H29年 建設・鋼コン Ⅱ-2-1 模範解答と解説
問題
Aグループ … 鋼構造
II−2−1
近年、安全・安心に対する関心が高まっており、将来、南海トラフ巨大地震や首都直下地震等の発生が危惧されている。このような大地震が発生し、被害を受けた鋼構造物について、あなたが補修設計の担当者として業務を進めるに当り、以下の問いに答えよ。
(1)補修を行う鋼構造物の損傷状態を2つ想定し、それぞれに有効な補修方法(補強を含む)を概説し、適用上の留意点について述べよ。
(2)(1)で挙げた補修方法のうち1つ選び、その設計業務を進める手順について概説せよ。
(3)(2)で述べた補修設計を進めるにあたって、重要と思われる事項について述べよ。
模範解答1 簡易答案形式1完成日 2018.02.13 添削回数4 専門とする事項 鋼橋設計
1.損傷状態、補修方法、留意点
1-1.連続鈑桁橋中間支点部におけるBP沓(固定沓)のアンカーの破断
(1)補強方法:L2地震動に対応した支承補強構造を設置
(2)留意点:支承防止構造取付き部の母材が変形→補強部材設置
1-2.鋼トラス橋の下横構の座屈
(1)補強方法:横構交換+ガセット部へダンパー設置で減衰付加→座屈防止
(2)留意点:ダンパーをL2で降伏させるため、L1地震動は弾性域で設計
2.L2地震動に対応した支承補強構造の設計手順
①現地調査結果から損傷原因を推定(旧基準BP沓→Anc耐力不足)
②橋の重要度から耐震性能を設定し、補強方針を検討(Anc耐力不足+耐震性能2→L2地震への補強)
③照査方法を検討(振動挙動が単純→静的照査法)
④反力算出+L2地震動水平力を保耐法又は震度法にて算出→本体設計・上揚力対策
3.設計を進めるにあたっての重要事項
2.④L2地震動水平力算出について述べる。橋脚に塑性化を考慮しない場合、L2水平力は震度法にて算出。一方、橋脚に塑性化を考慮する場合、L2水平力は橋脚の終局水平耐力を採用。このため、橋脚の耐力増加を図る耐震補強設計実施の有無を橋の重要度と耐震性能から判断→水平力を確定
模範解答1 簡易答案形式2 完成日 2018.02.18 添削回数2 専門とする事項 鋼橋設計
(1)損傷状態、補修方法、留意点
1)連続鈑桁橋中間支点部におけるBP沓(固定)のアンカー破断
①補強方法:L2地震動に対応可能な支承補強構造(鋼材+ANC)を主桁L.FLGに設置→BP沓を現行のタイプB沓機能へ補強
②留意点:支承防止構造取付き部の主桁L.FLGが局部曲げにより変形→主桁WEBに補強材設置
2)鋼トラス橋の下横構の座屈
①補強方法:横構の交換+GUSS部へのダンパー設置で減衰付加+地震エネルギー吸収→座屈防止
②留意点:ダンパーをL2で機能(降伏)させるため→L1地震動・風荷重は弾性域での設計
(2)L2地震動に対応可能な支承補強構造の設計手順
①現地調査結果から損傷原因を推定
・旧基準のBP沓→ANC耐力不足
・橋座コンクリートがコーン破壊→上揚耐力不足
②橋の重要度で耐震性能を設定し補強方針検討
・本橋は緊急輸送路であるためB種+耐震性能2→L2補強が必要と判断
③照査方法検討
・鈑桁であるため、地震時の振動挙動が複雑でない→静的照査法を採用
④支承反力算出+L2地震動水平力の算出→本体設計
・復元設計により支承死荷重反力を算出、
・L2地震動水平力を保耐法又は震度法にて算出+上揚力を震度法にて算出
・L2地震動水平力と上揚力で支承補強構造(鋼材+ANC)を設計+橋座と支承補強構造取付き部の離隔によって生ずる局部曲げを偶力に変換し、補強リブを設計
(3)設計を進めるにあたっての重要事項
<2.④L2地震動水平力算出について>
・橋脚に塑性化を考慮しない場合→L2地震動水平力は震度法(khc*W)にて算出。
・橋脚に塑性化を考慮する場合→L2地震動水平力は橋脚の終局水平耐力(Pu)を採用。このため、橋脚の耐力増加を図る耐震補強設計実施の有無を橋の重要度と耐震性能から事前に判断→L2地震動水平力を確定
模範解答1 答案形式 添削回数1 完成日 2018.02.19 専門とする事項 鋼橋設計
(1)損傷状態、補修方法、留意点
1)連続鈑桁橋中間支点部におけるBP沓(固定)のアンカー破断
①補強工法:L2地震動に対応可能な支承補強構造(鋼材とアンカ-で構成)を主桁L.FLGに設置することで、BP沓を現行のタイプB沓の機能へ補強する。
②留意点:支承防止構造取付き部の主桁L.FLGが局部曲げにより変形するため、補強材を設置する必要がある。
2)鋼トラス橋の下横構の座屈
①補強工法:横構の部材交換に加え、ガセット部へのせん断降伏型ダンパー設置による減衰付加と地震エネルギーの吸収を図り、L2地震動による座屈を防止する。
②留意点:ダンパーをL2地震動で機能(降伏)させるため、L1地震動や風荷重は弾性域で設計する。
(2) L2地震動に対応可能な支承補強構造の設計手順
①現地調査結果から損傷原因を推定
・旧基準の支承形式である場合は、アンカー耐力の不足と判断する。
・橋座コンクリートがコーン破壊している場合は、上揚に対する耐力不足と判断する。
②橋の重要度と耐荷性能により補強方針を検討
・緊急輸送路である場合、重要度はB種と判断する。
・重要度がBである場合、耐荷性能は、地震直後の耐荷力を速やかに確保できる2と判断する。
・以上からL2地震動に対する補強の要否を検討する。
③限界状態の設定
L2地震は偶発作用が支配的な状況であるため、耐荷性能マトリクスにより、限界状態2(部分的な耐荷力の低下が、想定する範囲内で確保できる限界の状態)を設定する。また、限界状態3(耐荷力が完全に失われない限界の状態)も設定する。→L2地震に対する補強であるため、道示に記載している決定事項です。
④構造解析手法の検討
・動的解析が標準であるが、鈑桁等地震時の振動挙動が複雑でない形式の場合は静的解析を採用する。
⑤復元設計より支承の死荷重反力を算出
⑥L2地震動水平力の算出
・L2地震動水平力を保耐法又は震度法にて算出する。上揚力は震度法にて算出する。
⑦本体設計
・L2地震動水平力と上揚力で支承補強構造を設計する。
・橋座と支承補強構造取付き部の離隔によって生ずる局部曲げを偶力に変換し、補強リブを設計する。
・各応答値と制限値は、荷重組合せや限界状態に応じた部分係数を考慮する。
(3)設計を進めるにあたっての重要事項
<2.⑤L2地震動水平力算出について>
橋脚に塑性化を考慮する場合は、橋脚の終局水平耐力(Pu)を採用する。このため、橋脚の耐力増加を図る耐震補強設計実施の有無を橋の重要度と耐荷性能から事前に判断し、L2地震動水平力を確定する。