H28年 建設・道路 Ⅱ-1-1問題 模範解答と解説
問題文
道路の線形設計において重要な要素である視距について、その定義とそれを確保する目的を説明せよ。また、視距の確保について、線形設計上の留意点を述べよ。
1.視距の定義と確保する目的
(1)定義
運転者が車線中心線上H=1.2mの高さから、同じ中心線上の高さ10cmの物の頂点を見通すことのできる距離を、当該車線の中心線に沿って測った長さである。
(2)目的
道路設計時に、平均的な技量の運転者が設計速度で道路を走行中に路上の障害物を発見して、制動をかけて停止するまでの制動停止視距を確保する。これは、空走距離と、ブレーキを踏み停止するまでの制動距離の合計値である。
2.線形設計上の留意点
1)沿道開発、切土を考慮した平面線形とする
①曲線部では、将来の沿道開発を考慮し、歩車道境界に植樹帯を設置する場合は、樹木の高さを反映し、必要な視距の確保ができる曲線半径とする。
②山間部の切土部で曲線半径が制約される場合は、切土部分・路肩幅員を広げ視距を確保する。
2) 縦断曲線長は視距、走行衝撃緩和から検討する
縦断勾配の変化点の必要曲線長は、下記の計算を行い比較し、長い値を採用し車両の安全走行を確保する。
①視距確保のため必要な縦断曲線長を計算する。
②勾配変化に伴う運動量変化の衝撃緩和のため、必要な縦断曲線長を計算する。
解説
Ⅱ−1−1問題は見識問題の性格が強く、ここでは視距の「定義」を求めています。それは自動車の運転者が道路前方を見通すことのできる距離のことであり、具体的に道路構造令によって定められています。詳細は答案に書かれている通りですが、具体的な寸法を添えて表現することが大切です。
一方それに続く問いかけでは「目的」と「線形設計上の留意点」が求められています。これらは視距を用いた応用力を確かめているわけです。目的については答えを簡潔に刷るため「〜のため」と言う目的を表す文章末尾の表現がふさわしいといえます。また線形設計上の留意点とは設計上どのような問題点があるかを意識した上で、そうした問題を解決して品質を確保するための方法論を述べれは正解です。
ただし、本題に関係の薄いことや、あるいは道路技術に関係のないことは望ましくありません。何故かと言うと道路の技術者としての資質を確かめるための試験ですので、それ以外のことを書いたとしても得点が望めないということです。
1-1.視距の定義
視野が他の交通に妨げられない状態で、自動車運転者が車道上のどの地点をもみることができる車道距離。
1-2.視距を確保する目的
運転者が道路走行時に余裕をもって平面線形や縦断線形を認知できることで快適な運転を確保することや前方の車両や障害物に衝突しないように制動をかけて停止する、あるいは避けて走ることができるなどの走行上の安全確保のため。
2.線形設計上の留意点
(1)将来の建設予定を見込んで安全側設計とする
建設時には視距が十分に確保されていても、将来沿道に人家が建つ等の理由で視距が保たれないおそれのある場合には、曲線半径を大きくとる。曲線部においてコンクリート高欄、切土のり面、分離帯等により視距が確保されない場合は、必要な範囲の路肩や側帯を広げる。
(2)縦断曲線の凹凸に対して十分長い曲線長とする
縦断曲線凹凸に対して各設計速度による縦断曲線長は、
①衝撃緩和に必要な縦断曲線長
②視距確保に必要な縦断曲線長
③視覚上必要な縦断曲線長
より求められる値の中で最も大きい値を縦断曲線長とし、道路の安全性を確保する。
解説
まず初めに視距の定義を行います。視距を確保する目的としては究極的に安全確保のためであることを示すため文末に「安全確保のため」と添えます。
線形設計上の留意点はその趣旨を見出しに書くのが肝要です。ここでは
(1)将来の建設予定を見込んで安全側設計とする
(2)縦断曲線の凹凸に対して十分長い曲線長とする
この2つで、それぞれ段落の中身を読まなくても意味が分かる文となっています。このように段落の内容を見出しで要約することによって、文章全体のスピーディーな理解を助けることになり、表現力の印象を与え、技術者コンピテンシーを評価してもらえることになります。
(2)の「縦断曲線の凹凸に対して十分長い曲線長とする」の意味は何か、具体的には①衝撃緩和、②視距確保、③視覚上必要な値と事例をあげて説明します。