H26年 応用理学部門、地質 Ⅱ-2-2問題(地質調査の不確実性) 模範解答と解説
問題文
地下を対象とした土木事業や開発事業において事前の地質調査は、立地条件や設計条件、開発条件などを明らかにするために実施されるが、地質調査の手法や数量には制約があるため、調査結果には地質的要因による不確実性がつきまとう。事業実施段階(施工段階)において、これらの不確実性に起因する事業コスト増加あるいは採算性の低下が懸念される事象が発生した際の対応について、以下の問に答えよ。
(1)対象とする事業を1つ設定し、事業実施段階においてコスト増加に繋がる地質的要因を3つ挙げよ。
(2)(1)で挙げた要因のうち1つを選び、コストを最小化するための対応手順を述べよ。
(3)対応に当たって留意すべき点について述べよ。
(1).道路新設工事のコスト増要因
コストが何故かさむのか
地すべり等不安定斜面の崩壊:路線位置が寸断され、地すべり対策工事が発生し路線変更費がかかる。
断層等不連続面の発生による遮断:不連続面の発生により路線上に段差・亀裂が生じ、道路修復費がかかる。
軟弱層による沈み込み域:車両往来に伴う想定荷重に耐えられない路線であることが明らかとなり、追加杭基礎施工、コンクリート補強費がかかる。
(2)コストを最小化するための地すべりの対応手順
① 排土工:地すべり頭部付近の不安定土塊を除去し、滑動力を低める。
② 押え盛土工:地すべり斜面末端部に盛土を施し、地すべり進行を防ぐ。
③ 表面水・地下水対策:地すべり地は降雨で活動が活発化することが多いことから、地表の開口クラックにはブルーシートを設置し水の吸収を防ぐ。すべり面からの大量の湧水があれば地下水排除を行うため、横ボーリング排土工を行う。
3.対応に当たっての留意点
①地すべりは上方に進展しやすい。よって排土工実施前は上方のクラックの有無に留意し、上方の地質踏査、空中写真判読による安定範囲で排土量を決定する。
②地すべり範囲における地表地質踏査を行い、湧水、微細亀裂、軟弱層からすべり面弱部を推定する。すべり面弱部を結ぶ測線で電気探査を行い、低比抵抗部である強度低下部を抽出し、横ボーリング工で滑動力を低減する。
③地盤変位量・変位方向、雨量・地下水位モニタリングを実施する。地盤変位傾向を経時的に観測し、定常滑りが加速する状況を捉えられる計測体制を構築する。