2017.01.23 総合技術監理部門のY様、総合技術監理の考え方について指導

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 総合技術管理部門のY様は、かつて本講座で学び電気電子部門電気設備で合格されました。今回は新たに総合技術管理部門でお申し込みくださり、たまたま上京される機会があったので、そのタイミングに合わせて数本の時間を取ることといたしました。

 Yさまは平成28年に総合技術管理部門で受験されたものの、論文試験の解答の糸口が見つからず論文作成が困難だと感じていらっしゃいました。

2017.01.23 総合技術監理部門のY様、総合技術監理の考え方について指導

 疑問に思ってらっしゃる次のような質疑に対してそれぞれご回答しました。

Q:総合技術管理部門の申込書に業務経歴はどの程度詳しく書けば良いのか。

A:各業績において総監の5つの管理のそれぞれどのような要素技術が採用したのか、直接の因果関係分かるような技術応用の内容を端的に表すこと。

Q:答案を書く上で業績と1つの管理との関連性をどの様な形で整理しておけばよいのか?

A:論文対策として、体験業務に対して応用技術や影響因子などあらかじめ整理しておけば対応がしやすいと考えがちですが、しかし問題の問いかけは過去問に見られる形式と同じとは限りません。このため整理して行く事は勉強にはなりますが、必ずしも実戦で役に立つとは限らないので、過大な期待は禁物です。それよりも過去問の問いかけに対して、それぞれベストの対応ができるように柔軟に対処できる様にしておくことの方が大事だと考えます。

平成28年問題と申し込み書、参考資料等を見ながら、総合技術管理の考え方や対処方法についてそれぞれ話し合いました。

 面談では、平成28年問題と申し込み書、参考資料等を見ながら、総合技術管理の考え方や対処方法についてそれぞれ話し合いました。そして勉強の初期段階であれこれお悩みになるのではなく、申し込み書作成、過去問練習、過去問分析・・とできることをどんどん進めていくことが大事であるとお伝えしました。

鉄道設計技士試験模範答案 鉄道電気 H27「踏切り内障害物検知装置」

問題

 踏切の安全性向上のハード対策として、障害物検知装置の設置が挙げられる。この障害物検知装置の主なセンシング方式としては(a)光電式(赤外線、レーザー式)(b)ループコイル式、(c)ミリ波式、(d)レーザーレーザー式、(e)超音波式 がある。これらのうち、3つの方式を選び、それぞれについて障害物の検出原理と長所および短所を述べなさい。

模範解答

1.光電式(赤外線式、レーザー式)について

検出原理

 光電式は投光器及び受光器で構成されており、投光器から赤外線やレーザー光の近赤外線領域光を発光し、受光器で受光している。この受光器で受光した光を電気信号に変換し電気信号が一定時間途絶えたことを検知すると障害物が有と検知している。投光器と受光器間に自動車が進入すると赤外線やレーザー光を遮ると自動車によって反射し受光器に光が届かなくなり電気信号がなくなる。これによって踏切道内の障害物を検知している。

長所

 投光器と受光器のみの構成であるため、装置価格が安い。また、設計時においては光軸を踏切道内にどのように張り巡らせるかを考えればよく、ループコイル式やレーザーレーダー式に比べて設計が簡単にできる。 

短所

 線路内に投受光器を設置するため、作業時間が限られる。雪による光軸レベルの減衰が大きいことから積雪が多い線区では冬場の使用を停止しなければならないことから障害物を検知できない期間ができてしまう。また、投受光器のレンズ面が汚れることから定期的な清掃作業が必要となりメンテナンスに手間がかかる。

 また、光電式はLEDの赤外線式も使用されているが、濃霧に強くない点がある。また、列車の前照灯の高輝度HIDランプが受光器に照射されると投光器からの信号と判断し誤動作を起こす。

2.ループコイル式について

検出原理

 ループコイル式は踏切道内の地面下に埋設したループコイルに検知用の100kHz程度の信号電流を流して磁場を生成している。通常時はこの信号電流に変化はないが、踏切道内に自動車が滞留するとループコイル上に自動車の床下の金属で磁場が乱されると信号電流の周波数が変化する。この変化量が基準値を超えたときに踏切道内に障害物があると検知する。

長所

 ループコイル式は磁場の変化により障害物を検知する方式のため、積雪や雨など気象条件は非磁性体であるため影響を受けない全天候型である。

短所

 踏切道内にループコイルを設置するには舗装軌道下に埋設する工事しなければならず工事の手間と費用がかかる。また、軌道下にループコイルを埋設してしまうことから保守を行う上でループコイルの汚損・損傷を点検できない。

  また、磁性状態は温度に依存するため、気温の変動で信号電流の周波数が変動し障害物として誤検知してしまうことがある。

3. レーザーレーダー式障害物検知装置について

 検出原理 

 レーザーレーダー式は建築限界外の高さ5mに設置されたレーザーヘッドから踏切全体を俯瞰するようにパルス状のレーザー光を照射している。踏切道上の支障物に当たった反射レーザー光が返ってくるまでの時間から距離を計測して支障物の有無を判断している。また、レーザーヘッドから照射されるレーザー光は、上下左右にスキャニングされており踏切全体の物体の位置と大きさを三次元計測し、位置と大きさによって障害物の有無を判断している。

長所

 建築限界外に設置されているため、工事や調整に線路内に立ち入る必要がなく、レーザーヘッドのガラス面の汚れの清掃も光電式に比べ格段に少ない。反射板を設置することで方向・送信出力の自動調整が可能となるため、メンテナンスが容易である。

短所

 レーザー光の反射を入力信号とするため、豪雨や濃霧に弱い。また、レーザー光を送受信しその時間差により障害物の有無を3次元計測させることから機器のハード費用・ソフト費用がかさむため、装置単価が高い。

鉄道電気 H26「輸送力増強」

問題

 電化区間の在来鉄道において、輸送力増強のため、線区最高速度を110km/hから130km/hに引き上げたい。このとき、運転保安設備のうち、以下のものについてそれぞれ確認すべき事項を具体的に述べなさい。 ①自動列車停止装置について ②連動装置、信号装置、閉塞装置、軌道回路、転てつ装置のうちから2つについて述べよ。なお、設備の条件は、複線、地上信号方式、自動閉塞式、連動駅ありとする。

1.自動列車停止装置について

ATS速度制限パターンの確認

 線区最高速度が向上しても現行のATS速度制限パターンで停止信号現示の外方までに列車が十分に停止できるか確認する。

確認方法は、以下のとおりである。

①車両ブレーキ特性に応じた線区最高速度の非常ブレーキ距離を確認する

②ATS速度制限パターンに抵触した地点から非常ブレーキ距離に応じて列車が停止する位置を算出し、停止信号現示の外方までに停止できるか確認する。

 上記の確認によって条件が満足できない場合は、対策方法として、点制御方式の場合は地上子の移設、連続制御方式の場合は軌道への打ち込み点の変更等を行い、ATS速度制限パターンの変更を行う。

車上側でATS信号を受信できるか確認

線区最高速度が向上したことによってATS車上装置が地上側からATS信号を受信できる時間が短くなる。このため、列車が地上子を通過する時間の算出を行い、ATS車上装置が定めるATS信号受信可能時間が満足しているか確認する。

確認方法としては、線区最高速度での列車が地上子を通過する時間の算出を行う。ATS車上装置のATS信号受信可能時間以上に列車が地上子上を通過しなければならないため、机上計算により地上子通過時間の算出を行う。また、現車走行試験なども実施し理論値通りATS信号を受信できるかの確認も行う。

 上記の確認によって条件が満足できない場合は、対策方法としてATS車上装置の受信時間を狭めるか、地上側のATS信号を送信する時間を長くする必要がある。

2.信号装置について

信号機の見通し確認距離の確認

 線区最高速度が向上しても、運転士が信号機の現示を確認し常用ブレーキを動作させ、現示に応じた速度までに減速できるか信号機の見通し確認距離が十分であることを確認する。

 確認方法は、車両ブレーキ特性から常用ブレーキ距離を確認し、信号機の見通し確認距離と比較し運転士が信号機の現示を確認して常用ブレーキにて現示に応じた速度までに停止できるか確認する。

 上記の確認によって条件が満足できない場合は、対策方法として信号機の見通しを改善するために既設信号機の建植位置の変更を行う。または現示展開の変更を実施し、列車速度を抑えることで常用ブレーキ距離を短くする方策が考えらえれる。

3.軌道回路について

ノイズによる軌道回路の不正動作確認

 線区最高速度の向上に伴って新型車両の導入が考えられる。新型車両に新たに新しい新型の各種装置が搭載されるが制御装置や補助電源装置等から発生するノイズが軌道回路の軌道継電器に印可し、軌道回路が不正動作するかどうかを確認する。

 確認方法は、新型車両を工場内や車庫内・本線走行試験を行い、軌道継電器が定める落下電圧の1/2以下であることを確認する。

上記の確認によって条件が満足できない場合は、対策方法として車両制御装置等にノイズを低減させるコアやアクティブフィルタ、パッシブフィルタを取り付ける。また、軌道回路への対策としては軌道継電器に緩動継電器を用いて一定時間のノイズによって軌道回路が不正動作することを防止する。

鉄道電気 H24 「軌道回路の不正落下の原因及び対策」

問題

 軌道回路の不正落下は、発生すると輸送障害を引き起こすため、安定輸送を阻害する一因となることがある。軌道回路の不正落下の原因及び対策について3つ挙げ、具体的に述べなさい。

模範解答

1.大雨や塩害等による軌道回路の不正落下について

原因

 レールと対地間は道床によって電気的に絶縁されているが、大雨や塩害によってレールと対地間の漏れコンダクタンスが大きくなることで軌道電流が道床などに流れる。これによって軌道回路の受信器に入力される信号電流が減衰し、列車在線状況と同じ信号電流レベルまで低下すると軌道回路の不正落下が発生する。

対策

 対策方法しては、軌道回路の送信器側の電圧を昇圧させ、大雨時等の短絡感度でも軌道回路が扛上するにし、適正に軌道回路が動作するように受信器側のレベル調整を行う。また、軌道継電器を駆動するのに十分な受信電圧を確保できるように軌道回路の長さを分割する。

2.AF軌道回路における軌道回路の不正落下について

原因

 AF軌道回路においては商用周波数軌道回路等に比べて信号波の周波数が高く漏れコンダクタンスの影響を受けやすい。晴天と雨天との受信レベルの減衰量差が大きく、気象条件によって大幅に信号波レベルが変化するため、軌道回路の不正落下が発生する。

対策

 列車在線による信号電流の変化と気象条件による信号電流の変化は異なっている。対策方法として気象条件による信号電流では軌道回路を落下させず、列車在線による信号電流の変化のみ軌道回路を落下させる。軌道回路が落下する最小動作レベルを自動追従する機能をAF軌道回路装置に導入する。最小動作レベル追従機能はシステム立ち上げ時に最小動作レベルを所定の値に設定しておき、軌道回路の漏れ変動等に起因する緩慢な入力変動に応じて最小動作レベルを自動的に変更する機能である。

3.軌道回路の不平衡による不正落下について

原因

 レールには帰線電流と信号電流が流れており、インピーダンスボンドによって隣接する軌道回路に帰線電流だけを通す。この左右レールに流れている帰線電流が不平衡を起こすと、インピーダンスボンド内で磁束を打ち消すことができず帰線電流に流れているノイズが軌道回路の受信器に流れ込み、軌道回路の不正落下を起こす。また、同様にインピーダンスボンドの定格電流以上に帰線電流が流れ込むとインピーダンスボンド内のトランスが磁気飽和を起こし、磁束を打ち消しあうことができず帰線電流のノイズが軌道回路の受信器に流れ込み軌道回路の不正落下が発生する。

対策

左右のレール間で抵抗に差がある場合は、ジャンパー線の太さや長さを調整し左右のレール抵抗を同程度までに施工する。また、インピーダンスボンドの定格電流が不足している場合は、流れ込む帰線電流よりも定格電流の大きいインピーダンスボンドに更新するかクロスボンドを追加し、帰線電流の迂回経路を構成し電流経路の多重化を図る。

鉄道電気 H23 「踏切の制御方式」

問題

 踏切の制御方式には「連続閉電路式」と「点制御式」がある。以下の3つについて具体的に述べなさい。

(1)   それぞれの制御方式の考え方

(2)   上記の制御方式を1つ選び、その制御回路を構成する装置や回路構成上のメリット、デメリットおよびその特徴

(3)   フェールセーフ性を確保する方法

1.連続閉電路式・点制御式の考え方

 連続閉電路式とは列車自体をスイッチとして考えると警報開始点からスイッチが「ON」の状態が警報終止点まで続く方式である。この警報区間に列車が在線し続ける限り、踏切警報が鳴動を続け、連続した警報区間の途中で列車によってスイッチ「ON」の条件が構成されても踏切が鳴動を開始する。

 一方、点制御式は警報開始点と警報終止点の上でのみ、スイッチ「入」「切」の条件を構成・論理判断し、踏切警報を鳴動させる方式である。この警報区間の途中で列車が在線しても、踏切制御子上のみで制御しているため、警報は動作しない。駅近傍の踏切制御は複雑な回路となるが、論理処理させて踏切警報を行っている。

2.      連続閉電路式のメリット・デメリット・特徴  

2−1.メリットについて

 続行列車対策回路や瞬間停電対策が必要となる点制御方式に比べて、連続閉電路式の踏切制御回路は信号機を制御する軌道回路条件を直列に接続するだけの構成となり、シンプルな踏切制御回路となる。

 また、列車種別によって踏切制御パターンを変更する急緩行選別回路を踏切制御回路と並列に接続することで容易に踏切警報時間の適正化を図ることができる。

2−2.デメリットについて

 閑散線区や単線などの踏切警報区間のレールが電気的に接続されていない軌道回路方式の場合、連続閉電路式を導入するには警報開始点と警報終止点間のレールを電気的に接続する必要があるため、コストがかかる。

2−3.特徴 

 連続閉電路式は警報区間全体の軌道回路で警報動作をさせている。車軸数軸が短絡不良を起こしたとしても他軸によって軌道短絡をするため警報動作をするため安全性が高く、公民鉄事業者で多く導入されている。

 また、警報終止点と軌道境界が離れている場合、踏切道を列車が通過しても一定時間警報が鳴動を続けるため、警報時間が長くなってしまう。このため、AFO軌道回路を踏切終止点箇所に設置して踏切警報時間の適正化を図っている。

3.      フェールセーフを確保する方法

 連続閉電路式は軌道回路条件を利用しているため、レジン制輪子などに起因する軌道回路の短絡不良防止対策を軌道回路に施す必要がある。具体的にはレジン制輪子などによってレール上の表面に形成された半導体被膜を破壊するために軌道回路の送信出力を3Vほど昇圧させる対策を実施する。

 一方、点制御式は警報終止点の踏切制御子に開電路式を採用した場合、機器が故障すると「列車あり」と同じ状態に転移し、最悪の場合、列車が踏切道に接近している途中に警報が停止し事故が発生する恐れがある。このため、警報終止点の踏切制御子に閉電路式回路を導入し、機器が故障して警報が停止することを防止する。

鉄道電気 H19「ATS、ATC」

問題 

 ATSまたはATCを用いて曲線部の速度超過を防止する対策を合計3つ挙げてそれらの得失を述べなさい。また対策はATSやATCの動作方式と合わせて仕組みを説明すること。

模範解答

 ATSの曲線部速度超過対策について述べる。

1.    階段状点速度照査形地上子で速度制限する

①  対策  

 曲線部手前に転覆危険率に応じた制限速度情報を記録した地上子を設置する。列車が地上子上を通過すると読み取り側である車上装置と地上子間でアナログ通信方式のパッシブRFIDで伝送する。これを車上側は曲線部の制限速度と判断し、自列車速度が超過していると曲線部手前までに列車速度を減速させる。

列車が曲線区間を通過している際も車上側にて制限速度を保持し、曲線区間に列車が在線している間は制限速度以下で走行する。

② メリット・デメリット 

曲線部手前と終端部付近に地上子を設置するだけで曲線部速度超過防止対策が可能となり、設置費用が安価である。

車上装置が制限速度を保持する仕様でない場合、曲線区間内を制限速度以下で走行させるため、曲線区間内に複数個の地上子を設置するか、車上装置で制限速度を保持する仕様に変更しなければならなく、改修費用が高くなる。

2.階段状連続速度照査形ATSで速度制限する。

① 対策 

 曲線部手前から列車が曲線部を抜けきるまで転覆危険率に応じた速度制限情報を連続して車上側に送信する。レールに速度制限に応じた周波数の信号電流を流し、列車がレール上を通過すると読み取り側である車上装置とレール間でアクティブRFIDで伝送する。これを車上側はレールからの情報をもとに曲線部の制限速度と判断し、自列車速度が超過していると列車速度を減速させる。

②   メリット・デメリット  

 曲線区間に送信する信号電流の周波数を転覆危険率に応じた速度制限情報の周波数に変更するだけで実施できるため、ATS送信器の周波数変更を行う配線変更のみで対応でき安価に改修ができる。

 運転士は階段状の速度制限に応じた乗り心地のよい運転走法を実施するため、パターン状連続速度照査型ATSよりも速度追従性が低い。

3.パターン状連続速度照査形ATSで速度制限する

① 対策 

 曲線部手前に地上子(トランスポンダ)を設置し、列車の減速度に応じた速度制限パターンを発生させる。列車が地上子上を通過すると読み取り側である車上装置と地上子間でデジタル通信方式のパッシブRFIDで伝送する。車上側は列車の減速度に応じた速度制限が発生し、運転士はこの速度制限パターンに応じた運転走行する。

これにより曲線部手前までに転覆危険率に応じた制限速度まで減速させる。曲線区間は連続速度照査によって列車が制限速度を超えないようにし、曲線区間を列車が抜けきると制限速度を解除する。

③   メリット・デメリット 

 列車の減速運転とほぼ相似したパターン状連続速度照査形ATSは列車の速度追従性が高く、一段制動ブレーキでの運転が可能となるため乗り心地が良い。

 福知山脱線事故を受けて法令上、ATSの主機能として線路の条件に応じて制限速度を設けることになった。点速度照査型や連続速度照査型では速度追従性が悪く速達性という視点で不利となる。この法改正を受けて多くの事業者ではパターン状連続速度照査形ATSを導入した。しかし、地上・車上装置両方とも改修が必要となるため、導入コストが高くなる。

鉄道設計技士試験模範答案 鉄道土木 H27年 「分岐器脱線」

問題

 分岐器は、その構造の複雑さから脱線に対するリスクにも特に留意する必要がある。普通鉄道の分岐器部において、これまでに発生した典型的な脱線事故の形態を3つ上げ、それぞれの原因とその防止対策について具体的に述べなさい。

 ただし、まくらぎの腐朽劣化等に伴って支持力が低下し、軌間拡大によって脱線する事例は除くものとする。

模範解答

1.       脱線形態 低速時の車輪フランジ乗り上がり脱線

①   原因 車輪削正後の摩擦係数の増加

 車輪削正の直後でフランジ部とレールに塗油潤滑がなく、急曲線を走行すると、表面の不純物が剥離し金属面が接触し摩擦係数が増大するためである。更にリード部での高低差をてい減することで輪重バランスが乱れ平面性変位を有していると,台車の4輪支持点が3点支持となり1輪乗り上がり脱線をおこすからである。

②  防止対策 削正フランジへ塗油による摩擦抑制

 車輪削正後、フランジ部への塗油を行う。また、塗油後の油の持続性を把握し、摩擦係数を増大させる要因となる油分の汚れや付着した摩耗金属粉などのレール洗浄を定常的に行う。

 フランジ部やゲージコーナー部の急激な摩耗が、摩擦係数を増大させているため、定期軌道検査などで定量的に把握する必要がある。また、脱線係数が限界を超えないようアタック角1.5度以内を通り変位の検査を頻繁に行うなど必要とされる。リード部でのカントてい減や土砂等を含んだ不安定なバラストを入替えるなど,道床の安定性を高める事が必要である。

2.  脱線形態 カント超過の平面性変位による脱線

①   原因 カント超過による横圧増加

 曲線半径を急激に小さくする方向に通りが変位し、カント超過の状態で軌道の平面性変位が大きくなり、1軸の外軌側車輪の横圧が増加する。アタック角が大きくなることによって、車輪フランジとレール間の等価摩擦係数が増加し、輪重が減少することで乗上がり脱線を引き起こす。更に分岐器の線形諸元の把握や通り変位などの確認に目視で行うことが多くあり,線形基準値の超過を見過ごすことにより軌道変位が生じるためである。

②  防止対策 保守管理上の軌道検査、整備の維持管理

 分岐器の軌道変位検査では、基準線・分岐線側について設計値に対する平面性変位や通り変位が軌道整備基準値を超過しないように軌道検測管理を定期的に行う。また、分岐器内のレールを37kgから50kgNへ重軌条化し、道床厚を50mm程度増加させる路盤改良を行う。図面や曲線台帳に基づいた保守管理基準値により定期検査により検測し,超過傾向を示した箇所は軌道整備を行う。

3.  脱線形態 トングレール先端での乗り上がり脱線

①  原因 乗移り時の外軌側輪重減少

 道床の沈下等によりトングレールが基本レールより高くなると、乗移り時に外軌側で大きな横圧が発生し、輪重減少することで、衝撃的横圧と輪重抜けにより脱線係数が限界を超え乗上がりが生じるためである。更にトングレール先端部では車輪踏面とフランジ先端付近の2点で接触する可能性があり,接触点が急激に変化し,トングレール先端部がリードレールに密着性がなくなり,1輪の異線侵入により脱線することである。

 6番や8番分岐器などの分岐リード部での急曲線がある部位では、侵入速度の制限が必要となるが徐行や一旦停止など走行条件を設定していないことが考えられる。

②   防止対策 ガードレール設置とレール継目一体化

 分岐器のトングレール先端にポイントガードを設置し、曲リードレール部分に脱線防止ガード設置する。

 また、曲率を小さくしトングレール先端と曲線との間の直線部を2.1m確保する。更に分岐器前端の継目部を溶接し、レールを一体化し安定化する。

 トングレール先端部の摩耗測定を測定器使用により列車の通過本数管理で検査することや,横圧によるトングレールの先端部の損傷や基本レールとの密着性(かみ合せ)についても検査頻度・確認が重要なため分岐器の使用頻度にあった定期検査が必要である。

 また、分岐器曲線側はポイント部のトングレール、リードレールなどの摩耗の著しい部位の交換を頻繁に行うが、時期については分岐器検査や摩耗測定管理の結果を考慮し早めに交換を行うことが望ましい。

鉄道土木 H26年 「レール破断」

問題

 レール破断につながるレールの主な損傷要因を3つ挙げ、それぞれの特徴および対策について記述しなさい。

模範解答

1.損傷要因の特徴

①動的輪重荷重による金属疲労損傷。

 レールと車輪との転がり接触疲労損傷によって頭頂面に亀裂核が形成され、列車の車輪通過回数の増加によって拾う亀裂が進展し、頭頂面に落ち込みが見受けられるようになり、水平裂や横裂に発展し、レール折損する重大性がある。また、定着レール疲労損傷として、普通継目部の破端部が端面から腹部き裂や継目部のボルト穴周辺からの亀裂が最も多い。

②転がり接触疲労損傷による破損。

 転動体と軌道との間の接触部に発生する繰返し応力によって起こる材料組織の変化を接触疲労という。表面からの微小なフレーキングとして現れる。

 滑り接触面又は滑りを伴った転がり接触面の表面の凹凸の相互作用によって,徐々に材料が除去されることで、レール頭部より亀裂が進展し,レール破損に至ることである。

③漏水や湧水によるレール底端部漏電電食。

 直流電化区間の線路において、帰線電流が土中に漏えいし、電流が流出するときにイオン化した鉄が溶出することで、レールが電食するとレールの断面が減少する。金属の表面に小さな孔(ピンホール)ができ、その内部に腐食が進行する孔食が発生する。この状態になると、レールの引張強度と疲労強度が著しく低下して亀裂が先行し、レールが折損してしまうことである。また、レール底端部はバラストなどが直接大地と接触している部分で電流流出による鉄分溶出が起こりやすため電食による損傷が多く発生している。

2.損傷要因への対策防止対策

①定期軌道状態検査によるレール頭部平滑管理。

 累積通過トン数(軸重×通過軸数(トン))を管理し所定の累積通過トン数を超えた場合に、溶接部を含むその付近のレールの削正により頭部平滑化し、動的荷重を抑制することにより溶接部の疲労寿命を延伸する。また、弱点となる、延命の短い破端部を可能な限り溶接し、ロングレール化をすることで動的輪重荷重による金属疲労損傷を抑制することが有効である。

②レール削正車による疲労層の除去。

 レール削正車で、レール表層の疲労層除去や、レール頭頂部が列車進行方向に一定波長摩耗する波状摩耗除去のために、レール頭頂部を砥石で研削加工で除去し、シェリングの発生を予防する。レールの頻度は削正通過トン数0.5億トンで0.1mmの削正を行い、削正作業は500m/回程度行い、削正回数は1箇所につき12パス(回)を基本としている。また、シェリング等の発生の予防削正を実施することで、シェリングの初期状態の白色層起因の除去することが有効である。

③湿潤状態の抑制と鉄分溶出防止のため防食加工。

 湿潤状態となるレールの帰路電流が大地へ漏洩し、レール等の鉄分が溶出し断面減少を防ぐため、トンネル内の漏水や湿潤状態を解消させる。トンネル覆工面からレール直下の漏水は樋設置を行い、レールに湧水があたらないよう水道を設ける。また、電流漏洩による電気化学的腐食で鉄分が溶出し、金属破損を防ぐため、レール底部や締結装置フランジ部への防食被覆加工を施すことも有効である。また、電食による鉄分溶出状況は目視で明らかとなるため、線路徒歩巡視での定期検査が重要である。

鉄道土木 H26年 1-2「線路巡視」

問題

 鉄道に関する技術上の基準を定める省令の第八十九条およびその解釈基準では、車両が所定の速度で安全に運転することができるように、線路を巡視することが定められている。この線路の巡視に関し、①目的、②頻度の考え方、③実施上の留意点について具体的に述べなさい。ただし、巡視時における触車災害などの労働災害防止上の留意点や運転取扱い手続きの留意点については対象外とし、解答では設備管理上の視点での留意点を対象とする。

模範解答(簡易答案)

1. 目的

 線路は、列車を支持し、走行空間を確保するという機能を有しており、巡視は、列車が安全に走行できる軌道状態であることを定期的に検査・把握することを目的としている。  これは目的ではなく作業そのものを書いています。

問いは、線路が列車を支持できること、列車が走行できるということを、直接走らせるのではなく、なぜ列車を走らせることなく線路の巡視(仮想、代替試験)だけでチェックするのか、ということです。予防保全、危険予知と予防的対策が目的です。

2.頻度の考え方

 巡視の頻度は、線区の軌道構造(レール、枕木種別など)及び土木構造(橋梁、トンネル、土工など)の種別、輸送量・運転速度等から推定される線路への負担力、線路周辺の環境等を総合的に勘案して、設定する必要がある。

このようなことは当然わかることであり、解答とは考えにくいです。

「考え方」ですから、「頻度は、輸送量が多い時、運転速度が大きい時は(推定される線路への負担力が大きいので)多めにする」がよいでしょう。

3.実施上の注意点

①〇〇見出し〇

 巡視を行う際は、前回の巡視記録や定期検査の結果に基づいて、重点巡視項目を明確にして行うことが必要であり・・。

つまり、危険要因を明確に絞り込んで重点的に行う、ということ。あと2つ程度お考え下さい

巡視の頻度や確認すべき対象に応じて、徒歩巡視、列車添乗巡視を組み合わせて行うのが良い。  

これは手段的な事項(自らの作業の効率化)なので好ましくありません。本質的な品質を高める提案としてください

この答案についての講師コメントを音声ガイドで聞く>

鉄道土木 H26年 1-3「液状化」

問題

 地震被害のひとつである液状化について、液状化メカニズムおよび液状化が発生する地盤条件を説明し、液状化対策工法を3つ挙げるとともに、各対策工法の特徴と鉄道近接で施工する場合の留意点を述べなさい。

模範解答

1.液状化メカニズムおよび地盤条件について  

 過剰間隙水圧の上昇に伴い土の有効応力が減少し,剛性や強度が低下する。締まりの緩い砂質層と地下水位が高い場所で生じる。主に海岸埋立地や緩扇状地などの砂質層で構成さた、地下水位の高い地盤条件で発生する。

2.液状化対策工法の特徴と鉄道近接施工の留意点

2−1.サンドコンパクションパイル工法

特徴

 砂質土、粘性土等さまざまな地盤に適用が可能である。締固め、補強、圧密排水の効果が同時に得られる。良質砂が入手困難あるいは不済的な時や、改良杭自体に大きな強度を期待したい時は中詰め材料に砕石やスラグ等の使用が有効である。大型施工機により大深度の施工が可能であるが、振動が大きいため、周辺地盤の変位が生じやすい。

留意点

 貫入時・砂杭造成時にバイブロハンマを用いる工法であることから、既設構造物等が隣接した施工は、振動により変位等影響が懸念される。また、振動・騒音により近隣住民の生活環境への影響も懸念されため、杭打作業については、防音カバー付きディーゼルハンマーおよび油圧ハンマーを使用するなど、振動・騒音の低減を図る対策が必要である。施工中は定期観測を行い、地盤の隆起や変位に留意ながら施工する必要がある。

2−2.薬液注入工法

特徴

 一般的に施工機械が小さく、狭い場所での施工が可能であり、低騒音・低振動である。また、施工機械が小さく重機の使用や設備機器の配置がないため、短期間での工事が可能である、特に小規模工事には安価となる。

留意点

 薬液を圧力注入により、地盤が隆起する盤膨れや地盤の性質、地下水及び公共用水域等において、水質基準が維持されるよう地下水の採取検査による水質の監視や周辺地盤の盤ぶくれ等の監視を行わなければならない。

低圧にて浸透注入とする場合、なるべく低粘性の薬液を選定し、浸透性の高い緩結薬液比率を多くするすることが望ましい。

2−3.機械撹拌工法

特徴

 改良地盤の安定性、耐久性に優れている。撹拌翼により原位置土と改良材を混合撹拌し、地中に改良体を造成し、各種の撹拌機構により様々な地盤改良に適用される。

小型の機械を選定することにより機動性に優れ,角度を調整することにより,鉛直だけでなく従来、対応出来なかった斜めや水平方向の改良体を造成が可能である。

留意点

 事前に現場施工条件に合わせた配合試験を行い、地下水や土質に対する固化材添加量の配合設計を行うことが必要である。また、施工能率を向上させるには、撹拌軸の多い2軸、3軸型を用いることが有効であるが、既設構造物の近接施工では変状量を軽減するために単軸により緩速施工を行う必要がある。

鉄道土木 H25年 1-1「列車動揺測定」

問題

 軌道管理のために列車動揺を測定する目的を2点述べ、さらに具体的な管理に適用する上での注意点を2点述べなさい。

模範解答(簡易答案)

1. 軌道管理のために列車動揺を測定する目的

①軌道の状態の効率的な把握

列車動揺加速度値を測定することで、長い区間の軌道を短時間で効率的に状態を把握し、予防保全することで列車走行安全性を確保するためである。

②乗り心地状の把握

乗り心地の状態を把握し、一定水準以上の乗り心地を確保するため。

2.列車動揺測定結果を具体的に軌道管理に適用する上での注意点

1)対策判別につながる計測

軌道変位の種類を見分けるため、列車動揺の3軸方向ごとにモーメントを計測する。

2)列車速度に応じた計測

列車の速度(固有振動数)に応じて、軌道変位の計測法のスパンを大きくする。

時速100㌔の場合は10m (弦正矢法)

講師コメント

2.の正解は別のところにあります。

次のページをご覧ください。

http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2005/60-4/60-4-0072.pdf

file:///C:/Users/satake/Downloads/K-215890%20(4).pdf

https://bunken.rtri.or.jp/PDF/cdroms1/0004/2011/0004005402.pdf

http://www.i-s-l.org/shupan/pdf/SE178_1_open.pdf

この答案についての講師コメントを音声ガイドで聞く>

鉄道土木 H25年 1-2「盛土・橋梁の構造物境界」

問題

 バラスト軌道において、盛土と橋梁の接続部等の構造物境界部における軌道保守上の注意点を2つ挙げ、その対応について具体的に述べなさい。

模範解答

1.高低変位の発生

 橋台は沈下しない、バラスト軌道は沈下する、この沈下量の差から生じる高低変位に起因する乗り心地の悪化に留意する。

 高低変位進行度合いの把握と整備

①軌道検測定、②列車動揺、③バラスト状態により把握する。時系列管理により目標値に到達しそうな箇所から整備。

抜本対策、整備後の効果が持続しない場合は、抜本的な対策を実施。

①大判まくらぎへの交換、②有道床弾性まくらぎへの交換、③まくらぎ配置間隔の変更、④盛土の設備強化

2.通り変位による軌道座屈の発生

 構造物境界においては、高低変位からはじまり、進行すると通り変位が発生する。高低変位(上下動揺)発生箇所において通り変位(左右動揺)が新たに発生した箇所においては著大通り変位に起因する軌道座屈の発生に留意する。

列車通過時の振動による道床横抵抗力の低下を発生させないよう次の着眼点で保守を行う。

①必要な道床肩幅確保(道床の重量化)

②道床を緩めた場合の対策道床の剛性強化 →締固め、固結剤散布

③レール横圧の分散 → 座屈防止版の設置

鉄道土木 H24年 1-1「レール削正」

問題

 適切なレール管理のために、レールの材料に関して留意すべき点を3つ挙げ、それぞれの概要と管理上留意すべき点を述べなさい。

模範解答

1.レール削正の目的

レール損傷の抑制

 レール頭頂面に転がり接触疲労が蓄積することによりシェリング傷が発生する。また、レール溶接部の疲労寿命により溶接部に損傷が発生する可能性を考慮し、通トンによる周期交換を行っている。目的は、このレール損傷の発生を防止することである。

レール面の凹凸除去

 レールの波状摩耗は、レール面に凹凸を発生させる。目的は、この凹凸を除去することである。 

輪重変動の防止

 輪重変動は、軌道変位やレール頭頂面の微小な凹凸等に起因して発生するため、レール溶接部においては著大輪重や輪重抜けが発生しやすい。目的はこの輪重変動を防止することである。

2.レール削正の効果

レール損傷の抑制から得られる効果

①シェリング傷によるレール折損の防止

 レール頭頂面の転がり接触疲労により発生するシェリング傷の発生を抑制し、レール折損を防止するする効果がある。シェリング傷の発生のメカニズムは、車輪がレール上を転がることによる応力の繰り返しによりレール表面に疲労層が生成されて発生するものであり、これをレール削正により除去する。

②レール交換周期延伸によるコスト削減

 通トンによる交換周期を迎える前にレール削正を行うことで、交換周期を2億トン程度延伸することが可能となり、交換に伴うコストを低減する効果がある。通トンによる交換周期はレール溶接部の疲労に基づき決定しており、レール削正により溶接部の凹凸を解消することにより列車通過時の曲げ応力が低減し、疲労の軽減につながる。

レール面の凹凸除去から得られる効果

 凹凸に起因する振動から発生する転動音を解消し、鉄道沿線における騒音被害を防止する効果がある。騒音発生のメカニズムとして、レール頭頂面の凹凸上を列車が通過することにより、車輪とレール間に振動が発生し、転動音が生じる。バラスト軌道においては床下騒音レベルを1〜5dB程度低下させることが可能である。

3.施工に際しての注意点

ゲージコーナーの削正

 横圧の増加による乗り上がり脱線を防止するため、ゲージコーナーの角度がフランジ角度より大きくなるように削正を実施する。特に急曲線部においては大きな横圧が発生するため、ゲージコーナーの上側はついてはレール底部と水平に削る。

削正痕による凹凸の抑制

 レール頭頂面における削正痕に起因する凹凸を可能な限り小さくするよう注意する。

 砥石の圧力を強めると、削正車移動時に砥石がレール面の凹凸に引っ掛かり、削正面が荒くなる傾向にある。最初は弱い圧力で削正を開始し、1パス毎に削正断面を測定する。その結果、凹凸が見られない場合は現地で圧力を徐々に強めていき、1パス毎の削正量を増加させる。また、1パス毎に削正車の移動速度を変更することで、削正痕の周期を変えて転動音の発生を抑制する。

鉄道土木 H24年 1-2「ロングレール化」

問題

 下の略図のような区間をロングレール化する場合に考慮すべき事項を3つ挙げ、それぞれについて理由と実施する上での注意点を述べなさい。ただし、当区間のレール種別は50kgNレールであり、PCまくらぎ化が既に図られているものとする。

鉄道設計技士問題 下の略図のような区間をロングレール化する場合に考慮すべき事項を3つ挙げ、それぞれについて理由と実施する上での注意点を述べなさい。ただし、当区間のレール種別は50kgNレールであり、PCまくらぎ化が既に図られているものとする。

模範解答(簡易答案)

(1) 伸縮継目の管理と、ふく進の防止

①理由:ロングレール両端にはレール伸縮を吸収する伸縮継目が設けられている。

伸縮継目には許容ストロークが決められており、不足又は過大になると、軌間の縮小や拡大、レール締結装置からの脱落や干渉が生じ、運転保安上問題となる。

レール設定温度に対する温度伸縮に加え、現地は、下り勾配を制動する曲線区間のため、ふく進が生じやすい。

線路の外側、内側ではどう違うか。

②留意点:ふく進が及ばないよう、アンチクリッパーを設置する。

    定期検査時に伸縮継目や1/2点でのストロークを確認する。

理由、根拠、得られる効果、対策法

2)レールを拘束して座屈させない 

①理由:軌道が座屈すると軌道狂いにより脱線する可能性がある。

   酷暑時のレール軸力に対して、道床横抵抗力が不足すると座屈する。

現地は曲線区間のため、レール軸力によりレールが外方向に座屈し易い。

   分岐器は締結力が強いため、分岐器前後にレール軸力が集中しやすく、座屈し易い。

もっとも座屈しやすい場所はどこか。その理由は。

②留意点:急曲線区間や分岐器は座屈し易いため、枕木重量化や増設、余盛や安定剤散布、座屈防止板設置により道床横抵抗力を確保する。

理由、根拠、得られる効果、対策法

3)分岐器介在によるレール移動の防止 

①理由:分岐器の構造上、基本レールとトングレールの相対移動による転轍部の不転換が懸念される。

不転換とはどうしてなるかそのメカニズム

②留意点:基本レールとリードレールを移動防止金具によりずれ止めする。

どんな方法か具体的に

鉄道土木 H23年 1-1「普通分岐器」

問題

 普通分岐器(N型)に関し、それまでの分岐器(特に大正14年型)と比べ改良された点を記述しなさい。また、保守上の弱点を3つ挙げ、その対策について具体的に述べなさい。

模範解答

1. 普通分岐器(N型)の改良された点

1 トングレール先端部の磨耗量が減少するよう改良

 N型普通分岐器は、トングレール先端部断面を頭部が尖った形状にし、摩耗及び欠損が少ないものに改良した。

2 ポイント後端継目のボルトを増やし、ボルト折損時におけるトングレール脱落を防止するよう改良

 N型普通分岐器のポイント後端継目は、継目ボルトを1本増やして4本ボルトとし、第2ボルトが折損して継目板が緩んだ時においても、トングレールが前方に飛び出すことはなく、安全面が改善された。

3 トングレール底部の損傷を防止するよう改良

 N型普通分岐器の転てつ棒取付部は、トングレール底部と転てつ棒上面の間に隙間を確保でき、トングレール底部の損傷防止が図られている。

2 保守上の弱点

1 トングレール先端部の断面が薄くなり、フローが発生し易くフロー削正の頻度が増える点

 車輪との接触面が薄くなったため、フローが発生し易くフロー削正の頻度が増えることとなった。

2 ポイント後端継目のボルト締付けトルク調整が細かく必要となり、保守管理に熟練を要する点

 4本の継目ボルトに対し、それぞれロックナットワッシャーを介し2つのナットで締付けるが、第1ナット・第2ナットの締付けトルクが各ボルトにより異なり、保守管理にある程度の経験が必要である。

3 脱落防止金具とスイッチアジャスタの離隔が構造的に狭くなり、短絡防止のための離隔管理がより厳正になった点

 構造的に脱落防止金具とスイッチアジャスタの離隔が狭いため、わずかなトングレールの食い違いから接触による短絡のおそれがあるため、検査時に離隔距離50mm確保の点検が必要となった。

鉄道土木 H23年 1-3「基礎形式」

問題

 直接基礎・杭基礎・ケーソン基礎の3種類の基礎形式について地盤条件・上部構造物の荷重条件の観点からそれぞれの基礎形式の考え方を述べ、また、地表にある軌道に近接して新たに鉄道高架橋基礎(場所打ち杭)を構築する際の留意点を述べよ。

模範解答

(1)基礎形式の考え方について

(1−1)直接基礎の考え方

 直接基礎は小規模で浅いため、上部構造物の荷重が比較的小さい、すなわち、支間長が短い橋梁の橋脚・橋台や躯体高さが低い高架橋の基礎に適用される。

浅い基礎のため、地表近くに支持層があることが条件となる。直接掘削して土質を確認することができるため、確実性の高い基礎である。また、掘削量が少なく、大型施工機械は不要であるため、施工ヤードが狭くても施工可能である。

(1−2)杭基礎の考え方

上部構造物の荷重に対して、杭の位置をバランスよく配置させ、効率よく支持させなければならない。荷重が大きくなると、杭本数が増え、または、杭径を大きくしなければならないため、隣接杭との距離が大きくなり、広大な用地が必要となる。

地盤としては、盛土部や支持層が深さ5〜30m程度の場合に適用される。また、掘削時においては、杭打機(大型機械)が配置・移動できるヤードが必要となる。

(1−3)ケーソン基礎の考え方

 基礎構造物が大きいため、上部構造物の荷重が大きい場合(長大橋梁の橋台等)や、孔壁を兼用した土留め(締め切り)を設置して、河川中または海中に橋脚を構築する場合に適用される。

 中間層に礫がある場合や支持層が30m以深となる軟弱地盤で主に適用される。また、オープンケーソンでは掘削機(大型機械)が配置・移動できるヤードが必要となる。

(2)軌道に近接した場所打ち杭構築時の留意点

(2−1)安全対策

 近接する軌道や周辺地盤に変形を与えないように、土留めや薬液注入・ケーシングで防護を行う。軌道への影響度合いを確認するため、レール天端、孔壁やケーシングの測量を行う。周辺地盤に変位がなく、軌道のみが沈下している際、変位が5mm未満の場合、計測頻度を上げて監視する。5mm以上沈下した場合、一旦施工を中断し、周辺の軌道整備(軌道扛上等)、または、夜間での施工に変更する。

また、施工機械が大型であるため、転倒対策として、据付位置周辺の地盤を改良することや、敷き鉄板を使用する。

(2−2)コスト管理

 施工ヤードが広い場合は、最も大型な機械であるアースドリルを適用する。施工ヤードが狭い場合や空頭に余裕がない場合、起電線や電車線に近接している場合は、掘削機械がコンパクトなBH機やTBH機を適用する。また、泥水により孔壁を防護できない場合、費用は高くなるが、オールケーシング工法を適用する。

(2−3)確実性

 掘削時、松杭などが支障する場合、事前に撤去する必要があるが、障害物探査や撤去に費用を要するため、掘削ビットの回転・掘削能力が高い鋼管杭を採用する。杭長が短い場合は、大孔径が可能で人力での撤去が可能な深礎杭を適用する。

鉄道土木 H22年 1-1「レール管理」

問題

 適切なレール管理のために、レールの材料に関して留意すべき点を3つ挙げ、それぞれの概要と管理上留意すべき点を述べなさい。

模範解答

1.レールの役割と管理

 レールは、鉄道において鉄道車両に安全で平滑な走行面を提供する重要な部材の一つである。直接車輪荷重を支えるとともに、その車輪荷重を分散して線路の保守管理を容易にすることを最大の役割としており、列車の繰り返し積荷による劣化のほか、温度変化等の厳しい環境条件にさらされている。JR東日本㈱によれば、レール交換の要因としてもっとも大きいのは損傷の45%で、以下、疲労18%、摩耗16%、分岐器付帯4%の順である。 

上記の役割を維持するため、レールの材料に関して留意すべき現象としては、レールの損傷、レールの疲労、レールの摩耗、腐食あるいは電食等があげられる。ここでは、以下、〜について概要と管理の留意点を述べる。

2.レールの損傷

 レールの損傷は、車両等の外力、レール断面形状及び材質、継目構造、腐食環境等の多くの因子が複合して発生するが、形態から区分すると破端、横裂、水平裂、頭頂面傷等がある。代表的な転がり接触疲労であるレールシェリングは、車輪通過回数の増加によって疲労亀裂が進展し、頭頂面に落ち込みが生ずるとともに、水平裂あるいは横裂が進展して発生する。輸送安定性を確保するためには、レール探傷車によりレール内部の傷を超音波により発見して必要な対策を行うとともに、損傷の亀裂進展解析の深度化やレールの削正による損傷発生の予防を行う必要がある。

3.レールの疲労

 レールの疲労は、列車荷重の繰り返しによる塑性変形が累積して亀裂が発生、進展する過程で蓄積される。交換理由としての疲労は、レール種別や継目種別で拾う基準となる累積通トンが定められている。国鉄末期の基準は、50Nレールの普通継ぎ目では4億トン、溶接継ぎ目では6億トン、60kgレールでは、それぞれ6、8億トンとなっており、例えば山手線では20年程度である。これはレール鋼のS-N曲線に基づき、継目で衝撃荷重が作用した時のレール底部に発生する引張り応力の繰り返し回数Nから決定された。以前は普通継目ボルト穴からの破端がかなりの部分を占めていたが、現在はレール溶接部の疲労とシェリングがその大部分を占めている。レール溶接部については、凹凸量を削正するなど適切に維持管理することで疲労寿命の延伸を図る必要がある。

4.レールの摩耗

 直線ではレールの摩耗量は非常に小さく、実務上は問題にならない。しかし曲線では、外軌レールのゲージコーナーと車輪フランジが大きな接触圧力の下で滑りながら進むことになり、摩耗量は非常に大きい。摩耗による交換基準は、レール頭部の断面現象による応力増加および軌間拡大による脱線を予防する目的から定められており、特に急曲線では摩耗がレール耐用年数を大きく左右する。この対策として、耐摩耗に優れたHHレールの使用や潤滑油を使用する方法が効果的である。また、近年材質的に摩耗抑制するHEレール等も開発され、その効果が期待されている。

5.おわりに

 レール損傷やレール摩耗による交換は、材料や人件費ともに多くの費用が必要となる。また、分岐器内レールやシェリング傷のランク判定等においては人力による検査にも労力を費やしている。今後は、レール削正や曲線部の塗油によるレール延命、検査の省力化について提案し、省メンテナンスなレール管理に努めることが望ましい。

鉄道土木 H22年 1-2「重軌条化」

問題

 ある鉄道会社では、SLの復活運転を企画することとなった。走行予定の全区間において、40kgレールと木まくらぎが使用されている。軌道について確認が必要な事項を3点挙げ、その内容及び対応を述べなさい。

模範解答 (簡易形式)

1.部材の発生応力および軌きょうの変形に関する確認

 SLの車体重量は約80tもあり、通常の気動車のおよそ2倍以上になる。現行の軌道により、SL走行に必要な軌道の応力を確保出来るかどうか以下の照査を行う。

①列車荷重に関する照査

②繰り返し荷重に対する照査

 上記の照査によりSL運転時の許容最高速度を算出し、条件を満足しない場合は軌道の強化を行う。

2.軌道の長期安定性に関する確認 

保守周期の検討

 車両重量が増加したことに伴い、軌道への荷重が大きくなり、軌道破壊が進行しやすくなる。軌道変位進みの推測地と許容値から保守周期を決定する。

①推定上下変位と許容上下変位による保守周期の検討

②推定左右変位と許容左右変位による保守周期の検討 

座屈安定性に関する照査 

温度上昇に伴うレール軸力増加に対する軌道の座屈安定性の検討

3.脱線防止に向けた確認 

 形式が異なるため、車両限界・建築限界支障の確認 

 輪重・横圧が増加後において限界脱線係数比1.2を満足するかどうかの確認

SLだとどうして部材の応力、荷重が心配なのか。

  〃    保守がいるのか。              

  〃    脱線しやすいのか。

根拠、狙いを示してください。

「やみ雲にただ確認する」では鉄道設計技士としての論理的視点が感じられません。

また、著大荷重とは何トンか、定量的に目安を示すように。

確認すべきことは、あれこれたくさんではなく、必須なこと、決定的なことを最小限にします。

鉄道土木 H22年 1-4「路床改良工法」

問題

 鉄道コンクリート構造物は一般に、完成後長期にわたり供用されるため、適切な維持管理により性能低下を抑制することが重要である。鉄道構造物等維持管理標準(コンクリート構造物)で示される検査区分のうち、初回検査と全般検査について、①それぞれの検査の目的、②それぞれの検査の着眼点、③安全を脅かす変状例の3点について注意すべき点を整理して述べなさい。

模範解答(簡易答案)

(1)検査の目的

(1−1)初回検査

 初回検査の目的は、新設構造物及び改築・取替を行った構造物の初期状態を把握することである。施工時の欠陥や初期の不良箇所を検出し、本来の性能が確保されているかを確認しなければならない。

(1−2)全般検査

 全般検査は構造物全般の健全度を把握するためのものである。目的は変状のある構造物を抽出することや、前回検査で変状が確認された部分の進捗状態を把握することである。経時的な変状が確認されれば、健全度の判定の精度を高めるために、特別全般検査を実施し、早急に補修を行う。

(2)検査の着眼点

(2−1)初回検査の着眼点

 初回検査の着眼点は、施工に由来して変形、ひび割れ、剥離、剥落、漏水等の有無および程度を目視により調査する。必要に応じて下記の方法で検査を実施する。

・コンクリートの剥離及び空洞等は点検用ハンマーを用いて打音検査を行う。

・鋼材のかぶりは電磁誘導法等の非破壊検査で確認する。

(2−2)全般検査の着眼点

全般検査の着眼点は、新規の変状を目視で調査するだけでなく、前回検査結果台帳を用いて、ひび割れの分布、支承のずれ、擁壁の傾き、漏水の程度等進捗していないかを確認する。ただし、検査精度を高めるために下記の方法で検査を実施することもある。

・クラックスケールを用いてひび割れ幅を測定する。

・メジャーを用いてひび割れ長さを測定する。

・デジタルカメラで撮影したものをひび割れ解析ソフトを用いて処理することにより、ひび割れ分布図を作成する。

(3)安全を脅かす変状例

①高架橋でひび割れが発展した変状例

・高架スラブで数ミリ以上のひび割れが発生した場合、列車運行により高架橋が崩壊する恐れがある。

・高欄下部のコンクリートに剥離や剥落が生じ、高架下の公衆等の安全を脅かす変状。

②橋梁部で見られる変状例

・桁の斜めひび割れが、支点方向に軸方向鉄筋に沿っているもので、幅が0.5mmを超える変状はコンクリート桁が脱落する恐れがある。

・桁下面において、前面に鉄筋が露出している場合、列車運行により桁が破壊する恐れがある。

完成答案

(1)検査の目的

(1−1)初回検査

 初回検査の目的は、新設構造物及び改築・取替を行った構造物の初期状態を把握することである。施工時の欠陥や初期の不良箇所を検出し、本来の性能が確保されているかを確認する。

(1−2)全般検査

 全般検査は構造物全般の健全度を把握するためのものである。目的は変状のある構造物を抽出することや、前回検査で変状が確認された部分の進捗状態を把握することである。経時的な変状が確認されれば、健全度の判定の精度を高めるために、特別全般検査を実施し、早急に補修をする。

(2)検査の着眼点

(2−1)初回検査の着眼点

 初回検査の着眼点は、施工に由来した変形、ひび割れ、剥離、剥落、漏水等の有無および程度を目視により調査することである。また、ひび割れが発生している場合、クラックスケールによりひび割れ幅を測定し、下記のとおり措置を施す。

①0.2mm以下ならば、必要に応じて監視等の措置を施す。

②0.2mm以上が多ければ、必要な時期に措置を施す。

③数ミリ以上であれば緊急に措置を施す。

(2−2)全般検査の着眼点

①全般検査の方法

全般検査の着眼点は、新規の変状を目視で調査するだけでなく、前回調査との比較により、ひび割れの増加、支承のずれ、擁壁の傾き、漏水の程度等進捗していないかを確認する。目視と合わせて、クラックスケール、メジャー及びカメラを用いてひび割れ等を調査する。

②劣化を想定した検査の着眼点

a中性化:かぶりが小さい箇所や水セメント比の大きなコンクリートでのひび割れには中性化の疑いがある。概観から中性化を特定することは困難であることから、コア採取やはつりによる中性化深さを確認する。

b凍害:コンクリート表面にスケーリングや微細なひび割れ又はポップアウトなどが見られたら想定できる。

cアルカリ骨材反応:建設後10年程度経過したコンクリート構造物で亀甲状のひび割れがあり、表面が変色している場合に想定できる変状である。

d塩害:鉄筋に沿ってコンクリートにひび割れや、剥離が生じてれば塩害と想定できる。その場、部分的にコンクリートを採取して塩化物含有量を調べる。

上記の変状の措置としては、部分的な打ち変えや表面被覆が考えられる。

(3)安全を脅かす変状例

①高架橋でひび割れが発展した変状例

・高架スラブで数ミリ以上のひび割れが発生した場合、列車通過により高架橋が崩壊する恐れがある。

・高欄下部のコンクリートに剥離や剥落が生じ、高架下の公衆等の安全を脅かす変状である。

・コンクリート表面に亀甲状のひび割れがある場合、コンクリート内部で容積膨張し、強度低下が生じるアルカリ骨材反応である。

②橋梁部で見られる変状例

・桁端部側面部において、支承方向に斜めひび割れが、入っているもので、幅が0.5mmを超える変状がある場合、列車の繰り返し荷重により、支点部の桁が剥離・剥落し、桁が脱落する恐れがある。

・桁下面全面に渡って鉄筋が露出している場合、列車通過により応力が桁に集中し、桁が破壊する恐れがある。

鉄道土木 H21年 1-2「レール磨耗」

問題

 曲線区間におけるレール摩耗のうち、外軌の側摩耗及び内軌の波状摩耗について、軌道側の対策をそれぞれ2つずつ挙げ、各対策の効果及び留意点を述べなさい。

模範解答

1.レール摩耗の概要

 急曲線において外軌レールの側面に摩耗が発生することが多く、これを側摩耗という。また、波状摩耗は、レール頭頂面がある一定の間隔の凹凸をもって波状に摩耗する現象で、車両通過に伴って騒音振動が顕著になり、軌道保守に与える影響が大きくなる。これらレール摩耗に影響する因子は、表面の粗さ、硬さ、材質形状、摩擦方法、接触圧力等が挙げられる。また、摩耗に影響を与える要因としては通トン、列車の種類、運転条件、レール種類、曲線半径、勾配、保守状態、潤滑状態、環境条件等が挙げられる。

2.レール摩耗対策方法の概要と効果及び留意点 

 レール摩耗対策はレール材質を変更する方法とレール/車輪間の摩擦係数を軽減して摩耗を減らす方法に大別される。以下に各対策の概要、効果及び留意点を述べる。

2.1 レール材質を変更する方法

 代表的な方法は熱処理レールで、急曲線の摩耗抑制に古くから使用されてきた。従来の熱処理レールは、高周波誘導あるいはガス火炎過熱後、水入れ、焼き戻し処理を施したもの(旧HHレール)と、強制空冷による緩速焼入れを処理したもの(NHHレール)であったが、1994年圧延直後のレール保有熱を利用したインラインでの強制空冷による緩速焼入れ処理を施したHHレールが実用化され、規格化された。旧国鉄及びJR西日本㈱の調査結果によれば、摩耗抑制効果は普通レールに比べて1/2、1/3であること、また、最近ではJR東日本㈱が過共析(HE)レールを試験敷設した結果、HHレールに比べて25%程度の摩耗抑制効果のあることが報告されている。しかし、普通レールに比べて効果であることから、軌道条件及び車両条件等を考慮し、適用条件を検討する必要がある。

2.2レール/車輪間の摩擦特性を改善する対策法

 レールと車輪の摩擦係数を軽減する方法には、外軌潤滑と内軌潤滑がある。前者は外軌側ゲージコーナーを潤滑するもので、摩擦係数の低下により外軌レール摩耗が抑制され、フランジ接触音を低減する。一方、内軌側の横圧が低減して内軌頭頂面の波状摩耗及びきしり音を低減する。このようなレール/車輪間の摩擦特性を改善する方法を大別すると以下の2種類がある。

レール塗油

 一般には、地上にレール塗油器を設置してグリス塗油を行う。塗油が多いと摩耗が抑制されるが、レール頭頂面に疲労層が形成されシェリングの基になり、空転や滑走につながる。逆に塗油が少ないと摩耗速度が速まりシェリングの発生は減少するが、早期レール交換となる。一方、グリスの欠点である滑走防止対策及び曲線部での列車通過時に発生する車輪きしり音対策として鉱油や植物油が開発された。また、土壌汚染を含む沿線環境保全を改善するものとして、水溶性液剤が開発されているが、材料費の面で難点がある。

摩擦調整剤

①住友金属T株が開発したKELTRACKは、無機物を主成分とする潤滑剤で、すべり率が増加しても摩擦係数も増加する。材料費が高価である。

②鉄道総研が開発したFRIMOSは、コークスに所定の黒鉛化度に熱処理を施した顆粒を車上から曲線内軌走行面に供給する方式であるが、適用例はまだ少ない。

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