H29年 建設・鋼コン Ⅲ-2 模範解答と解説
問題
Aグループ … 鋼構造
II−1−1
次に示す高性能鋼から2つを選び,それぞれの特徴や利点を示し,鋼構造物における使用上の留意点について述べよ。(選択した鋼材を明記すること。)
(1) 橋梁用高降伏点鋼(SBHS)
(2) 建築構造用圧延鋼材(SN)
(3) 建築構造用高強度鋼材(SA)
(4) 耐候性鋼
(5) ステンレス鋼
(6) 耐火鋼
(7) 超高カボルト
(8) クラッド鋼
模範解答1 簡易答案形式1 作成日2018.03.14 添削回数4 専門とする事項 鋼橋設計
(1)問題点、課題
1) インフラに粘り強い構造を導入
自然災害でインフラの脆性破壊・全体崩壊が生じた場合、住民の避難時間が確保不可で多大な被害。よって従来の耐荷力の増加対策に加え、塑性変形の許容によりインフラに粘り強い構造を導入することが課題。
2) 維持管理のコスト低減
インフラの防災機能を発揮するためには維持管理で部材健全が前提→予算不足の状況下では全施設への長寿命化や予防保全管理が困難。よって、インフラの設置環境や重要度、要求性能に応じた維持管理でコストの低減を図ることが課題
3) 技術者の確保
インフラは災害時の救援活動拠点だから早期復旧が必要だが、技術者不足。よって、産学官が連携した人材育成、残業時間削減や週休二日制導入等による労働環境の改善で技術者を確保することが課題
(2)重要な技術的課題と技術的解決案
課題1)鋼橋上部工への粘り強い構造を導入
提案1)粘り強い構造を導入するため、鋼上部工の塑性化・部分破壊の許容や地震Eの吸収によって、脆性破壊を抑える。具体的には、塑性設計や制震デバイス(ダンパーによる減衰付加)の導入
課題2)鋼橋の維持管理のコスト低減
提案2)コスト低減のため性能照査型設計法の導入で架橋環境、重要度、設計耐久年数に応じた維持管理手法・構造を設定。具体例1防食①凍結防止剤散布路線→高耐久金属溶射やクラッド鋼②残存寿命短→低耐久Ra-Ⅲ。2点検①長大中橋→センサーで腐食自動探知②小橋→簡易点検。3構造:長支間→合理化少数桁で部材低減
(3)効果・リスク・課題
1)塑性設計について
①効果:脆性破壊・全体崩壊を防止→住民の避難時間を確保→人命を守る。
②リスク:塑性化後断面の耐荷力が不明状況で住民・車両通行→破断が生ずる危険。
③課題:活荷重に対する塑性断面耐荷力のFEM検証や破壊部材削除モデルでの解析等で積載荷重制限や補強部材設置を判断
2)クラッド鋼の使用について
①効果:構造用圧延鋼材とSUS・チタンを一体化した鋼材のため、高耐食性を有する構造部材として使用可→維持管理コスト低減→部材健全保持→防災機能発揮
②リスク:桁端部等に部分使用→クラッド鋼と一般鋼材境界部に異種金属接触腐食→断面減少③課題:境界部へのゴム等の絶縁処理対策を検討
別案も考えました。
2)クラッド鋼の使用について
①効果:母材(構造用圧延鋼材)と合せ材(SUS・チタン)を一体化した鋼材のため、高耐食性を有する構造部材として使用可→塗装不要で維持管理コスト低減
②リスク:長期間の活荷重繰返しで合せ材が剥離→断面急変で母材に応力集中→亀裂→グラッド鋼の剥離に対する疲労照査が確立されていないことからリスクと想定しました。これをリスクとして良いでしょうか。
③課題:合せ材の剥離を踏まえた疲労照査で母材の安全性を検証
模範解答1 簡易答案形式2 作成日2018.03.17 添削回数2 専門とする事項 鋼橋設計
(1)問題点、課題
1)インフラを粘り強い構造とする
自然災害でインフラの脆性破壊・全体崩壊が生じた場合、住民の避難時間の確保が困難となり、多大な被害が生ずる。よって従来の耐荷力増加対策に加え、塑性変形の許容によりインフラを粘り強い構造とする必要がある。
2)維持管理のコスト低減
インフラの防災機能を発揮するためには維持管理で部材が健全であることが前提となる。しかし、予算不足の状況下では全施設への長寿命化や予防保全管理が困難である。よってインフラの周辺環境や重要度、要求性能に応じた維持管理でコストの低減を図る必要がある。
3)技術者の確保
インフラは災害時の救援活動拠点となるため、損傷した場合は早期復旧が必要である。しかし、人口減少や団塊世代の一斉退職により技術者が不足している。よって、産学官が連携した人材育成、残業時間の削減や週休二日制の導入等による労働環境の改善で技術者を確保する必要がある。
(2)重要な技術的課題と技術的解決案
課題1)鋼橋の上部工を粘り強い構造とする
提案1)粘り強い構造とするため、鋼上部工の塑性化・部分破壊の許容や地震Eの吸収により、脆性破壊を抑える。具体的には、塑性設計の導入や制震デバイス(ダンパーで減衰付加)を導入する。
課題2)鋼橋の維持管理のコスト低減
提案2)コスト低減のため、性能照査型設計法の導入により架橋環境、橋の重要度、設計耐久年数に応じた維持管理手法・構造を設定する。例1防食①凍結防止剤散布路線は高耐久の金属溶射やクラッド鋼を採用する②残存寿命短橋は低耐久のRa-Ⅲを採用する。2点検①大中規模橋は腐食や疲労亀裂を自動探知できるセンサーや赤外線カメラを導入する②小規模橋は点検部材を主桁や支承等に限定した簡易点検とする3構造:長支間橋は少数桁等の合理化構造の採用で部材数を低減する。
(3)効果・リスク・課題
1)塑性設計について
①効果:脆性破壊・全体崩壊を防止することで住民の避難時間を確保し、人命を守る。
②リスク:塑性化後の断面の耐荷力が不明な状況で住民や車両が通行した場合、破断が生ずる。
③課題:FEMによる活荷重に対する塑性断面の耐荷力の照査や塑性化・破壊部材を削除したモデルでの解析により、車両総重量の制限や補強部材の設置を検討する。
2)クラッド鋼の使用について
①効果:母材(構造用圧延鋼材)と合せ材(チタン)を一体化した鋼材であり、高耐食性を有する構造部材として使用するため、維持管理コストを低減できる。また、部材の健全性の保持により耐震性能を発揮できる②リスク:クラッド鋼を桁端部等に部分使用した場合、一般鋼材区間との境界部に異種金属接触腐食が生じ板厚減少に至る③課題:境界部にゴム等の絶縁処理を行う。
模範解答1 答案形式 作成日2018.04.6 添削回数6 専門とする事項 鋼橋設計
(1)問題点、課題
1)インフラを粘り強い構造とする
自然災害でインフラの脆性破壊・全体崩壊が生じた場合、人命に危険が及ぶ。このため、従来の耐荷力増加対策に加え、塑性変形の許容によりインフラを粘り強い構造とする必要がある。
2)維持管理のコスト低減
インフラの防災機能を発揮するためには、部材が健全であることが前提となる。しかし、予算不足の状況下では、全施設への維持管理の継続が困難である。このため、インフラの周辺環境や重要度及び要求性能に応じた維持管理によりコストの低減を図る必要がある。
3)技術者の確保
インフラは災害時の救援活動拠点となるため、早期復旧が必要であるが、技術者が不足している。このため、産学官が連携した人材育成、残業時間の削減や週休二日制の導入等で労働環境の改善を図り、技術者を確保する必要がある。
(2)重要な技術的課題と技術的解決案
課題1)鋼橋を粘り強い構造とする
提案1)鋼橋の優れた塑性変形能の活用、部分破壊の許容および地震エネルギーの吸収により、全体崩壊・脆性破壊を抑える。
①塑性設計
FEM弾塑性解析で特定した崩壊時の塑性ヒンジの回転角と全塑性モーメントMpで崩壊荷重を算出し、部材の全体崩壊に対する安全性を照査する。また部材断面は、局部座屈が生じること無くMpに達することができるコンパクト断面を導入する。
②制震設計
犠牲部材である鋼材ダンパーを鋼上部工部材または上下部工間に設置し、鋼材の弾塑性履歴による減衰付加により地震エネルギーを吸収することで、橋体の全体崩壊を防止する。また、免震支承を併用により、優れた復元力を付加した合理的な制震設計とする。
課題2)鋼橋の維持管理のコスト低減
提案2)性能照査型設計法の導入により、鋼橋の重要度に応じた維持管理手法を設定し、効率的な維持管理予算の配分を行う。また重要度は、路線の社会的重要性に加え、現在の健全性診断結果と将来の劣化シュミレーション予測により算出した残寿命で決定する。
①重要度が高い橋への維持管理
緊急輸送路や残寿命が大きい橋は、防災・社会経済上重要度が高いと判断し、長期間に渡り部材機能の低下を防止する。よって、予算の集中投資によるフルスペックの維持管理を行う。具体的には、ICTを活用した自動点検(センサー等)による損傷の早期発見・補修や長寿命化工法(金属溶射・クラッド鋼等)の導入により高耐久化を図る「予防保全型維持管理」行う。
②重要度が低い橋への維持管理
利用頻度が少なく残寿命が短い橋は、架け替えや撤去までの短期間のみ部材機能の低下防止を図る。よって耐久性が低い工法(Ra-Ⅲ等)や遠望目視点検等の低予算での維持管理を行う。
(3)効果・リスク・課題
1)塑性設計
①効果:脆性破壊・全体崩壊を防止することで住民の避難時間を確保し、人命を守ることができる。
②リスク:地震後の塑性化断面の耐荷力が不足した状況下において、住民や車両が鋼橋を通行した場合、崩壊が生ずる危険がある。また、FEM弾塑性解析は設計負荷(入力やモデル化が複雑)が大きく、解析結果の善悪の判断が困難で設計ミスに気付かない恐れがある。
③課題:活荷重に対する塑性断面の耐荷力照査や塑性化部材削除モデルでの解析でにより、通行荷重の制限を検討する。また、PUSHOVER解析等の大変形を前提とした準静的解析との対比チェックで設計ミスを防止する。
2)重要度に応じた維持管理
①効果:全施設に対するフルスペックの維持管理が不要となり、作業の効率化・省力化を図ることができる。
②リスク:現在の健全性診断基準は定量的で無いため、診断ミスが生じ残寿命や重要度設定を誤る危険がある。
③課題:構造設計データと損傷データがリンクし、構造機能に対する影響の自動計算・健全性診断ができるシステムにより、診断基準の定量化を図る必要がある。
答案作成上の注意
・解決策とは何か
例ではなく、概説的、包含的に目指すもの。つまりはこのようなことという論述にする。
・効果とは
サプライズ、二次的発展的な影響
・リスクについて
提案の要素についてのリスクではなく、提案全体のリスクを提案する。→限定しない
唐突にならないように前提条件をあげて論述する。