H26年 建設部門、河川砂防 Ⅱ-2-2問題(南海トラフ地震対策) 模範解答と解説
問題文
近年,南海トラフ地震等の巨大地震に備えて,「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」等の整備や,具体的な対策の策定が進められている。南海トラフ地震等の巨大地震が発生した際には,強い揺れ,液状化・地盤沈下,巨大な津波等の発生による被害が想定される。そこで,河川,砂防及び海岸・海洋分野の観点から,以下の問いに答えよ。
(1)南海トラフ地震等の巨大地震の発生により想定される被害を2つ以上取り上げ,その被害を軽減するため,平常時から準備しておくべき対策と対策実施の際に留意すべき事項を述べよ。
(2)(1)で取り上げた想定される被害について,巨大地震発生時の応急対策と対策実施の際に留意すべき事項を述べよ。
(1)巨大地震の発生による被害及び対策
1)広範囲な堤防の液状化
①平常時の巨大地震対策
- 堤内液状化を考慮した堤体耐震補強対策
- 堤防基礎地盤の液状化対策
②平常時の巨大地震に対する留意点
- レベル2(L2)地震動に対する耐震性能照査による堤防の機能確保
2)河川への津波遡上による浸水被害
①平常時の巨大地震対策
- 河川防災施設の遠距離操作化
②平常時の巨大地震に対する対策の留意点
- 東日本大震災を教訓とした道路盛土の二線堤整備
- 近傍の建物を避難施設としたハザードマップ作成
(2)巨大地震発生時の応急対策および留意事項
1)堤防の液状化に対する応急対策および留意事項
①巨大地震時の応急対策
- 堤防損傷箇所の補強対策
—緊急的な点検により堤防損傷箇所を把握する。
②巨大地震時に応急対策を実施する際の留意事項
- 地盤沈下量を考慮した堤防高の確保
—堤防の沈下量を計測
2)津波遡上による浸水被害に対する応急対策および留意事項
①巨大地震時の応急対策
- 排水機場による浸水の排水
②巨大地震時に応急対策を実施する際の留意事項
- 地震後の降雨による堤内地排水の確保
—内水氾濫の防止
(1)巨大地震の発生による被害及び対策
1)液状化による堤防の崩壊
南海トラフ等の海洋型の巨大地震は,長い時間にわたり,繰り返し荷重が堤防に作用することから,せん断抵抗を失い,液状化により堤防が崩壊する。
①堤防の液状化対策
軟弱粘性土を基礎とする河川堤防は,圧密沈下により閉封飽和域が増加し,堤体内の水位が高く,堤体本体が液状化しやすい。よって,ドレーン工,抑え盛土工の設置により,堤体崩壊を防止する。
②留意点
堤体内浸透水の排水を促進し,堤体内の液状化範囲を減じる。そして,堤防の安定化を図り,計画高水位(H.W.L)を確保して堤防機能を保持する。
2)河川への津波遡上による浸水被害
地震後には,巨大津波が河川を遡上する。その遡上した津波が河川堤防を越水し,広範囲に浸水被害が発生する。
①浸水被害対策
レベル2の津波には,東日本大震災において道路盛土が津波の遡上を防止した。以上を教訓として他事業と連携し,河川,道路施設の自律分散協調による多重防御により浸水被害拡大防止を図る。
②留意点
道路盛土による二線堤の整備にあたっては,平常時に自律的に機能し,有益な費用対効果を発生する道路交通網として整備を行う。
(2)巨大地震発生時の応急対策および留意事項
1)堤防の液状化対策
①液状化応急対策
早急な施工の可能な盛土による仮堤防の築造を行い,計画高水位の確保を行う。また,被害の著しい箇所については,土嚢とシート保護による雨水浸透防止対策を行う。
②留意事項
仮堤防の築堤にあたっては,鋼矢板などの遮水性機能を有する材料を盛土と同時に施工し,浸水破壊の二次被害の防止を図る。
2)津波遡上による浸水被害対策
①津波遡上に対する応急対策
浸水被害の発生したエリアにおいては,排水ポンプ車により,堤内地の強制排水を行い,浸水エリアの減少を図る。