鉄道土木 H26年 「レール破断」
問題
レール破断につながるレールの主な損傷要因を3つ挙げ、それぞれの特徴および対策について記述しなさい。
模範解答
1.損傷要因の特徴
①動的輪重荷重による金属疲労損傷。
レールと車輪との転がり接触疲労損傷によって頭頂面に亀裂核が形成され、列車の車輪通過回数の増加によって拾う亀裂が進展し、頭頂面に落ち込みが見受けられるようになり、水平裂や横裂に発展し、レール折損する重大性がある。また、定着レール疲労損傷として、普通継目部の破端部が端面から腹部き裂や継目部のボルト穴周辺からの亀裂が最も多い。
②転がり接触疲労損傷による破損。
転動体と軌道との間の接触部に発生する繰返し応力によって起こる材料組織の変化を接触疲労という。表面からの微小なフレーキングとして現れる。
滑り接触面又は滑りを伴った転がり接触面の表面の凹凸の相互作用によって,徐々に材料が除去されることで、レール頭部より亀裂が進展し,レール破損に至ることである。
③漏水や湧水によるレール底端部漏電電食。
直流電化区間の線路において、帰線電流が土中に漏えいし、電流が流出するときにイオン化した鉄が溶出することで、レールが電食するとレールの断面が減少する。金属の表面に小さな孔(ピンホール)ができ、その内部に腐食が進行する孔食が発生する。この状態になると、レールの引張強度と疲労強度が著しく低下して亀裂が先行し、レールが折損してしまうことである。また、レール底端部はバラストなどが直接大地と接触している部分で電流流出による鉄分溶出が起こりやすため電食による損傷が多く発生している。
2.損傷要因への対策防止対策
①定期軌道状態検査によるレール頭部平滑管理。
累積通過トン数(軸重×通過軸数(トン))を管理し所定の累積通過トン数を超えた場合に、溶接部を含むその付近のレールの削正により頭部平滑化し、動的荷重を抑制することにより溶接部の疲労寿命を延伸する。また、弱点となる、延命の短い破端部を可能な限り溶接し、ロングレール化をすることで動的輪重荷重による金属疲労損傷を抑制することが有効である。
②レール削正車による疲労層の除去。
レール削正車で、レール表層の疲労層除去や、レール頭頂部が列車進行方向に一定波長摩耗する波状摩耗除去のために、レール頭頂部を砥石で研削加工で除去し、シェリングの発生を予防する。レールの頻度は削正通過トン数0.5億トンで0.1mmの削正を行い、削正作業は500m/回程度行い、削正回数は1箇所につき12パス(回)を基本としている。また、シェリング等の発生の予防削正を実施することで、シェリングの初期状態の白色層起因の除去することが有効である。
③湿潤状態の抑制と鉄分溶出防止のため防食加工。
湿潤状態となるレールの帰路電流が大地へ漏洩し、レール等の鉄分が溶出し断面減少を防ぐため、トンネル内の漏水や湿潤状態を解消させる。トンネル覆工面からレール直下の漏水は樋設置を行い、レールに湧水があたらないよう水道を設ける。また、電流漏洩による電気化学的腐食で鉄分が溶出し、金属破損を防ぐため、レール底部や締結装置フランジ部への防食被覆加工を施すことも有効である。また、電食による鉄分溶出状況は目視で明らかとなるため、線路徒歩巡視での定期検査が重要である。