H29年 建設・鋼コン Ⅱ-2-4 模範解答と解説
問題 Ⅱ−2−4
近年の大地震に備えて、コンクリート構造物の耐震補強がすすめられている。今回あなたは、1969年に竣工された設計図と設計計算が無いコンクリート構造物の耐震補強対策業務を行うこととなった。基礎工事は対象外として、下記の内容について記述せよ。
(1)想定したコンクリート構造物、注意すべき部材の破壊形態、目標とする耐震性能と照査方法
(2)構造物の復元方法、復元設計に必要な調査項目
(3)業務を進める手順、業務を提案する補強工法について設計施工上留意すべき事項
模範解答1 簡易答案形式1 添削回数2 完成日2018/4/22 専門とする事項 コン維持管理
(1)概要
1)構造物:コンクリート橋脚
2)破壊形態:直下型地震によるせん断破壊
3)目標性能:レベル2地震動による損傷が限定的で、機能の回復が速やかに行える性能。
4)照査方法:応答スペクトル法
(2)復元計画
1)復元方法:橋脚の寸法大きさ、コンクリートの設計基準強度、鉄筋の引張強度、付着強度、コンクリート内の鉄筋位置・鉄筋量を確認する。
2)調査項目:コンクリート圧縮試験、シュミットハンマー打撃試験。鉄筋の引張試験。コンクリートはつり、X線検査、目視調査。
(3)補強業務方針
1)補強業務手順
a)橋脚の1次と2次の固有周期(モード)を求める。
b)想定される直下型地震の地震波について、応答スペクトル法により橋脚の1次あるいは2次モードによる最大せん断力を求める。
c)補強工法を比較する。鋼板巻立て補強を行うこととし,段面を仮決めする。
d)復元された橋脚と巻立てコンクリート及び鋼板のせん断耐力を合計し、最大せん断力以上になったら、補強段面を決定する。
2)留意点
a) 地震時に鋼板つなぎ部が損壊するとせん断耐力が大きく失われるので、鋼板ははすべて溶接接着とし鉄板引張強度以上を確保する。
b)せん断破壊に対して橋脚と補強部が分離して損壊しないように、既設コンクリートとの一体性を確保する。そのため、既設コンクリート表面のチッピングによるゆるみを打音検査により確実に除去する。また巻立てコンクリートはその段面厚さが小さく、ジャンカなどの欠陥が発生しやすい。そのため、流動性の高いコンクリートを使用することが望ましい。
模範解答1 簡易答案形式2 添削回数1 完成日2018/5/8 専門とする事項 コン維持管理
(1)概要
1)構造物:細長比の大きいコンクリート橋脚
2)破壊形態:段落とし部での曲げ破壊
3)目標性能:レベル2地震動(内陸型)による損傷が限定的で、機能の回復が速やかに行える性能。
4)照査方法:応答スペクトル法
(2)コンクリート橋脚の復元計画
1)復元方法:橋脚の寸法大きさ、コンクリートの設計基準強度、鉄筋の引張強度、付着強度、コンクリート内の鉄筋位置・鉄筋量を測定・確認し、当初図面を復元する。
2)調査項目:コンクリート圧縮試験、シュミットハンマー打撃試験。鉄筋の引張試験。コンクリートはつり、X線検査、目視調査。
(3)補強業務方針
1)補強業務手順
a)補強工法を比較する。鋼板巻立て補強を行うこととし,段面を仮決めする。
b)補強された橋脚の1次と2次の固有周期(モード)を求める。
c)想定される内陸型地震の地震波について、応答スペクトル法により補強された橋脚の1次あるいは2次モードによる橋脚の最大曲げモーメント力を求める。
d)橋脚と鋼板の曲げ耐力を合計し、最大曲げモーメント以上、かつ橋脚の頂部の許容変位量以下になったら、補強段面を決定する。許容変位量は、鉄筋及び鋼板の降伏変位量かつ落橋変位量以下とする。
2)留意点
a)段落とし部が強化されると、フーチング接続部が曲げ破壊で壊れる可能性がある。フーチング部に定着するアンカーによる補強を行う。
b)地震時に鋼板つなぎ部が損壊すると曲げ耐力が大きく失われるので、鋼板はすべて溶接接着とし鋼板引張強度以上を確保する。
c)地震時、橋脚の曲げによる橋脚とフーチングのひずみ変形で、鋼板が衝突座屈しないように、フーチングと鋼板間を5cm程度開ける。