H28年 建設・道路 Ⅲ-1問題 模範解答と解説

問題文

 我が国における道路構造物の老朽化が深刻な状況となっており、道路構造物の適切な維持・修繕するための取組が進められている。道路管理に携わる技術者として、以下の問いに答えよ。

(1)道路構造物を適切に維持・修繕するためのメンテナンスサイクルの考え方を述べよ。

(2)メンテナンスサイクルによる維持・修繕を進める上で発生している課題について述べよ。

(3)(2)の課題に対し、老朽化対策の実効性を高めるための方策について述べよ。

模範解答1 

答案再現

1)道路構造物のメンテナンスサイクルの考え方

1)点検

 橋梁(長さ2m以上)、トンネルについては、重要構造物であるため、5年ごとに点検する。その他の土構造物、道路付属物等については、一度点検した結果に基づき老朽化の進行程度により点検時期を決める。点検結果は、健全、要望保全が必要、早期に措置が必要、緊急措置が必要の4段階で分類しまとめる。

 手順は、点検→診断→措置→記録とする。

2) 4段階の分類

①健全な施設

 点検の結果、構造物にまったく異常が見られず、健全な構造物である。

②予防保全が必要な施設

点検時に、実用上問題がない変状が発生しており長期耐久性の確保のため予防的な措置を行なった方がよい構造物である。

例として、コンクリートに0.2mm以下のクラックが発生している構造物である。また、鋼橋の塗装面に点錆が発生している橋である。 

③早期に措置が必要な施設

 点検時に直ちに補修する必要性はないが、早期に補修が必要な構造物である。

例として、コンクリートに0.2mmを超えるクラックが網目状に発生している構造物等である。また、橋台が傾斜し、伸縮装置の間が無くなっている橋である。

④緊急措置が必要な施設

 点検時に、構造物の変状が相当進行しており、ただちに措置しなければ、事故につながる恐れのある構造物である。

 例として、橋梁床版コンクr-トの亀裂が相当進行し、抜け落ちている橋である。

(2)メンテナンスサイクルを進める上での課題 

1)橋梁(長さ15m以上)

①耐荷力の照査

 老朽化の補修設計と併せて、実荷重に対する耐荷力の照査を行ない、不足する場合は補強設計を行なう。②耐震性の向上を図る

 幹線道路、緊急輸送路等の重要路線については大規模地震発生時の通行確保のため、レベル2地震動に対する耐震性能2を確保する。

2)土構造物

 大規模災害につながる恐れのある長大のり面について以下に記述する。

①長大切土で岩盤のり面の亀裂が発達している箇所

②斜面上や沢地形上に施工された盛土のり面で老朽化が進行している箇所

上記のり面を整正し、のり枠工、永久アンカー工法により補強する。

(3) 課題解決し老朽化対策の実効性を高める方策

1) 橋梁補修

①耐荷力

実荷重は、T-25を基本とするが、大型車の通行頻度により判断し、一般国道以上の規格の高い路線はB荷重とし、その他の路線はA荷重を採用する。

②耐震性の向上

 性能レベル2に対する限界状態は、下部工は橋脚柱部で塑性化によりエネルギー吸収を図る。上部工は、早期供用性を図るため、弾性限度に留める。

2) 土構造物の補修

切土・盛土のり面の補強のり枠は、地山に沿った施工が可能な吹付けのり枠を受圧版として施工する。その後、摩擦型の永久アンカー工法で緊張力を導入する。緊張力は、すべり土塊に対する抑止力を導入するが、地山の長期安定性の確保のためすべり安全率を1.2とする。なお、将来アンカー力の低下が生じる恐れもあり、再緊張型の製品を使用する。

   模範解答2過去問練習完成答案

1)道路構造物のメンテナンスサイクルの考え方

道路構造物の予防保全により、長期的視点で効率的な管理を行い、ライフサイクルコストを最小とする。

1)点検

道路構造物の経年劣化による健全度を点検する。点検サイクルについて重要構造物(橋梁、トンネル等)は、定期的(5年毎)に点検し、その他の構造物は、経年劣化から適切な点検サイクルを設定し点検する。

2)診断

点検結果から道路構造物の健全度を診断し、4つに分類(健全、予防保全段階、早期措置段階、緊急措置段階)する。

3)補修の実施

道路構造物の補修時には、診断結果に基づき性能向上を図り、また老朽化の初期段階で補修設計を行い補修工事を実施する。

4)記録

点検・診断・補修結果についてデータベースで管理する。管理データは、将来の健全度予測に必要な劣化曲線の作成データとして蓄積し活用する。

(2)メンテナンスサイクルによる維持・修繕の課題

1)点検作業の効率化を図る

 コンクリート構造物の性能を損なわず内部点検するため、構造物の環境、変状原因等(ASR反応、塩害、中性化等)劣化機構を考慮し、適切な非破壊検査により効率的に行う。また、舗装の大部分を占めるアスファルト舗装は、主として舗装表面から劣化が進行することから舗装路面の変状(ひび割れ、わだち掘れ等)を、自動測定車により走行中に効率的に行う。

2)構造物のランニングコストを縮減する

 構造物の補修時に新技術による質的改良を行い、補修サイクルの延長により、補修回数を少なくし維持管理費を縮減する。 

3)予防保全で補修し性能維持図る

舗装補修は舗装面の劣化初期段階で行い、表層部の更新により供用性能を維持する。これにより、基層以下の舗装構成を保護し舗装打換回数を減らしライフサイクルコストの低減化を図る。また、コンクリート構造物は、微細なひび割れの上に表面処理を行い、劣化因子を遮断して劣化進行を抑制する。 

(3)課題解決し老朽化対策の実効性を高める方策

1) 非破壊・自動測定車で点検する

構造物のコンクリートの健全度は、超音波法により内部欠陥等を非破壊で効率的に点検する。コンクリート中を縦波パルスが伝搬する時間、速度によりコンクリートの品質、内部欠陥、ひび割れ深さ等を検査する。

舗装路面は、路面性状測定車に車載されたCCDカメラおよびレーザー光線投光器で損傷認識、わだち掘れを走行中に効率的に自動計測する。

2)性能向上し耐用年数を延ばし補修費を低減する

①長大のり面を補強し安定化を図る

不安定な長大のり面を整正し、アンカー工により、補強する。アンカー工を固定する受圧版は、地山密着型の鉄筋コンクリート格子枠を吹付施工し、摩擦型永久アンカーにより地山に崩壊抑止力を導入し、のり面の安全率を1.2に向上させる。これにより、のり面の長期安定化を図る。

②構造物の補強・性能向上を図る

  • アスファルト舗装は、通常混合物にポリマー改質材を添加した配合で舗装する。これにより流動抵抗性を高め耐用年数を延長し、補修サイクルを延ばし補修費を低減する。
  • コンクリート橋は、上部工の大型車の走行実荷重(245KN/台)に対する耐荷力を照査する。耐荷力不足の場合は、軽量で引張強度の高い炭素繊維による断面補強を行い耐荷力向上を図る。

以上により省コストの補修で耐久性・性能を高め、補修回数を減らし補修費を低減する。

3)予防保全により補修し性能維持を図る

  • アスファルト舗装の劣化が表層内に留まる段階で、老朽化部分を切削し、既設舗装と一体化して大型車交通量に耐える舗装厚さでオーバーレイし補修する。
  • コンクリート構造物の劣化初期段階(クラック幅0.2mm程度以下)で樹脂系又は、ポリマーセメント系の材料で表面処理工法により補修する。

模範答案3

1.メンテナンスサイクルの考え方 

 メンテナンスサイクルとは、点検、診断、措置、記録の業務サイクルを繰り返し行うことで、長寿命化計画等の内容の充実を図り、予防的な保全を進めることである。これらの取り組みを通じて、安全・安心を確保しつつ、トータルコストの縮減・平準化を図り、メンテナンス産業を育成することを目的としている。

以下、業務サイクルの特徴について述べる。

(1)点検 

 橋梁、トンネル等については、国が定める統一的な基準によって、5年に1度、近接目視による全数監視を実施する。

(2)診断 

 全国の橋梁、トンネル等の健全度を把握し比較できるよう、「健全」、「予防保全段階」、「早期措置段階」、「緊急措置段階」の4つの統一的な尺度で健全度の判定区分を設定し、診断を実施する。

(3)措置 

 点検、診断の結果に基づき、損傷の原因、施設に求められる機能、ライフサイクルコスト等を考慮し、計画的に修繕を実施する。

(4)記録 

 メンテナンスサイクルが定着するよう、全道路管理者の点検・診断・措置の結果をとりまとめ、国等が評価するとともに公表し、「見える化」を図る。

2.維持・修繕を進める上で発生している課題 

(1)ロボット化、無足場で近接点検する 

①立地環境の厳しい場所 

 人による近接目視では、斜張橋のワイヤーなど点検に膨大な時間と労力を要すため点検に遅れが生じてしまうので、インフラ構造物に対して人間の立ち入りが困難な立地環境の厳しい場所へ移動し、インフラの維持管理に必要な情報を取得するロボットを利用した近接点検を行う必要がある。

②物理探査による透視 

 人による近接目視は、施設内部の劣化・損傷に対して確認できないので、施設内部から発生している物理現象の反応を種々のセンサーを用いて計測し、解析することで、路面や構造物を痛めることなく効率的に内部の状況を知ることができる物理探査による透視を行う必要がある。

(2)エキスパート診断による構造物全体の複合的診断 

 構造物が複数の部材が複合的に繋がっていて複合的な評価は難しく、多数の要因が複雑に影響しているため、エキスパート診断による構造物全体の複合的診断により、今後起こりうる構造物の劣化状態を的確に予測、診断し、措置を示すことができるマネジメントサイクルの汎用システムの開発を進めていくことでより高い精度の劣化予測を行っていく必要がある。

3.実効性を高めるための方策 

(1)近接目視を補完する点検技術の導入 

①立地環境の厳しい場所で近接目視を補完する技術 

  • ドローンの無人ヘリロボットによる赤外線・高感度カメラを使った点検
  • 道路橋にセンサーを多数設置して橋梁の挙動から劣化・損傷を見つける点検などを積極的に導入する。

②施設内部広範囲かつ非破壊で点検するための技術 

  • 床板コンクリートの滞水・砂利化・鉄筋腐食・空洞・ホットポール周辺の劣化範囲やかぶり厚不足等の検出については、「電磁波レーダを用いたスキャナー技術」などを積極的に導入する。

(2)劣化予測モデルの開発 

①パイロットインフラを活用した劣化予測の構築 

社会インフラの健全性の評価、予測技術の確立および想定寿命と限界状態の明確化を目的としたパイロットインフラに対する高密度・多種類モニタリングと、劣化に関する実験的検討および解析ツールの開発を含めた体系的な研究開発を行う。

②ビッグデータを活用した劣化予測の構築 

点検および計測結果に基づくインフラの健全性評価・予測結果を共通管理できるデータベースと、運用するためのプラットフォームの構築を行う。またビッグデータの健全度と経過年数との関係(劣化曲線)を回帰分析することで、劣化予測モデルの構築を図る。

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