H28年 建設・施工 Ⅱ-1-1問題 模範解答と解説
軟弱地盤に盛土する場合の軟弱地盤対策工を2つ挙げ、それぞれについて目的と施工上の留意点を述べよ。
1-1深層混合処理工法による対策
1-1-1深層混合処理工法使用の目的
軟弱地盤の強度を増強のためにセメント系固化材を使用した深層混合処理工法を行う。盛土のすべり抵抗の増加、変形の抑止、沈下の低減を目的とする。改良効果は、地中50mまで可能であるが、構造物の重要度や現地状況にあわせて決める必要がある。
1−1−2深層混合処理工法の留意点
有機物を多く含む土を改良する場合は、多量の固化材を必要とする。添加量は、室内試験を参考にする。試験結果との相違が生じやすいため、改良効果を確認しながら行う。セメント系固化材を使用した場合は、六価クロムの溶出をしないように確認する。
1-2E P S工法による対策
1−2−1EPS工法使用の目的
盛土自体を軽量化する。盛土の全沈下量の低減、安定確保及び変形対策を目的として施工する。
1−2−2EPS工法の留意点
火気に弱いため、供用後の車両火災などに備え、土被りを厚くする必要がある。盛土内の地下水による浮上りがおこることがあるので、地下水以下には設置しない。著しく不動沈下が発生した場合、ブロックのずれや内部応力が発生するおそれがある。そのため、地盤によっては、支持地盤の改良も必要になる。
解説
この問題では軟弱地盤対策という建設現場にありがちな対策工について問い掛けるものです。ただし注意すべき点は対策内容が問われているわけではなく、目的と施工の留意点の2つが求められている点です。出題者の意図は、受験者に対策法を暗記して書き出そうという意図があることを見越して、そうした解答法を否定して、技術士にふさわしい応用技術を用いて考察することを求めているわけです。
目的とは、なぜその対策が行われるのかといったメカニズムを問い掛けるものであり、軟弱地盤対策の原理がわからないと答えられません。また施工上の留意点とは、品質管理のノウハウを問い掛けるものであり、ともにエンジニアとしての能力を確かめる重要なポイントであるということです。ですので対策工の施工法に触れることなく、目的と留意点について単刀直入に記述しなければなりません。目的を表す文の文末は、「〜のためである。」とするとわかりやすいです。
本研究所の指導では、こうしたどのような視点で、何について述べるのか、と言う出題者の意図を明確にして答案練習を行ってきます。この理由は実際の試験においてこうした答え方の誤りが大きな減点を招いて、不合格の一大原因となっているからです。専門知識の不足ではなく、出題者の意図の読み誤りが大きな敗因であることにご注意ください。
1. 地盤改良工の実施
(1)目的
軟弱地盤での盛り土では、盛り土荷重によるヒービングが発生する可能性がある。ヒービング対策としては薬液注入などの地盤改良により、地盤全体の一体性と強度の向上を行う。改良範囲としては、盛り土部から想定される滑り面を含んだ範囲全体を改良する。
(2)留意点
地盤改良により地盤全体が隆起する場合がある。これを発生させないためには、地盤に低い圧力をかけながら低圧で浸透させる低圧浸透注入で行う。また、計測工を併用して周辺地盤の変位を動態観測して、それに追従したリアルタイムな施工を行う。
2.遮断工の実施
(1)目的
盛り土の影響によるヒービングの防止対策として、鋼矢板などを施工して連続壁を形成し、盛り土による影響を遮断する。施工位置としては、敷地境界など影響を与えたくない位置の手前で行う。
(2)留意点
鋼矢板などの遮断工は、ヒービングによるすべり面より深い位置まで根入れする必要がある。根入れが浅いと、遮断工そのものが地盤と共にすべり、影響を遮断できなくなる。このため、地盤調査を行い、現場の土質を把握する必要がある。 以上。
解説
「軟弱地盤に盛土する場合」とあるので、具体的な工事の手順を想定してまず施工法を考えます。この解答では盛り土によって生じるヒーリングに着目して、その影響が発生しない方法を提案しています。ヒービングとは、軟弱な粘土地盤を掘削する場合、掘削背面の土塊重量が掘削面下の地盤支持力より大きくなると、地盤内にすべり面が発生し、このために掘削底面に盛り上がりが生ずる現象です。
2つの工法とは、薬液注入工と遮断工です。ともに対策工の施工管理に注意が必要ですし、対策後に悪影響も発生しますので、それらに対する注意を留意点として述べれば良いでしょう。 答案の中で前者については計測後、後者については地盤調査を挙げていますが、具体的に何を行うかまで記述することが望ましいといえます。
留意点とは対策に由来して発生する問題点をいかに解消するかという具体的な対処方法
を求められているということです。
軟弱地盤上の盛土工では、盛土荷重により圧密沈下、すべり破壊や周辺地盤の隆起等の発生を防止するため、セメント系攪拌工法等による地盤改良や軽量盛土工法などの対策工を施す。
セメント系攪拌地盤改良工法
【目的】盛土下軟弱地盤中に機械攪拌もしくは高圧噴射攪拌工法を用いてセメント系柱状改良体を造成し、地盤強化することで盛土荷重の支持力を確保する。
【施工上の留意点】
- 事前に原位置土を用いた計画配合を立案する。
- 計画配合による試験施工により原位置強度・造成径を確認しフィードバックするとともに、実施工中一定頻度のサンプリング試験による品質確認を実施する。
軽量盛土工法
【目的】盛土材に発泡スチロール、気泡混合軽量土等の軽量材を用いた盛土の軽量化により、地盤負荷を軽減する。
【施工上の留意点】
- 観測施工を行い、各施工段階での地盤変位を事前の予測値と対比、検証して実施する。
- 軽量材は浮力の影響を受け易いため、降雨等に対する排水対策を施す。
- 発泡スチロールについては火災予防に万全の措置を施す。
解説
問題文の初めに、軟弱地盤上の盛土工の目的である「盛土荷重により圧密沈下、すべり破壊や周辺地盤の隆起等の発生を防止する」とか前置きされていますが、こうした前置き文は特になくても構いません。逆に前置きが長くなり冗長感がでてきますと減点される危険性がありますのでご注意ください。問題文では「工法を選定して目的と施工上の留意点を・・」と求められていますので簡潔、単刀直入にそれらを表すようにしてください。
この問題文では、いきなり1行目から「セメント系攪拌地盤改良工法」と書かれても全然問題ありません。
内容的には、工法の説明と地盤の強度に影響する建設する施工時に工夫すべき項目について述べていきます。
機械攪拌、高圧噴射攪拌工法では、セメントの硬化原理によって柱状改良体を造成しますので、その強度が課題となります。このため、
- 原位置土調査
- 試験施工による品質確認
が必要となるのです。
一方、軽量盛土工法では改良体として発泡スチロール、気泡混合軽量土を持ち家ますので、
- 地盤変位
- 浮力の影響
- 火災
が問題となります。このためこの3つの業務の結果につながる因子を有効に管理することが施工管理者の務めとなります。