H30/2018年 建設・鋼コン Ⅱ−2−3 問題 模範解答と解説
問題
コンクリート構造物について、工期短縮を目的とする検討業務を行うことになった。あなたが担当責任者として業務を進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)現場打ち施工による工期短縮案及びプレキャスト化による工期短縮案を提案する上で必要とされる検討内容をそれぞれ延べよ。
(2)現場打ち施工による工期短縮案又はプレキャスト化による工期短縮案のうち1つを選び、その検討業務を進める手順について述べよ。
(3)(2)で述べた検討業務を進めるに当って、設計上及び施工上の留意事項をそれぞれ述べよ。
模範解答1 (簡易形式1) 添削履歴 4回 2019.5.17 専門事項 コンクリート維持管理
(1)工期短縮案としての検討内容
①現場打ち施工
早強セメントや高流動コンクリートなどの使用材料や最大日進量
②プレキャスト化
材料・形状や、使用車両、運搬方法、施工順序、省人化
(2)プレキャスト化による工期短縮案の検討業務手順
・プレキャスト化する部位・部材を特定する
・接合部の設計方法を決定する
・製作工場や運搬経路を確保する。
(3)設計上及び施工上の留意事項
①設計上の留意点
・施工性を高めるため接合部を減らし、設計応力が伝達できる設計とする。
・耐久性を確保した合理的な接合部の設計を行う。
②施工上の留意点
・接合部・継手部の品質確保に注意する。
・専門技術者を確保し、高品質な施工をする。
模範解答4 (答案形式) 添削履歴 2回 2018.7.30 専門事項 コンクリート橋設計
1. 現場打ち施工とプレキャスト化の工程短縮の検討
(1)現場打ちの施工効率向上
従来コンクリート工は、型枠組立、過密配筋部の締固めなどの労力と時間がかかる。このため、型枠製作、脱型手間が省く埋設型枠や締固め不要で過密配筋内に容易に充填できる高流動コンクリート等の各要素技術を検討する。
(2)プレキャスト化
工程短縮するには、プレキャスト部材の接合手間を低減する大型化、それに伴う重量増加を軽減し、運搬上の制約を回避する軽量化を検討する。
2.プレキャスト化による工程短縮の業務手順
①運搬上の制約を受けずにプレキャスト部材を現場内で製作できるサイトプレキャストを検討する。
②①に対応できる揚重施設の設置地盤を改良する。
③施工箇所直近まで運搬するため、運搬路を改良する。
④①が困難な場合、道路交通法(重量、寸法)の制約内でプレキャスト部材の最大化を図る。これには、部材を軽量化できる軽量コンクリートで製作する。
⑤現場内小運搬を計画する場合は、施工箇所の最短距離でストックヤードを確保する。
⑥⑤が難しい場合、施工箇所で横取りできるように運搬路を改良する。
⑦部材の大型化に対応できる揚重施設の設置できるように地盤改良する。
3.業務を進めるための設計、施工上の留意点
(1)設計上の留意点
軽量コンクリートで製作したプレキャスト部材は衝撃に弱いため、隅角部は面取り幅を大きくし、衝撃を受ける箇所は用心鉄筋を配置する設計とする。
サイトプレキャストは、通常の工場製作と比較して製造設備が劣るため、部材形状が複雑な場合は、締固めなどに手間がかかる。このため、単純な形状に採用し、複雑な形状部材は工場製作にするなど製作手法を組合せる計画とする。
(2)施工上の留意点
プレキャスト部材の接合部の水密性を確保するため、接合部に全周連続する水膨張性のシール材を設置するが、この内圧により接合部にひび割れが生じる。これを防止するため、膨張によるシール材の断面高はコンクリートの引張強度を超えない高さとする。
プレキャスト部材を製作する場合は、高強度コンクリートを使用する。高強度コンクリートはセメント量が通常より多く使用するため、アルカリ量が高く、ASRを引き起こすおそれがある。これを防止するため、ASR抑制効果のある混合セメントの使用やシリカ反応試験で無害と判定された骨材を使用する。
解説
「3.業務を進めるための設計、施工上の留意点」は最も難解な問題です。
論点を明確にするため、「設計上の留意点」と「施工上の留意点」と宣言して述べるのもよいでしょう。
ただし、下記のような、よくある一般論的な工事の留意点になってはいけません。
工程短縮には、発注からの納期までの期間短縮が必要になる。このためプレキャスト部材の製作スピードを向上させることに留意する。これには例えば、所定強度の発現までの期間を短縮できる早強コンクリートや養生期間を短縮できる蒸気養生にて製造設計する。
ここは、漠然と留意点を述べるのではなく、2の内容について述べるように。
また一方、下記のように施工法のディテールについての話に陥るのも、広い視点を失ったみたいで好ましくありません。
大型のプレキャスト部材を手早く設置するには、対応できる大型の揚重施設が必要である。このため設置箇所は、吊り荷重と揚重施設の自重に耐え得る地盤支持力でなければならない。これには例えば設置箇所の地盤支持力を調査し支持力が不足する場合は、石灰やセメント等による地盤改良を実施した上で鉄板を敷き揚重施設の安定化を図る。これにより大型部材の設置・接合の機械施工による工程短縮が実現できる。
ここは、手段的話ではなく、コンクリートの本質をつく留意点としてください。