H28年 衛生工学・建築環境施設 Ⅱ-2-1問題 模範解答と解説 (シティホテルにおける給排水衛生設備の基本計画)
問題文
大都市に計画されるシティホテルにおける給排水衛生設備の基本計画策定業務を行うことになった。発注者からは、①シティホテルとしてのグレードの確保、②経済性・省エネルギー、③耐震対策、④維持管理、⑤長寿命化・将来のフレキシビリティーが要望されている。発注者の要望を踏まえて、客先系統の給湯設備の計画について、以下の問いに答えよ。規模利用状況は、以下とする。その他、必要な数値は各自設定する。
(1)客室系統の給湯の負荷特性と留意点を踏まえて給湯設備の計画について述べよ。
(2)客室の給湯方式として3種類のシステムを比較し、一方式を提案せよ。
(3)熱源機器と貯湯槽の仕様(算出根拠を含む。)使用配管材料と概略系統図を示し、給湯設備の配管設計上の留意点について述べよ。
1)客室系統の経済性・省エネに配慮した給湯設備計画
①圧送ポンプ・循環配管による給湯(シャワーの給湯量・圧力確保)
②(ガス・ヒートポンプ)ハイブリッド給湯設備計画
③給湯機器・配管の耐震施工
④連結給湯器・バイパス配管(給湯器交換時に給湯継続)
⑤ステンレス貯湯槽・配管および機器構成変更可能な給湯系統
(2)客室の給湯方式として3種類比較し、一方式を提案
- 中央式ガス給湯方式
- 個別式ガス給湯方式
- 中央式ヒートポンプ貯湯給湯方式
以上3種類より中央式ハイブリッド貯湯給湯方式を提案
(3)熱源機器と貯湯槽仕様(算定根拠を含む)、使用配管材料と概略系統図を示し給湯の配管設計上の留意点
- 熱源機器:連結式ガス給湯器+ヒートポンプ給湯器とする
- 貯湯槽はステンレス製とする
250L/人×2人×35室×13フロア=227,500L - 使用材料:耐熱性・耐久性に優れたステンレス配管(維持管理、長寿命化)
- 概略系統図(給湯器、ヒートポンプ、貯湯槽、ポンプを配管でループして各室で分岐)
- 配管上の留意点:耐震対策として機器周辺や各所をフレキ接続する。
解説
(1)客室系統の給湯設備計画
一時的な大量給湯が必要な場合でも安定供給を可能とする為、高効率型機器や採用、配管経路計画、断熱性能を確保する。給湯機器類は、1室にまとめて配置し、耐震性能の強化を図る。維持管理面では、レジオネラ菌汚染対策として管内の温度管理を行い、耐久性に配慮した機器及び管材を選定する。
(2)給湯方式システムの種類、比較、提案
1)システムの種類
1.温水発生機+貯湯槽中央式供給方式
2.ヒートポンプ給湯器+貯湯槽中央式供給方式
3.潜回収型ガス給湯器+貯湯槽中央式供給方式
上記の3方式共、19階配置、下向き供給方式とする。
2)システムの提案
提案方式は、システム1とする。
3)提案理由(システム2・3との比較)
①一時的な大量給湯に安定供給できる。
②低温での熱効率ができ、効率がよく経済的である。③真空保持の為、長寿命化で維持管理も容易である。④給湯以外に暖房などの加熱用途と併用できる柔軟性がある。
⑤イニシャルコストが安価である。
(3)熱源機器と貯湯槽の仕様と使用配管材料
1)熱源機器と貯湯槽の仕様
①熱源機器仕様(真空式温水機720KW×2基)
算出根拠:1日使用量に対する割合1/7と貯湯槽容量に対する割合(継続時間4H)から必要加熱量を算出し、計算容量の70%の能力とする。台数は故障時を考慮して2基設置する。
②貯湯槽仕様(密閉式貯湯槽22m3×2基)
算出根拠:1日使用量に対する最大値割合1/7、
最大値の継続時間4H、運転時間24Hとして算出。
図―1概略系統図
2)使用配管材料と概略系統図
①使用配管材料は、長寿命化を考慮してステンレス鋼鋼管とする。
②概略系統図は、図―1による。
3)給湯設備の配管設計上の留意点
①レジオネラ菌対策として、各循環系統で均等に管内を55℃以上保持できるような配管経路を確保する。
②配管長の短縮や断熱処理により、
熱ロスを低減させる。
③湯と水の混合割合変化などにより火傷の危険を回避する為、給湯設備は給水設備と同じ圧力になるようゾーニングを行う。
④スケルトンとインフィルを区分し、将来の用途変更に柔軟に対応可能なスペースに配管ルートを計画する。⑤給湯設備機器類の配管接続部は、地震力による相関変位を吸収する為、フレキシブルジョイントなどの変位吸収管継手とする。