鉄道土木 H21年 1-2「レール磨耗」
問題
曲線区間におけるレール摩耗のうち、外軌の側摩耗及び内軌の波状摩耗について、軌道側の対策をそれぞれ2つずつ挙げ、各対策の効果及び留意点を述べなさい。
模範解答
1.レール摩耗の概要
急曲線において外軌レールの側面に摩耗が発生することが多く、これを側摩耗という。また、波状摩耗は、レール頭頂面がある一定の間隔の凹凸をもって波状に摩耗する現象で、車両通過に伴って騒音振動が顕著になり、軌道保守に与える影響が大きくなる。これらレール摩耗に影響する因子は、表面の粗さ、硬さ、材質形状、摩擦方法、接触圧力等が挙げられる。また、摩耗に影響を与える要因としては通トン、列車の種類、運転条件、レール種類、曲線半径、勾配、保守状態、潤滑状態、環境条件等が挙げられる。
2.レール摩耗対策方法の概要と効果及び留意点
レール摩耗対策はレール材質を変更する方法とレール/車輪間の摩擦係数を軽減して摩耗を減らす方法に大別される。以下に各対策の概要、効果及び留意点を述べる。
2.1 レール材質を変更する方法
代表的な方法は熱処理レールで、急曲線の摩耗抑制に古くから使用されてきた。従来の熱処理レールは、高周波誘導あるいはガス火炎過熱後、水入れ、焼き戻し処理を施したもの(旧HHレール)と、強制空冷による緩速焼入れを処理したもの(NHHレール)であったが、1994年圧延直後のレール保有熱を利用したインラインでの強制空冷による緩速焼入れ処理を施したHHレールが実用化され、規格化された。旧国鉄及びJR西日本㈱の調査結果によれば、摩耗抑制効果は普通レールに比べて1/2、1/3であること、また、最近ではJR東日本㈱が過共析(HE)レールを試験敷設した結果、HHレールに比べて25%程度の摩耗抑制効果のあることが報告されている。しかし、普通レールに比べて効果であることから、軌道条件及び車両条件等を考慮し、適用条件を検討する必要がある。
2.2レール/車輪間の摩擦特性を改善する対策法
レールと車輪の摩擦係数を軽減する方法には、外軌潤滑と内軌潤滑がある。前者は外軌側ゲージコーナーを潤滑するもので、摩擦係数の低下により外軌レール摩耗が抑制され、フランジ接触音を低減する。一方、内軌側の横圧が低減して内軌頭頂面の波状摩耗及びきしり音を低減する。このようなレール/車輪間の摩擦特性を改善する方法を大別すると以下の2種類がある。
レール塗油
一般には、地上にレール塗油器を設置してグリス塗油を行う。塗油が多いと摩耗が抑制されるが、レール頭頂面に疲労層が形成されシェリングの基になり、空転や滑走につながる。逆に塗油が少ないと摩耗速度が速まりシェリングの発生は減少するが、早期レール交換となる。一方、グリスの欠点である滑走防止対策及び曲線部での列車通過時に発生する車輪きしり音対策として鉱油や植物油が開発された。また、土壌汚染を含む沿線環境保全を改善するものとして、水溶性液剤が開発されているが、材料費の面で難点がある。
摩擦調整剤
①住友金属T株が開発したKELTRACKは、無機物を主成分とする潤滑剤で、すべり率が増加しても摩擦係数も増加する。材料費が高価である。
②鉄道総研が開発したFRIMOSは、コークスに所定の黒鉛化度に熱処理を施した顆粒を車上から曲線内軌走行面に供給する方式であるが、適用例はまだ少ない。