全システム確立が必要となる。
4.技術者倫理要件と持続可能性の留意点
4.1技術者倫理の要件 
ガス漏れ検知や事故情報を速やかに公開し、周辺住民への危険喚起を行うとともに、事後のリスクアセスメントや設備改善情報を広く社会に共有する。これは技術士倫理要綱の「公共の利益の優先」に該当する。
4.2 社会持続可能性の要件
余剰電力を用いた水素貯蔵や燃料電池を用いた発電技術など、熱電併用技術の採用を推進する。これはSDG’s目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に該当する。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 強度設計 答案形式
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(1)課題
①再生可能エネルギー発電の効率化
高効率化と革新的なエネルギー技術開発と導入の観点から、再生可能エネルギー発電の効率化が課題である。次世代技術として、ペロブスカイト太陽電池、水素発電、CO2回収と再燃料化等の開発と導入を行う。
 これにより、太陽光発電の設置場所の制限が大幅に無くなり、多様なエネルギー源の発掘が可能となる。
②風力発電設備の耐久性向上による風力発電の安定化
 材料と機械システム工学の観点から、風力発電設備の耐久性向上による安定的運用が課題である。ブレードに軽量且つ高い強度をもつ先進的コンポジット材料の開発と利用する。
 また、ブレードのアクティブ制御により、強風時に風圧制御して応力低減を行う。
③工場設備のエネルギーコスト削減。
 システムの統合と持続可能性を重視する観点から、機械設備のエネルギーコスト削減が課題である。工場のスマート化を行い、エネルギーマネジメントシステムを導入する。
 更に、排熱回収ボイラー、太陽光パネル、風力発電設備等の設置を行い、化石燃料への依存を減らす。
(2) 解決策
風力発電の耐久性向上による安定化について
①炭素繊維強化(CFRP)プラスチックの導入
 鉄に比べ1/4の比重で強度が10倍である炭素繊維強化プラスチックをブレード材料として導入する。軽量化と剛性の向上により、風圧によるブレードのたわみを抑制できるため、ブレードの折損、支柱への接触防止を図れる。
②可動翼ブレード採用による振動低減
 風圧増加による風車ブレードの振動対策として、電動制御式の可動翼ブレードを採用する。振動増加に応じて、ブレードのピッチ角度を自動調整し、カルマン渦の発生を抑制して振動による疲労破壊を防止する。
 振動の低減と共に、発電量のマネージメントを行い、負荷を低減してブレードの強度低下を防止する。
IoT技術導入による遠隔保守
IoTセンサーの導入により、発電量、振動、音響を遠隔地から監視する。また、ドローン技術とAI技術による機械学習により、外観検査からブレードの損傷を自動検知する。
 故障リスクを検知することにより、タイムリーな整備により、安定した風力発電機の運用が可能となる。
(3)解決策による成果、波及効果、懸念事項と対策
 成果として、再生可能エネルギー発電が普及し、エネルギーミックス実現に近づく。
 波及効果として、設備のライフサイクルが伸長するため、コスト削減効果がある。今後、温暖化対策としてグローバル化する需要の中で、我が国の輸出品として新たな経済基盤となる。
 懸念事項として、近年の地球温暖化に起因する大型台風等による荒天により、CFRPが強風、砂粒、塩害により、繊維組織の損傷が早くなる。想定よりも早く故障してブレード折損、落下の恐れがある。
対応策として、多様な環境条件と変化に対して、紫外線安定剤や耐摩耗性を高める表面処理、塩化物、水分から樹脂を保護するGFRPコーティングの追加が考えられる。
また、混相流解析、縮小風車モデルによる風洞実験も導入し、環境条件に対するデータを取得する、
(4)技術者としての要件、留意点
①技術者倫理:
 発電設備について、自然災害によって倒壊、落下しないように、低重心設計を行い、固有振動数を加振周波数から十分に離調させる。周辺の労働者の安全を守る。送電塔技術士倫理綱領「安全、健康、福利の優先」に寄与する。
②持続可能性
 再生可能エネルギー発電の機器は今後も普及するため、太陽光パネルのガラスカバー等、リサイクル可能な構造とする。部品の規格化により、再利用を促進して廃棄による環境汚染を防ぐ。SDGs「つくる責任、使う責任」に寄与する。
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問題 機械部門 必須科目 Ⅰ-2
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 社会インフラに関連する機器・設備では、ひとたび事故が発生して稼働が停止すると、その影響は事業所内にとどまらず、我々の社会生活にまで及ぶ恐れがある。その際、公益が毀損されるだけでなく、直接的若しくは間接的に公衆の安全が損なわれることも想定される。そのため、事故発生直後から稼働再開に至る各局面で、迅速かつ適切な対応が求められる。
上記の状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)社会インフラに関連する機器・設備において、故障や破損などに起因して公衆に影響を及ぼす重大な事故が発生した際の事故発生直後からの取組について、当該機器・設備の運用・管理を統括する技術者としての立場で、多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)全問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その理由を述べよ。その課題に対する複数の解決策を機械技術者として示せ。
(3)全問(2)で示したすべての解決策を実行した結果、得られる成果とその波及効果を分析し、新たに生じる懸念事項への機械技術者としての対応策について述べよ。
(4)全問(1)~(3)の業務遂行に当たり、機械技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 強度設計 答案形式
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(1)課題
①事故の情報収集と精査
 迅速な初動対応を重視する観点から、事故現場で故障に繋がる情報を調査し、精査することが課題である。被害状況、使用環境、整備履歴などを現場と書類にて調査する。
 調査した情報をFTA解析、特性要因図によって事故に繋がる要因を選別し、初動対応を効果的に実施する計画を立てる。
②事故による被害拡大の防止
 潜在的なリスク評価の観点から事故による被害の拡大防止が課題である。機器の故障がもたらす影響の解析を行う。
 機器の倒壊、部品の飛散、可燃性ガスの漏洩等による二次災害の発生が予測される。労働者の保護、周辺機器への被害を最小限にする対策を構築する。
③被害の最小化と早期復旧への事前対策
 レジリエンス強化の観点から、事故による被害の最小化と早期復旧のための事前対策が課題である。機器の倒壊防止対策と損傷部品の飛散防止対策を行い、人命を保護し、周辺機器への被害拡散を防止する。
 また、早期復旧のため、代替機器を設置する。常用機器の異常を迅速に検知して大事故に到る前に停止させ、即座に代替機器を起動して迅速に復旧する。
(2)課題③に対する解決策
 選定した理由は、安全寿命設計が無効化した場合でも、事故後の対応で被害を軽減できるため。
ストッパ、補強材による機器の倒壊、落下の防止。
 打撃検査、目視検査により、機器の質量を支える構造部材のき裂や内部欠陥を検出する。損傷が発見された箇所を選別し、補強板やつなぎ板を設置して大規模損壊を防止する。
大破しない部材の使用と疲労強度の改善
 鋳物材料等、脆性材料に弾性係数の高いゴム材を組合せた材料を使用する。クラックが発生しても、軽微な損傷にとどめて大破を防ぎ、人命を守る。
 また、部品のネジ穴等、応力集中部を除去して切り欠き係数を低減し、疲労強度を高める。
機器の迅速な停止と代替機への切り替え
 IoTセンサーを使用して異常を検知したら即座に代替機へ切り替えて運転を継続する。疲労破壊や摩耗進行の兆候である振動増加を検知して、大規模な損傷が起こる前に緊急停止させる。
 代替機器は常用機器と同性能を持ち、同系列に設置され、異常発生時に起動して早期復旧を図る。
(3)成果と波及効果、懸念事項と対策
①得られる成果と波及効果
 得られる成果として、現場の労働者と周辺機器への被害を防止し、二次被害を防ぐ。また、代替機器の早期復旧により、BCPへの影響を抑えて経済損失を最小限に出来る。
 波及効果として、従来の事故そのものを防止する対策に比べ、大幅なコスト削減効果が図れることである。事故の発生を想定し、ストッパー、補強材、ゴム材を使用し、代替機器の設置し、起動するのみで安全性と信頼性の確保することが可能である。
②懸念事項と対策
 代替機器が追加されるため、発錆、潤滑油の劣化、ダスト対策、パッキンの交換など、メンテナンスの負担が増加する。
 対策として、代替機器は補助機器として運用する。施設の生産性を向上して常用機器と併せて管理し、整備の負担を軽減する。
(4)技術者としての要件、留意点
①機械技術者としての倫理:
 倒壊、飛散防止策として使用するゴム材、ストッパーは、温度、湿度等に応じて、耐久性の高い設計とする。技術士倫理綱領「安全・健康・福利の優先」に相当する。
②持続可能性の観点:
 代替機器は、災害時の運転においても、環境配慮を重視した設計とする。トライボロジーの視点から、摺動部品の潤滑性能を改善する。空冷式やころがり軸受を採用し、潤滑油と冷却水の使用を削減する。これは、SDGsの「作る責任、使う責任」に寄与する。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 生産設備の設計・保全 答案形式
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1.事故発生直後からの取組の課題
 LNGやLPG基地に使用される液化ガス貯槽タンクや輸送ポンプに重大な事故が発生した事例を想定する。
(1)初期対応の迅速化と精度向上
 安全最優先および公衆への災害波及防止の観点から、非常用自家電源、冷却水・計装用エアー供給装置へ切替し、設備を遠隔から安全に停止する。また、漏洩検知器により速やかに、ガス遮断・パージ・除害設備を経由し、ガスを安全に自動放出する保安・防災設備の最適化をする。
(2)リスクコミュニケーションの確立
 内外のステークホルダー連携の観点から、オンラインデータベースを構築し、情報公開等する。これにより、事故詳細・復旧状況・リスクアセスメントの実施報告、リアルタイムの大気・水質環境基準測定値等について、迅速かつ的確に共有する。
(3)原因究明とリスクマネジメントの強化
 再発防止の観点から、事故原因調査、損傷部位の検査・診断結果にもとづき、設備の供用適性評価を行い、改良復旧を実施する。事故で判明した脆弱性部のリスクを低減するため、発生確率を下げる信頼性技術の導入と、発生影響を下げる安全防護設計を行う保全管理体制の強化をする。              
2.原因究明とリスクマネジメント強化の解決策
 設備の安全防災を長期継続担保するため課題(3)を選定する。
(1)IoT・ビックデータによる危険予測の高度化
 貯槽の温度・圧力・液面・輸送ポンプ負荷率等の運転データをIoTセンサで収集する。過去の正常データよりセンサ間の関係性をAIにより網羅的に学習し、正常モデルを自動作成し、正常モデルからの変化点を異常と判定する。これにより、運転条件が複雑に絡んだ貯槽操業時の挙動を監視し、従来のしきい値監視では、見つけづらかった事故の予兆を検知し、不具合が顕在化する前に早期対処する。 
(2)高度非破壊検査・診断技術による状態監視保全
 -162℃液化貯槽の保温材内面の結露水による腐食減肉は、中性子水分計UTにより板厚測定する。輸送配管肉厚測定は自走式連続UT測定により劣化損傷部を特定する。これにより、現場での保温材解体や足場組みが不要となり、検査工期と費用を削減する。定期診断・余寿命予測精度の向上が図れ、設備管理のPDCAサイクルを上げる。 
(3)重要機器二重化による貯槽システム信頼性向上
 全体の信頼性を向上するため、リスクアセスメントで抽出されたハザードのうち、アイテムの故障がシステムの動作に重大な影響を与える計装機器および輸送ポンプ等はスタンバイ予備機化する。指令に対する流量調節弁の応答性や、ポンプ性能曲線の低下など、常時ヘルスモニタリングし、異常兆候で予備機へ自動切換えし、代替運転をする。
3.リスクと対応策
 タンク・配管のき裂部の現地溶接補修では、溶接入熱過多により材料靭性が低下し、-162℃液化ガス温度による低温脆化割れのリスクがある。対応として、補修部位のUT・PT検査を継続し、再補修・取替を計画する。
稼働中の微小き裂発生を早期に検知するため、超音波リークビューアで監視する。補修範囲全体をカメラ撮影し、き裂からのリーク音の高周波音波を検出し音圧マップを画像表示し漏えい個所を特定する。検知情報は、運転者・施設管理者へ発報され、初動をとる。
4.技術者として必要な要件・留意点
(1)技術者倫理
検査結果による寿命予測解析データは関係者がアクセスし共有できるデータベースを構築し透明性を高める。これは技術士倫理の真実性の確保に相当する。
(2)社会持続可能性
経験技術をドキュメントにし後代へ継承し保安技術取得と防災意識向上を活性化し、資源の無駄遣いを防ぐ。また、モニタリングで非効率な機器運転を抽出し、例えば、ポンプ流量を適正に調整し圧力損失を最小化する等してエネルギー効率の向上と資源の無駄を削減する。これらはSDGs12つくる責任つかう責任に相当する。

機械部門 材料強度・信頼性

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問題 機械部門 材料強度・信頼性 Ⅱ-1-3

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 安全寿命設計及び損傷許容設計について、それぞれの概念、手法の概要及び適用上の技術的留意点を述べよ。

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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 生産設備の設計・保全 答案形式

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1.安全寿命設計

(1)概念  

 損傷発生の頻度を下げることで、故障が発生することを防止し、安全を図る設計をいう。

(2)手法の概要

 損傷に至る荷重を推定し、材料強度に対する寿命予測により耐用期間を定める。使用実績に基づき、耐用期間内に定期取替を行う。

(3)適用上の留意点   

 寿命予測には不確実性が残る。そこで重要部位に対しては、歪ゲージ法により微小き裂発生をモニタリングする。これにより耐用期間中の故障を予防する。

2.損傷許容設計   

(1)概念    

 機械の構造材に小さな傷があっても、微小傷が成長して破壊に至ることを防ぐ設計をいう。

(2)手法の概要

 損傷の進行とその影響をモデル化し、パリス則より初期欠陥から限界き裂長さに至る期間を求める。求めた期間内に複数回の非破壊検査・修理をする。

(3)適用上の留意点  

 検査時期の精度向上には、損傷進行速度データを評価し次回検査時期を再設定する。機械の信頼性向上には、構造部材の小分割化や破壊を局所化する。これにより損傷の成長を抑制し全体構造への破壊を防止する。

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問題 機械部門 材料強度・信頼性 Ⅱ-2-1

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熱荷重と地震荷重が作用する容器を設計することとなった。まず、容器に作用する熱荷重と地震荷重に対して既存の設計規格を用いた健全性評価を実施したところ、それぞれの荷重に対して同時に許容値を満足する厚さを設定することができなかった。そこで、破損確率評価を用いて容器の厚さを定めることとなった。この容器の設計責任者の立場から以下の問いに答えよ。

(1) 破損確率評価を用いた容器設計に当たり、あらかじめ調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。

(2) 設計業務の手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫すべき点を述べよ。

(3) 容器設計責任者として業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 生産設備の設計・保全 答案形式
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1.調査・検討すべき事項
(1)地震荷重および材料強度
 地域の地震歴と地盤性状を調査し耐震設計の震度補正係数を求め地震荷重を検討する。設計地震動波形を調査し震度の発生分布を検討する。使用温度での材料試験より材料特性値分布を検討する。400℃前後からの高温域ではクリープ強度を考慮した検討が必要である。
(2)容器の信頼性解析モデルの構築
 地震被害のデータベースを調査し実際の容器の破損様式を分析し地震時の解析モデルを検討する。厚肉化は地震せん断応力の低減に有効である一方、板厚方向温度勾配により熱応力を増大させる。熱荷重と地震荷重の相互作用を解析し最適な板厚選定基準を検討する。
(3)目標許容破損確率
 事故統計や従来の構造物の安全性レベルを調査し、これらのデータを基にした破損確率の統計的モデルの構築やリスク評価手法を適用し、破損確率を検討する。
2.業務を進める手順
(1)材料選定
 地震せん断応力の低減と熱応力緩和の両立を図るため、高温強度に優れ薄肉化ができ熱膨張係数の小さな耐熱性材料を採用する。汎用品であり比較的入手性と経済性が良いフェライト系ステンレス等を選定する。
(2)容器の解析計算
 板厚をパラメータとし温度条件と震度分布を解析モデルに与え応力・歪み分布を計算し材料の挙動を評価する。地震破損様式と整合しているか解析結果の妥当性の検証や感度分析を行う。塑性変形を模擬できる3次元弾塑性FEM解析を適用し解析精度を向上させる。
(3)最適板厚の決定
 応力分布が材料強度分布を上回る区間範囲から破損確率を計算する。材料の挙動と破損確率の関係性を評価し破損確率が目標許容範囲内に収まるよう板厚を決定する。許容される破損確率との安全余裕は破損による損失と耐震化に要する費用との均衡も考慮する。
(4)容器の模擬実験
 解析では溶接部や応力集中部等を正確にモデル化できないためこれらの部位に歪計を取付けた模擬実験を行う。実験と解析を比較し設計の改善点を特定する。
3.関係者との調整方策
 解析部門に対して、タグチメソッドを用いて多数の荷重条件や材料特性因子を効率的に解析できるよう指導する。具体的な解析パラメータの選定方法や解析結果の評価基準について共有し部門間でのコミュニケーションを促進する。
実験部門に対して、地震荷重が集中する容器底部の隅肉溶接を突合せ開先継手することで応力集中を改善するよう指導する。模擬容器の固有値解析を提示し実験荷重との共振抑制を図るよう模擬容器の支持方法を指導する。これらにより実験の信頼性向上を図る。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 強度設計 答案形式
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(1)調査、検討すべき事項と内容
検討すべき事項
材料特性の詳細な調査
 地震による繰り返し変形に対する疲労特性、特に低サイクル疲労特性を調査する。また、塑性変形と破断ひずみを調査するため、応力-ひずみ曲線を調査する。また、温度上昇によって高温クリープが発生するため、クリープ破断曲線による破断時間を調査する。
②荷重条件が圧力容器に及ぼす影響の調査
 地震荷重、圧力、熱荷重が及ぼす圧力容器への影響を調査する。特に溶接接合部板では応力が集中する。地震荷重と熱疲労に対する強度を解析と強度試験により詳細に調査する。
③破損確率モデルの検討
圧力容器にき裂が発生し破損するシミュレーションとその確率を計算するモデルを検討する。容器全体の変形、最大引張応力に着目したモデルを検討する。
(2)業務の手順と留意・工夫すべき事項
①初期設計よる圧力容器の強度解析
 従来設計による圧力容器が受ける熱荷重、地震荷重、圧力から強度解析を実施する。特に板の接合部の最大、最小応力を有限要素法により求める。
②破損確率モデルの構築
 確率密度関数として、正規分布を仮定する。荷重条件として、震度7で最高温度、最高圧力が生じる最も厳しい条件を仮定する。強度の最も低くなる材料特性を中央値かつ最頻値とする。
破損確率シミュレーションの実施
 確率密度分布のパターンに従って有限要素法による解析を実施する。荷重とクリープを考慮したひずみの拡大により応力集中部が破断ひずみに到る確率を求める。
④強度試験による解析結果の検証
 解析により求めた応力が集中する箇所を模した試験片を作成、解析条件を負荷した強度試験を実施。試験結果と解析結果から破損確率を評価。許容値以下となるまで、反復設計を行う。
(3)関係者との調整方策
 解析担当者に対し、直交表を使用した実験計画法を提案する。水平加振力や温度変化、材料強度のばらつき因子を効率的に絞り込んで解析を効率化し、スピード化する。
 試験担当者に対し、試験結果の共有を要請する。解析結果と試験結果との差異を確認して解析の妥当性を検証する。解析結果を左右する材料特性や荷重・環境条件の乖離、モデルの単純化、時間依存特性の乖離、初期欠陥などの要因特性を調査し、差異が生じる原因を突き止める。
 私は以上のように、解析、設計業務を効率化し、潜在的なリスクを除去して業務を指導する。
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問題 機械部門 材料強度・信頼性 Ⅱ-2-2
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 長年使用している工場生産設備において、定期的な点検や補修は行われていたものの、経年使用による劣化や損傷が各所にみられ、安全上の懸念が高まっている。そこで、改修工事を順次計画的に実施することとなった。限られた財源の中で優先順位を付け、効率的かつ効果的な工事を進めることが必要である。あなたが本工事の計画担当者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)当該計画立案に向けて、設備の材料強度・信頼性技術の観点から、主として調査、検討すべき事項と内容を説明せよ。
(2)業務を進める手順を列挙し、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 強度設計 答案形式
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(1)調査・検討すべき事項
➀現状の損傷調査
 老朽化した機器の目視検査、非破壊検査により、部材の内外に存在する損傷、き裂の有無を確認する。また、損傷の程度により、機器の安全な継続運用に支障があるか調査する。
②運用状況、環境条件の調査
 機器の総運転時間、負荷の変動等の運用状況、温度、湿度、ダスト、腐食性ガス等の環境条件を調査する。設計時と比較して現在の動作環境が機器に及ぼす影響を確認し、劣化要因を抽出する。
③機器の整備履歴を調査
 過去に発生した故障、事故の調査を行う。機器毎に故障、トラブルの傾向を分析し、故障の要因となった運転環境を抽出する。
(2)手順と留意点、工夫点
➀劣化、損傷箇所の観察
 損傷箇所の目視検査と顕微鏡観察により、損傷の要因を特定する。又、変動荷重、振動荷重から疲労破壊、腐食環境から応力腐食割れの要因を特定する。検査業務では3Dスキャナー等、最新検査技術導入により、一度の測定で複数箇所の検査を行い、検査工数と人員の削減を図り、コスト削減する。
②運転条件、環境条件に適合した改造設計
 損傷した部品の強度解析を実施し、応力集中部と固有振動数解析を行う。損傷箇所に着目して改良設計によって応力を低減させ、剛性を調整して、加振周波数に対し20%以上離調させる。
③各種センサーによる遠隔監視システム構築
 補修工事後、運転再開後の保守業務を支援するため、カメラ、振動、音響センサーを主要部分に設置し、遠隔監視するシステムを導入する。遠隔でリアルタイムで機器の状態を把握し、異常を迅速に検知して整備を行う。また、機械と人の接近機会を減らし、人件費削減と巻きこまれ事故の防止を図る。
(3)関係者との調整方策
①検査部門に対して: 新検査技術の3Dスキャナー導入により、検査時間と人件費削減を提案し、余剰コストを創出させる。
②設計部門に対して: 製作図のワークフローを全てオンライン上で行い、紙出力を廃止、出図工程の短縮化によって、コスト削減を提案する。また、無料のワークフロー自動化ツールを導入し、定形業務を自動化して省力化する。
③設備管理部門に対して:前述したコスト削減で創出した予算、人材を投入して遠隔監視システムを導入し、頻繁な現場検査を削減して、生産性向上を図る。
 私は以上のように、業務効率化で得た資源を新技術へ再配分して、プロジェクトを取りまとめる。
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問題 機械部門 材料強度・信頼性 Ⅲ-1
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 近年、幅広い製品分野において高性能化、高機能化の要望が高くなっている。例えば、自動車や航空機といった輸送機器などでは、機械的強度を向上しつつ軽量化するといった、設計上相反する仕様が求められている。これらの仕様を満たすため、最適化設計を活用した製品開発が進められている。
(1) 具体的な機器、又は製品を想定して、最適化設計を行ううえでの課題を多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2) 前問(1)で抽出した課題のうち、材料強度・信頼性の分野において最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を3つ示せ。
(3) 前問(2)で提示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 強度設計生産設備の設計と保全管理 答案形式
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 自動車を想定する。自動車の軽量化は衝突時の安全性が低下する可能性がある。軽量化と安全性の両立は素材強度を向上しつつ軽量化を図ることが重要である。
1.最適化設計の課題
(1)先進的超高強度鋼板の開発
 鉄鋼材料は自動車の主要材料で高強度化が進んでいる。さらなる軽量化には、既存素材である鉄における徹底改良の観点から、より強度を高めた超高張力鋼板の実用化が要請される。高強度化は、伸びが低下しプレス成形性が劣化する特性がある。このため加工性と高強度化を両立した超高強度鋼板の開発が必要である。
(2)マルチマテリアル化による最適な材料選定
 抜本的な軽量化には、革新的構造材料技術の観点から、非鉄金属・樹脂・新素材といった様々な素材の中から、車体部位の特性に合わせ、材料特性を生かした最適な素材間の組合せにする技術革新が必要である。例えば、車体構造部位には、比強度が優れたCFRPが有望であり、衝撃吸収部位には、強度が不要で延性の良い軽量アルミ合金を活用する。
(3)革新材料の強度評価方法の確立
 軽量化における安全性能確保の観点から、車体構造部材に適用する新軽量化材料には、高い信頼性が求められる。部材レベルの接合構造の作製により実際の車両走行時の複合荷重や疲労特性を再現し、ビデオ変位計歪み量測定から精度の高い物性値を得る。試験片レベルでは不明であった新材料の力学特性を評価し、実機の強度予測や耐久性評価を行うことが必要である。  
2.最重要と考える課題と解決策
 マルチマテリアル化による最適な材料選定を挙げる。
(1)トポロジー最適化設計
 車体構造全体として強度と軽量化を両立する各種素材配置や接合位置を決定するため、有限要素法解析の質量要素を車両全体に適用する。必要な車体強度を維持したまま、構造強度に寄与しない質量部分をゼロとして肉抜きをする。これにより、従来とは全く異なる最適な素材配置と形状の組合せを車両全体で追究でき、強度と軽量化を両立する新たな設計を促進する。
(2)異種材料の接合技術の開発
 異種材料をつなぎ車体一体構造とするため、摩擦撹拌点接合等の新接合技術を導入する。これにより、摩擦熱による異種材料間の軟化接合ができるから、従来の溶接高温溶解熱による残留応力や材質劣化がなくなり、母材と同等の高い接合強度を発揮する。従来の溶接技術に比較し接合プロセスが迅速であり、生産性向上によるコスト削減と製造時間の短縮を達成する。
(3)複合材料の高生産性成形技術の開発
 繊維強化複合材料による大型・複雑断面形状の構造部材の量産化をするため、樹脂圧送成形法(C-RTM)を導入する。これにより、従来の単一素材では困難であった複雑形状へのCFRP製品成形を可能にする。また従来法での加熱工程が不要となり、生産時間とエネルギーコストの削減を図る。これらによりCFRPの量産化が容易となりCFRPの適用範囲を拡大する。
3.解決策による波及効果、懸念事項と対応策
(1)波及効果
 マルチマテリアル化は、素材間の垣根を越えた組み合わせにより、自動車業界の競争と協調を促し、市場ニーズに迅速に応える製品開発を加速させる。これにより製品イノベーションが促進され新たな価値が提供される。このような技術革新は、自動車産業の持続可能性を向上させ、経済全体の拡大と生産性の向上に寄与し、新たな雇用創出とビジネスチャンスを生み出す。(2)懸念事項と対応策
1)マルチマテリアル化によりリイクルや廃棄時の複雑性を増加させ廃棄物の増加や処理コスト上昇の懸念がある。対応として、解体時に分離しやすい継手形状・素材設計の促進等、リサイクルの容易性を考慮したエコデザインを採用する。これによりマルチマテリアル製品のリサイクル率を向上させる。
2)自動車はその生産規模の大きさからマルチマテリアル化が進展すると、新素材の原材料需要が伸び供給量の不安定性が懸念される。対応として、サプライチェーン上のリスクが高いと判断された原材料については、調達先複数化、代替原材料の開発、使用量削減やリサイクル技術の開発を推進する。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 強度設計 答案形式
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(1)最適化設計を行ううえでの課題
高性能を要求される機器として、産業用の多段高圧ブロワを想定し課題を述べる。
➀主要部品の強度向上
 羽根車は大型化かつ、高速化により、軽量化、薄肉化が求められるため、主要部品の強度確保が課題である。疲労強度向上の観点から、ハネ部材の応力の低減、S-N曲線と疲労限度線図による疲労解析により、疲労強度の予測と強度の向上を図る。
 また、安全寿命設計から損傷許容設計への転換、溶接部を低減して製造方法を確立する。 
②軸受部の長寿命化
 羽車の軸受荷重の増加傾向に対して、軸受は長寿命化が求められるため軸の滑動性が課題である。トライボロジーの観点から、ティルティングパッド軸受、ジャーナル軸受の面圧解析、実機の軸受損傷か軸受強度の分析を行う。
 また、流れ解析を用いた潤滑油流動解析と主軸支持部の油膜厚さを算出する。
③振動、騒音の軽減
 インペラの大型化と軽量化による剛性の低下に対して、共振の低減が求められるため固有振動数の回避が課題である。固有振動数を制御する観点から、ロータダイナミクス解析により、回転体の振動モード、固有振動数を解析する。機器の共振を回避して振動、騒音の軽芸限し、破損事故を予防することが課題である。   
 また、ケーシングの固有振動数解析による振動モード解析し、共振点から離調させて共振を防止する。
2.課題に対する解決策
 課題(1)に関して以下に解決策を示す。
(1)疲労強度の向上
 現地での運転状況から、ブロワの起動・停止、回転数制御に起因した荷重変動による疲労現象の解析と設計を行う。FEM解析、S-N曲線と疲労限度線図により、疲労寿命予測を行い、引張応力の集中部を低減し、羽根車の最適形状を決定する。
(2)溶接箇所低減による品質改善
 ブレードと主板を削り出し加工とし、側板のみを溶接する2ピース構造を採用する。溶接個所の低減により、溶接欠陥の防止と強度の向上を図る。加工変形防止の為、板厚を増加、角部の形状を滑らかにして応力集中を低減させる。
 また、板厚は5〜7mm程度、幅は50〜70mm程度であるため、2曲面を直線で結んだルールドサーフェスとする。切削工具の切削長さが最短として、加工変形を最小化する。
(3)破壊力学による損傷許容設計の導入
 従来の安全寿命設計からき裂発生を想定した損傷許容設計へ転換する。FEM解析と応力拡大係数、パリス則を用いて、き裂が発生しても進展し、大規模な損壊を防止する強度設計。側板部にき裂を発生させ、ハネ部にき裂が入らない設計を行う。
3.波及効果と懸念事項、解決策
(1)波及効果
①機器の信頼性向上による生産性向上
 損傷許容設計と疲労強度の向上、振動の低減により、突発的な故障の可能性が低減し、機器の信頼性が向上する。その結果、機器の運用率が上がり、生産性が向上する。
②整備の頻度減少による廃棄物、CO2削減
 部品の耐久性向上により、部品交換の頻度が下がり、廃棄物の低減を図れる。更に、整備、補修の回数が減ることにより、整備工場への搬入機会が減り、輸送時に要する時間とCO2排出削減を図れる。
(2)懸念事項と対策
 損傷許容設計をブロワに導入するには、高度なノウハウが必要となり、設計が困難化し、工程に遅れが生じる懸念がある。また、ブロワの長期的な運用においても、性能と耐久性に関して未知の要素を含む。
 対応策として、大学などの研究機関、学会との共同研究により、オープンイノベーションを活用した設計、開発が必要となる。学会において、ブロワのき裂進展解析とその評価方法、実機での比較について、ノウハウを共有し、損傷許容設計を適用した送風機の技術を発展させる必要がある。
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問題 機械部門 材料強度・信頼性 Ⅲ-2
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 近年、機械・構造物の設計だけでなく研究開発においても、応力解析の手法として有限要素法が広く用いられている。ここで、ある装置の部品の設計に対して、有限要素法による応力解析を用いることを想定する。応力解析の結果から仕様を満足する形状を設計し、その形状で部品を製造した。しかし、実際の運用時にはこの部品が設計寿命以前に破損したため、この部品の再設計が必要となった。
(1)破損した部品の再設計に応力解析を用いる際の課題を多面的な観点から3つ抽出し、その観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)全問(1)で抽出した課題のうち、材料強度・信頼性分野で最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)全問(2)で提示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 強度設計 答案形式
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(1)再設計に応力解析を用いる際の課題
①荷重条件と拘束条件の精査
 実機と解析の不一致の観点から、運用機器の条件と解析条件の整合が課題である。破損した部品の目視検査、顕微鏡検査から破損様式を解明する。
 また、マルチスケール解析により、想定外の運転状況により、過大な負荷荷重、衝撃荷重を考慮した解析を行う。
②材料特性の理解
 材料強度と耐久性の観点から、低サイクル、高サイクル疲労特性を理解し、疲労強度を評価した強度解析が課題である。引張の平均応力が疲労強度を低下させることを理解し、解析に組み入れる。
また、線膨張係数、耐摩耗性、腐食環境と鋭敏化が材料強度に与える影響を加味する。
③解析モデルの精度改善
有限要素メッシュデータの妥当性の観点から使用した有限要素法のメッシュ品質の改善が課題である。破損した部位に対してメッシュ密度、高次メッシュ要素、の使用を検討する。
 部品間の接触条件として摩擦、すべり、完全結合等の再検討を行い、計算の負荷軽減とメッシュ密度を増やした高精度化のため、2次元解析も検討する。
(2)解決策(①荷重条件と拘束条件について)
①破損した部品の破面観察
破損箇所の目視観察によりビーチマーク、顕微鏡観察によりストライエーションの確認を行い、疲労破壊を推定する。また、ストライエーションの本数、方向により、き裂が発生した方向を推定する。解析結果の評価に使用して妥当性を検証する。
②運転・環境条件の調査
 実機の運転操作状況を確認し、起動・停止・運転制御データを得る。特に、荷重の変動回数、最大、最小、平均荷重を精密調査して解析条件に投入し、疲労破壊解析を実施する。
 また、実機の運転環境における温度、湿度、固形物の有無、塩化物等の腐食因子を確認し、材料の適正を調査し、より耐久性の高い材質を導入する。
③解析と試験による設計計画の精査
破損した部品の試験片を作成し、実機と同じ荷重条件、拘束条件で破壊試験を実施する。引張荷重、回転曲げ荷重を繰り返し負荷し、破断繰り返し回数と破断応力を測定してS-N曲線を作成する。更に実機の運転環境における温度、湿度、腐食環境を加味する。
また、先進的な解析技術として、デジタルツインを導入する。実機の条件を仮想空間に組み込んで、解析によるシミュレーションを行う。これにより、長期間運用に対する強度、疲労特性、耐摩耗性を高精度で予測することが可能となる。
(2)波及効果と懸念事項
①波及効果
1.製品開発と市場投入のスピードアップ
 破面観察と実機の運転条件を適用した解析により、設計の信頼性向上と設計案の立案が高速化される。
これにより、製品開発が加速し市場への投入を高速化する。新製品の投入のみでなく、老朽化した設備の整備・更新の速度が上がる。
2.最適な整備による環境負荷軽減への貢献
 実機の運転条件を組み込んだデジタルツイン解析技術の普及により、部品交換の時期や寿命を正確に予測出来る。即ち、突発的な故障を予防可能となる。
これにより、無駄の無い計画的な機械の運用が可能となり、整備コストを最適化出来る。そして、CO2削減や廃棄物削減に貢献して環境負荷低減に貢献出来る。
②懸念事項
 多数の部品、膨大なメッシュ要素を含んだ解析を短時間で行うためには高性能計算機への莫大な投資が必要である。資金力の無い企業に負担が大きいため、人材育成と技術レベル向上で不利になり、企業間格差が生じる。
 この対策には、解析技術の開発と技術移転を行うテクノロジートランスファーモデルの導入がある。即ち、クライアントが実機の設計データ、荷重条件を提供する代わりに、委託解析を依頼する。解析により得られた知見を共有して、産業全体の技術力開発を図る。
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解答者の選択科目 材料強度・信頼性  専門事項 生産設備の設計と保全管理 簡易答案形式2
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1. 破損部品の再設計に応力解析を用いる際の課題
(1)境界条件及び荷重条件の適正化
 モデル化の精度確保の観点から、最大荷重・温度範囲といった境界条件および荷重条件を、実際の運用を模擬したものにする。繰返し荷重が作用する場合は、実際の運用履歴から、繰返し頻度と荷重振幅を求める。部品の破面観測を行い、破壊形態による荷重の種類、荷重の負荷方向等を把握し、計算条件に考慮する。
(2)製造品質管理の強化
 材料起因による破損防止の観点から、製造履歴による材料の組成や、硬さや引張強さの機械的特性を検査し、設計仕様を確保する。また、材料加工による表面粗さ・切欠き等による応力集中による材料強度低下を改善し、設計通りの性能を確保する。
(3)疲労寿命評価を加味した解析
 繰り返し荷重による材料強度低下が推定される。疲労強度評価の観点から、有限要素法でピーク応力範囲を算出する。さらに、疲労強度減少係数・ひずみ補正係数・縦弾性係数補正によりピーク応力範囲の割り増しを加味し、応力振幅を計算する。設計疲労曲線から、応力振幅に対応する限界繰返し数を読み取り、寿命を評価する。
2.疲労寿命評価を加味した解析の解決策 
(1)応力集中部の要素細分化
 詳細な応力集中評価を行うため、応力が集中する可能性のある、形状の急激な変化部や切欠き部の個所は、変化部の丸み半径中心より格子状にメッシュ分割を細かくする。これにより、ピーク応力を高精度に模擬し、設計疲労曲線の応力振幅を算定し、限界繰返し数の可否を評価する。
(2)実機の環境・繰返し条件による疲労解析の最適化
 実機の温度・湿度・腐食等の環境要因および繰返し荷重による強度影響を考慮する。可能であれば、実機環境および荷重変動サイクルを再現した疲労試験を行い、材料の最適化疲労曲線を作成し、設計に反映することで、より実機再現性を向上する。
(3)疲労寿命予測の精度向上:有限要素法による疲労解析は、応力サイクルが高域か低域か、あるいは複数以上のサイクルが存在するかに依存する。このため、それぞれのサイクル領域に特化した応力寿命法、低ひずみ寿命法、損傷累積法を適用分けする。これにより、有限要素解析に入力する疲労強度をより実態に即したものとし、解析精度を上げる。
3.波及効果と懸念事項
(1)波及効果: 高精度な設計により、製造時の材料使用量を最適化し、資源の無駄を減らす。また、製品の長寿命化により、運用中の破損・取替による廃棄部品を減らす。製品ライフサイクル全体にわたり環境影響を減らし、循環型経済の構築に寄与する。
(2)懸念事項:高度な解析手法やデータ解析には、高い専門知識が必要となり、技術者の負担が増加する。過労やストレスにより、働き方改革の進展が妨げられる可能性がある。適切なリソース配分や、技術者への教育時間の確保等が必要である。

機械部門 機構ダイナミクス・制御

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問題 機械部門 機構ダイナミクス・制御 Ⅱ-1-4

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交流電動機のベクトル制御の原理を説明せよ。また交流電動機の制御にベクトル制御を採用することの利点を2つ挙げよ。

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解答者の選択科目 機構ダイナミクス・制御  専門事項 動力設計 答案形式

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1. ベクトル制御の原理

ベクトル制御とは、3相モータの出力電流をベクトル分解し、トルク分電流(Iq)と磁束分電流(Id)の2相に分けて演算する電流制御手法である。ベクトル分解した直交する2相電流は、理論値と比較し差分をPI制御し最適化した上で、3相電圧に逆変換することで、同期速度との補正を行い、低損失で高精度な運転ができる。

2.交流電動機にベクトル制御を採用する利点

1)高精度な回転制御

一般的な回転制御(VF制御)は、すべりが生じ電動機の回転速度が同期速度からずれ、低回転領域ではトルクが小さい。ベクトル制御は、高精度で広範囲なトルク制御ができるため、低速域から高速域まで連続したトルクフルな加減速ができ、滑らかな無変速制御が求められるEⅤへの適用ができる。

2)高い省エネ性能

ベクトル制御は、モータ電流を直接制御し、磁束が常に回転方向に働くため、正弦波駆動より高効率な制御が可能となる。空調制御などでは、運転速度に応じて変化する必要出力に対し、電流ベクトルが最小になるよう制御し、全運転領域での銅損を減らすことで総合効率の高い運転ができる。

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問題 機械部門 機構ダイナミクス・制御 Ⅱ-2-2

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 地球環境保護や温暖化防止を目指して、エネルギー消費量の抑制・削減のため、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(いわゆる省エネ法)が制定され、さらに、エネルギー消費効率の向上と普及促進を目的として、「トップランナー方式」が導入されている。あなたは「トップランナー方式」に則り、省エネモータを選定し、既存設備の三相モータを省エネモータにリプレースする業務の推進責任者として、以下の内容について記述べよ。

(1) リプレース対象となる三相モータを具備する具体的な既存設備を示し、その既存の三相モータの省エネモータへのリプレースを行うに当たって、購入する省エネモータの特性の観点で調査、検討すべき事項を3つ挙げ、その内容について説明せよ。

(2) 省エネモータへのリプレースの業務を進める手順を列挙して、その業務で留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。

(3) この業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方法について述べよ。

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解答者の選択科目 機構ダイナミクス・制御  専門事項 動力設計 答案形式

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1.ポンプ用モータの省エネ改修評価と対応の検討

①更新後のエネルギー消費効率評価

導入効果を実質的に比較検討するため、既設ポンプの定格使用点での効率を調査し、比較検討する。特性向上による過剰出力はポンプの性能曲線により、実使用点に換算した効率値で比較する。

②変速運転のメリットと導入検討

固定速運転との効率差異を評価するため、負荷率を時間別で調査し、ポンプの性能曲線から求めた効率値を積算し、総合効率を算定する。インバータ適用時は、変換ロスを考慮する。

③システム適合性の検討

特性変更及び変速運転によるシステムリスクを検討するため、圧力条件によるキャビテーションや運転条件によるウォーターハンマーなど、ポンプ特有のリスクを評価し対策を検討する。

2.省エネモータ更新の手順とその留意点

①モータの互換性検討と最適選定

高効率設計に伴う機械的(体格アップ)変更や電気的(特性)変更により、取合い変更や出力調整など既設モータとの互換性に留意し、省エネ効果や保守性を含めた総合コストを評価し最適選定を行う。

②特性変更とインバータ化への対策

「始電流増加に伴う保護協調の見直し」や「効率化に伴う過剰出力調整」に加え、インバータ化によって生じるノイズ、高調波などの影響を低減するため、経済性を考慮した対策機器の設置を行う。

③システム適合性への対策と留意点

既設インターフェイス、パラメータを確認し、高効率モータの特性に合わせ互換パラメータを作成する。特にインバータによる加減速設定は、ポンプ特有のシステムリスクに留意し、パラメータ調整を行う。

3.設備更新に伴う関係者との調整 

①設備管理部門:過剰出力の回避

単純な高効率モータの更新は、過剰出力を生じるため、吐出側のバルブ弁により必要流量へのシステム調整を指導する。また、運用上の過剰揚程を回転制御により削減し、総合的な省エネ化を推進指導する。

②外部施工業者:互換性確保と導入支援

現場での作業工数増加を防止するため、互換アタッチメントの採用や締結方法・設置スペース確保を指導する。また、インバータ導入時はパラメータ設定やノイズ対策を指導し、施工業者の延引作業を防止する。

③製造部門:運転・保全指導

操業移行時の混乱を防止するため、運転方案における変更点の説明やインバータ化によるノイズ・高調波の影響及び対策を説明・指導し、保全周期や追加確認項目を指導する。

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問題 機械部門 機構ダイナミクス・制御 Ⅲ-1

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 半導体ICを用いた電気電子機器との組み合わせた機械や製品は普及して久しい。製品を製造する工場におけるサーボモータをはじめとしたFA機器や、自動車などの輸送機器、家電製品からPCやスマートフォンなどの情報機器まで多岐にわたる。一方で、災害、戦争、セキュリティ、世界的な疫病や、市場で求められる製品の需要の急激な変化から半導体ICの供給不安が突然に発生する。このとき、入手可能な代替の半導体ICを用いて、それを用いるメカトロニクス製品の生産の継続を図るに当たり、この業務を推進する技術者として以下の問いに答えよ。

(1)メカトロニクス製品を1つ想定して、代替の半導体ICを採用する上での課題を、設計や評価や製造に関する従来からの変更点を挙げることで、技術者として多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する複数の解決策を、設計・評価・製造へ反映すべき項目として、専門技術用語を交え示せ。

(3)前問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術委を踏まえた考えを示せ。

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解答者の選択科目 機構ダイナミクス・制御  専門事項 動力設計 答案形式
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1.真空成型機を想定した互換性における課題
(1)互換設計の適合性
 代替ICの「電気特性一致及び機能整合性」の観点から、IC選定及び設計に当たっては、既存システムとの「物理的適合性」と「電気的適合性」が課題となる。ピン配列の変更など取り合い変更が生じた場合、基板再設計など物理的差異の解消が必要となり、消費電力の増加や信号特性の変化がある場合、電源増幅回路の検討や回路インピーダンス特性の一致が必要となる。
(2)環境評価と機能テスト
使用条件下での「性能検証と信頼性確保」の観点から、「機能テスト」、「耐久テスト」、「互換性テスト」による評価が課題となる。真空成型機の動作プロセスでは、加熱・冷却サイクルが繰り返され、実機で使用される温度や湿度、暴露条件など厳しい環境下での耐熱性能が要求されるため、基板への組み込んだ状態で、ヒートサイクル試験やエージング試験による各種評価を実施する。
(3)製造プロセスへの適合
既存製造設備・フローとの一致や生産性の観点から、代替ICの「設備適合性」や「新たな組立て手順策定」、「製造プロファイル策定」が課題となる。また、選定したICのコストや市場入手性など、サプライチェーンを含めた総合的な製造コストやリードタイムを評価し、生産性の維持・向上の検討も必要となる。
2.「①互換設計の適合性」への対策
代替ICの物理的、電気的互換性の確保は、真空成型機の基本機能に影響し、製造プロセス精度の劣化は最終製品の信頼性低下に直結する。また、適切な設計適合は、再設計や追加回路の設置、プログラム修正などの追加コストを最小化し、長期的運用を安定化できるため、「互換設計の適合性」が重要となる。
(1)物理的・電気的互換性への対策
代替ICは、既設IC以上のスペックにて選定することで、性能余裕により差異を吸収し基本性能を維持し、標準ロジックIC採用により、ピン配列の物理的互換性を確保する。また、増幅回路によるIC駆動電圧の一致や電源容量確保し、電圧リファレンス回路を用いてインピーダンス特性を既設回路に一致させることで電気的互換性を確保する。
(2)ソフトウェアの動作環境確保
代替IC選定は、既存プログラムの動作環境との一致や周辺機器との安定的接続が課題となる。精緻なアナログ制御に用いられる計装プログラムは、OSに依存するため動作環境への対応がICの選定条件となり、周辺機器との接続は、必要に応じたドライバー開発や伝送遅れが生じないようICスペックの選定にも留意する。
(3)既設機能との適合性
汎用ICは、入手性が容易な反面、真空成型機特有の精緻な温度制御や特定材料のプロセス制御実現が困難な場合あり、追加回路の設置や制御プログラムの開発により、機能適合性を確保する。また、汎用ICを工業用途へ適用するため、設置環境を考慮した選定を行い、必要に応じ放熱性を検討し冷却システムを構築する。
3.代替ICにより生じる将来的な懸念と対策
将来的な懸念:
真空成型機に用いられるICの更新は、精緻な温度制御や既設機との機能整合性確保が必要なため、現地での調整作業が重要となる。回路パターン数の増加は、調整パラメータを複雑にし、調整リスクの上昇や作業時間延長といった懸念を生じる。また、熟練した作業員の技能に依存した調整作業は、将来的な技術者の人手不足が想定される中、技能継承と言った懸念を生じる。
対策:
電子回路シミュレータを用いて、バージョン毎の調整パラメータを登録、更新前の特性データをモデルパターン化し、事前シミュレーション可能な環境を整え、現地調整リスクを軽減する。また、シミュレーション結果から、事前にパラメータの荒調整が可能なため、現地での調整工数を削減でき、作業時間の短縮に貢献できる。将来的にはシミュレーション技術を装置領域にまで拡張することでデジタルツイン環境を整え、再現精度向上や作業員の技術習得に活用し、技能継承にも役立てることが可能となる。

電気電子部門 必須科目

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問題 電気電子部門 必須科目 Ⅰ-1
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 I-1 大規模かつ複合的なシステムで広く用いられてきている仮想化,レイヤ化,モジュール化,ソフトウェア化,などは,効率的に開発するうえで重要な『手法』である。一方でこのような『手法』は,入出力情報をもとにハードウェア技術の理解なしに組み合わせているため,統合されたシステムの全体の振る舞いが把握しにくくなっている。例えば,技術者が入力と出力しか把握しないことで,それまで実施確認していた事項がおろそかになり,エンジニアリング業務を遂行するうえでの障害になっていると考えられる。上記の状況から,電気電子分野における影響を踏まえ,今後どのように克服して発展させていけばよいか,解決策と将来像についての道筋を示すことが求められる。以下の設問に技術面で解答せよ。(人事,政策などは含まない。)
(1)電気電子分野の技術者としての立場で上記『手法』を活用する際に生じる3つの課題を多面的な観点から抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,その課題の内容を示せ。(*)
  (*)解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する解決策を3つ,電気電子部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(2)で示した解決策の実施において,技術者としての倫理,社会の持続可能性を踏まえて必要な要件を題意に即して述べよ。
 
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問題の解説
 この問題は、電気電子部門における複合的システムの開発手法と、それに伴う課題や解決策を問うものである。仮想化やレイヤ化、モジュール化、ソフトウェア化といった『手法』は、効率的な開発を可能にするが、ハードウェアの挙動を把握しないままシステムを統合すると、全体の動作が見えにくくなることが問題となる。これにより、技術者は入出力だけに頼り、システム全体を把握できなくなる恐れがある。
(1)の解答のためには、まず「観点」を明確にし、課題を論じることが重要である。例えば、「システムの信頼性」「操作性の複雑化」「ハードウェアの制御の困難さ」という観点が挙げられる。課題としては、レイヤ間の不整合や、モジュール間の連携不足、ハードウェアの性能最適化が困難になる点などが考えられる。
(2)では、これらの課題の中で最も重要なものを選び、なぜそれが重要かを論理的に説明する。例えば、レイヤ間の不整合はシステム全体の動作に影響を与えるため、重要な課題として挙げられる。解決策としては、インタフェースの標準化、システムシミュレーションによる事前検証、テスト自動化などを提案できる。
(3)では、新たに生じるリスクとして、標準化の適合性やシミュレーション精度の不足、自動テストへの過信を挙げ、それぞれに対する対策を考察する。
(4)では、技術者倫理と社会の持続可能性に基づいた要件を示す。技術士倫理綱領第1条に基づき、安全性と透明性を確保することや、SDGsに対応したエネルギー効率の向上などを提案する。
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解答者の選択科目 廃棄物・資源循環  専門事項 廃棄物・資源循環 答案形式
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問1 課題
1.ハードウェアの依存度低下による性能最適化の困難
仮想化やソフトウェア化の進展により、システム全体でのハードウェアへの依存度が低下している。この結果、個々のハードウェアの特性を十分に考慮しないままシステムが構築され、性能の最適化が困難になっている。技術者はハードウェアの詳細な挙動を把握しにくくなり、最適な性能を引き出すための調整が難航することが課題である。
2.レイヤ化による統合システムの複雑化
レイヤ化の導入は、システムのモジュール性を高める一方で、全体の統合システムの構造が複雑化する。これにより、各レイヤ間のインタフェースの不整合や、予期せぬ動作が発生しやすくなる。技術者は個々のレイヤの動作に依存し、システム全体の動作を把握する機会が減少し、トラブルシューティングが難しくなることが課題である。
3.モジュール化による相互依存性の低下と責任分担の曖昧化
モジュール化はシステム開発の効率を向上させるが、個々のモジュール間の相互依存性が低下し、全体としての動作の連携が希薄になる。これにより、トラブル発生時にどのモジュールが原因か特定するのが難しくなり、責任の所在が曖昧になる。技術者はシステム全体を包括的に理解する必要があり、問題解決に時間がかかることが課題である。
問2 第一の課題と解決策
レイヤ化による統合システムの複雑化が最も重要な課題であると考える理由は、システム全体の動作が見えにくくなることで、トラブルシューティングやメンテナンスが困難になるためである。レイヤ間のインタフェース不整合や予期しない挙動が発生しやすく、システム全体の安定性や信頼性に悪影響を及ぼす可能性が高い。特に電気電子分野では、システム全体の調和が重要であり、部分的な問題が大きな故障につながるリスクが高い。
1.レイヤ間のインタフェース標準化
各レイヤ間の通信を円滑にするため、インタフェースの標準化が必要である。これにより、データのやり取りがスムーズになり、異なるレイヤ間での不整合が減少する。標準化プロトコルを用いることで、システム全体の統合性が向上し、トラブル発生時の対応が容易になる。
2.システムシミュレーションによる動作確認
レイヤ化されたシステムの複雑さを事前に評価するため、システム全体のシミュレーションを行うことが重要である。シミュレーションツールを用いて各レイヤの動作を確認し、全体としての動作を検証することで、予期しない挙動や不具合を未然に防ぐことができる。
3.モジュール間のテスト自動化
システムの安定性を保つため、各モジュールやレイヤ間のテストを自動化することで、より迅速かつ正確に問題を発見できる。自動テストにより、レイヤ間の不整合やインタフェースエラーを効率的に検出し、システムの全体的な信頼性が向上する。
問3 懸念事項
1.レイヤ間のインタフェース標準化に伴う適合性の問題
標準化されたインタフェースが、全てのシステムに適合しない可能性がある。特定のデバイスやシステムが標準に対応できない場合、通信エラーが発生するリスクがある。これに対して、柔軟なプロトコル変換機能を備えたゲートウェイを導入し、非標準システムとの互換性を確保する必要がある。
2.システムシミュレーションの精度不足
シミュレーション結果が現実の動作と一致しない場合、誤った判断を下すリスクがある。これを防ぐため、実際の運用データを用いてシミュレーションモデルを逐次更新し、現実の動作に近づける必要がある。
3.テスト自動化の過信
自動テストに依存しすぎると、特定のエラーが見逃される可能性がある。手動による検証プロセスを併用し、テスト範囲の不備を補完する必要がある。
問4 技術士としての要件
1.技術者としての倫理を踏まえて必要な要件
技術士倫理綱領第1条「安全と公益の確保」に基づき、品質向上のために第三者レビューを導入し、異なる視点からの指摘を取り入れる工夫をする。これにより、レイヤ間の不整合や予期せぬ動作を見逃すリスクを低減できる。また、システムの透明性を高め、問題発生時の対応を迅速化するため、文書化や報告手順を簡素化し、確認を習慣化する。
2.社会の持続可能性を踏まえて必要な要件
SDGsの目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」と目標12「つくる責任 つかう責任」に対応するため、私はエネルギー効率を高め、不要なプロセスを削減する工夫をする。さらに、低コストで実施可能な技術を調査し、持続可能な社会に貢献する改善策を提案する。

衛生工学部門 必須科目

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問題 衛生工学部門 必須科目 Ⅰ-1
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 我が国において働き方改革が推進される中、衛生工学分野においても雇用形態や勤務形態の多様化が図られてきている。このため、技術力の維持・継承の重要性が以前よりも増している。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)雇用形態や勤務形態の多様化が進む中においても着実に技術力の維持・継承していくために、衛生工学分野において多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考えるものを1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、衛生工学部門専門技術用語を交えて示せ。
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)上記事項を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理・社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
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解説
この問題は、電気電子部門における複合的システムの開発手法と、それに伴う課題や解決策を問うものである。仮想化やレイヤ化、モジュール化、ソフトウェア化といった『手法』は、効率的な開発を可能にするが、ハードウェアの挙動を把握しないままシステムを統合すると、全体の動作が見えにくくなることが問題となる。これにより、技術者は入出力だけに頼り、システム全体を把握できなくなる恐れがある。
(1)の解答のためには、まず「観点」を明確にし、課題を論じることが重要である。例えば、「システムの信頼性」「操作性の複雑化」「ハードウェアの制御の困難さ」という観点が挙げられる。課題としては、レイヤ間の不整合や、モジュール間の連携不足、ハードウェアの性能最適化が困難になる点などが考えられる。
(2)では、これらの課題の中で最も重要なものを選び、なぜそれが重要かを論理的に説明する。例えば、レイヤ間の不整合はシステム全体の動作に影響を与えるため、重要な課題として挙げられる。解決策としては、インタフェースの標準化、システムシミュレーションによる事前検証、テスト自動化などを提案できる。
(3)では、新たに生じるリスクとして、標準化の適合性やシミュレーション精度の不足、自動テストへの過信を挙げ、それぞれに対する対策を考察する。
(4)では、技術者倫理と社会の持続可能性に基づいた要件を示す。技術士倫理綱領第1条に基づき、安全性と透明性を確保することや、SDGsに対応したエネルギー効率の向上などを提案する。
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解答者の選択科目 情報・通信  専門事項 制御システム 答案形式
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問1 課題
1.ハードウェアの依存度低下による性能最適化の困難
仮想化やソフトウェア化の進展により、システム全体でのハードウェアへの依存度が低下している。この結果、個々のハードウェアの特性を十分に考慮しないままシステムが構築され、性能の最適化が困難になっている。技術者はハードウェアの詳細な挙動を把握しにくくなり、最適な性能を引き出すための調整が難航することが課題である。
2.レイヤ化による統合システムの複雑化
レイヤ化の導入は、システムのモジュール性を高める一方で、全体の統合システムの構造が複雑化する。これにより、各レイヤ間のインタフェースの不整合や、予期せぬ動作が発生しやすくなる。技術者は個々のレイヤの動作に依存し、システム全体の動作を把握する機会が減少し、トラブルシューティングが難しくなることが課題である。
3.モジュール化による相互依存性の低下と責任分担の曖昧化
モジュール化はシステム開発の効率を向上させるが、個々のモジュール間の相互依存性が低下し、全体としての動作の連携が希薄になる。これにより、トラブル発生時にどのモジュールが原因か特定するのが難しくなり、責任の所在が曖昧になる。技術者はシステム全体を包括的に理解する必要があり、問題解決に時間がかかることが課題である。
問2第一の課題と解決策
レイヤ化による統合システムの複雑化が最も重要な課題であると考える理由は、システム全体の動作が見えにくくなることで、トラブルシューティングやメンテナンスが困難になるためである。レイヤ間のインタフェース不整合や予期しない挙動が発生しやすく、システム全体の安定性や信頼性に悪影響を及ぼす可能性が高い。特に電気電子分野では、システム全体の調和が重要であり、部分的な問題が大きな故障につながるリスクが高い。
1.レイヤ間のインタフェース標準化
各レイヤ間の通信を円滑にするため、インタフェースの標準化が必要である。これにより、データのやり取りがスムーズになり、異なるレイヤ間での不整合が減少する。標準化プロトコルを用いることで、システム全体の統合性が向上し、トラブル発生時の対応が容易になる。
2.システムシミュレーションによる動作確認
レイヤ化されたシステムの複雑さを事前に評価するため、システム全体のシミュレーションを行うことが重要である。シミュレーションツールを用いて各レイヤの動作を確認し、全体としての動作を検証することで、予期しない挙動や不具合を未然に防ぐことができる。
3.モジュール間のテスト自動化
システムの安定性を保つため、各モジュールやレイヤ間のテストを自動化することで、より迅速かつ正確に問題を発見できる。自動テストにより、レイヤ間の不整合やインタフェースエラーを効率的に検出し、システムの全体的な信頼性が向上する。
問3懸念事項
1.レイヤ間のインタフェース標準化に伴う適合性の問題
標準化されたインタフェースが、全てのシステムに適合しない可能性がある。特定のデバイスやシステムが標準に対応できない場合、通信エラーが発生するリスクがある。これに対して、柔軟なプロトコル変換機能を備えたゲートウェイを導入し、非標準システムとの互換性を確保する必要がある。
2.システムシミュレーションの精度不足
シミュレーション結果が現実の動作と一致しない場合、誤った判断を下すリスクがある。これを防ぐため、実際の運用データを用いてシミュレーションモデルを逐次更新し、現実の動作に近づける必要がある。
3.テスト自動化の過信
自動テストに依存しすぎると、特定のエラーが見逃される可能性がある。手動による検証プロセスを併用し、テスト範囲の不備を補完する必要がある。
問4技術士としての要件
1.技術者としての倫理を踏まえて必要な要件
技術士倫理綱領第1条「安全と公益の確保」に基づき、品質向上のために第三者レビューを導入し、異なる視点からの指摘を取り入れる工夫をする。これにより、レイヤ間の不整合や予期せぬ動作を見逃すリスクを低減できる。また、システムの透明性を高め、問題発生時の対応を迅速化するため、文書化や報告手順を簡素化し、確認を習慣化する。
2.社会の持続可能性を踏まえて必要な要件
SDGsの目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」と目標12「つくる責任 つかう責任」に対応するため、私はエネルギー効率を高め、不要なプロセスを削減する工夫をする。さらに、低コストで実施可能な技術を調査し、持続可能な社会に貢献する改善策を提案する。
 

衛生工学部門 廃棄物・資源循環

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問題 衛生工学部門 廃棄物・資源循環 Ⅱ-1-4
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汚泥再生処理センターにおいて汚泥の堆肥化を計画するに当たり、検討すべき点を多角的に述べよ。
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解答者の選択科目 廃棄物・資源循環  専門事項 廃棄物・資源循環 答案形式
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(1) リン回収技術の選定と適用方法
汚泥中のリン回収にはHAP法、MAP法、廃アルカリ抽出法、部分還元溶融法が存在する。これら技術は汚泥処理再生センターの特性や汚泥焼却の有無などに依存する。選定にあたっては、これら技術が生成するリンの性状や副生成物の影響を詳細に分析し、センターの設備規模や地域の肥料需要との適合性を考慮する。最適な技術を選定するためには、コスト分析、環境への影響、運用の複雑さなどを包括的に評価する。
(2) 重金属のリスク管理
近年、堆肥化汚泥に含まれる重金属に関するリスクが高まっている。このため、重金属の定期的な検査とモニタリングは不可欠である。さらに、検査結果に基づいて重金属の濃度を低減するための処理技術の適用や、汚泥の発生源からの重金属排出量の管理も重要である。これには、汚泥発生源の監視と管理を強化し、重金属排出を抑制する手法を導入することが求められる。
(3) 環境保全に対する取り組み
汚泥堆肥化においては、環境保全が重要な課題である。検査結果やモニタリング結果の情報公開は透明性向上に寄与するが、それ以上に環境への影響を減らすことが重要である。このため、重金属の管理だけでなく、臭気対策や汚染物質の排出抑制などの環境保全措置を進める。
(4) ストックスペースの確保と環境対策
堆肥化汚泥のストックスペースの確保は、季節変動に対応するために重要である。しかし、貯蔵方法においては、臭気問題に対処するだけでなく、漏出水の管理や環境への影響を考慮した総合的な対策が必要である。これには、臭気成分の吸着剤の使用や、堆肥化過程でのアンモニアなどのガス排出抑制、漏出水処理設備の整備が含まれる。
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問題 衛生工学部門 廃棄物・資源循環 Ⅱ-2-1
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 2050年カーボンニュートラルの実現に向け廃棄物発電は分散型エネルギーとしてもその必要性は今後も継続される。またプラスチックに係る資源循環の促進などにより廃棄物発電の熱エネルギー変動も推定される。こうした新たな発電設備を備えた廃棄物処理施設における発電の安定化を目指した設備の設備計画策定の担当者として下記の内容について記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順を列挙して、その項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者の選択科目 廃棄物・資源循環  専門事項 廃棄物・資源循環 答案形式
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1.調査・検討すべき事項
1) 廃棄物量・質の将来予測
人口動態の変化やプラスチック分別促進の影響を考慮し、ごみ量と質の変動を予測する。プラスチックごみの増減が熱エネルギー変動に及ぼす影響を詳細に分析し、これに基づいて設備改修や燃焼管理の最適化を検討する。
2) ごみ量・質に合わせた設備選定
幅広いごみレンジに適応可能な設備の選定が重要。低負荷運転や低質ごみへの対応に助燃剤を使用せずに済む設備の選定を行い、プラスチックごみの特性に基づく効果的な燃焼方法を考慮する。
3) 熱回収技術の把握
焼却炉の構成機器ごとに熱回収効率と排ガスの影響を詳細に調査し、プラスチックごみの高い発熱量を効果的に活用する方法を検討する。費用対効果を考慮した上で、最も効率的な熱回収方法を選択する。
2. 業務遂行手順、留意・工夫すべき点
1) プラスチック減少を見据えたごみ処理システムの計画
プラスチックの減少と有機性廃棄物の増加を予測し、これに基づいて焼却炉の容積やボイラーの容量を決定する。プラスチックごみの減少が焼却炉やボイラー設計に与える影響を詳細に検討する。
2) 高効率熱回収設備の採用
低温エコノマイザーや低空気比燃焼、排ガス再循環などを導入し、プラスチックごみの特性に基づく熱回収効率の最適化を図る。炉内高温化に伴う設備の耐久性を検証する。
3) 安定したエネルギー供給設備の採用
発電出力に蓄電池を導入し、発電の平準化やエネルギー需給バランス調整を行う。夜間の低電力需要時に蓄電し、昼間の高電力需要時に使用することで、発電の効率化を図る。
3. 効率的、効果的業務のための関係者との調整方法
1) 廃棄物処理施設運転者との連携強化
ごみ燃焼の均質化を実現するため、ごみクレーンによるごみピット内の攪拌を指示し、焼却不適物の発見や除去を促進する。
2) 電力需要家との消費電力量調整
ダイナミックプライシングの導入を検討し、消費電力量が多い時間帯の節電行動を促進することで、エネルギー需給バランスの確保に努める。
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問題 衛生工学部門 廃棄物・資源循環 Ⅲ-2
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(1) 廃棄物処理施設の集約化の課題
1) 用地確保の課題
集約化する自治体が地理的に近接していることが多い中で、他自治体のごみを自分の地域に搬入することに住民が反対する可能性がある。用地確保の観点から地元の理解を得るための工夫が求められる。
2) 収集運搬経路と地域エネルギー供給の課題
ごみ焼却工場の集約化に伴い、ごみ集積場からの搬送距離が長くなり、収集効率が低下する恐れがある。この観点から、収集車によるCO2排出量の増加や、地域エネルギー事業への参加自治体の影響を検討する必要がある。
3) 集約化スケジュールの調整の課題
参加自治体間で施設更新時期が異なるため、施設の有効活用の観点から、集約化による施設の統廃合が進行しにくい。自治体数が増えるほど、事業スケジュールの調整が困難になる。
(2) 課題2「収集経路と地域エネルギー」の解決策
1) 中継輸送施設の活用
既存のごみ焼却工場を中継輸送施設として活用し、集積場のごみを従来のルートで中継輸送施設へ搬送する。そこから大型車に積み替えることで、ごみの輸送効率を向上させる。
2) 省人化による収集効率の向上
ロボットアームを用いたごみ収集を実現させることで、運転席から降りる必要がなくなり、一人での作業が可能となる。これにより、省人化を図り、収集作業の効率化を実現する。
3) 地域資源の総合的処理・活用
メタンガス化施設やごみ飼料化施設、ごみ堆肥化施設、燃料化施設等を整備する。これにより、マテリアル利用やエネルギー利用に必要な量を確保し、地域エネルギー事業の推進を図る。車両によるエネルギー輸送も含め、参加自治体間でのエネルギー利用効率を高める。
(3) 新たなリスクと対策
1) 投資と管理の複雑化に対するリスク
集約化や大規模化に伴い、新機能の設備投資や維持管理の複雑化による事業推進の難易度が増す。自治体の人的・財政的負担の低減が求められる。
2) 対策
最も規模の大きい自治体や立地自治体がリードし、人的・財政的投資に関する合意形成を図る。AIやIoTを用いた統合管理、センサーや分析システムの導入、新たな官民協働モデルの採用を検討することが重要である。

情報工学部門 必須科目

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問題 情報工学部門 必須科目 Ⅰ-1
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 小規模企業者は、社会経済において重要な役割を担う一方で、内部経営資源が贅沢ではないことから、今まではデジタル技術の利活用が容易ではなかった。一方、昨今のクラウドサービスの進展に伴い、利活用の障壁が低くなってきており、小規模であることが必ずしも不利ではない状況が生じている。小規模企業者がユーザとしてクラウドサービスを自社業務に利活用するため、情報工学分野で助言を行う技術者の立場で、業種・業務を具体的に想定した上で、小規模企業者が置かれている状況を踏まえて以下に問いに答えよ、
設問(1):技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出しそれぞれの観点を明記した上でその課題の内容を示せ
設問(2):設問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、情報工学の専門技術用語を交えて示せ。
設問(3):設問(2)で示した全ての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ
設問(4):設問(1)~設問(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に則して述べよ。
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解説
 
本問題は、小規模企業がデジタル技術を活用する際の課題とその解決策を情報工学の観点から問うものです。クラウドサービスの普及とIT基盤の外部委託により、低コストで業務効率化が実現できる現状を踏まえ、各課題に適切な解決策を示すことが求められます。
 まず、業務プロセスの効率化について、小規模企業には即効性と操作の簡便さが重要です。たとえば、在庫管理や顧客管理には、クラウド型システムが有効であり、ツール選定の際には操作負担の少ないものが求められます。また、情報セキュリティの観点では、小規模企業はコスト管理が特に重要であり、暗号化や多要素認証などの基本的なセキュリティ機能が整ったサービスを選ぶ必要があります。さらに、データ分析と意思決定支援も業務改善において欠かせない要素です。
 次に、シンプルで即効性のあるクラウドシステムの導入が求められます。具体的には、シングルサインオンやノーコードプラットフォームを活用し、操作を簡便にする環境の構築が重要です。また、必要な機能のみを柔軟に組み合わせられるマイクロサービスアーキテクチャの採用により、効率的な運用が実現します。
 最後に、技術者としての倫理と社会の持続性も考慮する必要があります。セキュリティやデータ管理の観点から、適切なアクセス制御やバックアップが不可欠であり、エネルギー効率やデジタルリテラシー教育も持続可能な社会に貢献します。
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解答者の選択科目 ソフトウェア工学の  専門事項 電磁気応用 答案形式
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(1)製造業におけるクラウドサービス活用の課題
業種:製造業(部品加工業)
業務:クラウドサービスの活用によって在庫管理や設備稼働状況のモニタリング、製品品質データの収集・分析を効率化する。
1) 即効性の高い簡易クラウドシステム
導入のシンプルさと短期導入効果の重視の観点から、部品加工業では、現場スタッフが簡単に使えるクラウドシステムが必要である。多機能で複雑なシステムは操作負担が大きく、運用が定着しにくいリスクがある。導入直後から効果を実感できる、直感的なインターフェースが重要である。
2) 業務改善に役立つ軽量な分析ツール
小規模データ活用の促進の観点から、小規模データを活用し、業務改善に結びつけるには、シンプルな可視化や簡易な分析が適している。製造現場で発生する少量のデータを活かし、意思決定を支援する軽量なクラウドツールが理想的である。
3) 費用対効果の高いセキュリティ対策
限られた予算でのリスク管理の観点から、製造データ保護のためのコスト効率の高いセキュリティ対策が求められる。クラウド標準機能によるアクセス制御やログ管理を活用し、外部依存を抑えた保護が重要である。
(2)最も重要と考える課題と複数の解決策
最重要課題「即効性の高い簡易クラウドシステム」に対する解決策を述べる。
1) クラウドネイティブなマイクロサービスアーキテクチャの採用
クラウドネイティブのマイクロサービスアーキテクチャを用いることで、機能ごとに独立したサービスを提供し、必要な機能のみを選択的に導入できる。これにより、システムの複雑性を抑え、操作の直感性を高めながら迅速に導入効果を得ることが可能である。マイクロサービスの特性により、機能追加や変更が容易で、全体の柔軟性が高まる。
2) ノーコード/ローコードプラットフォームの利用
ノーコードやローコードプラットフォームを活用することで、現場スタッフでも簡単にアプリケーションの設定が可能になる。プログラミングスキルがなくても操作画面を構築できるため、迅速な導入と独自運用が可能である。また、運用効率も向上する。
3) エッジコンピューティングによるリアルタイムデータ処理
エッジコンピューティング技術を導入し、データ処理をエッジデバイス側で行うことで、遅延を減少させる。クラウド依存を軽減し、現場に近い場所でデータを処理するため、迅速な意思決定が可能である。
(3)波及効果、懸念事項、対応策
1)波及効果
シンプルなアクセス管理や直感的なUI/UX、エッジコンピューティングにより、現場スタッフが即時にデータにアクセスし、リアルタイムで判断できる環境が整う。これにより作業効率と対応速度が向上する。
2-1)懸念事項:システムの複雑性増加と管理負荷
解決策実施によりシステムが複雑化し、管理が困難になる可能性がある。運用負荷も増加する懸念がある。
2-2)対応策:コンテナオーケストレーション(例:Kubernetes)でマイクロサービスの自動管理とスケーリングを実現し、さらにInfrastructure as Codeで構成管理の自動化を進め、効率的な管理を可能とする。
(4)技術者倫理及び持続可能性の要件・留意点
①データアクセス権限の高度な設計
技術者は業務特有の脅威モデルを考慮し、エッジとクラウド間の権限を厳密に設定する。APIやIoTデバイスからのアクセス増加に対応し、リスク分析と権限見直しを定期的に行うことで差別化を図る。
②エネルギー効率を最適化したクラウドインフラ
マルチクラウドやエッジを導入する際、技術者はエネルギー消費を抑えたデータセンターを選定し、持続可能な運用を実現する。オートスケーリングを活用して負荷に応じたリソース調整を行い、エネルギー効率を最大限に高める設計が求められる。

情報工学部門 ソフトウェア工学

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問題 情報工学部門 ソフトウェア工学 Ⅱ-1-1

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要求獲得において要求に関する情報をステークホルダーから収集する方法を3つ挙げ、その概要と留意点を説明せよ

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解答者の選択科目 ソフトウェア工学  専門事項 システム設計 答案形式

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1. インタビュー

ステークホルダーから直接要求を引き出す方法であり、質問を事前に構造化することで一貫性が向上し、分析が容易になる。相手の知識に応じた言葉を用いることが重要であり、正確な記録と音声録音やメモの管理も求められる。

2. アンケートや調査票

多数のステークホルダーから一度にデータを収集するのに適している。質問文は明確にし、曖昧な表現を避けるべきであり、回答範囲も限定しすぎないようにする。データ分析においては、回答の偏りやサンプルサイズを考慮し、信頼性を確保する必要がある。オンラインフォームや自動集計ツールを使用することで、回答の収集・集計作業を効率化できる。

3. ワークショップ

複数のステークホルダーが意見を共有し合意形成を図る場であり、ファシリテーション技術が重要である。全員が発言しやすい環境を整え、議論が収束しない場合には客観的な助言が必要とされる。また、ホワイトボードやディスカッションツールを活用して意見を視覚化し、議論を円滑に進める工夫が求められる。さらに、リアルタイムで意見を集約・分析できるツールやリモート参加を可能にするビデオ会議システムの導入も効果的であり、地理的制約を超えてより包括的な合意形成が可能となる。

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問題 情報工学部門 ソフトウェア工学 Ⅱ-2-1

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既存の大規模なソフトウェアを流用してエンハンス開発を行うプロジェクトにリーダの立場で参画することとなった。流用対象のソフトウェアでは不具合が散見されているが、設計ドキュメントやテスト仕様書の信頼できるものは入手できず、品質の状態を容易に把握できない。そのため、ソフトウェアの設計の技術的負債の評価を行う方針とした。評価に際しては成果物に対する解析やメトリクスの活用を考えている。このような大規模な再利用開発の技術的負債の課題に対して以下の問いに答えよ

設問(1):

大規模再利用開発の技術的負債の課題について、解析やメトリクスを活用した効果的な評価を行うために、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ

設問(2):

技術的負債の評価において手順、留意すべき点、工夫を要する点を述べよ

設問(3):

プロジェクトを効率的かつ効果的に進めるために調整が必要となる関係者を列記し、それぞれの関係者との連携・調整について述べよ。

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解答者の選択科目 ソフトウェア工学  専門事項 システム設計 答案形式

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(1)技術的負債の評価に際しての調査・検討事項

①技術的負債の条件についての調査・検討事項

調査事項:技術的負債の不具合要件や影響の条件等を明確にするために、一般情報から技術的負債の不具合要件等について調査する

検討事項:技術的負債の不具合要件に対して必要となる解析手法やメトリクスについて検討する。

②解析ツール等についての調査・検討事項

調査事項:①にて得られた解析手法やメトリクスを抽出について、人的作業の品質のばらつきや・漏れなどをなくすために作業の自動化や標準化を行うための市場ツールを調査する。 

検討事項:適合性・使用性・ライセンス・コストなどの観点から導入する市場ツールを検討する

(2)手順、留意点、工夫点

作業手順については、プロジェクト計画の策定、解析ツールの試行による評価、全体評価の3工程とする。

以下にそれらの留意点、工夫点を述べる。

①計画段階:プロジェクト計画を策定

留意点:評価工程において、技術面・体制面などにおいて対応が困難となり本プロジェクトが立ちいかなくなるリスクがある

工夫点:Pocにより事前に技術的実現性や実施時に想定されるリスクを洗い出し対応方針を決める。その上で本プロジェクトを実現するために必要が人・モノ・コスト等の資源の配分を行う。

②解析ツールの試行段階:解析ツールを試行し課題の抽出対策を検討

留意点:解析結果が解析者のスキルに左右され解析結果の品質にばらつきが生じるリスクがある

工夫点:動的解析や静的解析などの解析手順・チェック項目を作成し解析者間で共有する。

③全体評価段階:評価対象全体に対し解析ツールによる評価を実施

留意点:評価対象の網羅性が不十分な場合、不具合が残存し、適切な品質を確保できない。

工夫点:解析時に評価対象の網羅性を数値化・可視化し、複数人で評価の網羅性・妥当性をチェックする

(3)関係者との連携・調整

関係者は、経営者、開発・運用チーム、社内の他部門(営業、法務等)、解析ツールの販売会社等が挙げられる。これにおいてプロジェクトを効率的・効果的に進めるために特に重要と考える調整を以下に述べる

①経営方針との整合・組織全体との協調化(経営者)

経営方針と整合を図り経営者の理解を得て、組織全体の理解・協調化を図る。

②開発・運用チームの教育と学習(開発・運用チーム)

解析ツールを使いこなすために、開発・運用チームに対し、教育と学習のトレーニング計画を策定し、教育と学習を実施する。

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問題 情報工学部門 ソフトウェア工学 Ⅲ-1

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パブリッククラウドサービスの種類は大まかにIaaS/PaaS/SaaS(それぞれインフラストラクチャ/プラットフォーム/ソフトウェアを提供するクラウドサービス)がある。ソフトウェア開発においては、既存のIaaSやPaaSを利用し、新たなSaaS型のクラウドサービスを開発することが求められるようになった。このようなソフトウェアの設計を担当する立場で、次の問いに答えよ。

設問(1):パブリッククラウドサービスの技術的な特徴や特性を述べ、それらを踏まえて多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。

設問(2):設問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。その課題に対する複数の解決策を、専門技術・手法を用いて示せ。

設問(3):設問(2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

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解答者の選択科目 ソフトウェア工学  専門事項 システム設計 答案形式

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(1) パブリッククラウドサービスの特徴と課題

パブリッククラウドサービスの技術的特徴には、オンデマンド性やスケーラビリティ、マルチテナント性、高可用性と信頼性、コスト効率がある。必要時にリソースを即座に利用でき、需要に応じたリソース調整やコスト削減が可能である。また、複数ユーザーがリソースを共有しつつ独立性を保ち、冗長性やバックアップ機能によってサービスの安定稼働が確保される。

1. 信頼性と高可用性の確保

信頼性と高可用性の確保の観点から、システム全体の安定稼働を図るためには、マルチリージョン展開と自動フェイルオーバーの導入が必要である。これにより、障害発生時に別リージョンへ即時切り替えを行い、ダウンタイムを最小限に抑えられる。

2. セキュリティとデータ保護

セキュリティとデータ保護の観点から、外部リスクにさらされるSaaSサービスのデータを保護するためには、多要素認証やデータ暗号化による厳格な認証管理が不可欠である。静的データと転送中データの暗号化により、情報漏洩リスクを低減し、ユーザーに安全性を提供する。

3. コスト最適化と運用効率の向上

コスト最適化と運用効率の向上の観点から、リソース利用の無駄を減らし、持続可能な運用体制を維持するためには、オートスケーリングによる動的なリソース最適化が求められる。利用状況に応じてリソースを調整することで、運用コストの削減が可能である。

(2)最重要課題1)と解決策

課題として「マルチリージョン展開と自動フェイルオーバーによる高可用性の実現」を選定した理由は、信頼性と高可用性がSaaS型クラウドサービスにおける基本要件だからである。サービス停止や障害は直接的にユーザーの信頼を損ない、利用の継続性が保証されなければ、他の機能も十分に発揮されない。

1) IaaSやPaaSのマルチリージョンサポートの活用

AWSやAzureの複数リージョンサポートによりデータやアプリケーションを分散させ、各リージョンにインスタンスやデータベースの複製を配置する。障害時に他リージョンが代替稼働させる。

2) 自動フェイルオーバー機能の組み込み

ロードバランサーやDNSサービス(例:Route 53など)のフェイルオーバー機能を活用し、特定リージョンで障害が発生した際には自動で別のリージョンにトラフィックを切り替えダウンタイムを最小化する。

3) データのリアルタイム同期と監視

データベースのレプリケーションでデータのリアルタイム同期とリージョン間の整合性を確保する。また、監視ツールで常時確認し、異常発生時に対応する。

(3)新たに生じうるリスクと対策

1) データの整合性と同期遅延

マルチリージョンでのリアルタイム同期は、ネットワーク遅延やレプリケーションの遅れによりデータの整合性が損なわれるリスクがある。特に更新頻度が高い場合、不整合がビジネスへ深刻な影響を与える懸念がある。対策として、一貫性モデル(強い一貫性と最終的整合性)の適切な選定と、グローバル分散データベースの活用で遅延を抑える。また、遅延が許されないケースには、ユーザーアクションごとに同期確認機能を設けることで一貫性を維持する。

2) 複雑な障害対応と運用負荷

マルチリージョン展開と自動フェイルオーバーの導入は、障害対応が複雑化し、運用負荷が増大する可能性がある。対策として、IaCツールやAIOpsを活用して構成の標準化と自動修復を行い、運用を簡略化する。また、復旧訓練とモニタリングの強化により、迅速な障害対応体制を整備する。

応用理学部門 必須科目

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問題 応用理学部門 必須科目 Ⅰ-1
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 第6期科学技術・イノベーション基本計画(令和3年)では、我が国が目指すべき未来社会像を、「持続可能性と強靭性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりが多様なし幸せを実現できる社会」と表現している。その現実には、『「総合知による社会変革」と「知・人への投資」の好循環』が必要である。高度な科学技術を担う人材育成に関して、古くは1996年度から5年計画として実施されたポストドクター等1万人支援計画、いわゆる「ポスドク1万人計画」が知られるが、結果として正規雇用されない大量の博士人材が生み出された。これにより、日本社会に博士課程進学のリスクが広まり、学位取得者の減少を招くこととなった(資料1)。このことが、科学技術分野における日本の存在感の急速な低下をもたらした一因であるとの見方もある。こうした閉塞状況を打破するためには、何らかの策を講ずる必要がある。
(1) 応用理学分野の研究・開発・産業を支える技術者・研究者の源として博士人材の育成は急務である。このことについて、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記した上で課題の内容を示せ。
(2) 前問 (1)で抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) 前問 (2)で示した解決策に関連して新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4) 前問(1)~(3)を通して、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から留意点を述べよ。
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解説
 この問題を解く際には、応用理学分野における博士人材の育成とその重要性を現実的な課題として多面的に捉えることが求められます。博士人材育成の課題として、実務経験と学術教育の融合、キャリアパスの多様化、正規雇用の機会創出が挙げられます。まず、実務経験と学術教育の融合については、産学連携を強化し、博士課程での実務経験を増やすことが必要です。具体的には、産業界と連携した研究テーマの設定やインターンシップの充実が考えられ、これにより学生は理論と実務のギャップを埋める経験を得られます。次に、キャリアパスの多様化については、博士人材が研究職以外でも活躍できるようにすることが重要です。これには、企業や公共部門でのキャリアパスを明確化し、支援体制を整備することが含まれます。企業内でのキャリア開発プログラムの導入や博士人材の価値を再評価する取り組みが具体策として挙げられます。さらに、正規雇用の機会創出に関しては、企業や研究機関との連携を強化し、博士人材の雇用を安定化させることが求められます。解決策として、産学連携プログラムの拡充や、博士課程修了者を採用する企業への税制優遇措置が有効です。これにより、企業の採用意欲が高まり、博士人材の雇用が促進されます。新たな懸念事項としては、税制優遇措置による国の財政圧迫が考えられます。これに対して、博士人材の研究開発成果の商業化を促進し、企業の業績向上を図ることで税収を増加させる対策が必要です。また、産業界での研究開発の活性化による経済成長も目指します。技術者としての倫理と社会の持続可能性を考慮し、公平で持続可能な博士人材の育成を目指すことが求められます。
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解答者の選択科目 物理及び化学  専門事項 電磁気応用 答案形式
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(1) 博士人材育成の課題
1)実務経験と学術教育の融合
産学連携の観点から: 博士課程の中で、産業界との連携を強化し、学術研究と実務経験を統合する必要がある。実務に即した研究テーマの設定やインターンシップの充実が求められる。
2)キャリアパスの多様化
キャリア開発の観点から: 博士人材には研究職だけでなく、幅広いキャリアパスを提供することが重要である。産業界や公共部門での活躍を促進するための支援体制の整備が必要。
3)正規雇用の機会創出
雇用安定の観点から: 博士人材の雇用を安定化させるために、企業や研究機関との連携を強化し、正規雇用の機会を増やす戦略が求められる。
(2)課題「正規雇用の機会創出の補完」の解決策
1)産学連携プログラムの拡充
大学と企業が共同でエネルギー、環境技術、バイオテクノロジーなどの分野でプロジェクトを立ち上げることを提案する。学生が企業の実際の課題に取り組むことで、理論と実務のギャップを埋める経験を得られる。実務経験は学生にとって価値があり、企業の研究開発部門でのキャリア形成にも繋がる。
2)税制上の優遇措置の導入
博士課程修了者を新たに採用する企業に対して、税制優遇措置を設けることで、企業側の採用意欲を高めることができる。税制優遇により、博士人材の採用が促進され、学生も博士課程への進学後の就職に関する不安を軽減できる。
3)学会活動と企業価値の連携
学会での博士課程学生の成果発表を企業価値向上の手段として位置づける。これにより企業は学会活動に力を入れるようになり、その業務を遂行するために博士人材の雇用を増やすことが期待される。
(3) 新たな懸念事項とそれへの対策
1)懸念事項:税制上の優遇措置による国の財政圧迫の懸念がある。
2)対策:博士人材による研究開発成果の商業化を促進し、企業の業績向上に貢献させることで間接的に税収を増大させる。また、産業界における研究開発の活性化により経済全体の成長を目指す。
(4) 技術者倫理と社会の持続可能性
1)技術者としての倫理
博士人材育成においては、倫理的行動の重要性を強調し、研究の透明性、データの正確性、知的財産権の尊重などを厳守することが求められる。
2)社会の持続可能性
博士人材の育成とその活用は、社会の持続可能な発展に寄与する。SDGsの目標達成に向けた研究開発やイノベーションの推進に博士人材が貢献することで、社会全体の持続可能性を高める。

応用理学部門 物理及び化学

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問題 応用理学部門 物理及び化学 Ⅱ-1-1

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 3次元(3D)ディスプレイは、複数の方式が用いられている。このうち、専用の眼鏡を必要とするものと裸眼で利用するものとを1つずつ挙げ、なぜ立体的に見えるのかが分かるように、それぞれ原理について具体的に説明せよ。

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解答者の選択科目 物理及び化学  専門事項 電磁気応用 簡易答案形式2
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1.専用眼鏡使用:アクティブ・シャッター方式
瞳孔距離だけ離れた左右2台のカメラで撮影された左右視野画像を、ディスプレイ上に高速で切り替えて映写する。眼鏡左右に高速液晶シャッタを取り付ける。ディスプレイ画像表示の高速切替と眼鏡の左右シャッター開閉を電子的に同期する。眼鏡の左右シャッター開閉によって、右目は、右視野画像、左目は、左視野画像のみを同期して見れるようにすることで、立体視を実現する。
2. 裸眼利用:パララックスバリア方式
パララックス(視差)バリア(遮蔽物)とは、視差が生ずるよう遮蔽板でディスプレイの一部を遮蔽する方式である。1.と同様に撮影した左右視野画像を用い、ディスプレイ上にそれぞれのサブ画素を、縦ストライプ状に左右交互に配置し、映写する。
ディスプレイ手前に、左右それぞれ1画素ごとに1つの、画素と同じ幅の縦スリットを設けた遮蔽板を立てる。適切な距離から両眼で遮蔽板通して、ディスプレイを見て、左目には左視野画像、右目には右視野画像だけが見えるようにし、立体視を実現する。
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問題 応用理学部門 物理及び化学 Ⅱ-2-2
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あなたの所属する組織において、DX(デジタル・トランスフォーメーション)化の一環として、新たなコミュニケーションツールの導入による業務効率の改善を図ることになり、あなたはその導入責任者となった。物理及び化学分野に関する業務のDX化を進めるに当たり、下記の内容に記述せよ。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者の選択科目 物理及び化学  専門事項 電磁気応用 答案形式
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業務効率の改善を図る新たなコミュニケーションツール(以下ツール)の導入責任者として、物理及び化学分野に関する研究業務を想定し、以下を述べる。
(1)調査、検討事項とその内容
①新規導入機能の調査・検討
各研究フェーズでの業務(検索、データ取得、分析、論文執筆、評価)の効率化を図る。そのため、以下の各ツールの基本機能を調査し検討する。
・研究者用SNS
・電子実験ノート(ELN: Electronic Lab Notebook)
・データ管理システム(SDMS: Scientific Data Management System)
・情報管理システム(LIMS: Lab Information Management System)等
②共有すべきデータの調査・検討
研究者間で共有すべき論文や実験データを調査し、アップロードに備え、リストアップする。
③戦略的機能の調査・検討
戦略的重要業務効率化のための究者用SNSを調査する。すなわち、研究初期では、先行研究把握のため、関連論文掲載が多い研究者用SNS導入を検討する。
(2)留意点、工夫点を含めた業務手順
①導入計画立案
データを有効活用するため、SDMSで大量の実験データや論文を効率的に整理、管理し、必要情報に迅速にアクセスできるようにする。
②機器の連携状態の確認
ELNと機器との連携状態に整合性等の問題がないか確認し、SDMSやLIMSとも連携させる。これにより、データを一元管理し、LIS (Laboratory Informatics System)を構築する。そして大量データ生成/取得、大規模データベースの高速検索、知識発見を戦略的効率的に実現する。
③ツール活用推進
効果的かつ効率的な情報の検索と取得のため、研究者用SNSを接続し、最新の研究論文や先行研究の効率的検索を可能にする。情報を自動取得するインターフェース/モジュールとしては、CiNiiやSpringerLink、J-STAGE等のAPIがある。これらを利用し、最新論文情報を自動的に取得して、データベース登録を可能にする。
(3)関係者との調整方策
Ⓐ設備担当者が、ICT技術者と連携し、システムの物理的インフラ(サーバー、ネットワーク機器等)の保守、更新等ICT技術をサポートするよう指導する。
また、研究機器のネットワーク接続やデータ転送の最適化についてもⒷICT技術者が設備担当者に協力するよう指導する。そしてⒸ研究者が使用する機器の設定、補正、またはトラブルシューティングについて、設備担当者の知識を深化させる。
ここで得たノウハウ、および、設備担当者の余剰資源を活用する。
すなわち、研究者の実験の最適な機器すなわち、研究者の実験の最適な機器配置や使用方法を設備担当者がアドバイスし、効率化のサポートを行って、業務の効果的進行を図る。
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問題 応用理学部門 物理及び化学 Ⅲ-1
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最近、空飛ぶクルマ(eVTOL: Electric Vertical Take-Off and Landing)の実用化に向けた研究開発が活発化している。このような状況を考慮し、以下の問いに答えよ。
(1)空飛ぶクルマが普及するにあたって、技術者としての立場で多面的な観点から、課題を3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考えられる課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)全ての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 物理及び化学  専門事項 電磁気応用 答案形式
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(1) eVTOLの普及にあたっての観点と課題
1)蓄電池の高性能化の必要性
エネルギー密度の観点から、現在の蓄電池は、エネルギー密度が限られており、eVTOLの飛行距離と荷物積載量に制限を与えている。より高エネルギー密度の蓄電池、あるいは新たなエネルギー蓄積技術の開発が必要とされる。
2)飛行機能冗長化の必要性
飛行安全性の観点から、eVTOLの安全性を確保するためには、一部のロータが停止しても他のロータによる緊急着陸が可能な冗長化が必要である。制御系の設計において、各ロータの独立かつ協調動作が求められる。
3)新たなインフラ整備の必要性
交通システム統合の観点から、eVTOLの普及には、専用飛行場やバッテリー充電設備などのインフラ整備が不可欠である。また、航空法規の適用や新たな規制の策定も必要となる。
(2) 最重要課題とその解決策:飛行機能冗長化
1) ロータの冗長設計: 複数のロータを設計に組み込むことで、一部のロータが停止しても残りのロータで飛行を維持できるようにする。
2) 緊急着陸システムの導入: エンジンや制御系に問題が発生した際に、自動的に緊急着陸を行うシステムを導入する。
3) 滑空機能の搭載: 有翼設計を取り入れ、動力損失時に滑空して着陸できる機能を提供する。
(3) 新たなリスクとそれへの対策
新たに生じうるリスク:
冗長化システムの導入により、システムが複雑化し、それに伴う操作ミスやシステムエラーのリスクが増加する可能性がある。
対策:
1) 運転者の継続的な訓練と教育: 冗長化システムの操作に関する継続的な訓練を実施し、運転者の技術向上を図る。
2) 自動診断システムの導入: システムの状態をリアルタイムで監視し、異常を早期に検出できる自動診断システムを導入する。
3) シンプルな操作インターフェースの開発: 操作ミスを減らすために、直感的かつシンプルな操作インターフェースを開発し、運転者が容易にシステムを理解・操作できるようにする。

化学部門

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問題 化学部門 化学プロセス Ⅱ-1-4
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火傷防止やエネルギーロス防止のため、設備外面に取り付けられている保温材の下における金属腐食の原因を挙げて、その対策について述べよ。
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解答者の選択科目 化学プロセス  専門事項 化学装置及びプロセスの計画、設計、分析 答案形式
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(1) 保温材内部への湿気の侵入                   
 機器、配管連結部の繋ぎ部のシール性不良、外装版の施工不良、経年劣化により、湿気が侵入して金属表面に腐食を引き起こす。
 対策は、①保温材の継ぎ目や接合部分のシール強化、②定期的に保温材を点検し、損傷や腐食の兆候を早期に発見し、保温材の取り替えや修理を適時に行うことである。
(2) 腐食性化学物質の存在
 プラントからの蒸気や漏れた物質が保温材に侵入し、腐食を促進する化学物質が金属表面に接触し、腐食が発生する。
 対策は、金属表面に腐食防止コーティングを施し、腐食性物質の直接的な接触を防ぐことである。
(3) 配管表面温度の変化
 温度変化により保温材内に結露が生じ、金属表面の湿度が上昇し、腐食が促進する。
 対策は、保温材の外側に通気層を設け、通気口や排気口を設置することにより、保温材内部の湿気や水蒸気を排出する。
(4)酸素の侵入
 酸素が保温材を通じて金属表面に到達し、金属の酸化が発生し腐食を促進する。
 対策は、(2)と同様に金属表面に腐食防止コーティングの施工である。
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問題 化学部門 化学プロセス Ⅱ-2-2
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 設備の省エネルギー化を推進する担当責任者として、2023年3月に閣議決定された「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する基本方針」を踏まえて、特に非化石エネルギーへの転換を考慮しつつ業務を進める場合、下記の内容について説明せよ。
(1)非化石エネルギーへの転換目標及び計画について、社内で調査、検討すべき 事項を列挙するとともに、その必要性及び内容について説明せよ。
(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
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解答者の選択科目 化学プロセス  専門事項 化学装置及びプロセスの計画、設計、分析 答案形式
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(1)調査・検討すべき事項とその必要性及び内容
(1-1)人口光合成技術を用いたエネルギー転換
気候変動対策や化石資源枯渇防止のため、グリーンエネルギー転換が必要となる。したがって、人口光合成を応用したエネルギー生成を調査し、エネルギー変換効率、触媒選定と寿命を検討する。
(1-2)エネルギー供給安定化のための貯蔵技術
化学反応を利用したエネルギー貯蔵は、変動エネルギー平準化が可能である。したがって、化学電池利用による貯蔵技術の適用可能性を調査し、エネルギー効率、反応物の安定供給率等を検討する。
(1-3)熱回収技術の応用
未利用熱エネルギーの回収により、全体のプロセスエネルギー効率を向上させ、省エネルギー化が可能となる。したがって、化学プロセスにおける廃熱を調査し、有機ランキンサイクル(ORC)の適用と効率を検討する。
(2)業務遂行手順と留意・工夫すべき点
(2-1)エネルギー効率の向上
既存の化学プロセスおよび設備のエネルギー使用状況を評価し、省エネルギーの可能性を特定する。未利用熱回収のため、低温で動作可能なORCを適用する。しかしながら、ORCは従来のランキンサイクルに比べて効率が低いため、二段階膨張を適用し、効率を向上する。
(2-2)非化石エネルギーへの転換
再生可能エネルギーを利用する発電設備の導入を検討する。人口光合成を用いて水分解し、水素発電や燃料電池を適用する。光触媒の吸収効率向上のため、①光触媒のバンドギャップの調整、②ドーピング(異種元素の添加)や複合材料の使用により、可視光の吸収範囲を広げる。
(2-3)エネルギーマネジメントシステムの導入
全体的なエネルギー消費を可視化し、効率改善を図る。発電出力が不安定な再エネ由来の電力の安定供給のため、蓄電池を導入する。全固体電池は不燃性であり、工場の設置に適しているが、液体電解質に比べてリチウムイオンの導電性が低いため、イオン伝導率の高い材料を模索する。
(3)関係者との調整方策
(3-1)設計部門
エネルギー消費や損失の最小化の実現のため、ピンチ解析やエクセルギー解析を活用し、熱損失低減を指導する。
(3-2)保全部門
設備導入時ライフサイクルアセスメントを活用し、CO2の排出源を特定し排出量の多い設備に廃熱回収設備の導入を指導する。
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問題 化学部門 化学プロセス Ⅲ-2
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 ESGの観点で企業を評価する時代になってきた。ESGとは、環境(Environment)、 社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉である。
気候変動問題や人権問題などの世界的な社会課題が顕在化している中、企業が長期的成長を目指すうえでESGの観点での配慮ができていない企業は、投資家などから企業価値のリスクを抱えているとみなされる。
ESGのうち、環境(Environment)について、化学技術者としての役割が重要であり、 どのように検討•対処してゆくか技術的な面から答えよ。
(1)化学技術者としての立場で、環境(Environment)について、多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を、専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じるうるリスクとそれへの 対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
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解答者の選択科目 化学プロセス  専門事項 化学装置及びプロセスの計画、設計、分析 答案形式
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(1)化学技術者に課せられた環境面に対する課題
1)低炭素化社会の実現
 我が国の主発電は化石資源を原料とした火力発電であり、排出されたCO2は温暖化の要因となっている。
 地球温暖化防止の観点から、化石エネルギーから脱却し、再生可能エネルギー(RE)のエネルギー変換効率の向上のため、高効率な材料の模索、製造コストの低減が必要である。このため金属ナノ粒子を触媒に担持し、光の吸収領域を可視光まで拡大する、REの生産規模を拡大することで、一単位あたりのコストを削減する。
2)ケミカルリサイクル技術の確立
 廃プラスチック(以下プラ)リサイクルの大部分がサーマルリサイクルで真のリサイクルとは言い難い。
 化石資源循環と廃棄物の削減の観点から、再生プラが新規プラと同等の品質と価値を持つため、①物性の変化や劣化を重視した技術の導入、②添加物や処理技術を用いて物性を向上させる方法が必要である。このため寿命改善効果がある酸化剤としてリン系酸化防止剤を添加し、物性の向上を図る。
3)バイオプラ(BP)の導入推進
 2023年度のプラの世界生産量は4.0億トンであり、その3%が海洋へ流出しているため、生態系へ悪影響を及ぼしている。
環境汚染防止の観点から、耐久性が必要なプラはBPに、外部に流出する可能性のある非耐久材は生分解性プラを開発し、置換が必要である。このためポリエチレンなど市場規模の大きい汎用樹脂を穀物から得られたでんぷんを糖化、発酵し、エタノールを生成、脱水しエチレンに変換しポリマー化する。
(2)最重要課題3)バイオプラ導入の解決策
1)原料資源の確保
 非可食部セルロースを利用する:非可食部セルロースを蒸煮処理や酸アルカリ処理等の前処理をする。酵素(セルラーゼ)を用いてセルロースをグルコースに分解し、グルコースを発酵させて、BPを製造する。
2)製造コストの削減
①発酵技術の高水準化(技術面):セルロース分解能力やBP前駆体生成能力の高い微生物を収集し、スクリーニングする。微生物の成長と代謝活動を最大化するために、培地の成分の最適化を図る。
 また、二酸化炭素を主原料に有機物を産生する水素酸化細菌を利用した樹脂製造プロセスを開発する。化石資源由来の物質生産と比べて、生産過程におけるCO2排出削減だけでなく、CO2の吸収効果により、排出量が大幅に削減される可能性がある。
②生産委託(製造面):海外生産や委託生産等の生産分業を検討する。
3)バイオ由来汎用樹脂の市場供給能力の拡大
①バイオポリプロピレン(B-PP)では対糖収率が高く低環境負荷での製造が可能であるプロパノールの発酵製造技術を開発する。
②バイオポリエチレンテレフタレート(B-PET)では
原料のバイオマス使用比率が30%と低い。100%バイオ
マス由来の製法開発に取り組む。
(3)新たに生じるリスクとその対策
1)リスク
①非可食部セルロースからのBP製造技術の成熟度が不足し、大量の酵素が必要となり製造コストが高騰する。
②多額の資金を投入するも、新しい微生物の期待効果が得られず、事業継続が困難となる。
③少子高齢化・労働力不足により、製造プロセス開発が遅延し、投資が増加する。その結果、開発が途中で打ち切られる。
2)対策
①酵素や微生物を利用したバイオプロセスを導入し、セルロースの効率的な分解と高収率でBPを製造するプロセスを開発する。
②微生物を段階的に導入し、予測不能な挙動や生産効率を継続的に評価する。
③開発当初からマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を導入し、原材料の削減、製品の長寿命化、再利用しやすいBPの開発を行う。あわせて、開発期間、試作回数を短縮する。

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