鉄道土木 H22年 1-1「レール管理」
問題
適切なレール管理のために、レールの材料に関して留意すべき点を3つ挙げ、それぞれの概要と管理上留意すべき点を述べなさい。
模範解答
1.レールの役割と管理
レールは、鉄道において鉄道車両に安全で平滑な走行面を提供する重要な部材の一つである。直接車輪荷重を支えるとともに、その車輪荷重を分散して線路の保守管理を容易にすることを最大の役割としており、列車の繰り返し積荷による劣化のほか、温度変化等の厳しい環境条件にさらされている。JR東日本㈱によれば、レール交換の要因としてもっとも大きいのは損傷の45%で、以下、疲労18%、摩耗16%、分岐器付帯4%の順である。
上記の役割を維持するため、レールの材料に関して留意すべき現象としては、レールの損傷、レールの疲労、レールの摩耗、腐食あるいは電食等があげられる。ここでは、以下、〜について概要と管理の留意点を述べる。
2.レールの損傷
レールの損傷は、車両等の外力、レール断面形状及び材質、継目構造、腐食環境等の多くの因子が複合して発生するが、形態から区分すると破端、横裂、水平裂、頭頂面傷等がある。代表的な転がり接触疲労であるレールシェリングは、車輪通過回数の増加によって疲労亀裂が進展し、頭頂面に落ち込みが生ずるとともに、水平裂あるいは横裂が進展して発生する。輸送安定性を確保するためには、レール探傷車によりレール内部の傷を超音波により発見して必要な対策を行うとともに、損傷の亀裂進展解析の深度化やレールの削正による損傷発生の予防を行う必要がある。
3.レールの疲労
レールの疲労は、列車荷重の繰り返しによる塑性変形が累積して亀裂が発生、進展する過程で蓄積される。交換理由としての疲労は、レール種別や継目種別で拾う基準となる累積通トンが定められている。国鉄末期の基準は、50Nレールの普通継ぎ目では4億トン、溶接継ぎ目では6億トン、60kgレールでは、それぞれ6、8億トンとなっており、例えば山手線では20年程度である。これはレール鋼のS-N曲線に基づき、継目で衝撃荷重が作用した時のレール底部に発生する引張り応力の繰り返し回数Nから決定された。以前は普通継目ボルト穴からの破端がかなりの部分を占めていたが、現在はレール溶接部の疲労とシェリングがその大部分を占めている。レール溶接部については、凹凸量を削正するなど適切に維持管理することで疲労寿命の延伸を図る必要がある。
4.レールの摩耗
直線ではレールの摩耗量は非常に小さく、実務上は問題にならない。しかし曲線では、外軌レールのゲージコーナーと車輪フランジが大きな接触圧力の下で滑りながら進むことになり、摩耗量は非常に大きい。摩耗による交換基準は、レール頭部の断面現象による応力増加および軌間拡大による脱線を予防する目的から定められており、特に急曲線では摩耗がレール耐用年数を大きく左右する。この対策として、耐摩耗に優れたHHレールの使用や潤滑油を使用する方法が効果的である。また、近年材質的に摩耗抑制するHEレール等も開発され、その効果が期待されている。
5.おわりに
レール損傷やレール摩耗による交換は、材料や人件費ともに多くの費用が必要となる。また、分岐器内レールやシェリング傷のランク判定等においては人力による検査にも労力を費やしている。今後は、レール削正や曲線部の塗油によるレール延命、検査の省力化について提案し、省メンテナンスなレール管理に努めることが望ましい。