コミニケーション能力高める 3 「留意点」とは品質を高めるための方策、提案
文部科学省技術士分科会では技術士二次試験の合格基準の1つとしてコミニケーション能力を挙げています。このため論文試験では出題者の意図に応じて解答せねばならず、いわば会話の受け答えみたいな、コミニケーションが成立しなければ良い答えとして評価を受けることができません。
引き続き今回も機械部門機械設計科目の平成29年III−1問題について考えてみましょう。
問題文はこうでした。
近年、豊富な経験およびノウハウを有する技術者の高齢化が進む一方で、後継者不足や生産拠点の海外移転に伴う人材空洞化等により。我が国のものづくりに関わる高度な研究・開発や設計・製造に関する技術を伝承することが困難になってきている。そこで、先人のノウハウや知識を組織的に継承して技術力を維持・向上する仕組みの構築が求められている。このような社会的状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)ものづくりに関わる高度な研究・開発や設計・製造に関する技術を効率的にかつ早期に伝承するために実施されている仕組みや方法を3つ挙げ、それぞれについて特長と問題点を述べよ。
(2)(1)で挙げた技術を伝承するための仕組みや方法の中で、最も効果的と考えるものを1つ選び、その問題点を解決するための提案を示せ。
(3)(2)で挙げた提案がもたらす効果と留意点を具体的に述べよ。
この問(3)の解答である留意点について、検証してみましょう。例えば次のような解答どうだと思われますか。
なおここでは最も効果的な技術伝承の指導法として「業務手順書の作成」を取り上げ、
その方法: 計算書、過去トラブルシートを参照することで手順ごとに具体的で正確な判断を下すその効果: (手順の習得に加えて)背景となる原理や理論も併せて理解し、単なるマニュアル的な知識では無い有機的な技術伝承が行える。
としていたとします。ではその留意点はどうでしょう。
(3)−2 留意点(品質を高めるための方策、提案)
1) 更新し易い手順書とするため、手順書に記載する数値基準の根拠となる原典等
を明記し法規変更や新技術の置き換え等が発生時に手順書の見直しを容易にする。
2) 手順書に失敗体験談を記載して継承者が失敗体験を学ぶ。失敗体験を学ぶことでリスクの大きさや重要ポイントの理解を向上させて手順項目の優先度や重要度を学ぶ。
3) 手順書を問題方式として継承者の理解度を把握する。また問題形式とすることで継承者
の思考能力を高めて課題設定や未知なるものへの取組み姿勢を向上させる。
1は、法令等が変わった際に手順書の修正をスピーディーに行うという、いわば作業の効率化を目指した提案です。留意点としては着目は悪くはありません。ただし技術伝承と言う目的に対して、あくまでも作業の効率化と言う手段的な提案であり、残念ながら最終的な効果には貢献していません。
2は、失敗の体験談から学ぶという、学びの本質的な要素をを目指したものであり、本質的な技術の伝承に係る作業と言えそうです。
こ3は、さらに能力を高めるために問題形式で思考能力を高めるとしています。この点は評価できるものですが、ただし、課題設定や未知なるものの取り組み姿勢・・で終わってしまっては最終的な成果である「技術伝承」には届きません。
取り組み姿勢とは、技術者としての素養に位置づけられるコンピテンシーであり、あくまでも個人の資質を高めるという領域を超えないものです。本来は個人の勉強時間の中で行うべきことなのではないでしょうか。
以上をまとめますと、解答の末尾に来る提案は最終的な出題者の要求にぴったりとつながる成果を示さなくてはならないということです。
ここでは技術伝承を求められていましたので、未経験の若手に技術が伝承されて、その技術が提唱された本人によってどのように応用されるかということに関連づけて説明しなければならないことです。こういった論理性を通すこと、すなわちロジカルシンキングすることが技術士に求められているということです。
当研究所では、技術士二次試験の論文検索を通して、文部省技術士分科会が提案する技術士のコンピテンシーをいかに高めるかを研究しております。こうした成果を適用してさらなる合格者を輩出することを目指しており、1発合格されたい方は是非お申し込み下さい。必ずご期待に応えて合格力をアップするよう指導しております