H29年 建設・河川Ⅲ-1 問題 模範解答と解説

問題文   

 わが国では、高度経済成長期に社会的要請に基づき急速に整備した社会資本の老朽化に対して、厳しい財政制約の下、効率的に対応していく必要がある。そのような状況を踏まえ、社会資本の整備や維持管理の分野においては、既存ストックの有効活用を図ることが求められている。河川、砂防、海岸、海洋分野における既存ストックの有効活用に関して、以下の問いに答えよ。

(1)   河川、砂防、海岸・海洋分野において、現在取り組まれている既存ストックの有効活用に資する具体的な取組の例を2つ挙げ、その概要を説明せよ。

(2)   今後、より積極的に河川、砂防、海岸・海洋分野における既存ストックの有効活用を推進していくに当たっての課題を2つ説明せよ。

(3)(2)で記述した課題に対して、それぞれの改善方策を提案せよ

模範解答1  (簡易答案形式1)  添削履歴 14回    完成日 2018/3/18  専門事項 施工計画・施工管理

(1) 具体的取組み例

1) 堤防の既存ストックの天端や裏法を保護工で覆うことで、浸食による崩壊を低減し、洪水外力に対する耐久性を向上させる。

2)砂防堰堤の既存ストックの中央部に鋼管格子を組み込むことで、土砂の流下機能が高まり、土砂調節量が向上する。

(2)有効活用推進の課題

1)浸食による強度低下を防ぐため、堤体変化に追随できる引張強度が高く屈撓性を有するブロックやシートによる保護工の開発

2)砂防堰堤の土砂を流下させやすくするため、巨石を上流側の格子で捕足し、一方土砂は水の流路を維持して掃流力を保つ構造の開発。

(3)有効活用の改善方策

1-1初期浸食に対する強化保護工の開発

堤体浸食がはじまる裏法肩を防ぐことで、崩壊の低減が図られる。

そのため、堤防天端を防水・水密性を有する材質で法肩を巻くように覆う手法で、堤体強度を向上させた保護工を開発する。

1-2流水の侵入と水位の低下を図った保護工の開発

堤内の浸透水による内力を低減させるため、堤防天端と裏法上部に遮水材、裏法下部に排水材で覆う手法を応用して、流水の侵入と水位の低下を図る保護工を開発する。

2-1巨石の分離を図った鋼管格子の開発

巨石を分離し土砂の流下能力を向上させるため、鋼管格子を上流側に斜め屈曲形に設置する。

これにより、土石流時で巨石が上方に浮上り下部の空間から土砂だけを流下させる斜材鋼材形状の設計を応用して、先頭で衝突してくる巨石を上部で捕足し、後続する土砂は下部で流下させる格子形状とする。

2-2土砂の流水速度を高めた構造の開発

動水勾配をあげ流水能力を高めさせることで、土砂の流下速度が向上する。

そのため、格子をフラットから勾配をもたせた基礎面に設置した設計で、堰堤における土砂の加速度を高めた構造を開発する。

模範解答1  (簡易答案形式2)  添削履歴 2回    完成日 2018/3/21  専門事項 施工計画・施工管理

(1)具体的取組み例

1)堤防の保護工設置

河川堤防は土堤であり一旦洪水が発生すると破堤しやすいため、堤防の既存ストックの天端や裏法を保護工で覆うことにより、浸食による崩壊を低減し洪水外力に対する耐久性を向上させる。

2)砂防堰堤の鋼管格子設置

不透過型砂防堰堤は、巨石と土砂を同時に捕足し堆砂させ土砂の流下が少なく河床が低下し河川構造物に被害が生じているため、既存ストックの中央部に鋼管格子を組み込むことで、土砂の流下機能が高まり、土砂調節量を向上させる。

(2)有効活用推進の課題

1)ブロックやシートによる保護工の開発

破堤の主要因は、多様な方向・流量からくる越流水による浸食であり、既存堤防の強度低下を防ぐには、土堤体の変化に追随できる引張強度が高く屈撓性を有するブロックやシートによる保護工の開発をする。

2)土砂の掃流力を保つ鋼管格子の開発

土石流を捕足する際、巨石と土砂が混合し巨石が土砂の流下を妨げるため、巨石を上流側の格子で捕足し、一方土砂は水の流路を維持して掃流力を保つ構造の開発。

(3)有効活用の改善方策

1)ブロックやシートによる保護工の開発

1-1初期浸食に対する強化保護工の開発

浸食が始まる裏法肩を防ぐことで堤体崩壊が低減されるため、堤防天端を防水・水密性がある材質で法肩を巻き覆う手法で、堤体強度向上を図る保護工を開発する。

1-2流水の侵入と水位の低下を図った保護工の開発

堤内の浸透水による内力を低減さるため、堤防天端と裏法上部に遮水材、裏法下部に排水材で覆う手法を応用して、流水侵入と水位低下を図る保護工を開発する。

2)土砂の掃流力を保つ鋼管格子の開発

2-1巨石の分離を図った鋼管格子の開発

鋼管格子を上流側に斜め屈曲形に設置し、土石流時で巨石が上方に浮上らせ下部の空間から土砂だけを流下させる設計を応用して、先頭で衝突してくる巨石を上部で捕足し、後続する土砂は下部で流下させる格子形状とする。

2-2土砂の流水速度を高めた構造の開発

動水勾配をあげ流水能力を高めさせることで土砂の流下速度が向上するため、格子をフラットから勾配をもたせた基礎面に設置した設計で、堰堤における土砂の加速度を高めた構造を開発する。

模範解答1  (答案形式)  添削履歴 6回    完成日 2018/3/29  専門事項 施工計画・施工管理

(1)具体的取組事例

1)堤防の保護工設置

河川堤防は土堤であり一旦洪水が発生すると破堤しやすい。破堤を防ぐには、洪水の流下能力を上げる河川改修等があるが、膨大な時間と費用を要す。

破堤は、耐浸食力を上回る流速が作用する時点から生じるため、既存ストックの河川堤防の天端や裏法を保護工で覆うことにより、耐浸食力と同程度の流速まで効果を発揮できる。

これにより、土堤に作用する洪水の外力に対応でき、かつコストを減らし短期間の施工が可能となることから、氾濫リスクの高い河川における堤防の整備率が向上される。

2)砂防堰堤の鋼管格子設置

不透過型砂防堰堤は、巨石と土砂を同時に捕足し堆砂させ土砂の流下が少なく、河床が低下し河川構造物に被害が生じている。

鋼管格子は、流下してくる土石流の貯留または減勢および土砂と巨石の分離を図る設備として用いられる。できる。また、土砂と巨石の通過空間を大きくとることができ、大洪水時まで貯砂容量を確保でき、堆砂圧等が低減され構造上の安定性が確保される。

よって、不透過型砂防堰堤の既存ストック中央部に鋼管間隔をもつ格子を組み込むことで、土砂の流下機能が高まり、かつ堰堤の耐久性が向上される。

(2)有効活用推進の課題

1)ブロックやシートによる保護工の開発

堤体の崩壊は、堤防の天端を越流したあと、裏法を流下し流速が早くなった状態で洗堀が起こり、天端および裏法の損壊・流出を引き起す被災形態である。

そのため、洪水の外力に対し土堤体の変化に追随でき、せん断力および引張等の強度が高く屈撓性を有し、また流水の侵入を防止するブロックやシートによる保護工の開発をする。 

2)土砂の掃流力を保つ鋼管格子の開発

透過部断面を持つ鋼管格子を設置することにより、巨石を上流側で捕足し堆積させ、一方の土砂は、水の流路を維持して掃流力を保つことが可能となる。

そのため、洪水時・平常時ともに土砂を堆積させることなく、堆砂域の空間を確保させ堰堤のクラック等の損傷を防ぐ構造の開発をする。

(3)有効活用の改善方策

1)ブロックやシート等による保護工の開発

1-1初期浸食に対する強化保護工の開発

初期段階で発生する裏法肩の洗堀を強化することが有効な手段となる。

このため、防水・水密性がある材質で、堤防天端から法肩まで巻き覆う手法で、堤体の洗堀を防止し強度の向上を図る保護工を開発する。 

1-2流水の侵入と水位の低下を図った保護工の開発

洪水時では、流水の外力と内力の両面から堤防の強化を図ることが有効である。

このため、天端と裏法上部に遮水材で覆い流水の侵入を防ぐ。一方裏法下部には排水材で覆い浸透水をドレーン状にして速やかに堤体から排除する手法を応用して、堤体に対する流水の侵入と水位の低下を図る保護工の開発をする。 

2)土砂の掃流力を保つ鋼管格子の開発

2-1巨石の分離を図った鋼管格子の開発

堰堤上流側に斜め屈曲形の格子を設置し、土石流時に巨石を上方に浮き上がらせ、下部にできた空間から土砂だけを流下させることができる。

このため、先頭で衝突してくる巨石を上部で捕足し、後続してくる土砂は下部で流下させる設計を応用した格子形状を開発する。 

2-2土砂の流水速度を高めた構造の開発

動水勾配をあげ流水能力を高めさせることで、土砂の流下速度を向上させることで、格子を通常のフラット形状の基礎面から勾配をもたせた形状の基礎面にし、かつ堆砂域底面にコンクリート版を設置する。

このため、堰堤における勾配を上げ、かつ粗度係数も低くした土砂の加速度を高めさせる設計を応用した構造を開発する。

模範解答2  (簡易答案形式1)  添削履歴 1回    完成日 2018/5/17  専門事項 

1. 既存ストックの有効活用例

①高水敷き等の有効利用

・堤防天端、高水敷き等の用地において、洪水時に使用されが、大半を占める通常に使用されていない。この土地をリクレーション施設、カフェ等の商業施設に占用させて高度利用を行う。

②既設ダムにおける洪水調節容量の増

・ダムの嵩上や浚渫することで洪水調節容量を増やす。

・ダムの下部で利水の容量を確保して上部を洪水調節容量で利用する。

2.有効活用を推進していくに当たっての課題と改善方策

①課題 :河川施設の耐用年数が経過する時期に多くが来ており、老朽化に伴う維持管理及び更新には莫大な予算がかかる。既存ストックの維持管理・更新を効果的に行っていく必要があるが、河川堤防は一般的に工事時期も不明確で施設台帳も不明確となっている。

改善方策;護岸の老朽については修繕時期が不明確であるので施設台帳を整備して施工時期を明確にすることで修繕計画を策定する。

 護岸の内空調査をレーダー探査機で調査して修繕計画を立てる。

 排水機場の機械については定期的に更新して長寿命化計画を策定して、更新する。

②課題 :河川拡幅工事において計画流量から算定した定規断面で河川拡幅工事を行うと既設護岸を取り壊して新設する必要がある。このため、既設護岸を有効利用して経済的であり廃棄物を出さない生活環境保全の計画とする必要がある。

改善方策;各断面を不等流計算で洪水位を算定し既設護岸を利用できる計画断面に変更する。

山付きの自然河岸については、力学的に洪水流による浸食がないことを確認して護岸工を計画しない区間を設定する。

河川拡幅計画に変えて既設ダムの洪水調節容量を増加させる計画を策定する。

放水路を計画して既設護岸の拡幅工事に変える。

模範解答2  (簡易答案形式2)  添削履歴 4回    完成日 2018/6/6  専門事項 

1. 既存ストックの有効活用例

①排水機場の長寿命化計画

排水機場の塗装の状況を確認し、腐食対策として再塗装を実施する。また、長寿命化計画を策定し、機器の部品交換を共用時間を基に予防保全の観点から交換して排水機場を長期に有効活用を行っている。

②河川施設の変状管理

毎年同時期に目視による確認を行う。確認の項目は、護岸のクラックの変化、体積土砂の変化、樹木の生育変化、堤防法面の窪み等の変化です。

次に変状が拡大している場合は、護岸のクラックであれば、モルタル注入を、体積土砂は掘削排除を行って既存ストックの維持管理を行うことで河川施設の有効活用を行っている。

2.有効活用を推進していくに当たっての課題

①確実な管理手法

予防保全での共用時間を基準に部品を交換していくのではなく、劣化予想をして部品の状態を把握して最適な時期に部品交換する管理手法の確立が課題である。

②不可視部分の変状把握

河川施設の目視確認は表面上の変状の確認には有効だが、堤防内部及び護岸下部の変化は確認できていない。河川施設を長期に有効活用するためには、浸透水による堤防内部及び護岸下部の空洞化を初期段階に修繕工事を行う必要がある。このため、堤防内部及び護岸下部の確実な変状把握をすることが課題である。

3.それぞれの改善方策

①状態監視技術の向上

排水機場を常時監視するため、管内の主軸に垂直に超音波を照査できるケーシング外部に超音波式振動計センサーを密着させて振動波形を計測する。この計測を継続し、評価することで、振動状態と劣化兆候と実際の設備状態の因果関係を把握し、状態監視技術を向上させる。

②堤防内部の維持管理

地中レーダー探査による事前調査を実施し、堤防の空洞状況を把握する。

次に空洞状況の詳細調査として開削調査、ボーリング調査及びボアホールカメラ撮影調査を実施する。その後、空洞化原因を推定することで対策工を検討し実施することで表面と内部の変状を確実に把握し維持管理することで長期の河川施設の有効活用を行える。

模範解答2  (答案形式)  添削履歴 2回    完成日 2018/6/8  専門事項 

1.既存ストックの有効活用

①排水機場の長寿命化計画

排水機場の塗装の状況を確認し、腐食対策として再塗装を実施する。消耗品であるパッキンの劣化が見受けられたときに分解整備を実施する。

また、長寿命化計画を策定し、機器の部品交換を供用時間を基に予防保全の観点から交換して排水機場を長期に有効活用を行っている。

②河川堤防の変状管理

河川堤防及び護岸については、毎年同時期に目視による確認を行う。確認の項目は、護岸のクラックの変化、河川の堆積土砂の変化、樹木の生育変化、堤防法面の窪み等の変化です。

次に変状が拡大している場合は、護岸のクラックであれば、モルタル注入を、堆積土砂は掘削排除を行って、維持管理を行うことで河川施設を長期に有効活用を行っている。

2.有効活用を推進していくに当たっての課題

①確実な管理手法

予防保全での供用時間を基準に部品を交換していくのではなく、劣化予想をして部品の状態を把握して最適な時期に部品交換する管理手法の確立が課題である。

②不可視部分の変状把握

河川施設の目視確認は、表面上の変状の確認には有効だが、堤防内部及び護岸下部の変化は確認できていない。

河川施設を長期に有効活用するためには、浸透水による堤防内部及び護岸下部の空洞化を初期段階に発見し、修繕工事を行う必要がある。このため、堤防内部及び護岸下部の確実な変状把握をすることが課題である。

3.それぞれの改善方策

①状態監視技術の向上

排水機場を常時監視するため、管内の主軸に垂直に超音波を照査できるケーシング外部に超音波式振動計センサーを密着させて振動波形を計測する。この計測を継続し、評価することで、振動状態と劣化兆候と実際の設備状態の因果関係を把握し、状態監視技術を向上させる。

②堤防内部の維持管理

地中レーダー探査による事前調査を実施し、堤防の空洞状況を把握する。次に空洞状況の詳細調査として開削調査、ボーリング調査及びボアホールカメラ撮影調査を実施する。

その後、空洞化原因を推定し、対策工として、止水矢板、モルタル注入等を実施することで内部の変状を確実に把握し、維持管理することができ、長期の河川施設の有効活用が行える。

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