H28年 衛生工学・空気調和 Ⅲ-1問題 模範解答と解説 (BPC対策)

問題文

 企業,官庁,公共施設などでは,地震などによる大規模災害が生じた場合に建物の継続的使用を図るためにBCP(Business Continuity Planning ; 事業継続計画)が策定される。ある新築建物であなたはBCPへの対応を考慮した計画を策定することになった。

 そのことを踏まえて以下の問いに答えよ。なお,地震時においては,建物自体は大きな被害を免れ,継続的に使用できる状態を想定する。

(1)BCPの目的,策定時に考慮すべき事項をそれぞれ3つ述べよ。

(2)BCP策定後,それを実効性のあるものにしていかなければ,実際に運用する事態に際して機能しないことが考えられる。そこで災害時のBCP運用で問題になると思われるリスクとその対応策について述べよ。

(3)データセンター,病院など対象とする建物の種類や用途を自由に設定し,BCP策定上の特徴を述べよ。また,空気調和設備で考慮すべきこととその対策を具体的に述べよ。

模範解答

 (1)        BCPの目的と策定時に考慮すべきこと

a.目的①自然災害への対応

 地震や集中豪雨による水害などの自然災害の際にも、安全に継続した業務を行えるよう耐震強度を高める。

目的②電力会社の不具合など外的なリスクへの対応

 電力会社の不具合による突然の停電、原子力事故、テロ、サイバー攻撃に備えるよう電力の2重化を行う。

目的③製品のリコールなど内的なリスクへの対応

 製品のリコールや異物混入など、自社を原因とする内的なリスクに対する対応が必要となる。

b.考慮すべき事項

①          室内環境の維持

食品工場など空気の清浄度が必要な場合は、クロスコンタミネーションの防止のため室圧制御が必要となる。換気設備の電源確保が必要となる。

②          コージェネ設備による電気と空調の同時供給

コージェネレーションシステムの採用により発電し、廃熱により空調することで、電気と空調を同時に供給し、ガスを燃料とすることでエネルギーリスクを分散する。

③          BEMSと防災システムの統合による迅速な対応

BEMSと防災システムを統合することで、遠隔から機器の運転操作を可能として、省エネと汚染物質の緊急排気などを実現する。

(2)          BCP運用におけるリスクと対策

リスク①市水の供給停止

 空調の冷却水に必要な市水の供給が途絶え、空調できないケースがある。

対策①地下水槽の設置

 建設時に杭施工と同時に地下水槽を設けて、災害時に利用する。ポンプについては防災電源とする必要がある。

リスク②補機電源不足による発電機の不稼動

 頻繁に停電となり、補機電源が確保できず、発電機が安定稼動せず、発電と廃熱を利用した空調ができないことがある。

対策②太陽光発電と蓄電設備の採用

 再生可能エネルギーである太陽光を利用して発電し、蓄電することで緊急時は発電機の稼動に必要な補機電源に利用する。

リスク③換気量不足による室内空気環境の悪化

 換気設備の故障や電源供給不足により、換気量が不足して、冬期においてはインフルエンザの流行を招くことがある。

対策③換気設備の防災電源化と自然換気の併用

 換気設備は防災電源として運用する。合わせて、自然換気を取り入れるようにして、省エネの観点からもエコボイドや夏期の空気の重力差を利用した自然換気となるダブルスキンの採用を検討する。

(3)          大型ショッピングセンターのBCP対策について述べる。

 特徴①社会インフラの一部であり重要施設となる。

 ショッピングセンター地域生活に不可欠なインフラであるため多くの人が利用する。食品売場への優先した電力、空調の供給が必要である。

 特徴②インフルエンザ対策の指標となる。

 不特定多数の人が利用することからインフルエンザ発生時の対応検討の拠り所となる。自然換気の利用や保健所との連係が必要となる。

 考慮すべきこととその対策

 電力制限に対応して長期的に省電力にて空調を行うことが必要となる。再生可能エネルギーを利用した潜熱顕熱分離空調とする。地中熱(地下水)(15〜20℃)と太陽熱(55℃〜80℃)を熱源として、デシカント空調を採用する。冷房の低負荷時は地下水にて、外気を予冷、デシカントで除湿しエアハンで空調する。暖房時は、太陽熱にて外気の予熱しエアハンで空調する。高負荷時は、水冷チラーにて冷房時は地下水をカスケード利用し、暖房時は地下水を蒸発器に投入し、凝縮器にて温水を高効率に得ることで空調する。

解説

 BCPの目的と策定時に考慮すべきこと、などと言うと回答をの趣旨が分かりにくく感じる方もいらっしゃいますが、この意味は「この施設でBCPの品質を高めるには何をすべきか」という質問と同じ意味です。このため回答は「室内環境の維持する」、「コージェネ設備による電気と空調の同時供給」、「BEMSと防災システムの統合による迅速な対応」といずれも動詞形(または体言止め)となっています。

 (2)のBCP運用におけるリスクとは、頻度が小さくて被害の大きい障害事象を取り上げる必要があります。コストがかさむとか見積もり段階ですぐ分かる事はリスクには相当しません。

 (3)BCP対策はこうした施設のリスクを乗り越えてどのように運用していくか、と言うマネージャーとしての力量を問い掛けるものです。専門技術はもとより、周辺の専門外の技術(技術者)も取り込んで全体として完成していく取りまとめ力が試されています。

 当研究所の講座では、こうした技術マネージャーとしての取り組みが求められる問題に対して、各受講者様の業務に応じたベストの対応法を技術者コンピテンシーの視点から指導しています。

お問合せ・ご相談はこちら

受付時間
9:00~18:00
定休日
不定期

ご不明点などございましたら、
お問合せフォームかもしくはメールよりお気軽にご相談ください。

お電話でのお問合せはこちら

03-6661-2356

マンツーマン個別指導で驚異的合格率!
技術士二次試験対策ならお任せ!
面談、電話、音声ガイド・コーチングで100%納得
添削回数は無制限、夜間・休日も相談可能

お電話でのお問合せ

03-6661-2356

<受付時間>
10:00~17:00

  • 試験対策講座のご案内

株式会社
技術士合格への道研究所

住所

〒103-0008
東京都中央区日本橋中洲2-3 サンヴェール日本橋水天宮605

営業時間

10:00~17:00

定休日

不定期