技術士体験論文の「業務概要」では、まず論文の題材になる「技術士にふさわしい業績」を2例選定しなければなりません。この「技術士にふさわしい業績」を選定する際に判断根拠となるのは次の3つの条件だと考えてください。
- 問題解決に技術応用のプロセスがある。
- 上記(1)の結果、(経済的な)成果が得られている。
- 上記(1)が単なるアイデア、工夫ではなく工学的な知識体系に基づいている。
ではどうして上記(1)〜(3)なのか、考えて見ましょう。それはこういう理由からです
「問題解決に技術応用のプロセスがある」
「経済的な成果が得られている」
この2つは技術士の定義でもありますよね。必須条件であるためわかりやすいものです
一方、最後の
「アイデア、工夫ではなく工学的な知識体系に基づいている」
は問題解決の手段について言っているわけで、いわば十分条件です。この条件を満たすことがおろそかになりがちです。そして、問題解決をして経済的な成果が得られたとして、その活動が工学的な知識体系に基づいていないと技術士の体験論文としては意味がないということです。問題文の次のただし書きもこの辺のことを表しています。
「・・受験した技術部門の技術士にふさわしいと思われるもの・・」
また、経済的な解決策が得られたならそれで良いと考える方もいるかもしれません。しかし、アイデア、工夫では再現性もないし、積み上げて継続していくことも出来ません。ですから、継続的に成果を生み出すには工学的な知識体系に基づいていることを示さなければなりません。
この逆に、苦労の末に独創的なアイデアを開発したとします。それが例え工学的に有益であったとしても、既存の技術体系を学ばずに一から開発するのは
- 「科学技術」という財産を活用しない、おろかな行為であり
- 技術士は科学技術の利用をつかさどる職務なので「無知」は損害につながる
というムダ以外の何ものでもありません。技術士の「無知」は許されないのです。技術士は国から資格を受けて技術による産業振興に携わるプロなのですから、国民やクライアントへの責務を考えた場合、やみくもな試行錯誤等に頼った技術開発は慎まないといけません。
また、技術士はクライアントからは、最新の技術をいつでも提供できる尊敬できる人と考えられています。このため、まず科学技術の体系的知識を保有して、それらをすぐに活用できる能力が必要で、そのためには既存の技術体系を勉強し、新たに何かを開発する場合に既存の成果を100%生かすような独創的な姿勢を持ち続けねばならないということです。
以上のことから、ここでは
○○技術では一般的に〜の法則があるから、それらをベースとして〜を考案した
というように述べればよいのです。